JP2833084B2 - 発酵法によるl―プロリンの製造法 - Google Patents

発酵法によるl―プロリンの製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は発酵法によるL−プロリンの製造法に関す
る。
L−プロリンは抗生物質の原料など医薬品原料として
重要であり、その安価な製造方法が望まれている。
<従来の技術> 従来、発酵法によるL−プロリンの製造法としては、
たとえば、コリネバクテリウム属、クルチア属などに属
する微生物を用いる方法が知られている(相田ら編「ア
ミノ酸発酵」(1986)P218〜242学会出版センター)。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、従来法においては、発酵法によるL−
プロリン生産能を有する微生物として限られたものしか
見出されていなかった。
<課題を解決するための手段および作用> そこで本発明者らは従来の微生物とは異なり、大腸菌
に対する変異技術・遺伝子操作技術が容易に適用可能な
大腸菌近縁の属に属する微生物であって、かつL−プロ
リン生産能を有する微生物を広く検索、研究した結果、
プロビデンシア属に属する微生物によって通常の炭素源
を含有する栄養培地にL−プロリンを著量蓄積せしめる
ことができることを見出し、本発明に到達した。本発明
のプロビデンシア属に属する微生物が著量のL−プロリ
ンを生産した事実はまだ知られていない。
すなわち、本発明はプロビデンシア属に属し、L−プ
ロリン生産能を有する微生物を培養して、培地中にL−
プロリンを生成蓄積せしめ、ついで該培地よりL−プリ
ロンを採取することを特徴とする発酵法によるL−プロ
リンの製造法である。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明で用いられる部生物はプロビデンシア属に属す
る(バージーのマニアル・オブ・システマティック・バ
クテリオロジー第1巻(1984))微生物である。かかる
微生物のうち、特にプロリン代謝拮抗物質に耐性を有す
る微生物が優れた効果を発揮する。ここでプロリン代謝
拮抗物質としては、たとえばチアゾリン−4−カルボン
酸、3,4−デヒドロプロリン、アゼチジン−2−カルボ
ン酸などが挙げられる。もちろん、他の要求性、他の薬
剤抵抗性の性質をもつものでも本発明の範囲に含まれ
る。
本発明で用いられる微生物の代表的なものとしては、
たとえばプロビデンシア・レトゲリSPROR1−2(FERM P
−11149)、プロビデンシア・レトゲリDHPR7−2(FERM
P−11150)、プロビデンシア・レトゲリAZCR12−1(F
ERM P−11151)などが挙げられる。
これらの変異株はプロビデンシア・レトゲリATCC2111
8−(L−イソロイシン要求性)より誘導されたもの
で、プロリン代謝拮抗物質のうち、プロビデンシア・レ
トゲリSPROR1−2はチアゾリン−4−カルボン酸に耐性
な変異株である。また、プロビデンシア・レトゲリDHRP
7−2およびプロビデンシア・レトゲリAZCR12−1はプ
ロビデンシア・レトゲリSPROR1−2より誘導されたもの
で、それぞれ3,4−デヒドロプロリンに耐性、アゼチジ
ン−2−カルボン酸に耐性な変異株である。
変異株の誘導は、通常の変異処理法によって比較的容
易に取得できる。すなわち、プロリン代謝拮抗物質に耐
性を有する変異株を得るには、親株を紫外線照射する
か、あるいは変異誘発剤(たとえばN−メチル−N′−
ニトロ−N−ニトロソグアニジン、エチルメタンスルホ
ン酸など)で処理した後、親株が生育できないような量
のプロリン代謝拮抗物質を含む固体培地で生育可能な菌
株を採取すればよい。
本発明で使用するプロリン代謝拮抗物質耐性株とはチ
アゾリン−4−カルボン酸の場合、その濃度が7.5mM、
3,4−デヒドロプロリンおよびアゼチジン−2−カルボ
ン酸の場合その濃度が5mMとなるように添加した培地で
培養した時の40時間後の生育度が70%以上のものをい
る。ここで生育度は、培養液の660nmにおける吸光度を
測定し、各菌株のプロリン代謝拮抗物質を添加していな
い培養液の吸光度を100%として表わした場合の相対吸
光度で示す。耐性を検定する場合のプロリン代謝拮抗物
質は市販のものを用いればよい。
本発明におけるL−プロリン生産用の培地は炭素源、
窒素源、無機イオンおよび必要に応じてその他の有機微
量成分を含有する通常の培地である。炭素源としては、
グルコール、フラクトース、でん粉およびセルロースの
加水分解物、糖蜜などの糖類、フマール酸、クエン酸、
コハク酸などのごとき有機酸、グリセロールのごときア
ルコール類などを2〜15%、窒素源として酢酸アンモニ
ウムのごとき有機アンモニウム塩、硫酸アンモニウム、
塩化アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニ
ウムのごとき無機アンモニウム塩、アンモニアガス、ア
ンモニア水、尿素などを0.5〜4%、有機微量栄養素と
しては、L−イソロイシンなどの被要求物質が0.001〜
0.4%、または必要に応じてコーンスティプリカー、ペ
プトン、酵母エキスなど0〜4%をそれぞれ適当量含有
する培地が好適に用いられる。かかる培地にはこれらの
他にリン酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸第1鉄7
水和物、硫酸マンガン4〜6水和物などを少量添加する
のが通常である。
培養は、好気的条件が望ましい。培養の間、培地のpH
は5〜9に、温度は24〜37℃に調節し、48〜120時間振
盪または通気培養すれば好ましい結果が得られる。
培養液からL−プロリンを採取するには常法で行うこ
とができる。たとえば菌体を除去した培養液をpH2に
塩酸で調整したのち、強酸性カチンオイオン交換樹脂に
通液後、希アンモニア水で吸着成分を溶出し、脱アンモ
ニア後、濃縮晶析する。不純アミノ酸が混入する場合は
アルコールを添加し、不純アミノ酸を沈殿物として除い
た後、エタノール中で晶析し、L−プロリンを得ること
ができる。
<実施例> 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
実施例1 A.(チアゾリン−4−カルボン酸耐性変異株の分離) プロビデンシア・レトゲリATCC21118(L−イソロイ
シン要求性)の菌体に、常法によりN−メチル−N′−
ニトロ−N−ニトロソグアニジン処理(300μg/ml、30
℃で10分)した後、この細胞をチアゾリン−4−カルボ
ン酸22.5mMを添加した寒天培地(グルコール0.5%、硫
安0.1%、リン酸第1カリウム0.3%、リン酸第2カリウ
ム0.7%、硫酸マグネシウム7水和物0.01%、L−イソ
ロイシン0.005%を含む最少培地)に塗布した。次に30
℃で5〜7日培養し、生じた大きなコロニーを釣菌分離
して、チアゾリン−4−カルボン酸耐性株(プロビデン
シア・レトゲリSPROR1−2)を取得した。
B.(3,4−デヒドロプロリン耐性変異株の分離) プロビデンシア・レトゲリSPROR1−2(L−イソロイ
シン要求性、チアゾリン−4−カルボン酸耐性)の菌体
を実施例1−Aと同様に変異処理した後、この細胞を3,
4−デヒドロプロリン15mMを添加した寒天培地(グルコ
ース0.5%、硫安0.1%、リン酸第1カリウム0.3%、リ
ン酸第2カリウム0.7%、塩化ナトリウム3%、硫酸マ
グネシウム7水和物0.01%、L−イソロイシン0.005%
を含む最少培地)に塗布した。
次に30℃で5〜7日培養し、生じた大きなコロニーを
釣菌分離して、3,4−デヒドロプロリン耐性変異株(プ
ロビデンシア・レトゲリDHPR7−2)を取得した。
C.(アゼチジン−2−カルボン酸耐性変異株の分離) プロビデンシア・レトゲリSPROR1−2(L−イソロイ
シン要求性、チアゾリン−4−カルボン酸耐性)の菌体
を実施例1−Aと同様に変異処理した後、この細胞をア
ゼチジン−2−カルボン酸5mMを添加した寒天培地(グ
ルコース0.5%、硫安0.1%、リン酸第1カリウム0.3
%、リン酸第2カリウム0.7%、塩化ナトリウム4%、
硫酸マグネシウム7水和物0.01%、L−イソロイシン0.
005%を含む最少培地)に塗布した。
次に30℃で5〜7日培養し、生じた大きなコロニーを
釣菌分離して、アゼチジン−2−カルボン酸耐性変異株
(プロビデンシア・レトゲリAZCR12−1)を取得した。
実施例2(プロリン代謝拮抗物質耐性変異株の耐性度) 下記第1表に示す各菌株を液体ブイヨン培地を用いて
30℃で16時間振盪培養し、生育した菌体を集菌し、生理
食塩水で洗浄した。この菌体を第1表に示す各プロリン
代謝拮抗物質の各濃度を含む最少培地(実施例1におけ
る変異株分離に用いた培地と同様の培地)5mlに植菌し
て、30℃にて40時間培養し、各菌体の生育度を調べた。
その結果は第1表に示すとおりである。
(注)培養液の660nmにおける吸光度を測定し、各菌株
のプロリン代謝拮抗物質を添加していない培養液の吸光
度を100%として表わした。
本発明方法で使用するプロリン代謝拮抗物質耐性変異
株は、それぞれの親株と比較して高濃度のプロリン代謝
拮抗物質によって生育が阻害されず、強いプロリン代謝
拮抗物質耐性を獲得していることを示している。
実施例3(L−プロリン生産菌の培養およびL−プロリ
ンの生産) 第2表に示す各菌株をそれぞれ液体ブイヨン培地で30
℃、16時間振盪して前培養した後、あらかじめ120℃、1
5分間蒸気滅菌した下記組成の主発酵用培地50mlを含む
1容、三角フラスコに植継ぎ、30℃、150rpm振幅3cm
の条件下、第2表に示した時間培養した。
培養終了後、菌体、炭酸カルシウムを除去した液中
のL−プロリン濃度を自動アミノ酸分析計(日本電子JL
C300)で定量したところ第2表に示すような結果を得
た。
実施例4 プロビデンシア・レトゲリDHPR7−2を液体ブイヨン
培地で30℃、16時間振盪培養し、これを実施例3の発酵
用培地Bのうち(NH42SO4を0.5%、グルコースを4
%、L−イソロイシンを0.0125%とした培地900mlを分
注したガラス製小型ジャーファーメンターへ10%となる
ように接種した。30℃にて、800rpm、通気量1vvmにて、
通気撹拌培養を開始した。
pH調節および窒素源の供給は、25%アンモニア水にて
行い、pHは6.5〜8.0に維持した。
グルコースを適宜添加し、最終的に合計197gのグルコ
ースを培養に用いた。
72時間培養後、培養液中には28.3g/のL−プロリン
が生成した。培養液より菌体を除き、その500mlを強カ
チオン交換樹脂ダイヤイオンSK・1B(H型)のカラムに
通した。カラムを水洗後、2Nアンモニア水でカラムの吸
着成分を溶出し、脱色後、減圧濃縮した。これにエタノ
ールを加え、生成した沈澱物を除去し、その液を再度
減圧濃縮後、冷却し、生成した結晶を集めて乾燥した結
果、純度95%のL−プロリン結晶12.2gを得た。
<発明の効果> 本発明によれば、従来の微生物とは異なり、大腸菌に
対する変異技術・遺伝子操作技術が容易に適用可能な大
腸菌近緑の属に属する微生物を用いて、通常の炭素源を
含有する栄養培地にL−プロリンを著量蓄積せしめ、採
取することが可能となり、発酵法によりL−プロリンを
有効に製造することができる。
従って本発明方法は、遺伝子工学に容易に適用・応用
することができる。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プロビデンシア属に属し、L−プロリン生
    産能を有する微生物を培養して、培地中にL−プロリン
    を生成蓄積せしめ、ついで該培地中よりL−プロリンを
    採取することを特徴とする発酵法によるL−プロリンの
    製造法。
  2. 【請求項2】微生物がプロリン代謝拮抗物質に耐性を有
    する請求項1記載の発酵法によるL−プロリンの製造
    法。
  3. 【請求項3】プロリン代謝拮抗物質が、チアゾリン4−
    カルボン酸、3,4−デヒドロプロリンあるいはアゼチジ
    ン−2−カルボン酸である請求項2記載の発酵法による
    L−プロリンの製造法。
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