JP4385502B2 - 溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、溶接後に焼戻しを行わなくても、溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼に関するものであり、特に、このステンレス鋼は、溶接管とした後に曲げなどの加工が施される構造用部材、例えばサスペンションアームなどの自動車の足回り用部材に用いるのに適している。
【0002】
【従来の技術】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、Crを11〜18mass%含有する鋼であって、使用の際には焼入れ及び焼戻しを行うのが一般的であり、また、オーステナイト系ステンレス鋼に比べると、耐食性及び加工性については劣るものの強度が高いため、刃物、工具等に使用されている。
【0003】
マルテンサイト系ステンレス鋼は、溶接管として使用した場合には、熱影響を受けた溶接部が実質的に焼入れされたままの状態となって、硬くかつ脆くなるため、溶接ままの溶接管に曲げ等の加工を施すと溶接部に割れが生じることがあった。
【0004】
この対策としては、溶接後に600 〜750 ℃に保持する焼戻し処理を行うのが有用であるが、この焼戻し処理を行うことは、通常の製造工程にさらに工程を追加することになるため、生産性や作業性が著しく低下するという問題があった。
【0005】
そこで、特公昭51−13463 号公報には、溶接ままでも十分な延性及び靭性を有し、予熱及び後熱処理が不要な溶接構造用マルテンサイト系ステンレス鋼が記載されており、また、特開平9−228001号公報には、低C、N化し、耐孔食性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼が記載されているが、これらの公報に記載された実施例のステンレス鋼はいずれも、C及びNの含有量の低減が十分ではなく、溶接時の入熱により実質的に焼入れされたままの状態となった溶接部が母材と比べて著しく硬化するため、厳しい曲げ加工を施した場合には、溶接部で割れが生じる等の問題が生じた。
【0006】
近年、環境対策で燃費向上を目的とする自動車の軽量化が図られており、サスペンションアームのような自動車の足回り構造用部品として、従来から使用されていた普通鋼(通常防錆塗装を施す)に代わって、それに比べて塗装をしなくても耐食性及び耐熱性に優れ、かつ普通鋼と同等以上の強度に調整することができ、伸びなどの機械的性質にもすぐれたマルテンサイト系ステンレス鋼を適用しようとする傾向がある。
マルテンサイト系ステンレス鋼は塗装なしでも耐食性が優れるため、腐食代(腐食により減る肉厚)を普通鋼より少なくすることができる。そのため、板厚を薄くすることが可能であり軽量化につながる。
【0007】
上記足回り構造用部品は、溶接管に成形し溶接した後に、さらに曲げ等の厳しい加工が施されるため、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼では、溶接後に焼戻し処理を行わない限り、十分な加工性を得るのは困難であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、この発明の目的は、前記の問題点を解決し、鋼組成成分の適正化を図ることにより、溶接後に焼戻しを行わなくても、溶接部の加工性及び靭性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼、特に、溶接管とした後に曲げなどの加工が施される構造用部材、例えばサスペンションアームなどの自動車の足回り用部材に用いるのに適した溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記目的を達成するため、マルテンサイト系ステンレス鋼を用いて製造した溶接管の強度、伸び、その溶接部の加工性および靱性に及ぼす種々の添加元素の影響について詳細に調査した。その結果、C及びNを極力低減するとともに、Cr、Si、Al、P、Mn、Ni、CおよびNの含有量によって定まる値、即ち後述するF値をある臨界値以下に限定することにより、溶接部の加工性および靱性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼が得られることを新たに見出した。
【0010】
また、上記組成を有する鋼中に、さらに適正量のCuを添加すると、溶接部の靱性の向上効果が顕著になることも見出した。
【0011】
この発明は、上記知見に立脚するものであり、その要旨構成は次のとおりである。
1.mass%で、
C: 0.01%未満
Si: 0.5 %以下
Mn: 1.0 %超え、 3.0%以下
P: 0.05%以下
S: 0.02%以下
Cr: 10〜15%
Ni: 0.1 〜1 %
Al: 0.1 %以下
N: 0.01%未満
を含有し、かつ、CとNの含有量の総和が0.015 %以下であって、下記(1)式で示されるF値が10.5以下であり、残部はFe及び不可避的不純物の組成になることを特徴とする溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼。
【0012】
記
F値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+35×C+10×N)−−−−(1)
【0013】
また、靭性をより一層向上させる必要がある場合には、上記鋼組成に加えて、さらにCuを0.1 〜1%添加することが好ましく、この場合、上記F値にCuの項を追加した下記(2)式で示されるF´値が10.5以下であることが好ましい。
【0014】
記
F´値=Cr+0.4 ×Si+0.2 ×Al+5×P
−(0.4×Mn+ 0.7×Ni+ 0.6×Cu+35×C+10×N) −−(2)
【0015】
尚、F´値は、F値に修正項(Cuの項)を追加したものにすぎず、本質的には、F値に含まれる概念とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、この発明において、上記要旨構成の通りに限定した理由について説明する。
【0017】
C: 0.01mass%未満
Cは、溶接部の加工性および靭性に悪影響をおよぼす元素であり、0.01mass%以上になると、その影響が顕著となるので、C含有量は0.01mass%未満に限定する。特に、溶接部の加工性および靭性の向上の観点から、Cの含有量は低いほど良く、 0.006mass%以下が望ましい。
【0018】
Si: 0.5 mass%以下
Siは、脱酸作用があり、製鋼上必要な元素成分であるが、過剰に添加すると鋼の靭性を劣化させ、この発明の目的である溶接部の靭性をも劣化させるため、0.5 mass%以下に限定する。
【0019】
Mn: 1.0 mass%超え、3.0 mass%以下
Mnは、後述するF値を調整するために必須の成分であり、その含有量が 1.0mass%以下だと、溶接部の加工性および靱性の向上効果が顕著ではなくなる、Mn含有量は 1.0mass%超えとし、また、この発明の目的を十分に達成するには、好ましくは 1.5mass%超え、より好ましくは2mass%超えとする。しかしながら、Mn含有量が 3.0mass%を超えると、逆に鋼の加工性および靭性を劣化させるとともに、この発明の目的である溶接部の加工性および靭性をも劣化させることになるため、Mn含有量の上限は 3.0mass%とする。従って、Mn含有量は、 1.0mass%超え、 3.0mass%以下とする。
【0020】
P: 0.05mass%以下
Pは、出来る限り低い方が鋼の加工性の向上に有効である。特にP含有量が0.05mass%超えだと、鋼の加工性を著しく劣化させ、この発明の目的である溶接部の加工性をも劣化させるため、P含有量は0.05mass%以下とする。尚、Pは、フエライト生成元素であり、多く含有するとマルテンサイト変態による溶接部の結晶粒の微細化の効果が得にくくなり、溶接部の靭性が劣化することになるため、後述するF値にはPの項が必須である。
【0021】
S: 0.02mass%以下
またSの含有量は、低い方が耐食性および靭性が向上するが、製鋼時の脱S処理にかかる経済的制限から、0.02mass%以下とする。
【0022】
Ni: 0.1 〜1mass%
Niは、高温でのオーステナイト相を安定にし、マルテンサイト変態による溶接部の結晶粒の微細化の効果を高め、溶接部の靭性を向上させる元素成分である。その効果を得るためには0.1mass %以上の添加が必須であり、また、F値にもNiの項が必須である。しかしながら、1mass%を超えて添加しても効果は飽和し、また、高価なNiの過剰な添加はコストの上昇を招くだけであるため、1mass%以下に限定する。
【0023】
Cr: 10〜15mass%
Cr は、その含有量が10mass%以上だと、耐食性が顕著に向上するため10mass%を下限とする。また、Crはフエライト生成元素であるので、その含有量が15mass%を超えると、Mn、Ni、Cu等を添加しても高温でのオーステナイト相を生じにくくなり、マルテンサイト変態による溶接部の結晶粒の微細化の効果が得にくくなるため、Cr含有量の上限を15mass%とする。
【0024】
Al: 0.1 mass%以下
Al は製鋼上脱酸剤として必要であるが、その含有量が0.1mass %超えだと、介在物が生成しやすくなって靭性が劣化するため、Al含有量は0.1mass %以下とする。また、Alはフエライト生成元素であるため、多く含有するとマルテンサイト変態による溶接部の結晶粒の微細化の効果が得にくくなるため、F値にもAlの項が必須である。
【0025】
N: 0.01mass%未満
Nは溶接部の加工性および靭性に悪影響を及ぼす元素であり、0.01mass%以上含有するとその影響が顕著となるので、0.01%未満に限定する。特に、溶接部の加工性および靭性の向上の観点から、Nの含有量は低いほど良く、0.006mass %以下にすることが好ましい。
【0026】
また、靭性をより一層向上させる必要がある場合には、上記鋼組成に加えて、さらにCuを添加することが好ましい。
Cu: 0.1 〜1 mass%
Cuは、高温でのオーステナイト相を安定にし、マルテンサイト変態による溶接部の結晶粒の微細化の効果を高め、溶接部の靭性を向上させる元素成分であり、必要に応じて添加される。その効果を得るためには 0.1mass%以上の添加が必要であり、F値にもCuの項を入れる必要がある。しかしながら、1mass%を超えて添加しても効果は蝕和し、かつ鋼の熱間加工性が劣化し、生産性が低下するため、Cu含有量の上限は1mass%にすることが好ましい。
【0027】
残部Fe及び不可避的不純物
上述した鋼組成成分以外の残部は、Fe及び不可避的不純物である。不可避的不純物としては、例えばO含有量が 0.010mass%以下の範囲であることが容認される。
【0028】
そして、この発明の構成上の主な特徴は、鋼中のCとNの含有量を極力低減するとともに、Cr、Si、Al、P、Mn、Ni、CおよびNの含有量で決まる値をある適正値以下とすること、より具体的には、CとNの含有量の総和を0.015mass %以下とし、かつ、下記(1)式で示されるF値を10.5以下にすることにある。
【0029】
記
F値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+35×C+10×N)−−−−(1)
【0030】
CとNの含有量の総和を0.015mass %以下に限定するのは、CとNの含有量の総和が0.015mass %以下だと、溶接部の加工性および靭性改善効果が顕著であるからである。尚、CとNの含有量の総和は、溶接部の加工性および靭性改善の観点からすれば低いほど良く、特に0.010mass %以下であることが好ましい。
【0031】
図1は、Fe−11%Cr−2.2 %Mn−0.5 %Ni( ここにおける%表示はいずれも質量%) をベースとし、(C+N)量を変化させたマルテンサイト系ステンレス鋼で製造した溶接管に対し、溶接部の加工性を密着偏平試験により評価した結果の一例を示したものである。
【0032】
密着偏平試験は、溶接部を側面曲げ部とし、平金具で荷重をかけて密着偏平させる試験であり、この試験後に溶接部の割れの有無を調査し、(C+N)含有量(mass%)が異なる各鋼でそれぞれ製造した30本の溶接管で試験を行い(n=30)、割れを生じた割合を割れ発生率(%)とし、この割れ発生率から溶接部の加工性を評価した。
【0033】
図1に示す結果から、(C+N)の含有量が0.015mass %以下で、優れた加工性を得られているのがわかる。また、(C+N)含有量を0.010mass %以下にすればほとんど割れは発生しなかった。これは、CとNの含有量を極めて低くすることにより、溶接時の入熱により生じるマルテンサイトが軟質化するためと考えられる。
【0034】
また、この発明では、下記(1)式で計算されるF値が10.5以下であることを必須の発明特定事項とする。
【0035】
記
F値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+35×C+10×N)−−−−(1)
【0036】
この式において、Cr、Si、Al、Pはいわゆるフエライト生成元素であり、マルテンサイト系ステンレス鋼の特徴である高温(およそ1000〜1100℃)でのオーステナイト相を生じにくくする。また、Mn、Ni、C、Nはオーステナイト生成元素であり、高温でのオーステナイト相を生じやすくする。すなわち、このF値が大きいほど高温でのオーステナイト相が生じにくくなることを意味する。
【0037】
そして、発明者らが詳細に調査した結果、溶接管の溶接部の靭性を向上させるには、溶接部の結晶粒の粗大化を防止し、結晶粒を微細化することが重要であり、上述のF値が10.5以下であれば、高温でのオーステナイト相から冷却される際のマルテンサイト相への変態により、溶接部に微細なマルテンサイト組織が生じるために溶接部の靭性が顕著に向上し、さらに、CとNの含有量を上記適正範囲にまで低減すると、溶接部に生じたマルテンサイト組織は軟質になり、溶接部の加工性が向上することを見出した。
【0038】
一方、F値が10.5を超える場合には、フエライト単相あるいは高温で極少量のオーステナイト相しか生じないため、溶接時の入熱によりフエライト粒が粗大化し、溶接部の靭性が極度に劣化することも判明した。
【0039】
図2は、Fe−11%Cr−0.5 %Ni−0.005 %C−0.005 %N( ここにおける%表示はいずれもmass%) をベースとし、異なるF値をもつ各マルテンサイト系ステンレス鋼をTIG溶接によって製造した溶接管について、溶接熱影響部の靱性と硬度を調査した結果を示す。
【0040】
図2に示す結果から、F値が10.5以下であれば、脆性遷移温度が低く(すなわち、低温でも脆化しにくく)、溶接部靱性は良好である。また、F値が10.5以下で高い硬度(強度)を示しているのは軟質マルテンサイトへの変態が起きたためで、F値が10.5を超えるとフェライト粒の粗大化が起こっているものと推定される。
【0041】
よって、以上の知見により、この発明では、溶接部の靭性および加工性向上のため、F値を10.5以下に限定することとした。
【0042】
また、靭性をより一層向上させる必要がある場合には、上記鋼組成に加えて、さらにCuを添加することが好ましく、この場合には、F値にCu項を追加した下記(2)式で示されるF´値を、F値と同様な限定理由により10.5以下とすることが好ましい。
【0043】
記
F´値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+ 0.6×Cu+35×C+10×N)−−−−(2)
【0044】
次に、この発明のマルテンサイト系ステンレス鋼の好適な製造方法の一例について説明する。
この発明のマルテンサイト系ステンレス鋼を製造する方法は、特に限定する必要がなく、マルテンサイト系ステンレス鋼の製造に一般的に採用されている製造方法をそのまま適用することができる。
【0045】
例えば、製鋼は、前記必須成分、および必要に応じて添加される成分とを、転炉あるいは電気炉等で溶製し、VODにより2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、通常公知の鋳造方法にしたがって鋼素材とすることができるが、生産性および品質の観点から、連続鋳造法を適用するのが好ましい。連続鋳造して得られた鋼素材は、必要に応じて所定温度に加熱され、熱間庄延により所望の板厚の熱延板とされる。この熱延板は、必要に応じ、好ましくは700 〜800 ℃の箱焼鈍を施した後、酸洗、冷間圧延を施し、所定の板厚の冷延板とする。冷延板は、好ましくは700 〜800 ℃の連続焼鈍および酸洗を施して、冷延焼鈍板とする。
【0046】
また、用途によっては、熱延焼鈍ままで、あるいは熱延焼鈍後に酸洗等により脱スケールを行ったものを使用に供することも可能である。
【0047】
溶接管の溶接方法は、TIG等のアーク溶接、電縫溶接およびレーザー溶接など、通常の溶接方法が適用可能である。本発明鋼は、溶接後の焼戻しが不要で、溶接ままで十分使用可能であるが、強度の調整などのために、溶接後の焼戻し処理を行うことも可能である。
【0048】
【実施例】
以下、この発明の実施例および比較例を挙げ、この発明をより具体的に説明する。
表1に示す化学組成を有する50kg鋼塊を真空溶解炉で溶製し、熱間圧延により厚さ4mmの熱延板とした。その後、700 ℃×8時間の焼鈍を施した後、冷間圧延で厚さ 2.5mmの冷延板とした。さらに、730 ℃×1分の仕上げ焼鈍、次いで酸洗を行い、厚さ 2.5mmの冷延焼鈍板を得た。
【0049】
【表1】
【0050】
溶接部の靭性は、この冷延焼鈍板を用いて以下の方法により調査した。まずTIGビードオン溶接を行い、溶接熱影響部に溶接方向と平行に2Vノッチを入れたJIS4号 2.5mm幅サブサイズ試験片を採取した。この試験片を用い、試験温度0℃でシャルピー衝撃試験を行い、吸収エネルギーを測定した。試験数は各5個ずつ行い、それらの平均値を算出し、この算出値によって溶接部の靭性を評価した。尚、この算出値は、150 N・m/cm2 以上であれば実用上問題がなく、溶接部の靭性に優れていることを示す。
【0051】
次に、冷延焼鈍板を用い外径38.1mmの電縫溶接管を作製し、これを焼鈍することなく溶接ままで供試材とし、下記の方法にしたがって、溶接管の引張り強度、伸び、および溶接管の溶接部の曲げ加工性を評価した。
【0052】
引張り強度および伸びは、JISll号試験片を用いた引張試験により測定した。
溶接部の加工性は、溶接部を側面曲げ部とし、密着偏平まで平金具で荷重をかけてつぶす密着偏平試験により、溶接部の割れの有無により評価した。
【0053】
以上の結果を表1に示す。表1に示す評価結果から、発明例である鋼No.1〜9はいずれも、450MPa以上の高い強度と45%以上の高い伸びを示しつつ、溶接部の靭性および加工性が優れている。一方、鋼組成がこの発明の適正範囲外である比較例(鋼No.10 〜19)は、溶接部の靭性および加工性の少なくとも一方が劣っている。
【0054】
【発明の効果】
この発明によれば、鋼組成成分の適正化を図ることにより、溶接後に焼戻しを行わなくても、溶接部の加工性及び靭性に優れたマルテンサイト系ステンレス鋼、特に、溶接管とした後に曲げなどの加工が施される構造用部材、例えばサスペンションアームなどの自動車の足回り用部材に用いるのに適した溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼の提供が可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (C+N)含有量の異なる種々のマルテンサイト系ステンレス鋼で製造した溶接管について、溶接部を側面曲げ部とした密着偏平試験を行ったときの、(C+N)含有量と溶接部における割れ発生率との関係を示した図である。
【図2】 異なるF値をもつ種々のマルテンサイト系ステンレス鋼をTIG溶接によって製造した溶接管について、F値に対して溶接熱影響部の靱性と硬度をプロットしたときの図である。
Claims (2)
- mass%で、
C: 0.01%未満
Si: 0.5 %以下
Mn: 1.0 %超え、 3.0%以下
P: 0.05%以下
S: 0.02%以下
Cr: 10〜15%
Ni: 0.1 〜1 %
Al: 0.1 %以下
N: 0.01%未満
を含有し、かつ、CとNの含有量の総和が0.015 %以下であって、下記(1)式で示されるF値が10.5以下であり、残部はFe及び不可避的不純物の組成になることを特徴とする溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼。
記
F値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+35×C+10×N)−−−−(1) - mass%で、
C: 0.01%未満
Si: 0.5 %以下
Mn: 1.0 %超え、 3.0%以下
P: 0.05%以下
S: 0.02%以下
Cr: 10〜15%
Ni: 0.1 〜1 %
Al: 0.1 %以下
Cu: 0.1 〜1 %
N: 0.01%未満
を含有し、かつ、CとNの含有量の総和が0.015 %以下であって、下記(2)式で示されるF´値が10.5以下であり、残部はFe及び不可避的不純物の組成になることを特徴とする溶接部の加工性及び靭性に優れた溶接管用マルテンサイト系ステンレス鋼。
記
F´値=Cr+ 0.4×Si+ 0.2×Al+5×P
−( 0.4×Mn+ 0.7×Ni+ 0.6×Cu+35×C+10×N)−−−−(2)
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