JP2012224904A - 二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法 - Google Patents

二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法 Download PDF

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Abstract

【課題】
二相ステンレス鋼表面からの脱窒と吸窒を防止して、多様な種類の二相ステンレス鋼を安定して連続的かつ容易に光輝焼鈍する方法を提供する。
【解決手段】
窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法であって、
水素ガス雰囲気中で、温度が1030〜1100℃、焼鈍時間が20〜120秒で焼鈍することを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、二相ステンレス鋼を、表層部の組織と鋼の耐孔食性を損なうことなく光輝焼鈍を行う方法に関する。
二相ステンレス鋼は、フェライト相とオーステナイト相が混在した組織を有し、海水環境での耐孔食性、耐すき間腐食性及び耐応力腐食割れ性に優れ、さらに、単位重量に対する強度がオーステナイト系ステンレス鋼よりも優れている。このため、近年、海水環境、油井関連の構造物及び海水淡水化装置の熱交換器など、高い耐孔食性が求められる環境に用いる材料として用途が広がっている。
二相ステンレス鋼の耐孔食性は、鋼全体としての成分組成の他に、オーステナイト相とフェライト相のそれぞれに分配される成分組成が変化するためオーステナイト相とフェライト相の比率によっても、耐孔食性が大きく変化する。このため、二相ステンレス鋼は、鋼全体の成分組成と、熱処理によるオーステナイト相とフェライト相の比率と、をそれぞれ適正に保つよう制御される必要がある。
例えば、二相ステンレス鋼の冷延品は、通常素材のスラブを熱間圧延、中間焼鈍、冷間圧延の各工程を経て、所定の形状と寸法にした後、製品焼鈍を行って製造する。また、二相ステンレス鋼の冷延品は、製品焼鈍後に、さらに、用途に応じて光輝焼鈍される場合がある。従来、一般的に、オーステナイト系及びフェライト系ステンレス鋼の光輝焼鈍では、アンモニア(NH3)を分解したガス、すなわち、水素ガス濃度が75体積%、窒素ガス濃度25体積%の混合ガスの雰囲気中で焼鈍する方法が用いられている。
二相ステンレス鋼の光輝焼鈍において、アンモニアを分解したガスなど窒素分圧が過多である雰囲気ガスの中で焼鈍すると、雰囲気ガス中の窒素が二相ステンレス鋼の表面から二相ステンレス鋼中へ吸収されていく(以下、単に「吸窒」という場合がある)ことがある。窒素は強いオーステナイト生成作用を有する元素であるので、吸窒現象が生じると、二相ステンレス鋼の表層で窒素含有量が増加する。すると、表層の部分でオーステナイト相が増加しフェライト相が減少して、耐応力腐食割れ性が低下する。また、ステンレス鋼の窒素含有量が増加すると耐孔食性が向上するものの、窒素含有量が過度に増加すると、固容しきれなくなった窒素が窒化物として析出し、却って耐孔食性が低下する。
一方で、水素ガス単体の雰囲気ガス中で長時間の光輝焼鈍を行なうと、二相ステンレス鋼の表面から二相ステンレス鋼中の窒素が放出される(以下、単に「脱窒」という場合がある)ことがある。脱窒現象により二相ステンレス鋼の表層で窒素含有量が減少すると、表層の部分でフェライト相が増加しオーステナイト相が減少して、耐応力腐食割れ性が向上する。しかし、窒素は耐孔食性を向上させる元素であるので、表層の窒素含有量が低下することで耐孔食性が劣化する。
従って、二相ステンレス鋼のオーステナイト相とフェライト相の比率や鋼の窒素含有量などは、要求される性能に応じて最適範囲に管理する必要がある。そして、所望の二相ステンレス鋼の性能を安定して得るためには、最終段階である光輝焼鈍時に、オーステナイト相とフェライト相の比率や窒化物の析出といった結晶組織の変化のおそれ及び耐孔食性の劣化のおそれがある吸窒や脱窒を十分に抑制することが必要となる。
そこで、特許文献1では、窒素含有量が(9N−0.5)〜(9N+0.5)体積%、残部が実質的に水素ガスからなる混合ガスの雰囲気中で焼鈍することで、表層での吸窒現象や脱窒現象を生じずに二相ステンレス鋼の光輝焼鈍を行えることが記載されている。しかしながら、特許文献1の光輝焼鈍方法では、吸窒現象や脱窒現象を防止するために、光輝焼鈍を行う二相ステンレス鋼の窒素含有量に応じて焼鈍雰囲気中の窒素ガス濃度を厳密に制御する必要がある。従って、特許文献1の光輝焼鈍方法では、多様な種類の二相ステンレス鋼を安定して連続的かつ容易に光輝焼鈍することはできないという問題がある。
特開平11−100613号公報
上記事情に鑑み、本発明の目的は、二相ステンレス鋼表層からの脱窒と吸窒を防止して、品質安定性を損なうことなく多様な種類の二相ステンレス鋼を連続的かつ容易に光輝焼鈍する方法を提供することである。
本発明の態様は、窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法であって、水素ガス雰囲気中で、温度が1030〜1100℃、焼鈍時間が20〜120秒で焼鈍することを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法である。この態様では、光輝焼鈍を水素ガス雰囲気中で実施する。従って、光輝焼鈍の雰囲気ガス中に窒素ガスは実質的にまたは完全に含まれない。明細書中、「水素ガス雰囲気」とは、純水素ガスの雰囲気、すなわち、水素ガス100体積%の雰囲気の他に、水素ガスとアルゴンガス等の窒素ガス以外の希ガスとからなる混合ガスの雰囲気が含まれる。
本発明の態様は、前記二相ステンレス鋼の厚さが、0.9〜4.0mmであることを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法である。
本発明の態様は、前記水素ガス雰囲気中の露点が−35℃以下であることを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法である。
本発明の態様は、前記二相ステンレス鋼が、C:0.001〜0.030質量%、Si:0.05〜1.00質量%、Mn:0.1〜2.0質量%、Cr:23〜29質量%、Ni:5.0〜9.0質量%、Mo:2.0〜5.0質量%、N:0.16〜0.32質量%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相・オーステナイト相の組織を有し、前記フェライト相が30〜70体積%であることを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法である。
本発明の態様によれば、光輝焼鈍を水素ガス雰囲気中で実施するので、雰囲気ガス成分の混合比率の調整が不要となる。水素ガス雰囲気中でも脱窒を抑制できるので、品質安定性に優れた光輝焼鈍を容易に実施することができる。また、光輝焼鈍の対象となる二相ステンレス鋼の成分組成(特に、窒素の含有量)が変化しても、雰囲気ガス成分の再調整が不要なので、多様な種類の二相ステンレス鋼を連続的に光輝焼鈍でき、生産性が向上する。さらに、雰囲気ガスの成分を調整する工程と設備が不要となるので、光輝焼鈍工程を迅速化でき、さらに生産コストを低減できる。
次に、本発明の光輝焼鈍方法について詳細に説明する。本発明の光輝焼鈍方法は、窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法であって、水素ガス雰囲気中で、温度が1030〜1100℃、焼鈍時間が20〜120秒で焼鈍する。
本発明の光輝焼鈍方法は、水素ガス雰囲気中で焼鈍する。以下に詳述するように、本発明では、光輝焼鈍の条件、すなわち、光輝焼鈍の温度と時間を調整することにより、水素ガス雰囲気中の光輝焼鈍であっても、脱窒を十分に抑制できる。水素ガス雰囲気とは、水素ガス100体積%の雰囲気でもよく、水素ガス100体積%でなくとも、水素ガスとアルゴンガス等の希ガスとからなる混合ガスの雰囲気でもよいことを意味する。水素ガスに希ガスが混合している場合には、希ガスは不可避的不純物として混入している点から、希ガスはなるべく低い濃度が好ましく、例えば、1.0体積%以下の濃度が特に好ましい。
二相ステンレス鋼とは、オーステナイト相とフェライト相とが混在した組織で構成されている鋼である。本発明の光輝焼鈍方法では、二相ステンレス鋼の鋼種は、二相ステンレス鋼からの脱窒を防止して窒素含有量を確実に維持する点から、窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼が特に有効である。窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼の鋼種は、特に限定されないが、例えば、SUS329J3L、SUS329J4L、UNS S32750、UNSS32760、UNS S32203、UNS S32101等が挙げられる。また、オーステナイト相とフェライト相との比率は特に限定されないが、本発明の光輝焼鈍方法は、オーステナイト相が30〜70体積%混在する二相ステンレス鋼に特に有効である。
二相ステンレス鋼の形態は特に限定されず、例えば、板状、帯状、管状、バネ状等が挙げられ、また、形鋼でもよい。
光輝焼鈍の温度の下限値は、光輝焼鈍前および光輝焼鈍時の加熱過程で生じるσ相等の有害な金属間化合物を固容して無害化する点から1030℃であり、短時間の光輝焼鈍においても組織を再結晶させる点から1040℃が好ましく、短時間の光輝焼鈍でも上記再結晶を確実にする点から1050℃が特に好ましい。一方で、光輝焼鈍の温度の上限値は、水素ガス雰囲気中の光輝焼鈍において二相ステンレス鋼表層からの脱窒を防止して耐孔食性を維持する点から1100℃であり、フェライト相の割合が著しく増加して組織の結晶粒が粗大化するのを確実に防止する点から1090℃が好ましく、二相ステンレス鋼表層からの脱窒を確実に防止する点から1080℃が特に好ましい。
光輝焼鈍時間の下限値は、二相ステンレス鋼の内部まで熱処理効果を得る点から20秒であり、鋼内部まで確実に熱処理の効果を得る点から25秒が好ましい。一方で、光輝焼鈍時間の上限値は、熱処理による二相ステンレス鋼表層からの脱窒を防止する点で120秒であり、フェライト相の割合が著しく増加して組織の結晶粒が粗大化するのを確実に防止する点から100秒が好ましく、二相ステンレス鋼表層からの脱窒を確実に防止する点から90秒が特に好ましい。
光輝焼鈍する二相ステンレス鋼の厚さや径は特に限定されず、使用条件や用途に応じて適宜選択可能である。例えば、二相ステンレス鋼の形態が板状、帯状または管状の場合、厚さ(肉厚)の上限値は、二相ステンレス鋼の内部まで熱処理の効果を確実に及ぼす点から6.0mmが好ましく、σ相の析出を確実に防止する点から4.0mmが特に好ましい。一方で、その下限値は、熱容量が小さくなって二相ステンレス鋼表層から窒素が拡散するのを防止する点から0.3mmが好ましく、前記窒素の拡散を確実に防止する点から0.9mmが特に好ましい。また、二相ステンレス鋼の形態が丸材の場合、その直径の好ましい上限値と下限値は、それぞれ、上記した板状、帯状または管状の場合と同様である。
水素ガス雰囲気中の露点は、光輝焼鈍中に鋼の表面が過度に酸化または過度に還元されるのを抑制する範囲で適宜選択可能である。例えば、露点の上限値は、Feの過度な酸化による着色が二相ステンレス鋼表層に現れて表面外観が損なわれるのを防止する点から−35℃が好ましく、二相ステンレス鋼表層の過度な酸化により脱クロム層が生じ、耐孔食性が劣化するのを防止する点から−40℃が特に好ましい。一方で、露点の下限値は、過度な還元を防止して若干の酸化皮膜の形成により脱窒現象を抑制する点から−55℃が好ましく、前記脱窒現象の抑制を十分にする点から−50℃が特に好ましい。
上記以外の光輝焼鈍条件は、特に限定されるものではなく、σ相の析出防止のための熱処理後の急速冷却等、従来の二相ステンレス鋼の光輝焼鈍時に用いられている常用の条件にて本発明の光輝焼鈍方法を行うことができる。このように、焼鈍温度、焼鈍時間を適正に管理することにより、水素雰囲気中においても、二相ステンレス鋼からの脱窒現象を効果的に抑制した光輝焼鈍を実施できる。
本発明で光輝焼鈍する二相ステンレス鋼には、強力なオーステナイト生成元素であると共に耐孔食性を向上させる効果を有する元素である窒素を0.16〜0.32質量%含有するものが特に有効である。一方で、その他の成分の含有量は、鋼の用途に応じて適宜選択可能である。以下に、二相ステンレス鋼が有する窒素以外の成分組成の例について説明する。
Cは、耐孔食性を低下させる元素なので、含有量の上限値は0.030質量%が好ましく、0.025質量%が特に好ましい。一方で、下限値は、強度の低下を防止する点で0.001質量%が好ましい。
Siは、脱酸剤として添加される成分である。Siの含有量の上限値は、延性の低下を防止し、またσ相などの金属間化合物の析出を抑えて耐孔食性の低下を防止する点から1.00質量%が好ましく、下限値は、脱酸剤としての効果を発揮する点で0.05質量%が好ましい。
Mnは、オーステナイト生成元素であるため、オーステナイト相とフェライト相の比率を調整し、二相ステンレス鋼の耐孔食性を改善するのに有効な成分である。Mnの含有量の上限値は、σ相などの金属間化合物の析出を抑えて耐孔食性の低下を防止する点から2.0質量%が好ましく、下限値は、所定のオーステナイト相の比率を得る点から0.1質量%が好ましい。
Crは、フェライト生成元素であり、また耐孔食性を向上させる元素でもある。Crの含有量の上限値は、σ相などの金属間化合物の析出を抑える点から29質量%が好ましく、フェライト相の過度の増加を防止して二相組織を維持する点から26質量%が特に好ましい。一方、Crの含有量の下限値は、所期の耐孔食性を得る点から23質量%が好ましい。
Niは、オーステナイト生成元素であり、また耐孔食性を向上させる元素でもある。Niの含有量の上限値は、過度にオーステナイト相が増加してフェライト相が減少するのを防止する点から9.0質量が好ましく、下限値は、所期の耐孔食性を得る点から5.0質量%が好ましい。
Moは、耐孔食性を向上させる元素である。Moの含有量の上限値は、σ相などの金属間化合物の析出を防止する点から5.0質量%が好ましく、下限値は、その効果を得る点から2.0質量%が好ましい。
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
下記表1に示す3種類の化学組成の鋼を、常法に従って、電気炉にて溶製後、AOD、CTS工程により精錬を行い、連続鋳造で造塊した。その後、常法に従って、熱間圧延にて板厚7.0mmまで圧延を行い熱延鋼板とした。次いで、この熱延鋼板を冷間圧延、製品焼鈍、酸洗工程を経て、板厚が0.3〜6.0mmまでの二相ステンレス鋼の冷帯とした。
Figure 2012224904
なお、表1中、各元素の化学組成の含有量は質量%、フェライト相とオーステナイト相の比率は体積%で示す。また、CPTとは、臨界孔食発生温度であり、表1中の単位は℃である。
上記のようにして得られた冷帯に、通常の雰囲気熱処理炉を用いて光輝焼鈍を施した。光輝焼鈍は、焼鈍温度、焼鈍時間及び焼鈍雰囲気の露点をそれぞれ変化させて、水素ガス100体積%の雰囲気ガス中にて行なった。光輝焼鈍後の冷帯について、表面外観、表層部の窒素含有量、表層組織および耐孔食性を評価した。また、比較のために、表1に示す3種類の化学組成の鋼について、それぞれ、上記と同様の条件にて、造塊、熱間圧延、冷間圧延、製品焼鈍及び酸洗を経て得られた冷帯について、その表層を#2000番手のサンドペーパーで湿式研磨を行って比較用試験材(以下、「研磨仕上材」)を作製し、該研磨仕上材についても耐孔食性を評価した。詳細な評価方法は、以下の通りである。
(1)表面外観
光輝焼鈍後の冷帯の表面外観を目視により判定した。光輝焼鈍前の表面外観を保ち、異常が認められなかった場合を良好として「○」、僅かでも外観に異常が見られた場合を不良として「×」と評価した。
(2)表層の窒素含有量(質量%)
マーカス型高周波グロー放電発光表面分析装置((株)HORIBA製、「GD‐profiler2」)を用いて、光輝焼鈍後の冷帯について表層(冷帯の表面から深さ140μmまでの間)の窒素含有量を測定した。上記表1の鋼種の窒素含有量と比較して、光輝焼鈍後の窒素含有量の変化量が±15質量%未満の場合を良好として「○」、光輝焼鈍後の窒素含有量の変化量が±15質量%以上、±20質量%未満の場合を良(許容範囲)として「△」、光輝焼鈍後の窒素含有量の変化量が±20質量%以上である場合を不良として「×」と評価した。
(3)表層組織
光輝焼鈍後の冷帯を、圧延方向に直角に切り出した小片にStruers(株)製、「テヌポール‐3」にて電解研磨を行った後、電解放出型走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製、「JSM‐7001F」)を用いて、冷帯表層(冷帯の表面から深さ200μmまでの間)の組織観察と析出物の同定を行った。また、表層組織(冷帯の表面から深さ180μmまでの間)のフェライト相とオーステナイト相の比率は、光輝焼鈍後の冷帯を用いて後方散乱電子回折装置(TSLソリューションズ(株)製、「EBSD、解析ソフトOIMAnalysis 5.1」)にて測定した。表層組織のフェライト相が30〜70体積%の比率であり、有害な析出物であるσ相とクロム窒化物が見られない場合を良好として「〇」、表層組織のフェライト相が30〜70体積%の比率であり、有害な析出物であるσ相とクロム窒化物の面積率が0%超、0.1%以下の場合を良(許容範囲)として「△」、表層組織のフェライト相の比率が30〜70体積%の範囲を外れる場合または有害な析出物であるσ相とクロム窒化物の面積率が0.1%を超えて析出した場合を不良として「×」と評価した。
(4)耐孔食性
塩化第二鉄水溶液浸漬試験法にて実施した。
試験片:光輝焼鈍後の冷帯
試験溶液:6質量%FeCl3+1質量%HCl水溶液
表面処理:光輝焼鈍後のまま(光輝焼鈍後の研磨なし、光輝焼鈍後の酸洗処理なし)
試験温度:15℃〜75℃
浸漬時間:24時間
試験片数:各2個
各試験片について孔食深さが25μm以上となる臨界孔食発生温度(CPT)の値を求め、この平均値が研磨仕上材のCPTと同じ場合を良好として「○」、研磨仕上材と比較したCPTの低下が0℃を超え、5℃未満の場合を良(許容範囲)として「△」、研磨仕上材と比較したCPTの低下が5℃以上の場合を不良として「×」と評価した。
評価結果を、下記表2に示す。
Figure 2012224904
表2に示すように、水素ガス雰囲気(水素ガス100体積%、窒素ガス0体積%)下、温度が1030℃以上1100℃以下、焼鈍時間が20秒以上120秒以下の範囲にて光輝焼鈍を行なった試験番号1、3、4、6、8、10、11、13、14、15、18は、表面外観、表層の窒素含有量、表層組織のいずれも問題なく、耐孔食性も優れていた。これに対し、光輝焼鈍時の熱処理温度が1030℃よりも低い試験番号7は、有害な金属間化合物であるσ相が面積率で0.2%析出して表層組織が劣化した。さらに、試験番号7は、研磨仕上材と比較したCPTの低下が15℃(鋼種Cの研磨仕上材のCPTは75℃、試験番号7のCPTは60℃)となり、耐孔食性も劣化した。光輝焼鈍時の熱処理温度が1100℃よりも高く焼鈍時間も120秒より長い試験番号16、17は、表層組織のフェライト相の割合が70体積%を超え、さらにクロム窒化物が面積率で0.2%析出して表層組織が劣化した。さらに、試験番号16、17は、表層の窒素含有量が20質量%以上低下した。また、研磨仕上材と比較したCPTの低下が、試験番号16では35℃、試験番号17では55℃(鋼種Cの研磨仕上材のCPTは75℃、試験番号16のCPTは40℃、試験番号17のCPTは20℃)となり、耐孔食性も劣化した。耐孔食性の劣化は、表層の窒素含有量が20質量%以上低下し、かつクロム窒化物が析出し、周囲にクロムの欠乏領域を生成したことが原因と考えられる。
光輝焼鈍時の熱処理温度が1030〜1100℃であるものの焼鈍時間が120秒より長い試験番号2、5、9、12では、表層組織は良好であったが、表層の窒素含有量が20質量%以上低下した。また、研磨仕上材と比較したCPTの低下が、試験番号2、5、9、12で、それぞれ、5℃、5℃、5℃、15℃(研磨仕上材のCPTは、それぞれ、鋼種Aで50℃、鋼種Bで55℃、鋼種Cで75℃、試験番号2、5、9、12のCPTは、それぞれ、45℃、50℃、70℃、60℃)となり、耐孔食性も劣化した。耐孔食性の劣化は、表層の窒素含有量が20質量%以上低下したことが原因と考えられる。
光輝焼鈍時の焼鈍時間が20秒以上120秒以下の範囲であるものの熱処理温度が1100℃よりも高い試験番号19では、表層組織のフェライト相の割合が70体積%を超え、さらにクロム窒化物が面積率で0.15%析出して表層組織が劣化した。さらに、試験番号19は、表層の窒素含有量が20質量%以上低下した。また、研磨仕上材と比較したCPTの低下が、試験番号19では25℃(鋼種Cの研磨仕上材のCPTは75℃、試験番号19のCPTは50℃)となり、耐孔食性も劣化した。耐孔食性の劣化は、表層の窒素含有量が20質量%以上低下し、かつクロム窒化物が析出し、周囲にクロムの欠乏領域を生成したことが原因と考えられる。
板厚が0.9mmより薄い試験番号14(板厚0.3mm)では、表層の窒素含有量は低下したものの、その低下量は16質量%と、15質量%以上20質量%未満の許容範囲にとどまった。また、試験番号14では、CPTが低下したものの、低下量は2.5℃と許容範囲にとどまり耐孔食性の低下を抑制できた。板厚が4mmより厚い試験番号15(板厚6.0mm)では、σ相の析出が面積率で0.05%にとどまり、表層組織の劣化を抑制できた。また、試験番号15ではCPTが低下したものの、その低下量は2.5℃と許容範囲にとどまり耐孔食性の低下を抑制できた。
本発明は、鋼表層からの脱窒と吸窒を防止して、品質安定性を損なうことなく多様な種類の鋼を連続的かつ容易に光輝焼鈍できるので、二相ステンレス鋼等のステンレス鋼の分野で利用価値が高い。

Claims (4)

  1. 窒素を0.16〜0.32質量%含有する二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法であって、
    水素ガス雰囲気中で、温度が1030〜1100℃、焼鈍時間が20〜120秒で焼鈍することを特徴とする二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法。
  2. 前記二相ステンレス鋼の厚さが、0.9〜4.0mmであることを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法。
  3. 前記水素ガス雰囲気中の露点が−35℃以下であることを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法。
  4. 前記二相ステンレス鋼が、
    C:0.001〜0.030質量%
    Si:0.05〜1.00質量%
    Mn:0.1〜2.0質量%
    Cr:23〜29質量%
    Ni:5.0〜9.0質量%
    Mo:2.0〜5.0質量%
    N:0.16〜0.32質量%
    残部がFeおよび不可避的不純物からなり、フェライト相・オーステナイト相の組織を有し、前記フェライト相が30〜70体積%であることを特徴とする請求項1に記載の二相ステンレス鋼の光輝焼鈍方法。
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