JP2600852Y2 - ステアリング装置 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、路面からハンドルに伝
わる振動やキックバックを低減することのできるタイロ
ッド構造を備えたステアリング装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】例えばラックピニオン式ステアリング装
置にあっては、操舵によるピニオンの回転により左右に
変位するラックと、このラックにインナーボールジョイ
ントを介し連結されるタイロッドを備え、そのタイロッ
ドにナックルアームがアウターボールジョイントを介し
連結され、そのナックルアームを介し操舵用車輪が連結
される。

【０００３】そのようなステアリング装置において、そ
のタイロッドを第１部材と第２部材とを有し、両部材の
一方に形成された凹部に他方が筒状の弾性部材を介し軸
方向に相対変位可能に挿入される構造とし、その弾性部
材の軸方向変形により悪路走行時等に路面からハンドル
に伝わるキックバックやシミーを吸収することが提案さ
れている（実開平６３‐１４１０７４号公報参照）。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】そのナックルアームの
連結位置は前記筒状弾性部材の軸線から径方向に離れる
ため、路面から操舵用車輪を介しタイロッドに作用する
力により弾性部材に曲げモーメントが作用し、この曲げ
モーメントにより弾性部材に曲げが発生する。そのた
め、操舵力の伝達系の剛性が低下して操舵フィーリング
や操縦安定性が悪化するという問題が生じる。

【０００５】本考案は、上記課題を解決することのでき
るステアリング装置を提供することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本考案は、操舵によって
左右に変位する部材にインナーボールジョイントを介し
連結されるタイロッドを備え、そのタイロッドは第１部
材と第２部材とを有し、その第１部材と第２部材の一方
に形成された凹部に他方が筒状の弾性部材を介し軸方向
一方および他方に相対変位可能に挿入され、そのタイロ
ッドにナックルアームがアウターボールジョイントを介
し連結され、そのナックルアームの連結位置は前記筒状
弾性部材の軸線から径方向に離れるステアリング装置に
おいて、その筒状の弾性部材は、第１部材と第２部材の
中の一方に形成された前記凹部の内周面と他方の外周面
との間に配置され、その第１部材の第２部材に対する軸
方向一方および他方への相対変位時に、その筒状の弾性
部材の内周側と外周側とは軸方向に互いに反対方向に弾
性的に相対変位し、その筒状の弾性部材の曲げを規制す
る規制部材が第１部材と第２部材との間に設けられてい
ることを特徴とする。

【０００７】

【作用】本考案の構成によれば、第１部材と第２部材と
の間の規制部材により弾性部材の曲げを規制するので、
ナックルアームを介し曲げモーメントが作用しても弾性
部材に生じる曲げを低減し若しくはなくすことができ
る。

【０００８】

【実施例】以下、図面を参照して本考案の実施例につい
て説明する。

【０００９】図１において、ラックピニオン式ステアリ
ング装置１のラックハウジング２に覆われるラック３
は、操舵ハンドルの操作により回転するピニオン（図示
省略）に噛み合い、そのピニオンの回転により左右に変
位する。このラック３の各端に、インナーボールジョイ
ント４を介し連結されるタイロッド５を備える。なお、
以下に説明する構成はラック３の一端側と他端側とで同
一であるので、重複説明を省くため一端側の説明のみを
行なう。

【００１０】そのインナーボールジョイント４は、ラッ
ク３に連結されるソケット４ａと、このソケット４ａに
球面座を介し保持されるボール部を有するボールスタッ
ド４ｂとを有し、そのボールスタッド４ｂの軸部にタイ
ロッド５が連結されている。なお、そのラックハウジン
グ２の外周とボールスタッド４ｂの軸部の外周とに蛇腹
カバー９の各端が連結されている。

【００１１】そのタイロッド５は第１部材６と第２部材
７とを有し、その第１部材６の外周に雄ねじ６′が形成
され、その雄ねじ６′がボールスタッド４ｂの軸部に形
成された雌ねじ孔４ｂ′にねじ合わされると共にロック
ナット８によりロックされることで、インナーボールジ
ョイント４とタイロッド５とは連結されている。その第
２部材７はアウターボールジョイント１０のソケット１
０ａと一体化形成され、これによりタイロッド５とアウ
ターボールジョイント１０とは連結されている。そのア
ウターボールジョイント１０のソケット１０ａに球面座
を介し保持されるボールスタッド１０ｂの軸部にナック
ルアーム８が連結される。

【００１２】その第２部材７に凹部１５が形成され、こ
の凹部１５に第１部材６が筒状の弾性部材１６を介し軸
方向に変位可能に挿入されている。前記ナックルアーム
８の連結位置は、その筒状弾性部材１６の軸線から径方
向に図１中距離Ｂだけ離れる。図２に示すように、その
弾性部材１６はゴムであって、その凹部１５に挿入され
たカラー１７の内周面と第１部材６の外周面とに焼付け
られている。この焼付けは、第１部材６にカラー１７を
挿入後に、そのカラー１７に形成した注入口１７′から
第１部材６とカラー１７との内外周間に未加硫ゴムを充
填し、その後に未加硫ゴムを加硫することでなされてい
る。この焼付け後に第１部材６は弾性部材１６とカラー
１７と共に凹部１５に挿入され、そのカラー１７の一端
に形成されたフランジ部１７ａが凹部１５の内周に形成
された段差部１５ａに当接され、しかる後に第２部材７
の端部７ａがかしめられることで、そのフランジ部１７
ａは凹部１５の段差部１５ａと第２部材７の端部７ａと
で挟み込まれる。これにより、第１部材６と第２部材７
とは連結される。この連結状態において、第１部材６の
一端に形成されたフランジ６ａと凹部１５の底面との
間、および、そのフランジ６ａとカラー１７の端面との
間に、それぞれ隙間δが設けられ、その隙間δの距離だ
け弾性部材１６は軸方向一方および他方に変位可能とさ
れている。上記のように筒状弾性部材１６はカラー１７
の内周面と第１部材６の外周面とに焼付けられ、そのカ
ラー１７のフランジ部１７ａは凹部１５の段差部１５ａ
と第２部材７の端部７ａとで挟み込まれるので、その第
１部材６と第２部材７の軸方向一方および他方への相対
変位時に、その弾性部材１６の内周側と外周側とは軸方
向に互いに反対方向に弾性的に相対変位する。その隙間
δは、弾性部材１６の軸方向変形量が小さ過ぎて路面か
らハンドルに伝わるキックバックを充分に吸収できなく
なることがなく、且つ、弾性部材１６が過大な軸方向変
形により破損することがない範囲で設定する。また、弾
性部材１６の径方向厚さは、小さくなり過ぎて軸方向変
形により破損することがなく、且つ、過大になってタイ
ロッド５の剛性を低下させてしまうことのない範囲で設
定する。

【００１３】上記のように、ナックルアーム８の連結位
置は筒状弾性部材１６の軸線から径方向に図１中距離Ｂ
だけ離れるので、路面から操舵用車輪を介しタイロッド
５に作用する力により弾性部材１６に曲げモーメントが
作用する。この曲げモーメントによる弾性部材１６の曲
げを規制する規制部材３０が、第１部材６と第２部材７
との間において、第１部材６の外周に形成されている。
その規制部材３０は、図３に示すように、第１部材６の
外周の全域に亘るフランジ状とされている。この規制部
材３０の外周面はカラー１７の内周面に対し、第１部材
６と第２部材７との軸方向相対変位を規制しないように
接するか若しくは僅かの隙間を有するものとされてい
る。

【００１４】上記構成によれば、第１部材６と第２部材
７との間の規制部材３０により弾性部材１６の曲げを規
制するので、ナックルアーム８を介し曲げモーメントが
作用しても弾性部材に生じる曲げを低減し若しくはなく
すことができる。これにより、振動やキックバックを低
減する場合に、操舵力の伝達系の剛性を向上して操舵フ
ィーリングや操縦安定性が悪化するのを防止できる。

【００１５】なお、本考案は上記実施例に限定されな
い。例えば、上記実施例では規制部材３０を第１部材６
の外周全域に亘り形成したが、図４に示すように、第１
部材６の外周から周方向に間隔をおいて径外方に突出す
る複数の突起状規制部材４０としてもよい。また、カラ
ー１７の内周面に第１部材６の外周面に向かい突出する
規制部材を形成してもよい。また、図５に示すように、
第１部材６の外周にリング状規制部材５０を嵌合し、こ
のリング状規制部材５０をカラー１７の一端に形成され
たフランジ部１７ａと共に、凹部１５の内周に形成され
た段差部１５ａと第２部材７のかしめられた端部７ａと
で挟み込み、そのリング状規制部材５０の内周面は第１
部材６の外周面に対し第１部材６と第２部材７との軸方
向相対変位を規制しないように接するか若しくは僅かの
隙間を有するものとしてもよい。また、上記実施例では
ラックピニオン式ステアリング装置に本考案を適用した
が、例えばボールスクリュー式ステアリング装置にも適
用できる。

【００１６】

【考案の効果】本考案のステアリング装置によれば、タ
イロッド構造により振動やキックバックを低減する場合
に、簡単な構造で操舵力の伝達系の剛性を向上して操舵
フィーリングや操縦安定性が悪化するのを防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案の実施例を示すステアリング装置の断面
図

【図２】本考案の実施例を示すステアリング装置の要部
の断面図

【図３】図２のＩＩＩ‐ＩＩＩ線に沿う断面図

【図４】第１変形例を示すステアリング装置の要部の断
面図

【図５】第２変形例を示すステアリング装置の要部の断
面図

【符号の説明】

３ ラック ４ インナーボールジョイント ５ タイロッド ６ 第１部材 ７ 第２部材 ８ ナックルアーム １０ アウターボールジョイント １５ 凹部 １６ 弾性部材 ３０、４０、５０ 規制部材

Claims (1)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 操舵によって左右に変位する部材にイン
   ナーボールジョイントを介し連結されるタイロッドを備
   え、そのタイロッドは第１部材と第２部材とを有し、そ
   の第１部材と第２部材の一方に形成された凹部に他方が
   筒状の弾性部材を介し軸方向一方および他方に相対変位
   可能に挿入され、そのタイロッドにナックルアームがア
   ウターボールジョイントを介し連結され、そのナックル
   アームの連結位置は前記筒状弾性部材の軸線から径方向
   に離れるステアリング装置において、その筒状の弾性部材は、第１部材と第２部材の中の一方
   に形成された前記凹部の内周面と他方の外周面との間に
   配置され、 その第１部材の第２部材に対する軸方向一方および他方
   への相対変位時に、その筒状の弾性部材の内周側と外周
   側とは軸方向に互いに反対方向に弾性的に相対変位し、 その筒状の弾性部材の曲げを規制する規制部材が第１部
   材と第２部材との間に設けられていることを特徴とする
   ステアリング装置。