JP2905249B2 - セメント混和剤の製造法 - Google Patents

セメント混和剤の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はセメント又はセメント配合物の混和剤に関す
るものであり、更に詳しくは水硬性セメント配合物であ
るコンクリート、モルタル又はセメントペーストのワー
カビリティの経時による低下を防止し、その施工性、作
業性を改善することを可能ならしめる水中での保存安定
性を著しく改善したセメント用混和剤に関するものであ
る。
〔従来の技術〕
従来、セメント、水及び砂、砂利、混和材(混和剤)
とを混合して成るセメント配合物は、混練り後、時間の
経過と共にセメント粒子の物理的、化学的凝集が進行す
ると共に配合物は流動性を次第に失い、施工性、作業性
が低下する。このためセメント配合物は施工可能な時間
(可使時間)が限定されるという欠点を有する。
この問題を解決するために従来種々のセメント配合物
のワーカビリティ低下防止方法が提案されている。例え
ば、セメント混和剤として低級オレフィンと無水マレイ
ン酸との共重合物の微粒化物(特公昭63−5346号)、低
級オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン酸無水物と
の共重合物の不活性金属コンプレックス(特開昭62−83
344号)、或いは低級オレフィンとエチレン性不飽和ジ
カルボン酸無水物との共重合物と酸化亜鉛又は水酸化亜
鉛との配合物(特開平1−270550号)をセメントに配合
することによりセメント中のアルカリとの反応により徐
々に流動性向上効果を発揮させることにより、長時間流
動性を保持する方法等がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
併しながら、上述の低級オレフィンと無水マレイン酸
無水物との共重合物を主成分とする微粒化物は、通常水
に分散した形で保存され、使用される。この無水マレイ
ン酸共重合物を主成分とする微粒化物は保存の際、水中
でも穏やかな加水分解反応を起こす。このためセメント
混和剤として使用されるまでの保存中に無水物環が加水
分解反応により開環してしまい、時間の経過と共に徐放
性能が低下して、使用時に本来の徐放性能が発揮できな
いという欠点を有している。
又特開昭62−83344号に記載されている例えばCa++
ンプレックスは、減水剤配合系では劣化しやすい。即ち
溶解度が大きく粘着性を持ち、不安定であり、流動性保
持機能が低下するという欠点を有する。更に特開平1−
270550号の配合物は酸化亜鉛又は水酸化亜鉛が減水剤配
合系で長期間保存すると沈殿を起こし、共重合物の亜鉛
塩を形成し難く、流動性保持機能、即ち徐放性能が低下
するので、保存安定性に問題がある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、上述した従来の欠点を解決すべく鋭意
研究の結果、炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不
飽和ジカルボン酸無水物とを主組成とする共重合物の粉
粒体と酸化亜鉛又はZn(OH)2の粉粒体を水中に分散さ
せ、特定条件下で加熱攪拌反応させて得られる該共重合
物の亜鉛塩の粉粒体水スラリーが、セメント混和剤とし
て、長期間の水中保存によっても徐放性能の低下がな
く、且つセメント配合物の施工性、作業性の改善が安定
して得られることを見出し、本発明を完成するに至っ
た。
即ち本発明は、炭素数2〜8のオレフィンとエチレン
性不飽和ジカルボン酸無水物とを主組成とする共重合物
の粉粒体に酸化亜鉛又は水酸化亜鉛の粉粒体を添加して
水中に分散させ、pH6〜9において75℃以上の温度で反
応生成率60〜100%まで攪拌反応させ、反応終了物を必
要に応じ粉砕後濾過して粒径が0.1〜50μmの該共重合
物の亜鉛塩の粉粒体水スラリーを得ることを特徴とする
セメント混和剤の製造法。に係るものである。
本発明による保存安定性向上のメカニズムは次のよう
に推察される。
即ちC2〜C8オレフィンとエチレン性不飽和ジカルボン
酸無水物とを主成分とする共重合物は水中で水酸イオン
の攻撃を受け、無水物環が開環してカルボン酸もしくは
カルボン酸塩の形となる。このカルボン酸もしくはカル
ボン酸塩が水に可溶性であればその部分が水に溶解し、
新しい共重合物の面が露出し、この新しい面が水酸イオ
ンの攻撃を受け、水に溶解する。この繰り返しにより共
重合物は保存期間中に徐放性を失う。しかしながら、予
め水不溶性塩である共重合物亜鉛塩としたものは水酸イ
オンの攻撃を受けても水に溶解せず、安定化されるもの
と推察される。
以下に本発明について更に詳細に説明する。
本発明に使用される炭素数2〜8のオレフィンとエチ
レン性不飽和ジカルボン酸無水物とを主成分とする共重
合物において、炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性
不飽和ジカルボン酸無水物と共重合可能な第3モノマー
の添加も可能であるが、本発明の性能を発揮する為には
該共重合物100重量部中にエチレン性不飽和ジカルボン
酸無水物が30〜60重量部含有される必要がある。
炭素数2〜8のオレフィンとしては、例えばエチレ
ン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、n−ペン
テン、シクロペンテン、2−メチル−1−ブテン、n−
ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1
−ペンテン、4−ブチル−1−ペンテン、2−エチル−
1−ブテン、ジイソブチレン及びこれらの混合物が挙げ
られるが、特にイソブチレンが好ましい。また、エチレ
ン性不飽和ジカルボン酸無水物としては、無水マレイン
酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる
が、無水マレイン酸が好ましい。
本発明に使用される共重合物の平均分子量は500〜50,
000程度が好ましく、この範囲より平均分子量が小さい
と分散能が不足であり、また、この範囲より平均分子量
が大きいと分散剤としてよりも凝集剤としての効果が大
きくなり、スランプロス防止効果を示さない。本発明に
用いられる共重合物の平均分子量は、ポリスチレンスル
ホン酸を基準物質とする水系ゲルパーミュエーションク
ロマトグラフィーにより求められる重量平均分子量を示
す。又、共重合物の亜鉛塩の平均粒径は0.1〜50μmで
あることが好ましい。平均粒径が0.1μm未満では徐放
速度が速すぎてコンクリートのスランプ保持性能が得ら
れ難い。一方、50μm以上では徐放速度が遅いために添
加量が増大し、更には局在化し、コンクリート物性に悪
影響を及ぼすため好ましくない。
次に本発明の特徴とする共重合物亜鉛塩の粉粒体の製
造法について説明する。
亜鉛塩をつくるには炭素数2〜8のオレフィンとエチ
レン性不飽和ジカルボン酸無水物とを主組成とする共重
合物中の酸無水物をカルボン酸とした後にZnO、Zn(O
H)2を添加し、共重合物亜鉛塩とする方法(酸・アルカ
リ反応)、カルボン酸の水可溶性塩をつくり、これにZn
O、Zn(OH)2を添加する方法(塩交換反応)等が知られ
ているが、これらの酸アルカリ反応、塩交換反応により
製造した共重合物の亜鉛塩は水を含んだ密度の低い粒体
であって徐放性能は良くない。従って、これを乾燥した
粉粒体とするには乾燥圧密させ密度を高め、所定の粒径
になるまで粉砕する工程が必要であり、経済性の面で劣
り好ましくない。
これに対して本発明の共重合物亜鉛塩は、共重合物の
粉粒体とZnO又はZn(OH)2の粉粒体との粉体同士を水中
で分散させて反応させる。従って、本発明品のセメント
混和剤は固相による酸アルカリ反応により製造した混和
剤である。
この方法により製造した共重合物亜鉛塩の粉粒体水ス
ラリーは乾燥工程の必要がなく、又減水剤と配合した場
合の保存安定性も良く、コンクリート中での徐放性能も
優れている。反応させる共重合体無水物及びZnO又はZn
(OH)2の粒径は特に規定しないが、できる限り小さい
方が反応性の面より好ましい。
ZnO又はZn(OH)2の添加量は共重合体無水物の中和当
量(COOH基1モルに対してZnO又はZn(OH)2 1/2モル)
が必要である。中和当量以下であると未反応共重合物が
多く残存し、流動性保持機能の低下が起こる。逆に、中
和当量以上の添加は未反応ZnO又はZn(OH)2が沈殿を起
こすため不必要である。
水中で反応する固型分の濃度は水中で分散できる量で
十分であり、水分散液はpHは6〜9の範囲であることが
必要である。この範囲を外れると生成した共重合物亜鉛
塩が溶解するので保存安定性が良くない。
反応条件は実施例に示す如く75℃以上の温度で攪拌反
応させることにより、作業性良く目的とする反応生成率
を達成し得る。系内圧力にはこだわらないが、経済性の
面より常圧が望ましい。
ここで得られた反応終了物はコンクリートの配合及び
混練条件等により最適徐放性を有する粒径になるよう粉
砕される。一般には0.1〜50μmである。尚反応終了物
は適宜濾過して水スラリー(通常固形分20〜40重量%)
として使用される。
このようにして調製した共重合物Zn塩は通常の赤外分
析法(ν=1750〜1800cm-1のピーク使用)により同定し
た反応生成率は60〜100%である。セメント混和剤とし
ての使用に当たっては、一般に減水剤、空気連行剤、防
錆剤、早強剤等と配合し使用されるが、単独で使用する
ことも可能である。
特に減水剤と併用することは好ましいが、減水剤とし
ては、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物系
減水剤、メチルナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド
縮合物系減水剤、スルホン化メラミン系減水剤、リグニ
ンスルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤(商品
名:ワークシリーズ:日本ゼオン(株)製等)、ポリカ
ルボン酸の部分エステル系減水剤(商品名:チューポー
ル:竹本油脂(株)製等)、アニリンスルホン酸系減水
剤(商品名:パリック:藤沢薬品(株)製等)、フェノ
ール系減水剤等との併用が可能である。
本発明の製造法により得られたセメント混和剤のセメ
ント配合物への添加方法は、混練り水への溶解及び一旦
練り上がったセメント配合物への添加方法がある。ま
た、この場合にも他のセメント添加材(剤)、例えば空
気連行剤、流動化剤、防水剤、膨張材(剤)、グラスフ
ァイバー、スチールファイバー、フライアッシュ、シリ
カヒューム、高炉スラグ等との併用も可能である。
〔実施例〕
以下に実施例をあげて本発明を更に具体的に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (共重合物亜鉛塩の製造) 表1に示した原料を使用し、水中に分散したイソブチ
レンと無水マレイン酸共重合物(GPCによる平均分子量
約9,000)粉粒体にZnO又はZn(OH)2の粉粒体を共重合
物に対し中和当量添加して分散させ、表1に示す反応条
件で攪拌反応させて共重合物亜鉛塩の粉粒体水スラリー
を製造した(本発明品No.1〜11)。
又比較のために共重合物Ca塩(特開昭62−83344号相当
品、No.12)及び共重合物とZnO混合品(特開平1−2705
50号相当品、No.13)を調製した。この様にして得られ
た本発明品のイソブチレンと無水マレイン酸共重合物亜
鉛塩及び比較品を夫々共重合物カルボン酸換算で減水剤
「β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン高縮合物Ca塩」
と15:85重量部の割合で配合した固型分換算で30%サス
ペンションを作り、系内のpHを9に調整した。このサス
ペンションを40℃の恒温室に貯蔵し、所定期間後に取り
出し、コンクリート試験により性能を測定した。
(コンクリート試験) コンクリートの流動性と流動性低下防止効果の測定は
下記材料と調合のコンクリートを用い、JIS−A−1101
のスランプ試験により行った。
使用材料 セメント:普通ポルトランドセメント 比重=3.17 細骨材 :紀の川産川砂 比重=2.57 粗骨材 :宝塚産砕石 比重2.56 調 合 :水/セメント比=55.0% 細骨材率=48.0% セメント量=320kg/m3 コンクリートの混練りは、上記配合に基づき100l傾胴
ミキサーを用い、50lのコンクリート材料と所定のサン
プルを投入して高速で2分間混練り後、4rpmの定速でア
ジテートし、所定時間のスランプを測定した。
結果を表2に示す。
〔発明の効果〕 表2に示す様に本発明品である共重合物亜鉛塩粉粒体
は(本発明品No.1〜11)40℃で1年間減水剤と配合して
おいてもコンクリートのスランプ保持効果は製造直後品
(減水剤と配合直後品)と同等性能であり、また共重合
物Ca塩(比較品No.12)及び共重合物とZnO配合品(比較
品No.13)の40℃、1年貯蔵品に比べてもスランプ保持
効果は優れていることがわかる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−270550(JP,A) 特公 昭63−5346(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C04B 24/26

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】炭素数2〜8のオレフィンとエチレン性不
    飽和ジカルボン酸無水物とを主組成とする共重合物の粉
    粒体に酸化亜鉛又は水酸化亜鉛の粉粒体を添加して水中
    に分散させ、pH6〜9において75℃以上の温度で反応生
    成率60〜100%まで攪拌反応させ、反応終了物を必要に
    応じ粉砕後濾過して粒径が0.1〜50μmの該共重合物の
    亜鉛塩の粉粒体水スラリーを得ることを特徴とするセメ
    ント混和剤の製造法。
  2. 【請求項2】共重合物の亜鉛塩の粉粒体の分子量が500
    〜50,000である請求項1記載のセメント混和剤の製造
    法。
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