<薄膜化工程>
薄膜化処理液によるレジスト層の薄膜化工程とは、薄膜化処理液によってレジスト層中の成分のミセルを一旦不溶化し、処理液中に溶解拡散しにくくする薄膜化処理、ミセル除去液スプレーによって一挙にミセルを溶解除去するミセル除去処理を含む工程である。さらに、除去しきれなかったレジスト層表面や残存付着した薄膜化処理液及びミセル除去液を水洗によって洗い流す水洗処理、水洗水を除去する乾燥処理を含むこともできる。
<薄膜化処理>
薄膜化処理液による薄膜化処理は、パドル処理、スプレー処理、ブラッシング、スクレーピング等の方法を用いることもできるが、浸漬処理によって行われることが好ましい。浸漬処理では、レジスト層が形成された基板を薄膜化処理液に浸漬(ディップ、dip)する。浸漬処理以外の処理方法は、薄膜化処理液中に気泡が発生しやすく、その発生した気泡が薄膜化処理中にレジスト層表面に付着して、膜厚が不均一となる場合がある。スプレー処理等を使用する場合には、気泡が発生しないように、スプレー圧をできるだけ小さくしなければならない。
本考案において、レジスト層形成後の厚みとレジスト層が薄膜化された量で、薄膜化された後のレジスト層の厚みが決定される。また、本考案では、0.01〜500μmの範囲でレジスト層の薄膜化量を自由に調整することができる。
<レジスト>
レジストとしては、アルカリ現像型のレジストが使用できる。また、液状レジストであってもよく、ドライフィルムレジストであってもよく、高濃度のアルカリ水溶液(薄膜化処理液)によって薄膜化でき、かつ、薄膜化処理液よりも低濃度のアルカリ水溶液である現像液によって現像できるレジストであればいかなるものでも使用できる。アルカリ現像型レジストは光架橋性樹脂成分を含む。光架橋性樹脂成分は、例えば、アルカリ可溶性樹脂、光重合性化合物、光重合開始剤等を含有してなる。また、エポキシ樹脂、熱硬化剤、無機フィラー等を含有させてもよい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ系樹脂、アミド系樹脂、アミドエポキシ系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂の有機高分子が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂としては、エチレン性不飽和二重結合を有した単量体(重合性単量体)を重合(ラジカル重合等)して得られたものであることが好ましい。これらのアルカリ水溶液に可溶な重合体は、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エチレン性不飽和二重結合を有した単量体としては、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エトキシスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等のスチレン誘導体;ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミド;アクリロニトリル;ビニル−n−ブチルエーテル等のビニルアルコールのエステル類;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、α−ブロモ(メタ)アクリル酸、α−クロル(メタ)アクリル酸、β−フリル(メタ)アクリル酸、β−スチリル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸モノエステル;マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、イタコン酸、クロトン酸、プロピオール酸等が挙げられる。
光重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;ビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物;グリシジル基含有化合物にα,β−不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物;分子内にウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー;ノニルフェノキシポリエチレンオキシアクリレート;γ−クロロ−β−ヒドロキシプロピル−β′−(メタ)アクリロイルオキシエチル−o−フタレート、β−ヒドロキシアルキル−β′−(メタ)アクリロイルオキシアルキル−o−フタレート等のフタル酸系化合物;(メタ)アクリル酸アルキルエステル、EO、PO変性ノニルフェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。ここで、EO及びPOは、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドを示し、EO変性された化合物は、エチレンオキサイド基のブロック構造を有するものであり、PO変性された化合物は、プロピレンオキサイド基のブロック構造を有するものである。これらの光重合性化合物は単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、N,N′−テトラメチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン、Michler ketone)、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパノン−1等の芳香族ケトン;2−エチルアントラキノン、フェナントレンキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン等のキノン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物;ベンゾイン、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン化合物;ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体;2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体;9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体;N−フェニルグリシン、N−フェニルグリシン誘導体、クマリン系化合物等が挙げられる。上記2,4,5−トリアリールイミダゾール二量体における2つの2,4,5−トリアリールイミダゾールのアリール基の置換基は、同一であって対称な化合物を与えてもよいし、相違して非対称な化合物を与えてもよい。また、ジエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸の組み合わせのように、チオキサントン系化合物と3級アミン化合物とを組み合わせてもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
エポキシ樹脂は、硬化剤として用いられる場合がある。アルカリ可溶性樹脂のカルボン酸と反応させることで架橋させ、耐熱性や耐薬品性の特性の向上を図っているが、カルボン酸とエポキシは常温でも反応が進むために、保存安定性が悪く、アルカリ現像型ソルダーレジストは一般的に使用前に混合する2液性の形態をとっている場合が多い。無機フィラーを使用する場合もあり、例えば、タルク、硫酸バリウム、シリカ等が挙げられる。
基板の表面にレジスト層を形成する方法は、いかなる方法でもよいが、例えば、スクリーン印刷法、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、カーテンコート法、バーコート法、エアナイフ法、ホットメルト法、グラビアコート法、刷毛塗り法、オフセット印刷法が挙げられる。ドライフィルムレジストの場合は、ラミネート法が好適に用いられる。
<基板>
基板としては、プリント配線板用基板、リードフレーム用基板;プリント配線板用基板やリードフレーム用基板を加工して得られる回路基板が挙げられる。
プリント配線板用基板としては、例えば、フレキシブル基板、リジッド基板が挙げられる。
フレキシブル基板の絶縁層の厚さは5〜125μmで、その両面もしくは片面に1〜35μmの金属層が設けられて積層基板となっており、可撓性が大きい。絶縁層の材料には、通常、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー等が用いられる。絶縁層上に金属層を有する材料は、接着剤で貼り合わせる接着法、金属箔上に樹脂液を塗布するキャスト法、スパッタリングや蒸着法で樹脂フィルム上に形成した厚さ数nmの薄い導電層(シード層)の上に電解メッキで金属層を形成するスパッタ/メッキ法、熱プレスで貼り付けるラミネート法等のいかなる方法で製造したものを用いてもよい。金属層の金属としては、銅、アルミニウム、銀、ニッケル、クロム、あるいはそれらの合金等のいかなる金属を用いることができるが、銅が一般的である。
リジッド基板は、紙基材又はガラス基材にエポキシ樹脂又はフェノール樹脂等を浸漬させた絶縁性基板を重ねて絶縁層とし、その片面もしくは両面に金属箔を載置し、加熱及び加圧により積層し、金属層が設けられた積層基板が挙げられる。また、内層配線パターン加工後、プリプレグ、金属箔等を積層して作製する多層用のシールド板、貫通孔や非貫通孔を有する多層板も挙げられる。厚みは60μm〜3.2mmであり、プリント配線板としての最終使用形態により、その材質と厚みが選定される。金属層の材料としては、銅、アルミニウム、銀、金等が挙げられるが、銅が最も一般的である。これらプリント配線板用基板の例は、「プリント回路技術便覧−第二版−」((社)プリント回路学会編、1987年刊、日刊工業新聞社発刊)や「多層プリント回路ハンドブック」(J.A.スカーレット(Scarlett)編、1992年刊、(株)近代化学社発刊)に記載されている。
リードフレーム用基板としては、鉄ニッケル合金、銅系合金等の基板が挙げられる。
回路基板とは、絶縁性基板上に半導体チップ等の電子部品を接続するための接続パッドが形成された基板である。接続パッドは銅等の金属からなる。また、回路基板には、導体配線が形成されていてもよい。回路基板を作製する方法は、例えばサブトラクティブ法、セミアディティブ法、アディティブ法が挙げられる。サブトラクティブ法では、例えば、上記のプリント配線板用基板にエッチングレジストパターンを形成し、露光工程、現像工程、エッチング工程、レジスト剥離工程を実施して回路基板が作製される。
<薄膜化装置>
図1〜図4、図7、図9〜図12は、本考案の薄膜化装置の一例を示す概略断面図である。本考案の薄膜化装置は、薄膜化処理液1によってレジスト層中の成分をミセル化させる薄膜化処理ユニット11とミセル除去液スプレー22によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12とを備えてなり、表面にレジスト層が形成された基板3を搬送する搬送ロールを有し、薄膜化処理ユニット11が、薄膜化処理液1が入っているディップ槽2を有し、ミセル除去処理ユニット12が、ミセル除去液10を供給するためのミセル除去液供給スプレー22を有する。そして、ミセル除去液逆流抑制機構及び薄膜化処理液持出抑制機構から選ばれる少なくとも一種の機構が設置されていることを特徴としている。
薄膜化処理ユニット11では、投入口7から投入されたレジスト層が形成された基板3が、搬送ロール対4によって、ディップ槽2中の薄膜化処理液1に浸漬された状態で搬送され、ディップ槽2の出口ロール対5を通過する。これらの処理によって、基板3上のレジスト層中の成分は薄膜化処理液1によってミセル化され、このミセルが薄膜化処理液1に対して不溶化される。
薄膜化処理液1は、薄膜化処理液貯蔵タンク13中の薄膜化処理液吸込口14から薄膜化処理液供給用ポンプ(図示せず)によって吸い込まれ、薄膜化処理液供給管15を経てディップ槽2に供給される。ディップ槽2に供給された薄膜化処理液1は、オーバーフローし、薄膜化処理液回収管16を通って薄膜化処理液貯蔵タンク13に回収される。このようにして、薄膜化処理液1は、ディップ槽2と薄膜化処理貯蔵タンク13との間を循環する。薄膜化処理液ドレン管17からは、余剰分の薄膜化処理液1が排出される。
薄膜化処理液1として使用されるアルカリ水溶液に用いられるアルカリ性化合物としては、例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属ケイ酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アンモニウムリン酸塩、アンモニウム炭酸塩等の無機アルカリ性化合物;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、シクロヘキシルアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキサイド(コリン、Choline)等の有機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのアルカリ性化合物は、単独で用いてもよいし、混合物としても使用できる。薄膜化処理液1の媒体である水には、水道水、工業用水、純水等を用いることができるが、特に純水を使用することが好ましい。
アルカリ性化合物の含有量は、0.1質量%以上50質量%以下で使用できる。また、レジスト層表面をより均一に薄膜化するために、薄膜化処理液1に、硫酸塩、亜硫酸塩を添加することもできる。硫酸塩又は亜硫酸塩としては、リチウム、ナトリウム又はカリウム等のアルカリ金属硫酸塩又は亜硫酸塩、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属硫酸塩又は亜硫酸塩が挙げられる。
薄膜化処理液1のアルカリ性化合物としては、これらの中でも特に、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属ケイ酸塩から選ばれる無機アルカリ性化合物;TMAH、コリンから選ばれる有機アルカリ性化合物を好ましく使用することができる。これらのアルカリ性化合物は、単独で用いてもよいし、混合物としても使用できる。また、アルカリ性化合物の含有量が5〜25質量%であるアルカリ水溶液が、表面をより均一に薄膜化できるため、好適に使用できる。アルカリ性化合物の含有量が5質量%未満では、薄膜化する処理でムラが発生しやすくなる場合がある。また、25質量%を超えると、アルカリ性化合物の析出が起こりやすくなる場合があり、液の経時安定性、作業性に劣る場合がある。アルカリ性化合物の含有量は7〜17質量%がより好ましく、8〜13質量%がさらに好ましい。薄膜化処理液1として使用されるアルカリ水溶液のpHは10以上とすることが好ましい。また、界面活性剤、消泡剤、溶剤等を適宜添加することもできる。
薄膜化処理液1として使用されるアルカリ水溶液の温度は、15〜35℃が好ましく、さらに好ましくは20〜30℃である。温度が低すぎると、レジスト層へのアルカリ性化合物の浸透速度が遅くなる場合があり、所望の厚みを薄膜化するのに長時間を要する。一方、温度が高すぎると、レジスト層へのアルカリ性化合物の浸透と同時に溶解拡散が進行することにより、面内で膜厚ムラが発生しやすくなる場合がある。
ミセル除去処理ユニット12では、薄膜化処理ユニット11においてレジスト層が薄膜化処理液1に対して不溶化された基板3が搬送ロール対4によって搬送される。搬送されている基板3に対して、ミセル除去液スプレー22によってミセル除去液10が供給され、ミセルが一挙に溶解除去される。
ミセル除去液10は、ミセル除去液貯蔵タンク18中のミセル除去液吸込口19からミセル除去液10をミセル除去液供給用ポンプ(図示せず)で吸い込み、ミセル除去液供給管20を経てミセル除去液用ノズル21からミセル除去液スプレー22として噴射される。ミセル除去液スプレー22は、基板3から流下した後、ミセル除去液貯蔵タンク18に回収される。このようにして、ミセル除去液10はミセル除去処理ユニット12内を循環する。ミセル除去液ドレン管23からは、余剰分のミセル除去液10が排出される。
ミセル除去液10としては、水を用いることもできるが、薄膜化処理液1よりも希薄なアルカリ性化合物を含有するpH5〜10の水溶液を用いることが好ましい。ミセル除去液10によって、薄膜化処理液で不溶化されたレジスト層の成分のミセルが再分散されて除去される。ミセル除去液10に使用される水としては、水道水、工業用水、純水等を用いることができるが、特に純水を使用することが好ましい。ミセル除去液10のpHが5未満の場合、レジスト層の成分が凝集し、不溶性のスラッジとなって、薄膜化後のレジスト層表面に付着する場合がある。一方、ミセル除去液10のpHが10を超えた場合、レジスト層が過度に溶解拡散し、面内で薄膜化されたレジスト層の厚みが不均一になり、処理ムラができる場合がある。また、ミセル除去液10は、硫酸、リン酸、塩酸などを用いて、pHを調整することができる。
ミセル除去処理におけるミセル除去液スプレー22の条件(温度、スプレー圧、供給流量)は、薄膜化処理されるレジスト層の溶解速度に合わせて適宜調整される。具体的には、処理温度は10〜50℃が好ましく、より好ましくは15〜35℃である。また、スプレー圧は0.01〜0.5MPaとするのが好ましく、より好ましくは0.1〜0.3MPaである。ミセル除去液10の供給流量は、レジスト層1cm2当たり0.030〜1.0L/minが好ましく、0.050〜1.0L/minがより好ましく、0.10〜1.0L/minがさらに好ましい。供給流量がこの範囲であると、薄膜化後のレジスト層表面に不溶解成分を残すことなく、面内略均一に不溶化したレジスト層の成分のミセルを除去しやすい。レジスト層1cm2当たりの供給流量が0.030L/min未満では、不溶化したレジスト層の成分の溶解不良が起こる場合がある。一方、供給流量が1.0L/minを超えると、供給のために必要なポンプ等の部品が巨大になり、大掛かりな装置が必要となる場合がある。さらに、1.0L/minを超えた供給量では、レジスト層の成分の溶解拡散に与える効果が変わらなくなることがある。スプレーの方向は、レジスト層表面に効率よく液流れを作るために、レジスト層表面に垂直な方向に対して、傾いた方向から噴射するのがよい。
図1のレジスト層の薄膜化装置では、ミセル除去液逆流抑制機構が、薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界部の搬送ロール対6に設置されたミセル除去液遮断カバー27であることを特徴としている。図2のレジスト層の薄膜化装置では、境界部の搬送ロール対6の下側ロールに設置されているミセル除去液遮断カバー27に開口28が設けられていることを特徴としている。
図3のレジスト層の薄膜化装置では、ミセル除去液逆流抑制機構が、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9に設置されたミセル除去液遮断カバー27であることを特徴としている。図4のレジスト層の薄膜化装置では、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の下側ロールに設置されているミセル除去液遮断カバー27に開口28が設けられていることを特徴としている。
境界部の搬送ロール対6とは、薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界部付近に設置された搬送ロール対のことを指す。境界部付近とは、薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界線をはさんで、ディップ槽終端部からミセル除去処理ユニットの第一ミセル除去液スプレー22までの範囲を指す。よって、図3及び図4におけるミセル除去処理ユニットの入口ロール対9は、境界部の搬送ロール対6の一例である。
薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界部の搬送ロール対6に設置されるミセル除去液遮断カバー27及びミセル除去処理ユニットの入口ロール対9に設置されるミセル除去液遮断カバー27について説明する。ミセル除去液遮断カバー27は、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の上下に設置される。これによって、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9がミセル除去液スプレー22に晒されなくなり、ミセル除去処理される前の基板3上のレジスト層にミセル除去液10が付着するのを防止することができる。
薄膜化処理液1としては、レジスト層の成分をミセル化させ、表面をより均一に薄膜化するため、アルカリ性化合物の濃度が5〜25質量%である高濃度のアルカリ水溶液が好適に使用できる。アルカリ性化合物の濃度が低いと、レジスト層の成分のミセル化と同時に溶解拡散が起こり、面内において薄膜化処理量にばらつきが発生する場合がある。ミセル除去液10が付着した境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9が基板3のレジスト層表面に触れると、その部分では、アルカリ性化合物濃度が低下することになり、薄膜化処理量が不均一になる。ミセル除去液遮断カバー27により、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9にミセル除去液10が付着して、レジスト層表面のアルカリ性化合物濃度が低下するのを防止することによって、基板3の面内におけるレジスト層の薄膜化処理量が均一になるという効果が得られる。
ミセル除去液遮断カバー27の形状は、基板3を搬送するための開口部を除いて、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9を完全に覆う形状であれば、自由に決めることができる。また、基板端部と薄膜化装置側壁の隙間等からミセル除去液遮蔽カバー27内部にミセル除去液10が侵入してしまった際に、ミセル除去液10を排出するための配管をミセル除去液遮蔽カバー27に設置することもできる。さらに、基板3を搬送するための開口部の外側上部に柔軟な材料を垂らす形で固定することによって、基板3の搬送を妨げずに、ミセル除去液10が基板3を搬送するための開口部から侵入して、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9に付着し、ミセル除去液スプレー22と接触する直前の基板3とに接触することを防ぐことができるため、好ましい。柔軟な材料としてはポリエチレン、ポリプロピレンのフィルムやシート状のゴムを利用することができる。
図5は、基板搬送時における、ミセル除去液遮蔽カバーが設置されたロール対(図1及び図2:境界部の搬送ロール対6、図3及び4:ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9)とミセル除去液遮断カバー27とを含む部分の拡大概略断面図の一例である。図5は、ミセル除去処理ユニット12内において、ミセル除去液遮蔽カバーが設置されたロール対を基板搬送方向の下流側から見た図である。基板3がミセル除去液遮蔽カバーが設置されたロール対に挟まれた状態で搬送されていて、上側ロールと下側ロールの間に隙間24ができている。ミセル除去液10が付着するのを防ぐために、ミセル除去液カバー27がミセル除去液遮蔽カバーが設置されたロール対9を覆っている。
ミセル除去液遮断カバー27の材質としては、高濃度のアルカリ水溶液である薄膜化処理液1への耐薬品性のある各種材料を使用することができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アクリル樹脂(PMMA)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、テフロン(登録商標)等の合成樹脂、ガラス繊維強化ポリプロピレン、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の繊維強化プラスチック、チタン、ハステロイ(HASTELLOY、登録商標)等の耐食性金属材料等を用いることができる。これらのうちでも、加工が容易であることから硬質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂(PMMA)が好ましく用いられる。
次に、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の下側ロールに設置されるミセル除去液遮断カバーの開口28について説明する。境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9を基板3が通過する際、基板3の厚み分だけ、上側ロールが持ち上げられて、下側ロールとの間に隙間24ができる。ミセル除去液スプレー22が基板3上のレジスト層表面に供給されると、この上側ロールと下側ロールの間にできた隙間24を通じて薄膜化処理ユニット11側にミセル除去液10が逆流する。ミセル除去液10が薄膜化処理ユニット11に逆流すると、薄膜化処理液1のアルカリ性化合物濃度が低下して、薄膜化処理量が不均一になる原因となってしまう。さらに、基板3上のレジスト層表面のミセル除去液10は境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9によって堰き止められ、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の下側ロールに設置されたミセル除去液遮断カバー27内に流下する。そこで、下側ロールに設置されたミセル除去液遮断カバー27に開口28を設けることにより、ミセル除去液遮断カバー27内に流下したミセル除去液10がミセル除去液貯蔵タンク18に回収されるので、薄膜化処理ユニット11内へのミセル除去液10の逆流を防止することができる。そして、薄膜化処理液1のアルカリ性化合物濃度の低下を防止することができ、基板3の面内におけるレジスト層の薄膜化処理量が均一になるという効果が得られる。
ミセル除去液遮断カバーの開口28は、ミセル除去液遮断カバー27内に流下したミセル除去液10をミセル除去液貯蔵タンク18に回収することができれば、その形状や寸法、配置及び数は自由に決めることができる。ミセル除去液10の回収効率の点から言えば、ミセル除去液遮断カバーの開口28は、円形で寸法のより大きいものがよく、境界部の搬送ロール対6又はミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の幅方向に均等に複数個配置されるのが好ましい。
下側ロールに設置されたミセル除去液遮断カバーの開口28の一例を示す拡大概略図の一例を図6に示す。図6は、ミセル除去処理ユニット12内において、下側ロールに設置されたミセル除去液遮断カバー27を基板搬送方向に対し下側から見た図であり、ミセル除去液遮断カバー27に円形の開口28が等間隔で配置されている。なお、図5、図6及び図14に記載されている黒色の太棒はロールのシャフトである。
図7のレジスト層の薄膜化装置では、薄膜化処理液持出抑制機構が、薄膜化処理ユニット11内部のディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に設置された液切りロール対8であることを特徴としている。
薄膜化処理ユニット11内部のディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に設置される液切りロール対8について説明する。ディップ槽2の出口ロール対5を通過した後の基板3では、レジスト層表面がディップ槽2から持ち出された薄膜化処理液1の液膜によって被覆されている。液切りロール対8によって、薄膜化処理液1の液膜は掻き落とされ、かつ、該液膜の厚みが均一に揃えられる。薄膜化処理液1の液膜が均一に揃えられた基板3は、ミセル除去処理ユニット12の入口ロール対9へと搬送される。
ここで、薄膜化処理液1によるレジスト層の成分のミセル化速度について説明する。ディップ槽2中の薄膜化処理液1に浸漬された状態と、ディップ槽2の出口ロール対5を通過した後、レジスト層表面が薄膜化処理液1の液膜で被覆された状態とを比較すると、後者の方がミセル化速度は遅くなる。さらに、薄膜化処理液1の液膜の厚みによってミセル化速度は異なり、液膜がより厚い方がミセル化速度は速くなる。つまり、液切りロール対8により、薄膜化処理液1の液膜の厚みを均一に揃えることによって、基板3の面内におけるレジスト層の成分のミセル化速度の速度差が最小限になり、薄膜化処理量が均一になる。また、液切りロール対8により、不要な薄膜化処理液1を掻き落とすことによって、ミセル除去処理ユニット12への薄膜化処理液1の持ち込みが抑制され、ミセル除去性能のばらつきが抑制され、レジスト層の薄膜化処理量が均一になる。
液切りロール対8は、レジスト層表面に密着することが重要である。そのため、液切りロールとしては、表面に凹凸のないストレートタイプのものが好適に用いられる。液切りロールの種類としては、ゴムロール、スポンジロール、金属ロール、樹脂ロール等が挙げられる。その中でも、優れたゴム弾性(シール性、回復性)を有し、比重が小さく、軽量であり、低硬度から中硬度であり、レジスト層への接触による衝撃が少なく、高濃度のアルカリ水溶液である薄膜化処理液1への耐薬品性にも優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーのロールが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、サーモラン(THERMORUN、登録商標)が挙げられる。
液切りロール対8は、1対でもその効果はあるが、複数のロール対で連続的に液切りすることでさらに大きな効果が得られる。具体的には、液切りロール対8による液切りの回数が多くなるほど、レジスト層上の薄膜化処理液1の液膜の厚みの均一性が高くなる。図7においては、ディップ槽2の出口ロール対5とミセル除去処理ユニット12の入口ロール対9の間に、3対の液切りロール対8があるが、液切りロール対8の数を何対とするかは、薄膜化処理量に応じて適宜調整されるものであり、この数に限定されるものではない。
ディップ槽の出口ロール対5、液切りロール対8、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9のそれぞれの間隔Lは、各ロールの直径Dに対して、1倍超、3倍以下(D<L≦3D)であることが好ましい。間隔Lが直径Dの1倍以下の場合、ストレートタイプの液切りロール対同士が接触して、ロールの材質によっては、ロールの摩耗が著しく発生する場合がある。一方、間隔Lが直径Dの3倍より大きくなると、レジスト層の表層において、薄膜化処理液1の液膜の流動が起こりやすくなり、被覆量を均一とすることが困難になる場合がある。
図8は、図7のレジスト層の薄膜化装置において、ディップ槽の出口ロール対5、液切りロール対8及びミセル除去処理ユニットの入口ロール対9を含む部分の拡大概略断面図である。D1は、ディップ槽の出口ロールの直径である。D2は、液切りロールの直径であり、「−数字」は上流側からの順番を表している。D3は、ミセル除去処理ユニットの入口ロールの直径である。L1は、ディップ槽の出口ロール対5から最初の液切りロール対8までの間隔である。L2は、液切りロール対間の間隔であり、「−数字」は上流側からの順番を表している。L3は、最後の液切りロール対8からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの間隔である。
D1、D2、D3は、同じ値でもよいし、異なっていてもよい。液切りロール対が3対以上ある場合、各D2は同じ値でもよいし、異なっていてもよい。例えば、図8におけるD2−1〜D2−3は同じ値でもよいし、異なっていてもよい。また、L1、L2、L3は、同じ値でもよいし、異なっていてもよい。液切りロール対が3対以上ある場合、各L2は同じ値でもよいし、異なっていてもよい。例えば、図8におけるL2−1とL2−2は、同じ値でもよいし、異なっていてもよい。
「ディップ槽の出口ロール対5、液切りロール対8、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9のそれぞれの間隔Lは、各ロールの直径Dに対して、1倍超、3倍以下(D<L≦3D)であること」は、間隔Lを構成しているロールの直径Dと間隔Lとの間で成立していればよい。すなわち、間隔L1では、D1とD2−1に対して、1倍超、3倍以下であればよく、D2−2、D2−3及びD3に対しては、この関係が成り立たなくてもよい。
[L1]
D1<L1≦3D1
D2−1<L1≦3(D2−1)
他の間隔についても、同様である。
[L2−1]
D2−1<L2−1≦3(D2−1)
D2−2<L2−1≦3(D2−2)
[L2−2]
D2−2<L2−2≦3(D2−2)
D2−3<L2−2≦3(D2−3)
[L3]
D2−3<L3≦3(D2−3)
D3<L3≦3D3
図9のレジスト層の薄膜化装置では、ミセル除去液逆流抑制機構が、薄膜化処理ユニット11内部のディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に設置された防液壁25であることを特徴としている。ミセル除去液10は薄膜化処理ユニット11へと逆流してくるが、防液壁25によって、薄膜化処理液1と混合される領域にまでミセル除去液10が逆流することが抑制されるので、ミセル除去液10によって薄膜化処理液1の濃度が低下するのを防止することができる。
薄膜化処理液1としては、レジスト層の成分をミセル化させ、表面をより均一に薄膜化するため、アルカリ性化合物の濃度が5〜25質量%である高濃度のアルカリ水溶液が好適に使用できる。アルカリ性化合物の濃度が低いと、レジスト層の成分のミセル化と同時に溶解拡散が起こり、面内において薄膜化処理量にばらつきが発生する場合がある。防液壁25により、ミセル除去液10の逆流による薄膜化処理液1のアルカリ性化合物濃度の低下を防止することによって、基板3の面内におけるレジスト層の薄膜化処理量を均一にすることができる。
防液壁25は、ディップ槽2に供給された薄膜化処理液1とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9にできた隙間24を通じて薄膜化処理ユニット11内に逆流してくるミセル除去液10とを隔てることができれば、その形状や厚みや高さは自由に決めることができる。防液壁25は、ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間に設置されるが、ロール対同士の中間位置付近に設置されるのが好ましい。
防液壁25で隔てられたディップ槽2側の薄膜化処理液1は、薄膜化処理液回収管16を通って薄膜化処理液貯蔵タンク13に回収される。また、防液壁25で隔てられたミセル除去処理ユニット側のミセル除去液10は、ミセル除去液回収口26を通ってミセル除去液貯蔵タンク18に回収される。
防液壁25の材料にはアルカリ水溶液に対して耐性のある各種材料を用いることができる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂等の合成樹脂、ガラス繊維強化ポリプロピレン、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の繊維強化プラスチック、チタン、ハステロイ(HASTELLOY、登録商標)等の耐食性金属材料等の材料を用いることができる。これらのうち、加工が容易であることから、硬質ポリ塩化ビニルが好適に用いられる。
次に、図9のレジスト層の薄膜化装置におけるさらに好ましい様態について、図10を用いて詳細に説明する。図10のレジスト層の薄膜化装置は、ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に防液壁25及び液切りロール対8が設置されている。図7で説明したように、液切りロール対8により、レジスト層表面の薄膜化処理液1の液膜の厚みを均一に揃えることによって、基板3の面内におけるレジスト層の成分のミセル化速度の速度差が最小限になり、薄膜化処理量が均一になる。また、液切りロール対8により、不要な薄膜化処理液1を掻き落とされる。掻き落とされた薄膜化処理液1は、薄膜化処理ユニット11内に流下するが、防液壁25で隔てられたディップ槽2側に流下するため、ミセル除去処理ユニット12への薄膜化処理液1の持ち込みが抑制され、ミセル除去性能のばらつきが抑制され、レジスト層の薄膜化処理量が均一になる。
また、液切りロール対8によって、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9を基板3が通過する際、該入口ロール対9にできた隙間24を通じて薄膜化処理ユニット内に逆流してくるミセル除去液10を堰き止めることができる。堰き止められたミセル除去液10は、薄膜化処理ユニット11内に流下するが、防液壁25で隔てられたミセル除去処理ユニット12側に流下するため、薄膜化処理液1との混合は最小限に抑制される。そのため、連続薄膜化処理においても、均一なレジスト層の薄膜化処理が可能になる。
液切りロール対8としては、図7でも説明したように、レジスト層表面に密着することが重要である。液切りロールは、表面に凹凸のないストレートタイプのものが好適に用いられる。液切りロールの種類としては、ゴムロール、スポンジロール、金属ロール、樹脂ロール等が挙げられる。その中でも、優れたゴム弾性(シール性、回復性)を有し、比重が小さく、軽量であり、低硬度から中硬度であり、レジスト層への接触による衝撃が少なく、高濃度のアルカリ水溶液である薄膜化処理液1への耐薬品性にも優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーのロールが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、サーモラン(THERMORUN、登録商標)が挙げられる。
また、図7でも説明したように、液切りロール対8は、1対でもその効果はあるが、複数のロール対によって連続的に薄膜化処理液1の液切り及びミセル除去液10の堰き止めを行うことで、さらに大きな効果が得られる。具体的には、液切りロール対8による液切り及び堰き止めの回数が多くなるほど、薄膜化処理液1とミセル除去液10の混合が抑制され、基板3の面内におけるレジスト層の薄膜化処理量が均一になる。図11に示す薄膜化装置は、ディップ槽2の出口ロール対5とミセル除去処理ユニット12の入口ロール対9の間に、3対の液切りロール対8があり、2対目の液切りロール対の真下に防液壁25が設置されている。液切りロール対8と防液壁25の位置関係について説明する。防液壁25は液切りロール対8の下方にあってもよく、各ロール対同士の間にあってもよいが、好ましくは、液切りロール対8の真下にあるのがよい。液切りロール対8の数を何対とするかは、薄膜化処理条件に応じて適宜調整されるものであり、限定されるものではない。
図12のレジスト層の薄膜化装置では、表面にレジスト層が形成された基板3を搬送する搬送ロールを有し、ミセル除去処理ユニット12が、ミセル除去液10を供給するためのミセル除去液供給スプレー22を有し、薄膜化処理ユニットの出口ロール対29とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の両方にミセル除去液遮断カバー27が設置されていることを特徴としている。また、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の下側ロールに設置されているミセル除去液遮断カバー27に開口28が設けられていることを特徴としている。さらに、薄膜化処理ユニット11内部のディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に、液切りロール対8及び防液壁25が設置されていることを特徴としている。なお、防液壁25で隔てられたミセル除去処理ユニット側のミセル除去液10は、ミセル除去液回収口26を通ってミセル除去液貯蔵タンク18に回収される。
搬送ロール対4は、基板3を搬送することができることに加え、レジスト層表面に密着することが好ましい。搬送ロールは、表面に凹凸のないストレートタイプのものが好適に用いられる。搬送ロールの種類としては、ゴムロール、スポンジロール、金属ロール、樹脂ロール等が挙げられる。その中でも、優れたゴム弾性(シール性、回復性)を有し、比重が小さく、軽量であり、低硬度から中硬度であり、レジスト層への接触による衝撃が少なく、高濃度のアルカリ水溶液である薄膜化処理液1への耐薬品性にも優れたオレフィン系熱可塑性エラストマーのロールが好ましい。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、サーモラン(THERMORUN、登録商標)が挙げられる。また、搬送ロールの設置位置及び本数は、基板3を搬送することができれば、特に図1〜図4、図7〜図12に示される設置位置及び本数に限定されるものではない。
ディップ槽の出口ロール対5、境界部の搬送ロール対6、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9も、搬送ロール対4と同じ種類、機能、物性のものが好適に用いられる。特に、ディップ槽の出口ロール対5は、ディップ槽2における薄膜化処理液1の液面維持及びレジスト層表面に被覆された薄膜化処理液1の液膜を掻き落とす液切りのために用いられる。また、境界部の搬送ロール対6は、ミセル除去処理ユニット12への薄膜化処理液1の持ち込みと薄膜化処理ユニット11へのミセル除去液10の逆流を抑制するために用いられる。ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9は主に薄膜化処理ユニット内に逆流してくるミセル除去液10を堰き止めるために用いられる。
以下実施例によって本考案をさらに詳しく説明するが、本考案はこの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置(図1)により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界部の搬送ロール対6(直径40mm)にミセル除去液遮断カバー27(厚さ5mmの透明アクリル樹脂製、幅650mm×高さ50mm×奥行き25mmのL字型、薄膜化処理ユニット11側とミセル除去処理ユニット12側の両方に設置)が設置されている。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が30秒、ディップ槽の出口ロール対5から境界部の搬送ロール対6までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は13.0μmであり、最小値は11.0μmであり、平均厚みは12.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラのない平滑な薄膜化処理面であることが確認された。
(実施例2)
ミセル除去液遮断カバー27(厚さ5mmの透明アクリル樹脂製、幅650mm×高さ50mm×奥行き25mmのL字型、薄膜化処理ユニット11側とミセル除去処理ユニット12側の両方に設置)において、下側ロールのミセル除去処理ユニット12側に設置されているミセル除去液遮断カバー27に、直径25mmの開口28が幅方向に対して55mm間隔で直線状に配置されているレジスト層の薄膜化装置(図2)を用いた以外は、実施例1と同様にして、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は13.0μmであり、最小値は11.0μmであり、平均厚みは12.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラのない平滑な薄膜化処理面であることが確認された。
(比較例1)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置(図13)により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、薄膜化処理ユニット11とミセル除去処理ユニット12の境界部の搬送ロール対6(直径40mm)にミセル除去液遮断カバー27が設置されていない。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が30秒、ディップ槽の出口ロール対5から境界部の搬送ロール対6までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。薄膜化途中の境界部の搬送ロール対6にはミセル除去水10が付着し、さらに境界部の搬送ロール対6を乗り越えたミセル除去水10が、境界部の搬送ロール対6よりも上流の基板3に接触していた。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は13.0μmであり、最小値は6.0μmであり、平均厚みは10.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、境界部の搬送ロール対6よりも上流で基板3にミセル除去水10が接触したことが原因と見られる薄膜化処理のムラが発生していた。
(実施例3)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置(図3)により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径40mm)にミセル除去液遮断カバー27(厚さ5mmの透明アクリル樹脂製、幅650mm×高さ50mm×奥行き50mmのL字型)が設置されている。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの12の入口ロール対9までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.0μmであり、最小値は6.5μmであり、平均厚みは8.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は11.0μm、最小値は6.5μm、平均厚みは9.0μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。
(実施例4)
ミセル除去液遮断カバー27(厚さ5mmの透明アクリル樹脂製、幅650mm×高さ50mm×奥行き50mmのL字型)において、入口ロール対9の下側ロールに設置されているミセル除去液遮断カバー27に、直径25mmの開口28が、下側ロールの真下の位置に、幅方向に対して55mm間隔で直線状に配置されているレジスト層の薄膜化装置(図4)を用いた以外は、実施例3と同様にして、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.0μmであり、最小値は6.5μmであり、平均厚みは8.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は6.5μm、平均厚みは8.5μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。また、ミセル除去液遮蔽カバー27に開口が存在していない実施例3と比較して、連続処理での薄膜化処理量がより安定していることが確認された。
(比較例2)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径40mm)にミセル除去液遮断カバー27が設置されていない。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの12の入口ロール対9までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
薄膜化途中、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9にはミセル除去液10が付着しており、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9を通過する前に、基板3上のレジスト層にミセル除去液10が接触しているのが確認された。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は9.0μmであり、最小値は5.5μmであり、平均厚みは7.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、入口ロール対9よりも上流で基板にミセル除去液10が接触したことが原因と見られる薄膜化処理のムラが発生していた。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は4.5μm、平均厚みは8.0μmであった。薄膜化処理終了後、ミセル除去液10が薄膜化処理ユニット11内に逆流したことによる薄膜化処理液1の液量の増加が確認され、上記ミセル除去液10が接触したことが原因と見られる薄膜化処理のムラに加え、薄膜化処理液1の濃度が低下したことが原因と思われる薄膜化処理のムラが発生していた。
(実施例5)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径D3:40mm)との間に、液切りロール対8(直径D2:40mm)が4対設置されており、各ロール対同士の間隔Lがすべて45mmである。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5から4対の液切りロールを通過し、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(45mm×5=225mm)を進む時間が10秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は11.0μmであり、最小値は9.0μmであり、平均厚みは10.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
(実施例6)
ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径:40mm)との間に、液切りロール対8(直径D2:40mm)が3対設置されており、各ロール対同士の間隔Lがすべて56.25mmであるレジスト層の薄膜化装置(図7)を用いた以外は、実施例5と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は11.5μmであり、最小値は9.0μmであり、平均厚みは10.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
(実施例7)
ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径D3:40mm)との間に、液切りロール対(直径D2:40mm)が2対設置されており、各ロール対同士の間隔Lがすべて75mmであるレジスト層の薄膜化装置を用いた以外は、実施例5と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は12.0μmであり、最小値は8.5μmであり、平均厚みは10.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
(実施例8)
ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径D3:40mm)との間に、液切りロール対8(直径D2:40mm)が1対設置されており、各ロール対同士の間隔Lがすべて112.5mmであるレジスト層の薄膜化装置を用いた以外は、実施例5と同じ方法で、レジスト層を薄膜化処理した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は12.5μmであり、最小値は8.0μmであり、平均厚みは11.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
(実施例9)
ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径D3:40mm)との間に、液切りロール対8(直径D2:40mm)が2対設置されており、ディップ槽の出口ロール対5と最初の液切りロール対8の間隔L1が135mm、2対の液切りロール対8同士の間隔L2が45mm、液切りロール対8とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔L3が45mmであるレジスト層の薄膜化装置を用いた以外は、実施例5と同じ方法で、レジスト層を薄膜化処理した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は13.0μmであり、最小値は7.5μmであり、平均厚みは11.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
実施例5〜9を比較すると、ディップ槽の出口ロール対5、液切りロール対8、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9のそれぞれの間隔Lが、各ロールの直径Dに対して、1倍超、3倍以下(D<L≦3D)である実施例5〜8では、レジスト層の薄膜化処理量がより均一であることがわかる。
(比較例3)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み0.2mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ディップ槽の出口ロール対5(直径D1:40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径D3:40mm)との間に、液切りロール対8がなく、各ロール対同士の間隔Lが45mmである。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(45mm)を進む時間が2秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12によって、不溶化ミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は9.0μmであり、最小値は6.5μmであり、平均厚みは8.0μmだった。しかし、薄膜化処理終了後、ディップ槽2から持ち出された薄膜化処理液1がミセル除去処理ユニット12中に多量に持ち込まれ、ミセル除去液10のpHが急激に上昇しているのが確認された。この状態で、次の基板3を投入し、ミセル除去液10のpHが高いこと以外は、上記と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は4.0μm、平均厚みは7.5μmであり、高pHのミセル除去液が接触したことが原因と思われる処理ムラが発生していた。また、薄膜化処理終了後、ミセル除去液10のpHは、1枚目の基板処理後よりもさらに上昇していた。
(比較例4)
液切りロール対8はなく、ロール対同士の間隔Lが135mmであり、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(135mm)を進む時間が6秒となるように、薄膜化処理を行った以外は、比較例3と同じ方法でレジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は11.5μmであり、最小値は6.0μmであり、平均厚みは9.5μmだった。しかし、薄膜化処理終了後、ディップ槽2から持ち出された薄膜化処理液1がミセル除去処理ユニット12中に多量に持ち込まれ、ミセル除去液10のpHが急激に上昇しているのが確認された。この状態で、次の基板3を投入し、ミセル除去液10のpHが高いこと以外は、上記と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は11.0μm、最小値は5.0μm、平均厚みは8.5μmであり、高pHのミセル除去液が接触したことが原因と思われる処理ムラに加え、薄膜化処理液1の液膜が流動したことが原因と思われる処理ムラが発生していた。また、薄膜化処理終了後、ミセル除去液10のpHは、1枚目の基板処理後よりもさらに上昇していた。
(実施例10)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み1.6mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置(図9)により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ディップ槽の出口ロール対5(直径40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径40mm)の間に、高さ100mmの防液壁25が設置されている。ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔は90mmであり、防液壁25はロール対同士の中間(45mm位置)に設置されている。ロール対は、高さ100mmの防液壁25に対し、下ロールの軸中心までの高さが125mmになるように設置した。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.0μmであり、最小値は6.5μmであり、平均厚みは8.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は6.5μm、平均厚みは8.5μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。
(実施例11)
ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に、液切りロール対8(直径40mm)がロール対同士の間隔45mmで1対設置されているレジスト層の薄膜化装置(図10)を用いた以外は、実施例10と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は9.0μmであり、最小値は7.0μmであり、平均厚みは8.0μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は9.0μm、最小値は7.0μm、平均厚みは8.0μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。
(実施例12)
ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に、液切りロール対8(直径40mm)がロール対同士の間隔45mmで3対設置されているレジスト層の薄膜化装置(図11)により、レジスト層を薄膜化した。ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔は180mmであり、防液壁25は2対目の液切りロール対8の真下(90mm位置)に設置されている。ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(180mm)を進む時間が8秒になるように、それ以外は実施例10と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μmであり、最小値は8.5μmであり、平均厚みは9.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は8.5μm、平均厚みは9.5μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。
(実施例13)
ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に、液切りロール対8(直径40mm)がロール対同士の間隔45mmで3対設置されているレジスト層の薄膜化装置により、レジスト層を薄膜化した。ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔は180mmであり、防液壁25が1対目と2対目の液切りロール対8の中間(ディップ槽の出口ロール対5から67.5mmの位置)に設置されている以外は、実施例12と同じ方法で、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μmであり、最小値は8.5μmであり、平均厚みは9.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は8.5μm、平均厚みは9.5μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。
(比較例5)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み1.6mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、ディップ槽の出口ロール対5(直径40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径40mm)の間に、防液壁25がなく、ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔が90mmである。薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5からミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(90mm)を進む時間が4秒となるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は9.0μmであり、最小値は5.5μmであり、平均厚みは7.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.5μm、最小値は4.5μm、平均厚みは8.0μmであった。また、薄膜化処理終了後、ミセル除去液10が薄膜化処理ユニット11内に逆流したことによる薄膜化処理液1の液量の増加、ディップ槽2から持ち出された薄膜化処理液1がミセル除去処理ユニット12中に持ち込まれたことによるミセル除去液のpHの上昇が確認された。そのため、レジスト層には、薄膜化処理液1の濃度が低下したことが原因と思われる処理ムラに加え、高pHのミセル除去液10が接触したことが原因と思われる処理ムラも発生していた。
(実施例14)
ガラス基材エポキシ樹脂基板(面積510mm×340mm、銅箔厚み12μm、基材厚み1.6mm、三菱ガス化学社(MITSUBISHI GAS CHEMICAL COMPANY, INC.)製、商品名:CCL−E170)にドライフィルムレジスト用ラミネータを用いて、ドライフィルムレジスト(日立化成社(Hitachi Chemical Co., Ltd.)製、商品名:RY3625、厚み25μm)を熱圧着し、レジスト層を形成した。
次に、ドライフィルムレジストのキャリアフィルムを剥離した後、ディップ槽2を備えた薄膜化処理ユニット11とミセル除去液10によってミセルを除去するミセル除去処理ユニット12があるレジスト層の薄膜化装置(図12)により、レジスト層を薄膜化した。
レジスト層の薄膜化装置には、薄膜化処理ユニットの出口ロール対29(直径40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9(直径40mm)の両方にミセル除去液遮断カバー27(厚さ5mmの透明アクリル樹脂製、幅650mm×高さ50mm×奥行き50mmのL字型)が設置されており、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の下側ロールに設置されているミセル除去液遮断カバー27に、直径25mmの開口28が、下側ロールの真下の位置に、幅方向に対して55mm間隔で直線状に配置されている。
また、ディップ槽の出口ロール対5(直径40mm)とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9との間に、液切りロール対8(直径40mm)がロール対同士の間隔45mmで2対設置されている。ディップ槽の出口ロール対5とミセル除去処理ユニットの入口ロール対9の間隔は180mmであり、防液壁25が2対目の液切りロール対8の真下(90mm位置)に設置されている。ロール対は、高さ100mmの防液壁25に対し、下ロールの軸中心までの高さが125mmになるように設置されている。
このようなレジスト層の薄膜化装置により、薄膜化処理液1(アルカリ水溶液)として10質量%の炭酸ナトリウム水溶液(液温度25℃)を用いて、ディップ槽2における浸漬処理時間が20秒、ディップ槽の出口ロール対5から3対の液切りロールを通過し、ミセル除去処理ユニットの入口ロール対9までの距離(180mm)を進む時間が8秒になるように薄膜化処理を行った。その後、ミセル除去処理ユニット12において、不溶化したミセルを除去し、レジスト層を薄膜化した。
水洗処理及び乾燥処理の後に、レジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.0μmであり、最小値は8.5μmであり、平均厚みは9.5μmだった。また、薄膜化されたレジスト層の表面を光学顕微鏡で観察したところ、処理ムラはなく、平滑な面であることが確認された。
次に、1枚目の薄膜化処理と同じ条件で、20枚連続でレジスト層を薄膜化した。水洗処理及び乾燥処理の後に、20枚目の基板におけるレジスト層の薄膜化部の厚みを10点測定したところ、最大値は10.0μm、最小値は8.5μm、平均厚みは9.5μmであり、連続処理でも薄膜化処理量が安定していることが確認された。