JP7262176B2 - フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板および鋼管 - Google Patents

フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板および鋼管 Download PDF

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Description

本発明は、フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板および鋼管に関し、特に曲げ疲労における板厚方向への疲労亀裂進展を抑制し、疲労特性を高めたフェライト相とオーステナイト相から成る2相ステンレス鋼板に関するものである。
フェライト相とオーステナイト相から成る2相ステンレス鋼板は、耐食性に優れ、かつ微細組織であるため強度にも優れていることから、化学プラントなど広範囲に使用されている。近年では、高価な合金元素の含有量を低減させた省合金2相ステンレス鋼板が種々開発されており、家電、各種構造物、自動車、二輪車および鉄道等の輸送機器への適用も進められている。
従来の代表的な2相ステンレス鋼は、SUS329J4L(25%Cr-7%Ni-3%Mo-0.1%N)に代表される高Ni、Mo含有であったが、最近ではNi量を低減したり、Moを含有しない省合金フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼が開発され、上記のような種々の分野に適用されつつある。この様な省Ni、Mo含有鋼は、MnやNを添加することでオーステナイト量の調整や耐食性の確保が成されており、SUS304(18%Cr-8%Ni)やSUS316(18%Cr-10%Ni-2%Mo)の代替としても期待されている。
一方、ステンレス鋼板を各種用途に適用する際には加工性や疲労特性が重要となる。例えば、自動車の足回り部品や配管部品等に適用する際、複雑形状に成型されるとともに、搭載後の部品には種々の振動が生じるため、部品素材である鋼板には疲労強度が高いことが望まれる。
特許文献1には、成分の他に形状アスペクトやオーステナイト粒の面積率等を所定の範囲にすることで成形性を向上させたフェライト・オーステナイト系ステンレス鋼板の技術が開示されている。
特許文献2には、オーステナイト相の面積率を所定の範囲にすることで耐食性と靭性を向上させた二相ステンレス鋼板が開示されている。
特許文献3~5には、オーステナイト相の面積率の他、集合組織や粒径を規定することで成形性に優れた2相ステンレス鋼板を得る技術が開示されている。
特許第6140856号公報 特許第5345070号公報 特許第5869922号公報 特開2017-88945号公報 特開2013-185231号公報
材料、第35巻Vol.51、第393号 (1986) pp.610.
省合金2相ステンレス鋼板の疲労特性に関する技術は少ないものの、フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板は、非特許文献1に記載されている様に、疲労特性に極めて優れていることが知られている。これは2相ステンレス鋼板がフェライト相とオーステナイト相の2相であるため、単相材に比べて組織が微細であるとともに、亀裂伝播が異相界面で停滞するためと考えられている。しかしながら、疲労亀裂伝播を抑制するための具体的な方法に関する開示は未だなく、特に、省合金2相ステンレス鋼板の疲労特性のさらなる向上が望まれていた。
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、高価な合金元素に頼ることなく、曲げ疲労特性を安定的に向上させることが可能なフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板および鋼管を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明者らはフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板の微細組織と疲労亀裂伝播に関して詳細に調査した。そして、かかる課題を解決すべく種々の検討を重ねた結果、以下の知見を得た。
従来の知見によれば、フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板では、異相界面での亀裂伝播の停滞によって疲労特性が向上すると考えられてきた。そこで本発明者らは,フェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板の疲労特性に対しては、鋼成分の設計だけでは十分ではなく、組織分率や組織形態などの要素が重要となってくると推察し、これら要素と疲労亀裂の伝播挙動、特に板厚方向の伝播挙動の関係について調査した。その結果、省合金のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板(以下、省合金2相ステンレス鋼、とも称する。)においては、第二相であるオーステナイト相の相率とともに組織形態を規定することにより、より高い曲げ疲労特性が得られる事を知見した。具体的には、オーステナイト相のアスペクト比率に着目し、アスペクト比を1.1以上にすることによって、高価な合金元素に依らずとも板厚方向に進展する疲労亀裂を停滞させるものである。
ここで本発明の目標としている疲労特性は、曲げ疲労であり、板厚方向に曲げモーメントが作用する疲労である。この場合、疲労亀裂は鋼板表面で発生し、板厚方向に亀裂が伝播する。そこで本発明者らが省合金2相ステンレス鋼の疲労亀裂の伝播挙動について調査したところ、疲労亀裂は主としてフェライト相を伝播することを新たに知見した。これは、オーステナイト相に比べてフェライト相の方が軟質であるためと推定される。さらに、フェライト相から生じた疲労亀裂は板厚方向に伝播した後、オーステナイト相との界面(異相界面)に到達するが、オーステナイト相は比較的硬質であるため亀裂はこの異相界面にて停滞した後に、界面を伝播する。しかしこのときオーステナイト相の結晶粒のアスペクト比が小さい場合、亀裂は界面を伝播した後直ぐにフェライト相に亀裂伝播し、板厚方向の亀裂進展が加速してしまう。一方、オーステナイト相の結晶粒のアスペクト比率が大きい場合、亀裂の界面伝播が継続的に進行し、板厚方向への亀裂伝播を抑制することができる。
ここで、オーステナイト相の結晶粒のアスペクト比は、オーステナイト相の結晶粒の長軸長さXと、Xの測定方向に直交する方向の短軸長さYの比率(X/Y)であり、具体的には圧延方向に平行な板厚断面(L断面)の組織から算出される。
本発明は上記知見に基づいて完成したもので、その発明の要旨は、次の通りのものである。
[1]質量%にて、
C:0.001~0.05%、
Si:0.01~1.0%、
Mn:2.0~5.0%、
P:0.05%以下、
S:0.0050%以下、
Ni:0.5~6.0%、
Cr:16.0~25.0%、
Mo:0.1~3.5%、
Cu:0.1~2.0%、
N:0.10~0.30%、
B:0.0005~0.0100%、
Al:0.01~0.50%、
Ti:0~0.30%、
Nb:0~0.30%、
Zr:0~0.30%、
Sn:0~0.50%、
W:0~2.0%、
Mg:0~0.0100%、
Ca:0~0.0100%、
Sb:0~0.50%、
Ta:0~0.30%、
Hf:0~0.30%、
Co:0~0.35%、
REM:0~0.05%、
Ga:0~0.1000%
を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
オーステナイト相の面積率が40~80%であり、
圧延方向に対して平行、かつ鋼板表面に対して直角な断面におけるオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が1.1以上であり、
鋼板表面から深さ100nmまでの領域である鋼板表層部の窒素濃度が0.10~1.00%であり、
光輝焼鈍材であることを特徴とするフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
[2]さらに、質量%にて、Ti:0.005~0.30%、Nb:0.005~0.30%、Zr:0.005~0.30%、Sn:0.005~0.50%、W:0.01~2.0%、Mg:0.0002~0.0100%、Ca:0.0002~0.0100%、Sb:0.005~0.50%、Ta:0.005~0.30%、Hf:0.005~0.30%、Co:0.01~0.35%、REM:0.001~0.05%、Ga:0.0002~0.1000%の1種または2種以上を含有することを特徴とする上記[1]に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
[3]疲労限が350MPa以上であることを特徴とする上記[1]または[2]のいずれかに記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
[4]自動車あるいは二輪車部品に使用されることを特徴とする上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
[5]上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板を用いたフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼管。
[6]自動車あるいは二輪車部品に使用されることを特徴とする上記[5]に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼管。
本発明によれば、高価な合金元素に頼ることなく、曲げ疲労特性を安定的に向上させることが可能なフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板および鋼管を提供することができる。
オーステナイト相結晶粒のアスペクト比と平面曲げ疲労試験における疲労限の関係を示す図である。
以下、本発明のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板の一実施形態について詳細に説明する。
まず、化学成分の限定理由を以下に説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
Cは、0.05%超となると成形性と耐食性を著しく劣化させるため、上限を0.05%以下とする。しかしながら、Cはオーステナイト相を安定的に生成させ、硬質なオーステナイト相による疲労亀裂進展の抑制に有効であるため、0.001%以上含有させることが必要である。更に、精錬コスト、溶接部の鋭敏化抑制を考慮すると0.015%以上、0.03%以下が望ましい。
Siは、脱酸剤としても有用な元素であり、固溶強化による高疲労強度化につながるが、1.0%超含有させると熱間加工性が劣化し、製造性が劣化するため、1.0%以下とする。一方、脱酸のためには0.01%以上含有させることが必要なことから、下限を0.01%以上とする。更に、精錬コスト、耐酸化性、耐食性を考慮すると、0.3%以上、0.8%以下が望ましい。
Mnは、脱酸剤として含有される元素であるとともに、Niに代わりオーステナイト相を安定的に生成させる元素である。本実施形態ではオーステナイト相率を確保するために2.0%以上含有させる。しかし、過度に含有させるとオーステナイト相が軟化して亀裂進展の抑制効果が低下してしまうため上限を5.0%以下とする。更に、耐酸化性や製造時の酸洗性を考慮すると、2.5%以上、4.5%以下が望ましい。
Pは、不純物元素である上、製造時の熱間加工性を劣化させるため、上限を0.05%以下と制限する。但し、過度の低減は精錬コストの増加につながる他、リン化物形成による亀裂発生を考慮すると、0.02%以上、0.04%以下が望ましい。
Sは、P同様に不純物元素であるため、上限を0.0050%以下に制限する。Sは少なければ少ないほど望ましいため、下限は限定しないが、精錬コストの観点から0.0001%以上としてもよい。
Niは、オーステナイト相を安定的に生成させる元素であり、0.1%以上を下限とする。一方、6.0%超の含有によりコスト高になる他、オーステナイト相の結晶が球状化する傾向になりアスペクト比が小さくなることから上限を6.0%以下とする。望ましくは3.0%以下である。但し、過度な低減は耐食性の劣化につながる場合がある他、応力腐食割れの観点から0.5%以上、2.0%以下がさらに望ましい。
Crは、耐食性や耐酸化性を確保するために16、0%以上含有する。一方、多量に含有させると合金コストの増加につながる他、オーステナイト相率やアスペクト比の確保が困難になるため、上限を25.0%以下とする。更に、靭性等の製造性やすき間腐食性を考慮すると、19.0%以上、22.0%以下が望ましい。
Nは、2相ステンレス鋼の耐食性や強度を向上させるとともに、オーステナイトを安定的に生成させるため、本実施形態のように低Niによる省合金化を図る2相ステンレス鋼には特に有用な元素である。そのため、本実施形態では0.005%以上含有させる。しかし、含有量が0.30%以上となるとオーステナイト相率が過度に多くなり、さらにそのアスペクト比が小さくなるおそれがあるため、上限を0.30%以下とする。また、精錬コストや延性を考慮すると、0.01%以上、0.25%以下が望ましい。更に、製造性や高温強度を考慮すると、0.05%以上、0.20%以下がより望ましい。
Moは、耐食性や高温強度向上に寄与する元素であるとともに、フェライト相生成元素であるため、オーステナイト相率の調整のために0.1以上含有する。また、Moは偏析元素でもある。そこで本発明者らがMo偏析と疲労特性の関係を調査したところ、Moはフェライト/オーステナイト相界面に濃化し、オーステナイト相のアスペクト比の低減、すなわち球状化を抑制しつつ、疲労亀裂伝播を抑制する効果と有することを見出した。しかし、Moを過剰に含有させることは合金コストの増大を招く上、疲労亀裂伝播の抑制効果は3.5%以下で発現することから、上限を3.5%以下とする。合金コストや製造性を考慮すると、0.5%以下が望ましい。
Cuは、耐食性に寄与する元素であり、オーステナイト相生成元素であるため、オーステナイト相率の調整のために0.1以上含有する。また、CuはMoと同様に、偏析元素であり、フェライト/オーステナイト相界面に濃化し、オーステナイト相のアスペクト比の低減を抑制しつつ、疲労亀裂伝播を抑制する効果を有することを見出した。この効果は2.0%以下で発現することから、上限を2.0%以下とする。但し、精錬コストや熱間加工性や酸洗性を考慮すると、0.5%以上、1.5%以下が望ましい。
Bは、MoやCuと同様に、フェライト/オーステナイト相界面に偏析して疲労亀裂伝播を抑制する効果があることから0.0005%以上含有する。但し、フェライト生成元素である他、過剰に含有させると凝固割れ感受性が高くなることから上限を0.0100%以下とする。更に、粒界腐食性を考慮すると、0.0030%以下が望ましい。
Alは、脱酸剤として活用出来る。さらに耐酸化性や耐食性を向上させる他、適量の含有によって介在物の清浄度を上げて疲労特性を向上させるため、0.01%以上含有する。一方、0.50%超含有させると、耐酸化性や耐食性の向上が飽和するとともに、AlNやAl系酸化物が凝集粗大化して亀裂の起点となるため0.50%以下とする。なお、靭性を考慮すると、0.10%以下が望ましい。
以上説明した元素は、本実施形態に係る2相ステンレス鋼板に含有される基本成分である。本実施形態に係る2相ステンレス鋼板の基本組成は、上記の元素を含み、残部がFe及び不純物からなる化学組成である。しかしながら、本実施形態に係る2相ステンレス鋼板では、上記基本成分に加え(残部のFeの一部の代わりに)、必要に応じて以下の元素から選択される1種もしくは2種以上を含有してもよい。なお以下の元素は必ずしも含有させる必要はないので、その含有量の下限は0%である。これらの選択元素が鋼中に不可避的に(例えば、各選択元素の量の下限未満の量)混入しても、本実施形態における効果を損なわない。
ここで、不純物とは、合金を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料から、または製造工程の種々の要因によって、鋼中に混入する成分であって、本実施形態に係る鋼板の特性に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
Tiは、NとTiNを形成して溶接部および鋳造組織の組織微細化に有効な元素であるとともに耐食性を向上する元素であるため、必要に応じて0.005~0.30%含有することが好ましい。含有量が0.005%未満では、溶接部および鋳造組織の組織微細化に対し効果が発現しない。一方、0.30%超含有させてもその効果は飽和するとともに、粗大TiNが過度に生成し亀裂起点や伝播促進の原因になる。また、過剰に含有させると鋼板の製造工程において表面疵の発生原因となる。なお、合金コストや靭性を考慮すると、0.15%以下が望ましい。
Nbは、Tiと類似の作用があるとともに強度を向上させる元素であり、必要に応じて0.005~0.30%含有することが好ましい。含有量が0.005%未満では、溶接部および鋳造組織の組織微細化に対し効果が発現しない。一方、0.30%超含有させてもその効果は飽和するとともに、NbNが過度に生成し亀裂起点や伝播促進の原因になる。なお、合金コストや靭性を考慮すると、0.15%以下が望ましい。
Zr、TaおよびHfは、TiやNbと類似の作用があるとともに耐酸化性を向上させる元素であり、必要に応じてそれぞれ0.005~0.30%含有することが好ましい。各含有量が0.005%未満では、溶接部および鋳造組織の組織微細化に対し効果がなく、耐酸化性の効果を発現しない。一方、Zr、TaおよびHfの各含有量を0.30%超としても、その効果は飽和するとともに、各窒化物や炭化物が粗大に生成し、亀裂起点や伝播促進の原因になる。なお、合金コストや靭性を考慮すると、Zr、TaおよびHfの各含有量は0.15%以下が望ましい。特に、Zr含有量が0.15%を超えると靱性が低下する傾向にある。
SnやSbは、耐食性を向上させる元素であり、必要に応じてそれぞれ0.005~0.50%含有することが好ましい。各含有量が0.005%未満では、耐食性の向上効果がない。一方、SnおよびSbの各含有量を0.50%超としてもその効果は飽和する。なお、熱間加工性や溶接性を考慮すると、SnおよびSbの各含有量は0.20%以下が望ましい。
Wは、耐食性や耐熱性を向上させる元素であり、必要に応じて0.01~2.0%含有することが好ましい。含有量が0.01%未満では、耐食性や耐熱性の向上効果がない。一方、2.0%超含有させてもその効果は飽和する。なお、合金コストや靭性を考慮すると、0.1%以上、1.0%以下が望ましい。
Mgは、脱酸剤として活用する他、溶接部および鋳造組織の組織微細化に有効な元素であるため、必要に応じて0.0002~0.0100%含有することが好ましい。含有量が0.0002%未満では、溶接部および鋳造組織の組織微細化に対し効果がない。一方、0.0100%超含有させてもその効果は飽和するとともに、介在物の粗大化に起因して亀裂起点や伝播促進の原因になる。なお、製造性を考慮すると、0.0020%以下が望ましい。
Caは、Sと結合して熱間加工性を向上させるため必要に応じて0.0002~0.0100%含有する。含有量が0.0002%未満では、熱間加工性に対し効果がない。一方、0.0100%超含有させてもその効果は飽和するとともに、介在物の粗大化に起因して亀裂起点や伝播促進の原因になる。なお、耐食性を考慮すると、0.0010%以下が望ましい。
Coは、高温強度の向上に寄与するため,必要に応じて0.01%以上含有することが好ましい。しかし、0.35%超含有させると靭性劣化につながるため,上限を0.35%以下とする。好ましくは0.20%以下である。更に,精錬コストや製造性を考慮すると、0.10%以下が望ましい。
REMは、種々の析出物の微細化による靭性向上や耐酸化性の向上の観点から必要に応じて含有される場合があり、この効果は0.001%以上で発現することから下限を0.001%以上とする。しかしながら、0.05%超含有させると鋳造性が著しく悪くなることから上限を0.05%以下とする。更に,精錬コストや製造性を考慮すると、0.01%以下が望ましい。ここで、REM(希土類元素)は、一般的な定義に従い、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)の2元素と、ランタン(La)からルテチウム(Lu)までの15元素(ランタノイド)の総称を指す。本実施形態では、これら希土類元素から選択される1種を単独で含有してもよいし、2種以上の混合物であってもよい。
Gaは、耐食性向上や水素脆化抑制のため、0.1000%以下の範囲で含有してもよい。硫化物や水素化物形成の観点から下限は0.0002%以上とする。さらに、製造性やコストの観点ならびに、延性や靭性の観点から0.0020%以下が好ましい。
本実施形態の2相ステンレス鋼鈑は、上述してきた元素以外は、Fe及び不純物(不可避的不純物を含む)からなるが、以上説明した各元素の他にも本発明の効果を損なわない範囲で含有させることが出来る。本実施形態においては、本発明の課題を解決する限度において、例えばBi、Seを必要に応じて、0.001~0.1%含有してもよい。なお、As、Pb等の一般的な有害元素や不純物元素はできるだけ低減することが好ましい。
次に、本実施形態のオーステナイト相の面積率と、オーステナイト相結晶粒のアスペクト比について説明する。
2相ステンレス鋼板を構成するフェライト相およびオーステナイト相は、圧延および熱処理によって、相比率やその形態が変化する。本実施形態ではこれらを調整することによって最終的な製品板としての疲労特性を向上させることを見出した。具体的に、本実施形態の2相ステンレス鋼板の金属組織は、オーステナイト相の面積率が40~80%であり、残部がフェライト相である金属組織とする。さらに、圧延方向に対して平行かつ鋼板表面に対して直角な断面におけるオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比を1.1以上とする。なお、本実施形態でいうアスペクト比は、オーステナイト相結晶粒の長軸長さXと、Xの測定方向に直交する方向の短軸長さYの比(X/Y)であり、その算出方法について後述する。
図1は、オーステナイト相の比率を種々変化させた2相ステンレス鋼板における、オーステナイト相のアスペクト比と、疲労試験によって測定した疲労限の関係を示す図である。なお疲労試験については、圧延方向にJIS1号試験片を採取し、常温で平面曲げ疲労試験を実施した。常温平面曲げ疲労試験は、初期の曲げモーメントが一定になる様にトルクを繰り返し付与し、その速度は1500回/分とした。付与する応力は曲げモーメントから算出されるが、付与応力を種々変化させて、付与応力と破断繰り返し数の関係を求めた。疲労限は10回の繰り返しで破断しない応力と定義した。
図1から明らかなように、オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が1.1以上、かつオーステナイト相の面積率(オーステナイト相率)が40%以上の場合に、疲労限が350MPa以上となり疲労特性が優れることが分かる。このように疲労限が350MPa以上ある場合、自動車や二輪車等の排気管締結用途として好適である。一方、オーステナイト相の面積率が40%未満では、上述した様に、疲労亀裂が板厚方向に伝播し易くなり疲労限が低下する。これは、フェライト相で生じた疲労亀裂が板厚方向に伝播する際に、その障害となるオーステナイト相の存在確率が減り亀裂の伝播が進展するためである。
また、本実施形態では、オーステナイト相率が40%以上であるとともに、オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比を1.1以上とすることで疲労限が高めることができる。オーステナイト相結晶粒のアスペクト比が大きい場合、フェライト相を伝播した疲労亀裂がオーステナイト相界面に到達した際に界面を伝播させることによって亀裂進展を遅滞させる効果がある。つまり、アスペクト比が大きい場合、亀裂の界面伝播が継続的に進行するため、板厚方向への亀裂伝播を抑制することができる。より効果的に亀裂進展を遅延させるためには、オーステナイト相率は50%以上、平均アスペクト比は1.3以上が望ましい。また、オーステナイト相率が過度に高いと硬質化しすぎて加工性に問題が生じるため、上限は80%以下とする。オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が過度に大きくなると機械的特性の異方性が大きくなる他、それが2.0以上では疲労限は飽和傾向にあることから、上限は2.0以下が望ましい。
ここで、オーステナイト相の比率(面積率)は、圧延方向と平行方向の断面において、EBSP(Electron Back Scattering Pattern)を用いて測定する。なお、本実施形態に係る鋼板はフェライト相とオーステナイト相からなる2相ステンレス鋼板であるため、オーステナイト相以外の組織はフェライト相とみなすことができる。
また、オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比は以下の方法で求める。
まず、前述のEBSPで観察した圧延方向と平行、かつ鋼板表面に対して直角なの断面(L断面)におけるオーステナイト相の結晶粒のうち任意の100個を選び、各結晶粒について、最大長さ(長軸長さ)Xと、Xの測定方向に直交する方向の長さ(短軸長さ)Yの比(長軸長さX/短軸長さY)を求め、平均値をもって平均アスペクト比とした。ここで、長軸長さXとは、EBSDを用いて観察したオーステナイト相結晶粒の粒界上における任意の2点間を結ぶ直線のうち、最も長い直線を意味する。短軸長さYとは、オーステナイト相結晶粒の粒界上における任意の2点間を結ぶ直線のうち、長軸長さXを2等分する点を通り、かつ長軸と直交する直線を意味する。
また本実施形態の2相ステンレス鋼板は、鋼板表面から深さ100nmまでの領域である鋼板表層部の窒素濃度を0.10~1.00%とする。
上記のとおり、本実施形態の鋼板の化学成分においては、高強度化、高疲労強度化に有効に作用する窒素を0.005~0.30%含む。しかしながら、鋼板の製造工程および、当該鋼板を素材とした部品の製造工程において熱処理を施すと、鋼板表層から脱窒する場合がある。熱処理としては例えば、素材製造あるいは部品製造工程において、水素濃度が75%以上、窒素濃度が25%以下のアンモニア分解ガス雰囲気で1050℃以上の環境で処理される。この際に表層で脱窒が生じる場合がある。
鋼板表層が脱窒するとマクロ的な強度には影響は小さくとも、疲労特性には敏感に反映される。そのため、本実施形態願では、鋼板表層から深さ100nmまで領域である表層部の平均窒素濃度を0.10~1.00%と規定する。
本発明者らは、冷延鋼板に対し種々の熱処理を付与した後に高周波グロー放電発光表面分析装置(GDS)で鋼板表面から深さ方向の元素分析を行い、最表面から100nm深さの窒素濃度を分析し、疲労強度(疲労限)との関係を検討した。その結果、鋼板表面から100nm深さの平均窒素濃度が0.10%未満の場合に疲労強度が低下した。具体的には、平均窒素濃度が0.10%未満の場合、平面曲げ疲労試験で鋼板表面から疲労亀裂が発生した。そのため、表層部の強度を確保するために、鋼板表層部の平均窒素濃度を0.10%以上とする必要である。一方、表層部の平均窒素濃度は1.00%超になると鋼板表層にCr窒化物が生成し易くなり、これを起点として疲労亀裂が発生し易くなるため、上限を1.00%以下とする。更に、耐食性や靭性を考慮すると0.50%以下が望ましい。
鋼板表層部の平均窒素濃度についても、GDSを用いて測定することができる。なお、本実施形態では、分析領域を直径1mmとし、GDSを用いて深さ方向に分析を行い、JIS K 0150に規定されているQDP(Quantitative Depth Profile)法を適用し、深さ1nmごとの窒素濃度を測定する。これにより、表層部における窒素の濃度分布を得る事ができる。また、表層部全体の平均窒素濃度は、深さ1nmごとの各窒素濃度の平均を算出することで求めることができる。
本実施形態の2相ステンレス鋼板は、ステンレス冷延鋼板の汎用的な製造工程で製造することができる。具体的には、熱間圧延、冷間圧延及び各熱処理(焼鈍)を組み合わせることとし、必要に応じて、適宜、酸洗を行うこととする。すなわち、製造方法の一例として、例えば、製鋼-熱間圧延-酸洗-冷間圧延-焼鈍・酸洗の各工程よりなる。本実施形態において重要なオーステナイト相率、平均アスペクト比、表層部の窒素濃度を上記のとおりに満足するために制御すべきポイントは、冷間圧延後の熱処理条件であり、それ以外の工程、条件については特に制限はない。なお、冷間圧延後の熱処理条件を、部品とした後の熱処理に適用してもよく、その場合でも本発明と同等の効果を享受することができる。
以下に本実施形態の製造方法の一例を示す。
製鋼においては、前記必須成分および必要に応じて添加される成分を含有する鋼を、転炉あるいは電炉溶製し、続いて2次精錬を行う方法が好適である。溶製した溶鋼は、公知の鋳造方法(連続鋳造)に従ってスラブとする。スラブは、所定の温度に加熱され、所定の板厚に連続圧延で熱間圧延される。熱間圧延は複数スタンドから成る熱間圧延機で圧延された後に巻き取られる。熱間圧延後は、熱延板焼鈍を施しても省略してもよい。
冷間圧延においては、所定の板厚に応じて冷延圧下率を選択すればよいが、20%未満の圧下率ではオーステナイト相の展伸が不十分であるため、圧下率は20%以上が望ましい。冷間圧延における他の条件(ロール径、パス数、圧延温度等)は特に規定せず、生産性に応じて適宜選択すればよい。
冷間圧延後の焼鈍(冷延板焼鈍、最終焼鈍)は、大気中で焼鈍(大気焼鈍)し、その後に表面のスケールを酸洗で除去してもよいが、光輝焼鈍のほうが望ましい。光輝焼鈍の条件は、望ましくは後述するように、鋼板表層部の平均窒素濃度の調整のために、水素濃度を75%未満、窒素濃度を25%超とする雰囲気で熱処理する。さらに、オーステナイト相量の調整と平均アスペクト比の調整のために熱処理温度を1050℃以上、1200℃未満とすることが望ましい。
本実施形態では、鋼板表層部における窒素濃度を上記のとおり確保するために、冷延鋼板の焼鈍に際して、水素濃度を75%未満、窒素濃度を25%超とする雰囲気において雰囲気温度1050℃以上とする。雰囲気温度については、1050℃未満ではCr窒化物の生成によって耐食性が劣化するため、1050℃以上とする。一方、1200℃以上になると脱窒が加速し表層部の平均窒素濃度が不十分となる上、オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が小さくなるため上限は1200℃未満が望ましい。一方、焼鈍雰囲気については、水素濃度を75%未満、窒素濃度を25%超とすることで焼鈍中に吸窒が生じて表層の平均窒素濃度を確保する。一方、水素濃度を75%以上、窒素濃度を25%以下になると吸窒が生じないとともに脱窒が生じる可能性もある。このため、焼鈍雰囲気については、水素濃度を75%未満、窒素濃度を25%超とする。また、過度に吸窒が生じると表層に窒化物が生じて耐食性が劣化するため、焼鈍雰囲気は、水素濃度50%以上、窒素濃度50%以下が望ましい。
前述のような焼鈍条件は、鋼板を部品に成形した後にのろう付け熱処理に適用してもよく、その場合でも、本発明と同様の効果を発揮する。すなわち、本実施形態の鋼板を素材とした部品製造工程におけるろう付け熱処理において、水素濃度を75%未満、窒素濃度を25%超、雰囲気温度1050℃以上とすることで、オーステナイト相率、平均アスペクト比、表層部の平均窒素濃度の本実施形態の範囲内とすることができ、曲げ疲労特性を向上させることができる。
他工程の製造方法については特に規定しないが、熱延板厚、熱延板焼鈍雰囲気などは適宜選択すればよい。また、冷延・焼鈍後に調質圧延やテンションレベラーを付与しても構わない。更に、製品板厚についても、要求部材厚に応じて選択すれば良い。
以上説明した製造方法により、本実施形態に係るフェライト系ステンレス鋼板を得ることができる。
本実施形態のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板によれば、平面曲げ疲労強度の安定性に課題があった従来の2相ステンレス鋼板に対して、板厚方向の疲労亀裂進展を抑制し、高い疲労特性が得られる。さらに、本実施形態のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板を。家電、建築、自動車、鉄道、航空、輸送など種々の分野において成形用途として適用することで、環境対策や部品の低コスト化などに大きな効果が得られる。特に、建築分野や自動車分野に対しては構造部材や締結部材として薄肉軽量化に寄与することが可能となる。例えば自動車分野における具体的な用途としては、マフラー等の排気部品、水・油配管、燃料部品、足回り部品およびフランジ、ハンガー、タンクバンド、ブラケット等の締結部品が対象となる。また、車のピラー、バンパー等の構造部品としても高疲労強度が活用出来る。
次に本発明の実施例を示すが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、以下の実施例で用いた条件に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
なお、下記にて示す表中の下線が、本発明の範囲から外れているものを示す。
<実施例1>
表1に示す成分組成のステンレス鋼を溶製してスラブとした後、熱間圧延して4mm厚の熱延板とした。その後、熱延板を焼鈍・酸洗し、2mm厚まで冷間圧延し、1080℃で焼鈍後、酸洗を施して2相ステンレス鋼板(冷延焼鈍・酸洗板)とした。このようにして得られた2相ステンレス鋼板(冷延焼鈍・酸洗板)から、上述した方法で組織解析、常温平面曲げ疲労試験を行い、オーステナイト相率(γ相率)、平均アスペクト比、疲労限を求めた。また、GDSによって鋼板表層の平均窒素濃度を求めた。
平面疲労試験については、圧延方向にJIS1号試験片を採取し、常温で平面曲げ疲労試験を実施した。常温平面曲げ疲労試験は、初期の曲げモーメントが一定になる様にトルクを繰り返し付与し、その速度は1500回/分とした。付与する応力は曲げモーメントから算出されるが、付与応力を種々変化させて、付与応力と破断繰り返し数の関係を求めた。疲労限は10回の繰り返しで破断しない応力と定義した。
表層の平均窒素濃度については、GDSを用いて測定した。分析領域を直径1mmとし、深さ方向に分析を行い、JIS K 0150に規定されているQDP法を適用し、深さ1nmごとの窒素濃度を測定し各窒素濃度の平均を算出して「表層の平均窒素濃度」とした。
冷延焼鈍・酸洗板(試験No.1~27)の、表層の平均窒素濃度、オーステナイト相率(γ相率)、平均アスペクト比、疲労限を表2に示す。なお、表2の各例は参考例とした。
本発明例である試験No.1~16は、オーステナイト相率が40%以上、アスペクト比が1.1以上、表層の平均窒素濃度が0.10~1.00%であり、疲労限が350MPa以上と高疲労強度を有している。
<実施例2>
次に、表1に示す鋼No.1~3の組成を有する冷延板を用いて光輝焼鈍した際の結果を表3に示す。なお、光輝焼鈍前までの製造条件は上記<実施例1>と同様の条件にて行い冷延板を製造した。
水素が75%未満、窒素が25%超の雰囲気で、1050℃以上および1200℃未満の温度で光輝焼鈍した試験No.28~30の場合、オーステナイト相率が40%以上、アスペクト比が1.1以上、表層の平均窒素濃度が0.10~1.00%であり、疲労限が350MPa以上と高疲労強度を有している。しかし、水素濃度が75%以上、窒素が25%以下の雰囲気で焼鈍温度が1200℃超の試験No.31~33の場合には、表層の窒素濃度が0.10%未満であり、疲労限が350MPa未満であった。
<実施例3>
次に、表1に示す鋼No.1~27の組成を有する冷延板(製品板)を、水素が75%未満、窒素が25%超の雰囲気で1130℃に加熱した際の結果を表4に示す。本実施例では、熱処理温度が1130℃と高いため、吸窒に加えて脱窒も生じるものの本発明範囲内の組成を有する鋼を用いた試験No.34~49は表層の平均窒素濃度が0.10~1.00%、オーステナイト相の面積率が40%以上、オーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が1.1以上を確保し、疲労限が350MPa以上である。一方、比較例(試験No.50~60)の表層の窒素濃度は0.10%未満であり疲労限が350MPa未満であった。
なお、自動車や二輪車等の排気管部品でTIG、MIG、レーザー、ろう付け等により接合される場合があり、<実施例3>はこの時の熱影響部の疲労特性を模擬するための熱処理である。比較例では結晶粒の粗大化やオーステナイト相の球状化が生じて疲労限が著しく低下するが、本発明例の疲労限低下は小さく、上記熱処理後も疲労限が350MPa以上有する。これらの効果は冷延鋼板を素材として鋼管にしても同様である。この場合の鋼管製造方法は本発明では規定せず、造管時の溶接はTIG、レーザー、ERW等一般的なステンレス鋼管の製法に従えばよい。
Figure 0007262176000001
Figure 0007262176000002
Figure 0007262176000003
Figure 0007262176000004
本発明によれば、疲労特性に優れたフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板を提供することが可能である。特に、自動車、二輪、鉄道、建築用途、各種構造部品や締結部品として使用することによって、薄肉軽量化や複雑構造の成形品に展開することが可能であるとともに、SUS304等の材料に比べて省Ni化によるコスト削減にも寄与することから、産業上極めて有益である。

Claims (6)

  1. 質量%にて、
    C:0.001~0.05%、
    Si:0.01~1.0%、
    Mn:2.0~5.0%、
    P:0.05%以下、
    S:0.0050%以下、
    Ni:0.5~6.0%、
    Cr:16.0~25.0%、
    Mo:0.1~3.5%、
    Cu:0.1~2.0%、
    N:0.10~0.30%、
    B:0.0005~0.0100%、
    Al:0.01~0.50%、
    Ti:0~0.30%、
    Nb:0~0.30%、
    Zr:0~0.30%、
    Sn:0~0.50%、
    W:0~2.0%、
    Mg:0~0.0100%、
    Ca:0~0.0100%、
    Sb:0~0.50%、
    Ta:0~0.30%、
    Hf:0~0.30%、
    Co:0~0.35%、
    REM:0~0.05%、
    Ga:0~0.10000%
    を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、
    オーステナイト相の面積率が40~80%であり、
    圧延方向に対して平行、かつ鋼板表面に対して直角な断面におけるオーステナイト相結晶粒の平均アスペクト比が1.1以上であり、
    鋼板表面から深さ100nmまでの領域である鋼板表層部の平均窒素濃度が0.10~1.00%であり、
    光輝焼鈍材であることを特徴とするフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
  2. さらに、質量%にて、Ti:0.005~0.30%、Nb:0.005~0.30%、Zr:0.005~0.30%、Sn:0.005~0.50%、W:0.01~2.0%、Mg:0.0002~0.0100%、Ca:0.0002~0.0100%、Sb:0.005~0.50%、Ta:0.005~0.30%、Hf:0.005~0.30%、Co:0.01~0.35%、REM:0.001~0.05%、Ga:0.0002~0.1000%の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
  3. 疲労限が350MPa以上であることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
  4. 自動車あるいは二輪車部品に使用されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板。
  5. 請求項1~4のいずれか一項に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼板を用いたフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼管。
  6. 自動車あるいは二輪車部品に使用されることを特徴とする請求項5に記載のフェライト・オーステナイト2相ステンレス鋼管。
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