JP3242483B2 - 小型船舶の船体構造 - Google Patents

小型船舶の船体構造

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Description

【発明の詳細な説明】
【０００１】
【産業上の利用分野】この発明は、船体中心線上に跨座
式運転席とその両側のフートステップとを備え、水上を
高速で滑走する小型船舶の船体構造に関するものであ
る。
【０００２】
【従来の技術】最近、船体中心線上に操作ハンドルと跨
座式運転席とその両側のフートステップとを備え、水上
を高速で滑走する小型船舶、いわゆる水上オートバイが
広く用いられている。このフートステップは両船側のブ
ルワークと運転者座席との間に形成されて後端部は船尾
に開放されており、この開放された船尾部から水が打ち
上げられるようになっている。またこの船体構造では船
尾部の浮力が小さいために、重量物である推進機を船尾
部に設置するとともに、他の重量物であるエンジンは船
首部に振り分けて配置している。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】上記構成では、船体全
体の重心が前方に位置することになって旋回性能が良好
でないという問題があり、またエンジンを船体の前方に
配置するために船内スペースに余裕がなくなり、他の搭
載物の配置の自由度が小さくなるという問題がある。
【０００４】この発明は、このような従来の欠点を解消
するためになされたものであり、旋回性能が良好で船内
スペースに余裕があって搭載物の配置の自由度が大きい
小型船舶の船体構造を提供することを目的とするもので
ある。
【０００５】
【課題を解決するための手段】この発明は、船体中心線
上に座席台が形成され、その上に跨座式座席が形成され
るとともに、上記座席台の両側にフートステップが形成
され、跨座式座席の前側には操作ハンドルが設置されて
なる小型船舶において、上記座席台の両側に形成された
フートステップの後端部には立上り壁が形成され、その
上端部が後部デッキの先端部に連続して、後部デッキの
下側には上記座席台より幅広になった浮力空間が形成さ
れているものである。
【０００６】上記推進機はジェット推進機であることが
好ましく、また船首部には浮力体を充填することが好ま
しい。
【０００７】
【作用】上記構成では、座席台の両側のフートステップ
の後端部に形成した立上り壁の上端部を後部デッキの先
端部に連続させて、後部デッキの下側に座席台より幅広
になった浮力空間を形成することにより、大きな浮力を
有する船体構造となっているために、この部分にエンジ
ンおよびジェット推進機の重量物を集中して配置するこ
とができ、これらの重量物が船尾部に配置されると、船
体全体の重心が船尾部に位置することになるために航走
時の旋回性能が良好に発揮される。またエンジンが船尾
部に配置されると、航走中に船首船底に波が打ちつけら
れることによる衝撃がエンジンへ伝達されにくいという
利点がある。また比較的嵩張るエンジンおよびジェット
推進機が船尾部に集中して配置されているために、船体
前部および中央部にスペースの余裕ができ、この部分に
物入れや浮体などを配置する設計の自由度が大きい。ま
たこの浮体を船首に設置すると、船体中への浸水時に船
首を上げて比較的動揺の少ない浮き姿勢をとることがで
きる。
【０００８】さらにフートステップの後側に立上り壁が
形成されることにより、フートステップに水が後方から
打ち上げられない、いわゆるドライエリアが形成される
ことになる。
【０００９】
【実施例】図１〜図６において、船底などを構成する船
体部材１１と上部デッキを構成するデッキ部材１２とが
それぞれＦＲＰで一体に構成され、それらが周縁部で互
いに接合されて船体１が構成されている。船体１の上部
には、船体中心線上で中央部付近から後方に向かって運
転者用座席３と同乗者用座席３１とが連続して形成さ
れ、その両側にはフートステップ４１が形成されてい
る。このフートステップ４１の内側は、図６に示すよう
に立上って座席台３３が形成され、この座席台３３上に
上記運転者用座席３および同乗者用座席３１が設置さ
れ、さらに同乗者用座席３１の後側には腰当て３２が形
成されている。この腰当て３２は、高く盛り上がった後
部デッキ６によって支持されており、この腰当てをさら
に高く形成して背当てを形成させてもよい。また運転者
用座席３の前側には、ハンドル支持台２１によって支持
された操作ハンドル２が設置され、さらにその前側には
開閉可能なハッチカバー２２が設けられて、その下側に
形成された後述の物入れ用のハッチが形成されている。
【００１０】上記運転者用座席３と同乗者用座席３１と
の両側にはフートステップ４１が形成され、さらにその
両側部にはブルワーク４が形成されている。このフート
ステップ４１の後側は、図４に示されるように立上り壁
４５が形成され、その上端部は船尾端から前方に盛り上
がって形成された後部デッキ６の前端部に連続し、図１
に示されるように、船幅もフートステップ４１の後端部
付近から後向きに幅広に形成することにより、後述のエ
ンジンが搭載された部分の船幅を最も幅広にしている。
そしてこの立上り壁４５と後部デッキ６との下側には、
図５にも示されるように大きな船内空間が形成され、後
述のエンジンおよび推進機用の設置空間を形成するとと
もに、船体後部に大きな浮力を発生させる浮力空間を形
成している。
【００１１】上記フートステップ４１の後端部には、上
記立上り壁４５の下端部に水抜き用穴４４が形成され
て、フートステップ４１上に侵入した水がこの水抜き穴
４４を通して自然に排出されるようにしている。また後
部デッキ６の中央部には、水中からの乗下船用のラダー
６１が着脱可能に取付けられて収納され、このラダー６
１の使用時には、図２仮想線に示すように船尾端から水
中に吊下げられるようにしている。また後部デッキ６の
両側部には、その下側に形成されている船尾区画内の換
気を行なうための通気孔６３が形成されている。
【００１２】図７および図８は、船体内部の搭載物の配
置を示し、船首端にはプラスチックの発泡体などからな
る浮体８４が充填され、その後側の操作ハンドル２の下
側付近には物入れ８３が形成され、その上側には上記ハ
ッチカバー２２が形成されて、このハッチカバー２２の
開閉により物入れ８３内の物の出し入れが行なわれるよ
うにしている。また運転者用座席３の下側には船体中心
線上に燃料タンク８１が設置され、その燃料供給口８１
０が船体上で運転者用座席３の一方の側部に開口し、ま
た燃料タンク８１の上側には隔壁１３で仕切られた空間
にバッテリ８２が設置されている。
【００１３】また上記燃料タンク８１の後側には、隔壁
１５で仕切られた船尾区画１６が形成され、船尾区画１
６中にはエンジン５およびこれによって駆動されるジェ
ット推進機７が設置されている。このエンジン５は、図
９に示すようにいわゆる縦置き式であって、後部には各
シリンダ５１が水平方向後方に延び、前部には吸気箱５
７が上下方向に延び、中間部にはクランクシャフト５０
が鉛直方向に延びてジェット推進機７の上に載置されて
いる。ジェット推進機７は船底に開口する水導入口７４
から後方に延びる流路７１を備え、その後端部には水平
面内で揺動する水噴射口７５が設けられ、この流路７１
内にインペラー７３が配置されている。そしてクランク
シャフト５０の下端部が傘歯車５２を介してインペラー
シャフト７２に連結され、これによってインペラー７３
に回転力が伝達されるようにしている。またエンジン５
の排気管５５は船底に導かれて船底に開口している。
【００１４】図１０および図１１はこの発明の別の実施
例を示し、隔壁１７の前側の船首区画中で操作ハンドル
２の下側に燃料タンク８１が配置され、隔壁１７と隔壁
１５との間の区画（運転者用座席３の下側の区画）には
物入れ８３が形成されている。またハッチカバー２２に
は点検用の小ハッチカバー２３が開閉可能に形成され、
またバッテリ８２は隔壁１５の後面にエンジン５に近接
して設置されている。その他の構成は上記実施例と同様
であり、船尾区画は大きく形成されてその内部に重量物
であるエンジン５およびジェット推進機７が集中して配
置されている。
【００１５】上記構成においては、船尾部の後部デッキ
６の下側に大きな浮力空間が形成されて大きな浮力を有
する船体構造となっているために、この部分にエンジン
５およびジェット推進機７の重量物を集中して配置する
ことができ、これらの重量物が船尾部に配置されると、
船体全体の重心が船尾部近くに位置することになるため
に航走時の旋回性能が良好に発揮される。またエンジン
５が船尾部に配置されると、航走中に船首船底に波が打
ちつけられることによる衝撃がエンジン５へ伝達されに
くいという利点がある。また比較的嵩張るエンジン５お
よびジェット推進機７が船尾部に集中して配置されてい
るために、船体前部および中央部にスペースの余裕がで
き、この部分に物入れ８３や浮体８４などを配置する設
計の自由度が大きいという利点がある。またこの浮体８
４を船首に設置すると、船体中への浸水時に船体の浮力
を大きく確保することができるとともに、船首を上げて
比較的動揺の少ない浮き姿勢をとることができるという
利点がある。
【００１６】さらにフートステップ４１の後側に立上り
壁４５が形成されることにより、フートステップ４１に
水が後方から打ち上げられず、いわゆるドライエリアが
形成されることになる。またフートステップ４１の後端
部が船尾に開放されていないために航走中に船尾方向へ
落水することも防止されることになる。
【００１７】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば
座席台の両側のフートステップの後端部に形成した立上
り壁の上端部を後部デッキの先端部に連続させて、後部
デッキの下側に座席台より幅広になった浮力空間を形成
することにより、大きな浮力を有する船体構造とし、こ
の部分に重量物であるエンジンおよびジェット推進機を
集中して配置したものであり、以下のような種々の優れ
た効果を有するものである。
【００１８】（１）船尾部に重量物を集中して配置した
ために、航走時の旋回性能が良好に発揮される。
【００１９】（２）エンジンを船尾部に配置したことに
より、航走中に船首船底に波が打ちつけられることによ
る衝撃がエンジンへ伝達されにくい。
【００２０】（３）比較的嵩張るエンジンおよびジェッ
ト推進機が船尾部に集中して配置されているために、船
体前部および中央部にスペースの余裕ができ、この部分
に物入れや浮体などを配置する設計の自由度が大きい。
【００２１】（４）船首部に浮体を設置すると、船体中
への浸水時に船首を上げて比較的動揺の少ない浮き姿勢
をとることができる。
【００２２】（５）フートステップの後側に立上り壁が
形成されることにより、フートステップに水が後方から
打ち上げられず、いわゆるドライエリアが形成される。
【図面の簡単な説明】
【図１】この発明の実施例を示す平面図である。
【図２】図１の側面図である。
【図３】図１の背面図である。
【図４】図１の後部の斜視図である。
【図５】図１のＡ−Ａ線断面図である。
【図６】図１のＢ−Ｂ線断面図である。
【図７】図１の船体内部の配置を示す平面図である。
【図８】図７の側面図である。
【図９】エンジンの側面説明図である。
【図１０】この発明の別の実施例を示す平面図である。
【図１１】図１０の側面図である。
【符号の説明】
１ 船体 ２ 操作ハンドル ３ 運転者用座席 ４ ブルワーク ５ エンジン ６ 後部デッキ ７ ジェット推進機 ４５ 立上り壁 ８４ 船首浮体

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項１】 船体中心線上に座席台が形成され、その
    上に跨座式座席が形成されるとともに、上記座席台の両
    側にフートステップが形成され、跨座式座席の前側には
    操作ハンドルが設置されてなる小型船舶において、上記
    座席台の両側に形成されたフートステップの後端部には
    立上り壁が形成され、その上端部が後部デッキの先端部
    に連続して、後部デッキの下側には上記座席台より幅広
    になった浮力空間が形成されていることを特徴とする小
    型船舶の船体構造。
  2. 【請求項２】 上記推進機はジェット推進機であること
    を特徴とする請求項１記載の小型船舶の船体構造。
  3. 【請求項３】 船首部には浮力体が充填されていること
    を特徴とする請求項１または２記載の小型船舶の船体構
    造。
JP06427793A 1993-03-23 1993-03-23 小型船舶の船体構造 Expired - Lifetime JP3242483B2 (ja)

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