JP2005029882A - 耐溶接軟化性に優れた構造用高強度電縫鋼管の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
C:0.01〜0.20質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.5質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.02質量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.10質量%,及び0.01〜0.15質量%のTi,0.01〜0.15質量%のNbの1種又は2種を含有し、さらに必要に応じてZr:0.01〜0.30質量%,V:0.01〜0.30質量%,Mo:0.01〜0.30質量%,Cr:0.01〜0.30質量%,Ni:0.05〜1.00質量%の1種又は2種以上を含有し、残部が実質的にFeの組成をもち、しかも下記(1)式で定義されるC当量を0.25〜0.6質量%に制限した鋼材を連続鋳造し、仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:600℃以下450℃以上で熱間圧延し、引き続き、酸洗後に冷延率:10〜75%で冷間圧延し、冷間圧延されたままの鋼帯の幅方向両端部を溶接する。
【選択図】 なし
Description
鋼材の強化機構としては、固溶体強化法や変態組織強化法、あるいは加工強化法などがある。しかしながら、固溶体強化法や変態組織強化法では、Si,Mn,Mo,Ni等の特殊な合金元素を多量に添加するので非常に高価になる。しかも合金元素の多量添加によって強度は向上するが、必然的に鋼材コストが上昇する。
しかしながら、C−Mn系の鋼を素材とした熱延鋼板を高圧下率で冷延し、加工強化した素材をベースに高強度電縫鋼管を製造しようとすると、溶接時の加熱によって溶接の特定箇所が軟化(以下、「溶接軟化域」と称する)する傾向がある。他の強化法でも溶接時の熱影響により強度が低下することはあるが、加工強化した鋼材における溶接軟化性は他の強化法よりも顕著である。
通常、構造部材には、アーク溶接やTiG溶接など種々の溶接が施されるが、加工強化法を適用した電縫鋼管において、溶接時の熱影響によって溶接軟化域を従来品並、もしくはそれ以上に抑制することが要求される。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、C−Mn系の鋼を用い、固溶体強化,析出強化,加工強化を図り、かつ溶接軟化を低減した電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+1/5Cr+1/4Mo+1/14V+1/40Ni・・・(1)
使用する鋼材は、さらにZr:0.01〜0.30質量%,V:0.01〜0.30質量%,Mo:0.01〜0.30質量%,Cr:0.01〜0.30質量%,Ni:0.05〜1.00質量%の1種又は2種以上を含むものであってもよい。
Ti,やNbの添加の他に、Mo,Cr,Zr,V,Niが基材鋼板に添加されると、さらに高強度化されるとともに、溶接熱影響部の軟化や溶接部の靭性が改善されることになる。
このような成分組成の熱延鋼板を基材として、圧延率10〜75%の冷延による冷間加工を付与することにより高強度化を図るとともに、素材鋼板の組成的な特徴である電縫鋼管製造時の溶接熱影響部の軟化や、構造材料として使用する際の溶接熱影響部の軟化を抑制することができる。高価な合金元素を多量に使用するものでもないので、本発明により、耐溶接軟化性に優れた高強度電縫鋼管を安価に製造することができる。
C:0.01〜0.20質量%
Cは鋼板の高強度化に有効な合金成分である。冷延率10%でもある程度の強度が得られるようにC含有量の下限を0.01質量%に設定した。しかし、Cは焼入れ性に対して最も大きな影響を与え、溶接部の加工性を劣化させ、割れの発生原因にもなる。延性および溶接部の靭性の面から、上限値は0.20質量%とした。
高強度化に有効な合金成分であり、0.05質量%以上でSiの添加効果がみられる。しかし、Si含有量が1.5質量%を超えると、強度が上昇するものの、冷間加工性や表面性状が劣化しやすい。
Mn:2.5質量%以下
強度改善に寄与する合金成分であり、Mn含有量が多くなるほど鋼材の強度改善効果は大きい。しかし、2.5質量%を超える過剰量のMnが含まれると、溶接性が著しく劣化する。さらに、Mnは焼入れ性を向上させる元素であり、C当量を増大させて溶接部の加工性を劣化させ、割れの原因にもなる。
高強度化に有効な合金元素である。しかし、0.05質量%を超えて含有させると低温靭性が低下する。
S:0.02質量%以下
Sは熱間加工性,冷間加工性に有害な成分であることから、可能な限りその含有量を低減することが好ましい。通常不可避的に含有されるS:0.02質量%以下であれば、S起因の悪影響は現れず、問題はない。
Alは、製鋼段階で脱酸剤として添加される合金成分である。十分な脱酸効果を得るためには、酸可溶Alとして0.005質量%以上の添加が必要である。Al添加による脱酸効果は0.10質量%で飽和し、それ以上にAlを添加しても却って鋼材コストの上昇を招く。
Tiは本発明における特徴的な合金成分である。C,SおよびNと化合して析出物を形成し、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。さらにこれらの析出物により溶接熱影響部の加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出により熱影響部の軟化が防止できる。Tiの添加効果は0.01質量%以上でみられるが、0.15質量%を超える量のTiを添加しても、Tiの添加効果が飽和し、却って製造コストの上昇を招く。
NbはTiと同様にCと化合して析出物を形成し、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。また鋼板の金属組織を微細化して強度を向上させる。さらに溶接部においては、Tiの効果と同様に、析出物により溶接熱影響部の加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出により熱影響部の軟化が防止できる。Nbの添加効果は0.01質量%以上でみられ、Nb含有量が多くなるほど高強度化する。しかし、0.15質量%を超えるNbの過剰添加は、加工性に悪影響を及ぼす。
V:0.01〜0.30質量%
Zr,Vは、Nbと同様にCと化合して析出物を形成し、析出強化により鋼板の高強度化に有効な成分である。さらに溶接部においてはTi,Nbの効果と同様に、析出物により溶接熱影響部の加工歪みの回復を抑制するとともに、溶接加熱時の固溶,再析出により熱影響部の軟化が防止できる。それらの効果は0.01質量%に満たないと認められず、0.30質量%を超えると強度は高くなるものの加工性が劣化する。
Cr:0.01〜0.30質量%,
Ni:0.05〜1.00質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、高強度化と溶接部の靭性向上に有効な成分である。Mo,Crの添加効果は0.01質量%以上でみられる。またNiの添加効果は0.05質量%以上でみられる。しかしながら、Mo,Crについては0.30質量%の添加で、Niについては1.00質量%の添加で、それらの効果は飽和する。それ以上の添加は製造コストの低下を招く。特に、Mo,Crは焼入れ性向上元素でもあるので、過剰の添加はC当量を増大させ、溶接部の加工性を劣化させ、割れの原因にもなる。
下記(1)式で定義されるC当量は、溶接熱影響部の軟化抑制に大きな影響を及ぼす。軟化率はC当量が増加するほど小さくなる傾向がある。C当量が0.25質量%に満たないと、溶接熱影響部の軟化が大きくなる。しかし、0.6質量%を超えるほどに増加すると、溶接熱影響部の硬化が著しく、溶接部の加工性が著しく損なわれるばかりでなく、溶接割れの原因にもなる。C当量はC質量%に依存しているが、そのほかに強度向上のために添加したMo,Cr,Mn添加量が多い場合にもC当量は大きくなり、その硬化が強調される。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+1/5Cr+1/4Mo+1/14V+1/40Ni・・・(1)
熱間強度の安定化を図るためAr3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延した後、600℃以下450℃以上の温度域で巻き取り、変態により高強度化させる。仕上げ温度がAr3変態点を下回ると、変態に伴う熱間強度の変動が大きく圧延方向に大きく変動するゲージハンチング,幅絞り等の板厚精度を劣化させる原因になりやすい。巻取り温度が高いほど鋼帯の延性が向上するが、600℃を超える温度域で巻き取ると鉄系炭化物の生成に起因して強度が著しく低下する。巻取り温度の低下に伴って強度は上昇するが、過度に低い450℃未満の温度で巻き取ると変態組織強化による硬質化が進行し、冷間圧延時の板厚設定や冷間圧延後の強度設定が難しくなるほどに加工性が低下する。
冷間圧延では、加工強化によって鋼帯を高強度化するため冷延率を10%以上に設定する。10%に満たないと強度の上昇が小さい。10%以上の冷延率は、板厚精度を確保する上でも有効である。しかし、冷延率の増加に応じて高強度化も進行するが、過度に大きな冷延率は製造コストの上昇を招くので冷延率の上限を75%に設定する。
溶接部の軟化率は、JIS Z3101の「溶接熱影響部の硬さ試験方法」に準じて、冷延鋼板にMIG溶接機にてビードを溶接し、熱影響部の硬さをビッカース硬度計にて測定し、次式により求めた。その結果も併せて表2に示した。
軟化率(%)=〔(冷延後の硬さ−溶接部最軟化点)/冷延後の硬さ〕×100
この電縫鋼管は、各種構造部材として溶接して使用されても、溶接時の熱影響によって溶接熱影響部の軟化を防ぐことが可能である。したがって、足回り部品を始めとした自動車用,自転車用構造部材やその他の補強材等に幅広く使用できる。
Claims (2)
- C:0.01〜0.20質量%,Si:1.5質量%以下,Mn:2.5質量%以下,P:0.05質量%以下,S:0.02質量%以下,酸可溶Al:0.005〜0.10質量%,及び0.01〜0.15質量%のTi,0.01〜0.15質量%のNbの1種又は2種を含有し、残部が実質的にFeの組成をもち、しかも下記(1)式で定義されるC当量を0.25〜0.6質量%に制限した鋼材を連続鋳造し、仕上げ温度:Ar3変態点以上,巻取り温度:600℃以下450℃以上で熱間圧延し、引き続き、酸洗後に冷延率:10〜75%で冷間圧延し、冷間圧延されたままの鋼帯の幅方向両端部を溶接することを特徴とする耐溶接軟化性に優れた構造用高強度電縫鋼管の製造方法。
C当量=C+1/6Mn+1/24Si+1/5Cr+1/4Mo+1/14V+1/40Ni・・・(1) - 鋼材が、さらにZr:0.01〜0.30質量%,V:0.01〜0.30質量%,Mo:0.01〜0.30質量%,Cr:0.01〜0.30質量%,Ni:0.05〜1.00質量%の1種又は2種以上を含むものである請求項1記載の耐溶接軟化性に優れた構造用高強度電縫鋼管の製造方法。
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