JP2022026809A - 相安定性に優れた高耐食Ni-Cr-Mo-N合金 - Google Patents

相安定性に優れた高耐食Ni-Cr-Mo-N合金 Download PDF

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Abstract

【課題】シグマ相が析出する温度域、具体的には、700~1000℃の温度範囲に晒される場合も、耐食性に優れるNi-Cr-Mo-N合金を提供する。【解決手段】以下mass%にて、Ni:22.0%以上、Cr:22.0%以上、Mo:5.0%以上、N:0.180%以上、Si、Al、Mnを含有し、残部はFeおよび不可避的な不純物からなる合金であって、下記式(1)~(3)を満たし、950℃×30min保持した後の断面組織において、EBSDにて測定したシグマ相の面積率が1.0%以下であることを特徴とする、Ni-Cr-Mo-N合金。Cr+3.3×Mo+16×N≧43.0 …(1)7.3×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(3)【選択図】図1

Description

本発明は、ロウ付けにより製造するシーズヒーター、熱交換器、自動車排ガス系部品など、あるいは、溶接を施した後、溶接後熱処理(Post Weld Heat Treatment、以下PWHTと略称)を施す必要がある部材など、その製造工程において高温に加熱する工程が必須である場合において、これら熱処理を施しても優れた耐食性を保持できるNi-Cr-Mo-N合金に関するものである。
Cr、Mo、Nを多量に含有する合金は、耐食性に優れるため厳しい腐食環境で使われており、その製造工程にロウ付けが採用されているものも多い。この場合、ロウを溶融、浸透させるために900℃以上の温度に加熱、一定時間保持されることとなる。Cr、Mo含有量が多い合金をこの様な温度に保持するとシグマ相が析出し耐食性の低下を引き起こし問題となる場合がある。このため、シグマ相が析出しないより高温、例えば1150℃で処理することとなる。しかしながら、このような温度でロウ付けを実施すると高温保持中に熱による変形が生じることや冷却による変形、あるいは新たな残留ひずみが生じることがあり、より低い温度でロウ付け処理できる合金、つまりシグマ相が析出し難い、析出量を最小限に抑制できる合金が求められている。
これ以外では、対象としている合金は溶接により接合し組み立てられることも多い。溶接により生じた残留ひずみは、経時による変形や割れ、応力腐食割れの原因となるとため除去するのが一般的で、PWHTと称される熱処理が施される。応力除去には、600~900℃程度で熱処理する場合が多いが、Cr、Moを多量に含有する合金では、これら温度に保持するとCr炭化物の析出、シグマ相の析出により耐食性が低下してしまう。このため、より高温で、例えば1150℃以上といった温度で実施される。ここで問題となることはロウ付けの場合と同じであり、PWHTを施してもシグマ相が析出し難い、析出量を最小限に抑制できる合金が求められている。
シグマ相の析出制御に関する先行技術としては、例えば、特許文献1では、Cu、La、Ceを含有する鋼について、加熱温度、保持時間、ヒート数などの熱間圧延条件を規定することで制御し、シグマ相量を1体積%以下とする鋼と製造方法が提案されている。目的は圧延方向に対し直角方向の伸び、曲げ性の改善であり、シグマ相量の測定は、JIS G 0555に基づきC断面の観察を行い求めている。シグマ相の制御に注目しているが、耐食性への影響を考慮していない。
特許文献2においては、Cuを含有する鋼について、板厚中央部のシグマ相量を面積率で1%未満と制御するための構成元素の関係式、腐食の発生を制御する関係式、その進行を制御する関係式を組み合わせることで、シグマ相を制御し耐食性に優れる鋼を提案している。対象となるのは固溶化熱処理を施したものであり、ロウ付けやPWHTなどの工程を経た材料におけるシグマ相析出、耐食性については考慮されていない。
特許文献3においては、これもCuを含有する鋼について、Fe、Cr、Mo、Ni、Cuから成る関係式で組成を制御することで、表層から0.1μm深さの範囲でシグマ相が面積率で1%以下となる様な鋼が提案されている。ロウ付けした後の耐食性確保を目的としたものであるが、使用環境は硫酸、塩酸を含むもので特殊な環境を想定しているため、塩化物を主に含む環境では耐食性が十分でない場合がある。シグマ相を制御するためのポイントの1つがCuの添加であるが、非常に高価な元素であり、塩化物を含む環境での耐食性向上はコストに見合うものではない。また、ロウ付けは1150℃で実施しているが、変形、残留ひずみを小さくするにはもっと低い温度で実施できることが望ましい。
特許文献4においては、鋼塊におけるシグマ相の析出を抑制することで、耐すきま腐食性と熱間加工性を向上させたオーステナイトステンレス鋼が提案されている。対象が鋼塊であり凝固組織でのシグマ相生成の抑制が目的であること、これを熱間加工した板が対象であることから、ロウ付け工程を考慮したものではない。
特開2002-322545 WO2016/076254 特開2018-172709 特許第3512304
評価用の合金について行ったEBSDによるシグマ相測定結果を示す電子顕微鏡写真図である。 シグマ相析出に及ぼす成分の影響を示すグラフで、(a)はNi量とMo量の関係、(b)はNi量とCr量の関係を示す。 シグマ相析出面積率、耐食性に及ぼすSi、Mn、Al量の影響を示すグラフである。 ロウ付け性評価に用いた試験片の模式図である。 Niロウの濡れ性に及ぼすSi、Mn、Al量の影響を示すグラフである。
本発明は、従来技術における上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、シグマ相が析出する温度域、具体的には、700~1000℃の温度範囲に晒される場合も、耐食性に優れるNi-Cr-Mo-N合金を提供することにある。
発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、合金組成を調整し、式(1)~(3)を満たすことで、950℃×30min保持後のシグマ相が面積率で1.0%以下となる優れた耐食性を有する合金を見出した。
すなわち、本発明の相安定性に優れた高耐食Ni-Cr-Mo-N合金は、以下mass%にて、Ni:22.0%以上、Cr:22.0%以上、Mo:5.0%以上、N:0.180%以上、Si、Al、Mnを含有し、残部はFeおよび不可避的な不純物からなる合金であって、下記式(1)~(3)を満たし、950℃×30min保持した後の断面組織において、EBSDにて測定したシグマ相の面積率が1.0%以下であることを特徴とする。
Cr+3.3×Mo+16×N≧43.0 …(1)
7.3×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)
1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)
1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(3)
本発明においては、C:0.001~0.030%、Si:0.02~0.30%、Mn:0.02~0.40%、P:0.005~0.050%、S:0.0001~0.0030%、Ni:22.0~38.0%、Cr:22.0~28.0%、Mo:5.0~8.0%、Cu:0.02~0.50%、N:0.180~0.250%、Al:0.005~0.100%であることを好ましい態様とする。
本発明においては、下記式(4)を満たし、かつB:0.0005~0.0050%、O:≦35ppmとしたことを好ましい態様とする。
0.20≦1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(4)
本発明の高耐食部材は、不活性ガス雰囲気中で1000℃以上の温度でNiロウを使用し上記合金をロウ付けすることを特徴とする。
本発明のシーズヒーターは、上記合金からなる被覆管を有し、Niロウによる接合部を有することを特徴とする。
本発明によれば、シグマ相が析出するような温度域に晒された場合にも耐食性の低下を抑制することができる。このため、ロウ付け、溶接部に対するPWHT、鋼などとクラッド化された後の残留歪除去のための焼鈍などが製造工程として適用される場合に好適な高耐食合金を提供できる。
本発明者らは、まず、シグマ相の定量評価方法について検討を行った。シグマ相の定量方法は、ASTM E562に代表される点算法により行うのが一般的である。エッチングを施した金属組織に対し、顕微鏡に付帯したレチクルの格子交点がシグマ相と重なった割合から評価する方法である。観察のためのエッチングの結果により評価結果は左右され、真のシグマ相析出量に対して数%程度の誤差を含む恐れがあると考える。加えて、少なく、小さいシグマ相が格子交点に重ならない場合もあり、面積率で1%以下となるような少量の評価には好ましくない。そこで、発明者らは高精細な測定ができ、結晶構造判定により高い信頼性が得られる電界放出形走査電子顕微鏡および後方散乱電子回折法(以下、EBSD法とする)による測定によりシグマ相の面積率を評価することとした。
評価の一例として、Fe-0.01%C-23%Cr-35%Ni-7.48%Mo-0.22%N-0.04%Cu合金についてEBSD測定を実施した結果を図1に示す。シグマ相面積率は、次の方法で測定した。950℃×60minの熱処理を施した2mm冷延板から圧延方向に直角に切り出した小片にStruers(株)製、「テヌポール-5」にて電解研磨を行った後、電解放出型走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、「JSM-7001F」)に付帯した、後方散乱電子回折装置(TSLソリューションズ(株)製、「EBSD解析ソフトOIM Analysis 7.3」)を用い、測定領域80μm×240μm、ステップサイズ0.2μmで測定した結果からシグマ相面積率を求めた。シグマ相の大きさは、走査電子顕微鏡の組成像から直交する2方向で大きさを測定し、その平均値を粒径とした。
この方法によると、1μm以下の小さなシグマ相を確実に捉えることができ、光学顕微鏡観察で問題となるキズ、異物付着、非金属介在物の誤認などが無く正確に評価できる。なお、走査電子顕微鏡の組成像から求めた本測定で確認できた最小のシグマ相は0.1μm×0.3μm程度で、図1の平均粒径は1.4μmであった。また、850~1000℃の範囲において、いずれの温度、時間で保持した場合、シグマ相の析出が最も早いかを調べたところ、950℃であることが判った。ロウ付け部材の昇温、冷却を考えた場合、950℃程度の保持は、おおよそ15~20min程度で最大30minであった。これより、950℃×30min保持しても析出が無ければ特性の劣化がないと考えた。
<実験1>
ロウ付けによりシグマ相の析出が少ない合金とするには、例えばロウ付けを行う1050℃程度に保持してもシグマ相の析出が無いことが必要と考えた。そこで、主要元素であるNi、Cr、Moに注目し、1050℃保持後の組織と組成の関係を調査することにした。実験は、高周波誘導炉を用い、N=0.225%として、Ni:18~36%、Cr:20~29%、Mo:5.5~8.0%の範囲で変化させた合金を20kg溶解した。その後、熱間鍛造、焼鈍、冷間圧延を施すことで2mmtの冷延板を得た。冷延板は1100℃×1minの固溶化熱処理を施し、強制空冷にて冷却した。さらに、この冷延焼鈍板に1050℃×60min保持の時効熱処理を施し、EBSDによるシグマ相面積率の測定を行った。EBSDによるシグマ相面積率の測定は前述の方法で行った。
実験結果を図2のシグマ相析出に及ぼす成分の影響を示すグラフに示す。(a)はNi量とMo量の関係、(b)はNi量とCr量の関係を示し、シグマ相が1.0%以下を〇、1.0%を越えるものを●としてプロットした。この図から、1050℃でのシグマ相析出を抑制するには、NiとMo、NiとCrの添加量を点線で示すような割合、つまり、次式を満たすように添加する必要があることが判った。
7.3×Mo-Ni≦21.0
1.3×Cr-Ni≦5.7
<実験2>
シグマ相析出をできるだけ遅延させ耐食性劣化を抑制するため、Si、 Mn、 Alに注目し実験を行った。Cr、Mo、 Ni、 Nのシグマ相析出への影響が大きいことは知られているが、耐食性確保を前提とするとこれら元素での制御には限界がある。そこで、それ以外の元素として前記三つの元素に注目した。実験は、高周波誘導炉を用い、Fe-23.5%Cr-25.5%Ni-6.0%Mo-0.22%N-0.2%Cuを基本成分とし、Si、MnおよびAlの含有量をそれぞれ、~0.50%、~0.60%、~0.20%の範囲で変化させた合金を20kg溶解した。その後の試料調整方法は実験1と同じで、2mmtの冷延焼鈍板に950℃×30min保持の時効熱処理を施し、EBSDによるシグマ相面積率の測定と耐食性の評価を行った。EBSDの測定方法は前述の通りであり、耐食性は、ASTM G48 Method Dに規定される塩化第二鉄と塩酸の水溶液浸漬試験を実施し、臨界すきま腐食発生温度CCT(Critical Crevice corrosion Temperature)を測定し評価した。試験片は、時効熱処理を施した冷延板から25mm×50mmの試験片を切り出し、全面をSiC 120番手の研磨紙で湿式研磨し、アセトンで脱脂後、試験に供した。試験溶液は、1試料当たり600mlとし、深さが25μm以上となるすきま腐食の発生有無で評価した。保持時間は、より小さいシグマ相の影響も評価するために規定よりも長い100hrとした。すきまの形成は、テフロン(登録商標)製マルチクレビス、Ti製のボルト、ナットを用い、締め付けトルク0.28N・mとして行った。すきま腐食試験を選択した理由は、シーズヒーターにおいて、母材とNiロウの境界部に水垢が付着し、この部分ですきま腐食が生じた例があったためである。
実験結果を図3のシグマ相析出面積率、耐食性に及ぼすSi、Mn、Al量の影響を示すグラフに示す。横軸はシグマ相面積率とSi、Mn、 Al量と関係を回帰分析により求めたものである。これら元素の含有量を制御することでシグマ相の生成を抑制できることが判る。このときの耐食性は、シグマ相が少ない場合は劣化しないが、ある量を越えると顕著に低下し初期の特性を示さなくなることが判った。そのシグマ相面積率はおおよそ1.0%である。シグマ相を1.0%以下とするには、Si、Mn、Alの関係式を0.95以下とすることが良いことが判る。また、シグマ相の平均粒径は2.3μmであり、面積率が大きくなると個数とともに粒径も大きくなることを確認した。
また、Si、Mn、Alは容易に酸化する元素であり、ロウ付け雰囲気中に含まれる極微量の酸化を生じさせるガス、O、HO、COなどで酸化され、これがロウの濡れ性に影響する可能性がある。そこで、上記合金に対し、ロウの濡れ性と化学成分の影響を調査した。試験片は、固溶化熱処理を施した前述の2mmtの板であり、これを(1)10mmw×100mml、(2)20mmw×100mmlとなるように切断、全面をSiC 120番手の研磨紙で湿式研磨し、アセトンで脱脂を行った。図4に示すように、これをスポット溶接により、(2)の幅中央に(1)を垂直に立てて固定したT型試験片とし、用いた。試験片を形成する際に、接合する面は仕上げ記号で▽▽▽となるようにし密着の程度が一定となる様に調整した。この試験片の一端に1g程度のロウを置き、水素雰囲気中1020℃でロウ付けを行い、ロウが流れ広がった「濡れ長さ」で評価した。ロウを置いた逆側まで広がった場合100mmとなる。ロウは、ニッケルロウBNi-7(14Cr-10P-Ni)を用いた。ロウ付け処理は、全量12mのブリッジ方式のロウ付け炉で、ライン速度は1m/minである。
評価結果を図5のNiロウの濡れ性に及ぼすSi、Mn、Al量の影響を示すグラフに示す。これら元素の含有量が増えるにしたがって濡れ長さが短くなり、濡れ性が阻害されていることが判る。これよりできる限り濡れを長くすることが望ましく、半分を越えて60mmまで濡れ広がった含有量を閾値とすると、Si、Mn、Alの上限は、それぞれ0.30%、0.40%、0.10%程度となった。また、評価の過程で微量のBを含有する合金(Mn=0.24%、B=0.025%)を試験したところ、濡れ性が改善する効果があることが明らかとなった。ロウ付けの不活性ガス雰囲気中で加熱される過程で合金中からBが昇華し一時的に酸化雰囲気を抑制したためと推定している。より安定した濡れ性を確保したい場合に有効であることを見出した。
次に、本発明における各元素の成分組成と、関係式などの限定理由を説明する。以下、%はmass%を示す。本発明においては、請求項1に示す通り、Ni:22.0%以上、Cr:22.0%以上、Mo:5.0%以上、N:0.180%以上、Si、Al、Mnを含有し、残部はFeおよび不可避的な不純物からなり、式(1)~(3)を満たすことを必須の構成とするが、以下の説明では、請求項2以下に示す好ましい範囲についても併せて説明している。
C:0.001~0.030%
CはF.C.C相(面心立方構造)を安定化させるために有効な元素であり、シグマ相の析出を抑制させる。さらに強度を確保するために重要な元素である。このため、少なくとも0.001%の添加は必要である。しかしながら、過度に含むとCr炭化物の析出が容易となり耐食性を劣化させる。そのため上限を0.030%とする。含有量の好ましい下限は0.002%で、より好ましい下限は0.005%、好ましい上限は0.025%で、より好ましい上限は0.020%である。
Si:0.02~0.30%
Siは、脱酸作用を有する重要な元素である。このため、少なくとも0.02%の添加は必要である。しかしながら、Siを過剰に含有すると、シグマ相の析出が促進され、さらに酸化スケールを形成し易くなりロウの濡れ性を悪化させる。そのため上限を0.30%とする。含有量の好ましい下限は0.07%で、より好ましい下限は0.09%、好ましい上限は0.25%で、より好ましい上限は0.23%である。
Mn:0.02~0.40%
Mnは脱酸作用を有する重要な元素であり、F.C.C.相を安定にし、Nの溶解度を高める作用があるため、炭窒化物、窒化物の析出を抑制する上で必須な元素である。このため、少なくとも0.02%の添加は必要である。しかしながら、過度な添加はシグマ相の析出を促進し耐食性を低下させる。MnSを形成し、孔食の起点となり耐食性を劣化させる。さらに酸化スケールを形成し易くなりロウの濡れ性を悪化させる。そのため上限を0.40%とする。含有量の好ましい下限は0.06%で、より好ましい下限は0.07%、好ましい上限は0.35%で、より好ましい上限は0.30%である。
P:0.005~0.050%
Pは不純物として合金中に不可避的に混入する元素であるが、本発明においては、結晶粒界に存在しシグマ相の析出を遅延させる元素である。その効果を得るためには少なくとも0.005%を超えて添加する必要がある。しかしながら、0.050%以上に含む場合、耐食性及び熱間加工性を著しく悪化させる。従って、Pの含有量は0.005~0.050%とする。含有量の好ましい下限は0.010%で、より好ましい下限は0.012%、好ましい上限は0.040%で、より好ましい上限は0.035%である。
S:0.0001~0.0030%
Sは合金中に不可避的に混入する不純物元素であり、熱間加工性を低下させ、硫化物を形成して孔食の起点となるため耐食性に有害に作用する。そのためS含有量は極力少ない方が良い。このため、上限を0.0030%とする。ただし、Sは溶融時の湯の流動性を高めることから溶接性を良好にする元素である。良好な溶接性を得る点から0.0001%以上含有することが必要である。含有量の好ましい下限は0.0002%で、より好ましい下限は0.0003%、好ましい上限は0.0020%で、より好ましい上限は0.0015%である。
Ni:22.0~38.0%
NiはF.C.C.相を安定化する元素であり、シグマ相などの金属間化合物の析出を抑制し、耐孔食性および耐全面腐食性を向上させる重要な元素である。このため、少なくとも22.0%の添加は必要である。しかしながらNiの含有量が38.0%を越えると熱間変形抵抗の増大、コスト増を招く。また、シグマ相の析出を促進するCr、Moの添加量に対し最適量がある。よってNiの含有量は22.0~38.0%とした。含有量の好ましい下限は23.0%で、より好ましい下限は24.0%、好ましい上限は37.7%で、より好ましい上限は37.5%である。
Cr:22.0~28.0%
Crは耐孔食性をはじめ、耐すきま腐食性や耐粒界腐食性を向上させるために不可欠な元素である。窒素の溶解度を高め窒化物の生成を抑制する効果も有する。しかし過度なCrの含有はシグマ相の析出を促進し、かえって耐食性を劣化させる。このためCrの含有量は22.0~28.0%とした。含有量の好ましい下限は22.5%で、より好ましい下限は23.0%、好ましい上限は27.5%で、より好ましい上限は27.0%である。
Mo:5.0~8.0%
Moは、Cr、N等と同様に耐孔食性、耐すきま腐食性を向上させる元素である。但しMoを過度に含有する場合シグマ相の析出を大きく促進させ、耐食性を劣化させる。このためMoの含有量は5.0~8.0%の範囲とする。含有量の好ましい下限は5.1%で、より好ましい下限は5.2%、好ましい上限は7.9%で、より好ましい上限は7.8%である。
Cu:0.02~0.50%
CuはF.C.C.相を安定化させ、耐酸性の向上に寄与する元素である。その効果を得るためには0.02%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰の添加はコスト増と熱間加工性を劣化させるため上限は0.50%以下とする。よって、その含有量を0.02~0.50%とした。含有量の好ましい下限は0.04%で、より好ましい下限は0.05%、好ましい上限は0.45%で、より好ましい上限は0.40%である。
N:0.180~0.250%
NはF.C.C.相を安定化する元素であり、シグマ相の析出を抑制させるのに有効な元素である。またCr、Moと同様に耐孔食性および耐すきま腐食性を大きく向上させ、さらにCと同様に、強度を確保するために重要な元素である。このため、少なくとも0.18%の添加は必要である。しかしながら、過剰な添加は炭窒化物、窒化物の析出を促進し、耐食性の低下を招くことになる。従って0.250%を越えてはならない。含有量の好ましい下限は0.185%で、より好ましい下限は0.190%、好ましい上限は0.235%で、より好ましい上限は0.230%である。
Al:0.005~0.100%
Alは脱酸作用を有する重要な元素である。またCaO-SiO-Al-MgO系スラグの共存下で、脱酸により脱硫を促し、精錬におけるBの歩留を安定化させるために重要な元素である。しかし過剰に含有する場合、シグマ相の析出を促進し、酸化スケールを形成し易くなり、ロウの濡れ性を悪化させる。従ってAlの含有量は、0.005~0.100%とした。含有量の好ましい下限は0.015%で、より好ましい下限は0.025%、好ましい上限は0.095%で、より好ましい上限は0.090%である。
Cr+3.3×Mo+16×N≧43.0 …(1)
塩化物を含む環境で耐食性を確保するためには、Cr、Mo、Nを一定量以上添加する必要がある。Crの効果を基準として、Mo、Nの効果を比較し、Crの効果に対する係数を決めたものである。厳しい環境で使用するには、少なくとも43.0以上は必要である。好ましくは、44.0以上、より好ましくは50.0以上である。
7.3×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)
1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)
ロウ付けを1050℃程度で行う場合、この温度域でシグマ相が析出しないこと、つまりF.C.C.相の安定度が高いことが重要である。1050℃での金属組織は主要成分でありNi、Cr、Moのバランスで決まる。この中でNiはF.C.C.相を安定にする元素で、それ以外の2つはフェライト相、シグマ相の生成を促進する元素である。シグマ相を抑制する場合、バランスを確保し最適量とする必要がある。前者はMoとNiの関係、CrとNiの関係を示すものである。効果的にシグマ相を抑制するには、前者は、21.0以下とする必要があり、好ましくは、20.0以下、より好ましくは19.5以下である。同じく後者は、5.7以下とする必要があり、好ましくは5.6以下、より好ましくは5.5以下である。
0.20≦1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(3)
シグマ相析出速度を制御するために重要な関係式である。Si、Mn、Alいずれの元素も低減することで析出が抑制される。Mnの効果を基準として、Si、Alの効果を比較し、Mnの効果に対する係数を決めたものである。1050℃でのロウ付けを行い、シグマ相の析出を抑制するには、少なくとも0.95以下とする必要がある。好ましくは、0.93以下、より好ましくは0.90以下である。
また、Si、Mn、Alは脱酸作用を有する元素であり、これら元素の含有を少なくなると脱酸不良になり、介在物量が多くなり、結果として耐食性を低下させる。また、熱間加工性も劣化させる。このため、これら関係式が0.20以上となる様な添加量を確保することが適当である。関係式の好ましい下限は、0.30以上、より好ましくは0.35以上である。
シグマ相面積率:1.0%以下
ロウ付け、PWHTなどの熱処理でシグマ相は析出し耐食性を劣化させるが、極少量、極小サイズであれば耐食性の劣化が限定的となるとことがEBSDによるシグマ相面積率の精密定量とこれの腐食試験により明らかとなった。耐食性の低下が許容できるレベルであるためには、シグマ相面積率が1.0%を越えてはならない。好ましくは0.8%であり、より好ましくは0.7%以下とする必要がある。また、シグマ相が大きく成長しているということは、近傍に形成されるCr、Moの欠乏層の程度がより悪いことを示してる。よって、耐食性確保のためにはシグマ相が小さいことが好ましい。本発明においてその大きさは、平均値で2.5μm以下である。好ましくは2μm、より好ましくは1.5μmである。
B:0.0005~0.0050%
Bは、本発明を構成する重要な元素の一つであり粒界に存在していると考えている。シグマ相の析出を遅延させ、ロウ付け工程でロウの溶融に先立ち揮発し合金表面の酸化を抑制する効果を有する。熱間加工性も向上させ、歩留まりの向上に寄与する。このため、少なくとも0.0005%以上の添加が必要である。しかしながら、Bを過剰に含有すると熱間加工性の劣化、溶接時の割れ発生などを招くため過剰な添加は避ける必要がある。従って上限は0.0050%とする。含有量の好ましい下限は0.0007%で、より好ましい下限は0.0008%、好ましい上限は0.0035%で、より好ましい上限は0.0032%である。
O:≦35ppm
Oは、溶解時に合金中に不可避的に混入する不純物元素であり、熱間加工性を悪化させる元素である。このため、Si、Mn、Alなどの元素を溶湯中に添加、脱酸し、低減すべき元素である。本発明においては、シグマ相析出を抑制するため、これら元素の添加量を制限している。このため、本発明で許容している元素とその添加量を守り、組み合わせて酸素量を十分低減する必要がある。これにより、上限を35ppmとすべきである。含有量の好ましい上限は33ppmで、より好ましい上限は30ppmである。
本発明の高耐食Ni-Cr-Mo-N合金は、上記成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物からなる。ここで、上記不可避的不純物とは、ステンレス鋼を工業的に製造する際、種々の要因によって不可避的に混入してくる成分であり、かつ、本発明の作用効果に悪影響を及ぼさない範囲で含有を許容されるものを意味する。
次に、本発明に係る高耐食Ni-Cr-Mo-N合金の製造方法について説明する。
本発明の合金の製造方法は、特に限定されるものではないが、以下の方法で製造するのが好ましい。まず、Ni合金屑、鉄屑やステンレス屑、フェロクロム、フェロニッケル、純ニッケル、メタリッククロムなどの原料を電気炉で溶解する。その後、AOD炉あるいはVOD炉において、酸素ガスおよびアルゴンガスを吹精して脱炭精錬すると共に、生石灰、蛍石、Al、Si等を投入して脱硫、脱酸処理する。この処理におけるスラグ組成は、CaO-Al-SiO-MgO-F 系に調整するのが好ましい。また、同時に脱硫を効率的よく進行させるために、該スラグはCaO/Al≧2、CaO/SiO≧3を満たすものとするのが好ましい。また、AOD炉やVOD炉の耐火物は、マグクロやドロマイトとするのが望ましい。上記AOD炉等による精錬後、LF工程で成分調整、温度調整を行った後、連続鋳造してスラブを製造し、その後、熱間圧延し、必要に応じて冷間圧延し、厚板や熱延合金板、冷延合金板等の薄板とする。
以下、実施例によってさらに本発明を詳細に説明する。但し本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
まず、純鉄、純Ni、純Cr、純Moを用い、500kg真空溶解炉で溶解、そのまま真空中で鋳型に鋳造し合金塊を製造した(試料1~4)。これを熱間鍛造することで板厚8mmの合金板を得た。これ以外は、鉄屑、ステンレス屑、フェロクロムなどの原料を、60トンの電気炉で溶解した(試料5~28)。その後、AOD工程において、酸素およびアルゴンを吹精し、脱炭精錬した。その後、生石灰、蛍石、Al、Siを投入して脱硫、脱酸を行った。その後に連続鋳造機にて造塊しスラブを得た。化学組成は表1に示す通りであった。なお、これらにおいてC、S、N以外の化学成分は、蛍光X線分析により分析を行った。またNは不活性ガス-インパルス加熱溶融法、C、Sは酸素気流中燃焼-赤外線吸収法により分析した。なお、表中の---は意図的な添加を行っていないことを示すものである。B、Oは意図して添加はしていないが分析は実施した。表中の数値はその結果であり、分析値が0.0000と記載しているのは分析限界以下であったことを示している。
その後、上記スラブを、常法に従って熱間圧延し、板厚8.0mmの熱延合金板を得た。続いて、この熱延合金板を固溶化熱処理の後、冷間圧延を施し、最終焼鈍、酸洗工程を経て、板厚が2.0mmの冷帯を得た。固溶化熱処理は1150℃で1minの保持の後、水冷を施す条件で行った。さらに上記冷帯に、950℃で保持時間を30minとする時効熱処理を施した。この時効熱処理材について、下記に説明する方法で、シグマ相の定量評価を行った。
<シグマ相面積率の測定>
上記の熱処理を施した板に対して、シグマ相面積率の測定を行った。詳細は下記の通りで<実験1>と同じである。
・試験片採取方向:圧延方向に直角方向から採取、
・電解研磨装置:Struers(株)製、「テヌポール-5」
・EBSD測定:電解放出型走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、「JSM-7001F」)に付帯した、後方散乱電子回折装置(TSLソリューションズ(株)製、「EBSD解析ソフトOIM Analysis 7.3」)
・測定領域:80μm×240μm
・ステップサイズ:0.2μm
<シグマ相の粒径>
シグマ相の粒径は<実験1>と同じもので、走査電子顕微鏡の5000倍の組成像から寸法を求めた。
<耐食性評価試験>
固溶化熱処理ままとこれに時効熱処理を施した板に対して、ASTM G48(Method D)に規定された塩化第二鉄溶液浸漬試験を下記の条件で実施し、それぞれ臨界すきま腐食発生温度(CCT)を測定、両者の差をもって耐食性の低下程度を比較した。評価は、時効熱処理材が固溶化熱処理ままと同じCCTとなったものを◎、低下が5℃であったものを〇、10℃であったものを△、15℃以上であったものを×とした。また、試験において固溶化熱処理材のCCTが35℃以下であったものは、耐食性が低いことから時効熱処理材の試験結果に関わらず××とした。
・試験片:幅25mm×長さ50mm×厚さ2mm
・試験溶液:6mass%FeCl+1mass%HCl水溶液
・試験液量:1試験片あたり600ml
・表面研磨:♯120のSiC研磨紙で全面湿式研磨
・試験時間:100時間
・すきま形成ジグ:テフロン(登録商標)製マルチクレビス、締め付けトルク0.28N・m
<ロウの濡れ性評価>
固溶化熱処理に研磨を施したものを溶接により組み立てT字試験片を作製、ロウ付け処理した後の、ロウの広がり「濡れ長さ」により評価した。詳細は以下に示す通りである。ロウ付け処理は、全量12mのブリッジ方式のロウ付け炉で、水素100%からなる雰囲気中で炉均熱帯の温度を1020℃として行った。ライン速度は1m/minである。広がりが80mmを越える場合は◎、70mmを越えて80mm未満の場合は〇、60mmを越えて70mm未満の場合は△とした。60mm未満のものは×である。
・試験片:(1)幅10mm×長さ100mm×厚さ2mm、(2)幅20mm×長さ100mm×厚さ2mm
・表面研磨:♯120のSiC研磨紙で全面湿式研磨
・組み立て:スポット溶接により、(2)の幅中央に(1)を垂直に立てて固定
・ロウ:ニッケルロウ BNi-7(14Cr-10P-Ni)
・ロウ塗布量:一端に0.5g、粒状で(1)板のコーナーに塗布
<非金属介在物評価>
固溶化熱処理を施した2mmtの冷延板より試験片を切出し、JIS G0555(2003)に準じて清浄度を測定した。それぞれAl、MnO・SiOCを代表とするB系、C系介在物の「清浄度の合計」により評価した。清浄度が0.05%未満の場合は◎、0.05%を超えて0.20%未満の場合は〇、0.20%を超えて0.40%未満の場合は△とした。清浄度が0.40%を超える場合は×とした。
・試験片:板厚2mm、進展方向に平行な断面を切出し。合計観察面積300mm
・評価時の仕上げ:1μm粒径のダイヤモンドペーストおよびバフによる鏡面研磨。
・縦横16本の格子線を持つ光学顕微鏡観察による点算法。観察倍率400倍。
<総合評価>
上記の耐食性、濡れ性、非金属介在物の3種の評価について、総合評価を行った。総合評価としては、◎:3点、〇:2点、△:1点、×:0点とし、点数の合計で行った。本発明合金は、耐食性に優れることが最も重要であるため、ここに×評価があるものは他の評価結果に関わらず不可とした。また、他の項目よりも重きをおいて評価すべきであるため、耐食性の評点を2倍として総合評価を行った。耐食性評価に×が無く、3点を越えて4点以下のものを可、4点を越えて7点以下のものを良、7点を越えて9点以下のものを秀、9点を越えるものを優とした。
Figure 2022026809000002
発明例1~7は、本発明の請求項1に規定する成分範囲と式(1)~(3)とシグマ相面積率を満たすため、総合評価が可~優となった。発明例8~18は、さらに請求項2に規定する合金成分を満たすため、良~優の範囲に収まっている。発明例19~24は、さらにBとOの成分範囲と式(4)を満たすため、総合評価は秀~優であった。発明例19が耐食性にやや劣るのは、Oが範囲内ではあるものの多めの31ppmであることが原因と考えられる。
一方、比較例25は式(1)、比較例26は式(3)、比較例27は式(2-1)、比較例28は式(2-2)をそれぞれ満たさないため、いずれも耐食性に劣るものであった。
比較例29は、Crが範囲外で、Mnも少ないため式(1)、式(2-1)、式(2-2)、式(3)は満足するもの、Cr窒化物が析出し結果として耐食性に劣るものであった。また、濡れ性についても析出した窒化物に阻害されたためか、良好ではなかった。
すなわち、本発明の相安定性に優れた高耐食Ni-Cr-Mo-N合金は、以下mass%にて、C:0.001~0.030%、Si:0.02~0.30%、Mn:0.02~0.40%、P:0.005~0.050%、S:0.0001~0.0030%、Ni:22.0~38.0%、Cr:22.0~28.0%、Mo:5.0~8.0%、Cu:0.02~0.50%、N:0.180~0.250%、Al:0.005~0.100%を含有し、残部はFeおよび不可避的な不純物からなる合金であって、下記式(1)~(3)を満たし、950℃×30min保持した後の断面組織において、EBSDにて測定したシグマ相の面積率が1.0%以下であることを特徴とする。
Cr+3.3×Mo+16×N≧43.0 …(1)
7.2×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)
1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)
1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(3)
実験結果を図2のシグマ相析出に及ぼす成分の影響を示すグラフに示す。(a)はNi量とMo量の関係、(b)はNi量とCr量の関係を示し、シグマ相が1.0%以下を〇、1.0%を越えるものを●としてプロットした。この図から、1050℃でのシグマ相析出を抑制するには、NiとMo、NiとCrの添加量を点線で示すような割合、つまり、次式を満たすように添加する必要があることが判った。
7.2×Mo-Ni≦21.0
1.3×Cr-Ni≦5.7
7.2×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)
1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)
ロウ付けを1050℃程度で行う場合、この温度域でシグマ相が析出しないこと、つまりF.C.C.相の安定度が高いことが重要である。1050℃での金属組織は主要成分でありNi、Cr、Moのバランスで決まる。この中でNiはF.C.C.相を安定にする元素で、それ以外の2つはフェライト相、シグマ相の生成を促進する元素である。シグマ相を抑制する場合、バランスを確保し最適量とする必要がある。前者はMoとNiの関係、CrとNiの関係を示すものである。効果的にシグマ相を抑制するには、前者は、21.0以下とする必要があり、好ましくは、20.0以下、より好ましくは19.5以下である。同じく後者は、5.7以下とする必要があり、好ましくは5.6以下、より好ましくは5.5以下である。

Claims (5)

  1. 以下mass%にて、Ni:22.0%以上、Cr:22.0%以上、Mo:5.0%以上、N:0.180%以上、Si、Al、Mnを含有し、残部はFeおよび不可避的な不純物からなる合金であって、
    下記式(1)~(3)を満たし、950℃×30min保持した後の断面組織において、EBSDにて測定したシグマ相の面積率が1.0%以下であることを特徴とする、Ni-Cr-Mo-N合金。
    Cr+3.3×Mo+16×N≧43.0 …(1)
    7.3×Mo-Ni≦21.0 …(2-1)
    1.3×Cr-Ni≦5.7 …(2-2)
    1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(3)
  2. C:0.001~0.030%、Si:0.02~0.30%、Mn:0.02~0.40%、P:0.005~0.050%、S:0.0001~0.0030%、Ni:22.0~38.0%、Cr:22.0~28.0%、Mo:5.0~8.0%、Cu:0.02~0.50%、N:0.180~0.250%、Al:0.005~0.100%であることを特徴とする請求項1に記載のNi-Cr-Mo-N合金。
  3. 下記式(4)を満たし、かつB:0.0005~0.0050%、O:≦35ppmとしたことを特徴とする請求項1または2に記載のNi-Cr-Mo-N合金。
    0.20≦1.6×Si+0.99×Mn+2.2×Al≦0.95 …(4)
  4. 不活性ガス雰囲気中で1000℃以上の温度でNiロウを使用し請求項1~3のいずれかに記載の合金をロウ付けすることを特徴とする高耐食部材。
  5. 請求項1~3のいずれかに記載の合金からなる被覆管を有し、Niロウによる接合部を有することを特徴とするシーズヒーター。

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