JP3295583B2 - 光学装置および該光学装置を用いた頭部搭載型ディスプレイ - Google Patents

光学装置および該光学装置を用いた頭部搭載型ディスプレイ

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JP3295583B2 JP23136895A JP23136895A JP3295583B2 JP 3295583 B2 JP3295583 B2 JP 3295583B2 JP 23136895 A JP23136895 A JP 23136895A JP 23136895 A JP23136895 A JP 23136895A JP 3295583 B2 JP3295583 B2 JP 3295583B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、画像表示装置に用
いる光学装置、より詳細には、小型軽量で超広角の光学
系を有する該光学装置及び該光学装置を備えた頭部塔載
型ディスプレイ(Head Mounted Display:以下「HM
D」という)に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、仮想現実における視覚情報提示や
ロボットの遠隔操作を行うことができる装置として、図
29に示すような構成のHMDが注目されている。そし
て、現実感や臨場感の高い視覚情報を提示するには広視
野かつ高解像の映像を表示でき、かつ身体(特に頭部)
に装着して用いるためには軽量、小型化したHMDが要
求されている。図29のHMDの構成では、全体はメガ
ネ型ケース110に納められて、頭に装着して使用され
るが、そのメガネのレンズに当たる部分に外側からバッ
クライト108a、液晶パネル(液晶ディスプレイ)1
09a、レンズ101aの順に構成要素が配置されてお
り、この装置を装着した鑑賞者Pは、液晶パネル109
aの拡大された映像を見ることによって、大画面の映像
を鑑賞すると同様に映像を鑑賞することが可能となる。
【0003】そして、近年の液晶ディスプレイの急速な
開発に伴い、HMDの構成の中でも液晶パネルについて
は小型で高画質のものが開発されつつある。しかし、そ
れ以外の構成要件である光学装置については、小型、軽
量化があまり進んでいない。また、HMDは、これまで
仮想現実感の研究など産業用としての利用が多かった
が、今後、家庭用のゲーム機器やVTRディスプレイと
して、一般に広く普及する可能性を秘めている。する
と、HMDの小型、軽量化はより一層重要となってく
る。
【0004】そこで、上記諸問題を解決するために、例
えば、図30に示すような(特開平6−59217号公
報)技術が考えられている。図30に示すHMDでは、
液晶ディスプレイ109bがHMDの上面に設置され、
ディスプレイ109bから出た光線Lは半透鏡102b
で向きを外側に変えられ、凹面鏡120bで拡大、反射
されて目Eに達する構成である。該構成では、半透鏡1
02bと凹面鏡120bで光線Lを折り畳んでいるの
で、直線状に光学装置を並べた場合に比べて、光学装置
の小型化を実現できる。
【0005】しかしながら、前記図30に示す従来例の
ような液晶パネル109bをディスプレイの上面に配置
する方式は、視野角が小さい場合には有効であるが、視
野角が大きい場合には問題が残る。つまり、臨場感の高
い視野情報を得るため、視野角を大きくしようとする
と、液晶パネルの前に設置されている半透鏡102bも
大きいものが必要となるので、結局HMD全体の厚みは
増加し、光学装置の小型化の効果が薄れてしまう。ま
た、この例では、図31から明らかなように、観察者の
目を半透鏡より、さらに凹面鏡に近づけることはできな
いので、観察者からの視野角は90度以下に制限されて
しまう。
【0006】また、HMDの小型、軽量化という問題を
解決するために、例えば、図32に示すような(特開平
1−133479号公報)技術が考えられている。図3
2に示すHMDでは、液晶ディスプレイ109cがHM
Dの上面に設置され、ディスプレイから出た光線Lは平
面反射鏡119cで向きを外側に変えられ、凹面鏡12
0cで拡大、反射されて目Eに達する構成である。該構
成では、平面反射鏡119cと凹面鏡120cで光線L
を折り畳んでいるので、直線状に光学系を並べた場合に
比べて、光学系の小型化を実現できる。しかしながら、
前記図32に示す従来例のような液晶パネルをディスプ
レイの上面に配置する方式は、視野角が小さい場合には
有効であるが、視野角が大きい場合には問題が残る。つ
まり、臨場感の高い視覚情報を得るため、視野角を大き
くしようとすると、液晶パネルの前に設置されている平
面反射鏡も大きいものが必要になるので、結局HMD全
体の厚みは増加し、光学系の小型化の効果が薄れてしま
う。
【0007】そして、HMDに使用する光学系は、頭に
装着するために小型、軽量であると同時に、あたかも映
像の中に入り込んだような臨場感を得るために、広角で
短焦点のものが必要になる。この問題に関して、特開平
1−126620号公報およびVRnews誌 vol.3 issu
e2,March 1994 に発表された技術があるが、まだ性能
が不足している。この従来技術の構造を図33に示す。
映像を表示するディスプレイ109fは、左側に設置さ
れ、ディスプレイから出た光線は円偏光フィルタ104
fとハーフミラーコーティングしてある凹面鏡102f
を通過し、コレステリック液晶素子106fで反射され
る。そして再び凹面鏡102fで拡大、反射されてコレ
ステリック液晶素子106fに達する。そしてコレステ
リック液晶素子106fを透過して使用者の目Eに達す
る。ここでは、コレステリック液晶素子106fとハー
フミラーコーティングされた凹面鏡102fで光線の経
路を折り畳んでいるので、この技術を用いれば直線状に
光学系を並べた場合に比べて小型である。
【0008】しかしながら、この従来技術においても、
以下の3点を問題点として挙げることができる。第1
は、凹面鏡のみで像を拡大しているため、像面湾曲が大
きくなる点である。像面湾曲の大きい光学系で平面のデ
ィスプレイを見た場合には、中心部でピントを合わせて
も周辺部では合わなくなる。特に、HMDに応用する場
合は、臨場感を出す必要から倍率が高く、かつ超広角の
光学系が要求されるが、この条件は、像面湾曲が大きい
場合の不具合を一層拡大する。従って、上述の従来技術
のままの構成では、臨場感のあるHMDを実現できな
い。第2は、直径が大きく、かつ短焦点の光学系が実現
できない点である。その原因は、直径を大きくすると、
凹面鏡の厚みが増加し、焦点が凹面鏡の中に入り込んで
しまうからである。しかし、HMDに応用する場合は、
映像を十分拡大し視野いっぱいに見せる必要があるか
ら、再び、上述の従来技術のままの構成では臨場感あふ
れるHMDは実現できない。第3は、光学系の透過率が
理想的な場合でも25%と低く、画像が暗くなる点であ
る。この結果、使用者に明るい映像を提供しようとすれ
ば、ディスプレイの輝度を4倍以上明るくしなければな
らず、装置の大型化や消費電力の増大などの不都合が生
じる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来のHMDにおける問題点を解決するためになされたも
のであり、視野角の大きい視覚情報を得るための超広視
野短焦点光学系を有する光学装置を小型(薄型)かつ軽
量に構成すること、さらにこの光学装置を用いて臨場感
あふれる頭部搭載型ディスプレイ(HMD)を提供する
ことをその課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明に係る光
学装置は、光線の入射側から順に、ハーフミラーコーテ
ィングを有する反射屈折素子と、円偏光選択半透鏡が配
置され、入射光が所定の円偏光である場合、円偏光選択
半透鏡が入射光を偏光によって選択的に反射、透過をし
て入射光が反射屈折素子と前記選択半透鏡の間を1往復
半することになって屈折系の光学的パワー(倍率)を大
きくするとともに視野角を広くし、装置を薄型でコンパ
クトにして軽量化を可能とするものである。
【0011】請求項2の発明に係る光学装置は、上記請
求項1において、前記円偏光選択半透鏡が光線の入射側
から順に1/4波長板と、ハーフミラーと、偏光板とに
よって構成されるもので、前記円偏光選択半透鏡の要素
であるハーフミラー、1/4波長板及び偏光板自体は既
存の技術で薄型のものを得ることが可能であることか
ら、上記請求項1の効果を容易に実現し得る。
【0012】請求項3の発明に係る光学装置は、上記請
求項1において、前記円偏光選択半透鏡がコレステリッ
ク液晶によって構成されるもので、請求項2に比してよ
り明るい光学系を構成することになる。
【0013】請求項4の発明に係る光学装置は、上記請
求項3において、前記反射屈折素子との間に前記コレス
テリック液晶を挟むためのガラス基板が配置されるもの
で、円偏光選択半透鏡としての機能を有するコレステリ
ック液晶を反射屈折素子とガラス基板の間で挟んで一体
化させることにより、請求項3に比してよりコンパクト
で安定した光学系を構成することになる。
【0014】
【0015】
【0016】請求項の発明に係る頭部搭載型ディスプ
レイは、液晶ディスプレイ用のバックライトと、液晶デ
ィスプレイと、1/4波長板と、液晶ディスプレイの映
像を拡大するための請求項1ないし6のいずれかに記載
の光学装置とからなる画像表示装置を備えたもので、使
用者の頭部への搭載という面で特に重要な必要条件が、
請求項1ないし6の薄型、コンパクトかつ軽量化された
光学装置によって満足され、従来の当該HMDに比して
視野角が広角になり、かつ画像の像面湾曲もなく画質も
優れているために臨場感と迫力のあるHMDを得ること
ができる。
【0017】請求項の発明に係る光学装置は、光線の
入射側から順に、第1の偏光板と、第1の半透鏡と、第
1の1/4波長板と、第2の半透鏡と、第2の1/4波
長板と、第2の偏光板が配置され、かつ前記第1の半透
鏡及び前記第2の半透鏡との間に屈折素子が配置されて
いるもので、屈折素子の光学的パワー(倍率)が大きく
なるとともに視野角を広くし、装置を薄型でコンパクト
にして軽量化を可能とする
【0018】請求項の発明に係る光学装置は、光線の
入射側から順に、偏光選択半透鏡と、第1の1/4波長
板と、半透鏡と、第2の1/4波長板と偏光板が配置さ
れ、かつ前記偏光選択半透鏡と前記半透鏡との間に屈折
素子が配置されているもので、入射光に対するシグナル
光の割合(伝達効率)が向上し、請求項の発明で生ず
るノイズ光は完全に除去される。
【0019】請求項の発明に係る光学装置は、光線の
入射側から順に、第1の偏光選択半透鏡と、偏光方向回
転手段と、第2の偏光選択半透鏡が配置され、かつ前記
第1の偏光選択半透鏡と、前記第2の偏光選択半透鏡と
の間に屈折素子が配置されているもので、上記請求項
及びの発明に比して伝達効率がより向上し、ノイズ光
も生ずることがない。
【0020】請求項の発明に係る光学装置は、上記請
求項ないしのいずれかにおいて、前記半透鏡および
/または偏光選択半透鏡よりなる2枚の半透鏡の一方ま
たは両方が曲面であり、請求項ないしの効果に、さ
らに請求項1および2の効果を奏する。
【0021】請求項10の発明に係る光学装置は、光線
の入射側から順に、コレステリック液晶の薄膜が表面に
形成された凹面鏡と、第1の1/4波長板と、ファラデ
ー素子と、第2の1/4波長板と、コレステリック液晶
が配置されているもので、コレステリック液晶の選択反
射及び透過が100%であることから、明るい光学系を
提供し得ることになる。
【0022】請求項11の発明に係る光学装置は、光線
の入射側から順に、入射側の凸面にコレステリック液晶
の薄膜が形成された平凸レンズと、該平凸レンズの平面
に隣接する第1の1/4波長板と、ファラデー素子と、
第2の1/4波長板と、コレステリック液晶が配置され
ているもので、平凸レンズの採用により、請求項12に
比して、像面湾曲が少なく、光学倍率が大きくなる。
【0023】請求項12の発明に係る頭部搭載型ディス
プレイは、液晶ディスプレイ用のバックライトと、液晶
ディスプレイと、液晶ディスプレイの映像を拡大するた
めの請求項ないし11のいずれかに記載の光学装置と
からなる画像表示装置を備えたもので、薄型、コンパク
トかつ軽量化された当該光学装置により使用者の頭部へ
の搭載という面で特に重要なHMDの要求が満足され
る。また、液晶ディスプレイの拡大画像を得る従来の当
該装置に比して、視野角が広角になり、かつ、画像の像
面の湾曲もなく画質も優れているために、臨場感と迫力
のあるHMDを提供し得る。
【0024】請求項13の発明に係る頭部搭載型ディス
プレイは、請求項又は12の前記画像表示装置を対に
して備えたもので、仮想現実或いは遠隔操作における場
面を提示するHMDへの応用に最適なものが得られる。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明は、従来当該装置が、着目
していなかった偏光を活用して小型の光学装置を実現す
るものである。そこで、本発明の光学装置を構成する上
で、特に重要な光学部品である円偏光選択半透鏡につい
て、その作用を模式化した図2および図3を用いなが
ら、以下に説明する。まず、以下の説明に用いている座
標軸の定義を行う。図2(B)に示す座標軸は紙面に垂
直で手前へ向いている方向をx軸、紙面に平行で上向き
の方向をy軸、x軸およびy軸に垂直で紙面に沿って右
へ向かう方向をz軸とする。また、回転角については、
z軸の方向に沿って見たとき、図2(C)に示すxy平
面内でy軸となす角であって、右回りを正として定義す
る。また、結晶軸の定義も行う。1/4波長板に関して
は、結晶軸に垂直な方向の偏光成分は、結晶軸に沿った
方向の偏光成分に対して1/4波長遅れるものと定義す
る。さらに、偏光板に関しては、結晶軸に沿った方向の
偏光成分は透過させ、結晶軸に垂直な方向の成分は吸収
すると定義する。そして、以下で用いる図面および説明
において、特に断らない限り同じ定義を用いる。
【0026】図2(A)に示すように、本発明の光学装
置における、第1の円偏光選択半透鏡は光線の入射側か
ら順に1/4波長板5、ハーフミラー2、偏光板4の順
に配置され、1/4波長板5の結晶軸はy軸(0度)の
方向、偏光板4の結晶軸は45度の方向を向いていると
する。ここで、円偏光選択半透鏡に(紙面)左側から、
光線を入射させると、円偏光の回転方向により、反射及
び透過率が異なる。まず、右回りの円偏光は1/4波長
板5を通過すると、−45度の方向に偏光した直線偏光
に変換される。この直線偏光は、次のハーフミラー2に
入射して、反射光と透過光とに50%ずつ分けられる。
反射光は再び1/4波長板5に入射して、右回りの円偏
光に変換され入射側に戻される。一方、透過光は偏光板
4に達するが、偏光板4の結晶軸と垂直の方向に偏光し
ているので、偏光板4に吸収される。よって、右回りの
円偏光は反射されるだけで前記円偏光選択半透鏡を透過
しない。
【0027】次に、左回りの円偏光が左側から入射した
場合には、1/4波長板5によって45度の方向に偏光
した直線偏光に変換される。この光線はハーフミラー2
で50%ずつに分けられ、反射光は再び1/4波長板5
を通過して、左回りの円偏光に変換され入射側に戻され
る。一方、透過光は偏光板4の結晶軸と同じ方向に偏光
した直線偏光なので、偏光板4を透過し、(紙面の)右
側に出射される。
【0028】上述の図2(A)に示す円偏光選択半透鏡
の特性をまとめて、表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1から分かるように、図2(A)に示す
円偏光選択半透鏡は円偏光の向きによって、反射、透過
特性が異なるため、本発明での有用な光学部品として用
いることができる。
【0031】さらに、図2とは異なる作用に基づく円偏
光選択半透鏡を図3に示す。ここで、2枚のガラス板7
の間にコレステリック液晶6を封入することによって、
円偏光選択半透鏡ができる。なお、図2に示すものは、
液晶が液体であるためにガラス板7が必要であるが、固
体をなすものを液晶材料として選択すれば、ガラス板は
不要とすることが可能である。ここに、このコレステリ
ック液晶そのものは、その配向制御により、円偏光につ
いて、一方の向きの円偏光は反射し、その逆向きの円偏
光は透過するという特性を有する。例えば、右回りの円
偏光を反射するように設定すると、理想的な場合には左
回りの円偏光は全て透過する。この特性をまとめて、表
2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】表2から分かるように、図3に示す円偏光
選択半透鏡は円偏光の向きによって、反射、透過特性が
全く異なるため、本発明での有用な光学部品として用い
ることができる。
【0034】よって、本発明における光学装置では、前
記円偏光選択半透鏡を用いて、円偏光選択半透鏡に至る
光線の透過と反射をうまく設計することにより、反射手
段あるいは反射屈折手段から射出される光線のうち、目
的とする光線を、何回か往複させることができる。すな
わち、従来のものより光学装置全体の光路長を何分の1
かに短縮するのに加えて、さらに屈折手段を数回通過さ
せることも可能となるので、屈折手段が数枚あるのと同
じ効果をもたらし、屈折手段の光学的パワー(ここで
は、倍率を指す)を数倍に増幅することもできる。
【0035】本発明にかかる光学装置の実施の形態を以
下に説明する。 (請求項1〜4,13の発明) 図1は、本発明に係る光学装置の1つの実施の形態を示
すものである。図1の光学装置は、主にレンズ1aおよ
び円偏光選択半透鏡3aからなり、レンズ1aの片面を
ハーフミラーコーティング2aし、もう一方の面側に円
偏光選択半透鏡3aを配置したものである。
【0036】本実施の形態ではレンズ1aは、平凸レン
ズで、凸面にハーフミラーコーティング2aしてあるも
のとし、さらに(紙面)左側から入射する右回りの円偏
光に対して、偏光作用を有するように構成されているも
のとして、この光学装置による光線の反射と透過につい
て述べる。(紙面)左側から入射する光線を、右回りの
円偏光とすると、レンズ1aの凸面でハーフミラーコー
ティング2aに到達して、50%が反射され、50%が
透過する。ここで、反射光線は利用されず、透過光線は
レンズ1aの凸面で屈折し、レンズ中を進行する。屈折
では円偏光の向きは変化しないので右回りのまま、光線
はレンズ1aの平面を通過して円偏光選択半透鏡3aに
達する。本実施の形態の円偏光選択半透鏡3aは、右向
きの円偏光は右向きのまま反射し、その反射効率は、円
偏光選択半透鏡3aの種類により異なる。例えば、本願
の図2に示すような円偏光選択半透鏡では反射率は50
%であり、図3の場合では反射率は100%である。
【0037】反射光線は、再びレンズ1aの凸面に到達
し、ハーフミラーコーティング2a部で、50%が透過
し、50%が反射する。ハーフミラーコーティング2a
部を透過の光線は利用されず、反射光線が利用され、そ
の光線は反射により円偏光の向きが変化するため、反射
光線は左回りの円偏光になる。次に、レンズの平面を通
過し、円偏光選択半透鏡3aに到達した光線は、該円偏
光選択半透鏡を通過した後、光学装置より出射される。
最後に、円偏光選択半透鏡3aを通過するときの効率は
円偏光選択半透鏡3aの種類により異なる。例えば、本
願の図2に示すような円偏光選択半透鏡では透過率は5
0%であり、図3の場合では反射率は100%である。
【0038】一般に、同じ曲率半径の曲面を屈折作用と
して用いた場合と反射作用として用いた場合では、反射
作用の方が約4倍の光学的パワーを有することが分かっ
ている。そこで、上述のように、入射光線がレンズ1a
の両面の間を1往複半する間に、ハーフミラーコーティ
ング2aされた1つの凸面から1回の屈折作用と1回の
反射作用を受けることにより、1回だけの屈折手段とし
て用いる場合に比べて、約5倍の光学的パワーを持つこ
とになる。すなわち、レンズを複数枚並ベ、光学的パワ
ーを得ようとする従来の光学装置に比べて、同じ光学的
パワーを得ようとすると、約1/5の光路長に短縮でき
ることになり、光学装置の小型、軽量化を実現できる。
【0039】また、本願の図2や図3に示す円偏光選択
半透鏡では、(入射)光の利用効率が異なる。例えば、
図2に示すものでは前記実施の形態において、反射手段
や屈折手段の全段階でその光線の1/2を利用するた
め、最終的には入射光の1/16=6.25%を利用す
ることになる。また、図3に示すものでは、ハーフミラ
ーコーティング部では光線の1/2を利用するが、反射
手段や屈折手段ではその光線の全てを利用することがで
きるため、最終的には入射光の1/4=25%を利用す
ることになる。よって、特に図3に示すような円偏光選
択半透鏡を用いる光学装置は映像の明るさを著しく向上
させることができる。ただし、既存の材料にての作製が
より容易となるのは図2に示すものである。
【0040】次に、上記した本発明に係る光学装置をH
MDに応用した実施の形態を図5および図6を用いて説
明する。全体はメガネ型のケース10dに納められて、
頭に装着して使用される。そのメガネのレンズに当たる
部分に外側からバックライト8d、液晶パネル9d、1
/4波長板5d、光学装置30dの順に配置され、観察
者Pに液晶パネルの映像が拡大されて、大画面の映像を
鑑賞することができる。図6において、円偏光選択半透
鏡は光学装置30dに含めているものとして図示を省略
し、図5にその光学装置の詳細図を示す。
【0041】図5中、液晶パネル9cは一般によく使用
されているツイストネマティック形液晶パネルを用いる
と、液晶パネル9cを透過する光線は直線偏光になって
おり、その偏光方向がy軸に沿っているものと仮定でき
る。また、1/4波長板5cの結晶軸は−45度の方向
に向いているものと仮定し、以下にその光線の進行につ
いて説明する。
【0042】バックライト8cを発した光線は液晶パネ
ル9cを通過して、画像情報を担った直線偏光として出
射され、続く1/4波長板5cによって右向き円偏光に
変換される。この光線は上記した実施の形態で説明した
ような光学装置で構成され、図5では凸面にハーフミラ
ーコーティング2cされた平凸レンズ1c、および該レ
ンズ1cの平面に密着され、2枚のガラス板(おるいは
プラスチック)に挟まれたコレステリック液晶よりなる
円偏光選択半透鏡3cによって構成する。
【0043】ここで用いている前記円偏光選択半透鏡3
cは、一方のガラス基板に配向処理を施して、コレステ
リック液晶の分子を基板に垂直配向させ、もう一方のガ
ラス基板にて挟むことにより作製される。また、図4に
示すように、円偏光選択半透鏡の片側のガラス基板を省
略し、平凸レンズ1bの平面と1枚のガラス基板7bと
の間にコレステリック液晶6bを挟んで、レンズ1bと
円偏光選択半透鏡を一体化して作製することもできる。
【0044】図5において、(紙面)左側から入射した
右回りの円偏光Lは、レンズ1cの凸面でハーフミラー
コーティング2c部に到達して、50%が反射され、5
0%が透過する。ここで、反射光線は利用されず、透過
光線はレンズ1cの凸面で屈折し、レンズ中を進行す
る。屈折では円偏光の向きは変化しないので右回りのま
ま、光線Lはレンズ1cの平面を通過して円偏光選択半
透鏡3cに達する。本実施の形態の円偏光選択半透鏡3
cは右向きの円偏光は右向きのまま反射し、その反射率
は100%である。反射光線は、再びレンズ1cの凸面
に到達し、ハーフミラーコーティング2c部で、50%
が透過し、50%が反射する。ハーフミラーコーティン
グ2c部を透過の光線は利用されず、反射光線が利用さ
れ、その光線は反射により円偏光の向きが変化するた
め、反射光線は左回りの円偏光になる。次に、レンズ1
cの平面を通過し、円偏光選択半透鏡3cに到達した光
線は、該円偏光選択半透鏡3cを通過した後、光学装置
より出射される。
【0045】そこで、上述のように、入射光線がレンズ
1cの凸面および円偏光選択半透鏡3cの両面の間を1
往複半する間に、1つの凸面部から1回の屈折作用と1
回の反射作用を受けることにより、1回だけの屈折手段
として用いる場合に比べて、約5倍の光学的パワーを持
つことになる。すなわち、レンズを複数枚並ベ、光学的
パワーを得ようとする従来の光学装置に比べて、同じ光
学的パワーを得ようとすると、約1/5の光路長に短縮
できることになり、光学装置の小型、軽量化を実現でき
る。
【0046】(実施例)ここで、本発明に係る上記した
HMDの実施の形態に使用するための光学装置の設計に
ついて説明する。HMDに利用するためには、使用者の
目の前に2個の光学装置を並べなければならないが、人
間の眼の間隔が平均63mmであることから、直径60
mmのレンズを用いた。また、通常使用する液晶ディス
プレイのサイズは1.5〜2インチであることから、光
学装置の素材となる単レンズの使用を下記のように決定
した。
【0047】形状:ガラス製平凸レンズ 焦点距離:120mm 凸面曲率半径:60mm 中心厚:10mm このレンズを用いて作製したこの実施例の光学装置の設
計図を図7(A)に示す。図7(A)における光学装置
の仕様を下記に示す。
【0048】合成焦点距離:23mm 視野角:120度 ディスプレイ表面からレンズ端までの厚さ:17mm 重量:48g ここで、比較のために、図7(A)と同倍率を有するよ
うな光学装置を従来のように、単レンズを5個並列させ
ることにより設計した場合の光学装置の設計図を図7
(B)に示す。図7(B)における光学装置の仕様を下
記に示す。
【0049】合成焦点距離:29mm 視野角:100度 ディスプレイ表面からレンズ端までの厚さ:66mm 重量:240g 図7(A)と図7(B)との比較から分かるように、図
7(A)の光学装置によれば、倍率および視野角を増加
しながらも、49mmの薄型化と片眼で192g(両眼
で384g)の軽量化を実現できる。また、従来の光学
装置では、視野角を増加させていくのに伴って、その厚
さが増加するので、視野角を120度のような広角にす
ることが極めて困難であったが、この実施例の光学装置
では視野角が大きい場合でも厚さがほとんど変化しない
ので、実用面において有効である。
【0050】すなわち、HMDを快適に使用するために
は、顔面から飛び出す長さを短くして薄型にすること
と、顔にかかる重量を軽くする事が特に要求される。本
発明の実施例の光学装置を使用する事により、視野角が
大きい光学装置でも通常の場合に比べて厚みが減少(図
7(A)では1/4に減少)するので、前記要求を満足
させ、薄型軽量のHMDを実現できる。
【0051】(請求項の発明) 図8(A)及び図9(A)は、この発明の実施の形態及
びその作用について説明する図である。図8(B)は、
従来技術の構成の光学系で、ハーフミラー凹面鏡102
dとコレステリック液晶素子106dからなっていて、
間には空気がある。眼Eからディスプレイ109dを見
ると拡大されて見えるが、このとき、ピントが一定にな
る位置は、一般に平面にならずにペッツバール像面IP
と呼ばれる曲面になる。ペッツバール像面IPの曲率半
径がペッツバール半径と呼ばれ、像面湾曲の程度を表す
パラメータである。ペッツバール半径が小さく、像面湾
曲が大きいときは中心でピントが合っていても、周辺に
いくとペッツバール像面とディスプレイの間隔が広がる
ため、ピントが合わなくなる。従来技術の構成の光学系
の場合、凹面鏡102dの曲率半径をrとすると、ペッ
ツバール半径は、式に従って計算するとr/2になり、
非常に小さい。
【0052】これに対して、本発明の実施の形態を示す
図8(A)において、平凸レンズ1eの凸面にハーフミ
ラーコーティング2eがなされ、平面に隣接してコレス
テリック液晶素子6eが配置されている。従来技術の構
成と違う点は、凸面と平面間をガラスまたはプラスチッ
クの屈折材料が占有しているという見方ができる。この
屈折材料の作用によって、上記と同様に式に従ってペッ
ツバール半径を計算するとrになる。つまり、屈折材料
を入れることによって、像面湾曲を半分に減らすことが
でき、周辺までピントのあった光学系を実現できる。
【0053】特に、HMDでは、従来、像面湾曲が大き
くなりすぎるという理由で製作できなかった、超広角短
焦点の光学系が、この本発明の手段を用いることによっ
て実現でき、臨場感を大幅に高めることが可能になっ
た。
【0054】また、上述の実施の形態における他の作用
について、図9を用いて説明する。図9(B)は、従来
技術に係るもので、ディスプレイ109eから発する光
線は、右向きの円偏光Rであると仮定する(実際には、
ディスプレイ109eの前に円偏光フィルタかまたは1
/4波長板を設置することによって実現できる)と、光
線は、まず、ハーフミラーコーティングした凹面鏡10
2eを通過し、コレステリック液晶素子106eに達す
る。コレステリック液晶素子106eは、ある向きの円
偏光をすべて反射し、反対向きの円偏光はすべて透過す
る特性を持っている。そこで、いま右向きの円偏光Rを
反射するように製作されているものとすると、ディスプ
レイ109eから到来した光線はすべて反射されること
になる。光線は、再びハーフミラーコーティングされた
凹面鏡102eに達し、拡大されると同時に反射され
る。円偏光は反射されると、偏光の向きが反転するの
で、ここで左むきの円偏光Lとなって再びコレステリッ
ク液晶素子106eに達する。ところが、上で仮定した
ように、このコレステリック液晶素子106eは、左向
きの円偏光Lを透過させる性質を持っているので、光線
はコレステリック液晶素子106eを通過して使用者の
眼Eに到達する。従って、ディスプレイ109eをこの
光学系の焦点近くに設置することによって、使用者はデ
ィスプレイ109eの拡大された虚像を見ることができ
る。このとき、この光学系のパワー(焦点距離の逆数)
は、凹面鏡102eだけに存在しており、その曲率半径
をrとすると、2/rであることが計算から分かる。
【0055】これに対して、本発明の実施の形態を示す
図9(A)において、光線は、従来技術の場合と同様に
ディスプレイ9fから円偏光として射出されるものとす
ると、光線は、まず平凸レンズ1fの凸面に入射し、こ
こで屈折作用を受ける。続いて、光線はレンズ1fの中
を進み平面に隣接して設置されているコレステリック液
晶素子6fに達して反射される。以降、上述の従来技術
の場合と同様にハーフミラーコーティング2fされた平
凸レンズ1fの内側の凹面で拡大反射されて、再びコレ
ステリック液晶素子6fに達し、これを通過して使用者
の眼Eに達する。従来技術と異なるのは、次の2点であ
る。第1は、最初に光線がレンズ1fに入射する時に、
レンズ1fの屈折作用を受ける点である。第2は、平凸
レンズ1fの内側の凹面での反射は、屈折率が空気より
大きいガラスまたはプラスチックの中で行われる点であ
る。この違いによって、本発明のこの実施の形態の光学
系は、従来技術に比べて光学パワーが増幅され、同じ形
状でもより短焦点の光学系を実現できる。その程度を計
算によって見積ると、平凸レンズ1fの凸面の曲率半径
を従来技術の場合と同様にr、ガラスまたはプラスチッ
クの屈折率を1.5とすると、レンズの屈折作用の光学
パワーは、0.5/rとなり、レンズの内側の凹面での
反射による光学パワーは3/rとなる。したがって、合
成された光学パワーは、レンズの厚さをtとすると、t
>=r/4のとき、3/rから3.5/rになる。つま
り、同じ形状で光学パワーが1.5倍から1.75倍増幅
され、それだけ短焦点の光学系を提供できる。本発明の
この作用は、HMDに応用した場合、特に大きな違いを
生じる。それは、同じ形状でありながらディスプレイを
より大きく拡大し超広角の映像を作り、臨場感あふれる
HMDを実現する点である。より詳しい数値例について
は下記の(実施例)に記載する。
【0056】この実施の形態におけるコレステリック液
晶は、平凸レンズの平面に隣接するコレステリック液晶
素子の形をとっているが、平凸レンズの平面上にコレス
テリック液晶の薄膜として形成するとより良い状態をな
す当該光学装置が得られる。平凸レンズの平面上に薄膜
を形成する方法の1つを次に示す。それは、コレステリ
ック液晶のモノマーとイニシエータの混合溶液を用意
し、この溶液を平凸レンズの面に一様に塗布し、その
後塗布面に、紫外線を照射すると、コレステリック液晶
が重合してポリマーになり固化されるという方法であ
る。
【0057】(実施例)HMDは、上記した図6のよう
な構造をしており、特に小型軽量で、かつ収差の少ない
光学系が求められている。このHMDに使用するための
この発明の光学系の実施例を従来例と比較して示す。
【0058】まず、要求仕様を決定する。視野角につい
ては、人間の主観的座標軸を作り出すのに必要な誘導視
野が100度の範囲にあると言われているので、強い臨
場感と迫力を作るために対角100度が必要である。射
出ひとみは、広い視野を眼球が見回すために12mm必要
である。アイリリーフは眼鏡をかけている人でも見れる
ためには、20mm必要である。ディスプレイには軽量化
するために1.6インチ小型液晶パネルを用いるものと
すると、対角寸法は40mmになる。以上の条件から、レ
ンズの直径と焦点距離の仕様を計算する。図10のよう
に、射出ひとみのどの位置からでも視野角100度を確
保するためには、式1の計算によって60mmの直径が必
要である。 (式1) (レンズ直径)=(射出ひとみ径)+2*(アイリリーフ)
*tan[(視野角)/2] 焦点距離に関しては、近軸計算によると、式2によって
16.8mmの短焦点でなければならない。 (式2) (焦点距離)=(パネル対角寸法)/(2*tan[(視野角)
/2]) 以上の仕様をまとめると、表3のようになる。
【0059】
【表3】
【0060】次に、従来例と本発明の実施例で上記の要
求仕様を満たす光学系を設計し、性能を比較する。従来
例の構成は、図11のようにハーフミラーコーティング
した凹面鏡102gとコレステリック液晶素子106g
からなっている。作用の節で説明したように、凹面鏡1
02gの光学パワーによってディスプレイの画像を拡大
して使用者に虚像を見せる働きをする。今、光学系の焦
点距離は16.8mmでなければならないから、凹面鏡1
02gの曲率半径は33.6mmと設計される。ところ
が、これは実現不可能である。なぜなら、図11に示す
ように、凹面鏡の厚みが18.5mmとなり、凹面鏡の焦
点位置Fが凹面鏡102gの内部に入り込んでしまうの
で、ここにディスプレイを設置できないからである。そ
こで、逆に従来例の構成での最短の焦点距離を求める
と、式3を解いて22.7mmとなる。
【0061】
【数1】
【0062】このときの視野角、つまり従来例の構成方
法によって達成できる最大の視野角は、83度になり、
要求仕様には達することができない。
【0063】次に、この発明の実施例の光学系として上
記と同様な要求仕様で設計する。まず、構成を図12に
示す。従来例と異なり、凹面鏡2tとコレステリック液
晶素子6tの間に屈折手段としてアクリル(屈折率1.
49)1tが存在しているものとする。従来例の最大視
野角の場合と同じ形状で計算すると、屈折手段1tの効
果によって、焦点距離は15.2mm、パネルの視野角は
106度となり、十分広角で要求仕様を満足させること
ができる。さらに、像面湾曲IPの程度を調べるため、
両者のペッツバール半径を計算すると、従来例の場合は
22.7mm、この実施例の場合は45.1mmとなり、この
実施例の方が画質においても2倍優れていることが分か
る。従来例とこの実施例の光学系の特性を表4にまとめ
て比較する。
【0064】
【表4】
【0065】表4から分かるように、従来例と全く同じ
大きさであるにも関わらず、従来例の構成では到達でき
ない超広角で、しかも画質が優れた光学系を提供でき
る。従って、この実施例の光学系を有する光学装置を、
図13に示すように、メガネ型ケース10lに納め、バ
ックライト8l、液晶パネル9l、光学装置1l,6l
の順に配置しHMDに応用すると、使用者Pに対しこれ
まで体験したことのないような臨場感と迫力のあるディ
スプレイを実現できる。
【0066】(請求項1213の発明) 本発明は、従来当該装置が、着目していなかった偏光を
活用して小型の光学装置を実現するものである。そこ
で、本発明の光学装置を構成する上で重要な要素となる
光学系について、その作用を模式化した図14及び図1
5を用いながら、以下に説明する。本発明による、図1
4に示すような光学系では、2枚の半透鏡2g,2′g
を向かい合わせて配置し、光線の偏光方向や半透鏡に至
る光線の透過と反射をうまく設計することにより、射出
側の半透鏡から射出される光線のうち、光線Liは半透
鏡の間を1往復半することになる。すなわち、従来のも
のより光学系全体の光路長を1/3に短縮するのに加え
て、さらに半透鏡間の屈折手段1gを3回通過するの
で、屈折手段1gが3枚あるのと同じ効果をもたらし、
屈折手段1gの光学的パワー(ここでは倍率を指す)を
3倍に増幅することもできる。
【0067】さらに、本発明による、図15に示すよう
な光学系では、2枚の半透鏡2h,2′hを向かい合わ
せて配置し、しかも半透鏡2h,2′hの一方または両
方が曲面の半透鏡(この例では2h)として配置し、こ
の光学系の光線の偏光方向と半透鏡2h,2′hをうま
く設計する。すると、半透鏡2h,2′hの一方または
両方が曲面の半透鏡2hであることにより、屈折手段1
hの負担を軽くすることができ、光学設計の自由度が増
加するとともに、屈折手段1hよりも半透鏡2h,2′
hに曲率を持たせる方が一般に軽くなるので、光学系を
より軽量化することができる。
【0068】ただし、図14及び図15に示すような光
学系は作用の説明のため、その原理的な考え方を模式化
したものであり、前記光学系をそのまま用いたのでは、
必要な光線以外に半透鏡で反射しないで通過する直接光
や、半透鏡で2往復半以上する光線も出射されるので、
ゴーストやハレーション等を生じてしまうことになる。
これらの点を解決した実施の形態の光学系の構成につい
て、以下に詳述する。
【0069】(請求項の発明) まず、本発明に係る光学系の実施の形態を図16(C)
によって説明する。この光学系での座標軸及び回転角に
ついては、前述したと同じ定義に従うものとする(図1
6(A),(B)参照)。
【0070】図16(C)の光学系の構成は、光線の入
射側を紙面の左側として、ここから第一の偏光板4i,
第1の半透鏡2i,屈折手段1i,第1の1/4波長板
5i,第2の半透鏡2′i,第2の1/4波長板5′
i,第2の偏光板4′iの順に、それぞれの光学素子が
xy平面に含まれて、光学系の光軸Axに対して垂直に
なるように配置されている。また、各光学素子が配置さ
れている方向は、第1と第2の偏光板4i,4′iにつ
いては、透過する偏光方向がy軸方向になるように配置
されており、第1と第2の1/4波長板5i,5′i
は、波長板の結晶軸がy軸と−45度をなすように置か
れている。
【0071】次に、この光学系による光線の反射と透過
について述べる。左側から第一の偏光板4iに入射する
光線は、第1の偏光板4iによってy軸方向に偏光した
光線になる。続いて、第1の半透鏡2iを通過し、第1
回目の屈折手段1iの通過をする。そして、第1の1/
4波長板5iを通過するが、この時、光線は直線偏光か
ら円偏光に変換される。この光線は、次に、第2の半透
鏡2′iによって半透鏡2′iを通過する直接光Li
と、反射する反射光L′iに分けられる。直接光Li
は、第2の1/4波長板5′iによって、再び円偏光か
ら直線偏光に変換される。ところが、このとき第1と第
2の1/4波長板5i,5′iの結晶軸の方向は同じで
あるから、1/2波長板を通過したのと同じことにな
り、直線偏光の方向は90度回転させられて、x軸方向
になる。つまり、1/4波長板を2回通過するたびに、
直線偏光の偏光方向が90度変換されるのである。した
がって、続く第2の偏光板4′iで吸収されてしまう。
この作用によって、直接光Liによる画像劣化を防ぐこ
とができる。
【0072】一方、第2の半透鏡2′iで反射された反
射光L′iは再び第1の1/4波長板5iを通過して、
x軸方向に偏光した直線偏光に変換される。そして、第
2回目の屈折手段1iを通過し、第1の半透鏡2iに達
し反射される。反射では偏光方向は変化しないので、光
線はx軸方向の直線偏光のままである。続いて、第3回
目の屈折手段1iを通過し、再び第1の1/4波長板5
iを通過して円偏光に変換される。この円偏光は第2の
半透鏡2′iで、再び通過する光線L′iと反射する光
線に分けられる。通過する光線L′iは、続いて、第2
の1/4波長板5′iで直線偏光に変換される。しか
し、今度は上記の直接光Liの場合とは違って、2回多
く1/4波長板5′iを通過しているので、y軸方向の
直線偏光に変換されている。
【0073】したがって、光線L′iは最後の第2の偏
光板4′iを通過して射出され、以降の光学装置や観察
者に利用される。なお、ここで第2の半透鏡2′iによ
ってさらに反射された光線について考えると、上記反射
光と同様に半透鏡間を往復して第2の半透鏡2′iに戻
ってくる。そして、第2の半透鏡2′iを通過して光線
は、往復する間に1/4波長板5iを2回通過している
ので、直接光の場合と同様に、x軸方向に偏光してい
る。従って、第2の偏光板4′iで吸収されてしまう。
よって、半透鏡間を2往復半する光線による画像劣化を
防ぐことができる。
【0074】ここで、本光学系から射出されて、以降の
光学装置に利用され得る光線をシグナル光、それ以外の
画像劣化を引き起こす光線をノイズ光と規定し、本光学
系における半透鏡を通過する光線について、さらに検討
を行った結果を表5に示す。
【0075】
【表5】
【0076】この表5から分かるように、往復回数が
0.5,2.5,4.5回の光線は、偏光板4′iで吸収
されて透過せず、透過する光線は往復回数が1.5,3.
5回のものである。1.5回往復した光線が必要なシグ
ナルで、3.5回往復した光線がノイズ光であるが、こ
のノイズ光は往復する間に散乱などにより減衰し、シグ
ナル光に対する強度比を見ても、1/16になっている
ことがわかる。即ち、最も大きいノイズ光でもシグナル
光の1/16の強度に抑えられているため、ノイズ光に
よる画像劣化を抑えることができる。
【0077】また、この発明における同様の機能は、コ
レステリック液晶薄膜を用いる方法によっても実現でき
る。その構成を図17に示す。図17において、コレス
テリック液晶6mが右回り円偏光(図中の記号R)を反
射し、左回り円偏光(図中の記号L)を通過するものと
する。直線偏光で左側から入射した光線は、1/4波長
する5mで、右向き円偏光Rに変換され、コレステリッ
ク液晶薄膜6mと、ハーフミラー2mで1往復半して右
側へ射出される。したがってこの間に屈折手段1mを3
回通過し、1回通過する場合に比べて3倍の作用を発揮
させることができる。ここに、この説明中の偏光方向及
び円偏光の回転方向は、変えることが可能である。
【0078】(請求項の発明) 次に、本発明に係る光学系の実施の形態を図18(C)
および図19によって説明する。この光学系での座標
軸、及び、回転角については、前述したと同じ定義に従
うものとする(図17(A),(B)参照)。
【0079】図18(C)の光学系の構成は、光線の入
射側を左側として、ここから液晶ディスプレイ9j,偏
光選択半透鏡3j,屈折手段1j,第1の1/4波長板
5j,半透鏡2j,第2の1/4波長板5´j,偏光板
4j,観察者の目Eの順に、それぞれの光学素子がxy
平面に含まれて、光学系の光軸に対して垂直になるよう
に配置されている。また、各光学素子の配置されている
方向は、偏光選択半透鏡3jと偏光板4jについては、
透過する偏光方向がy軸方向になるように配置されてお
り、第1と第2の1/4波長板5j,5´jは波長板の
結晶軸がy軸と−45度をなすように配置されている。
【0080】この実施の形態の光学系は、前記請求項8
の実施の形態の図16に示す光学系の中で、第1の偏光
板4iと第1の半透鏡2iを偏光選択半透鏡3jで置き
換えた光学系である。ここで、偏光選択半透鏡3jと
は、図20に示すように、原理的に一定の方向に偏光し
た直線偏光を100%透過させ、これに直交する方向に
偏光した直線偏光を100%反射する半透鏡であって、
例えば、図20中では、偏光選択半透鏡3に対し、紙面
に水平方向に偏光した光線Liを透過し、紙面に垂直方
向に偏光した光線L´iを反射する。
【0081】この偏光選択半透鏡3は、金属製ワイヤー
グレーティングと同じ原理を使用して作製することがで
きる。金属製ワイヤーグレーティングとは、図21に示
すように、金属製のワイヤー40を一定間隔に平行にな
らべたすだれ状の素子である。電波の偏波の実験のため
に開発された素子で、ワイヤー間の間隔が電波の波長よ
り十分短く、かつワイヤーの材質が電波を反射する特性
を持っているときに、偏波素子として機能する。ワイヤ
ーの整列方向に平行な偏波は反射され、垂直な偏波は透
過される。光に対しても同様であるから、光の波長より
も十分小さい間隔で金属線を整列すれば、整列方向に平
行な偏光は反射し、垂直な偏光は透過する偏光選択半透
鏡ができる。
【0082】実際に作製する方法は2つある。第1は、
金属ウィスカー(髭状の細線)を平行に整列させて薄膜
に構成する方法で、赤外線用の偏光板を作製するのに、
すでに利用されている。第2は、ICや液晶パネルを作
製するのに用いるフォトリソグラフィ技術を使って、細
線のすだれ状パタンを基盤上にエッチングする方法であ
る。現在、線幅20nmの加工が可能であるから、可視光
線の波長より十分小さい間隔のパタンを作ることができ
る。図22にフォトリソグラフィによって作製される偏
光選択半透鏡の拡大図を示す。光を透過するガラス基盤
50の上に、アルミニュウムなどの金属でできた細線5
1が作られている。金属細線51の間隔Dは、可視光線
の波長より十分小さくなければならないから、100nm
以下であることが求められる。
【0083】ここで、図18に示す光線の反射や透過に
ついて詳述する。液晶ディスプレイ9jから射出される
光線はy軸方向に偏光しているとする。まず、光線は偏
光選択半透鏡3jを透過する。続いて、第1回目の屈折
手段1jの通過を行う。そして、第1の1/4波長板5
jを通過する。この時、光線は直線偏光から円偏光に変
換される。この光線は、次に、第2の半透鏡2´jによ
って半透鏡を通過する直接光Liと、反射する反射光L
´iに分けられる。直接光Liは、第2の1/4波長板
5´jによって、再び円偏光から直線偏光に変換され
る。ところが、このとき、第1と第2の1/4波長板5
j,5´jの結晶軸の方向は同じであるから、1/2波
長板を通過したのと同じことになり、直線偏光の方向は
90度回転させられて、x軸方向になる。つまり、1/
4波長板を2回通過するたびに直線偏光の偏光方向が9
0度変換されるのである。したがって、続く偏光板4j
で吸収されてしまう。この作用によって、直接光Liは
吸収されるので、画像劣化を防ぐことができる。
【0084】一方、第2の半透鏡2´jで反射された反
射光は、再び第1の1/4波長板5jを通過してx軸方
向に偏光した直線偏光に変換される。そして、第2回目
の屈折手段1jを通過し、偏光選択半透鏡3jに達し反
射される。反射では偏光方向は変化しないので、光線は
x軸方向の直線偏光である。続いて、第3回目の屈折手
段1jを通過し、再び第1の1/4波長板5jを通過し
て円偏光に変換される。この円偏光は第2の半透鏡2´
jで、再び通過する光線と反射する光線に分けられる。
通過する光線は、続いて第2の1/4波長板5´jで直
線偏光に変換される。しかし、今度は上記の直接光の場
合とは違って、2回多く1/4波長板を通過しているの
で、y軸方向の直線偏光になっている。したがって、光
線は最後の偏光板4´jを通過して射出され、以降の観
察者の目Eに入射する。なお、ここで第2の半透鏡2´
jによって、さらに反射された光線について考えると、
上記反射光と同様に偏光選択半透鏡3jに達するが、今
度は偏光方向がy軸方向となっているので、偏光選択半
透鏡3jを通過して、液晶ディスプレイ9jに吸収され
てしまう。したがって、余分に反射する光線による画像
劣化も防がれる。
【0085】以上のように、本発明による光線は、屈折
手段1jを3回通過するので、屈折手段1jの光学パワ
ーを3倍に増幅することができる。実際、図18に示す
光学系を従来の光学素子のみを用いる光学系に展開する
と、図18と同様の光学パワーを得るためには、図19
に示すような3枚レンズからなる光学系が必要となる。
即ち、図18及び図19との比較より分かるように、従
来では、液晶ディスプレイ109fからの映像を、光学
レンズ101f,101´f,101´´fと3枚もの
レンズを用い、観察者の目Eに導いている。本発明を用
いることにより、光路長を大幅に短縮し、レンズ数を1
/3にすることで、重量も1/3に軽量化できる。な
お、この効果は、レンズ径を大きくして視野角を大きく
した場合も変わらない。したがって、特に広視野角で薄
型、軽量のディスプレイを製作するのに有効である。
【0086】ここで、本光学系においても、偏光選択半
透鏡3jと半透鏡2jの間を往復する各光線の伝達効率
とノイズ光の強度について、さらに検討した結果を表6
に示す。
【0087】
【表6】
【0088】表6から分かるように、前記請求項の実
施の形態より優れている点として、以下の点が挙げられ
る。第1に、半透鏡を偏光選択半透鏡に置き換えたこと
により、入射光に対するシグナル光の割合、つまり伝達
効率が向上する。即ち、請求項の実施の形態の場合、
1/16であったのに対して、この実施の形態では、1
/4にすることができ、4倍向上している。第2に、請
求項の実施の形態では、ノイズ光がシグナル光の1/
16残っていたのに対して、この実施の形態では、ノイ
ズ光は完全に除去される。
【0089】(請求項の発明) 次に、本発明に係る光学系の実施の形態を図23(B)
によって説明する。図23(B)の光学系の構成は、光
線の入射する左側から順に、第1の偏光選択半透鏡3
k,屈折手段1k,偏光方向回転手段60k,第2の偏
光選択半透鏡3´kからなっている。ここで、第1の偏
光選択半透鏡3kの透過する偏光方向はy軸(図23
(A)参照)方向で、第2の偏光選択半透鏡3´kの透
過する偏光方向はy軸に対して、135度の方向になっ
ているものとする。また、偏光方向回転手段60kは光
線の進行方向に沿って見た場合に偏光方向を右回りに4
5度回転するものとする。
【0090】ここでの偏光方向回転手段は、例えばファ
ラデー回転素子で実現できる。ファラデー回転素子と
は、図24のように均質な鉛ガラス71などの媒質に磁
界を加えるようにした素子で、磁界に平行な直線偏光が
入射されると、磁界の強さに比例して偏光面を回転させ
る機能をもっている。
【0091】図23(B)における入射光は、図中の左
側から、まず、第1の偏光選択半透鏡3kを通過してy
軸方向の直線偏光になる。続いて、第1回目の屈折手段
1kを通過し、さらに偏光方向回転手段60kを通過す
る。ここで、偏光方向はy軸に対して45度になる。次
の偏光選択半透鏡3´kは、透過方向がy軸に対して1
35度に設定されているので、45度の偏光は、100
%反射される。従って、直接光は、一切射出されない。
反射光Liは、再び偏光方向回転手段60kを通過し
て、偏光方向を90度に変換される。この光線は、2回
目の屈折手段1kを通過して、第1の偏光選択半透鏡3
kに戻る。第1の偏光選択半透鏡3kの透過する偏光方
向は、0度であったから、90度の光線は、100%反
射される。従って、ここでも損失はない。光線は、三た
び屈折手段1kを通過して、偏光方向回転手段に達す
る。ここで、偏光方向は、135度に変換されて、第2
の偏光選択半透鏡3´kを通過して射出される。
【0092】ここで、本光学系においても、両偏光選択
半透鏡3k,3´kとの間を往復する各光線の伝達効率
とノイズ光の強度について、さらに検討した結果を表5
に示す。
【0093】
【表7】
【0094】表7から分かるように、前記請求項およ
び請求項の実施の形態より優れている点として、以下
の点が挙げられる。第1に、入射光に対するシグナル光
の割合、つまり伝達効率が請求項で1/16、請求項
で1/4であるのに対して、この実施の形態では1
(100%)に向上している。第2に、この実施の形態
では、請求項と同様に原理的にノイズ光が生じない。
【0095】本発明の請求項の実施の形態による
光学系の特徴として、屈折手段の光学パワーを3倍に増
幅するので、拡大率が大きくても薄型で軽量の装置を実
現できる。また、液晶ディスプレイの射出する光線は直
線偏光であるので、入射側の偏光板または偏光選択半透
鏡の透過方向を液晶ディスプレイの射出光線の偏光方向
に合わせることにより、効率よく光線を利用することが
できる。
【0096】(請求項の発明) 請求項ないしの発明において半透鏡の機能をもつ偏
光選択半透鏡或いは半透鏡そのものを曲面をもつものと
した点がこの発明の特徴であるが、この発明の実施の形
態は、レンズ(屈折素子)の曲面にハーフミラーコーテ
ィングし、かつ偏光選択半透鏡で射出光を選択するとい
う点で請求項1〜の発明の考え方と共通する。従っ
て、かかる共通事項に関する実施の形態は、先の請求項
1〜の発明の実施の形態を適用し得るものである
【0097】よって、本願の小型光学系は、特にHMD
には好適である。図25にHMDに応用した実施の形態
を示す。全体はメガネ型のケース10nに納められて、
頭部装着して使用される。そのメガネのレンズに当たる
部分に外側からバックライト8n,液晶パネル9n,偏
光選択半透鏡3n,レンズ1n,第1の1/4波長板5
n,半透鏡2n,第2の1/4波長板5´n,偏光板4
nの順に配置され、観察者Pに映像が届く。このHMD
を快適に使用するためには、顔面から飛び出す長さを短
くして薄型にすることと、顔にかかる重畳を軽くするこ
とが特に要求される。本発明の光学系を使用することに
より、視野角が大きい光学系でも通常の場合に比べて厚
みが1/3で済むので、本願は前記要求を満足させ、薄
型軽量のHMDを実現できる。
【0098】(請求項101213の発明) まず、座標軸及び回転角の定義についてであるが、前述
したと同じ定義に従うものとする。次に、結晶軸の定義
をしておく。1/4波長板に関しては、結晶軸に垂直な
方向の偏光成分は結晶軸に沿った方向の偏光成分に対し
て1/4波長遅れるものと定義する。
【0099】図26(B)は、この発明の実施の形態を
示す図である。左側からコレステリック液晶をコーティ
ングした凹面鏡12p,第1の1/4波長板5p,ファ
ラデー素子60p,第2の1/4波長板5´p,コレス
テリック液晶薄膜6pの順に配置されている。コレステ
リック液晶は、右向き円偏光を透過させ、左向き円偏光
を反射し、第1の1/4波長板5pの結晶軸はx軸(9
0度)の方向、第2の1/4波長板5´pの結晶軸は、
135度の方向を向いていて、ファラデー素子60p
は、直線偏光の偏光方向を45度回転するものと仮定す
る。また、ディスプレイからは右向きの円偏光から入射
するものとする。これは、説明のための仮定であって、
原理的に同じ働きをする違うパラメータの組み合わせも
ありうる。また、図26(B)では、それぞれの素子を
離して描いているが、これは説明のためであり、実際に
は密着させることにより、一体で薄型の構造にすること
が可能である。
【0100】この光学系に左側から光線が入射すると、
以下のように変換され、伝達される。まず、仮定によ
り、ディスプレイからの光線は右向きの円偏光であるか
ら、コレステリック液晶をコーティングした凹面鏡12
pを通過する。そして、第1の1/4波長板5pによっ
て、偏光方向が45度の直線偏光に変換される。次に、
ファラデー素子60pはこの偏光方向をさらに45度回
転するので、射出光線は偏光方向が90度の直線偏光に
なる。続いて、第2の1/4波長板5´pは結晶軸が1
35度を向いているので、90度の直線偏光を左向きの
円偏光に変換する。この光線は、コレステリック液晶素
子6pで反射され、左向き円偏光のまま再び第2の1/
4波長板5´pに入り、90度の直線偏光に変換され
る。ファラデー素子60pは、この光線を偏光方向が1
35度の直線偏光に変換する。そして、第1の1/4波
長板5pは、この光線を左向きの円偏光として射出す
る。
【0101】さらに、光線を追跡すると、第の1/4
波長板5pから射出される光線は、左向きの円偏光なの
で、コレステリック液晶をコーティングした凹面鏡12
pで拡大、反射され、左向き円偏光のまま第1の1/4
波長板5pに入射する。この光線は、1回目に、第1の
1/4波長板5p,ファラデー素子60p,第2の1/
4波長板5´pを通過したのと同様の過程を経て円偏光
の回転方向を反転させられるので、右向きの円偏光とな
ってコレステリック液晶素子6pに達する。コレステリ
ック液晶素子6pは、右向きの円偏光を透過させると仮
定しているので、光線は、これを通過して使用者の眼に
到着する。以上の作用により、使用者はディスプレイの
拡大された虚像を見ることができる。
【0102】ここまでの過程を図27を参照して分析す
ると、第1の1/4波長板5p,5rとファラデー素子
60p,60rと第2の1/4波長板5´p,5´rか
らなる1個の複合素子の機能を考えると、図27に示す
ように、その複合素子に左から右に通過する円偏光は、
その向きが反転し、右から左に通過する円偏光はその向
きが保たれることが分かる。この機能があるために、コ
レステリック液晶素子6pと組み合わせると、次のよう
な効果が生じるのである。
【0103】従来技術では、ハーフミラーコーティング
した凹面鏡を1回通過、1回反射するので、そのたびに
光線が半減し、他に損失がない理想的な場合、全体の透
過率が25%になってしまう。それに対して、上で説明
したこの発明の実施の形態の手段では理想的にはコレス
テリック液晶素子6pに損失がないので、透過率が10
0%になり、4倍明るい光学系を提供できる。特に、H
MDにこの実施の形態の手段を応用した場合には、従来
例を用いた場合に比べてディスプレイの輝度を1/4下
げることができ、その分、小型軽量化を実現できる。
【0104】(請求項1113の発明) 図28は、請求項10の実施の形態として装置の構成を
示す。平凸レンズ1sの凸面12sにコレステリック液
晶がコーティングしてあり、平面に第1の1/4波長板
5s,ファラデー素子60s,第2の1/4波長板5´
s,コレステリック液晶素子6sが設置されている。つ
まり、この発明の実施の形態は、先の2つの実施の形態
の手段を組み合わせたものであり、それぞれの利点を合
わせ持っている。つまり、平凸レンズ1sを使用するこ
とにより、従来技術より像面湾曲が少なく、画面の周辺
までピントが合うと同時に、従来技術より倍率が高く、
かつ広角の光学系になり、またファラデー素子60sを
使用することにより透過率が高いので、映像を明るくで
きる。これらの特徴により、この実施の形態に示される
光学系をHMDに応用した場合には、その臨場感を飛躍
的に高めることが可能になる。
【0105】そして、この実施の形態において、発明を
実施することにより、透過率が理想とする100%に近
い値で従来技術の構成によるものに比べて4倍明るい画
像を提供できる。また、前の実施例において、平凸レン
ズ1sの凸面12sに対するコレステリック液晶のコー
ティングは、次のようにして行われる。材料としてモノ
マーのコレステリック液晶と、これを紫外線の刺激によ
って重合させるイニシエータの混合溶液を用意し、この
混合溶液を平凸レンズ1sの凸面に一様に塗布する。そ
して、紫外線を照射すると、コレステリック液晶が重合
してポリマーになり固化される。次に、ファラデー素子
60sは、強磁性体厚膜に磁場をかけることによって実
現される。このようなファラデー素子60sは、レーザ
をある方向に通過させ、反対の方向には遮断するアイソ
レータと呼ばれる素子に使用されているものである。
【0106】
【発明の効果】
請求項1の発明:当該光学装置への入射光が所定の円偏
光である場合、円偏光選択半透鏡が入射光を偏光によっ
て選択的に反射、透過をして入射光が反射屈折素子と前
記選択半透鏡の間を1往復半することになって屈折系の
光学的パワー(倍率)を大きくするとともに視野角を広
くし、装置を薄型でコンパクトにして軽量化を可能とす
る。
【0107】請求項2の発明:請求項1の発明において
円偏光選択半透鏡の具体化手段の1つを提供するもの
で、該半透鏡の要素であるハーフミラー、1/4波長板
及び偏光板自体は既存の技術で薄型のものを得ることが
可能であることから、上記請求項1の効果を容易に実現
し得る。
【0108】請求項3の発明:請求項1の効果に加え
て、コレステリック液晶を円偏光選択半透鏡とすること
により、請求項2に比してより明るい光学系を構成する
ことになる。
【0109】請求項4の発明:請求項1の効果に加え
て、円偏光選択半透鏡としての機能を有するコレステリ
ック液晶を反射屈折素子とガラス基板の間で挟んで一体
化させることにより、請求項3に比してよりコンパクト
で安定した光学系を構成することになる。
【0110】
【0111】
【0112】請求項の発明:請求項1〜の光学装置
を液晶ディスプレイと結合してHMDを構成することに
より、薄型、コンパクトかつ軽量化された当該光学装置
により、使用者の頭部への搭載という面で特に重要なH
MDの必要条件が満足される。また、液晶ディスプレイ
の拡大画像を得る従来の当該装置に比して、視野角が広
角になり、かつ画像の像面湾曲もなく画質も優れている
ために臨場感と迫力のあるHMDを得ることができる。
【0113】請求項の発明:当該光学装置への入射光
を第1の偏光板によって所定の直線偏光にして直線偏光
の向きによって選択的に透過させる第2の偏光板から射
出させるが、該第2の偏光板を透過する光は、半透過鏡
の間を1往復半するように1/4波長板を付加した光学
系を構成したので、屈折素子の光学的パワー(倍率)が
大きくなるとともに視野角を広くし、装置を薄型でコン
パクトにして軽量化を可能とする。
【0114】請求項の発明:請求項の第1の偏光板
と第1の半透鏡を偏光選択半透鏡で置き換えたものに相
当し、請求項の効果に加えて、入射光に対するシグナ
ル光の割合(伝達効率)が向上し、請求項の発明で生
ずるノイズ光は、完全に除去される。
【0115】請求項の発明:当該光学装置への入射光
を第1の偏光選択半透鏡によって所定の直線偏光にして
直線偏光の向きによって100%選択反射、透過させる
第2の偏光選択半透鏡から射出させることになり、上記
請求項及びの発明に比して、伝達効率がより向上
し、ノイズ光を生ずることがない。
【0116】請求項の発明:請求項の発明は、
入射光の偏光の状態に対して無条件に所期の効果をもた
らすもので、この点で請求項1および2の発明は、入射
光に所定の円偏光という条件を付けている。この点以外
については、基本的に請求項1および2の効果と同様の
効果を奏する。
【0117】請求項10の発明:当該光学装置への入射
光が所定の円偏光である場合に、円偏光選択半透鏡とし
て機能するコレステリック液晶を入射側の凹面鏡の表面
上に形成し、出射端にもコレステリック液晶を設け、選
択反射、透過を100%とすることにより、明るい光学
系が提供できる。
【0118】請求項11の発明:請求項10の発明にお
ける凹面鏡を平凸レンズに置き換えたものに相当し、平
凸レンズの採用により、請求項12に比して、像面湾曲
が少なく、光学倍率が大きくなる。
【0119】請求項12の発明:請求項11の光学
装置を液晶ディスプレイと結合してHMDを構成するこ
とにより、薄型、コンパクトかつ軽量化された当該光学
装置により使用者の頭部への搭載という面で特に重要な
HMDの要求が満足される。また、液晶ディスプレイの
拡大画像を得る従来の当該装置に比して、視野角が広角
になり、かつ、画像の像面の湾曲もなく画質も優れてい
るために、臨場感と迫力のあるHMDを提供し得る。
【0120】請求項13の発明:上記請求項又は12
におけるHMDは、仮想現実或いは遠隔操作における場
面を提示するHMDといったものへの応用に最適なもの
が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学装置の実施の形態を示す図であ
る。
【図2】本発明の光学装置の要素である円偏光選択半透
鏡の1つを示す(A)と共に、座標(B)と回転(C)
の定義を説明する図である。
【図3】本発明の光学装置の要素であるもう1つの円偏
光選択半透鏡を示す図である。
【図4】本発明の光学装置の実施の形態を示す図であ
る。
【図5】本発明の光学装置を有するHMDの要部を示す
図である。
【図6】本発明の光学装置を対に有するHMDを示す図
である。
【図7】本発明のHMDの実施例(A)と従来例(B)
を示す図である。
【図8】本発明の光学装置(A)と従来装置(B)の作
用説明用の図である。
【図9】図8と同様の図で、他の作用説明用の図であ
る。
【図10】HMDの要求仕様を説明するための図であ
る。
【図11】要求仕様を同じくする従来の光学装置の1例
を示す図である。
【図12】本発明の光学装置の実施例を示す図である。
【図13】図12の実施例の光学装置を用いたHMDを
示す図である。
【図14】本発明の光学系の作用を説明するための模式
図である。
【図15】本発明の光学系の作用を説明するためのもう
1つの模式図である。
【図16】本発明の実施の形態を示すと共に、座標
(A)と回転(B)の定義を説明するための図である。
【図17】本発明の実施の形態を示す図である。
【図18】本発明の実施の形態を示すと共に、座標
(A)と回転(B)の定義を説明するための図である。
【図19】従来のレンズ系のみによる光学装置の1例を
示す図である。
【図20】偏光選択半透鏡を説明するための図である。
【図21】金属製ワイヤーグレーティングを示す図であ
る。
【図22】フォトリソグラフィーによって作製される偏
光選択半透鏡を示す図である。
【図23】本発明の実施の形態を示すと共に、座標
(A)の定義を説明するための図である。
【図24】ファラデー回転素子を説明するための図であ
る。
【図25】本発明の光学装置を用いたHMDの実施の形
態を示す図である。
【図26】本発明の実施の形態を示すと共に、座標
(A)と回転(B)の定義を説明するための図である。
【図27】図26の要部の作用を説明する図である。
【図28】本発明の光学装置の実施の形態を示す図であ
る。
【図29】従来のHMDの1例を示す図である。
【図30】従来のHMDの他の例を示す図である。
【図31】図30の使用状態を示す図である。
【図32】従来のHMDの他の例を示す図である。
【図33】従来のHMDの他の例を示す図である。
【符号の説明】
1a〜t,101a,101´f,101´´f…屈折
素子,レンズ、2,2a〜t,2´g,2´h,102
a〜f…半透鏡、3a〜n,3´k…円偏光選択半透
鏡、4,4a〜n,104f…偏光板、5,5c〜s,
5´i〜s…1/4波長板、6,6a〜t,6´,10
6f…コレステリック液晶、7,7b…ガラス基板、8
c〜n,108a…バックライト、9c〜n,109a
〜f…液晶パネル、10,10d〜n,110…メガネ
型のケース、12…コレステリック液晶のコーティン
グ、30d…光学装置、40…ワイヤー、50…ガラス
基盤、51…金属細線、60k〜s…ファラデー素子、
71…鉛ガラス、119c…平面反射鏡、120b〜c
…凹面鏡、E…目、P…鑑賞者,使用者、F…焦点位
置、Li,L´i…光線、IP…ペッツバール像面、R
…右回り円偏光、L…左回り円偏光。

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光線の入射側から順に、ハーフミラーコ
    ーティングを有する反射屈折素子と、円偏光選択半透鏡
    が配置されていることを特徴とする光学装置。
  2. 【請求項2】 前記円偏光選択半透鏡が光線の入射側か
    ら順に1/4波長板と、ハーフミラーと、偏光板とによ
    って構成されていることを特徴とする請求項1記載の光
    学装置。
  3. 【請求項3】 前記円偏光選択半透鏡がコレステリック
    液晶によって構成されていることを特徴とする請求項1
    記載の光学装置。
  4. 【請求項4】 前記反射屈折素子との間に前記コレステ
    リック液晶を挟むためのガラス基板が配置されているこ
    とを特徴とする請求項3記載の光学装置。
  5. 【請求項5】 液晶ディスプレイ用のバックライトと、
    液晶ディスプレイと、1/4の波長板と、液晶ディスプ
    レイの映像を拡大するための請求項1ないしのいずれ
    かに記載の光学装置とからなる画像表示装置を備えたこ
    とを特徴とする頭部塔載型ディスプレイ。
  6. 【請求項6】 光線の入射側から順に、第1の偏光板
    と、第1の半透鏡と、第1の1/4波長板と、第2の半
    透鏡と、第2の1/4波長板と、第2の偏光板が配置さ
    れ、かつ前記第1の半透鏡及び前記第2の半透鏡との間
    に屈折素子が配置されていることを特徴とする光学装
    置。
  7. 【請求項7】 光線の入射側から順に、偏光選択半透鏡
    と、第1の1/4波長板と、半透鏡と、第2の1/4波
    長板と偏光板が配置され、かつ前記偏光選択半透鏡と前
    記半透鏡との間に屈折素子が配置されていることを特徴
    とする光学装置。
  8. 【請求項8】 光線の入射側から順に、第1の偏光選択
    半透鏡と、偏光方向回転手段と、第2の偏光選択半透鏡
    が配置され、かつ前記第1の偏光選択半透鏡と、前記第
    2の偏光選択半透鏡との間に屈折素子が配置されている
    ことを特徴とする光学装置。
  9. 【請求項9】 前記半透鏡および/または偏光選択半透
    よりなる2枚の半透鏡の一方または両方が曲面である
    ことを特徴とする請求項ないしのいずれかに記載の
    光学装置。
  10. 【請求項10】 光線の入射側から順に、コレステリッ
    ク液晶の薄膜が表面上に形成された凹面鏡と、第1の1
    /4波長板と、ファラデー素子と、第2の1/4波長板
    と、コレステリック液晶が配置されていることを特徴と
    する光学装置。
  11. 【請求項11】 光線の入射側から順に、入射側の凸面
    にコレステリック液晶の薄膜が形成された平凸レンズ
    と、該平凸レンズの平面に隣接する第1の1/4波長板
    と、ファラデー素子と、第2の1/4波長板と、コレス
    テリック液晶が配置されていることを特徴とする光学装
    置。
  12. 【請求項12】 液晶ディスプレイ用のバックライト
    と、液晶ディスプレイと、液晶ディスプレイの映像を拡
    大するための請求項ないし11のいずれかに記載の光
    学装置とからなる画像表示装置を備えたことを特徴とす
    る頭部塔載型ディスプレイ。
  13. 【請求項13】 前記画像表示装置を対にして備えたこ
    とを特徴とする請求項又は12記載の頭部塔載型ディ
    スプレイ。
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