JP2566885B2 - 深色化繊維構造物及びその製造方法 - Google Patents

深色化繊維構造物及びその製造方法

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JP2566885B2 JP62090485A JP9048587A JP2566885B2 JP 2566885 B2 JP2566885 B2 JP 2566885B2 JP 62090485 A JP62090485 A JP 62090485A JP 9048587 A JP9048587 A JP 9048587A JP 2566885 B2 JP2566885 B2 JP 2566885B2
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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は深色化繊維構造物、特に耐久性の良好な深色
化繊維構造物及びその製造方法に関する。
(従来の技術) 合成繊維或いは天然繊維において、鮮明で色の深みを
有する繊維の検討が従来から行なわれており、“カラス
の濡れ羽色”を目的とした改良の提案がなされてきてい
る。
繊維工学Vol.22(No.5)P−360〜368(May、1969)
及び特公昭46−26887号公報には早くも、繊維表面を適
当な疎さで凹凸化(疎面化)する事により光学的な改質
ができる事を示しており、又特開昭52−99400号公報に
は特定の凹凸形状を有する深色化繊維が提案されてい
る。しかし、この方法では繊維表面自体をエッチングす
る為に、処理速度が遅い、染料の分解、染色堅牢度の低
下、エッチング状態のコントロールが困難等の問題があ
り、又繊維表面の屈折率については素材繊維と同一か或
いは密度アップの為に屈折率の増大があり深色効果の発
現性も小さい等、実用上の問題は多い。一方、従来から
フッ素系処理剤、シリコーン系処理剤、ポリウレタン系
処理剤等低屈折率表面を形成する各種処理剤で処理する
濃染化加工が行なわれている。この方法は簡便であり、
特別な装置も不用な事より工業的には有利であるが繊維
表面への加工剤の均一付着の困難さ、風合の変化や色調
の変化、染料の堅牢度の低下等が避けられず、又深色性
能においても処理剤の低屈折率による反射防止の硬化し
かないので十分でない等の問題がある。
特公昭60−37225号公報は、繊維表面の凹孔を屈折率
の小さい樹脂で埋め平滑表面を有する耐久性の良好な深
色化繊維の提案であるが、この方法では繊維特に天然繊
維表面に特定の凹孔を形成させる事が困難であり、仮に
凹孔が形成できたとしても、凹孔を樹脂で埋め表面を平
滑にする事では深色性の発現も小さい。又繊維全体を樹
脂皮膜する場合も上述した同じ欠陥を有する。
特開昭61−97490号公報或いは特開昭60−224878号公
報等ではポリエステル繊維にシリコーン系樹脂を付着さ
せた後プラズマ処理を行ない深色性を付与する方法を提
案している。この方法では繊維表面を覆っているシリコ
ーン系加工剤のエッチング速度が遅く、かつ明確な凹凸
を形成する事ができないなどエッチング状態が良好でな
く、工業的有利に良好な深色性或いは耐久性を有する深
色化繊維を得ることはできない。又別の問題としてはポ
リエステル繊維表面のプラズマエッチングである為に、
エッチング孔が単純で均一な凹凸しか生成せずにかなり
の数の凹凸が存在してなければ深色化の効果は乏しい。
これは凹凸の形状特にその傾きが小さく、又凹凸の頂点
及び底部が比較的なだらかな為と推測される。
特開昭60−17190号公報は、繊維表面にプラズマエッ
チングに対して耐性の差を有する樹脂皮膜を形成させプ
ラズマ処理を行ない樹脂表面に微細な凹凸を多数形成す
る事を提案しており、好ましい樹脂皮膜としては、無機
微粒子と、それと相溶性及び均一被覆性にすぐれた樹
脂、或いは屈折率が1.5以下のカチオン性ポリウレタン
および/またはビニル重合体変性カチオン性ポリウレタ
ンよりなるものである。この提案の樹脂表面の凹凸は大
きさが小さくかつ数が多い為にやはり前述と同様の問題
がある。
特開昭60−59171号公報には、シリコーン系樹脂に無
機微粒子を混合した処理剤で繊維を皮膜処理後、プラズ
マ処理し深色化繊維を得る方法を提案しているが、ここ
でもエッチング速度が遅い点、表面に付着した微粒子の
付着ムラによるエッチングムラ及び微粒子の脱落による
性能の変化等の問題がある。
(発明が解決しようとする問題) 本発明の目的とするところは、工業的有利にかつ安価
に、すぐれた耐久性を有する従来に得られなかった水準
の深色性を有する繊維構造物及びその製造方法を提供す
るにある。
(問題点を解決する為の手段) 本発明の黒着色された深色化繊維構造物は、2種以上
の樹脂からなる混合樹脂の皮膜を有する繊維構造物にお
いて、 (イ) 混合樹脂が互いに非相溶性であり、かつエッチ
ング速度の異なる樹脂成分からなり、 (ロ) 混合樹脂の皮膜が少なくとも2相に相分離して
おり、更に (ハ) 繊維表面の少なくとも一部に凹孔を有し、 (ニ) L値が10以下である ことを特徴とする。また本発明の製造方法は、互いに非
相溶でかつエッチング速度の異なる2種以上の樹脂から
なる混合樹脂を用いて少なくとも2相の相分離している
皮膜を繊維表面に形成させ、次いで低温ガスプラズマに
より混合樹脂の皮膜の少なくとも一部に凹孔を形成させ
る事を特徴とする。
本発明に於いて繊維構造物とは、特に素材に限定され
るものではなく、綿、羊毛、絹等の天然繊維、ポリエス
テル、ナイロン、アクリル、レーヨン、アセテート等の
化合繊の単繊維、糸、から編織物等の繊維構造物までの
すべてを含むが、繊維自体の発色性が悪く、かつ繊維表
面が平滑で屈折率が大きく表面反射の大きい繊維の改良
にはとりわけ有効である。繊維形態としては、フィラメ
ント、スライバー、織編物、不織物、植毛布、立毛布等
特に限定しないが、織編物、不織布等の平面状のものに
適用しやすい。
着色とは全面均一な着色、或いはパターン化された部
分着色例えばプリント等を云い、プラズマ処理前或いは
プラズマ処理後に着色される。
本発明において、繊維表面に非相溶性を有しかつエッ
チング速度の異なる2種以上の混合樹脂の皮膜を有する
事が必要である。即ち混合樹脂が相溶性を示すか或いは
エッチング速度が同程度であれば本発明が提案するよう
な樹脂表面に凹孔を形成させる事は出来ない。混合樹脂
は、本発明の目的に反しない限り2種を越えてもよい
が、ここでは、判りやすいように2種の樹脂A及び樹脂
Bの場合を考える。樹脂A及びBは互いに非相溶である
が、良好な混和性を有すること、樹脂AとBよりなる皮
膜の透明性、均一性、強度、耐久性が良好であることが
好ましい。またエッチング速度の小さい樹脂Aの屈折率
が繊維或いは樹脂Bの屈折率より小さい事が好ましい。
(A)と(B)が混和性は有するが非相溶であれば、
(A)と(B)とを混合した時に、良好な混合物は形成
するが、均一な相を形成せず(A)相、(B)相に相分
離を生じる事を言う。混和性が良好でなければ、ゲル化
や増粘或いは沈澱が生じ(A)と(B)との良好な混合
樹脂は形成できず、良好な皮膜は形成できずましてや良
好な深色化繊維を工業的有利に製造する事は困難であ
る。又、非相溶性であるとは、(A)と(B)の樹脂を
十分に混和させても一体化せず相分離している事で、こ
れは電子顕微鏡、光学顕微鏡で観察される。一般的に言
えば(A)と(B)とを混合した場合、極端に混合比が
異なる時、混合比の大きいものが連続した相(海成分)
となり、混合比は小さいものが非連続の相(島成分)と
なる。非相溶性がなければ(相溶性であれば)、(A)
と(B)は分子オーダーで均質となり、お互いの特徴を
なくすばかりか、耐熱性、物性、化学的安定性に欠けた
ものとなり、深色効果も余り期待できない。
エッチング速度が異なるとは、例えば低温プラズマ中
に混合樹脂の皮膜を有する繊維或いはその布帛をおきプ
ラズマエッチング処理を行った場合、非相溶性を示す各
樹脂の相によりエッチング除去される程度が異なり、従
って繊維表面に凹孔が形成される。プラズマエッチング
速度の小さいものとしては、例えば分子量の大きい飽和
炭化水素系樹脂、不飽和炭化水素系樹脂、ポリアミド樹
脂、シリコーン樹脂及び変性シリコーン樹脂、パーフル
オロエチレン系樹脂等であり特にアミノ変性シリコー
ン、エポキシ変性シリコーン、シラノール変性シリコー
ンが良い。エッチング速度の大きいものとしては、セル
ローズ系樹脂及びそれらの誘導体、ポリエチレングリコ
ール、ポリエーテルエステル系樹脂、アクリル系樹脂、
フッ素化アクリル系樹脂、及びそれらの変性物、ポリウ
レタン系樹脂等がある。
エッチング速度が小さくかつ透明性、皮膜形成性が良
好で、更に屈折率の小さい樹脂を一成分として使用した
場合深色性が特に良好となる。
シリコーン系樹脂は皮膜形成性、透明性が良好で、か
つ屈折率が小さい為に、エッチング速度の小さい樹脂成
分として特に好ましい。
2種以上の樹脂からなる混合樹脂の皮膜は、繊維重量
当り高々15重量%の付着量が好ましい。好ましくは0.2
〜10重量%、更に好ましくは0.3〜7重量%、特に好ま
しくは0.5〜5重量%である。15重量%を越えると、混
合樹脂の皮膜が均一に付着せず風合の変化や透湿性、通
気性等の低下や、樹脂層の厚さによる色のくすみ等の問
題が生じ易い。一方0.2重量%より少なければ、樹脂皮
膜が薄すぎて深色効果の発現や耐久性の低下があり好ま
しくない。
混合樹脂における(A)と(B)との比率(重量比)
は、混和性が良好で非相溶性を示せばいずれでもよい
が、好ましくは97/3〜10/90、更に好ましくは95/5〜20/
80、特に好ましくは90/10〜30/70である。深色性に関し
ては、(A)と(B)とを混合する事により(A)或い
は(B)単独の場合よりはるかに深色化する。第1図に
その一例を示す。(A)が97重量%より多く(B)が3
重量%より少ない場合は、シリコーン系加工剤としての
前述した問題点の改良或いは耐久性の付与が十分にでき
ず好ましくなく、又(A)が10重量%より少なく(B)
が90重量%より多くなれば、エッチング形状が数は多い
が比較的単純な単調で小さな凹凸となりやすいか、或い
は凹凸の傾きが小さくかつなだらかな凹凸となりやすく
深色化効果の発現が十分でない。即ち、混合樹脂AとB
とのエッチング速度の差、混合比率及び付着量の特定が
深色効果を最も効果的に発現させる。この理由は明らか
でないが次のように考えられる。
混合樹脂(A)と(B)は、その非相溶性の為に繊維
表面上でも互いに相分離構造を形成する。相分離の大き
さ即ち(A)、(B)成分の領域の形状及び大きさは、
樹脂(A)及び(B)の物性及びその混合比率に影響を
うけ、一概に言えないが、混合比率の大きいものが海成
分となり連続相として存在しやすく、小さいものが島成
分となり非連続相として存在しやすい。即ち、(A)/
(B)=9/1〜8/2程度であれば(B)成分が島成分とし
て存在しやすく、(B)/(A)=9/1〜8/2程度であれ
ば(A)成分が島成分として存在しやすい。又(A)/
(B)=7/3〜3/7ではより小量の成分が島成分となりや
すいが、部分的にはお互いに海/島が明確にならず入り
組んだ形状をとる場合もある。前述したように90/10〜3
0/70において最も深色効果が大きい事は、相分離の形、
即ちエッチング除去されて生成した凹孔の形が小さくも
なく比較的連続したものでかつ複雑な形状をしたものが
深色性の発現には効果的であると思われる。しかし、こ
れらも前述したように(A)及び(B)成分の物性に影
響されるところが大である。
繊維表面上の混合樹脂皮膜は深色性発現の一つの要因
である凹孔を有する。凹孔は繊維構造物の表面等、少な
くとも繊維の一部分に存在すればよく、必ずしも繊維全
体に存在する必要はない。こうした凹孔を形成させる事
により、深色化効果、耐摩擦堅牢度及び耐洗濯堅牢度の
すぐれたものが出来るのである。本発明の凹孔の形状及
び大きさ、数は特に限定されるものではないが、例えば
大きさについては凹孔占有面積で表わせば単位面積当り
通常50%以下、好ましくは5〜40%、更に好ましくは7
〜30%である。数については、通常1μ当り30個以
下、好ましくは25個以下、更に好ましくは1〜20個であ
る。凹孔の面積が50%を越えると、深色化に対しては効
果が増加しないばかりか、耐摩耗性、光沢等低下し好ま
しくない。又凹孔の個数については、凹孔の占有面積、
凹孔の大きさ等にも影響されるものであるが、通常30ケ
/μ以下である。30ケ/μを越えると、凹孔が小さ
くなったり或いは凹孔と凹孔との間隔が小さくなり、耐
摩耗性、光沢の低下等の点で不利となる。
混合樹脂の皮膜への凹孔への形成は、樹脂(A)と
(B)の溶剤溶解性の相違による一成分の洗い出し、耐
熱性の相違による加熱気化、或いはプラズマエッチング
性の相違等、公知のエッチング技術を用いて可能である
が、特にプラズマエッチング法により行なうのが微小な
凹孔をより鋭角的に生成できるという点で好ましい。凹
孔の繊維表面とのなす角は、より鋭角的であればある程
深色化という点では効果的であるが、従来の文献に見ら
れるものは、アルカリ処理にしてもプラズマ処理にして
も該角度θが鋭角的でなく例えば120゜かそれ以上と推
測される(特開昭55−107512号第1図参照)。或いは凹
凸の山部、谷部がなだらかである為に深色化効果は十分
でなかった。第1図と第2図に本発明における凹孔の好
ましい形状と従来の凹凸の形状を模式的に示す。第1図
で示されるように、凹孔の角度θが鋭角的であれば、入
射光が入射光の幅広い入射角に対して凹光に吸収され
る。これに対して、第2図のように凹孔の角度が鈍角的
であれば、凹孔へ入射した光のうちのかなりの量が直ち
に反射し、外部へ出ていく。
本発明においては(A)と(B)とではプラズマエッ
チング速度が異なる必要があり、(A)より(B)の方
が通常1.2倍以上、好ましくは1.5倍以上、より好ましく
は2倍以上エッチングされやすい為に、皮膜成分のうち
(B)相の方が優先的にエッチングが進行する。即ち、
相分離しかつエッチング速度が(A)の方が小さい為
に、屈折率の小さいAの皮膜中により短時間で(B)の
エッチングされた孔が形成され、微小な凹孔が形成され
る事になる。こうして樹脂A部分の低屈折率皮膜と凹孔
の形成により深色化が効率よく発現し、かつ耐久性にも
すぐれた深色化繊維が得られる。又、混合樹脂の(A)
と(B)のポリエステル系合成繊維への親和性について
は、(B)の親和性が(A)より大きくなるように設定
すると(例えばAにシリコーン系樹脂、Bにポリエーテ
ルエステル系樹脂)ポリエステル系合成繊維へ混合樹脂
皮膜を形成させた場合、相分離した(B)の混合樹脂皮
膜中の密度がポリエステル繊維により近いところでは大
きく、樹脂皮膜表面近くでは小さい。逆に(A)に関し
ては、樹脂表面近くで密度が大きく、繊維表面の近くで
は密度が小さいという密度勾配を有すると思われる。従
ってこういう皮膜の場合は、凹孔形成後より深色性が良
好となる。何故ならば、プラズマエッチングにより優先
的に形成される凹孔は、第1図に示すように孔の奥がむ
しろ拡がった形状を示す場合が多いからである。こうい
う凹孔の形成は従来提案されてもおらず、本発明におい
て初めて見出されたものである。凹孔の入口が小さく奥
が広い為に凹孔に達した光は反射して外部へ出る事が極
めて困難であり、入射光の多くが繊維内部に侵入する。
一方、従来から提案されている凹凸孔は丁度ネジ山のよ
うな一定角度の凹凸のくり返しである為に凹孔へ入った
光の大部分がそのまま反射してしまい、表面にいくら凹
凸をつけても深色化効果は十分でなかった(例えば特開
昭55−107512号公報第1図参照)。
天然繊維、或いは合成繊維よりなる着色布に混合樹脂
を付与する方法は、浸漬吸着法即ち樹脂分散液に含浸後
搾液し、しかる後に乾燥又は乾燥後乾熱処理、湿熱処理
或いは高温湿熱処理のいずれか行なう方法、或いはコー
ティング法即ち樹脂液をグラビアコーター等でコーティ
ング付与した後で前述の熱処理を行なう等、従来公知の
方法で行なう事が出来るが、浸漬吸着法が好ましい。浸
漬吸着法において繊維表面へ混合樹脂の均一な皮膜を形
成させる為には、混合樹脂の分散液中の樹脂濃度を通常
15%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは0.1〜
7%にする。又、分散液中の樹脂の混合状態の安定性、
分散安定性の向上の為には、界面活性剤例えば通常用い
られるカチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤或
いはアニオン系界面活性剤を混合樹脂量の50%以下、好
ましくは20%以下程度添加してもよい。
繊維への樹脂の付着量のコントロールは分散液中の樹
脂濃度、繊維への分散液の付着率或いは樹脂付着回数等
で行なう事が出来る。繊維表面への混合樹脂の付着量は
通常15%以下、好ましくは0.2〜10%、更に好ましくは
0.3〜5%である。付着量が0.1%以下では、目的とする
深色化効果が得られにくく、好ましくない。一方、15%
を越えると処理布の風合が粗硬になるばかりが、他の加
工処理を行なうのに妨げとなる。
本発明方法では、加工剤付着後に低温ガスプラズマに
より加工剤のエッチング処理を行うのが好ましい。
繊維表面へ付着させる混合樹脂の一成分としては、前
述したうようにシリコーン系樹脂が好ましい。シリコー
ン系樹脂は、 の基本骨格構造を有するものであればよく特に限定しな
いが、使用する際の便利さ及び繊維に対する皮膜形成性
等より水分散性の良好なものが好ましい。基本骨格構造
は上記のとおりであるが、水分散性、皮膜形成性、皮膜
強度の改良の為に側鎖或いは末端にアミノ基、水酸基、
エポキシ基、アルコキシル基、シラノール基等を含有す
る修飾基を導入してもよい。これらの修飾基による変性
度は、大きくなれば繊維への付着性、皮膜形成性、皮膜
強度等の向上がありより好ましく、例えばエポキシ基変
性のジメチルシリコーン樹脂の場合、エポキシ当量(エ
ポキシ基1個当りのシリコーン樹脂の分子量)は高々10
0000、好ましくは50000以下、更に好ましくは10000以下
である。側鎖の構造や分子量は水中分散性、付着性、皮
膜強度、エッチング特性に影響する。
(A)の分子量は特に限定しないが、水中分散性、繊
維への付着性、エッチング特性等より通常5000以上、好
ましくは1万以上、更に好ましくは3万以上である。分
子量が5000未満では繊維への付着特性、皮膜の耐久性、
他の樹脂との非相溶性が幾分低下する傾向がでる。
(A)の側鎖の形態は屈折率やプラズマエッチング性
に影響し、側鎖の分子量が大となれば、屈折率も大とな
り好ましくない。従って(A)の側鎖としては、C1〜C
12程度の低級アルキル基が好ましく、更に好ましくはC1
〜C6程度であるが、耐熱性、皮膜形成性の向上の為にベ
ンゼン環や不飽和結合、アミノ基、エポキシ基、水酸
基、アルコキシル基等を含有してもよい。
本発明方法で好ましく用いる凹孔形成法は、低温ガス
プラズマを用いたエッチングである。低温ガスプラズマ
は、プラズマ中の電子温度がイオン又は他の活性原子の
温度より十分高い非平衡プラズマを言い、該プラズマを
発生させる方法としては公知のいずれの方法も採用する
事が出来る。例えばJ・R.ホラハン(Hollahan)とA・
T.ベル(Bell)版「プラズマ化学の応用技術」,ワイリ
ー,ニューヨーク,1974およびM.シエン(Shen)版「重
合体のプラズマ化学」,デッカー,ニューヨーク,1976
に記載されている。即ち高周波発生器に連結された平行
板電極の間にモノマーを真空下で入れ、真空室の外部又
は内部のいずれかの平行板を用いてプラズマを生成させ
ることが出来る。また外部誘導コイルによって電場をつ
くらせ、イオン化ガスのプラズマを発生させてもよく、
また反対に荷電した電極に間隔をおいて直接真空室に入
れてプラズマを生成させてもよい。
使用するガスとしては、非重合性のガス、重合性のガ
スいずれも目的に合致すれば使用可能であるが、好まし
くはAr,O2,N2,H2,空気,水,CO2等の無機非重合性ガスで
あるが、CF4,CF3Cl,CF2Cl2等の有機性ガスでもエッチン
グ特性良好なものは使用可能である。これらのガスは単
独でも、又は混合しても使用可能である。
ガス圧力は、エッチング挙動、エッチング物の品質等
に大きく影響するが、O2ガスの場合通常0.2〜5torr、好
ましくは0.3〜2torr、更に好ましくは0.5〜1torrであ
る。0.2torr未満ではエッチング速度が遅く、深色化効
果が発現しにくい。5torr以上では酸化反応が活発にな
りすぎ、繊維表面の灰化、溶融等が生じる。又N2ガスの
場合、通常1torr以下、好ましくは0.8torr以下、更に好
ましくは0.6torrであり、Arガスの場合は通常5torr以
下、好ましくは0.2〜3torr、更に好ましくは0.5〜2torr
である。
プラズマエッチングにより形成される凹孔及び/又は
凹凸は、プラズマ電子或いは活性ガスが接触する部分に
生成し、織編物、不織布等の布帛では表面部分に集中し
て生成しやすく、裏面或いは内部では生成しにくい。従
って目的や用途に応じて、繊維の形態或いは処理面を適
宜選択する。
印加する高圧は、直流,交流,高周波のいずれもが使
用し得るが、プラズマ発生の容易さ及び安定性、均一性
より低周波、高周波の印加が好ましく、更に好ましくは
数MHz〜数十MHzの高周波である。
高周波の出力は電極の単位面積当り通常0.01〜5W/cm2
であり、好ましくは0.02〜3W/cm2、更に好ましくは、0.
04〜2W/cm2である。処理時間は少なくとも数秒、好まし
くは10秒以上、特に好ましくは30秒以上である。出力が
大きい程処理時間は短時間でよいが、品質とコスト等と
の関連で最適状を選択する必要がある。
繊維の黒着色はプラズマ処理工程或いは樹脂処理工程
の前に行なっておいてもよく、又プラズマ処理或いは樹
脂処理工程の後に行なっても何らさしつかえないが、プ
ラズマ処理によるエッチング孔の保存の為にプラズマ処
理工程の前に行うのが好ましい。このようにして得られ
た繊維構造物はL値が10以下であることが必要である。
このような範囲のものとすることで繊維の深色化の効果
は顕著なものとなる。
プラズマエッチング処理後、必要ならば水洗浄、乾燥
或いは更に必要ならば親水加工、撥水加工、防シワ加
工、制電加工等の後加工を行なう事も可能である。
本発明における評価は次の方法により行った。
A.深色性の評価 深色性(色の深み)は、CIE1976(Lab)法により、カ
ラーアナライザーで反射率を測定してY値を求め、下記
の式よりL値を得た。L値は小さい程深色化のレベルが
高いことを表わしている。
L=25(100Y/Y01/3−16 B.染色堅牢度の評価 染色堅牢度はJISの規格(洗濯堅牢度JIS L−0844
A2法、ドライクリーニングJIS L−0860)に準じた。
C.非相溶性の評価 樹脂混合物をフィルム、或いはガラス板上に成膜し、
光学顕微鏡、位相差顕微鏡、電子顕微鏡或いは蛍光X線
分析によって観察した。
D.エッチング孔の評価 凹凸及び凹孔の存在及び大きさ、数は光学顕微鏡、走
査型電子顕微鏡により容易に確認できる。又、凹孔の孔
面積は拡大倍率の大きなSEM写真を撮り、その写真より
凹孔部分の面積を測定するか或いはコンピューターによ
る画像解析により実測する。
E.エッチング量ΔW(重量%) (発明の効果) 本発明の深色化繊維は、驚くべきことに深色性が従来
提案されているものよりはるかに良好で、かつ耐洗濯性
及び耐摩耗性等の堅牢度が良好である。更に深色性或い
は濃色効果が著しい為に、染料使用量も従来より低減で
きる、色あせ・色の移行がないなど品質とコストにすぐ
れたものである。かかる本発明の深色化繊維は、ブラッ
クフォーマルや学生服など黒さが生命である用途にはも
ちろん、カラーフォーマルやプリンオ等多様な繊維製品
にも適用することができ、極めて有用である。
また本発明の方法によれば、耐入性に優れた深色化繊
維を混合樹脂の付着量が少なく、かつ効果的に繊維を粗
面化できるので、工業的に極めて有用である。
(実施例) 以下実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
実施例1 60d/48fのポリエステルフィラメントに250T/MのS撚
をかけた経糸と、75d/72fのポリエステルフィラメント
に3000T/MのS,Z撚をかけた緯糸からなるジョーゼット織
物を、常法でワッシャーしぼ立て後、180℃の乾熱中で
セットした。次いで90℃の20%カセイソーダ水溶液中に
浸漬して20%の減量減量処理を行なった。この織物をカ
ヤロンポリエステルブラックGSF(日本化薬(株)製)1
5%(o.w.f)で染色した後、還元洗滌して黒色のジョー
ゼット織物を得た。
該織物に第1表に示す混合樹脂の水分散溶液を重量比
1:1になるように混合し、次いで該織物重量当り1%owf
になるように常法により浸漬付着し、乾燥後150℃で熱
処理を行ない固定した。繊維上に良好な混合樹脂の被膜
が形成されている事が走査型電子顕微鏡測定の結果、判
明した。
次いで織物を下記の条件で低温プラズマによりエッチ
ング処理を行った。プラズマ処理は、織物サンプルをア
ース側電極上へおき、ベルジャー型プラズマ処理器内を
10-2torrまで脱気後、O2ガスを導入して0.3torrに調整
し、13.56MHzの高周波を50Wの出力で印加して10分間処
理した。
結果を第2表に示す。第2表中、サンプルNo.O−1は
混合樹脂処理をしていない織物でかつプラズマ未処理の
ものであり、サンプルNo.O−2は混合樹脂の皮膜を形成
することなく、O−1をプラズマ処理したものである。
混合樹脂の評価項目で皮膜形成性とは、皮膜の均一
性、強度であり、いずれも良好であった。皮膜の透明性
については、◎は透明性大、○はいく分曇っていること
を示す。プラズマ処理布のエッチング孔の評価で小さな
凹凸とは、巾0.1μ程度の小さく均一な凹凸が多数存在
する事を示し、大きな凹孔とは、平滑な表面に0.1〜数
μに亘る大きな凹孔が1μ当り10ケ未満という比較的
少数存在する事を示す。
エッチング速度の欄の数字はA樹脂のB樹脂に対する
エッチング速度の比である。
実施例2 実施例1の染色上り織物に、下記式で示されるポリエ
ーテルエステル樹脂Aとアミノ変性ポリジメチルシリコ
ーン系樹脂Bとを重量比3:7で配合した混合樹脂の水分
散性溶液を調製し、混合樹脂が織物重量に対して1.5重
量%になるように皮膜を形成させた。
次いでプラズマ処理時間を変化させる以外、実施例1
と同様に低温プラズマによりエッチング処理を施した。
処理布のSEM写真(10,000倍)からエッチング孔の分
析を行った結果を第3表に示すが、エッチング孔は実質
的に凹孔であった。
A,B;アジピン酸残基/テレフタル酸残基/5−スルホイソ
フタル酸残基78/20/2 m/l=85/15 MW=16,000(但しポリスチレン換算数平均分子量) m/n=44/1 MW=10,000
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明、第2図は従来技術による深色化繊維断
面を模式的に示す図であり、図中(1)はエッチングさ
れた繊維表面、(2)は入射光、(3)は反射光を示
す。 第3図及び第4図は、実施例1のサンプルNo.8のプラズ
マ処理後の本発明深色化繊維の表面の走査型電子顕微鏡
写真(倍率10,000)である。

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2種以上の樹脂からなる混合樹脂の皮膜を
    有する繊維構造物において、 (イ)混合樹脂が互いに非相溶性であり、かつエッチン
    グ速度の異なる樹脂成分からなり、 (ロ)混合樹脂の皮膜が少なくとも2層に分離してお
    り、更に (ハ)混合樹脂の皮膜の少なくとも一部に凹孔を有し、 (ニ)L値が10以下である ことを特徴とする黒着色された深色化繊維構造物。
  2. 【請求項2】混合樹脂の一成分がシリコーン系樹脂であ
    る特許請求の範囲第1項記載の繊維構造物。
  3. 【請求項3】混合樹脂がシリコーン系樹脂とポリエーテ
    ルエステル系樹脂からなる組み合わせ、又はシリコーン
    系樹脂とフッ化アクリル樹脂からなる組み合わせである
    特許請求の範囲第1項記載の繊維構造物。
  4. 【請求項4】混合樹脂の皮膜が繊維重量当り高々15重量
    %の付着量である特許請求の範囲第1項記載の繊維構造
    物。
  5. 【請求項5】凹孔の数が1μm2当り高々30個である特許
    請求の範囲第1項記載の繊維構造物。
  6. 【請求項6】凹孔の占有面積が高々50%である特許請求
    の範囲第1項記載の繊維構造物。
  7. 【請求項7】互いに非相溶でかつエッチング速度の異な
    る2種以上の樹脂からなる混合樹脂を用いて少なくとも
    2相に分離している皮膜を繊維表面に形成させ、次いで
    低温ガスプラズマにより混合樹脂の皮膜の少なくとも一
    部に凹孔を形成させることを特徴とする黒着色された深
    色化繊維構造物の製造方法。
  8. 【請求項8】混合樹脂の皮膜を形成させるのに混合樹脂
    の水分散液を付着させる特許請求の範囲第7項記載の方
    法。
  9. 【請求項9】低温ガスプラズマが非重合性の低温ガスプ
    ラズマである特許請求の範囲第7項記載の方法。
  10. 【請求項10】エッチング量が繊維重量当り少なくとも
    0.1重量%である特許請求の範囲第7項記載の方法。
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