JP7187606B2 - 耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金 - Google Patents

耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金 Download PDF

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本発明は、高温用材料として使用される、耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金に係わる。
Al、Tiを含有する高Ni合金としては、アロイ800、825が代表的な商用合金である。近年、発展途上国での需要の拡大が進み、安価で表面品質および使用特性が良好な商品を供給できるようにするための技術開発が求められている。このために、従来の鋼塊法から連続鋳造法への製造方法の転換が進められているが、高Ni合金は鋳造時のスラブ内部割れ,熱間加工時の耳割れ,および製品の表面疵に対する感受性が高いことから、従来より連続鋳造法における製造性改善の観点から合金の化学組成の設計、製錬、鋳造、熱間加工技術の改善、開発が進められてきた。
連続鋳造技術に関する特許文献として、例えば、特許文献1では、表面疵発生を抑制する方法として、Ti,N,Siの含有量を低位に低減した成分系および製造方法に関する技術が開示されている。特許文献2では、Ca合金を添加しない製造方法によってノズル閉塞を防止し、表面疵を防止する方法が開示されている。この文献の中には、Ca合金を添加することにより溶融合金中で酸素と結合して酸化物系の非金属介在物を生成し、凝集・大型化し最終製品合金板表面の線状欠陥発生につながるという問題がある、と記載されている。特許文献3では、表面疵生成の原因となるTiN系介在物の粗大凝集を防止するために、CaO-MgO-Al系介在物を必須成分として含み、全介在物個数に占めるCaOとMgOの個数の割合が50%以下となるよう規定している。
上記の先行技術は製造性、なかでも特に表面疵抑制の観点から成分系と介在物組成を規定したものであるが、溶接高温割れ感受性についてはいずれも全く考慮されていないものである。
特開2003-147492号公報 特開2014-189826号公報 特開2018-59148号公報
本発明者は、Ni基合金を実使用するにあたり、製造性の問題点だけではなく、オーステナイト単相鋼であるが故の高い溶接高温割れ感受性を呈し、溶接施工時に割れが発生しやすいという問題点があることを知見した。本発明では、Caおよび/またはMg合金を微量含有するAl,Ti含有高Ni合金において、従来検討されてこなかった溶接高温割れ感受性、特にHAZ割れ感受性を低位安定化させることが発明の課題である。
Al,Ti含有高Ni合金は比較的熱間加工性が良好であるといわれる合金である。しかしながら、数ppm以上のSを含有すると凝固組織を有する鋳片の熱間加工においては熱間加工性が十分でなくなるため、Ca合金やMg合金を微量添加して熱間加工性の改善を図る必要がある。ところが、CaまたはMg合金を添加する方法で本発明が対象とする高Ni合金の連続鋳造をおこない、そのスラブ、ブルームまたはビレットより製造した鋼材用いて溶接施工により構造物を製造すると、入熱により発生する熱応力により溶接高温割れが生じることがある。特にAl,Ti含有高Ni合金においてはHAZ部にて生じる液化割れが問題となることがある。
本発明は、高温用材料として使用される、耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金を提供することを課題とする。
本発明者は上記課題の原因解明と解決を図るために、本発明が対象とするAl,Ti含有高Ni合金を基本組成とし、Ca,Mgの添加量を種々変化したラボ真空溶解をおこない、得られた鋳片について熱間圧延,焼鈍,熱処理を施した鋼材を用いてバレストレイン試験により溶接時のHAZ割れ感受性を評価した。あわせてFE-SEM-EDSによる合金中の非金属介在物および析出物の調査を実施し、課題解決のための研究をおこなった。
本発明者の研究で調査した高Ni合金中の介在物は、一部硫化物を含んだCaO、CaO-Al、MgO、CaO-MgO、CaO-MgO-Al等、もしくはCaSであった。また、これらの介在物の多くは介在物を包括するようにTiC、TiN、またはTiNCが生成していた。このうち、粒界強度および粒界の融点を低下させることでHAZ割れ感受性を増大させるSの固定能に着目した。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、C:0.15%以下、Si:0.05~2.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、O:0.0020%以下、かつO+Sの合計で0.0020%以下、Cr:16~30%、Ni:18~50%、Al:0.01~1.0%、Ti:0.01~1.5%、N:0.02%以下、Mo:8%以下、Cu:4%以下、Co:3%以下、Ca:0.0010~0.0050%、Mg:0.0010~0.0050%を含有し、残部がFeおよび不純物よりなり、酸化物系介在物および硫化物系介在物中のSの平均濃度が質量%で0.70%以上であることを特徴とする耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
(2)前記Feの一部に替え、さらに質量%で、B:0.0002~0.0030%,Sn:0.05%以下、Zn+Pb+Bi:0.0010%以下,Zr:0.5%以下、Hf:0.5%以下、La+Ce+Nd:0.0050%以下、W:3%以下、V:0.01~0.5%、Nb:0.002~1.0%、Ta:0.002~1.0%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)記載の耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
(3)溶接構造物に用いられる(1)または(2)記載の耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
本発明により、高温用材料として使用されるAl,Ti含有高Ni合金を用いた溶接構造物を安定的に製造することが容易になる。熱間加工性に優れることに加え、溶接構造物を製造する際に溶接熱影響部の割れが生じにくく、高温でのクリープ特性、耐酸化性に優れたAl、Ti含有高Ni合金を得ることができる。
発明鋼および比較鋼における、酸化物および硫化物系介在物中のSの平均含有量とHAZ割れ総長さとの関係を表す図である。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。なお、各成分の含有量は質量%を示す。
<成分組成>
C:0.15%以下
Cは、高温材料、耐熱合金の強度を確保するために添加される。特に高温強度特性が必要な場合は0.015%以上,好ましくは0.05%以上添加する。その上限を0.15%以下の含有量に制限する。本合金ではCはTiC析出物として合金中に存在するが、0.15%を超えて含有させるとCr炭化物が生成するようになり、高温特性および耐食性が劣化する。好ましくは0.10%以下、更に好ましくは0.085%以下である。
Si:0.05~2.0%
Siは、脱酸および耐酸化性向上のため0.05%以上、好ましくは0.2%以上添加する。しかしながら、2.0%を超えて添加すると鋼の凝固割れ感受性を低下させるとともに金属間化合物が析出しやすくなり、高温特性が劣化する。そのため、上限を2.0%に限定する。好ましい上限は1.5%,更に好ましい上限は0.8%である。
Mn:0.05~2.0%
Mnはオーステナイト相の安定度を増加させ耐熱性を改善する効果を有する。このため、本発明合金では積極的に添加することが好ましい。耐熱特性の改善のため0.05%以上、好ましくは0.2%以上,更に好ましくは0.3%以上添加する。しかしながら、2.0%を超えて添加すると逆に金属間化合物が析出しやすくなり耐熱特性が劣化する。そのため、上限を2.0%に規定する。好ましい上限は1.5%、さらに好ましい上限は1.3%である。
P:0.035%以下
Pは原料から不可避に混入する元素であり、凝固割れ感受性を高める作用を有するため、0.035%以下に限定する。好ましくは、0.030%以下である。
S:0.0015%以下
Sは原料から不可避に混入する元素であり、熱間加工性、耐酸化性をも劣化させるとともに、粒界へのSの偏析によりHAZ割れ感受性を増大させるため極力低減させる必要がある。そのため上限を0.0015%、好ましくは0.0010%以下に限定する。
O:0.0020%以下、O+S:0.0020%以下
酸素は、本発明合金中でCa,Mg,Al,Tiとの間に酸化物系介在物を形成する。酸素の含有量は酸化物系介在物の総量に対応し、合金の脱酸状態の指標ともなる重要なものである。加えてこれらの酸化物系介在物は板加工や管の拡管性に対して悪影響を及ぼす。更に、後述のとおり本発明では粒界へのSの偏析を極力抑制するために、CaによるS固定により脱硫を促進させるが、そのためには酸素含有量の上限を0.0020%とする必要がある。また、O:≦0.0020%まで脱酸が行われている鋼においてCaによるSの固定が充分に行われたか否かを判断する指標として、O+Sの値を0.0020%以下とする必要がある。一方、過剰な脱酸は炉体およびスラグに含まれるCa、Mgを還元し合金中に過剰Ca、過剰Mgを発生させることがあり、この場合は熱間加工性、溶接高温割れ感受性を逆に低下させる。このため、酸素含有量は0.0003%以上あることが好ましい。
Cr:16~30%
Crは、高温用材料としての耐熱合金の耐酸化性をになう必須の元素であり、16%以上、好ましくは18%以上を含有させる。一方で、30%を超えて含有させると、Niを多く含有させたとしても高温組織安定性が低下し、金属間化合物が析出するようになり、耐熱特性を劣化させる。好ましい上限の値は28%,更に好ましい上限は26%である。なお、最適な含有量はNi,Si,Moやその他の元素の含有量により異なってくる。たとえばNiが30%程度の場合、Crは20%程度が最適である。あるいはNi+Cuが45%程度の場合、Cr+Moが25%程度が最適な含有量である。
Ni:18~50%
Niは、高温でのオーステナイト組織を安定にし、各種酸に対する耐食性、靭性をも改善するため、18%以上、好ましくは20%以上、更に好ましくは25%以上含有させる。Ni含有量を増加することにより、耐熱特性のために必要なCr,Mo,Al,Tiをより多く含有させることが可能になる。一方Niは高価な合金であり、本発明鋼ではコストの観点より上限を50%、好ましくは48%、更に好ましくは45%に規定する。
Al:0.01~1.0%
Alは、脱酸元素であるとともに高Ni合金中でNiAl規則相を形成し高温強度を高める作用を有する。本発明では、酸化物の組成を制御して熱間加工性を高めるために、0.01%以上、好ましくは0.05%以上の含有が必要である。一方でAlが1.0%を超えると金属間化合物が析出しやすくなって耐熱特性を阻害するようになる。また、過剰に含有すると溶接高温割れ感受性、本発明においては溶接時のHAZ割れ感受性を低下させる。このためその含有量の上限を1.0%と定めた。好ましい上限は0.60%である。
Ti:0.01~1.5%
Tiは、高Ni合金中でNiTi規則相を形成し高温強度を高める作用を有する。このためには0.01%以上、好ましくは0.15%以上の含有が必要である。更に好ましくはAlとTiを合計で0.80%以上含有する。一方でTiが1.5%を超えると金属間化合物が析出しやすくなって耐熱特性を阻害するようになる。また、過剰に含有すると溶接高温割れ感受性、本発明においては溶接時のHAZ割れ感受性を低下させる。好ましい上限は1.0%である。
N:0.02%以下
Nは高温強度や耐食性向上に有効な元素であるが、本発明ではTi,Alを積極的に添加する。AlNまたはTiNを生成して非金属介在物となり材料特性を劣化するとともに、酸化物と複合化して連続鋳造時のノズル閉塞を促進する有害な元素となる。このため、Nの含有量の上限は0.02%以下とする。好ましい含有量は0.01%以下である。
Mo:8%以下
Moは、耐熱合金の強度を高める元素である。耐熱性改善の目的のために添加する場合は0.05%以上、好ましくは0.2%以上含有させる。一方で高価な元素であり、本発明鋼では本鋼の合金コストを抑制する観点より8%の含有量を上限とする。好ましい上限は3%、更に好ましい上限は2%である。Moは含有しなくても良い。
Cu:4%以下
Cuは、合金の酸に対する耐食性および高温機器でしばしば問題となる耐露点腐食性を高める元素であり、かつ高温強度および組織安定性を改善する作用を有する元素である。これらの耐熱性・耐食性改善のために添加する場合は0.05%以上、好ましくは0.1%以上含有させる。一方、4%を超えて含有させると凝固時に脆化を発生するようになるので上限を4%とした。Cuの好ましい上限は3.0%,更に好ましい上限は2.0%である。Cuは含有しなくても良い。
Co:3.0%以下
Coは合金の高温組織安定性と耐食性を高めるために有効な元素であり、添加する場合はこれらの特性改善のために0.1%以上含有させる。3.0%を超えて含有させると高価な元素であるためコストに見合った効果が発揮されないようになるため上限を3.0%と定めた。Coの好ましい上限は1.5%である。Coは含有しなくても良い。
Ca:0.0010~0.0050%
Caは、合金の熱間加工性および溶接高温割れ感受性、本発明においては溶接時のHAZ割れ感受性を改善するための重要な元素であり、合金中のSをCaSとして固定し、熱間加工性を改善するために含有させる。この反応は、以下のようになる。Caは、合金中の酸素と結合してCaO、CaO-Alを生成し、合金中の溶存酸素(Free酸素)をほとんどゼロとしたのちに、残余のCaと合金中のSが反応してCaSを生成する。本発明合金ではその目的のためにCaを0.0010%以上、更に好ましくは0.0015%以上含有させる。一方で、過剰なCa添加は1100℃付近の高温の延性を低下させる。このため、Caの含有量の上限を0.0050%とした。
Mg:0.0010~0.0050%
本発明では強脱酸によるMgのピックアップにより0.0010%以上のMgが含有される。Mgは、一般的には微量であれば合金の熱間加工性の改善の効果が得られる元素であるが、本発明においては溶接時のHAZ割れ感受性を高めるMgO系の介在物生成を促進するという悪影響がある。加えて酸化物を生成しない余剰なMgは粒界に偏析して高温域(例えば900℃)における粒界強度を低下させることにより高温域での熱間加工性の低下およびHAZ割れ感受性の増大を生じさせる。含有量の上限を0.0050%とした。好ましい上限は0.0040%である。
<介在物中のS濃度>
酸化物系介在物および硫化物系介在物中のSの平均濃度:0.70%以上
介在物中のSの平均濃度は、合金断面の一定の測定視野におけるFE-SEM-EDS分析によって求められるOまたはSを含有する酸化物または硫化物系介在物、および介在物を接種核として生成した析出物中に含まれるSの平均濃度である。O濃度、S濃度を質量%で合計0.0020%以下に規定した鋼においては、介在物中のSの平均濃度が質量%で0.70%以上となるようにSを介在物中に固定することで、溶接時のHAZ割れに悪影響をおよぼすSの粒界偏析が抑制され、良好なHAZ割れ性を保つことが可能となる。
Sの固定には精錬時の脱酸強化による酸素濃度の低減が有効な手段となる。
以下に本発明の製造方法について記載する。
脱酸強化にはAlによる脱酸に加え、Sの固定能が高いCaを添加することで脱酸力を強化する。二次精錬最終工程の出鋼前、または連続鋳造時のCa合金添加による脱酸・脱硫が有効である。加えて、二次精錬時に溶鋼表面に形成されるスラグの組成として、CaOリッチな介在物が生成する塩基度の高いスラグ組成とする必要があり、スラグ中のCaOとAlの比率C/Aを質量比で1.5以上とするのが好ましく、2.0以上とするとなお好ましい。なお、融点調整のためのCaF添加も炉体損傷が生じない範囲であれば実施することができる。加えて、Ca添加直後にはスラグからのMgのピックアップによりMg濃度が上昇する場合がある。Caの添加は連続鋳造時よりも二次精錬時の最終工程でCa添加を行う方が好ましく、その場合でも連続鋳造への移行の5分前もしくはそれ以上前にCa添加を行うことが好ましい。
本発明の高Ni合金の成分組成は、前述の各成分を含有し、残部がFeおよび不純物よりなる。次に、請求項2記載の限定理由について述べる。さらに前記Feの一部に替え、選択的に以下に示す成分(質量%)を含有することができる。
<成分組成>
B:0.0002~0.0030%
Bは鋼の熱間加工性を改善する元素であり、熱間加工の高温域の絞りを格段に向上する。このため、請求項2ではBが含有される。Bの熱間加工性の向上機構は明確ではないが、粒界に偏析することで粒界強度を高めると言われる。B含有による熱間引張の改善効果は0.0002%以上で発現することから、B添加する場合は下限を0.0002%とする。一方で、過剰な添加は凝固割れを促進するため、その含有量の上限を0.0030%に定めた。好ましい上限は0.0015%である。
Sn:0.05%以下
Zn+Pb+Bi:0.0010%以下
Zr:0.5%以下
Hf:0.5%以下
La+Ce+Nd:0.0050%以下
Snは鋼の耐食性、高温クリープ強度を向上させる元素であり、必要に応じ添加することができる。ただし、0.05%を超える添加は熱間加工性を低下させるため、上限を0.05%と規定した。また、Pb,Zn,Biもオーステナイト単相系の合金では熱間加工性を著しく低下させるため、上限を厳しく規定する必要があり、Pb,Zn,Biの合計で0.0010%以下に規定した。
Zr,HfはいずれもP,Sを固定することで鋼の凝固割れ感受性,耐高温酸化性を向上させる効果があり、必要に応じて添加することができる。一方で0.5%を超える多量の添加は熱間加工性等の製造性および表面性状を低下させる。従い、これらの添加量上限を0.5%に規定した。
La,Ce,NdはいずれもP,Sの固定により耐酸化性、凝固割れ感受性を改善する元素であるが、その一方で合計で0.0050%を超える添加はTiC系析出物の増加を促進し鋼の液化割れ感受性を増大させる。従い、含有量の上限をこれらの元素の総和で0.0050%と規定した。なお、これらの元素の添加方法としては、各々の金属もしくは合金での添加、ミッシュメタルでの添加などの方法がある。
W:3%以下
Wは、Moと同様に耐熱合金の強度を高める元素であり、必要に応じて添加することができる。本発明鋼において耐熱性を高める目的のためには3%を上限に含有させる。
V:0.01~0.5%、Nb:0.002~1.0%、Ta:0.002~1.0%
V,Nb,Taについて説明する。V,Nb,Taは何れも必要に応じて添加することができ、合金の高温特性を向上させる作用を有する。コストに見合った含有量とするため、Nb、Taの含有量の上限を1.0%と定めた。好ましい含有量上限は0.8%である。Vの含有量上限は0.5%とした。添加する場合の含有量の下限はVでは0.01%、Nb、Taでは0.002%、好ましくは0.03%である。また、好ましい含有量範囲は、0.03%~0.8%である。
上記本発明の高Ni合金は、溶接構造物に用いることが好ましい。溶接施工により構造物を製造するに際し、溶接高温割れ感受性、特にHAZ割れ感受性を低位安定化させることができるからである。
以下に実施例について記載する。本発明者らは50kg真空溶解炉により高Ni合金をMgOるつぼ中で溶解し、Al,Ti,Ca,Mgを添加して17kg扁平鋳型に鋳造し、表1-1、表1-2に示す組成の高Ni合金を得た。本溶解では2次精錬のスラグ組成を模擬するためにフラックスを投入した。フラックス原料にはCaO,MgO,Al,SiO,CaFの5種類の粉末試薬を用い、溶解日当日に調合した。調合条件は質量%でMgO:7.5%、CaF:20%、CaO、SiO、Al、および/またはMgOの投入量より計算したフラックス質量比:CaO/Al=2.5((CaO+CaF)/Al=3.5)、Al/MgO=2.7、CaO/SiO=20とし、投入量はるつぼ内のフラックス量が340gとなる分量とした。フラックスはTi,Al投入の2分後に、Ca合金はフラックス投入の10分後にそれぞれ投入した。出鋼(鋳型への鋳造開始)はA1~A11、およびB4ではCa合金投入より7.5分経過したタイミングで、B1~B3,B5~B7に関しては2.5分経過したタイミングでそれぞれ行った。なお表1に記載されている成分は残部がFeおよび不純物元素であり、単位は全て質量%である。また表1-1、表1-2に示した成分について空欄は不純物レベルであることを示している。
Figure 0007187606000001
Figure 0007187606000002
溶解材を鋳造した鋳片は48mm厚×170mm幅×225mm高さの寸法を有する。この鋳片に対し以下の処理を行いHAZ割れ感受性を評価するロンジ・バレストレイン試験片を作製した。まず表面を2mm研削して鋳片表面の疵を除去したのちに44mm厚×85mm幅×170mm長さの形状に切り出し、1180℃に1時間加熱後、12.5mm厚まで熱間圧延した。次にこの厚板に1165℃×10分の熱処理をおこない、両面研削により板厚を12mmとし、40mm幅×300mm長さの形状に切り出した試験片とした。
ロンジ・バレストレイン試験は、板幅中央部の長手方向に溶接電流200A,電圧12V,速度15cm/分の条件でTIGなめ付け溶接を施し、溶接の途中で表層に2%の歪が加わるよう溶接方向と平行に曲げ応力を瞬間的に付与した。曲げ応力付与により溶接割れが発生した個所を光学顕微鏡にて観察可能なサイズに切り出した後に溶接部表面のスケールをバフ研磨にて除去し、光学顕微鏡にてHAZ割れの有無および程度を観察した。溶金と母材の境界を起点として溶接方向と垂直な方向に伝搬したHAZ割れの長さを個々に測定し、それらの値の総和を総割れ長さと定義した。試験は1成分につきn=2で実施し、総割れ長さn=2の平均値が1mm以下であった場合は良好、1mmを超えた場合は不適と判断した。0.4mm以下の試験結果が得られた場合は優良と判断した。
介在物の測定は、FE-SEM-EDS分析によった。なお、FE-SEMは株式会社日立ハイテクノロジー社製SU5000を、解析ソフトはEMAXEvolutionをそれぞれ用いた。ロンジ・バレストレイン試験片の熱影響を受けていない箇所より25mm×25mmのサイズに切り出し表層が観察面となるように樹脂埋めを施した後、表層の酸化物、硫化物、窒化物、炭化物等の析出物が溶解しないように、ダイヤモンド砥粒にて鏡面研磨仕上げをおこなった。測定面積を2.5mm以内に限定し、反射電子像のコントラストの情報より解析ソフトが粒子と認識したもののうち、面積より換算した相当円直径が0.6μm以上の粒子についてEDXによる自動定量分析を行った。なお、測定時間は粒子1個あたり0.5秒の条件で行った。検出した粒子のうち、OまたはSが検出されたものを介在物系粒子として抽出し、以下のとおり個々の元素について平均含有量を演算した。
・各成分の平均含有量(質量%)=Σ(各粒子の分析値(質量%)×表面積(mm))/(粒子数×平均表面積(mm))
この方法で得られた介在物中のS濃度と、HAZ割れ総長さの測定結果を表2に示す。あわせて、図1にHAZ割れ総長さと介在物中のS濃度との関係を示す。
Figure 0007187606000003
表2および図1に示す実施例より、介在物中のSの平均濃度の値が0.70質量%以上であった鋼番A1~A11においては、溶接高温割れ試験にて発生したHAZ割れ総割れ長さの値がn=2平均で1mm以下と良好な値を示したのに対し、0.70質量%よりも小さな値を示したB1~B4のHAZ割れ総長さの値は1mmを大幅に上回りHAZ割れ感受性が急激に増大していることが明らかである。B1~B4に関しては、O+Sの値が20ppmを上回り、介在物中のS濃度がS≧0.70質量%を満足していなかった。なお、B3に関してはOの値単独でも20ppmを超えていた。B4はB1~B3と異なりCa投入から出鋼までの時間をA1~A7と同条件としていたが、Ca狙い値0.010%未満の条件でCa合金を投入したため介在物中のS濃度が0.70%以下となり、HAZ割れ感受性も発明鋼の水準に達しなかった。B5~B7に関してはO+Sの値は20ppmを下回っていたものの、Mgの含有量が50ppmを上回っていた。B5はCaの過剰添加が、B6は脱酸強化元素であるAlおよびTiがそれぞれ請求範囲の上限を超過したことがCa添加時のMgピックアップを促進したことが想定され、その結果HAZ割れ感受性が増大したものと考えられる。
以上の実施例からわかるように、本発明により溶接高温割れ感受性が低い高Ni合金を製造することができることが明確となった。
本発明により、高温用途のAl,Tiを含有する高Ni合金を用いた溶接構造物を好適に製造することができるようになり、設計上の自由度向上および溶接補修コストの低減化が見込まれる。また、これらの合金は高温用途のみならず、高耐食用途で用いられる溶接構造物に関しても幅広く使用することができる。
拡大する高Ni合金の需要に対して安定的な溶接品質を提供することができるようになり、産業の発展に寄与するところは極めて大である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.15%以下、Si:0.05~2.0%、Mn:0.05~2.0%、P:0.035%以下、S:0.0015%以下、O:0.0020%以下、かつO+Sの合計で0.0020%以下、Cr:16~30%、Ni:18~50%、Al:0.01~1.0%、Ti:0.01~1.5%、N:0.02%以下、Mo:8%以下、Cu:4%以下、Co:3%以下、Ca:0.0010~0.0050%、Mg:0.0010~0.0050%を含有し、残部がFeおよび不純物よりなり、酸化物系介在物および硫化物系介在物中のSの平均濃度が質量%で0.70%以上であることを特徴とする耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
  2. 前記Feの一部に替え、さらに質量%で、B:0.0002~0.0030%、Sn:0.05%以下,Zn+Pb+Bi:0.0010%以下,Zr:0.5%以下、Hf:0.5%以下、La+Ce+Nd:0.0050%以下、W:3%以下、V:0.01~0.5%、Nb:0.002~1.0%、Ta:0.002~1.0%のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
  3. 溶接構造物に用いられる請求項1または請求項2記載の耐溶接高温割れ性に優れた高Ni合金。
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