JP2715082B2 - フエライト系ステンレス鋼の製造方法 - Google Patents

フエライト系ステンレス鋼の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は鋳造時に酸化物や窒化チタンを形成したり析
出したりするのを実質的に避けることによって、冷間圧
延面の性状(品質)を改善した、実質的に完全なフェラ
イトより成るステンレス鋼に関するものである。もっと
限っていえば、本発明はチタン量とニオブ量のいずれを
も適当なものにすることによって安定化(stabilizin
g)し、表面性状を良好にしたフェライト系ステンレス
鋼製平圧延材(flat rolled products)に係る。そして
そのいくつかの実施態様においては、従来の409タイプ
鋼に比べ高温酸化抵抗が優る。かかるフェライト系ステ
ンレス鋼は又加工に供せられる。 フェライト系ステンレス鋼は、自動車の排気系は排気
ガス制御系などの部分品においてその地位を築いてきた
かに思える。これら部品を用いる最終的なユーザーは鋼
に対して良好な高温強度、耐酸化性ならびに耐蝕性を求
める。オーステナイト系ステンレス鋼に比べフェライト
系ステンレス鋼は高温での使用において特有の長所を発
揮する。特にフェライト系ステンレス鋼は低熱膨張率、
高熱伝導率および熱サイクル過程での良好な耐酸化性を
具備する。フェライト系ステンレス鋼は、しかしなが
ら、オーステナイト鋼に比べ、高温強度に劣るとか、溶
接性や加工性に劣るなどの短所を有する。 (従来の技術) 自動車の排気系統に供される鋼は、上記機械的性質、
耐蝕性、耐酸化性および高温強度に対して定められたあ
る種の規格に適合する必要がある。そのような合金鋼に
対し、必要な規格を満足するよう、広範囲な開発が行わ
れてきた。通常用いられる級(grade,グレード)の409
系クロム型フェライト系ステンレス鋼は、公称(nomina
lly)11%のクロムを含むものであるが、この鋼はチタ
ンによって安定化される。その種の合金はU.S.特許3,25
0,611(1966年5月10日発効)によって開示されている
ように、1960年代に開発された。18%クロムというよう
な高クロム鋼が耐酸化性や耐蝕性に一層優れ、そして又
自動車の排気系に用いられるというのは周知のことであ
る。今日の排気系用材料にはより高い温度で使用される
こと、苛酷な変形をうけること、およびよりよい品質の
表面を有することが要求される。高温強度および連続的
もしくは周期的加熱酸化に対する抵抗に加え、そのよう
な鋼は、たとえば多岐管(tublar manifold)の製造の
ために形成性が良く、溶接可能で、薄板への加工が容易
でなくてはならない。 他のその技術分野の者により、フェライト系ステンレ
ス鋼のなんらかの性能を改善するには、チタン又はニオ
ブ又はそれら両方を添加するのが良いということが示唆
された。上記U.S.特許3,250,611では、10〜12.5%のク
ロムを有し、0.2〜0.75%のTiで安定化された(stabili
zed)フェライト系ステンレス鋼が開示されている。こ
の合金は特に自動車の排気系統用に開発され、後に409
系として知られるに至ったものである。その409系合金
は、伸びが約24%で、表面品質もよいとはいえなかった
が、消音器や排気管ではきわめて良い成績を収めた。 他方、表面性状(外観)を改善したり、フェライト系
ステンレス鋼にニオブを添加することにより、ローピン
グ(roping)を最小限にするための試みもなされた。U.
S.特許3,936,323(1976年2月3日発効)及び同3,997,3
73(1976年12月14日発効)においては、12〜14%クロム
及び0.2〜1.0%ニオブを有する鋼が焼鈍後冷間圧延さ
れ、少なくとも65%の圧下(reduction)率が達成でき
たことが開示されている。U.S.特許4,374,683(1983年
2月22日発効)においては、鋼と0.2〜2%のニオブを
含む12〜25%クロムのフェライト系ステンレス鋼であっ
て、特別な方法で処理するときに良好な表面性状とロー
ピングを伴ない良好な加工性を発揮するものが開示され
ている。 しかしながら、鋼が被溶接材として製造される場合に
は、ニオブの単独適用は望ましくないこともまた知られ
ている。ニオブは溶接割れを招くものであるが、少なく
とも0.05%のチタンをニオブ安定化フェライト系ステン
レス鋼に添加することにより、溶接割れが実質的に防止
できる。 チタンとニオブの両方を含み、他の安定化剤を含んで
いたりいなかったりする他のフエライト系ステンレス鋼
が開発された。英国特許1,262,588において、自動車用
排気系部品に供される、そのような鋼について開示され
ている。つまり、高温酸化抵抗を改善するため、少なく
とも0.3%のチタン、ジルコン、タンタル及び/又はニ
オブを含ませたクロム−チタン−アルミニウム鋼につい
て開示されている。耐クリープ性と耐酸化性を改善する
ために開発された他のフェライト鋼についてはU.S.特許
4,261,739(1981年4月14日発効)において開示されて
いる。つまり、1%以下含まれる炭素及び窒素の量に応
じてニオブとチタンを0.1ないし1%含ませたクロム−
アルミニウム合金について開示されている。 U.S.特許4,286,986(1981年9月1日発効)におい
て、有効ニオブが0.63〜1.15%(これはタンタルによっ
て置換可)に調整された耐クリープ性のフェライト・ス
テンレス鋼が開示されている。この鋼はさらにクリープ
強さを改善するために少くとも1900゜F(1038℃)で焼
鈍される。 チタンで安定化したフェライト鋼が無酸素銅やニッケ
ル基合金のような溶加材で容易にろう付けし得ないのは
周知ではあるが、従来のろう材でぬらすことのできる安
定化フェライト・ステンレス鋼がU.S.特許4,461,811(1
984年6月24日発効)において開示されている。即ち、
0.12%迄のチタン及び0.12%迄の〔アルミニウム+チタ
ン〕が、安定における“公式”に則ってチタン、タンタ
ル及びニオブによって安定化される。 ステンレス鋼の耐酸化性がシリコンを含有させること
によって改良し得るということが知られているが、それ
について開示されたものとしては、「金属の酸化」誌、
19巻(1983)に掲載されたエバンスなどによる論文「ス
テンレス鋼の耐酸化性に及ぼすシリコンの影響」があ
る。そのようなシリコンを含有するステンレス鋼は、あ
る種の特性を改良するために安定化することが知られて
いる。たとえば、U.S.特許3,759,705(1973年9月18日
発効)においては、シリコン0.5〜1.4%、アルミニウム
1.6〜2.7%、ニオブ0.15〜1.25%及びチタン0.15〜0.8
%を含有する16〜19%クロムの合金が開示されている。
この合金については高温酸化抵抗や冷間加工性が改善さ
れたと言われている。 U.S.特許3,782,925(1974年1月1日発効)において
は、耐酸化性や酸化物スケールの付着について改善され
た鋼を得るため、少量のアルミニウム、シリコン、チタ
ン及び一種類の希土類元素を含有させた10〜15%クロム
のフェライト系ステンレス鋼が開示されている。 延性及び冷間加工性を改良したもう一つのフェライト
系ステンレス鋼は、U.S.特許3,850,703(1974年9月26
日発効)において開示されているように、クロム13〜14
%、シリコン0.2〜1%、アルミニウム0.1〜0.3%及び
チタン0.05〜0.15%を含む。 ニオブがフェライト系ステンレス鋼のクリープ強さの
ために有益なことはまた周知である。ジョンソンの論
文、「18%クロムフェライト系ステンレス鋼の870℃で
のクリープ特性に及ぼすコロンビウムの影響」(SAE、1
981年2月発行)では、自動車の排気系に用いられるそ
のような鋼の改良について発表されている;特に約0.5
%の遊離コロンビウム(ニオブ)と高い焼鈍温度との組
合わせについて。 フェライト・ステンレス鋼における、溶接性の改良に
関する、同様に高温での繰り返し酸化抵抗及びクリープ
強さに関する試みの数々が行われてきた。U.S.特許4,64
0,722(1987年2月3日発効)においては、シリコン1
〜25%、非結合ニオブ0.1%以上、結合ニオブ0.3%以下
の鋼について、さらには化学量論式に従ったチタン、ジ
ルコン及び/又はタンタルによる安定化について開示さ
れている。 日本国特許20,318(1977年公開)においては、溶接性
と冷間加工性との改良のため、含有される炭素及び窒素
の量に応じた量のチタン及びコロンビウムを含むフェラ
イト系ステンレス鋼について開示されている。 (発明が解決しようとする問題点) 409系フェライト系ステンレス鋼に属する合金で、自
動車工業において望まれる、排気系や他の高温部分に使
用されるものがまだ存在するとはいえ、延性や表面品質
の改善のためチタンの炭素のレベルは引き下げられてき
ている。1980年代においては、排気管部品の製造におけ
る要求にもとづき、延性、加工性および溶接性をさらに
改善すべく、鋼の炭素とチタンのレベルはさらに引き下
げらている。しかし、そのような鋼は降状点、硬さおよ
び引張り強さが低すぎる。自動車工業では上記目的に使
用されるフェライト系ステンレス鋼にはさらに厳しい表
面品質を課しているのである。 409系のような、自動車の消音器、管、分岐管、触媒
反応器などに用いられる合金を安定化するために使用す
るチタンは、窒素や酸素に対し非常に強い親和力を有す
る。その結果、チタンは合金の溶製、精錬、鋳造に際し
窒素や酸素と容易に結合し、非金属酸化物や金属間化合
物TiNを形成する。そのような析出物は大きなかたまり
や群(cluster)として集まり、そして凝固しつつある
鋳型内の溶融金属の表面に浮上する。なぜなら、この析
出物は溶融金属よりも密度が小さいからである。凝固が
完了したとき、酸化物やTiNの群は鋳造されたスラブの
内部や表面付近に捕捉される。もし、このようなことが
起ると、出費を招くスラブやコイルの研磨が必要とな
る。というのは、このような群が圧延により不良でうけ
入れ難い表面欠陥を惹起し、生産性の低減やスクラップ
の増加あるいはコイルの再加工を招くからである。 従来技術において、溶鋼中の金属間ないし非金属化合
物を捉えるのに、機械式ダムやフィルターが使用できる
との示唆がなされていた。そのような装置はしかし高く
つき、扱いにくくまた常にうまく作動するとは限らな
い。 スラブやコイルの研磨といった付加的な工程により表
面状態は確かに改善される。しかし「表面開口欠陥」と
呼ばれるものは除かれない。さらに、この表面開口欠陥
はさらに薄い薄板や帯鋼材を圧延により製造する際にも
っと悪く働く。「表面開口欠陥」は熱延帯において、灰
色のまたは黒っぽい圧延方向に沿った条痕として現れ
る。この条痕は、コイル表面に圧延で押し込められてい
るようである。熱間圧延した帯における各欠陥の長さと
幅は、圧延前の鋼における前記群の大きさを相対的に物
語るものである。多くの表面欠陥について断面を観察す
ることにより、該表面欠陥は、圧延方向に沿って存在す
る、鋼地(steel matrix)よりも延性に乏しい物質でで
きていることが判明した。 インゴットに鋳込む際、取鍋からの湯の流れは空気に
触れ、インゴット表面において濃縮されがちな酸化物は
窒化チタンの群を形成する。この状態は時々「カワ」と
呼ばれるが、それはきわめて目障りであるから、市販品
の製造にあたっては、研磨などによって除かねばならな
いものである。 依然として、含チタンステンレス鋼であっても表面開
口欠陥を生じないで高温使用のできるフェライト系ステ
ンレス鋼が必要とされている。そのような鋼は、表面欠
陥や孔のない0.015インチ(0.381mm)以下のオーダーの
薄物に加工できなければ意味がない。 実質的に表面開口欠陥のない冷延薄板や帯を製造する
ための鋼およびその製造法というものは、金属間および
非金属チタン析出物をインゴット又は連続衷情スラブの
表面ないしその付近に存在せしめない様なものでなけれ
ばならない。さらに、そのようなフェライト系ステンレ
ス鋼は、窒化チタン析出物が形成されないためにスラブ
やコイルを付加工程で研磨する必要がなく、かつ薄物の
圧延が可能な、原価の安い製造法で製造されるものでな
ければならない。 製造されるべきどのような合金も、自動車の排気系統
に使用される場合には、製造性、耐酸化性および耐蝕性
において、少なくとも409系鋼に比肩しうるものでなけ
ればならない。 (問題点を解決するための手段) 概して、溶接可能なチタンとニオブで安定化したフェ
ライト型鉄クロム合金は、チタンが存在するにもかゝわ
らず良好な表面品質を有し、望ましい実施態様において
は、良好な高温酸化抵抗および強度を示すことが述べら
れている。また、害になる程の量のチタンの金属間ある
いは非金属化合物を析出させることなしし鋼をスラブあ
るいはインゴット状に鋳込むことによって、溶鋼を作る
方法が採用されている。これにより、溶解過程に関し、
かつチタン化合物に起因する表面開口欠陥を除去するた
めに行われる研磨を必要とせず、鋼を最終寸法のストリ
ップまたはシートに加工することが可能となる。第1A,1
Bおよび1C図に、409系熱間圧延帯鋼に関する従来技術の
表面開口欠陥を示す。 ここで用いられている成分の百分率はすべて重量パー
セントである。 クロム含有量は10%から25%の範囲で変えることがで
きるが、これは耐蝕性および耐酸化性などにおける所望
の性質を得るためである。クロム量の上限は、硬さや強
度が不必要に増加して、合金の成形性が損われることの
ないように制限されている。クロム量10%以下では、耐
酸化性と耐蝕性が不十分になる傾向がある。クロム含有
量10〜12%および16〜19%が望ましい範囲である。 シリコン含有量の上限は1%で、下限は少くとも0.5
%が望ましい。シリコンは、製鋼における脱酸用として
広く用いられている元素で、概して耐酸化性を向上し、
溶融合金の流動性を高め、溶接性を改善する。本発明に
おいて、少くとも0.5%のシリコンが連続的および繰返
し酸化における抵抗性を高めることが認められている。
シリコンは合金の延性を減少させるので、シリコン含有
量は0.7%以下に抑えるのが望ましい。 本発明によれば、409系のようなフェライト系ステン
レス鋼の表面開口欠陥は、溶解、精錬および鋳造の過程
で酸化物および窒化チタンの析出を避けることにより、
実質的に除去できる。その一つの方法は、チタンにより
安定化を計ることであるが、そのためには、原価高とな
る溶解法および精錬法により、炭素と窒素が非常に低レ
ベルになるまで精錬する必要がある。 本発明においては、フェライト系ステンレス鋼のチタ
ン含有量は、溶融金属中のチタンの金属および非金属化
合物の溶解限以下に保たれる。望ましくない表面開口欠
陥の原因となる化合物が凝固に先立って析出するのが防
止される。従って、チタンで安定化したフェライト系ス
テンレス合金の製造工程中に顕れてくる表面開口欠陥は
防止される。最終的に冷延シートまたはストリップを実
質的に表面開口欠陥のないコイルに成形するには、合金
の組成により決められる規定量のニオブとチタンを用い
て、有害なチタン化合物の析出を高々危険の生じないレ
ベルに調整する必要がある。 チタン化合物の溶解度積が液相線温度における飽和レ
ベル以下に保たれるならば、チタン化合物は不安定とな
り、金属の凝固に先立って析出することはなくなる。こ
れまでの方法においては鋼中の窒素含有量を最小限と
し、精錬中の窒素の使用を最小限とし、さらに湯(molt
en metal)をカマ(vessel)から取鍋に注湯する際など
に雰囲気から拡散してくる窒素に対し溶融金属をさらす
のを最小限にし、それを達成しようとしていた。今日の
通常のアルゴン−酸素脱炭(AOD)法では、窒素量を有
害なチタン化合物の析出を防ぐことのできるレベルまで
低下させると不経済になる。本願発明は、通常の窒素含
有量の範囲内で液相線温度以下にチタン含有量をできる
だけ下げる(それによって窒化チタンが溶解性を保つ)
ことでこの問題を解決する。これは、減らす分のチタン
量を十分な量のニオブで置き換えることによって達成さ
れる。炭素および窒素と結合させることにより、チタン
とニオブによって安定化が計られ、耐粒界腐蝕性に悪影
響が生じることが避けられる。 鋼はチタンとニオブの量を調整することにより安定化
される。チタン量は0.03%から最高0.35%までとされる
が、望ましくは0.05%から0.15%、さらに望ましくは0.
05%から0.1%とされる。チタン量、およびその窒素含
有量に対する関係を、熱力学的方程式により以下に説明
する。ろう付け性の観点から、チタン量はアルミニウム
含有量との関連で、範囲的に0.12%までとすべきであ
る。 ニオブ量は0.1%から1.0%までとする。本発明で合金
のコストを下げるには、ニオブ量は上記の範囲内ででき
るだけ低く抑える必要があるが、大きな高温強度が必要
な実施態様においては、ニオブ量を該範囲内で増加し、
約0.6%あるいはそれ以上とすることができる。 通常の製鋼に係る不純物は、相対的に低いレベルに保
つのが望ましい。本発明における合金の場合、そのよう
な不純物をきわめて低いレベルに抑えるために原料を特
別に選別する必要はない。本発明の合金は、アーク溶解
炉を使用して、あるいはAOD(アルゴン・酸素脱炭)法
により、製造することができる。 炭素と窒素の含有量を減らす方法はよく知られてお
り、そのような方法は本発明に適用可能である。炭素レ
ベルは範囲的に0.03%まで、望ましくは0.01%までとさ
れるが、実際上の下限は0.001%である。窒素量は範囲
的に0.05%まで、望ましくは0.03%までとされるが、実
際上の下限は0.003%である。許容される窒素の量は、
以下に述べるようにチタン含有量により異なる。 大まかにいえば、本発明の合金は、炭素0.03%以下、
窒素0.05%以下、クロム10〜25%、マンガン1.0%以
下、ニッケル0.5%以下、シリコン1.0%以下、チタン0.
03〜0.35%、ニオブ0.10〜1.0%、アルミニウム1.2%ま
での随意量、および余部の鉄およびその他の不可避的不
純物から構成される。この合金の望ましい実施態様のも
のは、炭素0.03%以下、窒素0.05%以下、クロム10〜13
%、マンガン1.0%以下、ニッケル0.5%以下、シリコン
0.5〜0.7%、チタン0.03〜0.10%、ニオブ0.1〜1.0%、
アルミニウム1.2%までの随意量、および余部(residua
l)の鉄を含む。この合金の別の実施態様のものは、炭
素0.03%以下、窒素0.05%以下、クロム16〜19%、マン
ガン1.0%以下、ニッケル0.5%以下、シリコン0.5〜1.
0、チタン0.03〜0.1%、ニオブ0.1〜1.0%、アルミニウ
ム1.2%までの随意量、および余部の鉄を含む。これら
の実施態様のすべてについて、チタンと窒素の含有量
は、下記の熱力学方程式を満たすのに必要な量を限度と
する。或る所与の溶鋼組成に関し、熱力学的平衡式を用
いて行った計算により、本発明に係る諸成果が示され
る。ある所与の、液相線および固相線温度が既知の溶鋼
組成に対する、TiN溶解度を決定するための基本的熱力
学方程式は次のとおりである。 ここに、 また、 温度Tおよび合金の組成が与えられた場合、上記の方
程式によりTiNが析出してくる窒素のパーセントが計算
される。窒素のパーセントが計算値よりも低いと、TiN
が析出しない。反対に、上記の方程式から、所与の組成
について、TiNの析出をもたらすチタンのパーセントを
計算することができる。TiNの析出を避けるためにはチ
タンのパーセントを計算された値以下に抑えなければな
らない。 (作 用) 第2図に、ある範囲のチタンと窒素のレベルについ
て、クロム11.5%、炭素0.01%、マンガン0.35%、ニッ
ケル0.25%、シリコン0.3%、ニオブ0.25%、余部は鉄
の組成を有する鋼におけるTiNの溶解度を示す。チタン
0.05〜0.5%およびニオブ0〜0.5%組成範囲につき計算
した。公称11.5%のクロムと0.25%のニオブを含む合金
の場合、そのTiNの溶解度によれば、約2745゜F(1507
℃)の液相線温度において、0.1%のチタンを含有する
合金が窒化チタンの析出に至るまでに最高0.023%の窒
素を含有することができるのがわかる。チタン0.15%を
含む合金の場合は、約0.016%までの窒素しか許容でき
ない。さらに、チタン0.35%を含む前記合金にあって
は、窒化チタンの析出を避けるために、窒素含有量を0.
008%以下とする必要がある。従来の溶解法でそのよう
に低い窒素レベルを実現しようとすると、非常に原価高
になる。AOD法では、アルゴン吹練後の取鍋内の窒素レ
ベルは、AOD精錬中のアルゴンの使用量により一般に0.0
12%から0.02%の範囲にある。 周知の如く、液相線温度および固相線温度は鋼組成の
関数であり、次のように変化する。たとえば、上記のク
ロム11.5%の合金は、液相線温度が約2745゜F(1507
℃)であるが、クロム18%の同様な合金は、液相線温度
が約2720゜F(1493℃)である。 第3図に、炭素0.01%、マンガン0.35%、ニッケル0.
25%、シリコン0.30%、およびニオブ0.25%の合金につ
きチタンレベルを変えたときの、クロムと窒素含有量の
関数としてのTiNの溶解度限を示す。 第4図に、公称11.5%および18.5%のクロム合金の、
それぞれの液相線温度における、チタンの窒素の関数と
してのTiN溶解度限を示す。 熱力学方程式をもとに描いたこれらの図によれば、窒
素量とチタン量とは逆に変化している。したがって、有
害な金属間あるいは非金属窒化チタン化合物を析出させ
ずに鋼を鋳造、凝固させるには、上記第1式を満足する
のに必要とする以上の量で窒素とチタンが存在してはな
らないことが示唆される。こうすることにより、研磨を
必要とせず、実質上表面開口欠陥のない、冷間圧延表面
品質の良好な鋼のストリップあるいはシートが得られ
る。 酸素と硫黄の含有量を減らすいろいろな方法も周知さ
れており、こうした従来の方法は本発明に適用可能であ
る。酸素の含有量は0.05%以下とされるが、できれば0.
01%以下とするのがよく、実際上の下限は0.001%であ
る。硫黄のレベルは0.03%までの範囲をとれるが、0.02
%までとするのが望ましく、実際上の下限は0.0005%で
ある。製鋼に一般的なもう一つの不純物はリンで、これ
は0.04%以下にされるが、望ましくは0.025%以下とす
べきで、実際上の下限は約0.01%である。 ニッケルと銅も製鋼に一般的な不純物である。ニッケ
ルは0.5%以下、できれば0.25%以下、実際上の下限は
0.01%とすべきである。銅も0.3%以下のレベル、でき
れば0.2%以下に保つべきであるが、実際上の下限は約
0.01%である。銅とニッケルの含有量をこの下限値以下
とすることは、要求特性に何ら影響を及ぼさないのみな
らず、原料を特別に選別することなしに実現するのは困
難である。 マンガンレベルは1%以下とされるが、望ましくは約
0.55%以下、下限は0.06%とするのがよい。 随意に選択されるアルミニウム量は1.2%以下とされ
る。この範囲内でアルミニウム量を増すと、合金の高温
耐酸化性が強められる。溶接性とろう付け性を最適なも
のにするため、アルミニウム含有量を0.01%から0.07%
まで変えてもよい。ろう付けにおける濡れを改善するた
め、鋼にはアルミニウム0.1%以下、チタン0.12%以
下、および〔アルミニウム+チタン〕0.12%以下含有さ
せてもよい。アルミニウムは、溶解と精錬の際の脱酸剤
として常套的に用いられているため、通常、微量存在す
るものであるが、上記の目的のためにのみ使用する場合
は、0.1%以下とすべきである。 (実 施 例) 本発明をさらに完全に理解するため、圧延試験を行っ
た。圧延用材(mill heat)として下記例にて説明する
方法で2種類のものを溶製した。 実施例1 本発明の合金は、適当な材料を溶解し、下記化学組成
を有する圧延供試材となしたものである。 溶湯をAOD容器で精錬し、次いでスラブに連続鋳造後
ミルスケール除去のため研磨した。溶解と精錬の手順に
は、溶鋼の液相線温度において、チタン化合物の溶解度
積を飽和レベル以下に維持する作業も含めた。スラブの
いくつかは熱間圧延して厚さ0.155インチ(3.94mm)の
帯鋼とし、他のスラブは厚さ0.090インチ(2.29mm)の
帯鋼に熱間圧延した。 次いで、4個のコイルを通常の方法で冷間圧延し、厚
さ0.090インチ(2.29mm)の熱間圧延帯鋼(hot rolled
band:HRB)から最終寸法約0.018インチ(0.46mm)の冷
間圧延帯鋼に仕上げた。このHRBは、表面開口欠陥のな
いすぐれた表面を呈した。次いでコイルを研磨せずにこ
のHRBを冷間圧延した。冷間圧延した鋼に対して、通常
の焼鈍および酸洗処理を施した。これら冷延シートにつ
き消音器外筒材用としての加工性および溶接性について
評価した。4個のコイルすべての表面外観は非常によ
く、表面開口欠陥あるいは溶製に関連したいかなる欠陥
も存在しなかった。表面の外観が非常によいため、HRB
のコイルに成形したシート製品について研磨は不要であ
った。 コイルの1つは、通常の方法により厚さ0.090インチ
(2.29mm)のHRBからもっと薄く0.011インチ(0.28mm)
に冷間圧延し、次いでい通常の方法で焼鈍、酸洗した。
このHRBコイルの表面状態は非常に良好で、表面開口欠
陥あるいは溶製に関連した欠陥は存在しなかった。この
HRBコイルは、冷間圧延した表面の品質を向上させるた
めに、研磨により溶製法が関与した欠陥を除去する必要
はなかった。この非常に薄い冷延シートは、自動車用の
排気ガス還流管(recirculation tube)として溶接した
り製造したりするのに適しているか否かにつき評価され
た。表面の外観は欠陥が殆どなく、材料の成形性も溶接
性も良好であった。 さらに、2個のコイルを厚さ0.155インチ(3.94mm)
の熱間圧延帯鋼から仕上厚さ0.058インチ(1.47mm)に
冷間圧延し、次いで焼鈍および酸洗いを施した。これら
をコイルについて、機械的特性を評価した。 本願発明に係る化学組成を有する2種類のコイルにつ
いて、機械的特性が求められた。各コイルから2個ずつ
(端部(a)および(b))の計4個の試料について求
められた機械的特性を下表に示す。公称寸法0.058イン
チ(1.47mm)の409系の機械的特性も同時に示す。 本発明の合金は、409系合金と比べるに値する十分な
機械的特性を有し、良好な延性を示している。 この実施例の本発明に関わる合金の耐蝕性について評
価するため、各種の腐蝕液の中で、409系鋼およびT409
系鋼の耐蝕性が比較された。特に、ASTM763のZ法に準
拠した10%ASTM液およびウオルカ−合成濃縮液(Walker
synthetic condensate)中でこの合金を試験した。ま
た、20%の沸騰H3PO4、および室温で5%HNO3および15
%HNO3中でも試験した。 下記の組成の鋼について試験を行い、本発明の実施例
1の合金と比較した。鋼Aは409系鋼、鋼Bは改良型T40
9鋼である。 母材および溶接部についての試験結果を下表に示す。
腐蝕速度はインチ/月である。 本発明になる合金の耐蝕性は市販のT409系鋼に比べる
に値するものである。表に示した腐蝕速度の変化は、腐
蝕試験で得られた腐蝕速度の変化性を代表するものであ
る。 実施例1の圧延用材からとった試料を用い、連続酸化
における耐性および熱サイクル中の酸化に対する耐性の
両方についても、409系鋼および改良型409系鋼との比較
により評価した。試料を露点33〜43゜F(0.56〜6.11
℃)の静止空気酸化環境内に1600゜F(871℃)で100時
間置き、総重量増(mg/cm2)試験に供した。 試験は、実施例1の本発明の鋼および下記組成の409
系の鋼Cおよび改良型T409系の鋼Dを用いて行った。 試験結果は次表のとおりである。 自動車の排気系統の如き高温での用途には、1.5mg/cm
2またはそれ以上の重量増は受け入れられないと一般に
考えられている。T409鋼(鋼C)は重量増が71.4mg/c
m2、それに対して本発明の合金は重量増がわずか0.5mg/
cm2であった。T409系鋼は、最大連続100時間温度限界が
1600゜F(816℃)以下であると思われる。本発明の鋼
は、1600゜F(871℃)で100時間の場合、1.5mg/cm2の仕
様を容易に満足する。 熱サイクル酸化耐性は、明細書B78−59Tに述べた手順
に従ってASTMワイヤ寿命試験機で評価した。該熱サイク
ル試験では、厚さ0.0020インチ(0.051mm)×幅0.250イ
ンチ(6.35mm)のストリップを2分間規定温度に抵抗加
熱し、次いで2分間室温に冷却するサイクルが繰り返さ
れる。ストリップを貫いて酸化が進行し、破壊を招くと
破断する。異なる温度で試験することにより、破断対試
験温度に対するサイクル数の曲線が描かれる。各合金に
ついて描いたこの曲線から、2000サイクルで破断すると
きの温度をとり、その合金の熱サイクル酸化耐性とす
る。 熱サイクル酸化試験は、実施例1の本発明の鋼、改良
型T409系鋼D、および下記の組成を有するT409系鋼Eを
用いて行った。 各組成において、2000サイクルで破断するときの温度
は次表に示される。 連続酸化および熱サイクル酸化耐性試験の結果、供試
改良型T409系鋼Dおよび実施例1の鋼について、似たよ
うな特性が得られている。これは、これらの鋼のシリコ
ンレベルが約0.5%で、T409系鋼の一般的レベルの約0.3
4%よりもわずかに高いためであると考えられる。もう
一つの考えられる理由は、ニオブにより保護的なスケー
ルが付着しやすくなり、実施例1の鋼の熱サイクル酸化
耐性が改善されることである。本発明の一つの実施態様
によると、シリコンとニオブを多く含有した鋼は良好な
耐酸化性を示している。 連続酸化および熱サイクル酸化耐性試験により、本発
明の合金が良好な耐酸化性を有し、T409系鋼よりも100
゜F(37.8℃)またはそれ以上高い温度の使用が可能で
あることがわかる。 実施例2 本発明になるもう一種類の合金を得るため、下記の組
成を有する溶製物を溶解した。 この溶製物を実施例1と同様の方法で精錬した。どの
スラブもスラブの表面の近くに酸化チタンまたは窒化チ
タンが析出するという、溶製にもとづく欠陥を示してい
なかった。一部のスラブは厚さ0.260インチ(6.60mm)
の帯鋼に熱間圧延し、別の一部は厚さ0.155インチ(3.9
4mm)の熱間圧延帯鋼(HRB)とし、他のスラブは厚さ0.
090インチ(2.29mm)のHRBとした。 コイルの一つは、従来の方法で厚さ0.260インチ(6.6
0mm)のHRBから仕上厚さ0.131インチ(3.33mm)に冷間
圧延し、次いで従来方法による焼鈍と酸洗いを施した。
溶製にもとづく欠陥はHRBには認められなかった。仕上
寸法のストリップは、表面開口欠陥のない、きわめて良
好な表面外観を示した。 もう一つのコイルは、厚さ0.155インチ(3.94mm)のH
RBから、0.032インチ(0.82mm)の厚さに冷間圧延し、
次いで通常方法により焼鈍、酸洗した。このHRBコイル
は研磨せずに冷間圧延し、仕上寸法のストリップとした
が、表面開口欠陥は認められなかった。 端部(a)および(b)の両方の機械的特性につき、
下記の結果を得た。 この圧延用材は、本発明に従って製造したすべてのコ
イルは、表面開口欠陥による表面状態を改善する目的で
熱間圧延したコイルを研磨したり、あるいはシートやス
トリップ製品を研磨したりする必要はないことを示して
いる。本発明以前に消音器外筒用に製造された409系鋼
においては、表面開口欠陥のために多くの不合格品を生
じていた。本発明の合金は、2炉分の圧延用材から熱間
圧延帯鋼のコイル20個として製造された。しかし、表面
開口欠陥除去のためにHRBコイルを修正研磨する必要は
なく、良好な表面品質を示している。 (発明の効果) 本発明の目的のところで述べた様に、本発明では、溶
製中のチタンの析出に起因する表面開口欠陥または溶製
にもとづく他の欠陥を実質的に持たない状態で仕上寸法
まで冷間圧延することができるフェライト系ステンレス
鋼が得られた。このような鋼を実現することは、連続的
および周期的条件のいずれにおいても耐酸化性が改善さ
れ、また高温強度が改善されるという利点がある。この
鋼は、溶接可能でしかも成形性が良好で、かつろう付け
性も良い。またこの鋼は、高周波溶接も可能である。本
発明によるこの鋼は、409系鋼について通常ベースで採
算のとれる寸法よりもっと薄い、0.015インチ(0.381m
m)以下のオーダの厚さに冷間圧延することができる。
本発明の方法によれば、チタン化合物の溶解度積を溶鋼
の液相線温度における飽和レベル以下に抑え、表面外観
を損う析出物の生成を避けることができる。本発明によ
るこの鋼については、従来技術で概して必要であった研
磨工程は特に必要ではなく、低原価で製造することがで
きる。 本発明についていくつかの実施態様を示して説明した
が、当業者にとっては、本発明の範囲内において多くの
変更を加え得ることは明らかである。
【図面の簡単な説明】 第1A図は、409熱間圧延帯鋼の表面開口欠陥に関する金
属組織写真である。 第1B図は、第1A図の表面開口欠陥におけるTiNクラスタ
を走査電子顕微鏡(SEM)にて1833倍で観察して得られ
た金属組織写真である。 第1C図は、圧延方向に直角な断面の表面開口欠陥を光学
顕微鏡で観察して得られた金属組織写真である。 第2図は、公称11.5%のクロム鋼について、窒素含有量
と液相線温度をプロツトした図であり、いろいろなチタ
ンレベルにおけるTiNの溶解度が示される。 第3図は、窒素含有量とクロム含有量をプロツトした図
であり、いろいろなチタンレベルにおけるTiNの溶解度
が示される。 第4図は、窒素含有量とチタン含有量をプロツトした図
であり、公称11.5%および18%のクロム鋼について、液
相線温度に対するTiNの溶解度が示される。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭56−25953(JP,A) 特開 昭62−112757(JP,A) 特公 昭55−38023(JP,B2)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 1.表面品質の改善をはかった溶接可能なフェライト系
    ステンレス鋼の薄板又は帯鋼の製造法であって: 重量パーセントで以下の化学組成より成る溶鋼を準備す
    ること:炭素0.03%以下、窒素0.05%以下、クロム10〜
    25%、マンガン1.0%以下、ニッケル0.5%以下、シリコ
    ン1.0%以下、チタン0.03〜0.35%、ニオブ0.10〜1.0
    %、アルミニウム1.2%迄の随意量および余要部をなす
    鉄(ただし、窒素とチタンの量は、下式を満たすのに必
    要な量を限度として互いに逆に変化する); ここに、そして、 T:絶対温度(゜K) 有害な金属間又は非金属チタン化合物を析出させずに鋳
    込み、凝固させること;および 上記鋼を熱間圧延および冷間圧延に付して仕上寸法の帯
    鋼又は薄板にすること(ただし、熱間圧延された帯には
    チタン化合物の析出に起因する表面欠陥除去のために行
    う研磨を要せず、そして上記冷間圧延された薄板製品に
    は実質的に表面開口欠陥のない良好な表面品質が伴う)
    より成る方法。 2.含チタンフェライト系ステンレス鋼を仕上寸法0.01
    5インチ(0.381mm)未満に加工する、特許請求の範囲第
    1項記載の方法。 3.さらに、チタン化合物の溶解度積を、溶鋼の液相線
    温度において、飽和レベル以下に保つ、特許請求の範囲
    第1項記載の方法。
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