JP3167559B2 - 温度センサ - Google Patents

温度センサ

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、体温計や温度計等の常
温下で使用される温度センサに関する。
【0002】
【従来の技術】温度センサとして一般的には、Ptなど
の貴金属の抵抗変化を利用したものや、Mn,Coなど
の酸化物半導体を利用したものが知られているが、これ
らは原材料が高価であったり高温での焼成を必要とする
ため、温度センサの低コスト化を図る上で難点がある。
そこで、従来より、カーボンを感温抵抗素子として用い
た安価な温度センサが提案されており、その一例が特公
昭62−29004号公報に開示されている。
【0003】上記公報に記載された温度センサは、アセ
チレンガスを焼成・炭化させて採集したカーボン粉末を
エポキシ樹脂中に混合分散してペーストを得、このペー
ストをベースフィルム上に設けられた電極間に塗布した
後、該ペーストを焼き付けて電極間に感温抵抗素子を形
成するように構成されており、原理的には、感温抵抗素
子を測定対象物に接触させて熱平衡の状態にした時の抵
抗値を利用する温度センサである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】前述した従来のカーボ
ン抵抗温度センサは、感温抵抗素子の原材料であるカー
ボン粉末が安価であり、比較的低温でペーストを焼き付
けることができるため、貴金属や酸化物半導体を利用し
た温度センサに比べてコストダウンを図ることができ
る。しかしながら、アセチレンガスを約1800°Cの
高温で炭化処理したカーボン粉末の比抵抗は非常に小さ
く、環境温度変化に対する感温抵抗素子の抵抗値変化が
著しく小さいため、測定温度範囲が4.2〜20(K)
程度の極低温に限られてしまい、常温下では測定不可能
であった。
【0005】本発明は、このような従来技術の実情に鑑
みてなされたもので、その目的は、常温下で使用される
安価な温度センサを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の温度センサは、電極間に配置される抵抗素
子として、640〜750°Cで炭化処理されて0.0
6〜0.27eVの活性化エネルギーを有する炭化物の
粉末をバインダ樹脂に混合分散してペースト化し、この
ペーストを640°Cよりも低温で焼成して形成される
ものを用いた点に特徴がある。
【0007】前記炭化物としては、フェノール樹脂、フ
リフリルアルコール、塩化ビニリデン、セルロース、木
などが用いられ、この炭化物の粉末をバインダ樹脂に混
合分散してペースト化し、このペーストをベースフィル
ムの端子間に印刷したり、一対のリード線の先端にディ
ップした後、炭化処理温度の下限値である640°Cよ
りも低温で焼成することにより、ベースフィルムやリー
ド線に抵抗素子が直接形成された温度センサを得る。
【0008】
【作用】本発明の温度センサにおいては、電極間に配置
される抵抗素子として、640〜750°Cで炭化処理
されて0.06〜0.27eVの活性化エネルギーを有
する炭化物の粉末をバインダ樹脂に混合分散してペース
ト化し、このペーストを640°Cよりも低温で焼成し
て形成されるものを用いたことから、材料費や製造費を
含めて温度センサのトータルコストを著しく低減するこ
とができ、常温下での環境温度変化に対して大きな抵抗
値変化を示す。また、炭化物の形態がペーストであって
も、バルクの場合と同様に温度センサとして良好な特性
を有する。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を図に基づいて説明す
る。図1は本発明の一実施例に係る温度センサの製造工
程を示す説明図であり、まず、図1(a)に示すフェノ
ール樹脂の積層板1を640〜750°Cで炭化処理
し、図1(b)に示すように前記積層板1の炭化物であ
る抵抗素子2を得る。この抵抗素子2はバルクまたはペ
ースト化して利用され、抵抗素子2をバルクとして利用
する場合は、図1(c)に示すように、抵抗素子2の両
端にフェノールやエポキシなどの熱硬化性樹脂をバイン
ダとする銀ペーストを塗布し、該銀ペーストを硬化させ
ることにより、抵抗素子2の両端に電極3が一体形成さ
れたチップタイプの温度センサを得る。この温度センサ
は、図示せぬプリント基板上に面実装したり、前記電極
3に図示せぬリード線を接続して使用される。一方、前
記抵抗素子2をペースト化して利用する場合は、抵抗素
子2の粉末とフェノールやエポキシなどの熱硬化性樹脂
からなるバインダとを混練してペースト化した後、例え
ば図1(d)に示すように、このペーストをポリイミド
等の耐熱性の高いベースフィルム4の端子5間に印刷
し、さらに該ペーストを120〜240°Cで焼成する
ことにより、ベースフィルム4上に印刷形成された温度
センサを得る。あるいは、前記ペーストを図示せぬ一対
のリード線の先端にディップした後、該ペーストを12
0〜240°Cで焼成しても良い。
【0010】このように構成された温度センサは、抵抗
素子2の原材料としてフェノール樹脂を用いているた
め、貴金属や酸化物半導体を利用した温度センサに比べ
て著しいコストダウンを図ることができる。また、抵抗
素子2の活性化エネルギーが0.06〜0.27eV
で、環境温度による抵抗値変化が酸化物半導体のレベル
まで大きいため、常温下での温度測定に供することがで
きる。また、抵抗素子2をバルクとして用いた場合とペ
ースト化した場合とでほぼ同様な特性が得られるため、
使用目的に応じて種々の温度センサを提供することがで
きる。
【0011】前記抵抗素子2の炭化温度を640〜75
0°Cの範囲に特定するのに際し、以下の実験を行っ
た。まず、原材料としてのフェノール樹脂積層板を空気
中で1時間,400°Cで焼成して酸化処理した後、こ
のフェノール樹脂積層板を真空ポンプで脱気しながら3
時間,600°C、620°C、640°C、660°
C、700°C、750°C、850°Cの各温度で熱
処理し、炭化処理温度の異なる7種類の炭化物を製造し
た。次いで、各炭化物のバルク(以下、バルク抵抗素子
と称す)と各炭化物の粉末を含むペーストの焼成物(以
下、ペースト抵抗素子と称す)とについて、それぞれ比
抵抗と温度特性を測定した。ここで各ペースト抵抗素子
は、各炭化物の粉末(0.3g)にキシレン変性フェノ
ール樹脂(0.44g)とカルビトール(0.12g)
およびアセトン(適量)をかっこ内の配合比で加え、ア
セトンが蒸発揮散するまで混練してペースト化した後、
このペーストを銅張ポリイミドフィルムに滴下して22
分間,200°Cで焼成して形成した。
【0012】 比抵抗の測定結果 バルク抵抗素子の比抵抗ρは、炭化物の両端に定電圧I
(0.1mA)を印加し、その内側の長さL(0.8m
m)位置で測定される電圧Vから抵抗値R=V/Iとし
て求め、この抵抗値Rと炭化物の幅W,厚さTから、 ρ=R・W・T/L として求めた。ペースト抵抗素子の比抵抗ρは、各焼成
物の長さL,幅W,厚さTと抵抗値Rとを測定し、 ρ=R・W・T/L として求めた。図2はこれらの測定結果を示す図であ
り、縦軸に比抵抗、横軸に炭化温度をとってある。同図
から明らかなように、バルク抵抗素子とペースト抵抗素
子は、それぞれ炭化処理温度が高くなるのに従ってその
比抵抗が対数的に減少し、その値は黒鉛のC軸方向の比
抵抗に対して数桁大きな値となっている。また、640
〜850°Cの各炭化処理温度において、ペースト抵抗
素子の比抵抗はそれぞれバルク抵抗素子の比抵抗に対し
て約2桁大きな値となっている。なお、炭化処理温度が
600°Cと620°Cのサンプルについては、絶縁抵
抗が高すぎて測定の限界を超えた。
【0013】 温度特性の測定結果 バルク抵抗素子とペースト抵抗素子をそれぞれ20°
C、0°C、−20°C、−40°C、20°C(基
準)、40°C、70°C、85°C、20°Cの環境
下に順次放置し、その時の抵抗値を測定した。図3はそ
の測定結果を示す図であり、縦軸に比抵抗、横軸に環境
温度をとってある。同図から明らかなように、比抵抗の
対数と環境温度の逆数は正比例の関係にあり、その傾き
は同じ炭化処理温度のバルク抵抗素子とペースト抵抗素
子とで一致している。また、炭化処理温度が高くなるに
従ってその傾きは小さくなる。このように比抵抗の対数
と環境温度の逆数は正比例の関係にあることから、バル
ク抵抗素子とペースト抵抗素子は半導体に関する簡単な
式 ρT=ρ・EXP(ΔE/2kT)…………(1) T;絶対温度、k;ボルツマン定数、ρ,ΔE;定数 に従うものと考えられる。そこで、図3の測定結果を
(1)式に代入してρとΔEを計算すると、
【0014】
【表1】
【0015】のようになる。
【0016】この表1から、炭化処理温度が750°C
を超えると、活性化エネルギーΔEが0.06(eV)
よりも小さくなり、環境温度による抵抗値変化が小さす
ぎて常温での使用に不適であることがわかる。したがっ
て、以上の比抵抗と温度特性の測定結果より、抵抗素子
2として炭化処理温度が640〜750°Cで、0.0
6〜0.27eVの活性化エネルギーを有する炭化物を
使用すれば、その形態がバルクであるかペーストである
かに拘らず、常温下での温度センサとして良好な特性を
有することが明らかとなる。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
電極間に配置される抵抗素子として、640〜750°
Cで炭化処理されて0.06〜0.27eVの活性化エ
ネルギーを有する炭化物の粉末をバインダ樹脂に混合分
散してペースト化し、このペーストを640°Cよりも
低温で焼成して形成されるものを用いたことから、材料
費や製造費を含めて温度センサのトータルコストを著し
く低減することができると共に、常温下での環境温度変
化に対して大きな抵抗値変化を示すため、常温使用タイ
プの温度センサを安価に提供することができる。また、
前記炭化物の形態がペーストであるのにも拘らず、バル
クの場合と同様に温度センサとして良好な特性を有する
ことから、使用目的に応じた種々のタイプの温度センサ
を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る温度センサの製造工程
を示す説明図である。
【図2】比抵抗と炭化温度の関係を示す説明図である。
【図3】比抵抗と環境温度の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
1 積層板 2 抵抗素子 3 電極 4 ベースフィルム 5 端子
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−124221(JP,A) 特開 昭62−106602(JP,A) 特開 昭62−263605(JP,A) 特開 平3−132001(JP,A) 特開 平4−38430(JP,A) 特開 昭56−3905(JP,A) 特開 昭55−31983(JP,A) 特開 昭61−64758(JP,A) 特開 平1−230470(JP,A) 特開 平3−38004(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01K 7/16

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極間に配置される抵抗素子からなり、
    この抵抗素子は、640〜750°Cで炭化処理されて
    0.06〜0.27eVの活性化エネルギーを有する炭
    化物の粉末をバインダ樹脂に混合分散してペースト化
    し、このペーストを640°Cよりも低温で焼成して形
    成されることを特徴とする温度センサ。
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