JP2760247B2 - 木材によるラーメン構造構築用金物 - Google Patents

木材によるラーメン構造構築用金物

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JP2760247B2
JP2760247B2 JP788393A JP788393A JP2760247B2 JP 2760247 B2 JP2760247 B2 JP 2760247B2 JP 788393 A JP788393 A JP 788393A JP 788393 A JP788393 A JP 788393A JP 2760247 B2 JP2760247 B2 JP 2760247B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、集成木材等の木材を
利用して大型ラーメン構造を構築するための木材による
ラーメン構造構築用金物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、木材は建築分野における根幹的な
材料であり、その有用性は依然変わるものではない。そ
して近年において、その弱点とも言える耐火性能や構造
性能等の面における検討が詳細に進められており、ま
た、木材の特性を生かしながら多様なニーズに対応した
建築工法や設計手法の検討も進められている。
【0003】しかしながら、従来の木材を利用した大断
面建造物は、運動施設、ドーム等のアーチ型建造物が多
く、一般の事務所ビル等の大型ビルの例は少ない。これ
は、従来、柱と柱との連結および柱と梁との連結がピン
ジョイントとして考えられて、単純柱あるいは単純梁で
あること、木材の材質に起因して強度的に方向性がある
こと、鉄筋コンクリートのように型枠に流し込んで、関
連する他の構造材料と一体化することが不可能であるこ
と、鉄骨のように溶接により相互に一体化することが困
難であること、ボルト締めは可能であるとしても、摩擦
接合が期待できるほどのトルクをかけることは不可能で
あることなどにより、所要の構造耐力を有するラーメン
構造とすることが技術的に困難であることが大きな理由
であると考えられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、この発明は、
前記問題点を解決して、集成木材等の大断面木材を使用
して十分な強度を有する大型ラーメン構造を構築するた
めの木材によるラーメン構造構築用金物を提供すること
を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明に係る木材によ
るラーメン構造構築用金物は、上階の柱と下階の柱とを
連結する柱頭金物と複数本の結合ロッドとを備えた柱/
柱連結金物と、前記上下階の柱と梁とを連結する柱/梁
連結金物とからなり、前記柱頭金物は前記上下階の柱の
端部をそれぞれ係合し、かつ硬化性のグラウト材を充填
し得る筒状をなし、その内側中間部と前記梁が連結され
る外側部とに、前記結合ロッドを挿通するための穴を有
する水平ダイヤフラムと前記柱/梁連結金物の一端を通
す縦方向の切欠きとをそれぞれ有すると共に、前記梁が
連結される内側部に前記柱/梁連結金物の一端を、前記
切欠きを通して係合し、かつ硬化性のグラウト材を充填
する凹部を有し、前記結合ロッドは前記水平ダイヤフラ
ムの穴と前記上下の柱にそれぞれ形成されたロッド挿入
孔に連続して挿通し得る長さを有し、前記柱/梁連結金
物は、両端を前記筒状金物の凹部と前記梁の端部に硬化
性のグラウト材を充填し得るように設けられた孔内にそ
れぞれ係合する、平面視してH形状に形成してなること
を特徴とする。
【0006】
【実施例】以下、図面を参照して、この発明を詳細に説
明する。
【0007】図1に、柱頭金物3および複数本の結合ロ
ッド4からなる柱/柱連結金物1が縦断面図として示
し、図2に、柱頭金物3の横断面図(1/2)を示す。
柱頭金物3は、後述する上階の柱9の下端部と下階の柱
9の上端部をそれぞれ係合し、かつ上下階の柱9同士を
剛接合とするための硬化性グラウト材を充填可能な筒状
をなしている。また、柱/柱連結金物1の内側中間部に
水平なダイヤフラム5を有し、ダイヤフラム5には、結
合ロッド4を挿通するための穴6が設けられている。
【0008】図2を参照すると、柱頭金物3の梁10に
面する壁(通常は四方)には、柱/梁連結金物2を通す
縦方向の切欠き7が設けられ、ダイヤフラム5の適所に
は、応力が過度に集中したり、溶接欠陥が発生しやすい
ので設けたスカラップからグラウト材を充填する。また
図2に示すように、ダイヤフラム5には、柱/梁連結金
物2の一端側を収容する凹部が設けられている。
【0009】柱頭金物3の水平方向の断面形状は、通
常、円柱、四角柱等の柱9の外形に対応する形状を有す
るが、場合により、柱9が円柱の場合に四角形、六角形
等の円形以外の形状を、あるいは柱9が四角柱の場合に
も円形、六角形等の四角形以外の形状を有することがで
きる。また、柱頭金物3の長さは、グラウト材の硬化
後、結合ロッド4と協働して、連結された柱に十分な構
造耐力を与えるように選定する。
【0010】また、図2は柱/梁連結金物2の横断面図
を示し、図3は柱/梁連結金物2の縦断面図を示してい
る。図2では、柱/梁連結金物2は、H形鋼などから平
面視してH形状に形成されているが、それ自体十分な強
度を有するとともに、後述するグラウト材との所要の結
合強度を与えうる十分な表面積を有し、柱9との応力伝
達が可能であれば、柱/梁連結金物2の材質や形状は、
H型鋼以外にも適宜選定することができる。
【0011】柱/梁連結金物2は、その一端側がダイヤ
フラム5の凹部に係合されて柱頭金物3の内部に位置
し、また他端側は梁10の先端部にグラウト材を充填し
得るように設けられた孔内に係合される十分な水平長さ
を有して形成されている。
【0012】そして、柱/梁連結金物2の一端側は、柱
頭金物3内に後から充填されるグラウト材が硬化するこ
とで上下柱9の接合部に剛接合状態に接合され、また他
端側は梁10の孔内に後から充填されるグラウト材が硬
化することで梁10の先端部に剛接合状態に接合され
る。かくして、上下柱9同士、及び上下柱9と梁10と
が柱/柱連結金物1と柱/梁連結金物2とを介して剛接
合状態に接合することができる。
【0013】以下に、柱/柱連結金物1および柱/梁連
結金物2を使用して、木材によるラーメン構造を構築す
る方法について説明する。なお、ここでは、任意の連続
する2つの階の下の階を下階とし、上の階を上階とす
る。再び図1を参照すると、下階の柱9には、結合ロッ
ド4を挿入するためのロッド挿入孔11が、結合ロッド
4に相当する数だけ所定位置に設けられており、また下
階の柱9はトラ綱や足場から控えをとって仮固定されて
いる。
【0014】下階の柱9の先端部に柱頭金物3を置く。
次いで、上階の柱9の結合ロッド4と下階の柱9の結合
ロッド4をそれぞれ上下に突出するようねじ込んだ袋ナ
ット12を、下階の柱9用の結合ロッド4が柱頭金物3
のダイヤフラム5に設けた穴6を通りロッド挿入孔11
に挿入されるように、柱頭金物3のダイヤフラム5の上
に置く。なお、図1の13は、ワッシャーである。この
段階では、柱頭金物3は柱9との隙間があるので多少ぐ
らつくが、これは以後の作業に支障はない。
【0015】また柱頭金物3は、建設現場で取り付ける
代わりに、予め集成材工場で柱9に取り付けておいても
よい。なお柱頭金物3には、図2に示すように、梁1の
結合に使用されるグラウト材を保持するための適当形状
の保持金物14を、溶接等により取付けておく。
【0016】保持金物14は、柱頭金物3のダイヤフラ
ム5に設けた凹部に対応する形状を有し、この保持金物
14の内部に、柱/梁連結金物2の前記一端側が収容さ
れることになる。
【0017】上階の柱9は、袋ナット12にねじ込まれ
た結合ロッド4をそのロッド挿入孔11に挿入して立て
る。上階の柱1には、図示しないが、グラウト材注入用
の孔および該孔の反対側にグラウト材充填量完了確認用
の孔が設けられており、それにより、後述するグラウト
材の注入および充填量完了の確認を行うことができる。
立てられた上階の柱9は、下階の柱9と同様にして仮固
定しておく。
【0018】次に図2および図3を参照して、梁10を
柱9と連結する方法について説明する。但し図3では、
結合ロッド4の表示を省略している。梁10の先端部に
設けた孔には、注入されたグラウト材を保持するため、
適当形状の保持金物15を複数のアンカーボルト16に
より取付けておく。
【0019】柱/梁連結金物2は、その一端側が柱頭金
物3と保持金物14との間の空間内に位置し、他端側が
梁10に設けた孔内に位置するよう、配置される。なお
図2および図3では、柱9と梁10とを連結した状態の
詳細は、右側の梁10についてしか示されていないが、
他の梁(例えば図2の上下や左側の梁10)も、同様に
して配置される。梁10は、上、下、横いずれの方向か
らでも配置することができる。梁10の配置後、高さ、
水平度等をチェックし、必要な調整を行ったのち、仮設
のサポート等で仮固定する。なお、梁10のサイズは、
プラス側の誤差をもつように製作しておき、建築現場で
調節可能域を残すことが好ましい。
【0020】下階の柱9の先端部に梁10および上階の
柱9を配置する手順は、適宜変更することができる。即
ち、予め柱/梁連結金物2を下階の柱9側に配置してお
く場合は、上階の柱9の配置後に梁10を配置すること
ができ、また、梁9の配置後、連結金物2を配置して、
上階の柱9を立てることもできる。
【0021】以上のように、上下階の柱9および梁10
をすべて配置し終えたら、全体の歪み直し等の再チェッ
ク、再調整を行う。
【0022】このようにして、上下階の柱9および梁1
0の配置完了後、硬化性グラウト材を柱頭金物3内およ
び梁10に設けた孔内に注入し、所要時間放置して該グ
ラウト材を硬化させる。グラウト材が十分硬化し、構造
上問題がなくなった段階で、上下階の柱9および梁10
の仮固定を撤去する。かくして、上下階の柱9同士、及
び上下階の柱9と梁10とが剛に接合される。
【0023】柱頭金物3内へのグラウト材の注入は、上
階の柱9に設けた前記の孔より行う。注入されたグラウ
ト材は柱頭金物3のダイヤフラム5に設けたスカラップ
8から下階の柱9のロッド挿入孔内に流下し、下階の柱
9のロッド挿入孔11、柱頭金物3および上階の柱9の
ロッド挿入孔11の内部全体が充填される。グラウト材
の充填完了は、上階の柱9に設けた反対側の前記孔から
グラウト材が溢れ出るのを見て確認する。また、梁10
にも上方にグラウト材の注入用および充填量完了確認用
の孔(いずれも図示せず。)を設けておき、グラウト材
を梁10に設けた孔内へ注入し、充填量完了を確認す
る。グラウト材を注入した状態は、図2および図3に多
数の点として示されている。
【0024】また、上階の柱9の配置前に、柱頭金物3
のダイヤフラム5に設けたスカラップ8から、ダイヤフ
ラム5より下部および下階の柱9のロッド挿入孔11へ
グラウト材を注入することも可能であり、この場合、グ
ラウト材の充填量完了は、他のスカラップ8からグラウ
ト材が溢れ出ることで確認する。
【0025】グラウト材の注入に当たっては、グラウト
材が柱9もしくは梁10と柱頭金物3との接触部、ある
いは柱9と梁10との接触部から漏れ出ないよう、また
グラウト材が十分充填されるように、前記接触部はシー
ル材でシールしておき、グラウト材の硬化後、該シール
材を取り除き、美観上必要であれば、シール痕跡を消す
ようにする。
【0026】次いで、同様の柱/柱連結金物と柱/梁連
結金物を使用し、同様の手順で、順次高階の柱および梁
を配置、連結する。
【0027】また、グラウト材の注入は、全階の柱9お
よび梁10の配置の終了後行ってもよい。ここで図4を
参照して、最下階の柱9を基礎の上に立てる方法につい
て説明する。
【0028】基礎には予め袋ナット17埋め込んでお
き、この袋ナット17に結合ロッド4をねじ込む。最下
階の柱9は、その下部に設けたロッド挿入孔4に結合ロ
ッド4を挿入して立てる。その後、トラ綱や足場から控
えをとって仮固定する。また、最下階の柱9について
は、結合ロッド4および袋ナット17を予め柱9に取り
付けておき、この袋ナット17を基礎に埋め込んでもよ
い。
【0029】以上、結合ロッド4を短尺とし、各階毎に
結合ロッド4を使用する場合について説明したが、この
発明は、所要階数の柱9を仮固定して全て配置したの
ち、全階数に達する長尺の結合ロッド18を使用すると
ともに、各階の柱9のロッド挿入孔11を柱の上下に貫
通して設け、この結合ロッド18を最上階の柱の先端部
から挿入し、各階の柱9を貫通させ、その下端部を、基
礎に予め埋め込んである袋ナット17にねじ込んで、柱
を連結することもできる。この場合、図5に示すよう
に、最上階の柱頭にプレート19および/またはワッシ
ャー20を置き、ナット21で締める。
【0030】この場合も、上下階の柱間に柱頭金物3を
使用し、柱9と梁10との連結に柱/梁連結金物2を使
用することに変わりはない。また場合により、結合ロッ
ド18の長さを全階の一部、例えば3階建ての場合に上
2階分の長さとし、3階の柱9と2階の柱9とを単一の
長尺結合ロッド18で連結することもできる。但し、前
記したような長尺の結合ロッド18では、運搬や取扱に
やや困難を伴う。
【0031】この発明によると、上下階の柱の連結に柱
頭金物と結合ロッドとを主要構成部材とする柱/柱連結
金物を使用し、また柱と梁との連結に柱/梁連結金物を
使用し、金物間にグラウト材を充填することにより、柱
/柱間および柱/梁間に十分応力を伝達させることが可
能となるので、集成材等の大断面木材からなる柱および
梁を使用して緊結したラーメン構造を構築することがで
き、十分な構造耐力を有する高層階(但し、現在の日本
の法規では、木造建築の許容階数限度は3階までであ
る。)の大型木造建築物を建築することができる。
【0032】
【発明の効果】この発明によると、下記の効果が奏され
る。
【0033】 木造構造を十分な構造耐力を有するラ
ーメン構造とすることが可能であり、大型木造建築物を
建造することができる。
【0034】 大型木造建築物に集成材からなる木材
を使用することができるので、材料の効果的な活用が可
能となる。
【0035】 柱/柱間および柱/梁間の連結が強固
となるので、建築形態の自由度が大きく、木材による多
様な建築形態の実現が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明における柱/柱間の連結状態を例示す
る縦断面図である。
【図2】この発明における柱/梁間の連結状態を例示す
る横断面図である。
【図3】この発明における柱/梁間の連結状態を例示す
る縦断面図である。
【図4】この発明における最下階の柱を立てた状態を例
示する縦断面図である。
【図5】この発明における最上階の柱の天端部を例示す
る縦断面図である。
【符号の説明】
1……柱/柱連結金物、2……柱/梁連結金物、3……
柱頭金物、4……結合ロッド、5……ダイヤフラム、6
……穴、7……切欠き、8……スカラップ、9……柱、
10……梁、11……ロッド挿入孔、12……袋ナッ
ト、13……ワッシャー、14……保持金物、15……
保持金物、16……アンカーボルト、17……袋ナッ
ト、18……長尺の結合ロッド、19……プレート、2
0……ワッシャー、21……ナット

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 上階の柱と下階の柱とを連結する柱頭金
    物と複数本の結合ロッドとを備えた柱/柱連結金物と、
    前記上下階の柱と梁とを連結する柱/梁連結金物とから
    なり、前記柱頭金物は前記上下階の柱の端部をそれぞれ
    係合し、かつ硬化性のグラウト材を充填し得る筒状をな
    し、その内側中間部と前記梁が連結される外側部とに、
    前記結合ロッドを挿通するための穴を有する水平ダイヤ
    フラムと前記柱/梁連結金物の一端を通す縦方向の切欠
    きとをそれぞれ有すると共に、前記梁が連結される内側
    部に前記柱/梁連結金物の一端を、前記切欠きを通して
    係合し、かつ硬化性のグラウト材を充填する凹部を有
    し、前記結合ロッドは前記水平ダイヤフラムの穴と前記
    上下の柱にそれぞれ形成されたロッド挿入孔に連続して
    挿通し得る長さを有し、前記柱/梁連結金物は、両端を
    前記筒状金物の凹部と前記梁の端部に硬化性のグラウト
    材を充填し得るように設けられた孔内にそれぞれ係合す
    る、平面視してH形状に形成してなることを特徴とする
    木材によるラーメン構造構築用金物。
JP788393A 1993-01-20 1993-01-20 木材によるラーメン構造構築用金物 Expired - Lifetime JP2760247B2 (ja)

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JPH06212699A JPH06212699A (ja) 1994-08-02
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