JP5884183B2 - 構造用ステンレス鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、例えば石炭や油類などを運ぶ貨車のボディ用途材料として好適な溶接部耐食性に優れた構造用ステンレス鋼板およびその製造方法に関する。
石炭や油類(植物油、鉱物油)等を運ぶ貨車のボディ用途材料には、ステンレス鋼が多用されている。石炭は硫黄分を多く含んでいるため、石炭用貨車のボディ用途材料には、すぐれた耐食性が要求される。油脂にも硫黄分を多く含むものがあり、それを運搬する貨車のボディ用途材料にも、すぐれた耐食性が要求される。硫黄分を多く含んだ油類等や石炭から染み出た雨水が溶接すき間部に浸入した場合には、すき間内部でpHが低下することに加え、内部と外部でマクロセルを形成するため厳しい腐食環境となる。
耐食性と溶接性とを兼備したステンレス鋼として、例えば特許文献1には、溶接部の靭性に優れたTi含有フェライト系ステンレス鋼が開示されている。しかし、特許文献1の技術では、溶接部の組織がフェライト相になるように成分設計しているため、溶接部の靭性や耐食性が十分ではないという問題がある。
特許文献2には、溶接熱影響部にマルテンサイト相を形成して溶接部の耐食性を向上させ、さらに、FFV値を規定して表面欠陥の発生を抑制したステンレス鋼が開示されている。しかし、特許文献2の技術でも、溶接すき間部に液体が浸入しマクロセルを形成し厳しい腐食環境となった場合の耐食性は不十分である場合があった。
特開平3−249150号公報 特開2012−12702号公報
しかしながら、上記した特許文献に開示された技術では、油類等の液体や石炭を運ぶ際に、貨車のボディ部の溶接部に形成されるすき間部の耐食性が不足する場合があった。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、溶接すき間部の耐食性に優れた構造用ステンレス鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために耐食性におよぼす溶接部の組織や成分などの影響について鋭意研究を行った。
その結果、以下の知見を得た。
(1)F値を適正範囲に調整することで、溶接熱影響部にマルテンサイトを主体とした組織を形成し、粒界近傍のCr欠乏による耐食性の低下を抑制できること。
(2)FFV値を適正な範囲とすること、およびOを0.0045%以下とすることにより、スラブ割れや介在物起因の表面欠陥を著しく減らすことができること。その結果、平滑な表面となることで腐食の発生起点を減少できること。
(3)Niの添加量を調整することで、溶接すき間部の腐食の進行が抑制されること。
本発明は上記知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.01〜0.03%、N:0.01〜0.03%、Si:0.01〜1.00%、Mn:1.0〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.03〜0.15%、Cr:10.0〜13.0%、Ni:1.0超〜5.0%、Ti:4×(C+N)(ただし、C、Nは各元素の含有量(質量%)を表す)以上、0.4%以下を含有し、V:0.05%以下、O:0.0045%以下に規制し、さらに、以下の式で表されるF値およびFFV値が、F値≦11、FFV値≦9.0を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする構造用ステンレス鋼板。
F値=Cr+2×Si+4×Ti−2×Ni−Mn−30×(C+N)
FFV値=Cr+3×Si+16×Ti+Mo+2×Al−2×Mn−4×(Ni+Cu)−40×(C+N)+20×V
なお、式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表す。
[2]さらに、質量%で、Cu:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%の1種または2種を含有することを特徴とする前記[1]に記載の構造用ステンレス鋼板。
[3]前記[1]または[2]に記載の成分組成を有する鋼素材を1100〜1300℃の温度に加熱後、1000℃超の温度域で、圧下率30%以上である圧延を少なくとも1パス以上行う熱間粗圧延を含む熱間圧延を行った後、600〜1000℃の温度で焼鈍することを特徴とする構造用ステンレス鋼板の製造方法。
本発明によれば、安価かつ高効率に生産することができ、例えば石炭や油類などを運ぶ貨車のボディ用途材料として好適な溶接すき間部の耐食性に優れた構造用ステンレス鋼板およびその製造方法が得られる。
溶接すきま部を説明する、すみ肉溶接試験片の模式図である。
以下に本発明の各構成の限定理由について説明する。
1.成分組成について
本発明の構造用ステンレス鋼の各構成要件の限定理由について説明する。なお、各元素の含有量を示す%は特に記載しない限り質量%を意味する。
C:0.01〜0.03%
N:0.01〜0.03%
CおよびNは、構造用ステンレス鋼板として必要な強度を得るためには、いずれも0.01%以上含有させることが必要である。一方、C、Nの含有量が0.03%を超えると、Cr炭化物あるいはCr炭窒化物が析出しやすくなり、耐食性、特に溶接熱影響部の耐食性が低下する。また、溶接熱影響部が硬化し、靭性も低下する。このため、CおよびNの含有量は、いずれも0.01〜0.03%の範囲とする。より好ましくは、Cは0.015〜0.025%、Nは0.012〜0.02%の範囲である。
Si:0.01〜1.00%
Siは、脱酸剤として用いられる元素であり、その効果を得るには0.01%以上含有することが必要である。一方、その含有量が1.00%を超えると鋼板の靭性を低下させる。このため、Si含有量は0.01〜1.00%の範囲とする。好ましくは0.05〜0.60%の範囲である。さらに好ましくは0.10〜0.40%の範囲である。
Mn:1.0〜2.5%
Mnは、脱酸剤として、また構造用ステンレス鋼板としての必要な強度を確保するための強化元素として有用な元素であり、さらに高温におけるオーステナイト安定化元素でもある。また、本発明においては、溶接熱影響部のミクロ組織を所望の体積率を有するマルテンサイト組織に制御するうえでNiと同様に重要な元素である。このような作用を発揮させるためには、その含有量は1.0%以上必要である。
一方、2.5%を超えて含有させても、その効果が飽和するばかりか、含有量が過剰となって靭性を低下させ、また製造工程での脱スケール性を低下させて表面性状に悪影響を及ぼし、加えて合金コストも増大してしまう。さらに、多量の含有は溶接熱影響部のテンパカラーと呼ばれる酸化皮膜に濃縮したMnが酸化皮膜の保護性を低下させ、溶接すき間部の耐食性に悪影響を及ぼす。したがって、Mnの含有量は少ないほうが好ましい。
本発明では、Niの含有量を調整することでF値やFFV値を所定の範囲に調整して溶接熱影響部のマルテンサイト量制御と表面欠陥抑制を行っており、Mnの含有量を少なく抑えることができる。このため、Mnの含有量は1.0〜2.5%の範囲とする。より好ましくは、1.1〜2.0%の範囲である。さらに好ましくは、1.3〜1.8%の範囲である。
P:0.04%以下
Pは、熱間加工性の点から少ない方が好ましく、その含有量の許容される上限値を0.04%とする。より好ましくは、0.035%以下である。
S:0.02%以下
Sは、熱間加工性および耐食性の点から少ない方が好ましく、その含有量の許容される上限値を0.02%とする。好ましくは0.005%以下である。さらに好ましくは0.003%以下である。
Al:0.03〜0.15%
Alは、一般的には脱酸のために含有させるが、本発明では、スラブ段階での割れの発生を抑制するのに有効に働くことを見出し、このような機能を発揮させるために適量含有させる。スラブ割れの発生を抑制するためには、Al含有に加え、後述するようにV、Oの低減、さらにFFV値の最適化が必要である。
Al含有によりスラブ割れが改善される機構については、必ずしも明確になっているわけではないが、相分率の適正化と介在物形態の制御の効果によるものと推定している。このような効果を得るためには、Alを0.03%以上含有させることが必要である。一方、その含有量が0.15%を超えると、大型のAl系介在物が生成して表面欠陥の原因となる。このため、Alの含有量を0.03〜0.15%の範囲とする。より好ましくは、0.05〜0.15%の範囲である。さらに好ましくは、0.06〜0.12%の範囲である。
Cr:10.0〜13.0%
Crは、不動態皮膜を形成し、耐食性、特に溶接熱影響部の耐食性を確保するうえで必須の元素であり、その効果を得るためには10.0%以上含有させることが必要である。一方、Crを13.0%を超えて含有させると、コストを上昇させるばかりでなく、溶接部において、高温で十分なオーステナイト相を確保することが困難となり、溶接後の溶接熱影響部に必要な分率のマルテンサイト組織を得ることが困難となる。その結果、溶接熱影響部での耐粒界腐食性の低下を招く。したがって、Cr含有量は、10.0〜13.0%の範囲とする。好ましくは、11.0〜13.0%の範囲である。さらに好ましくは11.5〜12.5%の範囲である。
Ni:1.0%超5.0%以下
Niは、溶接すき間部の耐食性を向上させる元素である。その効果は含有量が1.0%超で得られる。しかし、Niの含有量が5.0%を超えると、溶接熱影響部の適正な組織制御が困難となる。よって、Niの含有量は1.0%超5.0%以下の範囲とする。より好ましくは、1.1〜2.0%の範囲である。さらに好ましくは、1.2〜1.5%の範囲である。
Ti:4×(C+N)(ただし、C、Nは各元素の含有量(質量%)を表す)以上、0.4%以下
Tiは、本発明において優れた溶接部耐食性を得るために重要な元素であり、特に溶接熱影響部の耐粒界腐食性を向上させるために必須の元素である。Tiは鋼中のC、NをTiの炭化物、窒化物あるいは炭窒化物(以後、炭化物、窒化物、炭窒化物の3種を総称して、炭窒化物等と記す)として析出固定し、Crの炭窒化物等の生成を抑制する効果を有する。
本発明において、鋼板の溶接熱影響部では、フェライトとマルテンサイトからなる組織を有するが、耐食性という点では、冷却中に炭窒化物等の析出をともなうフェライト相部分での耐食性の低下が問題である。本発明に係る鋼板では、溶接時の溶接熱影響部にCrの炭窒化物等が析出することによって粒界近傍にCr欠乏が生成し、特にフェライト相の部分での耐粒界腐食性が低下する問題を、Tiを含有させることにより解決している。
このような効果を発揮させるためには、Tiの含有量を4×(C+N)以上(ただし、C、Nは各元素の含有量(質量%)を表す)とする必要がある。一方、0.4%を超えて多量に含有させても、その効果は飽和するばかりか、鋼中に多量のTiの炭窒化物等が析出し、靭性の劣化を招く。このため、Tiの含有量は、4×(C+N)以上、0.4%以下とする。より好ましくは、0.18〜0.24%の範囲であり、Tiの含有量が同時に4×(C+N)以上を満たすよう、C、Nを低減することが有効である。
本発明では、生産性、特にスラブ段階での割れや介在物起因で発生する表面欠陥)発生を抑制するために、以下のようにV、Oを低減することが重要である。
V:0.05%以下
Vは、Cr原料などの不純物として含まれることが多く、意図せずに含有される場合があるが、特にスラブ段階での割れの発生を抑えるためには、その含有量を規制する必要がある。そのような観点からVの含有量を0.05%以下とする必要がある。好ましい範囲は0.03%以下、さらに好ましい範囲は0.03%未満である。含有量を0.01%以下とすることにより、より大きな割れ抑制効果が得られるが、原料の選別等が必要となり、経済的には不利となる。
O:0.0045%以下
Ni含有量が多い本発明鋼において、酸化物系介在物の生成を抑制し、良好な表面性状を確保するために、O含有量を低くする必要があり、その上限を0.0045%とする。好ましくは、0.0030%以下である。
さらに、本発明では、以下に示すF値、FFV値を適正な範囲とすることで、耐食性や生産性を大きく改善する。
F値≦11
F値は、Cr+2×Si+4×Ti−2×Ni−Mn−30×(C+N)(ただし、式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%を表す)で表され、溶接時の溶接熱影響部のミクロ組織を推定するパラメータであり、より詳しくはマルテンサイト組織の体積率(フェライト組織の残存率)を推定するパラメータである。
溶接熱影響部のように高温にさらされた部位では、その一部がオーステナイト(あるいはさらに一部がδフェライト)に変態し、この相が冷却過程でマルテンサイトに変態する。その割合は、フェライト安定化元素(フェライト生成元素)とオーステナイト安定化元素(オーステナイト生成元素)の量的バランスの影響を受ける。上記F値を示す式中の係数が正の元素(Cr、Si、Ti)はフェライト安定化元素であり、係数が負の元素(Ni、Mn、C、N)はオーステナイト安定化元素である。
すなわち、F値が大きいほどフェライト組織が残存しやすく(フェライト組織の体積率が大きい、すなわちマルテンサイト組織の体積率が小さい)、小さいほどフェライト組織が残存しにくい(フェライト組織の体積率が小さい、すなわち、マルテンサイト組織の体積率が大きい)こととなる。一定以上のマルテンサイト相分率とすることで結晶粒界近傍のCr欠乏による耐食性の低下を抑制できる。その結果、溶接熱影響部の耐食性が向上し、溶接すき間部の耐食性が改善する。
本発明では、溶接熱影響部の耐食性の向上を図るために、上記のF値を11以下(マルテンサイト体積率:40%以上)とする。好ましくは、F値:10.5以下(マルテンサイト体積率60%以上)であり、さらに好ましくは10以下である。なお、溶接部の靭性の観点からF値の下限は5.0以上とするのが好ましい。さらに好ましい範囲は6.0以上である。
FFV値≦9.0
FFV値は、Cr+3×Si+16×Ti+Mo+2×Al−2×Mn−4×(Ni+Cu)−40×(C+N)+20×V(ただし、式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表す)で表され、製造性を示す指標として導き出したものである。このFFV値は、熱延中の相バランスを考慮したもので、上記のような成分調整、特にAl含有や、V、Oの上限の規制を行った上で、この値を小さくすることにより、スラブ段階での割れや介在物を起因とした表面欠陥の発生を著しく少なくすることができる。
FFV値の最適化による表面欠陥抑制の機構は必ずしも明らかになっているわけではないが、FFV値を9.0以下とすることで表面欠陥の発生が著しく改善されることから、FFV値を9.0以下とする。好ましくは8.5以下である。
なお、上記FFV値の式にはMo、V、Cuが含まれているが、これらは鋼中に含有されない場合もあり、これらが含有されない場合には、これらのうち含有されない成分を0%としてFFV値を算出する。
本発明においては、上記成分の他に、必要に応じて以下の範囲でCu、Moを含有させることができる。
Cu:0.01〜1.0%
Cuは、耐食性を向上させる元素であり、特にすき間腐食を低減させる元素である。このため、高い耐食性が要求される場合に添加することができる。耐食性向上効果を十分に発揮させるためには0.01%以上の含有が好ましい。しかし、1.0%を超えて含有すると、熱間加工性が低下するうえ、高温での相バランスが崩れ、溶接熱影響部で所望の組織を得ることが困難となる。よって、Cuを含有する場合、その量は、0.01〜1.0%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.3〜0.5%の範囲である。
Mo:0.01〜1.0%
Moは、耐食性を向上させる元素であり、特に高い耐食性が要求される場合に添加することができる。耐食性を十分に発揮させるためには0.01%以上の含有が好ましい。しかし、1.0%を超えて含有すると、冷間での加工性が低下するうえ、熱間圧延での肌荒れが起こり、表面品質が極端に低下する。よって、Moを含有する場合は、その量は、0.01〜1.0%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは、0.1〜1.0%の範囲である。
本発明は、前記必須成分を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる。
本発明に係る鋼板は、母材部は体積率で50%以上がフェライト組織である。残部の組織は、特に熱延ままの状態では、マルテンサイト相や残留γ相が存在し、一部に炭窒化物などを含む組織である。特に後述するような適切な焼鈍条件で熱延板焼鈍を施した後の熱延焼鈍板の組織は、体積率で55%〜95%がフェライト相組織を有しており、加工性に非常に優れる。
2.製造方法について
次に、本発明に係るステンレス鋼板の製造方法について説明する。
本発明のステンレス鋼板の製造方法は、定法に従って行うものであればよく、特に限定されないが、高効率に製造することができる方法として、上記成分組成に溶製した鋼を連続鋳造等によりスラブとした後、熱延コイルとし、これを必要に応じて焼鈍した後、デスケーリング(ショットブラスト、酸洗等)を行って、本発明に係るステンレス鋼板とする方法が推奨される。
以下、詳細に説明する。
まず、本発明の成分組成に調整した溶鋼を、転炉または電気炉等の通常用いられる公知の溶製炉にて溶製した後、真空脱ガス(RH法)、VOD(Vacuum Oxygen Decarburization)法、AOD(Argon Oxygen Decarburization)法等の公知の精錬方法で精錬し、次いで、連続鋳造法あるいは造塊−分塊法で鋼スラブ(鋼素材)とする。鋳造法は、生産性および品質の観点から連続鋳造が好ましい。また、スラブ厚は、後述する熱間粗圧延での圧下率を確保するために、100mm以上とすることが好ましい。より好ましい範囲は200mm以上である。
次いで、鋼スラブを1100〜1300℃の温度に加熱した後、熱間圧延して熱延鋼板とする。スラブ加熱温度は、熱延板の肌荒れ防止のためには高いほうが望ましいが、1300℃を超えるとスラブ垂れが著しくなり、また結晶粒が粗大化して熱延板の靭性が低下する。一方、1100℃未満の加熱温度では、熱間圧延での負荷が高くなり、熱延での肌荒れが著しくなるうえ、熱延中の再結晶が不十分となり、やはり熱延板の靭性が低下する。
熱間粗圧延の工程は、1000℃超の温度域で、圧下率が30%以上である圧延を少なくとも1パス以上行う。この強圧下圧延により、鋼板の結晶組織が微細化され、靭性が向上する。熱間粗圧延の後、常法に従い、仕上圧延を行う。
熱間圧延により製造した板厚2.0〜8.0mm程度の熱延板に対し、600〜1000℃の温度で熱延板を焼鈍する。熱延板の焼鈍温度は、600℃未満では、熱延ままの状態で存在する可能性のあるマルテンサイト相や残留γ相が残存したままとなる場合があり、フェライト組織が体積率で50%未満となり、十分な加工性が得られない。一方、1000℃を超えると結晶粒の粗大化が著しくなり、靭性が低下する。熱延板の焼鈍は、いわゆる箱焼鈍により600〜1000℃の温度にて1時間以上保持するのが好ましい。また、焼鈍温度が高くなりすぎると、γ変態が生じる温度に入る場合があり好ましくない。このため、組成を適切な範囲に調整し、かつその組成に応じた適切な温度範囲を選択することが必要である。本発明鋼板の組成範囲では、主として600〜900℃の焼鈍温度にした場合には、体積率で、ほぼ100%がフェライト相となるためこの温度範囲が好ましい。
焼鈍後、ショットブラスト、酸洗や表面研磨等の方法で表面スケールを除去することが好ましい。
本発明に係るステンレス鋼板の溶接には、TIG、MIGをはじめとするアーク溶接、シーム溶接、スポット溶接等の抵抗溶接、レーザー溶接等、通常の溶接方法は全て適用可能である。
以下、実施例に基づいて本発明を説明する。
表1に示す成分組成を有するステンレス鋼を、転炉−VOD−連続鋳造法により、200mm厚のスラブとした。これらスラブを1180℃の温度に加熱した後、熱間圧延により板厚5.0mmのコイル状の熱延板とした。熱延終了温度は900℃、熱延後の巻取り温度は700℃とした。得られた熱延鋼板について、690℃で10時間の焼鈍を行った後、ショットブラストおよび酸洗を行ってスケールを除去した。
Figure 0005884183
これらスケール除去後の鋼板から70×30mmと70×50mmの平板サンプルを切り出し、図1のように重ね合わせて、すみ肉溶接(ガスメタルアーク溶接、シールドガス:98容量%Ar−2容量%O2、流量:20リットル/分)を行い、すみ肉溶接試験片を3個作製した。溶接棒には、株式会社神戸製鋼所社製MGS−309LSを用い、入熱量は0.4〜0.8kJ/mmの範囲とした。
これらのすみ肉溶接試験片を用いて、サイクル腐食試験を行った。サイクル条件はJIS H 8502に準拠し、塩水噴霧(5%NaCl、35℃、噴霧2h)→乾燥(60℃、4h、相対湿度40%)→湿潤(50℃、2h、相対湿度≧95%)を1サイクルとして、10サイクル行った。サイクル腐食試験後に、すみ肉溶接試験片の溶接部を解体し、10%硝酸を用いて錆を除去した。重ね合わせの内面に発生した腐食から任意に10か所の腐食箇所を選択し、それぞれの侵食深さをレーザー顕微鏡を用いて測定し、試験片3個分、合計30か所の侵食深さを平均した。結果を表2に示す。
Figure 0005884183
本発明例であるNo.1〜No.17(但し、No.7は参考例)および比較例であるNo.22、No.23は侵食深さが50μm以下であり、溶接すき間部の耐食性が良好であった。Mn、Cr、Ni、Tiのいずれかが本発明の成分範囲外であるNo.18〜No.21およびF値が本発明の範囲外であるNo.24では侵食深さが50μm以上となり、溶接すき間部の耐食性が不十分であった。
表面品質を評価するため、熱延焼鈍板の酸洗後の表面状態を全長に亘って観察した。全長に対し、スラブ割れあるいは介在物が起因となる表面欠陥が観察された長さの割合を指標とし、欠陥発生の割合が3%以下をa、3%超え30%までをb、30%超えをcとして評価した。結果を表2に示す。表面欠陥は錆発生の起点となり得るため、熱延板あるいは熱延焼鈍板の状態で使用される本発明では、ヘゲ等の表面欠陥はないほうが好ましい。本発明例であるNo.1〜No.17(但し、No.7は参考例)および比較例であるNo.19〜No.21では表面欠陥はほとんど観察されなかった。Mnが成分範囲から外れるNo18、酸素が成分範囲から外れるNo.22およびFFV値が範囲から外れるNo.23、No.24では表面欠陥の発生が顕著であった。

Claims (2)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.03%、N:0.01〜0.03%、Si:0.01〜0.40%、Mn:1.0〜2.5%、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.03〜0.15%、Cr:10.0〜13.0%、Ni:1.0%超5.0%以下、Ti:4×(C+N)(ただし、C、Nは各元素の含有量(質量%)を表す)以上、0.4%以下を含有し、V:0.05%以下、O:0.0045%以下とし、さらに、以下の式で表されるF値およびFFV値が、F値≦11、FFV値≦9.0を満たし、残部がFeおよび不可避不純物からなることを特徴とする構造用ステンレス鋼板。
    F値=Cr+2×Si+4×Ti−2×Ni−Mn−30×(C+N)
    FFV値=Cr+3×Si+16×Ti+Mo+2×Al−2×Mn−4×(Ni+Cu)−40×(C+N)+20×V
    なお、式中の各元素記号は、各元素の含有量(質量%)を表す。
  2. さらに、質量%で、Cu:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%の1種または2種を含有することを特徴とする請求項1記載の構造用ステンレス鋼板。
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