JP3035741B2 - Ｖベルト変速機のプーリ構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の技術分野〕 本発明は可動プーリ等の軽量化を可能にしたＶベルト
変速機のプーリ構造に関する。

〔従来技術〕

Ｖベルト変速機は、一対の固定プーリと可動プーリと
の間にＶベルトを巻回させ、その可動プーリの背面側に
カムプレートとの間に重錘を挟持させ、その重錘を遠心
力により径方向に移動させることにより、可動プーリを
上記固定プーリに対し軸方向に接近させたり、離間させ
たりすることによってＶベルトの巻回径を自動的に変え
る構成になっている。このような構成において、固定プ
ーリは回転軸上に直接固定されることにより、その回転
軸から直接動力を入力するが、可動プーリは回転軸上に
固定したカムプレートから凹凸嵌合のトルク伝達機構を
介して間接的に入力するようになっている。

従来、このように可動プーリとカムプレートとの間に
設けるトルク伝達機構としては、可動プーリ側の外周部
内壁面に幅広の案内凸部を軸方向にそって設ける一方、
カムプレート側の外周部に切り欠き状の凹部を形成し、
この凹部にスライダーを取り付けて上記案内凸部に摺動
自在に嵌合させる構成になっていた。しかし、このよう
な構造であると、可動プーリは幅広の案内凸部を設ける
分だけ重量増を招き、動力損失を多くする結果になって
いた。

〔発明が解決しようとする課題〕

本発明の目的は、上述した従来の問題を解消し、可動
プーリ等の一層の軽量化を可能にすると共に、この改良
に伴う湿式潤滑に伴う潤滑油の消費量を低減可能にする
Ｖベルト変速機のプーリ構造を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

上記目的を達成する本発明は、回転軸に固定プーリを
固定すると共に、該固定プーリに対向させて可動プーリ
を摺動自在かつ回転自在に軸支し、さらに該可動プーリ
の背面側に延びる前記回転軸上にカムプレートを固定
し、該カムプレートと前記可動プーリとの間に、遠心力
により半径方向に移動する重錘を挟持させると共に、湿
式潤滑される凹凸嵌合のトルク伝達機構を介在させ、前
記固定プーリと可動プーリとの間にＶベルトを挟持させ
たＶベルト変速機において、前記トルク伝達機構を、前
記可動プーリの外周壁内周面に回転軸方向に沿って形成
したリブに囲まれた凹部と、前記カムプレートの外周部
に形成した凸部とを、前記凹部に固定した摺動用部材を
介して互いに嵌合させることにより構成し、前記摺動用
部材を前記リブに沿う左右の壁部を前記固定プーリ側の
端部で互いに連結してコ字状に形成する一方、前記カム
プレートの凸部のプーリ周方向両端に前記固定プーリ側
に延びる左右のプレート壁を折り曲げ形成し、該凸部を
前記可動プーリの背面に向かって開くコ字状に形成した
ことを特徴とするものである。

〔実施例〕

以下、図に示す実施例によって説明する。

図は、小型自動二輪車の後輪伝達用に設けられたＶベ
ルト変速機の駆動側を示すものである。第１図におい
て、１は図示しないエンジンのクランク軸（回転軸）で
あり、その軸端に固定プーリ２が固定されている。ま
た、この固定プーリ２に対向して可動プーリ３が軸方向
に摺動自在かつ回転自在に軸支されている。４はＶベル
トで、固定プーリ２と可動プーリ３との間に挟持される
ように巻回され、図示しない被駆動プーリ側に延びてい
る。

可動プーリ３の背面側のクランク軸１上には、傾斜カ
ム面5cを有するカムプレート５が固定され、その傾斜カ
ム面5cと可動プーリ３との間に円筒状の重錘６が半径方
向に移動可能に挟持されている。重錘６は、カムプレー
ト５がクランク軸１と共に回転するとき遠心力によって
傾斜カム面5cに沿って径方向に移動し、その移動によっ
て可動プーリ３を軸方向に移動させ、プーリ2,3に対す
るＶベルト４の巻回径を変化させるようになっている。

カムプレート５は板金製であって、第３図に示すよう
に、その外周の等間隔に離れた３ヵ所にそれぞれ凸部７
を形成している。この凸部７は、第２図に示すように、
そのプーリ周方向両端に固定プーリ２側に延びる左右の
プレート壁7a,7bを折り曲げ形成することにより可動プ
ーリ３の背面に向かって開くコ字状となっており、この
折り曲げられた左右のプレート壁7a,7bによって凸部７
に広い摺接面を形成して局部的負荷を軽減するようにし
ている。また、この折り曲げによって、高い剛性が与え
られるようになっている。

一方、可動プーリ３の外周部には、その背面側に延び
る外周壁が形成され、前記凸部７に対応して、可動プー
リ３側の外周壁内周面には回転軸方向に延びるリブ11が
形成され、このリブ11を左右に配することによって溝状
の凹部８を形成している。かつこの凹部８には、その左
右両側面を覆うように自己潤滑性を有する樹脂製の摺動
用部材９が取り付けられている。この摺動用部材９はリ
ブ11に沿う左右の壁部9a,9bを固定プーリ２側の端部で
互いに連結することによりコ字状に形成されており、こ
の壁部9a,9b間に上述したカムプレート５の凸部７が嵌
合している。この凸部７の左右のプレート壁7a,7bに対
して摺動用部材９の左右の壁部9a,9bを摺接させながら
可動プーリ３が回転軸方向に摺動するようになってい
る。

このような凸部７と凹部８との係合によりトルク伝達
機構が形成され、カムプレート５から可動プーリ３にト
ルクが伝達されるようになっている。

なお、上記構成において、摺動用部材９の左右の壁部
9a,9bの内側の内摺動面は互いに平行ではなく、回転軸
の軸心Ｏで交差するように形成されている。これに対
し、摺動用部材９の両壁部9a,9b外側の凹部８に対する
嵌合面は、互いに平行な関係になっている。したがっ
て、摺動用部材９の摺動面が摩耗しても、遠心力によっ
て半径方向外側に移動することによってカムプレート５
の凸部７と常にガタのない摺動を行うことができるよう
になっている。

また、凹部８に対する摺動用部材９の装着は、第４図
に示すような構成にすることもできる。この実施例で
は、摺動用部材９の両壁部9a,9bの外側面に突起9cが設
けられ、この突起9cを凹部８側に設けた係合孔に係合さ
せるようになっている。また、可動プーリ３の外周壁に
は上記突起9cに対応して貫通孔12が設けられており、こ
の貫通孔12に棒を差し込んで、上記突起9cをこじること
により摺動用部材９の離脱交換を簡単に行なえるように
している。

上記凹凸嵌合によるトルク伝達機構や重錘６に対する
潤滑は、可動プーリ３の外周壁内周面にグリスが充填さ
れることにより湿式で行われる。グリスは可動プーリ３
の回転によって内周面に均一に分散しようとするが、上
記リブ11が滞留させるので、僅かのグリス量を充填する
だけで潤滑ができるようになる。可動プーリ３の背面に
装着したキャップ10は、グリスの流れ止め用に設けられ
ている。

上述した構成からなるＶベルト変速機は、カムプレー
ト５と可動プーリ３との間のトルク伝達機構として、可
動プーリ３の外周壁内周面に設けたリブ11によって凹部
８を形成している。すなわち、従来装置のように幅広の
凸部を設けないから、その分だけ可動プーリ３を軽量化
することができる。しかも、トルク伝達機構や重錘を潤
滑する潤滑油（グリス）を、上記リブ11によって内周面
全体に分散させないように保留させることができるか
ら、少量の潤滑油によって高い潤滑を行うことができ
る。

また、左右の壁部9a,9bを有する摺動用部材９は取り
付けを容易にするため、コ字状で一体的に形成される
が、本発明では、その壁部9a,9bを、径方向外側で連結
するようなコ字状にせずに、固定プーリ２側の端部で互
いに連結してコ字状にしたので、同じ大きさの可動プー
リ３を用いて同じ駆動力を伝達する場合には、摺動用部
材の連結部分が径方向外側にない分だけ、摺動部分を径
方向外側に位置させて摺動用部材９と凸部７との接触面
の面圧を下げることができるため、より少量の潤滑油に
よる潤滑が可能になる。他方、摺動部分を径方向外側の
同じ位置に配置した場合には、摺動用部材の連結部分が
径方向外側にない分だけ、可動プーリ３の外径を小さく
して小型化することができ、軽量化に寄与する。

また、一般に、潤滑油は主として可動プーリ３とカム
プレート５との間に充填されているが、凸部７を可動プ
ーリ３の背面に向かって開くようにコ字状に折り曲げ形
成しているので、低速回転時に凹部８内におけるカムプ
レート５の凸部７とそれに対面する可動プーリ３の凹部
８の側部（可動プーリ３の背面）との間隔が狭くなって
いても、折り曲げられた左右のプレート壁7a,7b間に形
成された空間を通って外周壁内周面（凹部８の底面）に
潤滑油を充填することができ、かつ凸部７と凹部８の外
周壁内周面との間の隙間を介してカムプレート５背面側
にも潤滑油を供給することが可能になる。従って、高速
回転時は勿論のこと、低速回転時であっても、外周壁内
周面に潤滑油を充填し、凹凸嵌合によるトルク伝達機構
の潤滑性を高く維持することができる。

また、カムプレート５の凸部７の両端を折り曲げる構
成にして摺接面を大きくするようにすれば、カムプレー
トに対する局部的な負荷を軽減することができる。ま
た、凸部７の折り曲げ方向を、固定プーリ２側に向けて
行うようにすれば、カムプレート５の屈曲を少なく強度
を上げることができるから、さらに薄肉化を可能にす
る。

また、実施例のように、摺動用部材９は凹部８側にそ
の両側面に沿うように取り付けることが好ましい。この
ような凹部８側に摺動用部材９を装着することによっ
て、摺動用部材９は凸部７に対してその全摺動面を常時
摺接させず、絶えず摺動位置を変化させるから、全摺動
面を常時摺接する従来装置に比べて早期摩耗することが
ない。

〔発明の効果〕

上述したように、本発明によるＶベルト変速機のプー
リ構造は、可動プーリの外周部に軸方向に延びる凹部を
形成すると共に、カムプレートの外周部に凸部を形成
し、該凸部と前記凹部とを摺動用部材を介して互いに嵌
合させる構成にしたので、可動プーリに従来装置のよう
な幅広の凸部がなくなり、可動プーリ自体を軽量化する
ことができる。

また、上記凹部を、可動プーリの内周面に回転軸方向
にそって設けたリブによって形成したことによって、こ
のリブによりトルク伝達機構の潤滑油（グリス）を局所
的に保留することができ、少量の潤滑油による高い潤滑
を可能にする。

しかも、コ字状に形成される摺動用部材の壁部を、可
動プーリの径方向外方側で連結せずに、固定プーリ側の
端部で連結したので、同じ大きさの可動プーリを用いて
同じ駆動力を伝達する場合に、摺動用部材の連結部分が
径方向外方側にない分だけ、摺動部分を径方向外側に位
置させて摺動用部材と凸部との接触面の面圧を下げるこ
とができ、それによって、より少量の潤滑油による潤滑
が可能になる一方、摺動部分を径方向外側の同じ位置に
配置した場合には、摺動用部材の連結部分が径方向外方
側にない分だけ、可動プーリの外径を小さくして小型化
することが可能になり、軽量化に寄与する。

また、一般に、潤滑油は主として可動プーリとカムプ
レートとの間に充填されているが、カムプレートの凸部
を可動プーリの背面に向かって開くコ字状に形成したの
で、低速回転時にカムプレートの凸部とそれに対面する
可動プーリ凹部の側部との間隔が狭くなっていても、折
り曲げ形成された左右のプレート壁間に形成された空間
を通って外周壁内周面に潤滑油を供給することができ、
更に、凸部と外周壁内周面との間の間隙を介してカムプ
レート背面側にも潤滑油を充填することができ、カムプ
レート凸部と可動プーリ凹部の側部との間隔が広くなる
高速回転時は勿論のこと、カムプレート凸部と可動プー
リ凹部の側部との間隔が狭くなる低速回転時にあって
も、外周壁内周面に潤滑油を効果的に充填し、凹凸嵌合
によるトルク伝達機構の潤滑性を常に高く保つことがで
きる。

また、板金製のカムプレートの凸部を左右のプレート
壁を有する折り曲げ構造にしたので、広い摺接面を形成
してカムプレートに対する局部的な負荷を軽減すること
ができ、かつ高い剛性を付与することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の実施例からなるＶベルト変速機の要部
を示す縦断面図、第２図は第１図のII−II矢視図、第３
図は第１図の装置の可動プーリ背面側をキャップ10を外
した状態で見たときの背面図、第４図は他の実施例によ
る第２図に対応する図である。 １……クランク軸（回転軸）、２……固定プーリ、３…
…可動プーリ、４……Ｖベルト、５……カムプレート、
６……重錘、７……凸部、7a,7b……プレート壁、８…
…凹部、９……摺動用部材、9a,9b……壁部、11……リ
ブ。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) F16H 9/00 - 9/26 F16H 55/32 - 55/56

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】回転軸に固定プーリを固定すると共に、該
   固定プーリに対向させて可動プーリを摺動自在かつ回転
   自在に軸支し、さらに該可動プーリの背面側に延びる前
   記回転軸上にカムプレートを固定し、該カムプレートと
   前記可動プーリとの間に、遠心力により半径方向に移動
   する重錘を挟持させると共に、湿式潤滑される凹凸嵌合
   のトルク伝達機構を介在させ、前記固定プーリと可動プ
   ーリとの間にＶベルトを挟持させたＶベルト変速機にお
   いて、 前記トルク伝達機構を、前記可動プーリの外周壁内周面
   に回転軸方向に沿って形成したリブに囲まれた凹部と、
   前記カムプレートの外周部に形成した凸部とを、前記凹
   部に固定した摺動用部材を介して互いに嵌合させること
   により構成し、前記摺動用部材を前記リブに沿う左右の
   壁部を前記固定プーリ側の端部で互いに連結してコ字状
   に形成する一方、前記カムプレートの凸部のプーリ周方
   向両端に前記固定プーリ側に延びる左右のプレート壁を
   折り曲げ形成し、該凸部を前記可動プーリの背面に向か
   って開くコ字状に形成したＶベルト変速機のプーリ構
   造。