JP3118122B2 - 甘味調味料の製造法 - Google Patents

甘味調味料の製造法

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JP3118122B2 JP05232169A JP23216993A JP3118122B2 JP 3118122 B2 JP3118122 B2 JP 3118122B2 JP 05232169 A JP05232169 A JP 05232169A JP 23216993 A JP23216993 A JP 23216993A JP 3118122 B2 JP3118122 B2 JP 3118122B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フェルラ酸、フェルラ
酸エチルエステル、バニリン、バニリン酸等の、重厚な
香味成分の豊かな甘味調味料の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、脱脂した赤ヌカ及び/またはトラ
ヌカを、アミラ−ゼ、米麹およびフスマ麹等で加水分解
し、得られた香味液を味淋に添加し、コクミ、フクラミ
が付与された味淋を得ることが知られている(特公昭5
5−48779)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この方
法は香味液を調製するためのヌカ原料を新たに必要と
し、しかも原料をヌカに依存しているため製品は、原料
ヌカの品質に大きく左右され、香味液はそのままでは、
ヌカ特有の異味、異臭により、高濃度で添加できない危
険性を有する。
【0004】従って、本発明はヌカ原料を使用すること
なく、香味の豊かな甘味調味料を得ることを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するため鋭意検討を重ねた結果、通常の甘味調味
料の醪の糖化熟成工程において、ヒドロキシシナミック
酸エステル加水分解酵素高生産能を示すアスペルギルス
属微生物の培養物、その抽出物、または該ヒドロキシシ
ナミック酸エステル加水分解酵素を所定量添加使用せし
めるときは、フェルラ酸、フェルラ酸エチルエステル、
バニリン、バニリン酸等、重厚な香味成分の豊かな甘味
調味料が得られることを知り、この知見に基づいて本発
明を完成した。即ち、甘味調味料の醪糖化熟成工程にお
いて、ヒドロキシシナミック酸エステル加水分解酵素を
澱粉質原料1kg当り10単位以上添加作用せしめるこ
とを特徴とする甘味調味料の製造法である。
【0006】以下本発明を詳細に説明する。先ず、本発
明でいう甘味調味料としては、通常の味淋の製造法に従
って、蒸した粳米または糯米に、米麹と水とアルコ−ル
を混和し、該粳米または糯米をアルコ−ルの存在下で麹
菌酵素で糖化熟成し、固液分離して得られる味淋;蒸し
た粳米またはα化した澱粉に酸またはα−アミラ−ゼ等
の酵素剤を作用させ、該ウルチ米の澱粉または該α化し
た澱粉の95%以上を液化し、該液化物をそのままアル
コ−ル及び米麹とともに仕込み、糖化熟成した後、固液
分離して得られる酒精含有甘味調味料;蒸した穀類また
はα化した澱粉原料を主原料とし、これに米麹(または
糖化酵素)、食塩、水を加えて仕込み、さらに必要によ
り酵母、乳酸菌を加え、発酵熟成後、固液分離して得ら
れる酒精含有含塩甘味調味料(発酵調味料);及びアミ
ノ酸含有甘味調味液など、糖濃度が16〜75%の甘味
調味料が挙げられる。
【0007】次に本発明を実施するには、上記甘味調味
料の醪の糖化熟成工程において、ヒドロキシシナミック
酸エステル加水分解酵素を添加作用せしめる。
【0008】本発明に用いるヒドロキシシナミック酸エ
ステル加水分解酵は、既に本発明者らが特開昭57−9
9193号において、詳細に開示したものであって、例
えばアスペルギルス・ヤポニカスATCC20236、
アスペルギルス・ニガ−IAM3002、アスペルギル
ス・サイトイATCC14332等の菌株を糸状菌の培
養に用いられる栄養培地を用い常法に従って固体培養、
または液体培養し、得られた培養物をそのまま使用す
る。
【0009】あるいは、その固体培養物の水抽出液ある
いは液体培養物の濾液を清澄化したものを、硫安等を用
いる塩析法またはアルコ−ル沈殿法により沈殿物を得、
これを乾燥して得られた粗酵素を用いる。
【0010】あるいは、その粗酵素を更に緩衝液等に溶
解後、DEAE−セファデックスA−50、QAE−セ
ファデックスA−50、またはCM−セファデックス等
のイオン交換セファデックスや、セファデックスG−2
00等のセファデックスを用いるゲル濾過法、アンフォ
ラインを用いる等電点分画法、アセテ−ト膜澱粉、アク
リルアマイドゲルを用いる電気泳動法、その他等電点沈
殿法等の個々の手段、または、これらの適当な組合せを
適宜採用することによって、精製酵素を得、これを用い
る。(本発明では、上記粗酵素、精製酵素を「培養物の
処理物」という)
【0011】これらの微生物は下記Aの製麹方法条件で
製麹した場合の麹中のヒドロキシシナミック酸エステル
加水分解酵素活性が、下記Bの活性測定法において0.
5単位/g麹以上のヒドロキシシナミック酸エステル加
水分解酵素生産能を示す微生物を用いるときは、その培
養物中に、該酵素を著量生成蓄積させることができるの
で、粗酵素あるいは精製酵素のような形態とする必要が
なくなり、そのまま添加作用させることができるので好
ましい。 A 製麹方法条件 1リットル容フェルンバッハフラスコに80%撒水した
フスマ36gを投入し、120℃で1時間加圧殺菌し、
冷却後アスペルギルス属微生物を接種し、30℃で72
時間培養する。 B ヒドロキシシナミック酸エステル加水分解酵素活性
測定法 アグリカルチュラルバイオロジカルケミストリ−46
巻、297頁(1982)により測定する。
【0012】甘味調味料の醪の糖化熟成工程において添
加作用せしめる上記酵素は、形態、酵素の比活性、酵素
を作用せしめる方法等の相違により異なるが、出発原料
である澱粉質原料1kg当たり、1単位以上、好ましく
は10〜100単位使用することが好ましい。
【0013】添加する時期は、醪の糖化熟成工程中の任
意の時期が挙げられるが、仕込み初期の醪に添加するこ
とが好ましい。
【0014】
【作用】このようにヒドロキシシナミック酸エステル加
水分解酵素を甘味調味料の醪糖化熟成工程において添加
作用せしめると、該酵素が米、麦、トウモロコシ等の澱
粉質原料に作用して、該原料由来の遊離のフェルラ酸を
醪中に生成蓄積せしめ、このフェルラ酸の一部は醪中に
存在するアルコ−ルと反応して、重厚な香味を有するフ
ェルラ酸エチルエステルとなり、またフェルラ酸の残り
の一部が分解してバニリン酸、バニリン等の甘い香味を
有する物質となるため、甘味調味料の風味が非常に良好
になる。
【0015】以下、実施例を示して本発明をより具体的
に説明する。
【実施例1】 (風味の良好な味淋の調製例)精白した糯米1kgを常
法通り洗米、浸漬し、水切りした後、蒸きょうし、得ら
れた蒸糯米を、放冷し、これに約40%濃度のアルコ−
ル水を760mlと、米麹約200gを加えて、味淋醪
を調製し、これにヒドロキシシナミック酸エステル加水
分解酵素の粗酵素粉末を、表1記載の如き各濃度となる
ように添加し、その後30℃で1カ月熟成させ、常法に
より圧搾、オリ引き、火入れ、濾過して本発明の味淋を
得た。なお、比較のために、ヒドロキシシナミック酸エ
ステル加水分解酵素の粗酵素を用いない、以外は全く同
様にして対照の味淋を得た。
【0016】このようにして得られた本発明及び対照の
味淋における、香気成分の前駆体であるフェルラ酸、及
び香気成分であるフェルラ酸エチルエステル、バニリ
ン、バニリン酸をそれぞれO.D.Sを分離用の樹脂
(東ソー社製TSKgel・ODS−120T)とする
高速液体クロマトグラフィ−を用いて測定した。また、
10名のパネルにより官能検査を実施した。官能検査
は、味淋の香り、味について、評点法により行い、対照
の味淋に比べて、優れているを+2、やや優れているを
+1、差がないを0、やや劣るを−1、劣るを−2と評
価し、その平均値を示した。その結果を表1に示す。
【0017】
【表1】
【0018】
【実施例2】 (風味の良好な酒精含有甘味調味料の製造例)精白した
粳米1kgを常法により洗米、浸漬、水切りし、蒸きょ
うして、蒸し粳米1.4kgを得、これに水440ml
及びα−アミラ−ゼ剤0.4g(スピタ−ゼCP、ナガ
セ産業社製)を混和し、70℃で40時間保持し、粳米
の澱粉をほぼ完全に液化した。次いでこの液化物を米麹
200g及び95%アルコ−ル280mlと共に仕込み
を行い醪を得た。この醪に、以下の方法で得られる2.
0単位/g麹のヒドロキシシナミック酸エステル加水分
解酵素生産能を示す、アスペルギルス・ヤポニカスAT
CC20236の培養物(黒麹)を、表2に示す如き酵
素濃度となるように添加作用させ、25℃で10日間糖
化熟成を行い、次いで圧搾、オリ引き、火入れ、濾過し
て、本発明の酒精含有甘味調味料を得た。また、比較の
ため、上記酒精含有甘味調味料の製造法において、黒麹
を用いない、以外は全く同様にして、対照の酒精含有甘
味調味料を得た。
【0019】(黒麹菌アスペルギルス・ヤポニカスAT
CC20236の菌株の培養物の調製)容量1リットル
のフェルンバッハフラスコに、80%撒水したフスマを
36gを投入し、120℃で1時間加圧殺菌し、冷却後
アスペルギルス・ヤポニカスATCC20236の菌株
を接種し、30℃で72時間培養し、黒麹を得た。この
麹は、ヒドロキシシナミック酸エステル加水分解酵素活
性が、2単位/g麹を示した。なお、上記酵素活性は、
アグリカルチュラルバイオロジカルケミストリ−46
巻、297頁(1982)により測定した。
【0020】このようにして得られた本発明及び対照の
酒精含有甘味調味料の香気成分を測定し、また官能検査
をそれぞれ実施例1と同様に実施した。その結果を表2
に示す。
【0021】
【表2】
【0022】実施例1及び2の結果から、ヒドロキシシ
ナミック酸エステル加水分解酵素を甘味調味料の醪糖化
熟成工程において、添加使用すると、醪液汁中にフェル
ラ酸エチルエステル、バニリン、バニリン酸が著量生成
蓄積されて、重厚な香味成分が豊かになり、風味良好な
甘味調味料が得られることが判る。また、実施例2の結
果から、0.5単位/g麹以上のヒドロキシシナミック
酸エステル加水分解酵素高生産性微生物を用いるとき
は、その培養物中に、該酵素を著量生成蓄積させること
ができるので、粗酵素あるいは精製酵素のような形態と
する必要がなくなり、培養物をそのまま添加作用させ、
風味の良好な甘味調味料が得られることが判る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−92699(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/22 - 1/236 JICSTファイル(JOIS) JAFICファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】甘味調味料の醪糖化熟成工程において、ヒ
    ドロキシシナミック酸エステル加水分解酵素を澱粉質原
    料1kg当り10単位以上添加作用せしめることを特徴
    とする甘味調味料の製造法。
  2. 【請求項2】ヒドロキシシナミック酸エステル加水分解
    酵素として、下記Aの製麹方法条件で製麹した場合の麹
    中のヒドロキシシナミック酸エステル加水分解酵素活性
    が、0.5単位/g麹以上のヒドロキシシナミック酸エ
    ステル加水分解酵素生産能を示すアスペルギルス属微生
    物の培養物またはその処理物を用いる請求項1に記載の
    甘味調味料の製造法。 A 製麹方法条件 1リットル容フェルンバッハフラスコに80%撒水した
    フスマを36g投入し、120℃で1時間加圧殺菌し、
    冷却後アスペルギルス属微生物を接種し、30℃で72
    時間培養する。
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