〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る虚像表示装置について説明する。
〔A.導光板及び虚像表示装置の構造〕
図1(A)に示す本実施形態に係る虚像表示装置100は、ヘッドマウントディスプレイに適用されるものであり、画像形成装置10と、導光板20とを一組として備える。なお、図1(A)は、図1(B)に示す導光板20のA−A断面に対応する。
虚像表示装置100は、観察者に虚像による画像光を認識させるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させるものである。画像形成装置10と導光板20とは、通常観察者の右眼および左眼に対応して一組ずつ設けられるが、右眼用と左眼用とでは左右対称であるので、ここでは右眼用のみを示し、左眼用については図示を省略している。なお、虚像表示装置100は、全体としては、例えば一般の眼鏡のような外観(不図示)を有するものとなっている。
画像形成装置10は、画像表示素子である液晶デバイス11と、光束形成用のコリメートレンズ12とを備える。液晶デバイス11は、光源(不図示)からの照明光を空間的に変調して、動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。コリメートレンズ12は、液晶デバイス11上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にする。なお、コリメートレンズ12のレンズ材料は、ガラスやプラスチックのいずれとすることもできる。
図1(A)〜1(C)に示すように、本実施形態に係る導光板20は、導光板本体部20aと、入射光折曲部21と、画像取出部である角度変換部23とを備える。導光板20は、画像形成装置10で形成された画像光を虚像光として観察者の眼EYに向けて射出し、画像として認識させるものである。
導光板20の全体的な外観は、図中YZ面に平行に延びる平板である導光板本体部20aによって形成されている。また、導光板20は、長手方向の一端において導光板本体部20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部23を有し、長手方向の他端において導光板本体部20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する入射光折曲部21を有する構造となっている。
導光板本体部20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、YZ面に平行で画像形成装置10に対向する表側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射部である光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出部である光射出面OSとを有している。導光板本体部20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層21aが形成されている。ここで、ミラー層21aは、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部21として機能する。また、導光板本体部20aにおいて、光射出面OSの裏側の平面に沿って微細構造である角度変換部23が形成されている。
導光板本体部20aの光入射面ISに対向し傾斜して配置されるミラー層21aとしての入射光折曲部21は、導光板本体部20aの上記斜面RS上にアルミ蒸着等の成膜を施すことにより形成され、入射光を反射し光路を略直交方向に近い所定方向に折り曲げるための反射面として機能する。つまり、入射光折曲部21は、光入射面ISから入射し全体として−X方向に向かう画像光を、全体として+X方向に偏った+Z方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を導光板本体部20a内に確実に結合させる。
また、導光板本体部20aは、入口側の入射光折曲部21から奥側の角度変換部23にかけて、入射光折曲部21を介して内部に入射させた画像光を角度変換部23に導くための導光部22を有している。
導光部22は、平板状の導光板本体部20aの主面であり互いに対向しYZ面に対して平行に延びる2平面として、入射光折曲部21で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1の全反射面22aと第2の全反射面22bとを有している。ここでは、第1の全反射面22aが画像形成装置10から遠い裏側にあるものとし、第2の全反射面22bが画像形成装置10に近い表側にあるものとする。この場合、第2の全反射面22bは、光入射面IS及び光射出面OSと共通の面部分となっている。入射光折曲部21で反射された画像光は、まず、第2の全反射面22bに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第1の全反射面22aに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光板20の奥側即ち角度変換部23を設けた+Z側に導かれる。
導光板本体部20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部23は、導光部22の奥側(+Z側)において、第1の全反射面22aの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部23は、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部23は、画像光の角度を変換している。ここでは、角度変換部23に最初に入射する画像光が虚像光としての取出し対象であるものとする。角度変換部23の詳しい構造については、図2(A)等により後述する。
なお、導光板本体部20aに用いる透明樹脂材料の屈折率nは、1.5以上の高屈折率材料であるものとする。導光板20に比較的屈折率の高い透明樹脂材料を用いることで、導光板20内部で画像光を導光させやすくなり、かつ、導光板20内部での画像光の画角を比較的小さくすることができる。
導光板20が以上のような構造を有することから、画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光板20に入射した画像光は、入射光折曲部21で一様に反射されて折り曲げられ、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて繰り返し全反射されて光軸OAに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部23において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
〔B.画像光の光路〕
以下、画像光の光路について詳しく説明する。図1(A)に示すように、液晶デバイス11の射出面11a上からそれぞれ射出される画像光のうち図中点線で示す射出面11aの中央部分から射出される成分を画像光GL1とし、図中一点鎖線で示す射出面11aの周辺のうち紙面右側(−Z側)から射出される成分を画像光GL2とし、図中二点鎖線で示す射出面11aの周辺のうち紙面左側(+Z側)から射出される成分を画像光GL3とする。なお、図中、導光板20のZ方向について、画像光の入射する光入射面ISを有するプリズムPSが配置されている側(図1(A)の右側)を光入射側と呼び、プリズムPSが配置されていない側(図1(A)の左側)を反光入射側と呼ぶものとする。
コリメートレンズ12を経た各画像光GL1,GL2,GL3の主要成分は、導光板20の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL1,GL2,GL3のうち、液晶デバイス11の射出面11aの中央部分から射出された画像光GL1は、平行光束として入射光折曲部21で反射された後、標準反射角γ0で導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。その後、画像光GL1は、標準反射角γ0を保った状態で、第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返す。画像光GL1は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部23の中央部23kに入射する。画像光GL1は、この中央部23kにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから光射出面OSを含むYZ面に対して垂直な光束光軸である光軸AX方向に平行光束として射出される。液晶デバイス11の射出面11aの一端側(−Z側)から射出された画像光GL2は、コリメートレンズ12において画像光GL1とクロスして平行光束として光入射面ISの+Z側に入射し入射光折曲部21で反射された後、最大反射角γ+で導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL2は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部23のうち奥側(+Z側)の周辺部23hにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、入射光折曲部21側に戻されるようなものになっており、+Z軸に対して鈍角となる。液晶デバイス11の射出面11aの他端側(+Z側)から射出された画像光GL3は、コリメートレンズ12において画像光GL1とクロスして平行光束として光入射面ISの−Z側に入射し入射光折曲部21で反射された後、最小反射角γ-で導光部22の第2の全反射面22bに入射し、全反射される。画像光GL3は、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部23のうち入口側(−Z側)の周辺部23mにおいて所定の角度で反射され、光射出面OSから所定の角度方向に向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、入射光折曲部21側から離れるようなものになっており、+Z軸に対して鋭角となる。なお、第1及び第2の全反射面22a,22bでの全反射による光の反射効率は非常に高いものであるため、上記のように画像光GL1,GL2,GL3間で反射回数が異なっていても、これによって輝度ムラが生じることは殆どなく、視認上画像ムラ等の影響を感じることはない。また、画像光GL1,GL2,GL3は、画像光の光束全体の一部を代表して説明したものであるが、他の画像光を構成する光束成分についても画像光GL1等と同様に導かれ光射出面OSから射出されるため、これらについては図示及び説明を省略している。
ここで、画像光GL2の反射角γ+はこの導光板20仕様上の最大値になっており、画像光GL3の反射角γ-はこの導光板20仕様上の最小値になっている。よって、他の有効な画像光の導光板20内における伝搬の全反射角は、これらの反射角γ+,γ-の間の値となる。このような反射角の範囲即ち最大反射角γ+と最小反射角γ-との差は、画像形成装置10側における光学設計上の横画角即ちZ方向についての画角に相当するものとなっている。なお、画像光GL2,GL3は、光射出面OSを通過する際に、多少屈折作用を受けるが、光入射面ISを通過する際に逆の屈折作用を受けているので、導光板20の前後において、全体としての屈折作用による影響は、略相殺されている。
入射光折曲部21及び導光部22に用いられる透明樹脂材料の屈折率nの値の一例として、n=1.5とすると、その臨界角γcの値はγc≒41.8°となり、n=1.6とすると、その臨界角γcの値はγc≒38.7°となる。各画像光GL1,GL2,GL3の反射角γ0,γ+,γ-のうち最小である反射角γ-を上記臨界角γcよりも大きな値とすることで、必要な画像光について導光部22内における全反射条件を満たすものにできる。
〔C.角度変換部の構造及び角度変換部による光路の折曲げ〕
以下、図2(A)等により、角度変換部23の構造及び角度変換部23による画像光の光路の折曲げについて詳細に説明する。
まず、角度変換部23の構造について説明する。角度変換部23は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット23cで構成される。つまり、図2(A)〜2(C)に示すように、角度変換部23は、Y方向に延びる細長い反射ユニット23cを所定のピッチPTで導光部22の延びる方向即ちZ方向に多数配列させることで構成されている。ここで、これらの反射ユニット23cが配列される方向即ちZ方向を配列方向とする。各反射ユニット23cは、奥側即ち反光入射側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面23aと、入口側即ち光入射側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面23bとを1組のものとして有する。これらのうち、少なくとも第2の反射面23bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。また、各反射ユニット23cは、隣接する第1及び第2の反射面23a,23bにより、XZ断面視においてV字又は楔状となっている。より具体的には、第1及び第2の反射面23a,23bは、図1(A)等に示す第1の全反射面22aに平行で反射ユニット23cの配列される配列方向であるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向を長手方向として、線状に延びている。さらに、第1及び第2の反射面23a,23bは、当該長手方向を軸として、第1の全反射面22aに対してそれぞれ異なる角度(即ちYZ面に対してそれぞれ異なる角度)で傾斜している。結果的に、第1の反射面23aは、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延び、第2の反射面23bも、周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。図2(A)等に示す具体例において、各第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直な方向(X方向)に沿って延びているものとしている。また、各第2の反射面23bは、対応する第1の反射面23aに対して反時計方向に所定角度(相対角度)αをなす方向に延びている。ここで、相対角度αは、具体例において例えば54.7°となっているものとする。
図2(A)等に示す具体例において、第1の反射面23aは、第1の全反射面22aに対して略垂直であるものとしているが、第1の反射面23aの方向は、導光板20の仕様に応じて適宜調整されるものであり、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば80°から100°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。また、第2の反射面23bの方向は、第1の全反射面22aに対して−Z方向を基準として時計回りに例えば30°から40°までの範囲内でいずれかの傾斜角度をなすものとできる。結果的に、第2の反射面23bは、第1の反射面23aに対して40°から70°までの範囲内でいずれかの相対角度を有するものとなる。
以下、角度変換部23による画像光の光路の折曲げについて詳しく説明する。ここでは、画像光のうち、角度変換部23の両端側に入射する画像光GL2及び画像光GL3について示し、他の光路については、これらと同様であるので図示等を省略する。
まず、図2(A)及び2(B)に示すように、画像光のうち全反射角度の最も大きい反射角γ+で導かれた画像光GL2は、角度変換部23のうち光入射面IS(図1(A)参照)から最も遠い+Z側の周辺部23hに1つ以上配置された反射ユニット23cに入射する。当該反射ユニット23cにおいて、画像光GL2は、最初に奥側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、入口側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL2は、他の反射ユニット23cを経ることなく、図1(A)等に示す光射出面OSから射出される。つまり、画像光GL2は、角度変換部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
また、図2(A)及び2(C)に示すように、全反射角度の最も小さい反射角γ-で導かれた画像光GL3は、角度変換部23のうち光入射面IS(図1(A)参照)に最も近い−Z側の周辺部23mに1つ以上配置された反射ユニット23cに入射する。当該反射ユニット23cにおいて、画像光GL3は、画像光GL2の場合と同様に、最初に奥側即ち+Z側の第1の反射面23aで反射され、次に、入口側即ち−Z側の第2の反射面23bで反射される。当該反射ユニット23cを経た画像光GL3は、他の反射ユニット23cを経ることなく、角度変換部23での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
ここで、上記のような第1及び第2の反射面23a,23bでの2段階での反射の場合、図2に示すように、各画像光の入射時の方向と射出時の方向とのなす角である折り曲げ角ψは、いずれもψ=2(R−α)(R:直角)となる。つまり、折り曲げ角ψは、角度変換部23に対する入射角度即ち各画像光の全反射角度である反射角γ0,γ+,γ-等の値によらず一定である。これにより、上記のように、画像光のうち全反射角度の比較的大きい成分を角度変換部23のうち+Z側の周辺部23h側に入射させ、全反射角度の比較的小さい成分を角度変換部23のうち−Z側の周辺部23m側に入射させた場合にも、画像光を全体として観察者の眼EYに集めるような角度状態で効率的に取り出すことが可能となる。このような角度関係で画像光を取り出す構成であるため、導光板20は、画像光を角度変換部23において複数回通過させず、1回だけ通過させることができ、画像光を少ない損失で虚像光として取り出すことを可能にする。
また、導光部22の形状や屈折率、角度変換部23を構成する反射ユニット23cの形状等の光学的な設計において、画像光GL2,GL3等が導かれる角度等を適宜調整することで、光射出面OSから射出される画像光を、基本の画像光GL1即ち光軸AXを中心として、全体として対称性が保たれた状態の虚像光として観察者の眼EYに入射させることができる。ここでは、一端の画像光GL2のX方向又は光軸AXに対する角度θ2と、他端の画像光GL3のX方向又は光軸AXに対する角度θ3とは、大きさが略等しく逆向きとなっているものとする。つまり、画像光は、光軸AXを中心にして対称性のある状態で眼EYに対して射出されている。ここで、上記のように、角度変換部23における折り曲げ角ψの角度は、全ての画像光について等しい。このため、角度変換部23は、画像光GL2の角度θ2と画像光GL3のθ3とを合わせた角度の大きさ即ち眼EYに入る画像光の横画角の大きさに影響を与えず、最大反射角γ+と最小反射角γ-との差即ち図1(A)の画像形成装置10側で光学的設計上定められる画像光の横画角が、そのまま光射出面OSから射出される角度θ2と角度θ3とによる画像光の横画角として反映されるものとなる。
なお、既に説明したように、一群の反射ユニット23cを構成する第1の反射面23a又は第2の反射面23bは、ピッチが一定で互いに平行になっている。これにより、観察者の眼EYに入射する虚像光である画像光を一様なものとでき、観察される画像の品質の低下を抑えることができる。角度変換部23を構成する各反射ユニット23cの間隔であるピッチPTの具体的な数値範囲は、0.2mm以上、より好ましくは0.2mm〜1.3mmとする。この範囲にあることにより、取り出されるべき画像光が、角度変換部23において回折による影響を受けることなく、かつ、反射ユニット23cによる格子縞が観察者にとって目立つものとならないようにすることができる。
〔D.角度変換部の光学的仕様〕
以下、図3(A)により、角度変換部23の光学的仕様、具体的には、反射ユニット23cの配列方向についての角度変換部23の具体的な反射ユニット23c全体の幅である変換部幅Lとこれに関連する数値との関係について、詳しく説明する。
まず、既述のように、図1(A)等に示す最大反射角γ
+と最小反射角γ
-との差が、画像形成装置10から射出される画像光のZ方向についての横画角(即ち、反射ユニット23cの配列方向であるZ方向に関する画角である横画角)に相当する。この結果として、画像光は、角度θ
2と角度θ
3との和を最大角度として射出されるものとなっている。ここでは、角度θ
2と角度θ
3との角度が等しく、光軸AXに対して対称性があるとすることで、角度θ
2及び角度θ
3を、横画角の半分の値である横半画角となる。つまり、角度θ
2、角度θ
3が横半画角θにそれぞれ相当し、θ
2=θ
3=θとなる。また、横画角は、2θとなる。この場合において、図3(A)に示すように、角度変換部23の裏面である反光射出面ASから観察者の眼EYのうち導光板20に最も近い点である頂点PKまでのX方向についての距離を距離Sとすると、角度変換部23の変換部幅Lを定めるにあたって、まず、横半画角θの画像を確保するために距離Sとの関係で必須の基本横幅である基準横幅L
0は、
で表される。ここで、観察者の眼EYの瞳PUの大きさ即ち虹彩の大きさは、Z方向についてある程度の幅を有する。ここでは、人種等による違いを考慮して、瞳PUのZ方向の大きさについては、最大の幅A
maxをとるものとする。また、眼EYは、矢印ARに示すように動く結果、最大限で図3(B)や図3(C)に示す状態となり得る。従って、角度変換部23が実際に有する変換部幅Lは、上記基準横幅L
0に対して、幅A
maxと、瞳PUの動く量即ち眼EYの動き量の最大値Bm,Bhの合計である幅B
maxとを加算したものとする。つまり、これらの幅A
max,B
maxによる影響分だけ加味するように必須の幅である基準横幅L
0を増加させた値を角度変換部23の具体的な変換部幅Lとする。従って、変換部幅Lは、
で表される。この場合、角度変換部23は、幅Lについて、基準横幅L
0を確保することで、画像を確実に取り込むのに最低限必要な幅を有する状態即ちZ方向について光軸AXに垂直な方向から観た画像に実質的な画像欠けのない状態にできる。さらに、瞳PUの大きさや動きについて最大値である幅A
max,B
maxを加算することで、眼EYのサイズ等に個人差があっても実質的な画像欠けや減光を生じさせないものにできる。一方、幅Lに余剰な長さを持たせず必要最小限とすることで、角度変換部23において意図しない画像光の角度変換を回避し明るさムラ等の発生による画像の劣化を防ぐことができるものとなっている。なお、この場合、画像光の有効成分が角度変換部23において1回だけ反射するという条件も確保している。
なお、上記(2)式では、瞳PUの大きさ及び眼EYの動き量の最大値に基づいて幅Lを規定しているが、角度変換部23において画像を取り込むのに実質的な画像欠けを生じることのないように十分な幅を確保できれば、変換部幅Lの値は、(2)式の右辺の値以下であってもよい。例えば、最大である幅Amaxに代えて瞳PUの大きさを例えば一般成人の標準的な虹彩の大きさ(標準値)とすることも可能である。
また、変換部幅Lに許容される範囲については、例えばZ方向についての瞳PUの大きさの標準値を幅Aとし、これを基準横幅L
0に加え、1以上2以下の値を取る係数kを掛け合わせた値を用いて規定することが考えられる。具体的には、幅Lが、幅A、基準横幅L
0及び係数kにより、
で表される。この場合、係数kを1以上2以下の範囲で適宜定めることにより、例えば図中点線で示す眼EYの動き量即ち瞳PUが動く量を加味して幅Lを規定することができ、観察者の眼EYの瞳PUが動く場合にも実質的な画像欠けを生じさせることなく画像を問題なく視認できるようにできる。また、観察者の眼EYが特殊である場合にも対処することができる。さらに、虚像表示装置100の装着状態が多少ずれた場合にも対処することができる。なお、ここで、上式中辺又は右辺のカッコ内に示す値、つまり基準横幅L
0に幅Aを加算した値を、基準横幅L
0を修正した瞳影響分修正横幅とすると、幅Lは、観察者の瞳PUの大きさ及び眼EYの動きのうち少なくとも瞳PUの大きさの影響分だけ増加させた瞳影響分修正横幅の2倍以下の範囲にあることになる。なお、より確実にマージンを確保する観点からは、眼EYの標準的な動き量をBとして、
とすることが望ましい。
ここで、上記(2)式の条件を満たす変換部幅Lは、上記(3)式の条件を満たすものと考えることができる。つまり、(3)式は、(2)式よりも条件の幅が広い。(2)式の右辺におけるAmaxは最大値であり、標準値である(3)式の右辺におけるAの値よりも大きいため、係数kが最小の1である場合、(3)式の右辺の値は(2)式の右辺の値より小さい。しかし、(3)式において、係数kを最大の2とすれば、(2)式のAmax+Bmaxの値を考慮しても、(3)式の右辺の値は(2)式の右辺の値以上となる。つまり、(3)式の右辺と(2)式の右辺とが等しくなるような係数kが1以上2以下の範囲で存在し、(2)式の条件は(3)式の条件に含まれると言える。また、k=1、A=0とすれば、(3)式は、(1)式の右辺も含んでいることになる。
以上のように、本実施形態の場合、角度変換部23において、横画角や瞳の大きさ等を考慮して、反射ユニット23cの配列方向についての角度変換部23の幅Lに関して眼EYに画像を取り込むために必要な条件を確保しつつ上限サイズを設けることで、角度変換部23における画像光の過度の光量ロスを抑制して、明るさムラ等の発生による画像の劣化を防ぎ、良好な状態で画像光を取り出すことができるものとなっている。
なお、瞳の大きさの最大値は7mm程度、眼の動き量の最大値は、4mm程度が想定される。この値を考慮して上記のように幅Amax,Bmax延いては幅Lを定めることで、観察者に個人差があっても実質的な画像欠けや減光が生じないようにできる。
また、上記において、横半画角θの値を、例えばθ=17.5°とする、つまり横画角を35°とすることで、例えば、虚像光である画像光によって仮想的に2.5m先に62インチの画像IMを形成するのに相当する画像を視認させることができる。この場合、角度変換部23の幅Lは、20mm程度となる。また、角度変換部23の幅Lを20mm以上とすることで、横半画角θ=17.5°以上の高画角な画像を形成することもできる。
また、上記実施形態について、別の観点として、角度変換部23の反射ユニット23cの配列方向についての幅のうち、導光板20内において光軸AXより光入射側即ち−Z側のみに着目して角度変換部23の光学的仕様を考えることもできる。つまり、図中角度変換部23のうち光軸AXより−Z側の幅Lmが満たすべき条件のみを考えてもよい。
以下、上記の場合について考察する。まず、上記のように光軸AXについての対称性がある場合、幅Lmは、全体の幅Lの最大幅の半分以下であればよい。つまり、例えば、上記のうち(2)式の右辺を参照して、
の関係が満たされていればよいものとできる。この関係が満たされていれば、少なくとも導光板20の光入射側から導かれた画像光が角度変換部23のうち光入射側の部分即ち入口側の周辺部23m付近で不要な通過をすることを回避でき、画像光の過度の光量ロスを抑制できるので、明るさムラ等の発生を防止できる。
また、上記のような各条件を満たしながら、角度変換部23をより長いもの即ちより横幅の広いものとする場合、角度変換部23の反光入射側即ち+Z側に延長することができる。なお、このような場合であっても、角度変換部23において画像光を1回だけの反射に留めることを確保する等の構造上必要な他の要件を満たす範囲での延長であることが要される。
また、上記の幅Lmについて、瞳PUの大きさや眼EYの動き量については、十分なマージンを取る必要がある場合、全体の幅Lに対して半分とせず、最大値をそのまま採用してもよい。つまり、上記(4)式の右辺についての瞳PUの大きさや眼EYの動き量に関する値を取り替えて、幅Lmの条件を
としてもよい。
〔第2実施形態〕
以下、図4(A)等により、第2実施形態の虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態の虚像表示装置100の変形例であり、角度変換部123及びその周辺についてのみ示し、他の構造については、説明及び図示を省略する。また、第1実施形態の虚像表示装置100と同符号のものについては、特に説明しない限り同様の機能を有するものとする。
以下、本実施形態に係る虚像表示装置200を構成する角度変換部123の詳しい構造について説明する。図4(A)等に示すように、角度変換部123は、多数の画像光反射面123aで構成され、各画像光反射面123aは、画像光反射面123aの配列されるZ方向に対して垂直に延びる方向即ちY方向に延びている。多数の画像光反射面123aは、互いに平行であり、第1の全反射面22aに対して同一の角度をそれぞれなし画像光の光成分の一部を透過させ、残りを反射させる部分反射面となっている。なお、各画像光反射面123a間は、画像光を取り出すための反射面等としての機能を有しない境界部123bによって繋がれている。結果的に、画像光反射面123aは、Z方向に沿って周期的に繰り返して配列され互いに平行に延びている。
以下、図4(A)及び4(B)により、画像光の各成分のうち、角度変換部123の両端側に入射する画像光GLa及び画像光GLbについて説明する。なお、他の光路の成分については、これらと同様であるので図示等を省略する。前提として、画像光GLa,GLbを含む画像光は、図1(A)、1(B)等に示す導光板20に光入射面ISから入射し、入射光折曲部21で反射され、全体として、導光部22において+X方向に偏った+Z方向に進み、導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射を繰り返して導光されて、角度変換部123に到る。まず、図4(A)に示すように、最小反射角γ-で導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GLaは、角度変換部123をN回(Nは1より大きい自然数)通過した後、観察者の眼EYに入射できる位置である角度変換部123のうち奥側(+Z側)の周辺部23hに達し、周辺部23hでの反射により、眼EYの中心軸AXに対して角度θ2で光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、+Z軸に対して鈍角となる。
一方、図4(B)に示すように、最大反射角γ+で導光部22の第1及び第2の全反射面22a,22bで全反射される画像光GLbは、観察者の眼EYに入射できる位置である角度変換部123のうち入口側(−Z側)の周辺部23mに達し、周辺部23mでの反射により、眼EYの中心軸AXに対して角度θ3で光射出面OSから眼EYに向けて平行光束として射出される。この際の射出角は、+Z軸に対して鋭角となる。
ここで、画像光GL2の角度θ2と画像光GL3のθ3とを合わせた角度の大きさ即ち眼EYに入る画像光の角度の大きさについては、最大反射角γ+と最小反射角γ-との差に相当するものとなる。また、ここでは、角度θ2と角度θ3との角度が等しく、光軸AXに対して対称性があり、角度θ2、角度θ3がそれぞれ横半画角に相当するものとする。
ここで、本実施形態においても、第1実施形態の場合と同様に、角度変換部123が横幅つまり画像光反射面123aの配列方向であるZ方向に関しての変換部幅Lについて一定の条件を満たすものとなっている。例えば、幅Lは、横半画角θを確保するために距離Sとの関係で必須の幅である基準横幅L
0と、瞳PUのZ方向についての大きさの最大値である幅A
maxと、眼EYの動き量の合計を幅B
maxとの関係において、上記(2)式や(3)式、あるいは(3)'式の
を満たしている。または、角度変換部123のうち光軸AXから光入射側についての幅Lmが、例えば上記(4)式や(5)式の
を満たしている。これにより、画像を取り込むのに十分な幅を有して実質的な画像欠けや減光を抑制することが可能となる。また、明るさムラ等の発生による画像の劣化を防ぐことも可能となる。
また、本実施形態の場合、画像光GLaは、角度変換部123を複数回透過した後の残りの成分のうち周辺部23hにおいて反射された成分が光射出面OSから射出される。これに対して、画像光GLbは、角度変換部123を複数回透過することなく、角度変換部123の周辺部23mにおいて反射された成分が光射出面OSから射出される。従って、角度変換部123において光の反射・透過量の精密な調整等を行うことで、映し出される虚像光が、入口側(−Z側)から奥側(+Z側)に向かって通過回数に応じて相対的に暗くなっていくことや明るさムラを生じることを抑制する必要があり、角度変換部123の光入射側即ち入口側(−Z側)の周辺部23mにおいて、画像光の通過回数を規定以上に増加させないことが特に重要となる。このため、角度変換部123について、その周辺部23m側の端であるエッジEGの位置を、画像光GLa,GLb等の設計に応じてずれることなく設定し、意図しない画像光の通過を生じさせないようにしている。もしも、図4(A)、4(B)中において点線で示すように、エッジEGの位置が本来あるべき位置よりも−Z側にずれて余剰の角度変換部分EPが意図しない位置に存在した状態となっていると仮定すると、その余剰の角度変換部分EPを画像光GLa,GLbが通過して、意図しない光量ロスを生じて明るさムラ等を発生させる可能性がある。
本実施形態の場合、以上のような角度変換部123の横幅についての条件を満たすことや、角度変換部123のエッジEGの位置が調整されることにより、画像光の通過回数を増加させないようにすることができ、画像光の過度の光量ロスを抑制して、明るさムラ等の発生による画像の劣化を防ぎ、良好な状態で画像光を取り出すことができる。なお、本実施形態においても、角度変換部123をより長いもの即ちより横幅の広いものとする場合、角度変換部123の反光入射側即ち+Z側に延長することができる。また、本実施形態の場合、第1実施形態と異なり、各画像光が角度変換部23において1回だけ反射する、といった条件は課されないが、一般に反光入射側ほど光量ロスが多くなり、暗くなりやすいため、画像として許容される範囲の光量を有する限りにおいて反光入射側への延長ができる。
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
また、角度変換部23を構成する反射ユニット23cの配列のピッチPTについては、各第1の反射面23a間において全て同一となっている場合に限らず、各ピッチPTにある程度の差異がある場合も含むものとする。
上記の説明では、画像表示素子として、透過型の液晶デバイス11を用いているが、画像表示素子としては、透過型の液晶デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶パネルを用いた構成も可能であり、液晶デバイス11に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。また、LEDアレイやOLED(有機EL)などに代表される自発光型素子用いた構成も可能である。さらに、レーザー光源とポリゴンミラーその他のスキャナーとを組みあわせたレーザースキャナーを用いた構成も可能である。
上記の説明では、虚像表示装置100は、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ画像形成装置10及び導光板20設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ画像形成装置10と導光板20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
上記の説明では、シースルー型の虚像表示装置について説明しているが、角度変換部23は、シースルー型以外の虚像表示装置についても適用可能である。なお、外界像を観察させる必要がない場合、第1及び第2の反射面23a,23b双方の光反射率を略100%することが可能である。
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1の全反射面22aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2の全反射面22bと同一の平面上に配置する構成とすることもできる。
上記の説明では、入射光折曲部21を構成するミラー層21aや斜面RSの傾斜角度について特に触れていないが、本発明は、ミラー層21a等を光軸OAに対して用途の他の仕様に応じて様々な値とすることができる。
上記の説明では、反射ユニット23cによるV字状の溝は、先端を尖った状態で図示しているが、V字状の溝の形状については、これに限らず、先端を平らにカットしているものや先端にR(丸み)を付けているものであってもよい。
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
上記の説明では、第1及び第2の全反射面22a,22bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2の全反射面22a,22b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、全反射面22a,22bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって全反射面22a,22bの全体又は一部がコートされていてもよい。