JP2638585B2 - 濃染色された高強度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法 - Google Patents

濃染色された高強度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法

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二男子 甲斐
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、濃色に染色された
高強度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリエステル系繊維は、衣料用及び産業
用資材として広く用いられている。特に産業用に用いら
れる繊維は、引張り強度、初期弾性率の大きいものが要
求される。従来、高強度、高弾性率を有する繊維は、固
相重合により重合度を大きくしたポリマーを溶融紡糸、
延伸するのが一般的である。その場合の延伸方法として
は、ゾーン熱処理延伸法、誘電加熱延伸法など多くの例
示がある。
【0003】しかし、このようにして得られた繊維は、
高強度、高弾性率のものが得られるが、該繊維の染色性
は、当然のことながら、低下し、高強度、高弾性率化す
ればするほど非晶部の配向が上がる。このため、染料が
ポリマー内に入ることが阻害され、満足な色相を得るこ
とができず、衣料用、産業用いずれにしても、濃色に染
った高強度、高弾性率の繊維を得ることが困難であっ
た。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、濃色
に染色された高強度、高弾性率を有するポリエステル系
繊維の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明のは、かかる目的
を達成するため、次の構成を有する。
【0006】すなわち、ポリエステル繊維を染色後、低
温プラズマ雰囲気下で延伸することを特徴とする濃染色
された高強度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法
である。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明の製造方法において用いられるポリ
エステル系繊維とは、ポリエチレンテレフタレート、ポ
リブチレンテレフタレート、あるいは、これらに第三成
分、たとえばイソフタル酸スルホネート、アジピン酸、
イソフタル酸、ポリエチレングリコールを共重合または
ブレンドして得られるものであり、通常の方法によりチ
ップ化された固有粘度が0.8以下、一般に衣料用とし
て、染色性に優れた固有粘度が0.7前後の繊維化した
ものをいう。
【0009】本発明においては、該繊維化されたポリエ
ステル系繊維を所望の色に染色する。染色方法は、染
料、染色温度、時間とも通常実施されている条件で良
く、チーズ形状あるいは、カセ状にて分散染料、必要に
応じてカチオン染料で染色する。該染色繊維を延伸し
て、高強力化、高弾性率化し、発色性と、糸物性のバラ
ンスをとる。一般に染色された糸は、染色する前の糸と
比較すると、染色方法により多少の変動はあるが、概し
て強度が、10〜30%低下し、伸度は5〜30%高く
なり、初期弾性率は20〜60%低下をきたすため、衣
料用として用いる場合、張り腰のない布帛となり、風合
の劣ったものになる。産業用としては、必要とする強
度、弾性率が得られない。
【0010】本発明は、かかる物性の低下した染色繊維
を高強度化、低伸度化、高弾性率化するため、延伸する
が、延伸方法として低温プラズマ雰囲気で実施すること
が、染色繊維の物性を高める上で、極めて有効であるこ
とをつきとめ、本発明を完成するに至った。つまり、通
常の縮重合反応で得られた染色性に問題のないポリエス
テル系繊維を所望の色に染色した後、該染色糸をプラズ
マ雰囲気中で延伸するのである。
【0011】本発明においては、低温プラズマにより、
ポリエステル系繊維内のポリマー分子の動きを活性化す
ることにより、驚くべきことに延伸後の緩和のない高強
度、低伸度、高弾性率のポリエステル系繊維を得ること
ができる。
【0012】本発明における低温プラズマとは、後記す
る特定の非重合性ガスおよび重合性ガスを封入した減圧
容器内で、高電圧を印加することにより発生するもの
で、かかる放電は、火花放電、コロナ放電、グロー放電
など種々の形態のものがあるが、放電が均一で活性化作
用に優れたグロー放電が特に好ましい。放電周波数は、
低周波、高周波、マイクロ波を用いることができ、また
直流も用いることができる。
【0013】非重合性ガスプラズマとしては、重合性を
有しないガスを減圧下でプラズマ化するもので、ガスの
種類としては、例えば、Ar、He、N2 、CO、CO
2 、O2 、CF4 、NH4 、H2 、空気、H2 Oなど及
びこれらの混合されたものであり、特に強いエッチング
作用を有しない、Ar、He、N2 、空気、CO、H2
Oなどが好ましい。
【0014】本発明の方法で得られるポリエステル系繊
維表面は、低温プラズマ延伸で表面分子に例えばカルボ
ニル基、カルボキシル基、ヒドロオキシ基、ヒドロオキ
シパーオキサイド等の酸素含有基が付与される。また使
用するガスの種類によっては、窒素含有基などが生成
し、SR性能(防汚性能)、吸水性能が同時に付与され
る。
【0015】非重合性ガスプラズマは、好ましくは0.
01〜50Torr、より好ましくは0.1〜15To
rrの減圧化で、好ましくは通常5秒から180秒の範
囲で行われる。
【0016】また重合性ガスプラズマとしては、好まし
くは重合性を有するガスを気相で重合するものであり、
ポリエステルより低い屈折率を有する重合物を形成する
ガスを選択すれば、発色性を向上させる低屈折樹脂によ
る被膜加工と、高強度化、高弾性率化延伸を同時に行う
ことができるのである。
【0017】使用するガスとしては、好ましくはエタ
ン、エチレン、アセチレンなどの炭化水素ガスや、C2
4 、C2 6 、C3 8 、C4 8 などの含フッ素ガ
ス、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシ
ラン、エチルトリメトキシシランなどのシランガスなど
であり、特に含フッ素ガスが、発色性向上効果、延伸性
から望ましい。
【0018】重合性ガスプラズマを実施するにあたり、
効果を低下させない程度に非重合性ガスを混合してもか
まわない。
【0019】重合性ガスプラズマは、好ましくは0.0
1〜30Torr、より好ましくは0.1〜5Torr
の減圧下で、好ましくは通常数秒から数分の範囲で実施
する。
【0020】プラズマ装置は、特に限定されるものでは
なく、真空容器内に、延伸装置を組み入れたバッチ式型
のもの、またシール方式を取り入れた連続式型のものを
使用することができ、プラズマ延伸ゾーンの前後に、必
要に応じて熱板、ホットローラーなどを接続してもよ
い。
【0021】以下、実施例により本発明を説明するが、
これらの実施例に本発明が限定されるものではない。な
お、実施例、比較例に示す物性値は、次の方法で測定し
た。 (イ)強度T/D、伸度E、及び初期引張抵抗度(弾性
率)Mi JIS−L1017によった。試料をかせ状にとり、2
0℃、65%RHの温湿度に調節された部屋に24時間
以上放置後、“テンシロン UTL−4L”型引張試験
機(東洋ボールドウィン株式会社製)を用い、試長25
cm、引張速度30cm/minで測定した。
【0022】(ロ)発色性:デジタル測色色差計算機
(スガ試験機株式会社製)で、L値を測定した。L値は
色の視感濃度の指標であり、値の小さいもの程、濃色で
あることを示す。
【0023】(ハ)撥水性:JIS L 1092法
(防水性試験法)に準じて測定した。 (ニ)吸水性:10μlの水を試料に滴下して水滴が消
失するまでの時間(秒)を測定した。
【0024】
【実施例】 [実施例1〜4、比較例1〜3]固有粘度0.64のポ
リエステルチップを用いて公知の溶融紡糸法により、7
5デニール24フィラメントの延伸糸を得た。該延伸糸
をカセ状に巻き取り噴射式カセ染機でレゾリン ブルー
FBL(Resoline Blue FBL)4%o
wfの濃度で染色し、常法により還元洗浄、乾燥した。
【0025】この染色糸を両端にシール機構を施し、周
波数110kHzの高周波電源をそなえた連続式プラズ
マ処理機で、非重合性ガスを用いてプラズマ延伸を実施
した。
【0026】次にプラズマ延伸した糸をタテ糸及びヨコ
糸に使用し、タテ密度140本/in、ヨコ密度90本
/inの平組織の織物を製織し、発色性、風合いを評価
した。このプラズマ延伸糸の物性、織物の発色性、風合
いを表1に示す。
【0027】
【表1】 比較例として、染色していない糸をプラズマ延伸処理し
た後、染色したもの(比較例1、2)及び染色後150
℃の熱板を用いて限界倍率で延伸したもの(比較例3)
を同様に評価した。
【0028】本発明は、発色性と、高強度、高弾性率を
同時に満足することが判る。なお、吸水性は実施例1、
実施例2、実施例3は各々2秒であり、実施例4は1秒
であった。一方、比較例1は10秒、比較例2は8秒、
比較例3は180秒以上であった。
【0029】[実施例5〜7,比較例4〜5]実施例1
〜4で得た染色糸を、延伸装置を減圧容器内に設置し、
周波数110kHzの高周波電源をそなえたプラズマ処
理装置で、非重合性プラズマ及び重合性ガスプラズマ延
伸を実施した。
【0030】糸物性、織物評価を同様に実施した結果を
表2に示す。
【0031】
【表2】 比較例として、プラズマ延伸後染色したもの(比較例
4、5)を同様に評価した。
【0032】本発明によるものは、発色性に優れた高強
度、高弾性率をもつ糸であり、吸水性は実施例5は3
秒、実施例6は2秒であった。一方、比較例4は10
秒、比較例5は180秒以上であった。特に含フッ素非
重合性ガスや含フッ素,シリコーン系重合性ガスを用い
たものは、低屈折樹脂の相乗効果により、発色性が、大
幅に向上し、付加的効果として実施例7においてJIS
L 1092法で90点となることからも示されるよ
うに撥水性をも有する。
【0033】
【発明の効果】本発明の方法によれば、濃色を維持した
高発色性と、高強度、高弾性率を同時に満足するポリエ
ステル系繊維を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D06M 10/00 D06M 10/00 G

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエステル繊維を染色後、低温プラズマ
    雰囲気下で延伸することを特徴とする濃染色された高強
    度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法。
JP2523496A 1996-02-13 1996-02-13 濃染色された高強度、高弾性率ポリエステル系繊維の製造方法 Expired - Fee Related JP2638585B2 (ja)

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KR100305840B1 (ko) * 1999-08-11 2001-09-13 조 정 래 강도, 모듈러스, 및 염색성이 우수한 폴리에스터 섬유의 제조방법

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