JP2002167653A - 加工性と溶接性に優れたステンレス鋼 - Google Patents

加工性と溶接性に優れたステンレス鋼

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JP2002167653A JP2000362530A JP2000362530A JP2002167653A JP 2002167653 A JP2002167653 A JP 2002167653A JP 2000362530 A JP2000362530 A JP 2000362530A JP 2000362530 A JP2000362530 A JP 2000362530A JP 2002167653 A JP2002167653 A JP 2002167653A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高価な合金元素を多量に含有することなく、
また特別なプロセスを使用することもなく、加工性、と
くに延性(伸び)特性と、溶接性に優れたステンレス鋼
を提供する。 【解決手段】 C:0.02%以下、Si:2%以下、Mn:1
%超5%以下、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Cr:
6〜18%、Ni:0.1 〜3%、Al:0.1 %以下、N:0.02
%以下、V:0.03〜0.3 %を含み、残部Feおよび不可避
的不純物からなり、C+N:0.025 %以下、γP 値=42
0C+470N+23Ni+9Cu+7Mn-11.5Cr-11.5Si-12Mo-23V-47Nb-
49Ti-52Al+189 で定義されるγP 値が50以上70以下を満
足する組成とする。Mo:3%以下、Cu:0.2 %以下のう
ちの1種または2種および/またはTi:1%以下、Nb:
1%以下のうちの1種または2種および/またはB:0.
0003〜0.003 %を含有してもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ステンレス鋼に係
り、とくに加工性と溶接性の改善に関する。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼は、表面が美麗で耐食性に
優れているため、建築物の外装材、厨房器具、化学プラ
ント等の幅広い分野で使用されてきた。とくに、オース
テナイト系ステンレス鋼は、延性に優れ、リジングの発
生もなくプレス成形性に優れていることから、幅広い用
途に使用されてきた。
【0003】一方、フェライト系ステンレス鋼は、加工
性、とくに延性(伸び)の面でオーステナイト系ステン
レス鋼には及ばないものの、特に安価であること、応力
腐食割れがないこと、オーステナイト系ステンレス鋼と
比べて熱膨張係数が小さいこと、また、オーステナイト
系ステンレス鋼と比べて熱伝導率が1.6 倍程度あるこ
と、高温酸化時にスケール剥離しにくいことなどの特徴
を有し、これらの特徴を活用できる用途に多く使用され
てきた。このようなフェライト系ステンレス鋼として、
SUH 409L、SUS 430LX が開発されている。SUH 409L鋼
は、11%Cr−0.2 %Ti系で、SUS 430LX 鋼は17%Cr−0.
3 %Ti系であり、要求される耐食性、耐熱性のレベルに
応じ使い分けられている。
【0004】しかしながら、最近では、部品形状の複雑
化あるいは一体成形化のニーズが高く、SUH 409L鋼、SU
S 430LX 鋼に代表されるフェライト系ステンレス鋼に対
しても、更なる加工性の向上、とくに延性(伸び)特性
の向上が要望されている。このような要望に対し、例え
ば、特公平4-35551号公報には、耐食性、加工性及び溶
接特性のすぐれたステンレス鋼が提案されている。特公
平4-35551号公報に記載された技術では、ステンレス鋼
の成分組成を、Cr:11.5〜15%を含み、C、P、S、O
を低減し、Si:2.0 %以下、Mn:0.5 %以下、Ni:1%
以下、Al:0.2 %以下、N:0.05%以下に調整して含有
するとともに、Cr+100 (C+P)≦18%を満足し、か
つCastroによる式、γp = 420C+ 470N+23Ni+ 9Cu
+ 7Mn−11.5Cr−11.5Si−12Mo−23V−47Nb−49Ti−52
Al+189 によって定義されるγポテンシャルγp が15%
以上を満足する成分組成としている。特公平4-35551号
公報に記載された技術では、γp を15%以上とすること
により、オーステナイト(γ)相がある量以上存在する
ようになり、変態が十分進み、リジング性、深絞り性を
良好にするとしている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特公平
4-35551号公報に記載された鋼でさえ、近年の加工には
耐えられない場合が多く、母材の伸び増加や、溶接部を
含む加工性の向上が強く求められていた。本発明は、上
記した従来技術の問題を解決し、高価な合金元素を多量
に含有することなく、また特別なプロセスを使用するこ
ともなく、加工性と溶接性に優れたステンレス鋼を提供
することを目的とする。なお本発明は、加工性、とくに
延性(伸び)特性および溶接部の加工性の改善を目的と
する。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記した
課題を達成すべく、加工性、とくに伸び特性に及ぼす種
々の合金元素および組織の影響について詳細に研究し
た。その結果、高温でオーステナイト(γ)相を適量生
成する成分系としたうえで、Vを適正量含有することに
より、伸び特性を著しく改善できることを見出した。
【0007】高温でのγ相の生成程度を示す指標として
は、Castroの式、すなわち、次(1)式 γP 値= 420C+ 470N+23Ni+ 9Cu+ 7Mn−11.5Cr−11.5Si−12Mo−23V −47Nb−49Ti−52Al+189 ………(1) (ここで、C、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、Nb、
Ti、Al:各合金元素の含有量(質量%))で定義される
γポテンシャル(γP 値)がよく知られているが、本発
明者らは、このγP 値を利用して、高温で生成するγ量
を包括的に整理し、このγP 値が50以上となるように各
合金元素量を調整するとともに、Vを0.03〜0.3 質量%
含有することにより、伸び特性が顕著に改善されるとい
う知見を得た。
【0008】また、本発明者らは、溶接部を含む加工性
が、Vを含有したうえで、γP 値を50以上70以下に調整
し、さらにC+N量を所定レベル以下に低減した組成に
することにより、溶接時に生成するマルテンサイト量が
低減し、また、マルテンサイト相が軟質化し、実用上問
題なく加工できるレベルにまで、溶接部を含む加工性が
向上することを見いだした。
【0009】つぎに、本発明者らが行った基礎的な実験
について説明する。11質量%Cr系ステンレス鋼をベース
として、合金元素量を種々変化しγP 値を10〜100 の範
囲で調整した冷延焼鈍板(板厚:2mm)について、引張
試験を実施し、伸びElを求めた。伸びElとγP 値との関
係を図1に示す。図1から、Vを0.1 質量%含有する鋼
板では、γP 値が50以上の範囲で伸びElが顕著に増加す
ることがわかる。一方、V無添加の鋼板では、γP 値の
増加に伴う伸びElの増加は比較的少ない。
【0010】この機構については、まだ明確には解明さ
れていないが、γP 値が高い組成の鋼では、熱延時にγ
相が生成しやすく、そのγ相中にC、Nが濃化する。そ
のために周囲のα相は、高純度化し、その際、鋼板中に
Vが含まれると、V(C,N)を生成し、より高純度化したα
相となる。このような(α+γ)2相組織では、主とし
てより高純度化したα相に熱延歪が集中し、熱延時に発
生しやすいバンド組織が破壊されやすくなり、伸びElが
増加するものと推察される。また、本発明者らは、この
ような伸びElに及ぼすγP 値の影響は、Cr量によらず同
様であることも見いだしている。
【0011】また、11質量%Cr系ステンレス鋼をベース
として、C+Nを0.025 %以下とし、さらに合金元素量
を種々変化しγP 値を10〜100 の範囲で調整した冷延焼
鈍板(板厚:2mm)を、曲げ成形しオープン管としたの
ち、エッジ部を電縫溶接し、外径:42.7mmφの電縫鋼管
とした。これら電縫鋼管について、図3に示す要領で、
温度:0℃で密着加工するパイプ偏平試験を実施し、シ
ーム部の割れ発生の有無を目視で調査した。密着加工を
同一電縫鋼管につき各10本実施し、割れ率(=(割れ本
数)×100 /10(%))により、各電縫鋼管溶接部の加
工性を評価した。割れ率とγP 値との関係を図2に示
す。
【0012】図1で示したように、γP 値が50以上であ
ると、V添加鋼は高い伸びElが得られるが、一方、図2
に示すようにγP 値が70超であると、溶接部の加工性が
低下する。これは、γP 値が高いと溶接に際し鋼板が高
温に加熱され、鋼板中にγ相が多量に存在するため、冷
却時に、多量のマルテンサイト相が生成し、溶接部が硬
化するためである。C+N量を0.025 %以下という低レ
ベルの条件のもとでは、生成するマルテンサイト自身の
硬さが低下して溶接部が軟質化し、さらにγP値を70以
下に調整することにより、生成するマルテンサイト量を
低く制御でき、実用上問題なく加工できるレベルにま
で、溶接部の加工性を向上することができることがわか
る。
【0013】本発明は、上記した知見に基づき、さらに
検討を加えて完成されたものであり、高価な合金元素を
含有せずに、さらに、特別なプロセスを経ることなく、
優れた加工性と溶接性を確保できるステンレス鋼であ
る。すなわち、本発明は、質量%で、C:0.02%以下、
Si:2%以下、Mn:1%超5%以下、P:0.05%以下、
S:0.02%以下、Cr:6%以上18%以下、Ni:0.1%以
上3%以下、Al:0.1 %以下、N:0.02%以下、V:0.
03%以上0.3 %以下を含み、残部Feおよび不可避的不純
物からなり、C+N:0.025 %以下でかつ次(1)式 γP 値= 420C+ 470N+23Ni+ 9Cu+ 7Mn−11.5Cr−11.5Si−12Mo−23V −47Nb−49Ti−52Al+189 ………(1) (ここで、C、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、Nb、
Ti、Al:各合金元素の含有量(質量%))で定義される
γP 値が50以上70以下を満足する組成を有することを特
徴とする加工性と溶接性に優れたステンレス鋼である。
また、本発明では、前記組成に加えてさらに、質量%
で、Mo:3%以下、Cu:0.2 %以下のうちの1種または
2種を含有することが好ましく、また、Ti:1%以下、
Nb:1%以下のうちの1種または2種を含有することが
好ましく、さらに、本発明では、前記各組成に加えてさ
らに、質量%で、B:0.0003%以上0.005 %以下を含有
することが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】まず、本発明鋼の組成限定理由に
ついて説明する。なお、以下、質量%は単に%で記す。 C:0.02%以下 Cは、鋼の強度を増加させる元素であり、強度の増加に
ともない延性、加工性が低下する。本発明では、とくに
溶接部の加工性を確保するため、Cは0.02%以下に限定
する。なお、好ましくは、0.005 %以下である。
【0015】N:0.02%以下 Nも、Cと同様に鋼の強度を増加させ、延性、加工性を
低下させる元素であり、できるだけ低減するのが好まし
く、本発明ではとくに溶接部の加工性を確保するため、
Nは0.02%以下に限定する。なお、好ましくは、0.005
%以下である。 C+N:0.025 %以下 本発明では、上記したC、Nの範囲にしたうえさらに、
C、Nの合計量を0.025 %以下に限定する。C+N量が
0.025 %を超えると、C、Nが上記した範囲内であって
も、溶接時に形成されるマルテンサイトの硬さが高くな
り、溶接部の加工性が顕著に劣化する。
【0016】Si:2%以下 Siは、脱酸剤として作用し、製鋼上必要な元素である
が、熱延時に生成するγ相を著しく低減する作用を有
し、伸び特性を顕著に低下させるため、Siは2%以下に
限定する。なお、好ましくは0.3 %以下であり、より好
ましくは0.1 %以下である。
【0017】Mn:1%超5%以下 Mnは、母材の靱性を向上させ、さらには耐酸化性を向上
させる作用を有する元素であり、また、Mnはオーステナ
イト安定化元素であり、γ量を調整するためにも適正量
以上含有するのが好ましい。上記した効果を確保するた
め、本発明では1%超え含有する。Mn含有量が1%以下
では、形成するγ相の量が十分でなく、一方、5%を超
えると母材の靱性が低下する。このため、Mnは1%超え
5%以下に限定する。なお、好ましくは、1.3 %以上2.
5 %以下である。
【0018】P:0.05%以下 Pは、鋼の強度を増加する元素であり、加工性を低下さ
せるため、できるだけ低減するのが望ましい。しかし、
極端な低減は精錬コストの増加を招き、経済的に不利と
なる。このため本発明では、Pは0.05%以下に限定し
た。なお、好ましくは、0.025 %以下である。
【0019】S:0.02%以下 Sは、鋼中では介在物として存在し、耐食性を低下させ
るため、耐食性向上の観点からはできるだけ低減するこ
とが望ましい。しかし、極端な低減は精錬コストの増加
を招き、経済的に不利となる。このため本発明では、S
は0.02%以下に限定した。なお、好ましくは、0.003 %
以下である。
【0020】Cr:6%以上18%以下 Crは、耐食性を向上させる元素であり、6%以上含有す
ることにより顕著に耐食性が向上する。一方、18%を超
える含有は、他元素含有量の調整によっても、γP 値を
所定の範囲内にすることが困難となる。このようなこと
から、Crは6〜18%に限定する。なお、好ましくは、11
〜16%である。さらに好ましくは、13.5%超15%以下で
ある。
【0021】Ni:0.1 %以上3%以下 Niは、オーステナイト安定化元素であり、γP 値を所定
の範囲内に調整するために有効であり、本発明では積極
的に含有させる。また、Niは靱性向上に有効に作用する
元素である。このような効果は、0.1 %以上の含有で顕
著となるが、3%を超える過剰の含有は、鋼を硬化さ
せ、加工性を低下させる。このため、Niは0.1 〜3%に
限定した。
【0022】Al:0.1 %以下 Alは、脱酸剤として作用し、製鋼上、0.005 %以上の含
有が望ましいが、過剰の含有は介在物の形成を促進し靱
性が劣化する傾向を示すため、本発明ではAlは0.1 %以
下に限定した。なお、Al脱酸を行わない場合、0.002 %
程度しか含有されないが、とくに問題はない。
【0023】V:0.03%以上0.3 %以下 Vは、本発明において、重要な元素であり、冷延板の伸
び特性の向上のため、0.03%以上の含有を必要とする。
単に、γP 値を所定値以上に調整し、熱延時にγ相を生
成させるだけでは、冷延板の伸びの向上は少なく、0.03
%以上のVを含有することが、伸び特性の向上の観点か
ら重要になる。一方、0.3 %を超える過剰の含有は、粗
大なVNを生成し、靱性を劣化させる。このため、Vは0.
03〜0.3%の範囲に限定した。なお、好ましくは0.07〜
0.15%である。
【0024】Mo:3%以下、Cu:0.2 %以下のうちの1
種または2種 Mo、Cuはいずれも耐食性向上に有効な元素であり、必要
に応じ含有できる。Moは、耐食性改善に有効な元素であ
り、本発明では耐食性向上の観点から、0.5 %以上、よ
り好ましくは1%以上含有するのが望ましい。一方、3
%を超える含有は、鋼を脆化させるため、Moは3%以下
に限定するのが好ましい。なお、Moは、フェライト生成
元素であり、γポテンシャルへの影響は、Crと同程度で
あるが、耐食性への寄与はCrより大きいため、Moを積極
的に活用する成分系とするのが望ましい。
【0025】Cuは、耐食性の向上に有効に作用するとと
もに、高温でのγ相を安定化する元素であり、安価にγ
P 値を調整できるが、0.2 %を超えて含有すると鋼の熱
間加工性を劣化させる。このため、Cuは添加する場合は
0.2 %未満に限定するのが望ましい。 Ti:1%以下、Nb:1%以下のうちの1種または2種 Ti、Nbは、いずれも溶接部の粒界腐食性を向上させる作
用を有し、必要に応じ選択して含有できる。本発明鋼
は、溶接時に一部マルテンサイトを生成する成分系であ
るため、粒界でのCr炭窒化の析出に起因する耐食性の劣
化は小さいものの、粒界での耐食性を特に向上させたい
場合には、Tiおよび/またはNbの含有は有効である。こ
のような効果は、Ti、Nbとも0.05%以上の含有で顕著と
なる。一方、Ti、Nbとも、1%を超える多量の含有は、
加工性の劣化が顕著となる。このため、Ti:1%以下、
Nb:1%以下に限定するのが好ましい。なお、より好ま
しくは、Ti、Nbとも0.5 %以下、さらに好ましくは、T
i、Nbとも0.3 %以下である。なお、0.15%以下でも、
粒界腐食性向上効果は大きい。
【0026】B:0.0003%以上0.005 %以下 Bは、粒界に偏析し、二次加工性を向上させる作用を有
し、本発明では必要に応じ含有できる。このような効果
は、0.0003%以上の含有で認められる。一方、0.005 %
を超えて含有すると、加工性が低下する。このため、B
は0.0003〜0.005 %の範囲に限定するのが好ましい。な
お、より好ましくは、0.0005〜0.0015%である。
【0027】上記した成分以外の残部は、Feおよび不可
避的不純物である。上記した成分範囲にしたうえ、さら
に次(1)式 γP 値= 420C+ 470N+23Ni+ 9Cu+ 7Mn−11.5Cr−11.5Si−12Mo−23V −47Nb−49Ti−52Al+189 ………(1) (ここで、C、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、Nb、
Ti、Al:各合金元素の含有量(質量%))で定義される
γP 値が50以上70以下を満足するように各成分の含有量
を調整する。なお、(1)式を用いてγP 値を計算する
場合に、含有まれない元素については0として計算する
ものとする。
【0028】本発明では、γP 値、すなわちγポテンシ
ャルは、特に重要なパラメーターである。このγP 値が
大きいほど、高温でγ相が生成しやすくなる。Cr、Si、
Mo、V、Nb、Ti、Alは、いわゆるフェライト生成元素で
あり、高温でγ相の生成を抑制する。これら元素以外
の、C、N、Ni、Cu、Mnは、オーステナイト安定化元素
であり、高温でγ相の生成を促進する。(1)式で定義
されるγP 値を50以上とすることにより、V含有鋼では
高温でのγ相の生成が促進され、その結果冷延板の伸び
特性が著しく向上する。一方、γP 値が70を超えると、
溶接時にマルテンサイト相が多量に生成し、溶接部を含
む加工が困難となり、加工性の劣化が顕著となる。な
お、好ましくは、γP 値は60以上70以下である。
【0029】つぎに、本発明鋼の好ましい製造方法につ
いて説明する。なお、本発明鋼の製造方法はこれに限定
されるものではなく、ステンレス鋼等Cr含有鋼で一般に
採用されている通常公知の製造方法がいずれも適用可能
である。転炉、電気炉等の通常の精錬炉で、所定の組成
に調整された溶鋼は、連続鋳造法によりスラブ等圧延用
素材とされる。ついで、得られた圧延用素材は、必要に
応じて所定温度に加熱され、次いで熱間圧延により所望
の板厚の熱延板とされる。これら熱延板は、焼鈍、酸洗
して使用に供することができる。また、熱延板を焼鈍せ
ずに直接酸洗して使用に供することもできる。なお、熱
延板の焼鈍は、バッチタイプでも、連続焼鈍でも問題な
い。
【0030】また、熱延板は、酸洗後、冷間圧延を施さ
れ所定の板厚の冷延板とされ、さらに、焼鈍、酸洗を施
されて、使用に供することもできる。なお、冷延板の焼
鈍は、700 〜1100℃の連続焼鈍とするのが好ましい。な
お、本発明鋼は、鋼板、鋼帯に限定されることなく、パ
イプ等にも適用できることはいうまでもない。また、冷
延板にかぎらず、熱延板としても使用可能である。
【0031】また、本発明鋼を適用した鋼板等に、必要
に応じて、塗装あるいはめっきを施すことができる。塗
装あるいはめっきを施せば、さらに耐食性が向上するこ
とは言うまでもない。
【0032】
【実施例】以下、実施例に基づき、本発明をより具体的
に説明する。表1に示す組成を有する溶鋼を真空溶解炉
で溶製し、50kg鋼塊とした。これら鋼塊を、通常の熱間
圧延により、板厚:5mmの熱延板とした。ついで、熱延
板に、熱延板焼鈍と酸洗を施したのち、冷間圧延により
冷延板とし、ついで冷延板焼鈍を施し、板厚:2mmの冷
延焼鈍板とした。
【0033】これら冷延焼鈍板について、加工性および
溶接性を調査した。加工性、溶接性の試験方法は、下記
の通りとした。なお、従来例として、SUH409L 鋼(鋼N
o.14)、SUS430LX鋼(鋼No.15 )、SUS436鋼(鋼No.16
)、SUS429鋼(鋼No.17 )についても同様に調査し
た。 (1)加工性試験 各冷延焼鈍板から、引張方向が圧延方向(L方向)とな
るように、JIS 13号B試験片を採取した。これら試験片
を用いて、引張試験を実施し、伸びElを測定し、加工性
の指標とした。 (2)溶接性試験 各冷延焼鈍板を、通常の高周波溶接により接合して、溶
接鋼管(電縫管)とした。これら溶接鋼管を、図3に示
すような位置にセットし密着まで変形する密着加工を施
すパイプ偏平試験を行った。なお、試験は、溶接鋼管を
0℃に保持して実施した。
【0034】試験後、溶接鋼管の溶接シーム部の割れ発
生の有無を目視で調査した。パイプ偏平試験は、各冷延
焼鈍板について、10本ずつ行い、割れ率(%)(=(割
れ本数)×100 /10)を算出した。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】本発明例は、いずれもCr含有量が同程度で
ある既存の高加工性ステンレス鋼(従来例、鋼板No.14
〜No.17 )に比較して、著しく伸び特性に優れ、また、
溶接性(溶接部加工性)に優れている。なお、本発明例
の耐熱性、耐食性は、既存の高加工性ステンレス鋼(従
来例)と同等であり、従来から知られているように、Cr
とMoの含有量によって耐食性と耐熱性が決定されること
を確認している。
【0038】これに対し、本発明の範囲を外れる比較例
は、伸び特性、あるいは溶接性(溶接部加工性)のいず
れかまたは両方が劣化している。既存の高加工性ステン
レス鋼である従来例の、鋼板No.14 、No.15 、No.16 、
No.17 は、同程度のCrを含有する本発明例と比較し、γ
P 値が小さく、伸びが劣化している。また、γP 値が本
発明の範囲を高く外れる、鋼板No.18 、No、19は、パイ
プ偏平試験での割れ率が高く、溶接部加工性が劣化して
いる。C含有量が高くC+N量が本発明の範囲を高く外
れる、鋼板No.20 は、パイプ偏平試験での割れ率が高
く、溶接部加工性が劣化している。N含有量、C+N量
が本発明の範囲を高く外れる、鋼板No.21 は、パイプ偏
平試験での割れ率が高く、溶接部加工性が劣化してい
る。Mn含有量が本発明の範囲を高く外れる、鋼板No.22
は、伸び特性および溶接性(溶接部加工性)が劣化して
いる。また、V含有量が本発明の範囲を高く外れる、鋼
板No.23 、No.24 は、伸び特性が劣化している。
【0039】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、同じCr
レベルの従来鋼、例えば、11%Cr系のSUH409L 鋼、17%
Cr系のSUS430LXに比べ、伸び特性が著しく向上し、特に
加工性が要求される分野、例えば、自動車排気系材料、
自動車足回り関係部材、自動車モール材料、耐食性と加
工性がとくに必要なガソリンタンクやその周辺の燃料パ
イプ等の燃料系部品あるいは発電設備の排気ダクト材、
厨房用材料等の使途にも適用可能となり、用途の拡大と
なり産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】11%Cr系鋼の伸び特性とγP 値との関係におよ
ぼすV含有の影響を示すグラフである。
【図2】11%Cr系鋼の溶接部加工性(割れ率)とγP
との関係を示すグラフである。
【図3】溶接部加工性を評価するパイプ偏平試験方法の
概要を示す説明図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 古君 修 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で、 C:0.02%以下、 Si:2%以下、 Mn:1%超5%以下、 P:0.05%以下、 S:0.02%以下、 Cr:6%以上18%以下、 Ni:0.1 %以上3%以下、 Al:0.1 %以下、 N:0.02%以下、 V:0.03%以上0.3 %以下 を含み、残部Feおよび不可避的不純物からなり、C+
    N:0.025 %以下で、かつ下記(1)式で定義されるγ
    P 値が50以上70以下を満足する組成を有することを特徴
    とする加工性と溶接性に優れたステンレス鋼。 記 γP 値= 420C+ 470N+23Ni+ 9Cu+ 7Mn−11.5Cr−11.5Si−12Mo−23V −47Nb−49Ti−52Al+189 ………(1) ここで、C、N、Ni、Cu、Mn、Cr、Si、Mo、V、Nb、T
    i、Al:各合金元素の含有量(質量%)
  2. 【請求項2】 前記組成に加えてさらに、質量%で、M
    o:3%以下、Cu:0.2 %以下のうちから選ばれた1種
    または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載
    のステンレス鋼。
  3. 【請求項3】 前記組成に加えてさらに、質量%で、T
    i:1%以下、Nb:1%以下のうちから選ばれた1種ま
    たは2種を含有することを特徴とする請求項1または2
    に記載のステンレス鋼。
  4. 【請求項4】 前記組成に加えてさらに、質量%で、
    B:0.0003%以上0.005 %以下を含有することを特徴と
    する請求項1ないし3のいずれかに記載のステンレス
    鋼。
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