JP3261520B2 - 積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト組成物およびこれを用いた積層セラミックコンデンサ - Google Patents

積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト組成物およびこれを用いた積層セラミックコンデンサ

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JP3261520B2 JP20693196A JP20693196A JP3261520B2 JP 3261520 B2 JP3261520 B2 JP 3261520B2 JP 20693196 A JP20693196 A JP 20693196A JP 20693196 A JP20693196 A JP 20693196A JP 3261520 B2 JP3261520 B2 JP 3261520B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、誘電体セラミック
と内部電極が交互に積層された構造を有する積層セラミ
ックコンデンサの内部電極用ペースト組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサは、同体積の
別種コンデンサに比べて、大容量を得ることができるの
で、種々の電子機器に使用されている。この積層セラミ
ックコンデンサは、通常以下のようにして作成される。
積層セラミックコンデンサの内部電極用ペースト組成物
を誘電体セラミックのグリーンシート上に印刷し、乾燥
する。その後、この誘電体グリーンシートを、内部電極
の部分がコンデンサの構造となるように交互に積層し、
チップ型に切断し、脱バインダ工程を経て、焼成する。
【0003】乾燥工程では、内部電極用ペースト組成物
の成分のうちターピネオールが飛散し、脱バインダー工
程では、内部電極用ペースト組成物の樹脂成分と誘電体
グリーンシート中の樹脂成分とが飛散する。焼成工程に
おいては、誘電体粉末および金属粉末が焼結され、誘電
体層および内部電極層が形成される。焼結において、誘
電体粉末と金属粉末の膨張収縮挙動に差があると、焼成
工程中のチップに構造欠陥が生じる場合がある。従っ
て、膨張収縮挙動を調整するため、一般的にペースト組
成物中に調整剤が添加される。
【0004】従来は、内部電極用ペースト組成物の膨張
収縮挙動の調整剤として、誘電体グリーンシート内の誘
電体セラミック粉末が使用されてきた。しかしながら、
内部電極用ペースト組成物の膨張収縮挙動を調整するた
めに誘電体セラミック粉末を調整剤として使用した場
合、内部電極層を形成する前の段階であるペースト組成
物の乾燥時に、内部電極層形成部分内において金属粉末
の局部的不均一が生じ、これに伴って焼結開始にも局部
的に時間的なズレが生じる。さらに、内部電極用ペース
ト組成物の乾燥時に、金属成分の密度も低下するため、
内部電極層に不連続部分(途切れ)が生じやすくなる。
このため、静電容量が得られず、積層セラミックコンデ
ンサの特性に致命的な悪影響を及ぼす場合がある。そこ
で内部電極層の途切れをおこすこと無く膨張収縮挙動の
調整可能なペースト組成物が要請されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
の欠点を解消し、膨張収縮挙動の調整可能な積層セラミ
ックコンデンサの内部電極用ペースト組成物を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明の積層セラミックコンデンサ用内部電極用ペ
ースト組成物は、Ni粉末、樹脂、ターピネオールから
なり、膨張収縮挙動が異なるNi粉が少なくとも2種類
混合されている。
【0007】具体的には、Ni粉末の少なくとも1種類
が球状で、平均粒径が0.4〜0.6μm、タップ密度
が3.4〜4.3g/cc、比表面積が1.4〜1.8
2/gで、Ni粉末の少なくとも他の1種類が不定形
で、平均粒径が0.2〜0.6μm、タップ密度が2.
4〜4.1g/cc、比表面積が3.2〜4.6m2
gであることが好ましい。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の積層セラミックコンデン
サ用内部電極用ペースト組成物では、膨張収縮挙動を調
整するために、膨張収縮挙動に差のある少なくとも2種
類のNi粉末を混合するので、Ni粉末の混合比率を調
整するだけで適当な膨張収縮挙動に制御できる。このた
め、調整剤を使用しなくてすむし、ペースト乾燥中に内
部電極形成部において金属粉末の不均一が起こらず、金
属成分の存在する密度を低下させることも無く、積層セ
ラミックコンデンサの特性に悪影響を及ぼすことが無
い。以上のことから、本発明の内部電極用ペーストを使
用することによって、積層セラミックコンデンサの特性
に悪影響をおよぼすことなく、誘電体セラミック粉末と
金属粉末の膨張収縮特性差による構造欠陥を防止するこ
とができる。
【0009】本発明において、好ましいNi粉の形態で
は、Ni粉末の少なくとも1種類を球状、平均粒径0.
4〜0.6μm、タップ密度3.4〜4.3g/cc、
比表面積が1.4〜1.8m2 /gのものとし、他の少
なくとも一種を定形、平均粒径0.2〜0.6μm、
タップ密度2.4〜4.1g/cc、比表面積が3.2
〜4.6m2 /gとする。この条件の範囲内で所望の膨
張伸縮挙動に合致するようにNi粉の比率を調整する。
【0010】
【実施例】次に実施例を用いて本発明をさらに説明す
る。本実施例で使用したNi粉末は、SNP−700、
SNP−130、SNP−120、SNP−430、S
NP−450(いずれも住友金属鉱山株式会社製)を用
意した。それらの特性は、次の通りである。 SNP−700:球状、平均粒径0.4〜0.6μm、
タップ密度3.4〜4.3g/cc、比表面積1.4〜
1.8m2 /g。 SNP−130:不定形、平均粒径0.2〜0.4μ
m、タップ密度2.5〜4.1g/cc、比表面積3.
3〜4.6m2 /g。 SNP−120:不定形、平均粒径0.4〜0.6μ
m、タップ密度2.4〜3.4g/cc、比表面積3.
2〜4.2m2 /g。 SNP−430:不定形、平均粒径0.2〜0.4μ
m、タップ密度2.5〜4.1g/cc、比表面積3.
3〜4.6m2 /g。 SNP−450:不定形、平均粒径0.4〜0.6μ
m、タップ密度2.4〜3.4g/cc、比表面積3.
2〜4.2m2 /g。
【0011】また、膨張収縮特性のひとつである焼結に
よる収縮開始温度の測定値は、それぞれSNP−700
が786℃、SNP−120が978℃、SNP−13
0が967℃、SNP−430が973℃、SNP−4
50が982℃、誘電体粉末が896℃である。膨張収
縮特性の測定には、セイコー電子株式会社製熱機械的分
析装置TMA320を使用し、測定条件は昇温速度5℃
/分、温度範囲20℃〜1250℃、雰囲気は窒素で、
その流量は500cc/分である。また、膨張収縮特性
の測定ではNi粉末については、SNP−700はペー
スト1を、SNP−130はペースト5を、SNP−1
20はペースト25を、ポリエチレンテレフタレートフ
ィルム上にそれぞれ印刷し、120℃20時間乾燥させ
50mm×50mm×0.1mmのサイズに形成した乾
燥膜を試験片として用い、誘電体粉末についてはグリー
ンシートを同様のサイズに成形し試験片として用いた。
【0012】構造欠陥の発生の有無を確認するために
は、次の手順で焼成体サンプルを作成した。ポリブチラ
ール樹脂を含む厚み約35ミクロンの誘電体グリーンシ
ートに約20ミクロンの厚みで各ペースト組成物をスク
リーン印刷し、そのシートを80℃で1分間乾燥させ
た。その後、このシートを積層して内部電極が30層の
積層体とし、80℃、100kg/cm2 の条件で3分
間熱圧着し、3mm×5mm角に切断し、還元雰囲気炉
にて、1300℃、2時間焼成し、焼成体サンプルを作
成した。この焼成体サンプル20個を研磨し、断面を光
学顕微鏡にて観察して構造欠陥の発生割合を求めた。静
電容量の確認については、焼成体サンプルの端部にイン
ジウムガリウムを用いて簡単な外部電極を形成し、成分
容量の確保の可否を確認した。以下に実施例を示すが、
樹脂の量を増減したりターピネオールの一部を炭化水素
に置き換えても、本発明の効果は同様に得られる。
【0013】[実施例1]膨張収縮挙動に差のある2種
類のNi粉末としてSNP−700(住友金属鉱山株式
会社製)およびSNP−130(住友金属鉱山株式会社
製)を用意し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部からなる内部電極用ペース
ト組成物を作成した。具体的には、Ni粉末60部のう
ち、SNP−700:SNP−130の比率が60部:
0部、42部:18部、30部:30部、18部:42
部、0部:60部となるように5種類のペースト組成物
を作成し、それぞれ順番にペースト1〜5と試料名をつ
けた。これらのペースト組成物をチタン酸バリウムから
なる誘導体セラミックのグリーンシート上に印刷して作
成した積層セラミックコンデンサについて、構造欠陥の
有無および静電容量確保の可否を確認した結果について
表1に示す。表中の数字は20個のサンプル中に観察さ
れた構造欠陥の発生割合を示す。
【0014】表1からわかるように、2種類の粉末を混
合して使用したペースト2、ペースト3、ペースト4で
は構造欠陥は発生していないが、片方の粉末のみを使用
したペースト1およびペースト5では構造欠陥の発生が
確認された。なお、すべてのペーストにおいて、静電容
量の確保が確認できた。
【0015】このことから、単独の使用では構造欠陥の
発生する粉末でも、混合して使用することによって、積
層コンデンサの特性に悪影響を及ぼすことなく、構造欠
陥の発生を防止することが可能であることがわかる。
【0016】[実施例2]膨張収縮挙動に差のある2種
類のNi粉末としてSNP−700(住友金属鉱山株式
会社製)およびSNP−430(住友金属鉱山株式会社
製)を用意し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部からなる内部電極用ペース
ト組成物を作成した。具体的には、Ni粉末60部のう
ち、SNP−700:SNP−430の比率が実施例1
と同様になるように5種類のペースト組成物を作成し、
それぞれ順番にペースト6〜10と試料名をつけた。こ
れらのペースト組成物をチタン酸バリウムからなる誘導
体セラミックのグリーンシート上に印刷して作成した積
層セラミックコンデンサについて、構造欠陥の有無と静
電容量確保の可否を確認した結果について表2に示す。
表中の数字は20個のサンプル中に観察された構造欠陥
の発生割合を示す。
【0017】表2からわかるように、2種類の粉末を混
合して使用したペースト7、ペースト8、ペースト9で
は構造欠陥は発生していないが、片方の粉末のみを使用
したペースト6およびペースト10では構造欠陥の発生
が確認された。また、すべてのペーストにおいて、静電
容量の確保が確認できた。このことから、単独の使用で
は構造欠陥の発生する粉末でも、混合して使用すること
によって、積層コンデンサの特性に悪影響を及ぼすこと
なく、構造欠陥の発生を防止することが可能であること
が分かる。
【0018】[比較例1]実施例1〜2と同じ材料を使
用するが、Ni粉末の混合をせず、膨張収縮挙動の調整
剤として、チタン酸バリウムからなる誘電体セラミック
粉末を使用し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部という組成のうち、ターピ
ネオールの部分を調整剤で、2部、4部、6部置き換
え、SNP−700、SNP−130およびSNP−4
30についてそれぞれ3種類、合計9種類のペーストを
作成し、それぞれ順番にペースト11〜19と試料名を
つけ、比較例とした。そして、実施例1と同様な手法
で、構造欠陥発生の有無および静電容量確保の可否を確
認した結果を表3に示す。
【0019】表3から分かるように、Ni粉末を混合し
なくても、調整剤を添加すれば、その添加量に応じて構
造欠陥発生の割合は減少し、調整剤を6部添加した場合
には、構造欠陥は発生していない。しかし、調整剤を4
部以上添加した場合は、静電容量の確保が確認できない
から、調整剤の過度の添加によって積層セラミックコン
デサの特性に悪影響を及ぼしていることが分かる。
【0020】[実施例3]膨張収縮挙動に差のある2種
類のNi粉末としてSNP−700(住友金属鉱山株式
会社製)およびSNP−120(住友金属鉱山株式会社
製)を用意し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部からなる内部電極用ペース
ト組成物を作成した。具体的には、Ni粉末60部のう
ち、SNP−700:SNP−120の比率が60部:
0部、42部:18部、30部:30部、18部:42
部、0部:60部となるように5種類のペースト組成物
を作成した。これらのペースト組成物にそれぞれ順番に
ペースト21〜25と試料名をつけ、チタン酸バリウム
の誘電体セラミックのグリーンシート上に印刷して作成
した積層セラミックコンデンサの構造欠陥の有無および
静電容量確保の可否を確認した結果を表4に示す。表中
の数字は20個のサンプル中に観察された構造欠陥の発
生割合を示す。
【0021】表4からわかるように、2種類の粉末を混
合して使用したペースト22、ペースト23、ペースト
24では構造欠陥は発生していないが、片方の粉末のみ
を使用したペースト21およびペースト25では構造欠
陥の発生が確認された。また、すべてのペーストにおい
て、静電容量の確保が確認できた。このことから、単独
の使用では構造欠陥の発生する粉末でも、混合して使用
することによって、積層コンデンサの特性に悪影響を及
ぼすことなく、構造欠陥の発生を防止することが可能で
あることがわかる。
【0022】[実施例4]膨張収縮挙動に差のある2種
類のNi粉末としてSNP−700(住友金属鉱山株式
会社製)およびSNP−450(住友金属鉱山株式会社
製)を用意し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部からなる内部電極用ペース
トを作成した。具体的には、Ni粉末60部のうち、S
NP−700:SNP−450の比率が実施例4と同様
になるように5種類のペースト組成物を作成した。これ
らのペースト組成物に、それぞれ順番にペースト26〜
30と試料名をつけ、チタン酸バリウムからなる誘電体
セラミックのグリーンシート上に印刷して作成した積層
セラミックコンデンサの構造欠陥の有無と静電容量確保
の可否を前記実施例と同様に確認した結果を表5に示
す。表中の数字は20個のサンプル中に観察された構造
欠陥の発生割合を示す。
【0023】表5からわかるように、2種類の粉末を混
合して使用したペースト27、ペースト28、ペースト
29では構造欠陥は発生していないが、片方の粉末のみ
を使用したペースト26およびペースト30では構造欠
陥の発生が確認された。また、すべてのペーストにおい
て、静電容量の確保が確認できた。このことから、単独
の使用では構造欠陥の発生する粉末でも、混合して使用
することによって、積層コンデンサの特性に悪影響を及
ぼすことなく、構造欠陥の発生を防止することが可能で
あることが分かる。
【0024】[比較例2]実施例3〜4と同じ材料を使
用するが、Ni粉末の混合をせず、膨張収縮挙動の調整
剤として、チタン酸バリウムからなる誘電体セラミック
粉末を使用し、Ni粉末60部、エチルセルロース樹脂
4部、ターピネオール36部という組成のうち、ターピ
ネオールの部分を調整剤で、2部、4部、6部置き換
え、SNP−700、SNP−120およびSNP−4
50についてそれぞれ3種類、合計9種類のペーストを
作成し、それぞれ順番にペースト31〜39と試料名を
つけ、比較例とした。そして、前記実施例と同様な手法
で、構造欠陥発生の有無および静電容量確保の可否を確
認した結果を表6に示す。
【0025】表6から分かるように、Ni粉末を混合し
なくても、調整剤を添加すればその添加量に応じて構造
欠陥発生の割合は減少し、調整剤を6部添加した場合
に、構造欠陥は発生していない。しかし、調整剤を4部
以上添加した場合に、静電容量の確保が確認できないか
ら、調整剤の過度の添加によって積層セラミックコンデ
サの特性に悪影響を及ぼしていることが分かる。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】
【表4】
【0030】
【表5】
【0031】
【表6】
【0032】
【発明の効果】本発明の内部電極用ペーストは以上のよ
うに構成されているので、積層セラミックコンデンサの
特性に悪影響を及ぼすことなく、誘電体粉末と金属粉末
の膨張収縮特性差を原因とする構造欠陥を防止すること
ができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 4/00 - 4/10 H01G 4/14 - 4/42

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ni粉末、樹脂、ターピネオールからな
    る積層セラミックコンデンサ内部電極用ペースト組成物
    において、膨張収縮挙動が異なる2種類以上のNi粉末
    が混合され、Ni粉末の少なくとも1種類が球状で、平
    均粒径が0.4〜0.6μm、タップ密度が3.4〜
    4.3g/cc、比表面積が1.4〜1.8m2 /gで
    あり、Ni粉末の少なくとも1種類が不定形で、比表面
    積3.2〜4.6m2 /gであることを特徴とする積層
    セラミックコンデンサ内部電極用ペースト組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のペースト組成物を用い
    て得た積層セラミックコンデンサ。
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