JP3024278B2 - 積層二軸延伸フィルムの製造方法 - Google Patents

積層二軸延伸フィルムの製造方法

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JP3024278B2
JP3024278B2 JP16561191A JP16561191A JP3024278B2 JP 3024278 B2 JP3024278 B2 JP 3024278B2 JP 16561191 A JP16561191 A JP 16561191A JP 16561191 A JP16561191 A JP 16561191A JP 3024278 B2 JP3024278 B2 JP 3024278B2
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克彦 林
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れたガスバリヤー性を
有する積層二軸延伸フィルムをインフレーション方式で
製造する方法、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン
化物層(以下EVOHと記す)を有する食品包装に用い
て好適な、積層二軸延伸フィルムを製造する方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】本発明者らはEVOH層とポリプロピレ
ン系樹脂(以下、PP系樹脂と略記する)の層からな
り、EVOH層が充分に薄くしかもガスバリヤー性を付
与するものとしてよく知られたポリ塩化ビニリデンを用
いた場合におけるような特有の臭いがなく、変色も起こ
らず、廃棄する場合焼却炉を痛めるなどという問題もな
く、しかもガスバリヤー性に優れた積層フィルムを得る
目的をもって、インフレーション方式により、EVOH
層とPP系樹脂とを有する積層二軸延伸フィルムを製造
する方法を発明した(特開平1−108028号公報参
照)。
【0003】即ち、この従来技術は、共押出成形により
外側からEVOH層、接着層、PP系樹脂層の積層順に
して、下向きチューブ状の積層体を押出し、外側から冷
却水により急冷する事により無延伸フィルムを得、得ら
れたチューブ状無延伸フィルムのEVOH層の含水率を
5〜15重量%にしてチューブラ二軸延伸をおこなった
後、熱処理固定を行なう積層二軸延伸フィルムの製造法
に係わり、次のような特長を有するものである。 (イ) チューブラ二軸延伸法を選びEVOH層とPP
系樹脂との安定延伸倍率のマッチングを図ったこと。 (ロ) EVOH層は逐次二軸延伸法での延伸が難し
く、同時二軸延伸法が適しているのでチューブラ二軸延
伸法を選択したこと。 (ハ) EVOH層を外層とし、無延伸フィルムを作る
工程で外部水冷方式を選んで急冷すると同時に、EVO
H層を含水状態にし、EVOH層の延伸を容易にしたこ
と。 (ニ) EVOH層とPP系樹脂を接着用樹脂で共押出
成形した場合、その接着力は、Tダイ成形法で積層無延
伸フィルムを作成するよりも、インフレーション成形法
で外部水冷方式で行なった方がはるかに大きく、延伸後
の接着力もその傾向が残ること。 (ホ) EVOH層は薄肉(数ミクロン)で使用するの
で酸素ガスバリヤー性を上げる必要があり、二層延伸処
理効果と熱処理効果を組み合わせてバリヤー性を向上さ
せたこと。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記公開公報に示され
る積層二軸延伸フィルムの製造方法は、上述の様な有用
な特長を備えているが、安定して厚みムラのない均一に
延伸されたフィルムを得るために、延伸前の原反フィル
ムのEVOH層中の水分量を5〜15重量%にする必要
があったが、延伸に際しては、原反フィルムを延伸可能
温度まで加熱する。この過程で、原反EVOH層中の水
分の多くは、蒸発発散するため、延伸時に持つ水分量は
減少した値となる。そして、蒸発する水分量は延伸装
置、加熱条件によって異なるため延伸時の水分量はまち
まちであった。よって、延伸前に含水率を調製しただけ
で、常に均一延伸を行うのは困難であった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記公開公報に記載され
る方法により、前記積層フィルムを製造する場合、安定
して厚みムラがなく、均一に延伸されたフィルムを、さ
らに効率よく製造するために種々検討を重ねた結果、延
伸温度と延伸開始点の原反EVOH層含水率に対し最適
な領域があることを見いだし本発明に到達した。本発明
の要旨は、共押出しインフレーション成形方式により、
エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を外層とし、
ポリプロピレン系樹脂層を内層としたフィルムをチュー
ブ状で下向きに押出し、押出されてくる上記チューブの
外層に、冷却水を直接接触させて冷却して無延伸原反フ
ィルムを得、得られたチューブ状無延伸原反フィルムを
100〜130℃の範囲のフィルム温度で延伸する際、
原反フィルム外側のエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン
化物層の延伸開始点での水分量を、関係式(1)で算出
される各延伸温度での最低必要含水率以上、5重量%未
満でチューブラ二軸延伸を行なうことを特徴とする積層
二軸延伸フィルムの製造方法である。
【0006】関係式(1) Q=a・e b・ T Q=T℃でのエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層
最低 必要含水率(重量%) T=延伸温度(℃) a=6.06×10-10 b=0.17 すなわち、共押出しインフレーション成形方式によりE
VOH層を外側にし、PP系樹脂層を内層とするように
積層フィルムを製造するとき、樹脂チューブを下向きに
押出し、そのチューブ外側のEVOH層に対して、直接
冷却用水を接触させて急冷する事が好ましい。この積層
フィルムを100〜130℃の範囲の延伸温度T℃で二
軸延伸させるにあたっては、EVOH層の延伸開始点で
の含水率を関係式(1)で求まる延伸温度T℃でのEV
OH層の最低必要含水率Q%以上とする。(Q…延伸温
度(T℃)での最低必要含水率) フィルムを延伸する際、EVOH層中の含水率をこの値
Q%以上に保持する理由は、含水率がQ%未満である
と、水分によるEVOH樹脂の可塑化効果が発揮され
ず、均一な延伸フィルムが得られ難いことによるもので
ある。一方、EVOH層中の水分は、無延伸原反フィル
ムを延伸可能温度まで加熱する間に加熱蒸発し発散する
ため、延伸開始点での水分を5重量%以上に保持させて
延伸することは、非常に困難であるため、延伸温度T℃
におけるEVOH層の含水率はQ〜5%未満で延伸す
る。
【0007】本積層フィルムの延伸にあたっては延伸温
度(T℃)は100〜130℃、好ましくは110〜1
30℃であるが延伸可能な範囲でできるだけ低温で延伸
を行うのが特に好ましい。延伸温度により最低必要含水
率が異なり低温延伸が好ましい理由は、EVOH層中の
水分で可塑化効果を発揮させ均一延伸を計るが、この均
一延伸に必要な含水率が延伸温度により異なるためで、
これは、原反フィルムのEVOH層の水素結合に起因し
た結晶化は加熱により著しく進行し、延伸が難しくなる
ことに起因する。すなわち、延伸温度が高いほど延伸に
対して困難な条件となる。
【0008】そこで、高い温度で延伸を可能とするに
は、大きい可塑化効果を得るためEVOH層の含水率を
高くする必要があるが上記理由から5重量%以上とし延
伸するのは難しい。しかし、延伸温度が130℃以下の
低い温度領域では結晶化の進行は著しいものではなく、
低い含水率で充分な可塑化効果が得られ、スムーズな延
伸が可能となり、透明で均一な延伸フィルムを製造する
ことが可能となる。ただし延伸温度が100℃に満たな
い場合、PP系樹脂の延伸が難しくなるため100℃以
上の温度で延伸する。
【0009】このように、チューブラ延伸を行うにあた
っては、EVOH層の含水率を、延伸開始点でQ%以上
にする必要がある。上述のように、積層フィルム外側の
EVOH層中の水分は、延伸装置内で加熱される際蒸発
してしまうため、予め蒸発分を考慮した水分率とし、延
伸装置に送る必要がある。共押出成形に際し水冷却さ
れ、その結果EVOH層の含水率が必要充分な含水率に
なっていればそれでよいが、不足している場合は、原反
フィルムのEVOH層の含水率を上げるため、温水浴中
を通過させたり、加熱水蒸気に接触させたりして、EV
OH層が所定の含水率になるようにする。
【0010】本発明の中でEVOH樹脂は、公知の方法
で製造されたものであれば特に制限なく、エチレン含有
率25〜50モル%、ケン化度が90%以上であり酸素
バリヤー性が高いものであれば支障はないが、ゲル含有
量が少なく熱安定性に優れた樹脂であることが特に好ま
しい。PP系樹脂としては、プロピレンのホモポリマー
のほか、ポリプロピレンを優位量(例えば70重量%以
上)とする混合物、例えばポリプロピレンと他のポリオ
レフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチ
レン−プロピレンラバー、エチレン−α−オレフィン共
重合体等との混合物、又はプロピレンを優位量とする他
のモノマー、例えばエチレン、ブテン、ヘキセン等との
共重合体などが挙げられ、メルトフローインデックス
(MFI(230℃で測定))が0.5〜20g/10
分の範囲にある樹脂が好ましい。
【0011】接着用樹脂は、ポリオレフィン樹脂を不飽
和カルボン酸でグラフト変性したものであれば、特に制
限はない。グラフト変性に用いる不飽和カルボン酸とし
ては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマー
ル酸、イタコン酸、またはそれらの無水物等が挙げられ
るが、この中で無水マレイン酸が好ましい。グラフト変
性量としては、ポリマー100重量部に対して0.05
〜5重量部が好適である。
【0012】上記ポリマーには、目的に応じて各種の添
加剤を混入して良い。共押出成形により、EVOH樹脂
を外層とした原反フィルムを作製する時のEVOH樹脂
層の吸水特性は、冷却時の冷却水温、冷却水量、冷却水
との接触時間に影響され、急冷されたものは吸水しやす
く、結晶化も抑えられ延伸性が良いため、本発明の場合
極力急冷する事が望ましい。
【0013】チューブラ延伸の方法は従来より公知のも
のであれば特に制限はない。延伸倍率は縦延伸倍率とし
て2.5〜5倍、横延伸倍率として2.5〜5倍が可能
であるが、好ましくは縦延伸倍率と横延伸倍率の積が9
〜25で、縦延伸倍率と横延伸倍率の比が、1:1〜
1.2:1であることが望ましい。延伸処理後、熱処理
を行なうが、このときの温度条件としては140〜16
0℃が好ましい。二軸延伸後の各層の厚みは、用途にも
よるが、EVOH層:接着層:PP系樹脂層の厚み比が
1〜3.5:0.2〜3:8.8〜5.5で、総厚みが
10〜40μmの積層体であるのがよい。
【0014】
【実施例】以下に、本発明の実施例を説明するが、本発
明はその要旨を越えない限り、この実施例によって制約
されるものではない。 実施例1 積層フィルムの作製条件(共押出多層水冷インフレフィ
ルム) (押出機) 外層押出機 (EVOH層) :35mmΦ、L/D=22、圧縮比=3.0 中間層押出機(接着性樹脂層):40mmΦ、L/D=26、圧縮比=3.5 内層押出機 (PP層) :40mmΦ、L/D=26、圧縮比=3.5 (ダイス) 3層ダイス:75mmΦ、スリット幅=1.2mm、トミー
機械工業(株)製 (冷却方式) アウトサイドマンドレルによる直接水冷方式 (原料樹脂) 外層:EVOH樹脂・・日本合成(株)製、商品名「ソアノールET」 エチレン含有量 38モル% 融点(MP) 173℃ MFI(210℃)4.0g/10分 中間層:接着用樹脂・・三菱化成(株)製、商品名「ノバテック AP196P」 ポリプロピレンを主体とした接着性 ポリマー 密 度 0.89g/cm3 M P 165℃ MFI(230℃)2.0g/10分 内層:PP樹脂・・・・三菱化成(株)製、商品名「NOVATEC −P1220F」 密 度 0.90g/cm3 M P 165℃ MFI(230℃)2.0g/10分 (成形条件) 水冷インフレーション成形法 成形温度 230℃ 押出量 外層:中間層:内層=1kg/hr:1kg
/hr:8kg/hr フィルム厚み 200μ (チュウブラ二軸延伸条件) 加熱方式:熱風エアーリング方式 熱風温度 135℃ 延伸開始点でのフィルム温度125℃ 延伸開始点でのEVOH層の含水率 1.5% 延伸倍率:縦3.5倍、横3.5倍 (熱処理) 熱処理温度 160℃ 熱処理時間 10秒 以上のようにして得られたフィルムは透明性がよく、延
伸性も安定しており、厚みムラは小さく、かつ酸素バリ
ヤー性に優れていた。得られたフィルムの物性評価を表
1に示す。
【0015】これらの物性評価は次の方法によった。 光学的性質ヘイズ:JIS K6714に準じた。 (23℃、65%RH) 引張強伸度:JIS K6782に準じた。 (23℃、65%RH) 酸素透過度:JIS Z1707に準じた。 (23℃、 0%RH)
【0016】また厚みムラを示すパラメターのV(%)
を次のように定義した。 V={(フィルム最大厚み)−(フィルム最小厚み)}
/(フィルム平均厚み) なお、フィルム平均厚みは、円周方向1cmおきに厚み
を測定し、その平均をとった。 実施例2 チューブラ二軸延伸温度を130℃とし延伸開始点での
EVOH層の含水率を3.5重量%とした他は、実施例
1と同様にして積層二軸延伸フィルムを得た。結果は表
1に示した通りで、得られたフィルムは透明性がよく、
延伸性も安定しており、厚みムラは小さく、かつ酸素バ
リヤー性に優れていた。 比較例1 チューブラ二軸延伸温度を130℃とし延伸開始点での
EVOH層の含水率をQ値を下まわる1.5重量%とし
た他は、実施例1と同様にして積層二軸延伸フィルムを
得た。結果は表1に示した通りで、厚みムラが大きく白
濁しており、また延伸ムラが存在し、包装用フィルムと
して不適当であった。
【0017】
【表1】
【0018】
【発明の効果】本発明の製造方法によって得られたフィ
ルムは、厚みムラがなく、均一に延伸され、ガスバリヤ
ー層としてEVOH層が積層されてガスバリヤー性に優
れた積層二軸延伸フィルムである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 午菴 弘喜 神奈川県横浜市緑区鴨志田町1000番地 三菱化成株式会社総合研究所内 (56)参考文献 特開 平3−243326(JP,A) 特開 平3−222719(JP,A) 特開 平3−110125(JP,A) 特開 平3−97524(JP,A) 特開 平2−251418(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 55/02 - 55/28 B32B 27/28 102

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共押出しインフレーション成形方式によ
    り、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層を外層と
    し、ポリプロピレン系樹脂層を内層としたフィルムをチ
    ューブ状で下向きに押出し、押出されてくる上記チュー
    ブの外層に、冷却水を直接接触させて冷却して無延伸原
    反フィルムを得、得られたチューブ状無延伸原反フィル
    ムを100〜130℃の範囲のフィルム温度(T℃)で
    延伸する際、原反フィルム外側のエチレン−酢酸ビニル
    共重合体ケン化物層の延伸開始点での水分量を、関係式
    (1)で算出される各延伸温度での最低必要含水率以
    上、5重量%未満でチューブラ二軸延伸を行なうことを
    特徴とする積層二軸延伸フィルムの製造方法。 関係式(1) Q=a・e b・ T Q=T℃でのエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物層
    最低必要含水率(重量%) T=延伸温度(℃) a=6.06×10-10 b=0.17
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