JP2703557B2 - 深色化繊維及びその製造方法 - Google Patents

深色化繊維及びその製造方法

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JP2703557B2 JP63106910A JP10691088A JP2703557B2 JP 2703557 B2 JP2703557 B2 JP 2703557B2 JP 63106910 A JP63106910 A JP 63106910A JP 10691088 A JP10691088 A JP 10691088A JP 2703557 B2 JP2703557 B2 JP 2703557B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は深色化繊維、特に摩擦耐久性の良好な深色化
繊維及びその製造方法に関する。
(従来の技術) 合成繊維或いは天然繊維において、鮮明で色の深みを
有する繊維の検討が従来から行なわれており、“カラス
の濡れ羽色”を目的とした改良の提案がなされてきてい
る。特にポリエステル系合成繊維はすぐれたコスト競争
力、物性を有しながら、染色性にかけるという欠点があ
った。従って、ポリエステルのブラックフォーマル或い
は学生服等より濃色が即商品価値となる分野において
は、染色性の不足、濃色性の不足が従来から大きな問題
点であった。
繊維光学Vol.22(No.5)p360〜368(May、1969)及び
特公昭46−26887号公報には早くも、繊維表面を適当な
疎さで凹凸化(疎面化)する事により光学的な改質がで
きる事を示しており、又特開昭52−99400号公報には特
定の凹凸形状を有する深色化繊維が提案されている。こ
の方法では繊維表面自体をエッチングする為に、処理速
度が遅い、染料の分解、染色堅牢度の低下、エッチング
状態のコントロールが困難等の問題があり、又繊維表面
の屈折率については素材繊維と同一か或いは密度アップ
の為に屈折率の増大があり深色効果の発現性も小さい
等、実用上の問題は多い。また、エッチング表面の凹凸
が小さく且つその数が多いため摩擦によって容易に変
形、消減し、摩擦部分のテカリ、白化等深色効果が経時
的・部分的に変化し、商品品質としては決定的な欠点と
なる。
一方従来からフッ素系処理剤、シリコーン処理剤、ポ
リウレタン系処理剤等低屈折率表面を形成する各種処理
剤で処理する濃染化加工が行なわれている。この方法は
簡便であり、特別な装置も不用な事より工業的には有利
であるが、繊維表面への加工剤の均一付着の困難さ、風
合の変化や色調の変化、染料の堅牢度の低下等が避けら
れず、又深色性能においても処理剤の低屈折率による反
射防止の効果しかないので十分でない等の問題がある。
特公昭60−37225号公報は、繊維表面の凹部を屈折率
の小さい樹脂で埋め平滑表面を有する耐久性の良好な深
色化繊維の提案であるが、この方法では繊維特に天然繊
維表面に特定の凹凸を形成させる事が困難であり、仮に
凹凸が形成できたとしても、凹部を樹脂で埋め表面を平
滑にする事では深色性はむしろ低下するか、せいぜい凹
凸のない繊維に樹脂加工をしたと同程度の深色効果しか
発現しない。即ち、本引例では摩擦前の布のL値が11〜
13という。“真に真黒とは云い難い領域”での検討であ
る。更に、凹凸形成を繊維自体にプラズマ処理によって
行っており、繊維の結晶・非晶の大きさや配列といった
高次構造に起因した凹凸を形成させる為に、本引例或い
は特公昭59−11709号公報に提案されている凹凸は大き
さが小さく且つその数が多く、深色化は充分なものでは
ない。摩擦耐久性についても、摩耗しやすいのは延伸、
配向、結晶化が進んだ繊維自体よりむしろ繊維に付着さ
れた樹脂である。従って、機械的強度や繊維との親和性
に優れた摩擦耐久性を有する樹脂を選択的に使用する必
要がある。
特開昭61−97490号公報或いは特開昭60−224878号公
報では、ポリエステル繊維にシリコーン系樹脂を付着さ
せた後プラズマ処理を行ない深色性を付与する方法を提
案している。この方法では繊維表面を覆っているシリコ
ーン系加工剤のエッチング速度が遅く、かつ明確な凹凸
を形成する事ができないなどエッチング状態が良好でな
く、工業的有利に良好な深色性或いは耐久性を有する深
色化繊維を得ることはできない。又別の問題としては、
小さな単純な凹凸が多数形成される為に、洗濯や通常の
着用において摩擦により凹凸が容易につぶれて深色性の
部分的低下による白化てかりといった品質上の問題もあ
る。
特開昭60−17190号公報は、繊維表面にプラズマエッ
チングに対して耐性の差を有する樹脂皮膜を形成させプ
ラズマ処理を行ない樹脂表面に微細な凹凸を多数形成す
る事を提案しており、好ましい樹脂皮膜としては、無機
微粒子と、それと相溶性及び均一被覆性にすぐれた樹
脂、或いは屈折率が1.5以下のカチオン性ポリウレタン
および/またはビニル重合体変性カチオン性ポリウレタ
ンよりなるものである。この提案の樹脂表面の凹凸は大
きさが小さくかつ数が多い為にやはり前述と同様の問題
がある。
特開昭60−59171号公報には、シリコーン系樹脂に無
機微粒子を混合した処理剤で繊維を皮膜処理後、プラズ
マ処理し深色化繊維を得る方法を提案しているが、ここ
でもエッチング速度が遅い点、表面に付着した微粒子の
付着ムラによるエッチングムラ及び微粒子の脱落による
性能の変化等の問題がある。
従来の深色加工繊維は、上述したように、深色性が十
分でないか、或いは耐久性が十分でないか或いは、深色
化速度が十分でない等の欠点を持っていた。
(発明が解決しようとする問題) 本発明の目的とするところは、工業的有利にかつ安価
に、すぐれた耐久性を有する従来に得られなかった水準
の深色化繊維及びその製造方法を提供することにある。
(問題点を解決する為の手段) 本発明の深色化繊維は、繊維の表面に凹凸及び/又は
凹孔を有し、互いに非相溶でかつ混和性を有する2種以
上の樹脂からなる混合樹脂皮膜(A)が形成され、更に
皮膜(A)の上にシリコン樹脂を少なくとも20重量%以
上含有した摩擦耐久性を向上させうる樹脂組成物(B)
の皮膜が形成されている事を特徴とする。また本発明の
深色化繊維の製造方法は、互いに非相溶で混和性を有し
かつエッチング速度の異なる2種以上の繊維からなる混
合樹脂を用いて少なくとも2相に相分離している皮膜
(A)を繊維表面に形成させ、次いで低温ガスプラズマ
により混合樹脂皮膜(A)の少なくとも一部に凹凸及び
/又は凹孔を形成させた後、摩擦耐久性を向上させうる
樹脂(B)の水分散液を付与して樹脂(B)の皮膜を形
成する事を特徴とする。
本発明に於いて繊維とは、特に素材に限定されるもの
ではなく,綿,羊毛,絹等の天然繊維,ポリエステル,
ナイロン,アクリル,レーヨン,アセテートの化合繊
等,単独或いはそれらの混合物であり単繊維,糸から編
織物等の繊維構造物までのすべてを含むが、繊維自体の
発色性が悪く、かつ繊維表面が平滑で屈折率が大きく表
面反射の大きい繊維例えばポリエステル繊維の改良には
とりわけ有効である。繊維形態としては、フィラメン
ト,スライバー,織編物,植毛布,立毛布等特に限定し
ないが、織編物,不織布等の平面状のものに適用しやす
い。
着色とは全面均一な着色、或いはパターン化された部
分着色例えばプリント等を云い、通常プラズマ処理前に
着色されるがプリント物等についてはプラズマ処理後に
着色されてもよい。
本発明において繊維は、その表面に凹凸及び/又は凹
孔を有する混合樹脂皮膜(A)を有する。凹凸及び/又
は凹孔は前述した従来技術によるプラズマ処理物に見ら
れたような極めて小さい凹凸或いは、アルカリ処理物で
発生するような大きさが大きくかつ丸みを帯びたもので
なく、実質的に凹孔或いは凹孔が連続した凹凸であり、
好ましくは凹孔は外に拡がった孔でなく、奥に拡がった
形状をもつ孔である。混合樹脂皮膜(A)は、成膜性が
あり、皮膜強度も強くかつ屈折率(na)が通常、繊維形
成物の屈折率(n0)より小さい。混合樹脂皮膜(A)と
しては、例えばシリコーン系樹脂(I)を主体とし、そ
れに混和性は良好であるが非相溶である樹脂(II)を混
合し、低温ガスプラズマによる選択的エッチング、溶解
除去法或いは他の方法、好ましくはプラズマ処理により
樹脂(II)の領域を全部或いは一部を除去して凹凸好ま
しくは実質的に凹孔を形成させうるものである。
シリコーン系樹脂(I)は、(Si−O)の基本骨格
構造を有するものであればよく特に限定しないが、使用
する際の便利さ及び繊維に対する皮膜形成等より水分散
性の良好なものが好ましい。基本骨格構造は上記のとお
りであるが、水分散性、皮膜形成性、皮膜強度の改良の
為に側鎖或いは末端にアミノ基,水酸基,エポキシ基,
アルコキシル基,シラノール基等の含有する修飾基を導
入してもよい。これらの修飾基による変性度は、大きく
なれば繊維への付着性、皮膜形成性、皮膜強度等の向上
がありより好ましく、例えばエポキシ基変性のジメチル
シリコーン樹脂の場合、エポキシ当量(エポキシ基1個
当りのシリコーン樹脂の分子量)は高々100000、好まし
くは50000以下、更に好ましくは10000以下である。シリ
コーン系樹脂(I)の分子量は特に限定しないが、水中
分散性、繊維への付着性、エッチング特性等より通常50
00以上、好ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上
である。分子量が5000未満では繊維への付着特性、皮膜
の耐久性、他の樹脂との非相溶性が幾分低下する傾向が
でる。
側鎖の形態は屈折率やプラズマエッチング性に影響
し、側鎖の分子量が大となれば、屈折率も大となり好ま
しくない。従って側鎖としては、C1〜C12程度の低級ア
ルキル基が好ましく、更に好ましくはC1〜C6程度である
が、耐熱性、皮膜形成性の向上の為にベンゼン環や不飽
和結合、アミノ基、エポキシ基、水酸基、アルコキシル
基等を含有してもよい。これらの側鎖に存在する官能基
は活性な反応性を有し、架橋構造を形成しやすい。架橋
構造を形成する事により、皮膜強度,耐熱性,耐久性は
更に向上する。
混合樹脂皮膜(A)を形成するのに使われる樹脂(I
I)としてはセルローズ系樹脂及びその誘導体,ポリメ
チレンオキシド,ポリエチレングリコール,ポリエーテ
ルエステル系樹脂,ポリエステル系樹脂,アクリル系樹
脂,フッ素化アクリル系樹脂,変性アクリル樹脂及びポ
リウレタン樹脂等があるが、透明性、水中分散性が良く
シリコーン系樹脂(I)のと混合皮膜を形成させた場
合、皮膜中でも良好な、分散・相分離状態を示すもの、
例えばポリエーテル樹脂,ポリエステル樹脂,アクリル
系樹脂,フッ素化アクリル系樹脂,ポリウレタン樹脂等
が好ましい。
樹脂I及びIIは互いに非相溶であるが、良好な混和性
を有すること、樹脂IとIIよりなる皮膜の透明性、均一
性、強度、耐久性が良好であることが好ましい。またエ
ッチング速度の小さい樹脂Iの屈折率が繊維或いは樹脂
IIの屈折率より小さい事が好ましい。IとIIが混和性は
有するが非相溶であれば、IとIIとを混合した時に、良
好な混合物は形成するが、均一な相を形成せずI相、II
相に相分離を生じる事を言う。混和性が良好でなけれ
ば、ゲル化や増粘或いは沈澱が生じIとIIとの良好な混
合樹脂は形成できず、良好な皮膜は形成できない。まし
てや良好な深色化繊維を工業的有利に製造する事は困難
である。又、非相溶性であるとは、IとIIの樹脂を十分
に混合させても一体化せず相分離している事で、これは
電子顕微鏡、光学顕微鏡で観察される。一般的に言えば
IとIIとを混合した場合、極端に混合比が異なる時、混
合比の小さいものが連続した相(海成分)となり、混合
比の小さいものが非連続の相(島成分)となる。非相溶
性がなければ(相溶性であれば)、IとIIは分子オーダ
ーで均質となり、お互いの特徴をなくすばかりか、耐熱
性、物性、化学的安定性に欠けたものとなり、深色効果
も余り期待できない。
シリコーン系樹脂(I)及び樹脂(II)は、繊維付着
前の乳化状態での分散粒子の粒径が高々20μ、好ましく
は10μ以下、更に好ましくは5μ以下である。シリコー
ン系樹脂(I)と樹脂(II)との重量比は、99/1〜20/8
0が好ましく、更に好ましくは98/2〜30/70、特に好まし
くは95/5〜50/50である。樹脂(I)が99重量%より多
く樹脂(II)が1重量%より少ない場合は、シリコーン
系加工剤としての前述した問題点の改良或いは耐久性の
付与が十分にできず好ましくなく又凹孔の大きさ数が不
足する。又樹脂(I)が20重量%より少なく樹脂(II)
が80重量%より多くなれば、エッチング形状が数は多い
が比較的単調で小さな凹凸となりやすいか、或いは凹凸
の傾きが小さくかつなだらかな凹凸となりやすく深色化
効果の発現が十分でない。
混合樹脂(A)は、繊維重量当り高々15重量%の付着
量が好ましい。好ましくは0.2/10重量%、更に好ましく
は0.3〜7重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%であ
る。15重量%を越えると、混合樹脂の皮膜が均一に付着
せず硬化など風合の変化や透湿性、通過性等の低下や、
樹脂層の厚さによる色のくすみ等の問題が生じ易い。一
方0.2重量%より少なければ、樹脂皮膜が薄すぎて深色
硬化の発現や耐久性の低下があり好ましくない。
混合樹脂IとIIは、その非相溶性の為に繊維表面上で
も互いに相分離構造を形成する。相分離の大きさ即ち
I、II成分の領域の形状及び大きさは、樹脂I及びIIの
物性及びその混合比率に影響をうけ、一概に言えない
が、混合比率の大きいものが海成分となり連続相として
存在しやすく、小さいものが島成分となり非連続相とし
て存在しやすい。即ち、I/II=9/1〜8/2程度であればII
成分が島成分として存在しやすく、II/I=9/1〜8/2程度
であればI成分が島成分として存在しやすい。又I/II=
7/3〜3/7ではより小量の成分が島成分となりやすいが、
部分的にはお互いに海/島が明確にならず入り組んだ形
状をとる場合もある。しかし、例えばIとしてシリコー
ン系樹脂、IIとしてフッ素化アクリル樹脂を選んだ場
合、I/II=100/0〜30/70程度までシリコーン系樹脂が混
合樹脂皮膜(A)の表面部分により多く集まるような相
分離状態を示す。前述したように95/5〜50/50において
最も深色効果が大きい事は、相分離の形、即ちエッチン
グ除去されて生成した凹孔の形として奥拡がりの孔が多
くかつ大きさは小さくもなく比較的連続したものでかつ
複雑な形状をしたものである為、深色正の発現には効果
的であると思われる。しかし、これらも前述したように
I及びIIの成分の物性に影響されるところが大である。
繊維表面上の混合樹脂皮膜は深色性発現の一つの要因
である凹凸及び/又は凹孔を有する。凹凸及び/又は凹
孔は繊維構造物の表面等、少なくとも繊維の一部分に存
在すればよく、必ずしも繊維全体に存在する必要はな
い。こうした凹凸及び/又は凹孔を形成させる事によ
り、深色化効果、耐摩耗堅牢度及び耐洗濯堅牢度のすぐ
れたものが出来るのであるが、凹孔の場合更に好まし
い。
本発明の凹孔の形状及び大きさ、数は特に限定される
ものではないが、例えば大きさについては凹孔占有面積
で表わせば単位面積当り通常50%以下、好ましくは5〜
40%、更に好ましくは7〜35%である。数については、
通常1μ当り30個以下、好ましくは1〜20個、更に好
ましくは1〜15個である。凹孔の面積が50%を越える
と、深色化に対しては効果が増加しないばかりか、耐摩
耗性、光沢等低下し好ましくない(例えばプラズマ処理
の時間が長くなると、第4図にみられるように凹孔が拡
がった部分が多くなり不利になる)、又凹孔の個数につ
いては、凹孔の占有面積、凹孔の大きさ等にも影響され
るものであるが、通常30ヶ/μ以下である。30ヶ/μ
以を越えると、凹孔が小さくなったり或いは凹孔と凹
孔との間隔が小さくなり、耐摩耗性、光沢の低下等の点
で不利となる。
混合樹脂の皮膜(A)への凹孔の形成は、樹脂(I)
と(II)の溶剤溶解性の相違による一成分の洗い出し、
耐熱性の相違による加熱気化、或いはプラズマエッチン
グ性の相違等、公知のエッチング技術を用いて可能であ
るが、特にプラズマエッチング法により行なうのが微小
な凹孔をより鋭角的に生成できるという点で好ましい。
次に凹孔の形状について述べる。凹孔の繊維表面とのな
す角は、より鋭角的であればある程深色化という点では
効果的であるが、従来の文献に見られるものは、アルカ
リ処理にしてもプラズマ処理にしても該角度θが鋭角的
でなく例えば120゜かそれ以上と推測される(特開昭56
−107512号第1図参照)。或いは凹凸の山部、谷部がな
だらかである為に深色化効果は十分でなかった。第2図
と第3図に本発明における凹孔の好ましい形状と従来の
凹凸の形状を模式的に示す。第2図で示されるように、
凹孔の角度θが鋭角的であれば、入射光が入射光の幅広
い入射角に対して凹孔に吸収される。これに対して、第
3図のように凹孔の角度が鋭角的であれば、凹孔へ入射
した光のうちのかなりの量が直ちに反射し、外部へ出て
いく。
本発明において好ましくは樹脂(I)と(II)とでは
プラズマエッチング速度が異なり、(I)より(II)の
方が通常1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好まし
くは2倍以上エッチングされやすい為に、皮膜成分のう
ち(II)相の方が優先的にエッチングが進行する。即
ち、相分離しかつエッチング速度が(I)の方が小さい
為に、屈折率の小さい(I)の皮膜中により短時間で
(II)のエッチングされた孔が形成され、微小な凹孔が
形成される事になる。こうして樹脂(I)の部分の低屈
折率皮膜と凹孔の形成により深色化が効率よく発現し、
かつ耐久性にもすぐれた深色化繊維が得られる。又、混
合樹脂の(I)と(II)のポリエステル系合成繊維への
親和性については、(II)の親和性が(I)より大きく
なるように設定すると(例えば(I)にシリコーン系樹
脂、(II)にポリエーテルエステル系樹脂)ポリエステ
ル系合成繊維へ混合樹脂皮膜を形成させた場合、相分離
した(II)の混合樹脂皮膜中の密度がポリエステル繊維
により近いところでは大きく、樹脂皮膜表面近くでは小
さくなる。逆に(I)に関しては、樹脂表面近くで密度
が大きく、繊維表面の近くでは密度が小さいという密度
勾配を有すると思われる。従ってこういう皮膜の場合
は、凹孔形成後より深色性が良好となる。何故ならば、
プラズマエッチングにより優先的に形成される凹孔は、
第1図に示すように孔の奥がむしろ拡がった形状を示す
場合が多いからである。こういう凹孔の形成は従来提案
されてもおらず、本発明において初めて見出されたもの
である。凹孔の入口が小さく奥が広い為、凹孔に達した
光は反射して外部へ出る事が極めて困難であり、入射光
の多くが屈折光として繊維内部に侵入する。一方、従来
から提案されている凹凸は丁度ネジ山のような一定角度
の凹凸のくり返しである為に凹孔へ入った光の大部分が
そのまま反射してしまい、表面にいくら凹凸をつけても
深色化効果は十分ではなかった(例えば特開昭55−1075
12号公報第1図参照)。
凹凸及び/又は凹孔好ましくは実質的に凹孔を有する
混合樹脂皮膜(A)を表面に形成した繊維は、光の表面
反射や鏡面反射の低減により、深色化或いは鮮明化す
る。しかし凹孔の大きさが0.1〜1μ程度と小さく、繊
維の着用や摩擦或いは熱により、凹凸や凹孔がつぶれや
すい。その為に部分的に表面の反射に変化が生じ、部分
的な色あせ、色斑という品質的な欠陥となる。こういう
色あせ、色ムラは、前述の引例(特公昭60−37225号公
報)に示した深色性の程度(L値:11〜13)では余り目
立たないが、L値10未満と黒さのレベルが格段に上る
と、この欠陥は顕著に目立つようになり、引例の手段で
は解決しない。本発明者らは、この色あせ、色斑の問題
を、シリコン樹脂を少なくとも20重量%以上含有した摩
擦耐久性を向上させうる樹脂組成物(B)の皮膜を上記
皮膜(A)の上に更に形成させる事により、解決した。
樹脂(B)としては、透明でかつ屈折率(nb)が繊維形
成物の屈折率(n0)より小さい物が好ましい。もちろん
皮膜(A)上に良好な皮膜形成性を示すものが更に好ま
しい。具体的には皮膜(A)との親和性、界面での不均
一性のなさ、透明性、低屈折率、平滑性付与等の点でシ
リコーン系樹脂(III)を少なくとも20重量%含有する
ことが必要である。
シリコーン系樹脂(III)は前述のシリコーン系樹脂
(I)と、基本的に同じものでよいが、中でも分子量50
00〜100万の未変性のジメチルシリコーン樹脂、アミノ
基当量が1万以上で分子量1万〜100万のアミノ基変性
ジメチルシリコーン樹脂、エポキシ基当量が3000〜5000
で分子量5000〜100万のエポキシ基変性ジメチルシリコ
ーン樹脂が好ましい。
樹脂(B)には、皮膜形成性、皮膜の均一性、皮膜強
度、摩擦耐久性、耐洗濯・ドライクリーニング性向上、
屈折率の調整の為に他の添加剤を加えてもよい。例えば
アミノ基変性ジメチルシリコーンにエポキシ基含有化合
物特にエポキシ基を高濃度で含有し、活性なシラン化合
物及びエポキシ変性シリコーン樹脂を少なくとも5%、
好ましくは少なくも10%、更に好ましくは少なくとも30
%程度添加する事により、上述の性能が改善される。
又、樹脂(B)にシリコーン樹脂(III)を用いた場
合、シリコーン樹脂(III)による撥水性、ヌメリ感、
布の滑り感、縫目の滑脱性が出やすいが、これらを改良
する為にアクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルエ
ステル樹脂、エチレン−酢ビ樹脂等好ましくはウレタン
樹脂やエチレン−酢ビ樹脂を少量例えば高々40%程度混
合する事も出来る。縫目の滑脱性は、滑脱抵抗力の測定
法(JIS L 1096 B法、5kg荷重)において好ましくは3.0
mm以下、より好ましくは2.7mm以下、最も好ましくは2.5
mm以下とする。或いは、滑り性の改良、接着性の改良の
為に酸化チタン,酸化アンチモン,酸化マグネシウム等
を添加する事も可能である。
樹脂(B)の皮膜の厚さは通常高々0.3μm、好まし
くは高々0.2μm、更に好ましくは高々0.1μm、特に好
ましくは0.05μmである。0.3μmより厚い場合は、皮
膜(A)の形成された凹凸及び/又は凹孔が埋まり、表
面の凹凸及び又は凹孔が消失して深色性の低下があるか
或いは風合の低下、縫製製等后加工性の低下等欠点が生
じる。樹脂(B)の付着形態は前述した特公昭60−3722
5号公報にように凹部を埋めるのではなく、皮膜(A)
に形成された凹凸及び/又は凹孔を残すように薄く均一
に付着される事が好ましい。
本願発明の深色性は前述したように黒いものを対象に
した場合、L値で示せば10未満好ましくは高々9.5であ
る。極めて良好な染色性例えば黒さを有する布は着用や
摩擦によって色あせ、色斑を生じるが、本発明では、例
えば摩擦テスト前後のL値の差(ΔL)がより小さいも
のであり、好ましくはΔLが1.5以下、より好ましくは
1.2以下、特に好ましくは0.8以下である。L値が10未満
ではΔLが1.5以上になると、色あせ、色斑が目立ち商
品価値が著しく低下する。
以下、図面により本発明の好ましい一例を更に詳しく
説明する。
第1図は本発明繊維の横断面の模式図である。1は繊
維自体、2は凹孔を有する混合樹脂皮膜(A)、3は樹
脂(B)の皮膜を示す。第4及び第6図は凹孔を有する
樹脂皮膜(A)をもった繊維の表面、また第7〜9図は
更に樹脂(B)の皮膜を形成した本発明繊維の表面の走
査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。一方、第10図はポ
リエステル繊維を直接低温プラズマ処理した繊維の表
面、第11図はこれに樹脂(B)の皮膜を形成した繊維の
表面を示すSEM写真である。
本発明において、繊維の深色性を低下させる事なく摩
擦耐久性が改良される理由は定かではないが、以下のよ
うに推測できる。まず、混合樹脂皮膜(A)に形成され
た凹孔が奥に拡がった孔の形状であり、かつ凹孔以外の
部分が平面状となっており、基本的に深色性が良好でか
つ摩擦耐久性が良好である。しかも本願発明の摩擦耐久
性を改良する樹脂(B)の皮膜が皮膜(A)と親和性が
よくかつ皮膜(A)に形成された凹凸,凹孔を埋めない
ように均一な厚さで形成されている為に深色性を低下さ
せず、摩擦耐久性が改良されたものと思われる。
次いで本発明繊維の製造方法の一例を示す。
天然繊維或いは合成繊維よりなる着色布に混合樹脂皮
膜(A)を形成する方法は、浸漬吸着法即ち樹脂分散液
に含浸後搾液し、しかる後に乾燥又は乾燥後乾熱処理、
湿熱処理或いは高温湿熱処理のいずれか行なう方法、或
いはコーティング法即ち樹脂液をグラビアコーター等で
コーティング付与した後で前述の熱処理を行なう等、従
来公知の方法で行なう事が出来るが、浸漬吸着法が好ま
しい。浸漬吸着法において繊維表面へ混合樹脂の均一な
皮膜を形成させる為には、混合樹脂の分散液中の樹脂濃
度を通常15%以下、好ましくは10%以下、更に好ましく
は0.1〜7%にする。又、分散液中の樹脂の混合状態の
安定性、分散安定性の向上の為には、界面活性剤例えば
通常用いられるカチオン系界面活性剤,ノニオン系界面
活性剤,或いはアニオン系界面活性剤を添加してもよ
い。活性剤の添加量は混合樹脂量の高々50%好ましくは
高々20%である。
繊維への樹脂皮膜(A)の付着量のコントロールは分
散液中の樹脂濃度、繊維への分散液の付着或いは樹脂付
着回数等で行なう事が出来る。繊維表面への混合樹脂の
付着量は通常15%以下、好ましくは0.2〜10%、更に好
ましくは0.3〜5%である。付着量が0.1%以下では、目
的とする深色化合物効果が得られにくく、好ましくな
い。一方、15%を越えると処理布の風合が粗硬になるば
かりか、他の加工処理を行なうのに妨げとなる。
樹脂皮膜(A)に凹凸及び/又は凹孔好ましくは凹孔
を形成させる方法は、樹脂皮膜(A)を構成する相分離
状態で存在する樹脂成分の一種或いは二種以上を樹脂の
物性を利用して、プラズマ処理による選択的エッチング
法、溶剤溶解法、加熱気化法その他により可能である
が、好ましくはプラズマエッチング法により除去し、可
能である。
本発明方法で好ましく用いる凹孔形成法は、低温ガス
プラズマを用いたエッチングである。低温ガスプラズマ
は、プラズマ中の電子温度がイオン又は他の活性原子の
温度より十分高い非平衡プラズマを言い、該プラズマを
発生させる方法としては公知のいずれの方法も採用する
事が出来る。例えばJ.R.ホラハン(Hollahan)とA.T.ベ
ル(Bell)版「プラズマ化学の応用技術」,ワイリー,
ニューヨーク,1974およびM.シエン(Shen)版「重合体
のプラズマ化学」,デッカー,ニューヨーク,1976に記
載されている。即ち高周波発生器に連結された平行板電
極の間にモノマーを真空下で入れ、真空室の外部又は内
部のいずれかの平行板を用いてプラズマを生成させるこ
とが出来る。また外部誘導コイルによって電場をつくら
せ、イオン化ガスのプラズマを発生させてもよく、また
反対に荷電した電極に間隔をおいて直接真空室に入れて
プラズマを生成させてもよい。
使用するガスとしては、非重合性のガス、重合性のガ
スいずれも目的に合致すれば使用可能であるが、好まし
くはAr,O2,N2,H2,空気,水,CO2等の無機非重合性ガスで
あるが、CF4,CF3Cl,CF2,Cl2等の有機性ガスでもエッチ
ング特性良好なものは使用可能である。これらのガスは
単独でも、又は混合しても使用可能である。
ガス圧力は、エッチング挙動、エッチング物の品質等
に大きく影響するが、O2ガスの場合通常0.2〜5torr、好
ましくは0.3〜2torr、更に好ましくは0.5〜1torrであ
る。0.2torr未満ではエッチング速度が遅く、深色化効
果が発現しにくい。5torr以上では酸化反応が活発にな
りすぎ、繊維表面の灰化、溶融等が生じる。又N2ガスの
場合、通常1torr以下、好ましくは0.8torr以下、更に好
ましくは0.6torrであり、Arガスの場合は通常5torr以
下、好ましくは0.2〜3torr、更に好ましくは0.5〜2torr
である。
プラズマエッチングにより形成される凹孔及び/又は
凹凸は、プラズマ電子或いは活性ガスが接触する部分に
生成し、織編物、不織布等の布帛では表面部分に集中し
て生成しやすく、裏面或いは内部では生成しにくい。従
って目的や用途に応じて、繊維の形態或いは処理面を適
宜選択する。
印加する高圧は、直流,交流,高周波のいずれかもが
使用し得るが、プラズマ発生の容易さ及び安定性、均一
性、処理効率の点より低周波、高周波の印加が好まし
く、更に好ましくは数MHz〜数+MHzの高周波である。
高周波の出力は電極の単位面積当り通常0.01〜10W/cm
2であり、好ましくは0.05〜5W/cm2、更に好ましくは0.1
〜2W/cm2である。処理時間は少なくとも数秒、好ましく
は10秒以上、特に好ましくは30〜300秒である。出力が
大きい程処理時間は短時間でよいが、品質とコスト等と
の関連で最適条件を選択する必要がある。
非接地電極とは低周波或いは高周波電源に連結された
電極であり、接地電極との間で低温ガスプラズマが発生
する。
本発明において、繊維(以下被処理物ともいう)は非
接地電極近傍に生成しているプラズマシース内部、好ま
しくは非接地電極から5mm以内に配置し、更に好ましく
は非接地電極に接触させておく。
この場合、非接地電極の形状は、従来使用されていた
棒状電極より、平面状、比較的大きな曲率を有する曲面
状或いは円筒状電極が、プラズマの異常放電や不均一性
及びその為の被処理の損傷がなく好ましい。
従来の方法では、被処理物は接地電極上或いは非接地
電極と接地電極の中間に浮かせて接地されていた為、深
色化処理速度や効果が十分でなく、ある程度の深色効果
を出す為には、大きな処理装置を必要とした。又、明確
な深色効果を発現する為には、高周波或いは低周波の出
力を上げ長時間の処理が必要であったが、高出力、長時
間では、発生する熱や光特に紫外線,近・遠赤外線の影
響で、素材の変性や染料の変性,退色等の悪影響があっ
た。
本発明の被処理物をプラズマシース内、好ましくは非
接地電極に接触させておく効果の理由は判明しないが、
非接地電極にマイナスのセルバイアスが発生し、プラズ
マ中のプラス荷電粒子が加速されて被処理物に衝突する
為と推測される。
次いでプラズマ処理して得られた凹孔を有する繊維
を、好ましくは水洗浄、水系処理剤による前処理を行な
う事なく、摩擦耐久性を向上させうる樹脂Bの水分散液
で処理して樹脂Bの皮膜を形成させる。水洗浄、水系処
理剤による前処理を行なうと、樹脂が均一に付着しがた
く、繊維表面を均一に覆うというよりむしろ凹孔を埋め
てしまうように付着される傾向があり、深色効果を低下
させるか或いは、部分的な深色性のムラが出来たり、耐
摩耗性が十分に改良されない。
この理由は定かではないが、水洗浄等の前処理及びそ
れに続く乾燥により混合樹脂皮膜A表面が撥水性に変化
した為、或いはプラズマ処理による表面活性が失なわれ
る為と思われる。これは、混合樹脂として、シリコーン
系樹脂を使用した場合に特に著しい。
樹脂Bの皮膜を形成する方法は、浸漬吸着法即ち樹脂
分散液に含浸後搾液し、しかる後に乾燥又は乾燥後乾熱
処理、湿熱処理或いは高温湿熱処理のいずれか行なう方
法、或いはコーティング法即ち樹脂液をグラビアコータ
ー等でコーティング付与した後で前述の熱処理を行なう
等、従来公知の方法で行なう事が出来るが、浸漬吸着法
が好ましい。浸漬吸着法において、混合樹脂皮膜上への
樹脂Bの均一な皮膜を形成させる為には、分散液中の樹
脂B濃度を通常15%以下、好ましくは10%以下、更に好
ましくは0.1〜7%にする。又、分散液中の樹脂の混合
状態の安定性、分散安定性の向上の為には、界面活性剤
例えば通常用いられるカチオン系界面活性剤、ノニオン
系界面活性剤或いはアニオン系界面活性剤を樹脂Bの50
%以下、好ましくは20%以下程度添加してもよい。付着
量のコントロールは分散液中の樹脂濃度、繊維への分散
液の付着率或いは樹脂付着回数等で行なう事が出来る。
樹脂Bの皮膜の形成後、加工布の摩擦堅牢度、昇華堅
牢度、耐熱堅牢度等の改良の為に水洗、湯洗或いは簡単
なソーピング処理を行なう事も好ましい。更に必要なら
ば親水加工、撥水加工、防シワ加工、制電加工等の後加
工を行なう事も可能である。
繊維の着色はプラズマ処理工程或いは樹脂処理工程の
前に行なっておいてもよく、又プラズマ処理或いは樹脂
処理工程の後に行なっても何らさしつかえないが、プラ
ズマ処理によるエッチング孔の保存の為に皮膜(A)の
形成前に行なうのが好ましい。
本発明における評価は次の方法により行った。
A.深色性の評価 深色性(色の深み)は、CIE1976(Lab)法により、カ
ラーアナライザーで反射率を測定してYS値を求め、下記
の式よりL値を得た。L値は小さい程深色化のレベルが
高いことを表わしている。
L=25(100Y/Y01/3−16 B.染色堅牢度の評価 染色堅牢度はJISの規格(洗濯堅牢度JISL−0844 A2
法、ドライクリーニング JIS L−0860)に準じた。
C.非相溶性の評価 樹脂混合物をフィルム、或いはガラス板上に成膜し、
光学顕微鏡、位相差顕微鏡、電子顕微鏡或いは蛍光X線
分析によって観察した。
D.凹凸及び凹孔の評価 凹凸及び凹孔の存在及び大きさ、数は光学顕微鏡、走
査型電子顕微鏡により容易に確認できる。又、凹孔の孔
面積は拡大倍率の大きなSEM写真を撮り、その写真より
凹孔部分の面積を測定するか或いはコンピューターによ
る画像解析により実測する。
E.マサツ堅牢度 JIS L−0849(1971)に準じて測定した。すなわち、
学振型摩擦堅牢度試験器を用い、200gの荷重で100回、
同じ布どうしを摩擦し、摩擦前のL値(Lb)及びマサツ
テスト後のL値(La)マサツ前後のL値の差ΔL(=La
−Lb)を評価する。
以下、本発明の好適な実施態様を記す。
(イ) 混合樹脂皮膜(A)が実質的に凹孔を有する特
許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ロ) 凹孔が1μm2当り10個以下である特許請求の範
囲第1項記載の繊維。
(ハ) 樹脂(B)の皮膜が皮膜(A)の凹凸及び/又
は凹孔を実質的に埋めることなく形成されている特許請
求の範囲第1項記載の繊維。
(ニ) 樹脂(B)の皮膜の厚さが高々0.2μmである
特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ホ) 繊維形成物の屈折率(n0)が混合樹脂皮膜
(A)の屈折率(na)、樹脂(B)の屈折率(nb)より
大きい特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ヘ) 樹脂(B)がシリコーン系樹脂(III)を主成
分とする特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ト) シリコーン系樹脂(III)が分子量5,000〜1,00
0,000のジメチルシリコーン樹脂である特許請求の範囲
第1項記載の繊維。
(チ) シリコーン系樹脂(III)がアミノ基当量が100
00以上であるアミノ変性ジメチルシリコーン樹脂である
特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(リ) シリコーン系樹脂(III)がエポキシ基当量が3
000〜5000であるエポキシ基変性ジメチルシリコーン樹
脂である特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ヌ) シリコーン樹脂(III)がアミノ変性ジメチル
シリコーン樹脂と、エポキシ基を有するシラン化合物と
よりなる特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(ル) シリコーン樹脂(III)がアミノ変性ジメチル
シリコーン樹脂とエポキシ変性ジメチルシリコーン樹脂
とよりなる特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(オ) 樹脂Bがシリコーン樹脂(III)と、フッ素化
アクリル系樹脂又は末端ブロックドイソシアナートポリ
ウレタン樹脂よりなる特許請求の範囲第1項或いは第1
項記載の繊維。
(ワ) 深色化繊維よりなる布帛の摩擦テストにおい
て、テスト前のL値(Lb)が高々10であり、摩擦テスト
後のL値(La)との差ΔLが1.5以下である事を特許と
する特許請求の範囲第1項記載の繊維。
(カ) エッチング速度の差が1.2倍以上ある特許請求
の範囲第2項記載の方法。
(ヨ) 混合樹脂の一成分がシリコーン系樹脂である特
許請求の範囲第2項記載の方法。
(ヨ) 混合樹脂がシリコーン系樹脂とポリエーテルエ
ステル樹脂又はシリコーン系樹脂とフッ素化アクリル系
樹脂、又はシリコーン系樹脂とポリウレタン樹脂よりな
る特許請求の範囲第2項記載の方法。
(タ) 混合樹脂皮膜の付着量が繊維重量当り高々15重
量%である特許請求の範囲第2項記載の方法。
(レ) 混合樹脂皮膜の凹孔の数が1μm2当り高々30個
である特許請求の範囲第2項記載の方法。
(ソ) 耐摩耗性后処理剤の皮膜の厚さが高々0.2μm
である特許請求の範囲第2項記載の方法。
(ツ) 耐摩耗性后処理剤がシリコーン系樹脂(II)を
主成分とする特許請求の範囲第2項記載の方法。
(ネ) シリコーン系樹脂(II)がアミノ変性ジメチル
シリコーン樹脂及びエポキシ変性シリコーン系樹脂とよ
りなる特許請求の範囲第2項記載の方法。
(発明の効果) 本発明の深色化繊維は、驚くべきことに深色性が従来
提案されているものよりはるかに良好で、かつ耐洗濯性
及び耐摩耗性等の堅牢度が良好である。更に深色性或い
は濃色効果が著しい為に、染料使用量も従来より低減で
きる、色あせ・色の移行がないなど品質とコストにすぐ
れたものである。かかる本発明の深色化繊維は、ブラッ
クフォーマルや学生服など黒さが生命である用途にはも
ちろん、カラーフォーマルやプリント等多様な繊維製品
にも適用することができ、極めて有用である。
また本発明の方法によれば、摩擦耐久性に優れた深色
化繊維を混合樹脂の付着量が少なく、かつ効果的に繊維
を粗面化できるので、工業的に極めて有用である。
(実施例) 実施例1〜9 通常の紡糸・延伸した45d/12fのポリエステルフィラ
メント(セミダル、U断面)と、3.200m/分の高速紡糸
した75d/36fのポリエステルフィラメント(ブライト、
丸断面)とをインタレースした後仮撚加工して、120d/4
8fの複合崇高糸(YA)を製造した。次いで、経糸の表に
YAのS、Z撚2.500T/Mの撚糸を、経糸の裏にYAのS撚80
0T/Mの撚糸を、緯糸にYAのS、Z撚2.500T/Mの撚糸を用
いて、経密度220本/インチ緯密度87本/インチの表梨
地ジョーゼット裏サテンの風合いがソフトな織物を製造
した。
この織物を、常法に従ってワッシャーにした後180℃
の乾熱中セットし、次いで90℃の20%カセイソーダ水溶
液中に浸漬して20%の減量処理を行い、目付がそれぞれ
180g/m2の織物とした。これらの織物をカヤロンポリエ
ステルブラックGSF(日本化薬(株)製)15%o.w.f.で
染色した後、還元洗浄して黒染の織物(FA)を得た。
該織物に、含フッ素アクリル樹脂とアミノ変性ポリジ
メチルシリコーン樹脂の重量比2:8の混合樹脂水分散液
を調製し、次いで織物重量当り15%o.w.f.になるように
浸漬法により付着させ、乾燥後150℃で熱処理を行ない
固定した。
次いで、織物を下記の条件で低温プラズマによりエッ
チング処理を行った。プラズマ処理は、織物サンプルの
裏側を非接地電極に接触させ、プラズマ処理器内を10-2
torrまで脱気後、O2ガスを導入して0.3torrに調整し、1
3.56MHzの高周波を50Wの出力で印加して10分間処理した
(サンプルA)。また、織物サンプルの裏側をアース側
電極に接触させる以外、同様のプラズマ処理を施した
(サンプルA′)。
これらのサンプルを洗浄することなく、第1表に示す
樹脂(III)の水分散液に浸漬した後120℃3分で乾燥熱
処理した。
比較の為に染色後の織物FAに混合樹脂を付与する事な
く、布の裏面を非接地電極に接触させて同条件にてプラ
ズマ処理を施した後、アミノ変性ポリジメチルシロキサ
ン/エポキシシランを付着させた。尚、プラズマ処理時
間を10分以上例えば20分に延ばしてもエッチング重量は
増加するが、凹凸の形状は変化せず、深色効果について
もL値を12程度以下に下げることはできない(比較例3
〜6)。
第1表から判るように、摩擦耐久性を向上させうる樹
脂(B)の皮膜を形成すると、摩擦テスト後のL値の増
大を1.5以下に抑えることができ、また摩擦部分の白化
が目立たなくなる。
実施例10〜13 実施例1で用いたプラズマ処理上りの織物Aを、第2
表に示す摩擦耐久性樹脂(B)の水分散性にて浸漬処理
し、120℃、3分で乾燥、熱処理して皮膜を形成した。
重量変化からみた樹脂(B)の付着量は約0.5%owfであ
った。
第2表から判るように、ウレタン樹脂を併用した実施
例12及び13はシリコーン樹脂特有の滑り感が抑制されて
おり、縫目の滑脱性が改善されている。また熱融着タイ
プ不織布からなる芯地の接着性も良好であった。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明繊維において最も好適な例の繊維横断面
を示す模式図である。第2図は本発明における凹孔の好
ましい形状、第3図は従来の凹凸の形状について深色化
効果を説明する図である。 第4及び6図は凹孔を有する樹脂皮膜(A)をもった繊
維の表面、第7〜9図はこれに摩擦耐久性樹脂(B)の
皮膜を形成した本発明繊維の表面、また第10図はポリエ
ステル繊維自体をプラズマ処理して粗面化した繊維の表
面、第11図はこれに樹脂(B)の皮膜を形成した従来公
知の繊維の表面をそれぞれ示すSEM写真である。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】繊維の表面に凹凸及び/又は凹孔を有し、
    互いに非相溶でかつ混和性を有する2種以上の樹脂から
    なる混合樹脂皮膜(A)が形成され、更に皮膜(A)の
    上にシリコン樹脂を少なくとも20重量%以上含有した摩
    擦耐久性を向上させうる樹脂組成物(B)の皮膜が形成
    されていることを特徴とする深色化繊維。
  2. 【請求項2】互いに非相溶で混和性を有しかつエッチン
    グ速度の異なる2種以上の樹脂からなる混合樹脂を用い
    て少なくとも2相に相分離している皮膜(A)を繊維表
    面に形成させ、次いで低温ガスプラズマにより混合樹脂
    皮膜(A)の少なくとも一部に凹凸及び/又は凹孔を形
    成させた後、シリコン樹脂を少なくとも20重量%含有し
    た摩擦耐久性を向上させうる樹脂組成物(B)の水分散
    液を付与して樹脂組成物(B)の皮膜を形成する事を特
    徴とする深色化繊維の製造方法。
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