JP4716630B2 - 小型船艇 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、滑走艇(PWC:Personal Watercraft)等のハルを備える小型船艇に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
レジャー,スポーツ,及びレスキュー等の用途として、小型船艇が多用されている。かかる小型船艇の一つである滑走艇は、一般的にハルの底面に設けられた吸水口から吸い込んだ水を、エンジンによって駆動するウォータージェットポンプで加圧・加速して噴射口から後方へ噴射することによって推進する。
【0003】
近年、このような滑走艇等の小型船艇に用いられるエンジンの高出力化、大型化、及び4サイクル化等が進められている。エンジンが大型化することによってその重量が増加することは言うまでもないが、一般に4サイクルエンジンは同一の排気量の2サイクルエンジンに比して重量が大きいため、エンジンの4サイクル化によってもエンジンの重量は増加する。また、かかる小型船艇では、重量が増加したエンジンを艇体の内部に配置する構成であること等から、エンジンの大型化等に伴い、艇体の剛性を向上させるという要望がある。
【0004】
本発明は、斯かる目的に鑑みてなされたものである。
【0005】
また、本発明の他の目的は、エンジンから発生する騒音を抑制し、静粛性を向上させた小型船艇を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を以下のような構成からなる小型船艇によって解決することができる。
【0007】
本発明に係る小型船艇は、ハルと、該ハルの上方を覆うデッキとを備える小型船艇において、前記ハルとの間に空間が設けられるように、前記ハルの内面に対向するよう前記ハルの上方に配置された内殻板を備え、前記ハル及び該内殻板によってダブルハル構造が形成されており、前記ハルは、船底部と、該船底部の両側から上方へ延設された船側部とを有し、前記内殻板は、前記ハルの内面の略全体に亘って前記ハルと対向するよう配置されており、前記内殻板は、一対の第1のリブを介して前記ハルの前記船底部と連結され、且つ、前記船底部と前記船側部との境界に沿って配置された一対の第2リブを介して前記船底部の両側に連結され、前記一対の第1リブを介して連結される部分と前記一対の第2リブを介して連結される部分との間において、上方へ凸形状となるように湾曲させて前記デッキの下面と接合される一対の凸部を有していることを特徴とする。
【0008】
この場合、シングルハル構造の小型船艇に比べ、艇体の剛性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、上記発明においては、前記ハル及び前記内殻板の間の空間に配された発泡体を更に備え、遮音効果の向上及び残浮力の増大等を図る構成としてもよい。
【0012】
また、上記発明においては、前記内殻板の内側にエンジンを配置し、前記内殻板によって前記エンジンを支持するように構成してもよい。これにより、エンジンマウント用の部材を内殻板と共用することができ、コストの増大を抑制することが期待できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態に係る例えばジェット推進型の滑走艇のような小型船艇について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る小型船艇の全体側面図、図2は、その平面図である。図1,図2において、Aは艇体であり、該艇体Aは、ハルHとその上方を覆うデッキDとから構成されている。これらハルHとデッキDとを全周で接続するラインはガンネルラインGと呼ばれ、本実施形態では、このガンネルラインGは、本小型船艇の喫水線L(非滑走状態の喫水線)より上方に位置されている。
【0015】
上記デッキDの中央よりやや後部には、図2に示すように、艇体Aの上面に前後方向に延びる、平面視において略長方形の開口16が形成され、該開口16を上方から覆う態様に騎乗用シートSが取り付けられている。また、上記シートS下方のハルHとデッキDとに囲まれた空間20内に、エンジンEが配置されている。
【0016】
上記エンジンEは、多気筒(例えば4気筒)を備え、図1に示すように、そのクランクシャフト10bが艇体Aの前後方向に沿って配置されている。クランクシャフト10bの出力端は、ウォータージェットポンプPのポンプ軸にプロペラ軸15を介して回転自在に連結されている。ウォータージェットポンプPのポンプ軸には、インペラ21が取着され、該インペラ21は、その外周方をポンプケーシング21Cにより覆われている。
【0017】
ハルHの底面には、吸水口17が設けられ、該吸水口17から取り入れられた水を吸水通路を介してウォータージェットポンプPへ送り込み、該ウォータージェットポンプPは、送り込まれた水を加圧・加速し、通水断面積が後方へいくに従って小さくされたポンプノズル(噴出部)21Rを通じてその後端の噴射口21Kから吐出し、推進力を得るようになっている。なお、図1において、21Vはインペラ21後方の水流を整流するための静翼である。
【0018】
図1に示すように、上記ステアリングノズル18の上後方には、ボウル形状の後進用ディフレクター19が、略水平配置された揺動軸19aを中心として下方へ揺動可能に設けられている。このディフレクター19をステアリングノズル18後方の下方位置へ揺動動作させ、ステアリングノズル18から後方に吐出された水を前方に転向させることによって、前進から後進に切り換えるようになっている。
【0019】
更に、図1,図2において、12は後側デッキであり、該後側デッキ12には、後側ハッチカバー29が開閉自在に設けられ、該ハッチカバー29の下方に小容量の後側コンパートメント(図示せず)が設けられている。23は前側ハッチカバーであり、該ハッチカバー23の下方には、備品等のための前側コンパートメント(図示せず)が設けられている。上記前側ハッチカバー23の上方には、別のハッチカバー25が設けられて二層式とされ、該ハッチカバー25の内側へは、その後端に設けられた開口(図示せず)からライフジャケット等を収納することができるようになっている。
【0020】
図3は、本発明の第1実施形態に係る小型船艇を後方から見たときのエンジン部の横断面図であり、図4は、該小型船艇の船底を示す下面図である。図3に示すように、ハルHの上方には、内殻板3が配されている。ハルH及び内殻板3は、夫々FRP等の合成樹脂によって形成されており、内殻板3は、ハルHの内面の略全体に亘って対向するように配置されている。デッキD、ハルH及び内殻板3は、ガンネルラインGに沿って接合されており、接合箇所では水密が保たれ、密閉構造となっている。また、デッキDのシートSの両側部には、ライダーの両足の置き場所として、船艇Aの前後方向に長い凹部31が夫々設けられている。内殻板3の前記凹部31との対向箇所は、上方へ凸形状となるように湾曲させた凸部32とされており、この凸部32の上面と前記凹部31の下面とが接着剤等によって接合されている。また、内殻板3のエンジンEの下方の部分は、エンジンEを支持するため、エンジンEの形状に合わせて成型されたマウント部3aとされており、このマウント部3aの上にブラケット等(図示せず)を介してエンジンEが載置されている。このように、内殻板3はエンジンマウント用の部材としても機能するようになっている。
【0021】
内殻板3のこの他の部分は、概ねハルHの内面に沿った形状とされており、ハルHと適宜距離離隔されている。図4にて、破線及びハッチングにて示した部分には、ハルHと内殻板3とを連結するリブ33a,33b,33b,33c,33c,33d,33dが夫々設けられている。具体的には、船底の幅方向の中央部分の船首部付近から船尾より若干前方の位置までの範囲に亘って、艇体Aの前後方向に長い長方形状をなすリブ33aが設けられている。また艇体Aの前後方向の略中央部であって、前記リブ33aの両側方の2箇所には、リブ33aより短寸のリブ33b,33bが夫々設けられており、該リブ33b,33bの後方には、リブ33bより若干短寸のリブ33c,33cが夫々配されている。
【0022】
図3に示す如く、ハルHは、略V字状の船底部61と、該船底部61の両側から上方へ延設された船側部62とから構成されている。そして、前記船底部61の両側の前記船側部62との境界付近には、リブ33d,33dが夫々設けられている。図4に示すように、該リブ33d,33dは、リブ33b,33bよりも若干長い寸法とされており、艇体Aの前後方向の略中央部から船尾よりも若干前方の位置までの範囲に亘って、前記境界に沿って配置されている。これらのリブ33a,33b,33c,33dは、ハルH及び内殻板3とは別のFRP製の部材であり、上面が内殻板3に、下面がハルHに夫々接着剤等によって接合されている。
【0023】
なお、リブ33a,33b,33c,33dは、FRPとは異なる材料を用いたものであってもよく、また内殻板3の複数部分をハルHの方へ突出させるように形成し、この突出部をリブ33a,33b,33c,33dとして用いる構成であってもよい。
【0024】
更に、本実施形態にて示したリブ33a,33b,33c,33dの形状及び構成は一例であり、例えば図4において二点鎖線にて示すように、リブ33b,33cを一体化してその長さを艇体Aの船首部付近から船尾付近に至るまでの範囲に延長し、またリブ33dの長さを船首部付近から船尾部付近に至るまでの範囲に延長する等、他の形状及び構成としてもよい。
【0025】
また、内殻板3の夫々の凸部32より外側の部分と、デッキDの凹部31より外側の部分とで囲まれる空間に、独立気泡を有する発泡体を充填し、この発泡体を残浮体として利用することもできる。
【0026】
図5は、本発明の第1実施形態に係る小型船艇のエンジンEの配置状態を説明する部分透過側面図である。図3及び図5に示す如く、前述したような内殻板3によって支持されたエンジンEは、4気筒の4サイクルエンジンであり、シリンダの並設方向が船艇Aの前後方向とされるように、内殻板3とデッキDとで囲まれた空間に配置されている。エンジンEのシリンダヘッド41の上方には、該シリンダヘッド41及びこれに取り付けられたヘッドカバー41aを覆うように吸気マニホールド42が配置されており、シリンダヘッド41の左方には、該吸気マニホールド42に接続されたエアクリーナ42bが配置されている。これらのエアクリーナ42b及び吸気マニホールド42を介して、エンジンEのシリンダブロックの右方に配置されたエアボックス42aとエンジンEの吸気ポート(図示せず)とが連結されている。
【0027】
また、図3に示すように、シートSから連なるデッキDの内面の2箇所には、エンジンEのシリンダヘッド41及び前記エアボックス42aに対向するように、吸音防振シート43,44が夫々貼着されている。該吸音防振シート43,44は、内部に多数の独立気泡を含んだ発泡体であるシート状の吸音部材43a,44aと、吸音部材43a,44aと略同寸のシート状をなす防振部材43b,44bとが夫々接合されてなる2層構造のものである。各防振部材43b,44bの質量は、吸音防振シート43,44の固有振動数が夫々エンジンEの振動数(回転数)より十分に小さくなるように定められている。これにより、エンジンEによって発生し、デッキDに伝播した振動を抑制することができる。
【0028】
なお、図3では吸音防振シート43,44の吸音部材43a,44a側がデッキDの内面に貼着される構成を示しているが、これに限定されるものではなく、防振部材43b,44b側をデッキDの内面に貼着する構成としてもよい。
【0029】
これらの吸音防振シート43,44は、エンジンEの前後方向の長さよりも若干長い範囲に亘って、デッキDの内面に取り付けられている。また、図3では図を簡単にするために、吸音防振シート43,44の厚さを同じとして図示しているが、実際にはエアボックス42aに対向配置された吸音防振シート43が有する吸音部材43aは、他方の吸音防振シート44が有する吸音部材44aよりも厚みが大きくされている。これは、エンジンE及びその周辺部分の内、エアボックス42aの周辺部分で発生する音が特に大きいので、エアボックス42aの周辺において発生した音をより効果的に吸収し、小型船艇全体の静粛性を向上させるためである。なお、本実施形態では吸音部材43a,44aの厚さを異ならせる構成としたが、これに限定されず、吸音部材43aを吸音部材44aよりも吸音効果が大なる材料にて構成してもよい。
【0030】
また、ヘッドカバー41aの上面等には吸音シート45aが貼着されており、吸気マニホールド42の上面、エアボックス42aの側面及びエアクリーナ42bの側面に亘って吸音シート45bが貼着されている。夫々の吸音シート45a,45bは、前述した吸音部材43a,44aと同じく、独立気泡を含む発泡体で構成されている。ヘッドカバー41a及び吸気マニホールド42の周辺では、吸気音及びエンジンEの動作音等の音が発生するが、吸音シート45a,45bを取り付けることにより、これらの音の多くを吸収し、小型船艇全体の静粛性を向上させることができる。
【0031】
以上詳述したように、第1実施形態に係る小型船艇を、ハルHと内殻板3とによって船底が二重構造の所謂ダブルハル構造とすることにより、艇体Aの剛性を向上させることができ、より高出力及び大型のエンジン等を搭載することができる。
【0032】
また、船底が二重構造とされており、その上吸音防振シート43,44及び吸音シート45a,45bを貼着していることにより、エンジンEから発生する音の大きさを効果的に減少させることが可能となり、静粛性の向上が期待できる。
【0033】
また、内殻板3をエンジンEのマウント用として利用しているため、エンジンマウント用の部品を別途設ける必要が無く、コストの低減が期待できる。
【0034】
なお、第1実施形態においては、内殻板3をエンジンマウントとしても利用する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、エンジンマウント用の部品を別途設け、これを内殻板3の上面に設置する構成としてもよい。
【0035】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る小型船艇を後方から見たときのエンジン部の横断面図である。図6に示すように、本実施形態に係る小型船艇では、ハルH及び内殻板3の間の空間に、発泡体5が充填されている。この発泡体5は、例えば発泡スチロールであり、多数の独立気泡を内部に含んだ構造となっている。
【0036】
第2実施形態に係る小型船艇のその他の構成及び作用は、第1実施形態に係る小型船艇の構成及び作用と同様であるので、同符号を付し、その説明を省略する。
【0037】
このような構成により、更に艇体Aの剛性が向上することとなる。また、発泡体5によって、エンジンEの動作音等の騒音の遮音効果が一層向上し、しかも発泡体5を残浮体として利用することができる。また、ハルH及び内殻板3を、夫々発泡体5と接着剤等によって接合することによって、ハルH、内殻板3、リブ33a,33b,33c,33d及び発泡体5が一体的に構成され、一層艇体Aの剛性を向上させることが可能となる。
【0038】
なお、第2実施形態においては、ハルHと内殻板3とによって囲まれる空間の全体に発泡体5を充填する構成について述べたが、これに限定されるものではなく、前記空間の一部に発泡体を配置する構成としてもよい。
【0039】
また、第1及び第2実施形態においては、本発明に係る小型船艇としてジェット推進型の滑走艇について説明したが、これに限定されるものではなく、他の小型船艇であってもよいことはいうまでもない。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、小型船艇のハルの内面に対向配置された内殻板を設け、ダブルハル構造とすることによって、該小型船艇の艇体の剛性を向上させることができる。
【0041】
また、船底を二重構造とすることにより、遮音効果を向上させることが可能となる等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る小型船艇の全体構成を示す側面図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る小型船艇の全体構成を示す平面図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係る小型船艇の内部構成を示す後方から見たときのエンジン部の横断面図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係る小型船艇のリブの配置構成を示す船底側からの下面図である。
【図5】 本発明の第1実施形態に係る小型船艇のエンジンの配置構成を示す部分透過側面図である。
【図6】 本発明の第2実施形態に係る小型船艇の内部構成を示す後方から見たときのエンジン部の横断面図である。
【符号の説明】
A 艇体
D デッキ
E エンジン
H ハル
3 内殻板
3a マウント部
31 凹部
32 凸部
33a〜33d リブ
41 シリンダヘッド
41a ヘッドカバー
42 吸気マニホールド
42a エアボックス
43,44 吸音防振シート
43a,44a 吸音部材
43b,44b 防振部材
45a 吸音シート
45b 吸音シート
5 発泡体
Claims (5)
- ハルと、該ハルの上方を覆うデッキとを備える小型船艇において、前記ハルとの間に空間が設けられるように、前記ハルの内面に対向するよう前記ハルの上方に配置された内殻板を備え、前記ハル及び該内殻板によってダブルハル構造が形成されており、
前記ハルは、船底部と、該船底部の両側から上方へ延設された船側部とを有し、前記内殻板は、前記ハルの内面の略全体に亘って前記ハルと対向するよう配置されており、
前記内殻板は、一対の第1のリブを介して前記ハルの前記船底部と連結され、且つ、前記船底部と前記船側部との境界に沿って配置された一対の第2リブを介して前記船底部の両側に連結され、前記一対の第1リブを介して連結される部分と前記一対の第2リブを介して連結される部分との間において、上方へ凸形状となるように湾曲させて前記デッキの下面と接合される一対の凸部を有していることを特徴とする小型船艇。 - 前記内殻板が、幅方向の中央部分において、第3リブを介して前記船底部に連結されることを特徴とする請求項1に記載の小型船艇。
- 前記内殻板の内側にエンジンが配置され、前記内殻板は、前記エンジンを支持するための一対のマウント部を有し、前記一対の第1リブが前記マウント部よりも幅方向外側に配置され、前記第3リブが前記一対のマウント部の間に配置されることを特徴とする請求項2に記載の小型船艇。
- 前記ハル及び前記内殻板の間の空間に配された発泡体を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の小型船艇。
- 前記デッキの内面にエンジンと対向するようにして吸音防振シートが貼着されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の小型船艇。
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