JP2982023B2 - プレキャスト組立工法用の梁 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明は、プレキャスト組立
工法用の梁に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】プレキャストコンクリート製の柱と梁と
を組み立てて建造物の骨組を構成するいわゆるプレキャ
スト組立工法では、梁の端部を柱に筋材で緊結すること
が行われているが、従来は、梁の端部の所定長部分の上
下両側か下側、もしくは、左右両側を肉厚に形成し、こ
の肉厚部の端の段部に筋材端を定着させるようにしてい
る。

【０００３】しかし、この従来技術のようにすると、梁
端部の緊結区間の断面の増大により剛性が増大するの
で、建造物の靭性設計を行う上で不利である。

【０００４】

【発明の目的】本発明の目的は、前述の従来技術の問題
点が解消され、かつ、筋材（ＰＣ鋼材）の配筋と緊張・
定着の作業面でも有利なプレキャスト組立工法用の梁を
提供することにある。

【０００５】

【発明の構成】前記目的を達成するために、本発明のプ
レキャスト組立工法用の梁では、両端部の背の中間位置
に、それぞれ、開口を形成するとともに、これら開口と
端面との間に、それぞれ、ＰＣ鋼材挿入孔を設け、さら
に、両開口間に両端部のＰＣ鋼材挿入孔と直列のダクト
孔を設けている。

【０００６】なお、本発明のプレキャスト組立工法用の
梁では、開口の壁面にせん断抵抗用の鉄板を取り付ける
のが好ましい。

【０００７】

【実施例の説明】図１において、１はプレキャストコン
クリート製の梁、２，２’は梁１の両端部に形成した断
面四角形の開口であり、開口２，２’は梁１の背の中間
位置において梁１の両側に貫通している。

【０００８】開口２，２’と梁１の端面３，３’との間
には、それぞれ、複数のＰＣ鋼材挿入孔４，４’が設け
られ、また、開口２，２’間には対応するＰＣ鋼材挿入
孔４，４’と直列のダクト孔５が設けられている。

【０００９】開口２，２’の四周の壁面には、開口２，
２’の形成により低下するせん断抵抗を補うために、図
２，図３に示すように、鉄板６，７，８，９を取り付け
るのが好ましいが、この場合、開口２，２’の端面３，
３’側の垂直壁面に取り付けられる鉄板６は、緊結用の
ＰＣ鋼材の定着板を兼ねることになるので、他の壁面の
鉄板７，８，９よりも厚くするのがよい。

【００１０】前述の梁１はプレキャストコンクリート製
の柱にＰＣ鋼材を介して緊結されるが、この緊結は、柱
１０の両側に梁１，１を接続する場合、図４，図５に示
すように柱１０を貫通してＰＣ鋼材１１を配設し、一側
（左方）の梁１の開口２’内に突出するＰＣ鋼材１１の
端をナットを介して開口２’の梁端面側の垂直壁面にに
支持させ、この状態で他側（右側）の梁１の開口２内に
突出するＰＣ鋼材１１ の端をジヤッキで引っ張り、緊張
したＰＣ鋼材１１の端をナットを介して開口２の梁端面
側の垂直壁面に支持させる、という態様でなされる。

【００１１】そして、前述の緊結作業におけるＰＣ鋼材
１１の緊張は、例えば、開口２を開口２’より大きく形
成して、この開口２内に小型ジヤッキ（図示しない）を
設置して行うことができるし（図４の場合）、また、外
端の柱１０’の外方にジヤッキ（図示しない）を設置し
て、後述の態様で行うこともできる（図５の場合）。

【００１２】また、前述の緊結作業を行うとき、梁１は
ブラケット等の手段で柱１０の側面の所定位置に仮設し
ておくが、各層の梁の全部を仮設してから緊結を行う
か、梁を逐次仮設しながら緊結を行うか、両側の複数の
梁の緊結が終わった後に中間梁の仮設・緊結を行うか、
これらは自由に選択できる。

【００１３】そして、例えば、各層の梁の全部を仮設し
てから開口内の小型ジヤッキで緊結作業を行う場合は、
所要数のＰＣ鋼材１１を図６に示すようにカップラー１
２で接続するとともに、その一端側にガイド用鋼棒（図
示しない）を接続して、一側の柱のＰＣ鋼材貫通孔から
他側の柱の方に挿入し、末端のＰＣ鋼材１１まで挿入さ
れた段階で、開口内で末端のＰＣ鋼材１１と次のＰＣ鋼
材１１とを接続するカップラー１２を取り外して末端の
ＰＣ鋼材１１を切り放し、その両端にナットを取り付け
けるとともに、小型ジヤッキを設置して、末端のＰＣ鋼
材１１の緊張・定着を行い、それから、次のＰＣ鋼材１
１を次の柱の位置まで移動させて、同様にその切り放し
と緊張・定着を行い、これを繰り返せばよい。

【００１４】また、各層の梁の全部を仮設してから外端
の柱の外方のジヤッキで緊結作業を行う場合は、例え
ば、前述の場合において、一旦、ＰＣ鋼材１１を切り放
してその両端にナットを取り付けた後、再びカップラー
１２で接続して外端の柱１０’の外方に設置したジヤッ
キで引っ張り、引張り側のナットを締め付けてから、カ
ップラー１２を再び外して、残りのＰＣ鋼材１１を移動
させればよい（図５参照）。

【００１５】必要に応じて、梁１の下ばにもダクト孔１
３を設け、前述の緊結作業が終了した後、全体の梁１の
ダクト孔１３に亙って鉄筋１４を配設するようにしても
よいが、この鉄筋１４は、ＰＣ鋼材１１と協力して柱と
梁の耐力・靭性を高めるとともに、梁１の下ば筋として
の働きをするものである。

【００１６】なお、開口２，２’は適宜手段で後処理す
るが、図２，図３に示す場合は、鉄板６，７，８，９に
梁１の巾よりも小さい巾のものを用い、これら鉄板で囲
む空間を両側から１対の蓋１５，１５で塞ぐとともに、
蓋１５の孔１６を通るボルト（図示しない）で締め付
け、蓋１５の外方の凹所には高強度モルタルを詰めて処
理するようにしている。

【００１７】

【発明の効果】本発明のプレキャスト組立工法用の梁
は、以上のようなものであるから、従来技術の梁のよう
に端部の剛性が増大して建造物の靭性設計を困難にする
ようなことがないのみならず、緊結用のＰＣ鋼材の配設
と緊張・定着を能率よく行うことができる利点がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の梁の一例の両端部の側面図である。

【図２】本発明の梁の別例の一端部の側面図である。

【図３】図２のＸ−Ｘ線断面図である。

【図４】本発明の梁を柱に緊結する作業の一態様を示す
側面図である。

【図５】本発明の梁を柱に緊結する作業の別態様を示す
側面図である。

【図６】配設時のＰＣ鋼材の接続態様を示す側面図であ
る。

【符号の説明】

１：梁、２，２’：開口、３，３’：端面、４，４’：
ＰＣ鋼材挿入孔、５：ダクト孔、６，７，８，９：鉄
板、１０，１０’：柱、１１：ＰＣ鋼材、１２：カップ
ラー、１３：ダクト孔、１４：鉄筋、１５：蓋、１６：
孔。

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 両端部の背の中間位置に、それぞれ、開
   口を形成するとともに、これら開口と端面との間に、そ
   れぞれ、ＰＣ鋼材挿入孔を設け、さらに、両開口間に両
   端部のＰＣ鋼材挿入孔と直列のダクト孔を設けたことを
   特徴とするプレキャスト組立工法用の梁。
2. 【請求項２】 開口の壁面にせん断抵抗用の鉄板を取り
   付けた請求項１記載のプレキャスト組立工法用の梁。