JP4273457B2 - 穴拡げ加工性に優れた構造用ステンレス鋼板 - Google Patents

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本発明は、構造用ステンレス鋼板に係り、とくに、鉄道車両や自動車、バスなどの車両で、穴拡げ加工を施される構造部材用として好適な、穴拡げ加工性に優れた構造用ステンレス鋼板に関する。
従来、腐食による肉厚減に起因する強度低下を防止し、あるいは美観上の観点から、耐食性が必要とされる車両構造部材、例えば、鉄道車両の構造部材には、耐食性に優れたSUS301L やSUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼板が使用されてきた。
しかしながら、オーステナイト系ステンレス鋼は、fcc(面心立方)構造であるため、bcc(体心立方)構造のクロム系ステンレス鋼に比べ、熱伝導率が低く、熱膨張率が高い。そのため、オーステナイト系ステンレス鋼板を車両構造部材に使用した場合、溶接による入熱を受けると、熱伝導率が低いため熱が溜まりやすく、また、熱膨張率が高いため膨張し、溶接部周辺にゆがみが生じる場合があった。一方、フェライト系ステンレス鋼では、溶接部で結晶粒が粗大化し、溶接部靱性が極度に低下するという問題があった。
このような問題に対し、例えば、特許文献1には、車両構造部材用として好適な、炭素鋼並に熱伝導率が高くまた熱膨張率が低く、かつ溶接部靱性の優れたマルテンサイト系ステンレス鋼板が提案されている。しかしながら、特許文献1に記載されたマルテンサイト系ステンレス鋼は、900MPa以上の高い強度を得るために、Mn、Ni、Mo、Nなどの合金元素含有量を高くしており、穴拡げ加工を行うと割れが発生するという問題があり、穴拡げ加工を施される鉄道車両の構造部材用や、自動車、バスなどの車両の構造部材用としては問題を残していた。
特開平7-145452号公報
このように、クロム系ステンレス鋼板については、強度や、耐食性および溶接熱影響部靱性を向上させることについての検討は種々なされているが、穴拡げ加工性の向上についての検討はこれまで見当らなかった。
このようなことから、本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、耐食性、溶接部靱性に加え、穴拡げ加工性にも優れた構造用ステンレス鋼板を提供することを目的とする。なお、本発明の構造用ステンレス鋼板は、引張強さ:600MPa超800MPa以下、好ましくは730MPa未満の強度を目標とする。なお、600MPaを超える引張強さを有する鋼板は、車両構造用として十分な強度を有する鋼板といえる。
本発明者らは、上記した課題を達成するために、質量%で、11%以上15%未満のCrを含有するステンレス鋼板について、耐食性、溶接熱影響部靭性および穴拡げ加工性におよぼす各種要因について鋭意考究した。その結果、
(イ)適正量のMo、Niを含有させることにより、耐食性が顕著に改善されること、
(ロ)C+N量を極めて少なく限定することにより、加工性と溶接部靱性が顕著に向上すること、
(ハ)C、Mn、Ni、Moを適正範囲に調整したうえで、金属組織をフェライト相と体積率で2〜20%のマルテンサイト相とすることにより、穴拡げ加工性が顕著に向上し、しかも引張強さが600MPaを超える高強度が得られること、
を見出した。
本発明は、このような知見に基づいて、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨はつぎのとおりである。
(1)質量%で、C:0.02%未満、Si:1.0 %以下、Mn:1.5 %未満、P:0.04%以下、S:0.01%以下、Al:0.1 %以下、Ni:1.5 %以上3.0 %未満、Cr:11%以上15%未満、Mo:0.5 %以上2.0 %未満、N:0.02%未満を、次(1)〜(3)式
15≦ Cr+1.5 Mo+1.2 Ni+0.5 Cu+0.3 Co ≦20 ……(1)
C+N< 0.030 % ……(2)
Ni+0.5 (Mn+Mo+Cu)+30C ≦3.0 ……(3)
(ここで、Cr、Mo、Ni、Cu、Co、C、N、Mn:各元素の含有量(質量%))
を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、主相であるフェライト相と、体積率で2〜20%のマルテンサイト相とからなる組織を有することを特徴とする穴拡げ加工性に優れた構造用ステンレス鋼板。
(2)(1)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、B:0.0005%以上0.0050%以下を含有することを特徴とする構造用ステンレス鋼板。
(3)(1)または(2)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.02%以上2.0 %以下、Co:0.02%以上2.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種を、前記(1)〜(3)式を満足するように含有することを特徴とする構造用ステンレス鋼板。
(4)(1)ないし(3)のいずれかにおいて、前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.2 %以下、Nb:0.2 %以下、V:0.2 %以下、Zr:0.2 %以下、Ta:0.2 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする構造用ステンレス鋼板。
(5)(1)ないし(4)のいずれかにおいて、600MPaを超える引張強さを有してなる構造用ステンレス鋼板。
(6)(1)ないし(5)のいずれかにおいて、Ac1変態点を超える温度で仕上熱処理を施されてなる構造用ステンレス鋼板。
なお、本発明の構造用ステンレス鋼板が目標とする特性は、つぎの通りである。
(1)耐食性
耐食性は、JIS Z 2371に規定される塩水噴霧、乾燥、湿潤の3つを繰り返す複合サイクル腐食試験(Cyclic Corrosion Test 、以下CCT ともいう)で評価する。この試験で、発錆面積率:30%以下、発錆最大穴深さ:100 μm以下であれば、車両構造用としては十分な耐食性を有しているとする。
(2)加工性
加工性は、JIS Z 2201に規定される13号B試験片を用いたJIS Z 2241に準拠した引張試験の破断伸びEl、穴拡げ加工試験のλ値で評価する。Elが15%以上、λ値が70%以上あれば、車両構造用として十分な加工性を有しているとする。
(3)溶接部靱性
溶接部靱性は、試験温度:−50℃での溶接熱影響部のシャルピー衝撃値(v E -50 )で評価する。v E -50 が50J/cm2 以上であれば、車両構造用として十分な溶接部靱性を有しているとする。
(4)引張強さ
引張強さの目標値は、600MPa超え、800MPa以下とする。引張強さが600MPaを超えれば、特に車両構造用として十分な強度を有しているとする。
なお、上記した特性のうちいずれか一つでも満足できない鋼板は、車両構造用として十分に用いることができない。
本発明によれば、耐食性、溶接部靱性に加え、穴拡げ加工性にも優れた構造用ステンレス鋼板が安価に提供でき、産業上格段の効果を奏する。本発明のステンレス鋼板は、優れた耐食性、溶接部靱性に加え、高い穴拡げ加工性を必要とする車両用構造部材として用いることができ、ステンレス鋼板の用途拡大という効果もある。
まず、本発明の構造用ステンレス鋼板の組成限定理由について説明する。以下、組成における質量%は、単に%で記す。
C:0.02%未満
Cは、強度を増加させる元素であり、所望の強度を確保するためには、0.005 %以上含有することが望ましいが、0.02%以上含有すると、加工性および溶接部靱性を低下させ、また溶接割れ感受性を高める悪影響が顕著となる。このため、本発明ではCは0.02%未満に限定した。なお、溶接部靱性の観点からは0.010 %以下とすることが望ましい。
Si:1.0 %以下
Siは、鋼板中には不可避的に含有される元素であり、1.0 %を超えて過剰に含有すると、鋼板の伸びを低下させるとともに脆化させ、加工性および溶接部靱性を低下させる。このため、Siは1.0 %以下に限定した。なお、溶接部靱性の観点から、0.5 %以下とすることが好ましい。
Mn:1.5 %未満
Mnは、本発明では鋼板中に不可避的に含有される元素であり、過剰に含有すると鋼板の加工性および耐食性を低下させる。このため、Mnは1.5 %未満に限定した。なお、鋼板の加工性および耐食性の観点からは、0.5 %以下とすることが望ましい。
P:0.04%以下
Pは、鋼の加工性を低下させる元素であり、不可避的不純物としてできる限り低減することが好ましいが0.04%までは許容できる。なお、加工性の観点からは、0.02%以下にすることが望ましい。なお、過剰な低減は、製鋼のコストの上昇を招くため、0.01%以上とすることが好ましい。
S:0.01%以下
Sは、耐食性を低下させる元素であり、不可避的不純物としてできる限り低減することが好ましいが0.01%までは許容できる。なお、耐食性の観点からは、0.003 %以下にすることが望ましい。なお、過剰な低減は、製鋼時の脱S処理にかかる経済的制限から、0.001 %以上とすることが好ましい。
Al:0.1 %以下
Alは、脱酸剤として作用し、本発明では不可避的不純物として鋼板中に含有されるが、0.1 %を超えて過剰に残留すると、介在物量が増加し、穴拡げ加工性が低下する。このため、Alは0.1 %以下に限定した。なお、穴拡げ加工性の更なる改善の観点からは、0.01%未満とすることがより好ましい。
Ni:1.5 %以上3.0 %未満
Niは、ステンレス鋼板の特徴である耐食性を向上させ、母材および溶接部の靱性を向上させる作用を有する。このような効果を得るためには、1.5 %以上の含有を必要とする。一方、3.0 %以上含有すると、鋼板が顕著に硬化し、伸びが低下する。このため、Niは1.5 %以上3.0 %未満の範囲に限定した。なお、耐食性の観点からは、2.0 %以上とすることが好ましい。また、2.5 %以下の含有でも耐食性、靱性改善効果は十分に現れる。
Cr:11%以上15%未満
Crは、ステンレス鋼の特徴である耐食性の向上に有効な元素であり、十分な耐食性を得るためには11%以上の含有を必要とする。なお、更なる耐食性向上の観点からは、Crは12%以上とすることが好ましく、13%以上とすることがより好ましい。一方、Crの過剰含有は鋼板の靱性を低下させる。とくに、15%以上の含有は、靱性の低下が著しくなる。このため、Crは11%以上15%未満に限定した。なお、靱性の観点から、14%未満とすることが望ましい。
Mo:0.5 %以上2.0 %未満
Moは、耐食性の向上に特に有効な元素であり、本発明では0.5 %以上含有する。一方、2.0 %以上過剰に含有しても、耐食性向上の効果が飽和するばかりでなく、靱性を低下させる。このため、Moは0.5 %以上2.0 %未満に限定した。なお、耐食性の観点からは、0.8 %以上含有することが好ましく、また靱性の観点からは、1.5 %未満含有することが好ましい。
N:0.02%未満
Nは、Cと同様に加工性および溶接部靱性を低下させ、また溶接割れ感受性を高める元素であり、0.02%以上含有すると、その悪影響が顕著となる。このため、Nは0.02%未満に限定した。なお、とくに、加工性および溶接部靱性の観点から、0.010 %以下とするのが好ましい。
本発明では、上記した各成分を上記した範囲で、かつ 次(1)〜(3)式を満足するように含有する。
15≦ Cr+1.5 Mo+1.2 Ni+0.5 Cu+0.3 Co ≦20 ……(1)
C+N< 0.030 ……(2)
Ni+0.5 (Mn+Mo+Cu)+30C ≦3.0 ……(3)
(ここで、Cr、Mo、Ni、Cu、Co、C、N、Mn:各元素の含有量(質量%))
なお、(1)〜(3)式においては、鋼板中に含有しない元素は零として各式の値を計算するものとする。
(1)式は、耐食性および加工性からの限定である。(1)式の中央項の値が、15未満の場合には、耐食性がSUS301L やSUS304等のオーステナイト系ステンレス鋼板よりも劣るようになる。一方、(1)式の中央項の値が、20を超えて大きくなっても、耐食性改善の効果は飽和し、却って高合金化による加工性の低下が顕著になる。このため、耐食性および加工性の観点から、本発明では(1)式を満足するように鋼板組成を限定した。
(2)式は、加工性および溶接部靱性からの限定である。(2)式の左辺項が、0.030 以上になると、加工性、溶接部靱性が極めて劣化する。このため、本発明では(2)式を満足するようにC、N量を限定した。なお、好ましくは(C+N)は0.025 以下、より好ましくは0.020 以下である。
(3)式は、穴拡げ加工性からの限定である。(3)式の左辺項の値が、3.0 を超えると、マルテンサイト相が過度に安定化し、マルテンサイト相を20体積%以下にすることができなくなり、延性が低下するとともに穴拡げ加工性が低下する。このため、本発明では(3)式を満足するように鋼板組成を限定した。
また、本発明では、上記した基本組成に加えてさらに、B:0.0005%以上0.0050%以下、および/または、Cu:0.02%以上2.0 %以下、Co:0.02以上2.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種、および/または、Ti:0.2 %以下、Nb:0.2 %以下、Zr:0.2 %以下、Ta:0.2 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を、 必要に応じ選択して含有できる。
B:0.0005%以上0.0050%以下
Bは、穴拡げ加工性を向上させ、また微量の含有で鋼板の強度を高くできる元素であり、必要に応じて含有することができる。上記したような効果を得るためには、0.0005%以上含有することが好ましいが、0.0050%を超えて含有しても効果が飽和するうえ、耐食性が低下する。このため、Bは0.0005%以上0.0050%以下に限定することが好ましい。
Cu:0.02%以上2.0 %以下、Co:0.02%以上2.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種
Cu、Coは、Moと同様に耐食性の向上に有効な元素であり、十分な耐食性改善効果を得ることが要求される場合には、選択して含有できる。含有する場合は、それぞれ0.02%以上とすることが好ましい。なお、より好ましくは0.3 %以上である。一方、それぞれ2.0 %を超えて含有すると、上記した効果が飽和するばかりでなく、加工性および靱性が低下する。このため、含有させる場合には、Cu、Coはそれぞれ0.02%以上2.0 %以下の範囲とすることが好ましい。なお、Cu、Coを含有する場合には、前記(1)、(3)式を満足するようにCu、Coの含有量を調整することが好ましい。なお、CuまたはCoのいずれか一方を添加する場合、添加しない元素の不可避的含有量が0.02%未満の場合は前記(1)、(3)式では零として扱う。
Ti:0.2 %以下、Nb:0.2 %以下、V:0.2 %以下、Zr:0.2 %以下、Ta:0.2 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上
Ti、Nb、V、Zr、Taは、いずれも微量の含有により鋼板の加工性を向上させる元素であり、必要に応じて1種または2種以上選択して含有できる。このような効果を得るためには、それぞれ0.02%以上含有することが望ましいが、それぞれを0.2 %を超えて含有すると、C、Nと化合物を作って析出し、マルテンサイト相中の固溶C、Nが減少するため、鋼板が過度に軟化し、強度が低下する。このため、Ti:0.2 %以下、Nb:0.2 %以下、V:0.2 %以下、Zr:0.2 %以下、Ta:0.2 %以下に、それぞれ限定することが好ましい。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。なお、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素および遷移金属などをそれぞれ、少量(0.1 %以下)含有してもよい。これらの元素の少量の含有は、本発明の効果を何ら妨げるものではない。
本発明ステンレス鋼板は、上記した組成を有し、さらに主相であるフェライト相と、体積率で2〜20%のマルテンサイト相とからなる組織を有する。
本発明では、鋼板の加工性を高めるため、軟質なフェライト相を主相とする。そして、本発明では、フェライト相に加えて、体積率で2〜20%のマルテンサイト相を析出させた組織とする。これにより、加工性のうちでも、とくに穴拡げ加工性が向上するとともに、強度も向上する。穴拡げ加工性の向上は、マルテンサイト相が、CおよびNを過飽和に固溶するため、穴拡げ加工の際に割れの起点となる炭窒化物が減少することによると推定される。マルテンサイト相が2%未満では、顕著な穴拡げ加工性の向上が得られない。一方、20%を超えると、延性が顕著に低下し、却って加工性が低下する。特に穴拡げ加工性の観点からは、マルテンサイト体積率を5〜12%未満にすることが好ましい。
本発明のステンレス鋼板は、熱延鋼板または冷延鋼板のいずれでもよい。
本発明のステンレス鋼板を製造する方法としては、上記した組成に溶鋼の成分調整を行い、ステンレス鋼板の製造に一般的に採用されている熱間圧延方法をそのまま適用して熱延板とすることができる。熱延鋼板製品とする場合には、熱間圧延ままの熱延板に、仕上熱処理温度をAc1点以上、 好ましくは850 ℃未満の温度とする仕上熱処理を施す。また、熱延板焼鈍−冷間圧延による冷延鋼板の製造方法を適用して冷延板とし、到達温度がAc1点以上、好ましくは850 ℃未満の温度で仕上熱処理を施して冷延鋼板製品とすることができる。
例えば、転炉あるいは電気炉等の通常の溶製方法を用いて、上記した組成範囲に成分調整した溶鋼を、さらにVOD (Vacuum Oxygen Decarburization )あるいはAOD (Argon Oxygen Decarburization)により2次精錬を行うことが好ましい。ついで、溶鋼は、公知の鋳造方法、好ましくは生産性および品質の観点から、連続鋳造法により、スラブ等の鋼素材とすることができる。
得られた鋼素材は、好ましくは1000〜1250℃に加熱され、通常の条件の熱間圧延により所望の板厚の熱延板とされる。得られた熱延板は、仕上熱処理を施し、必要に応じて酸洗等により脱スケールされ、熱延鋼板製品とされる。なお、仕上熱処理は、Ac1変態点以上の温度で、連続式熱処理の場合は、30〜180 s、バッチ式熱処理の場合は、5〜10h保持することが好ましい。この仕上熱処理により、体積率で2〜20%のマルテンサイト相を生じさせることができる。なお、仕上熱処理温度の上限は、あまり温度が高いと、マルテンサイト相の析出速度が速く、体積率の制御が難しくなることから、850 ℃未満とすることが好ましい。
また、用途によっては、熱間圧延後の熱延板に必要に応じて軟質化熱処理及び酸洗を行い、冷間圧延を施し、仕上熱処理及び酸洗を施して、所望の板厚の冷延鋼板製品とされる。なお、仕上熱処理は、Ac1変態点以上の温度で、好ましくは連続式熱処理の場合は30〜180 s、バッチ式熱処理の場合は、5〜10h保持することが好ましい。この仕上熱処理により、体積率で2〜20%のマルテンサイト相を生じさせることができる。なお、仕上熱処理温度の上限は、熱延鋼板と同様にマルテンサイト析出速度、体積率制御の観点から850 ℃未満とすることが好ましい。
このようにして製造された熱延鋼板製品あるいは冷延鋼板製品は、それぞれの用途に応じた加工が施されて、パネル等に成形される。これらのパネル等は、鉄道車両の構造部材や自動車、バスなどの構造部材として用いられる。
なお、これらの構造部材を溶接するための溶接方法は、特に限定されず、MIG 、MAG 、TIG 等のアーク溶接や、スポット溶接、高周波抵抗溶接、高周波誘導溶接などが適用可能である。その際、本発明のステンレス鋼板は、C、Nを低減し、溶接割れの発生を防止しているため、溶接後の熱処理を行わなくても十分溶接可能である。ただし、強度の調整などのために溶接後の熱処理を行っても良い。
(実施例1)
表1に示す組成を有する溶鋼を真空溶解炉で溶製し、50kgf 鋼塊に鋳造した。これら鋼塊を1200℃に加熱した後、リバース圧延機による熱間圧延により厚さ:3mmの熱延板とした。得られた熱延板に、5℃/min で加熱しながら熱膨張を測定し、Ac1変態点を求め、さらに表2に示す仕上熱処理を施した後、酸洗で脱スケールし、板厚t=3.0mm の熱延鋼板製品とした。
これら熱延鋼板製品について、金属組織、機械的特性、耐食性、穴拡げ加工性、溶接熱影響部靭性を調査した。試験方法はつぎのとおりである。
(1)金属組織
得られた熱延鋼板製品の組織観察用試験片(圧延方向に平行な板厚断面を観察面とした)を採取し、村上試薬(赤血塩のアルカリ溶液(赤血塩10g、カセイカリ10g、水100cc ))で腐食し、光学顕微鏡を用いて、組織の同定と、画像解析装置を用いて各組織の分率を求めた。
(2)機械的性質
得られた熱延鋼板製品から、JIS Z 2201に規定されるJIS 13号B試験片を引張方向が圧延方向となるように各3本採取し、JIS Z 2241の規定に準拠して引張試験を行ない、引張強さTSと破断伸びElを測定し、3本の平均値をその製品のTS、Elとした。
(3)耐食性
得られた熱延鋼板製品から、試験片(大きさ:t×70mm×150 mm)を各2枚採取し、複合サイクル腐食試験(CCT :Cyclic Corrosion Test)を行なった。試験片の片面を試験面として、JIS Z 2371に規定される塩水噴霧2時間→乾燥(温度:60℃、湿度:30%以下)4時間→湿潤(温度:50℃、湿度:95%以上)2時間の、塩水噴霧と、乾燥、湿潤を組み合わせた合計8時間を1サイクルとして、計30サイクル行った。試験後、試験面の画像をコンピュータに取り込み、発錆部分の面積をコンピュータによる画像解析により求め、試験面で徐して発錆面積率とした。試験片2枚の発錆面積率を平均し、その平均値を各製品のCCT 発錆面積率とした。またさらに、板厚方向の腐食の進行を確認するために、液温:50℃の30質量%硝酸水溶液に8時間浸漬して試験面の錆を除去し、錆深さの最大値を触針法により測定し、CCT 発錆最大穴深さとした。
(4)穴拡げ加工性
得られた熱延鋼板製品から、試験片(大きさ:100 ×100 mm)を採取し、中央部に初期穴(穴直径d0 :10mm)を打抜き、穴拡げ加工試験を実施した。試験片を固定し、初期穴に円錐ポンチ(頂角:60°)を押し込み、初期穴の打抜き断面に板厚を貫通する割れが発生した時の穴径df を測定し、穴拡げ率λ(%)を求めた。なお、λは、次式
λ={(df −d0 )/d0 }×100 (%)
(ここで、df :試験後穴直径(mm)、d0 :初期穴直径(mm))
を用いて計算するものとする。
(5)溶接熱影響部靭性
熱延鋼板製品から、溶接用試験板(大きさ:150mm 幅×300mm 長さ)を採取し、圧延方向と平行な板厚面同志(L断面同志)を向かい合わせて突き合わせ、図1に示すような溶接方向にMIG 溶接(ワイヤ:JIS Y308相当品、電流:150A、電圧:19V 、溶接速度:9mm/sec、シールドガス:100vol%Arを20リットル/min 、ルートギャップ:1mm)して、溶接継手を作製した。得られた溶接継手から、図1に示すような、JIS Z 2202の4号サブサイズシャルピー衝撃試験片(厚みH:3mm)を採取した。なお、ノッチ位置は、ボンド部から1mm離れた溶接熱影響部とし、溶接余盛を研削で除去した。JIS Z 2242の規定に準拠して、試験温度:−50℃でシャルピー衝撃試験を実施し、シャルピー衝撃値vE-50 (J/cm2 ) を求めた。5本の平均値を、その溶接熱影響部の靭性として評価した。
得られた結果を表2に示す。
Figure 0004273457
Figure 0004273457
Figure 0004273457
Figure 0004273457
本発明例は、いずれも車両用として十分な耐食性、強度、溶接部靱性を有し、さらに優れた加工性を有し、とくに穴拡げ加工性が顕著に向上していることがわかる。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、耐食性、強度、溶接部靱性および穴拡げ加工性のうちのいずれかが本発明例に比べて劣化している。
(実施例2)
実施例1で得られた熱延板(鋼No. K: 板厚3.0 mm)に、650 ℃で10h保持する焼鈍、次に酸洗を行い、リバース圧延機による冷間圧延を施し、板厚1.5mm の冷延板とした。ついで、この冷延板にさらに、Ac1変態点(680 ℃)以上の750 ℃で1min 間保持する仕上熱処理を施した。その後、60℃の混酸(硝酸10質量%+フッ酸3質量%)に浸漬して脱スケールして、冷延鋼板製品とした。この冷延鋼板製品について、実施例1と同様の、金属組織、機械的性質、耐食性、穴拡げ加工性、溶接熱影響部靭性を調査した。なお、溶接熱影響部靭性は、溶接継手を、TIG (Tungsten Inert Gas)溶接(電流:95A 、電圧:11V 、溶接速度:400 mm/min、シールドガスは表側(電極側):20リットル/min 、裏側:10リットル/min )を用いて作製し、実施例1と同様に試験した。
その結果、フェライト相と体積率で11%のマルテンサイト相とからなる組織を有し、引張強さが680MPa、破断伸びが21%であり、CCT 発錆面積率が10%、CCT 発錆最大穴深さが35μmである優れた耐食性と、また、穴拡げ率λが90%と優れた穴拡げ加工性と、溶接熱影響部のvE-50 が80J/cm2 と優れた溶接部靭性とを有し、車両構造用として目標特性を十分に満足する特性を有する冷延鋼板となっていることがわかる。
実施例で用いたシャルピー衝撃試験片の採取方向及びノッチ位置を示す説明図である。

Claims (6)

  1. 質量%で、
    C:0.02%未満、 Si:1.0 %以下、
    Mn:1.5 %未満、 P:0.04%以下、
    S:0.01%以下、 Al:0.1 %以下、
    Ni:1.5 %以上3.0 %未満、 Cr:11%以上15%未満、
    Mo:0.5 %以上2.0 %未満、 N:0.02%未満
    を、下記(1)〜(3)式を満足するように含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、主相であるフェライト相と、体積率で2〜20%のマルテンサイト相とからなる組織を有することを特徴とする穴拡げ加工性に優れた構造用ステンレス鋼板。

    15≦ Cr+1.5 Mo+1.2 Ni+0.5 Cu+0.3 Co ≦20 ……(1)
    C+N< 0.030 % ……(2)
    Ni+0.5 (Mn+Mo+Cu)+30C ≦3.0 ……(3)
    ここで、Cr、Mo、Ni、Cu、Co、C、N、Mn:各元素の含有量(質量%)
  2. 前記組成に加えてさらに、質量%で、B:0.0005%以上0.0050%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の構造用ステンレス鋼板。
  3. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Cu:0.02%以上2.0 %以下、Co:0.02%以上2.0 %以下のうちから選ばれた1種または2種を、前記(1)〜(3)式を満足するように含有することを特徴とする請求項1または2に記載の構造用ステンレス鋼板。
  4. 前記組成に加えてさらに、質量%で、Ti:0.2 %以下、Nb:0.2 %以下、V:0.2 %以下、Zr:0.2 %以下、Ta:0.2 %以下のうちから選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の構造用ステンレス鋼板。
  5. 600MPaを超える引張強さを有してなる請求項1ないし4のいずれかに記載の構造用ステンレス鋼板。
  6. Ac1変態点を超える温度で仕上熱処理を施されてなる請求項1ないし5のいずれかに記載の構造用ステンレス鋼板。
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