JP2912525B2 - Bwrプラントの炉水制御方法およびその装置 - Google Patents

Bwrプラントの炉水制御方法およびその装置

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JP2912525B2 JP5163563A JP16356393A JP2912525B2 JP 2912525 B2 JP2912525 B2 JP 2912525B2 JP 5163563 A JP5163563 A JP 5163563A JP 16356393 A JP16356393 A JP 16356393A JP 2912525 B2 JP2912525 B2 JP 2912525B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はBWRプラントの炉水制
御方法及びその装置に係り、特に、炉水放射能濃度を低
減するのに好適なBWRプラントの炉水制御方法及びそ
の装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のBWRプラント炉水制御技術とし
て、例えば特開昭62−85897号公報や特開昭63
−90796号公報に記載されているものがある。前者
(特開昭62−85897号公報)の従来技術では、B
WRプラントの給水系中の鉄濃度とニッケル濃度との比
(Fe/Ni)を所定値以上となるように制御してい
る。また、この従来技術では、給水系中のFe/Niが
所定値以下となったとき、給水系路内にFe酸化物の懸
濁液やFe水酸化物の懸濁液を注入するようにしてい
る。
【0003】一方、後者(特開昭63−90796号公
報)の従来技術では、原子炉に新しい燃料棒を装荷した
後、冷却水に鉄イオンを注入しつつ核加熱による予備運
転を行うことで、燃料棒表面に鉄酸化物の層を形成し、
その後、イオンの注入量を下げ、冷却水のFe/Niモ
ル濃度比を2〜10に保つように調整している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来技術で
は、鉄とニッケル等の比率が一定の範囲に入るように炉
水を制御することで、炉水中の放射性イオンを燃料棒の
表面でフェライト化させ、炉水中から放射性物質を除去
するようにしている。
【0005】しかし、これらの従来技術は、炉水中の金
属イオンの燃料棒表面への付着速度が十分に大きいこと
を前提にしている。このため、新しく開発されこれから
原子炉に装荷される燃料棒であるZrライナー管燃料の
ように、平滑な表面を持つ燃料棒では、金属イオンの表
面への付着速度が小さいため、フェライト化反応の前に
生じるべき鉄クラッドおよび放射性イオンの燃料棒表面
への付着が不十分となり、炉水中の放射能を効率よく除
去できないという問題が生じる。
【0006】本発明の目的は、金属イオン等の付着が生
じにくいZrライナー管燃料を原子炉に装荷した場合で
も、炉水中の放射能を効率よく低減できるBWRプラン
トの炉水制御方法及びその装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的は、Zrライナ
ー管燃料が炉心に装荷されるBWRプラントの炉水制御
方法において、燃料交換後新たに装荷されたZrライナ
ー管燃料の表面に所要量の金属酸化物を付着させるため
次の燃料交換までのプラント運転期間の前半期間に給水
中の金属酸化物濃度を高めることで、達成される。上記
目的は、好適には、所要量の金属酸化物皮膜がZrライ
ナー管燃料の表面に付着した後は給水中の前記金属酸化
物濃度を下げることで、達成される。
【0008】上記目的はまた、Zrライナー管燃料で構
成される燃料集合体が炉心に装荷されるBWRプラント
の炉水制御方法において、燃料交換後新たに装荷された
Zrライナー管燃料の表面に所要量の金属酸化物を付着
させるため次の燃料交換までのプラント運転期間の前半
期間に所定の目標量の金属酸化物を給水中に注入するこ
とで、達成される。上記目的は、好適には、前記所定の
目標量を、燃料集合体の全表面に所要の金属酸化物付着
密度を乗じて求めることで、達成される。上記目的は、
好適には、前記所要の金属酸化物付着密度を、30μg
/cm2〜400μg/cm2の範囲内の値とすること
で、達成される。上記目的は、好適には、金属酸化物の
注入積算量が前記目標量に達した後は給水中に注入する
金属酸化物の量を低減あるいは零にすることで、達成さ
れる。上記目的は、好適には、前記目標量に達するまで
は給水中に注入する金属酸化物の濃度を1.5ppb以
上とし、前記目標量に達した後は前記金属酸化物の濃度
を0.5ppb以下にすることで、達成される。
【0009】更に、上記目的は、好適には、給水中の金
属酸化物濃度を高める間あるいは給水中に目標量の金属
酸化物を注入する間は炉水のpHを7〜9の範囲にコン
トロールし、その後はpHを7以下に下げることで、達
成される。また、上記目的は、好適には、金属酸化物を
鉄酸化物とすることで、達成される。
【0010】上記目的はまた、Zrライナー管燃料が炉
心に装荷されるBWRプラントの炉水制御装置におい
て、燃料交換後新たに装荷されたZrライナー管燃料の
表面に所要量の金属酸化物皮膜を付着させるため次の燃
料交換までのプラント運転期間の前半に給水中の金属酸
化物濃度を高める手段を設けることで、達成される。
【0011】上記目的はまた、Zrライナー管燃料で構
成される燃料集合体が炉心に装荷されるBWRプラント
の炉水制御装置において、燃料交換後新たに装荷された
Zrライナー管燃料の表面に所要量の金属酸化物皮膜を
付着させるため次の燃料交換までのプラント運転期間の
前半期間に所定の目標量の金属酸化物を給水中に注入す
る手段を設けることで、達成される。
【0012】
【作用】BWRプラントにおける燃料棒への金属イオン
やクラッドの付着は、燃料棒表面における沸騰現象に伴
って生じるものと考えられており、配管等の沸騰のない
所での付着とは現象が異なる。この沸騰による付着に対
し、次の数1のような付着速度係数を用いてその付着効
率を評価している。
【0013】
【数1】
【0014】炉水中には、腐食生成物を起源とする金属
イオンやクラッド等の不純物が含まれており、その一部
は炉内で中性子により放射化される。特に問題となるの
は、半減期が比較的長く、放射能が強い58Coおよび60
Coであり、これらの放射性イオンの一部が、燃料棒表
面の沸騰に伴って燃料棒に付着する。燃料棒に付着した
放射性イオンは、同じように沸騰に伴って燃料棒に付着
する鉄クラッドと反応し、溶解度の低い安定なフェライ
ト等の鉄系酸化物として燃料棒に固定され、炉水から除
去される。このようにして、炉水放射能を低減する。
【0015】このように炉水放射能低減方法は、鉄クラ
ッドおよび金属イオン(放射性イオンを含む)の燃料棒
への付着効率が高いことを前提としており、従来のオー
トクレーブ酸化により表面に酸化膜が付与された被覆管
は、この前提の基で放射能低減を実現していた。
【0016】しかし、Zrライナー管を用いた燃料棒は
表面が機械的に研磨される代わりにオートクレーブ酸化
処理が省かれており、表面に付着したクラッドや金属イ
オン等が剥離しやすいためその付着速度係数が低く、放
射性イオンの燃料棒表面での固定化が十分でなく、炉水
放射能が高くなりやすい。従来の燃料被覆管(RJ)と
Zrライナー管(BJ)における各種金属イオンの付着
速度係数を調べた結果を図1に示す。Zrライナー管
は、特に初期において、金属イオンの付着速度係数が小
さく、従来の燃料被覆管の1/10以下である。
【0017】しかし、Zrライナー管でも、クラッドの
付着が進むに従って付着速度係数は大きくなる。この付
着速度係数の増大は、初期において急激で、0.03mg/cm
2以上で増加はゆるやかになり、従来の燃料被覆管との
差はあまりなくなる。このため、前記の値以上に燃料棒
にクラッドが付着した後は、従来の燃料被覆管と同様
に、燃料棒への放射性イオンの固定化が有効に進むもの
と考えられる。つまり、Zrライナー管でも、初期に一
定以上のクラッド付着を生じさせれば、炉水放射能の低
減が可能となる。
【0018】図1によれば、金属の種類による差異は認
められないので、付着させる金属が何であっても、初期
に一定以上の付着を生じさせれば、付着速度係数を増大
させる効果があることが分かる。これは、クラッド付着
によりZrライナー管の地肌が覆われ、堆積したクラッ
ド上に次のクラッドが付着するようになり、その場合に
は付着効率が高くなるためと考えられる。このZrライ
ナー管の地肌の殆どが実効的に覆われるようになる値
が、0.03mg/cm2以上という値に対応していると推
定できる。勿論、この値は原子量等に依存するが、図1
に示した金属元素は原子量の値が近いため差が出ていな
い。原子量の大きな金属では、必要な値がもっと大きく
なることが予想される。
【0019】以上のように、Zrライナー管における新
しい燃料棒の装荷時には、燃料棒へのクラッドの付着を
促進する操作を運転初期において講じてやれば良い。具
体的な方法としては、次の三つの方法が考えられる。 (1)鉄濃度を他の金属成分との比でコントロールせず
に、燃料棒への付着を促進できるように高濃度で給水か
ら供給する。 (2)鉄以外の低溶解度で付着速度係数の大きい金属イ
オンを、給水から供給して燃料棒に付着させる。 (3)炉水のpHを高めに制御して金属イオンの付着を
促進する。
【0020】これらの方法は、併用することも単独で用
いることも可能であるが、同時にいずれも弊害を生じる
可能性があるので、必要な付着量に達したら、そのサイ
クル内は実施をやめた方が良く、燃料交換後新しくZr
ライナー管が装荷されたら、新しい燃料棒に十分なクラ
ッドが付着するまで、その都度実施すべきである。
【0021】鉄クラッドの注入は、他成分との濃度比を
一定にコントロールするために実施されており、電解鉄
注入装置またはコンデミバイパスのいずれかの方法が用
いられている。これらの方法を用いて、前記(1)を実
現することが可能である。ただし、注入する鉄クラッド
の濃度を高くする必要があり、また1サイクルの途中で
これらの運転を中止できることが必要である。運転中に
燃料棒への付着量を直接測定することはできないが、給
水中の鉄クラッド濃度は測定できるので、この値を用い
て計算コードにより付着量を計算できる。
【0022】この推定付着量を用いてコントロールして
も良いが、3×10~5g/cm2に全新装荷核燃料の表
面積の和を乗じて得られる値が0.03mg/cm2の付
着量を得るのに必要な値であり、この値を総注入量の目
標として、注入装置その他のプロセスに支障のない範囲
の高濃度で鉄クラッドを注入すれば、それらの鉄クラッ
ドの殆どがいずれ燃料棒に付着する。一部の注入鉄のロ
スがある場合には、その分を考慮した、より大きい値を
目標値として注入すれば良い。目標値まで鉄が入れば、
放射性イオンの固定化にも十分であるため、その後は注
入する必要がない。前記(2)の方法を用いる場合に
も、コントロールの目標値は前記(1)の場合と同様に
すれば良く、前記(1)と(2)を併用する場合には、
両方のトータルの付着量または注入量が前述の基準に達
すれば良い。
【0023】鉄以外の難溶性金属イオンを注入した場
合、注入時にはイオンであっても炉心ではかなりの部分
が固体となると考えられるので、直接固体微粒子として
注入しても良い。注入する金属イオンは、燃料表面に付
着するので、中性子経済の点から中性子吸収断面積が小
さい方が良く、また一部が放射化されて炉水中に出るの
で、溶解度はできるだけ低く、生成放射能は低いか,半
減期が短い方が良い。表1には、中性子吸収断面積が小
さいものから難溶性の金属イオンを生成放射能とともに
列挙している。この表1からBe,Zr,Al,Nb,
Y,Tiが優れていることが分かる。
【0024】
【表1】
【0025】炉水のpHがアルカリ側で原子炉を運転す
ると、金属イオンの付着速度係数が大きくなり、燃料棒
に付着しやすくなる。これは、金属イオンの付着が燃料
表面での水蒸気生成に伴う水の濃縮により、金属イオン
が溶解度を超えて析出し、さらに水が排除されることに
より、燃料棒表面と析出固体の距離が短くなり、付着力
が生じるためと考えられる。このため、溶解度が低くな
ると金属イオンは付着しやすくなり、アルカリ側にする
ことによって目的を達成することができる。
【0026】これは、炉水中に存在する腐食生成物を起
源とする金属イオンにもあてはまり、炉水をアルカリ側
にするだけで燃料棒へのクラッドの付着は増加する。そ
こで、これを前記(1)および(2)と併用することに
より、一層効果的となる。しかし、燃料被覆管の腐食は
アルカリ側で極端に加速されるので、腐食が生じるpH
9以上にすることは好ましくない。また、沸騰濃縮の影
響を考えると、これ以下でも腐食が加速される可能性が
あるので、付着量が目標量に達したら、pHを7以下に
制御する方が良い。
【0027】従って、BWRプラントの起動運転時に
装荷燃料集合体表面に酸化物層を加速的に形成する装置
を設けることで、前述のごとく、また図1からも分かる
ように、燃料棒に付着させる金属元素の如何を問わず、
初期に一定以上のクラッドを付着させることができ、付
着速度係数を増大させることができる。
【0028】また、BWRプラントに燃料集合体を新た
装荷した後の起動運転時に給水中に含まれる金属元素
濃度を通常運転時より高めることにより、さらには給水
ヒータの上流側から付着金属元素を注入することによ
り、装荷燃料集合体の表面に酸化物層を加速的に形成
することができる。
【0029】さらに、付着金属元素としてFeのほか、
Zn,Al等の遷移金属元素を注入することにより、ま
た注入金属酸化物付着密度が100μg/cm2以上にな
るように設定することにより、さらには注入金属酸化物
付着密度が100〜400μg/cm2を超えた時点で、
冷却水中に含まれる注入金属酸化物付着密度を低下させ
ることにより、そして注入金属酸化物付着密度の低減時
の濃度が給水中のNi濃度に対し、モル濃度比で2を下
回らない値に制御することにより、それぞれ効率良く
装荷燃料集合体の表面に酸化物層を形成することができ
る。
【0030】さらにまた、装荷燃料集合体として、燃
料製造時に燃料被覆管表面に、酸化皮膜形成処理を施し
ていない燃料集合体を用いた場合においても、給水中の
金属元素濃度富化装置と、金属元素の富化量の制御装置
とを設け、給水中の金属元素濃度、Ni濃度に基づいて
算出した燃料集合体表面での金属元素の付着密度および
Ni付着密度を指標として金属元素の富化量を制御する
ことで、燃料集合体表面に酸化物層を的確に形成するこ
とができる。
【0031】原子炉内において、不純物として燃料被覆
管外表面に蓄積するものの殆どは鉄酸化物である。そこ
で、原子炉の中性子経済に影響を与えないためと、原子
炉の定期検査時の被曝低減の観点から、燃料被覆管外表
面に形成される金属酸化物層の金属元素に要求される条
件としては、放射化断面積が鉄と同程度以下であるこ
と、および生成される放射能の半減期が短くて、放射能
としての蓄積が鉄の場合と同等以下であることが挙げら
れる。また、形成する金属酸化物が水と反応しないこと
も重要な条件である。この条件を満たすものとしては、
Be,Al,Ti,Fe,Y,Zr,Nb,Moの酸化
物が挙げられるが、これらの中でも放射化断面積の非常
に小さいBeや、放射能として蓄積しにくいAl,Ti
が特に材料として有望である。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面により説明す
る。図2は、本発明の第1の実施例を示す系統図であ
り、図3は給水鉄濃度とpHの制御の一例を示す図であ
る。この図2に示す実施例では、Zrライナー管燃料
(燃料集合体)を新たに装荷して運転開始されるBWR
プラントを示すもので、タービン1を出た蒸気は復水器
2で水に戻され、ここを出た復水は復水ポンプ3により
復水フィルタ4を通り、復水脱塩器5により不純物が除
去される。浄化された水は、給水ポンプ6、低圧給水加
熱器7、昇圧ポンプ8、高圧給水加熱器9を通って原子
炉圧力容器10に導かれる。
【0033】このため、炉水中には、主として、高圧給
水加熱器9および原子炉圧力容器10で生成された腐食
生成物である鉄クラッド,ニッケルおよびコバルト等の
金属イオンが含まれている。これらの一部は、原子炉再
循環ポンプ11の上流から分岐した配管に接続されてい
る原子炉浄化系12で除去されるが、その割合は少な
く、殆どが、炉水中および燃料棒表面に析出した形で存
在する。
【0034】原子炉圧力容器10内に新しいZrライナ
ー管燃料13が装荷され、運転が開始されると、原子炉
の出力が上昇し、Zrライナー管燃料の表面で沸騰が生
じるようになる。このとき、この実施例では、電解鉄注
入装置14を運転して鉄クラッドを生成させ、注入バル
ブ15を通してこの鉄クラッドを給水中に注入する。濃
度は、約2ppbに一定になるようにコントロールし、
注入した鉄の総量が5×10~5g/cm2×全新装荷核燃
の表面積の和(cm2)に達したら注入を中止する。
【0035】また、複数塔存在する復水脱塩器5内の陽
イオン交換樹脂の一部をNa型にしておき、これに復水
を通すことによりpHを上昇させ、給水のpHを約7.
5とする。鉄クラッド注入中止後もしばらくpH7.5
で運転した後、Na型にした陽イオン交換樹脂の入った
樹脂塔への通水を止め、他の樹脂塔に切り替えることに
よりpHを下げ、給水のpHを6.8として1サイクル
終了まで運転する。これを図3に模式的に示す。
【0036】この実施例では、BWRプラントにおける
新しいZrライナー管燃料13の装荷後の運転開始時
に、Zrライナー管燃料13へのクラッドの付着量が運
転初期の段階で一定の目標値に達するように、Zrライ
ナー管燃料13へのクラッドの付着を促進させる操作を
する。その後、クラッドの付着量が当該目標値に達した
ら、クラッドの付着を促進させるための操作を停止す
る。
【0037】前述のごとく、Zrライナー管燃料13で
はオートクレーブ酸化処理が省かれており、クラッドや
金属イオンの付着速度係数(K)が小さい。図1からも
分かるように、Zrライナー管燃料13では、特に運転
初期において金属イオンの付着速度係数(K)が小さ
く、従来の燃料被覆管の1/10以下である。このた
め、放射性イオンの燃料上での固定化が十分ではなく、
炉水放射能が高くなりやすい。ところが、Zrライナー
管燃料13でも、クラッドの付着が進むに従って付着速
度係数(K)が大きくなる。
【0038】Zrライナー管燃料13へのクラッドの付
着速度係数(K)の増大は、起動運転の初期において急
激で、しかも0.03mg/cm2以上では増加がゆるやか
になり、従来の燃料被覆管との差がなくなる。そこで、
この実施例では、新しく装荷したZrライナー管燃料1
3へのクラッドの付着の目標値を、平均値で0.03mg
/cm2以上に設定している。Zrライナー管燃料13の
表面にクラッドが0.03mg/cm2以上付着した後は、
従来の燃料被覆管と同様に、Zrライナー管燃料13へ
の放射性イオンの固定化が進ものと考えられるため、
クラッド注入を停止する。
【0039】この実施例では、Zrライナー管燃料13
へのクラッドの付着を促進させる操作として、高濃度鉄
クラッド注入操作を行ったが、その代わりに、低溶解度
金属元素注入操作,アルカリ側運転操作を夫々単独で行
っても良く、可能ならば併用しても良い。
【0040】低溶解度金属元素注入を実施する場合にお
いて、その低溶解度金属元素として、Be,Zr,A
l,Nb,Y,Tiの一つまたは複数を用いても良い。
【0041】図4は、本発明の第2の実施例を示す系統
図である。この実施例は、燃料の1/3を新たなZrラ
イナー管燃料に交換した場合に本発明を適用した例を示
すもので、BWRプラントそのものは図2に示す実施例
と同様である。多数の燃料棒のうち1/3が新品のZr
ライナー管燃料に交換され、定検後運転が再開される。
運転開始され、燃料棒の表面で沸騰が生じるようになっ
た後、Zrイオン注入装置16によりZrイオンを注入
バルブ17を通じて給水に注入する。そして、給水中の
Zr濃度が約50ppbとなるように注入量を制御す
る。
【0042】注入されたZrイオンは、ZrO2として
効率良く燃料棒の表面に付着し、これが放射性イオンの
燃料棒への付着を促進する。付着した放射性イオンは、
腐食生成物の鉄クラッド等と反応して安定な形態に固定
化される。炉水中のZr濃度は、サンプリング配管18
を通じてサンプリングされ、金属イオン濃度測定装置1
9で濃度が測定される。計測された濃度データは、計算
機20に送られ、計算コードにより新装荷の燃料上への
Zr付着量が計算される。その計算された値が0.05
mg/cm2となった時点で、注入バルブ17を閉め、Zr
イオンの注入を停止する。
【0043】この実施例によれば、燃料の1/3をZr
ライナー管燃料に交換したBWRプラントにおいても、
起動運転の初期の段階で燃料へのクラッドや金属イオン
の付着が促進され、放射性イオンの固定化が進むため、
炉水中の放射能を低減することができる。
【0044】図5は、本発明の第3の実施例を示す系統
図であり、図6はこの実施例の運転特性図である。図5
に示す実施例は、低炉水放射能濃度BWRプラントの一
例を示すもので、装荷燃料集合体表面に酸化物層を加
速的に形成する装置として、電解鉄注入装置21を設置
している。
【0045】電解鉄注入装置21は、電解電源22と、
これに電気的に接続された電解槽23と、この電解槽2
3と給水ポンプ6の上流側とを結ぶ配管24と、この配
管24に設けられた注入バルブ25とを備えて構成され
ている。
【0046】そして、電解鉄注入装置21は、原子炉圧
力容器10内にZrライナー管燃料13が新たに装荷さ
れた後に、BWRプラントの起動運転とともに運転さ
れ、電解槽23により鉄イオンを生成し、その鉄イオン
を配管24および注入バルブ25を通じて給水ポンプ6
の上流側から冷却水中に注入する。
【0047】而して、BWRプラントの起動後、しばら
くの期間、例えば約2000時間は、図6に示すよう
に、鉄イオンの濃度を1.5ppbの一定値に設定して
注入する。これにより、Zrライナ−管燃料13の表面
に鉄イオンが急速に付着し、注入金属酸化物付着密度で
ある給水系からの注入積算量を燃料棒の全表面積で割っ
た値が100μg/cm2以上になるまで、鉄イオンの酸
化物層を加速的に形成する。その後、注入金属酸化物付
着密度が100〜400μg/cm2を超えた時点で、鉄
イオンの濃度を0.5ppbに下げ、炉水中に含まれる
金属酸化物濃度を低下させる。ただし、前記冷却水中に
含まれる注入金属元素濃度を低下させる際、低減時の濃
度が給水中のNi濃度に対して、モル濃度比で2を下回
らない値に制御するものとする。
【0048】この実施例によれば、BWRプラントの起
動運転時に、装荷のZrライナ-管燃料13の表面に
鉄イオンの酸化物層を加速的に形成することができる。
その結果、BWRプラントの運転中の炉水放射能を有効
に低減することができる。なお、図5に示す実施例の他
の構成,作用については、図2に示す実施例と同様であ
る。
【0049】上述した実施例では、電解鉄注入装置21
で生成した鉄イオンを、そのまま冷却水中に注入した
が、注入前に空気等で鉄イオンを酸化処理し、不溶解性
の酸化鉄または水酸化鉄粒子(鉄クラッド)としても
(本発明の第4の実施例)、同様の効果を発揮させるこ
とが可能である。
【0050】図7は、本発明の第5の実施例を示す系統
図であり、図8はこの実施例の運転特性図である。図7
の実施例では、装荷燃料集合体表面に酸化物層を加速
的に形成する装置として、復水系と給水系との間に、復
水浄化装置である復水フィルタ4のバイパス26が設け
られており、このバイパス26にバイパス弁27が設置
されている。
【0051】そして、原子炉圧力容器10内にZrライ
ナ-管燃料13を新たに装荷した後の起動運転時に、復
水系でプラント構成材の腐食に伴って発生した鉄イオン
または酸化鉄あるいは水酸化鉄粒子を、復水フィルタ4
をバイパスさせて給水中に添加し、給水中に含まれる鉄
イオン等の金属元素濃度を、起動運転時に通常運転時よ
り高める。前記鉄イオン等の添加量の調整は、バイパス
弁27の開度を制御することによって行う。
【0052】これにより、冷却水中に外部より鉄イオン
等を注入することなく、復水中に含まれている鉄イオン
等を利用して、図8から分かるように、Zrライナ−管
燃料13の表面に酸化物層を加速的に形成することがで
きる。尚、この実施例の他の構成,作用については、前
記の実施例と同様である。
【0053】また、この実施例に替えて、BWRプラン
トの給水系に設置されている給水ヒータである例えば低
圧給水加熱器の上流側から鉄イオン等の金属元素を注入
し、給水中に含まれる金属元素を高めるようにしても良
い(本発明の第6の実施例)。
【0054】図9は、本発明の第7の実施例を示すもの
で、注入金属酸化物付着密度と炉水中のCo濃度との関
係を示す説明図である。給水や冷却水中に注入するクラ
ッドや金属イオンは、Fe以外の金属元素であっても良
い。その金属元素としては、燃料集合体表面に付着する
Ni,Coと化合して、Ni,Co酸化物よりも溶解度
の小さい化合物を形成できるものが望ましい。特に、Z
r,Cr,Al等の遷移金属は図9からも分かるよう
に、Ni,Coと化合し、溶解性スピネル酸化物を形
成することが可能である。
【0055】図10は、本発明の第8の実施例を示す系
統図である。この図10に実施例では、復水系と給水系
間に接続された抽水配管28と、これに設けられた抽水
弁29および金属元素濃度富化装置30と、この金属元
素濃度富化装置30に接続された制御装置31と、原子
炉浄化系12の上流側にサンプリング配管32を通じて
設けられかつ制御装置31に接続された金属イオン濃度
測定装置33とを備えて構成されている。
【0056】金属元素濃度富化装置30には、例えば金
属元素に酸素を吹き込んだり、または金属元素を加熱処
理する等により、給水中の金属元素濃度を富化する装置
が用いられている。制御装置31は、炉水中の金属元素
の測定値と、給水中の金属元素濃度、Ni濃度に基づい
て算出した燃料集合体表面での金属元素ではその付着密
度およびNi付着密度等を指標にして金属元素の富化量
を計算し、その計算値に基づいて金属元素濃度富化装置
30を制御するようになっている。前記金属イオン濃度
測定装置33は、現在の炉水中の金属イオンの濃度を測
定し、その測定値を制御装置31に入力するようになっ
ている。
【0057】この実施例では、燃料製造時に被覆管表面
に酸化皮膜形成処理を施していないZrライナ−管燃料
13を原子炉圧力容器10内に装荷後、BWRプラント
の起動運転時に、復水フィルタ4の上流側で抽水配管2
8および抽水弁29を通じて復水を抽出し、その抽水を
金属元素濃度富化装置30に送り込む。金属元素濃度富
化装置30では、前記抽水中に含まれている金属元素を
取り込み、制御装置31からの指令に従って金属元素濃
度を富化したうえで、復水フィルタ4と復水脱塩器5間
に挿入する。これにより、BWRプラントの起動運転時
に、装荷燃料集合体の表面に酸化物層を加速的に形成
することができ、これに伴って炉水中の放射能を低減す
ることが可能となる。
【0058】
【発明の効果】本発明によれば、Zrライナー管燃料の
ように金属イオン等の付着が生じにくい燃料を炉心に装
荷した場合でも、燃料に金属イオン等を効率良く付着さ
せて炉水中の放射能を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】燃料被覆管に付着する金属イオンの付着速度係
数の測定結果を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施例を示す系統図である。
【図3】第1の実施例における給水濃度とpHの制御を
示す図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す系統図である。
【図5】本発明の第3の実施例を示す系統図である。
【図6】第3の実施例の運転特性図である。
【図7】本発明の第5の実施例を示す系統図である。
【図8】第5の実施例の運転特性図である。
【図9】本発明の第7の実施例を示す説明図である。
【図10】本発明の第8の実施例を示す系統図である。
【符号の説明】
1…タービン、2…復水器、3…復水ポンプ、4…復水
フィルタ、5…復水脱塩器、6…給水ポンプ、7…低圧
給水加熱器、8…昇圧ポンプ、9…高圧給水加熱器、1
0…原子炉圧力容器、11…原子炉再循環ポンプ、12
…原子炉浄化系、13…Zrライナー管燃料(燃料集合
体)、14…電解鉄注入装置、15…注入バルブ、16
…Zrイオン注入装置、17…注入バルブ、18…サン
プリング配管、19…金属イオン濃度測定装置、20…
Zrイオン注入量の計算機、21…電解鉄注入装置、2
2…電解電源、23…電解槽、24…鉄イオン注入用の
配管、25…注入バルブ、26…復水のバイパス、27
…バイパス弁、28…復水抽出用の配管、29…抽水
弁、30…金属濃度富化装置、31…制御装置、32…
サンプリング配管、33…金属イオン濃度測定装置、4
0…燃料被覆管、41…燃料被覆管本体、42…ライナ
ー層、43…金属酸化物の層、44…燃料被覆管本体、
45,46…上,下部固定器具、47…ノズル。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長瀬 誠 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社 日立製作所 エネルギー研究 所内 (72)発明者 細川 秀幸 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社 日立製作所 エネルギー研究 所内 (72)発明者 原 照雄 茨城県日立市大みか町七丁目2番1号 株式会社 日立製作所 エネルギー研究 所内 (72)発明者 朝倉 大和 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 大角 克己 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 赤嶺 和彦 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (72)発明者 山根 康一 茨城県日立市幸町三丁目1番1号 株式 会社 日立製作所 日立工場内 (56)参考文献 特開 昭63−90796(JP,A) 特開 昭61−175595(JP,A) 特開 昭61−79194(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) G21C 19/307 G21C 19/30 G21D 1/00 G21D 3/08

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Zrライナー管燃料が炉心に装荷される
    BWRプラントの炉水制御方法において、燃料交換後
    たに装荷されたZrライナー管燃料の表面に所要量の金
    属酸化物を付着させるため次の燃料交換までのプラント
    運転期間の前半期間に給水中の金属酸化物濃度を高める
    ことを特徴とするBWRプラントの炉水制御方法。
  2. 【請求項2】 請求項1において、所要量の金属酸化物
    皮膜がZrライナー管燃料の表面に付着した後は給水中
    の前記金属酸化物濃度を下げることを特徴とするBWR
    プラントの炉水制御方法。
  3. 【請求項3】 Zrライナー管燃料で構成される燃料集
    合体が炉心に装荷されるBWRプラントの炉水制御方法
    において、燃料交換後新たに装荷されたZrライナー管
    燃料の表面に所要量の金属酸化物を付着させるため次の
    燃料交換までのプラント運転期間の前半期間に所定の目
    標量の金属酸化物を給水中に注入することを特徴とする
    BWRプラントの炉水制御方法。
  4. 【請求項4】 請求項3において、前記所定の目標量
    は、燃料の全表面積と所要の金属酸化物付着密度とを
    乗じて求めることを特徴とするBWRプラントの炉水制
    御方法。
  5. 【請求項5】 請求項4において、前記所要の金属酸化
    物付着密度は、30μg/cm2〜400μg/cm2
    範囲内の値とすることを特徴とするBWRプラントの炉
    水制御方法。
  6. 【請求項6】 請求項3乃至請求項5のいずれかにおい
    て、金属酸化物の注入積算量が前記目標量に達した後は
    給水中に注入する金属酸化物の量を低減あるいは零にす
    ることを特徴とするBWRプラントの炉水制御方法。
  7. 【請求項7】 請求項6において、前記目標量に達する
    までは給水中に注入する金属酸化物の濃度を1.5pp
    b以上とし、前記目標量に達した後は前記金属酸化物の
    濃度を0.5ppb以下にすることを特徴とするBWR
    プラントの炉水制御方法。
  8. 【請求項8】 請求項1乃至請求項7のいずれかにおい
    て、給水中の金属酸化物濃度を高める間あるいは給水中
    に目標量の金属酸化物を注入する間は炉水のpHを7〜
    9の範囲にコントロールし、その後はpHを7以下に下
    げることを特徴とするBWRプラントの炉水制御方法。
  9. 【請求項9】 請求項1乃至請求項8のいずれかにおい
    て、金属酸化物は鉄酸化物であることを特徴とするBW
    Rプラントの炉水制御方法。
  10. 【請求項10】 Zrライナー管燃料が炉心に装荷され
    るBWRプラントの炉水制御装置において、燃料交換後
    新たに装荷されたZrライナー管燃料の表面に所要量の
    金属酸化物皮膜を付着させるため次の燃料交換までのプ
    ラント運転期間の前半に給水中の金属酸化物濃度を高め
    る手段を設けたことを特徴とするBWRプラントの炉水
    制御装置。
  11. 【請求項11】 Zrライナー管燃料で構成される燃料
    集合体が炉心に装荷されるBWRプラントの炉水制御装
    置において、燃料交換後新に装荷されたZrライナー管
    燃料の表面に所要量の金属酸化物皮膜を付着させるため
    次の燃料交換までのプラント運転期間の前半期間に所定
    の目標量の金属酸化物を給水中に注入する手段を設けた
    ことを特徴とするBWRプラントの炉水制御装置。
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