JP2572545B2 - ミシンの全回転かま - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ミシンの全回転かまに
関し、特に千鳥縫いミシンや刺繍縫いミシンに好適に用
いられるミシンの全回転かまに関する。

【０００２】

【従来の技術】図５は、従来技術における内かま１００
の針落ち穴１０９付近を拡大して示す断面図である。上
糸１０１は上下に往復動する縫い針１０３の先端部１０
８に設けられる糸穴１０４に挿通され、この上糸１０１
が剣先１０２の直前に縫い針１０３によって供給された
とき、この上糸１０１を剣先１０２が捕捉して上糸ルー
プを形成し、この上糸ループが図示しない下糸に係合し
て縫い目が形成される。

【０００３】縫い針１０３が下方へ変位する際に、突き
刺した布がミシンの送り動作によって移動しているた
め、縫い針１０３は、その布の移動方向に僅かに反りを
生じ、内かま１００のフランジ１０５に接触する場合が
ある。このような接触によって縫い針１０３が折損する
ことを防止するために従来では、フランジ１０５の上部
付近に針落ち穴１０９に臨んで傾斜面１０７が形成され
ている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】上述の従来技術では、
縫い針１０３の折損防止の効果は不充分であり、すなわ
ち縫製加工される布の布送り方向が一定した普通のミシ
ンでは大きな問題はないが、千鳥縫いミシンや前記刺繍
縫いミシンで連続して布送りをしたり、断続的に布送り
を行う場合でも厚い布の段縫いを行うと、縫い針１０３
は前記傾斜面１０７に対して垂直に近づく方向に屈曲し
て、内かま１００の前記傾斜面１０７に衝突する。この
とき縫い針１０３は大きな衝撃力を受け、この衝撃力に
よって縫い針１０３が折損したり、縫い針１０３の先端
部１０８が損傷するという問題がある。

【０００５】また上述の従来技術では、縫い針１０３が
針落ち穴１０９に挿入した状態で屈曲すると、上糸１０
１が壁面１０６と縫い針１０３との間に挟まれた状態で
引出される。上糸１０１は、複数の単糸を撚って作られ
る。したがって上述のように上糸１０１が壁面１０６に
接触することによって、単糸の損傷が発生し、糸切れや
糸玉の発生を引起こす。

【０００６】本発明の目的は、上述の従来技術の問題点
を解決し、縫い針の折損およびその先端部の損傷を防
ぎ、かつ前記損傷した縫い針によって生じる糸切れおよ
び糸玉の発生を防止することができるミシンの全回転か
まを提供することである。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は、内かまの外向
きフランジに、内かまの半径方向外方になるにつれて縫
い針の軸線から離反する方向に傾斜する第１案内面と、
前記第１案内面の半径方向内方の終端に連なり、前記縫
い針の軸線に平行な第２案内面とを、前記縫い針が挿入
する針落ち穴に臨んで形成し、前記第２案内面は、縫い
針が最下点にある状態で、縫い針の糸穴に上方から臨む
部分よりも半径方向内方に形成され、前記第１案内面の
縫い針の軸線に対する傾斜角度は、縫い針の針先案内面
と軸線が成す角度よりも大きく設定されていることを特
徴とするミシンの全回転かまである。

【０００８】

【作用】本発明に従えば、内かまの外向きフランジに、
内かまの半径方向外方になるにつれて縫い針の軸線から
離反する方向に傾斜する第１案内面と、前記第１案内面
の半径方向の終端に連なり、前記縫い針の軸線に平行な
第２案内面とが、前記縫い針が挿入する針落ち穴に臨ん
で形成されるので、縫い針が下方へ変位する際、縫い針
の針先が内かまの外向きフランジに衝突することがな
い。

【０００９】また、前記第１案内面の縫い針の軸線に対
する傾斜角度は、縫い針の針先案内面と軸線とによって
形成される角度よりも大きく設定されているので、縫い
針が下方へ変位する際、縫い針の針先案内面が第１案内
面に接触しても縫い針は大きな衝撃力を受けることなし
に円滑に針落ち穴へ案内することができる。

【００１０】また、前記第２案内面は、最下点にある縫
い針の糸穴に上方から臨む部分よりも内かまの半径方向
内方に形成されるので、縫い針が第１および第２案内面
寄りに変位しても、糸穴に挿通された上糸が縫い針と第
２案内面との間に大きな力で挟まれるおそれはなく、上
糸の損傷を防ぐことができる。

【００１１】

【実施例】図１は本発明の一実施例のミシンの全回転か
ま１０の断面図であり、図２は図１に示す全回転かま１
０における内かま１５の針落ち穴７０付近を拡大して示
す断面図であり、図３は図１に示す全回転かま１０に用
いられる内かま１５の平面図であり、図４はボビン２
２、ボビンケース２３および内かま１５を収納した外か
ま１３の斜視図である。

【００１２】本実施例の全回転かま１０は、縫い針１１
の軸線Ｌ１が全回転かま１０の回転軸線Ｌ２に対して垂
直な垂直全回転かまである。この全回転かま１０は、駆
動軸１７に、止めねじ１８によって固定された外かま１
３と、この外かま１３に収納される内かま１５とから成
る。内かま１５には下糸２９が巻回されたボビン２２を
収納するボビンケース２３が収納される。このような外
かま１３、内かま１５、ボビン２２およびボビンケース
２３は、ステンレス鋼製または鋼鉄製である。

【００１３】外かま１３は、矢符Ｐで示される方向に前
記回転軸線Ｌ２まわりに回転駆動され、この回転駆動に
よって剣先１２によって捕捉した上糸５１を内かま１５
の外周面２０に沿って回動させて縫目を形成する。外か
ま１３の内周面１９に形成された軌溝１４には、内かま
１５の外周面２０に形成された軌条１６が嵌まり込み、
内かま１５が外かま１３に支持される。

【００１４】内かま１５は、前記軌条１６が形成される
円筒状の筒部４１と、筒部４１の軸線方向一端部に連な
る底部３０と、前記筒部４１の開放端に連なる外向きフ
ランジ３４とを有する。

【００１５】内かま１５の凹所２１にはボビン２２を収
納したボビンケース２３が装着される。ボビン２２は、
スタッド２４が挿通する中央孔２５を有する直円筒状の
筒体２６と、その筒体２６の両端部に固定される一対の
フランジ２７，２８とを有する。このようなボビン２２
には下糸２９が巻回され、中央孔２５には、内かま１５
の底部３０に立設されたスタッド２４が挿通する。

【００１６】このような全回転かま１０は、図示しない
ミシンの針板３１の下方に設けられる。前記針板３１に
は上下に往復動する縫い針１１が挿通する針穴３２が形
成される。前記針板３１上に縫製される布３３が載置さ
れ、縫製加工に供される。

【００１７】縫い針１１の先端部４０が挿通する略長円
形の針落ち穴７０は、内かま１５の側壁の上部中央に設
けられ、針落ち穴７０に臨む外向きフランジ３４の背後
側、すなわち図２の左方には、壁面３５が形成される。

【００１８】縫い針１１は、針先Ｐ１から縫い針１１の
軸線Ｌ１に沿って、図２における上方、すなわち針棒
（図示せず）寄りになるにつれて、次第に大径となる先
細状に湾曲した針先案内面７２と直円筒状の外周面７３
とを有する。

【００１９】縫い針１１の先端部４０付近には、上糸５
１が挿通される糸穴３８が形成される。上糸５１の退避
する凹溝７４は、糸穴３８に連なって縫い針１１の軸線
Ｌ１に沿って延びて形成される。この凹溝７４に上糸５
１が退避することによって、上糸５１が壁面３５と縫い
針１１とによって挟まれた状態で移動する場合に上糸５
１の損傷を防止することができる。

【００２０】前記壁面３５は、第１案内面３６と第２案
内面３７とを含み、第１案内面３６は内かま１５の半径
方向外方になるにつれて縫い針１１の軸線Ｌ１から離反
する方向に傾斜して形成される。

【００２１】さらに前記第１案内面３６の縫い針１１の
軸線Ｌ１に対する傾斜角度θ１は、縫い針１１の針先案
内面７２と縫い針１１の軸線Ｌ１とが成す角度θ２より
も大きく形成されている。前記傾斜角度θ１は、１５°
〜２５°の範囲に選ばれ、好ましくは２０°である。前
記傾斜角度は、かまのミシンへの取付け関係寸法や針の
太さでＨ１，ｄ２（図２参照）が規制され、前記外向き
フランジ３４への針の衝突防止と糸穴３８との位置関係
により、ｄ１，Ｈ２がそれぞれ決定され、結果としてθ
１が決まる。

【００２２】第２案内面は、前記第１案内面３６の半径
方向内方の終端５０に連なり、縫い針１１の軸線Ｌ１に
対して平行に形成される。さらにこの第２案内面３７は
縫い針１１が最下点にある状態で、縫い針１１の糸穴３
８に上方から臨む部分３９よりも内かま１５の半径方向
内方に形成される。

【００２３】このように第１案内面３６は、内かま１５
の半径方向外方、すなわち図２において上方になるにつ
れて縫い針１１の軸線Ｌ１から離反する方向に傾斜して
いるので、縫い針１１の先端部４０がこの第１案内面３
６によって針落ち穴７０に案内され、縫い針１１は滑ら
かに下方へ変位することができる。

【００２４】また第１案内面３６は、内かま１５の半径
方向外方、すなわち図２において上方になるにつれて縫
い針１１の軸線Ｌ１から離反する方向に傾斜しているの
で、縫い針１１と前記第１案内面３６との間隙は、内か
ま１５の半径方向外方になるにつれて大きくなってい
る。このため上糸５１が縫い針１１と第１案内面３６と
の間で摺動することがなく、上糸５１の損傷を防止する
ことができる。さらに縫い針１１と前記第１案内面３６
との間隙が、内かま１５の半径方向外方になるにつれて
大きくなっているので、上糸５１が退避する凹溝７４の
深さＤ１を小さく形成することができる。したがって縫
い針１１の前記凹溝７４が設けられている部分７５の厚
さＤ２を大きくすることができ、これによって縫い針１
１の強度を向上することができる。

【００２５】また前記角度θ１は、前記角度θ２よりも
大きく形成されているので、縫製加工に供される布３３
の送りによって下方変位する縫い針１１に力が作用し
て、縫い針１１が屈曲して、第１案内面３６に接触して
も縫い針１１は大きな衝撃を受けることがない。すなわ
ち縫い針１１は滑らかに第１案内面３６に沿って針落ち
穴７０に案内されるので、先端部４０の損傷が防がれ
る。

【００２６】また縫い針１１の軸線Ｌ１と平行に第２案
内面３７が、第１案内面３６の内かま１５の半径方向内
方の終端５０から、内かま１５の半径方向内方、すなわ
ち内かま１５の軸線Ｌ２に近接する方向に延びているの
で、縫い針１１の先端部４０が、第２案内面３７に接触
することなく下方変位することができる。これによっ
て、縫い針１１の損傷が防止できる。

【００２７】また第２案内面３７は、縫い針１１が下方
変位して最下点にある状態では、縫い針１１の糸穴３８
に上方から臨む部分３９よりも内かま１５の半径方向内
方に形成されているので、縫い針１１の下方変位に伴っ
て上糸５１が剣先１２付近に供給される際に、縫い針１
１と第２案内面３７とによって挟まれることがない。す
なわち上糸５１は第２案内面３７に接触することがない
ので、第２案内面３７の影響を受けることなく、常に一
定の状態で剣先１２に捕捉される。このため、剣先１２
の上糸５１の捕捉失敗によって発生する目飛びを防止す
ることができる。

【００２８】

【発明の効果】以上のように本発明によれば、内かまの
外向きフランジに形成される第１案内面は、内かまの半
径方向外方になるにつれて縫い針の軸線から離反する方
向に傾斜しているので、縫い針の針先案内面が外向きフ
ランジに衝突することはなく、縫い針の折損が防止でき
る。また、第１案内面の縫い針の軸線に対する傾斜角度
が、縫い針の針先案内面と縫い針の軸線とが成す角度よ
りも大きく設定されているため、縫製加工に供される布
の送りによって縫い針が屈曲して外向きフランジに縫い
針が接触しても、縫い針は第１案内面に沿って、大きな
衝撃を受けることなく針落ち穴に案内される。このため
縫い針の折損による糸切れや目飛びの発生を防止するこ
とができる。また、縫い針の損傷が防がれるので先端部
の損傷した縫い針によって生じる上糸の損傷や糸切れの
発生を防止することができる。また、縫い針が上下に往
復動しても上糸は第１案内面に接触することがないの
で、糸の損傷が防がれ、糸切れや糸玉の発生を防止する
ことができる。また第２案内面は、縫い針の軸線に対し
て平行であり、縫い針が最下点にある状態で、縫い針の
糸穴に上方から臨む部分よりも内かまの半径方向内方に
形成されているので、上糸が縫い針と第２案内面とに挟
まれることはなく、そのため上糸の損傷が防がれ、糸切
れの発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例のミシンの全回転かま１０の
断面図である。

【図２】本発明の一実施例のミシンの全回転かま１０に
おける内かま１５の針落ち穴７０付近を拡大して示す断
面図である。

【図３】本発明の一実施例のミシンの全回転かま１０に
用いられる内かま１５の平面図である。

【図４】本発明の一実施例のミシンの全回転かま１０に
おいてボビン２２およびボビンケース２３および内かま
１５を収納した外かま１３の斜視図である。

【図５】従来技術における内かま１００の針落ち穴１０
９付近を拡大して示す断面図である。

【符号の説明】

１０ 全回転かま １２ 剣先 １３ 外かま １５ 内かま ３４ 外向きフランジ ３５ 壁面 ３６ 第１案内面 ３７ 第２案内面 ７０ 針落ち穴 ７２ 針先案内面 Ｌ１ 縫い針１１の軸線 θ１ 第１案内面３６の縫い針１１の軸線Ｌ１に対する
傾斜角度 θ２ 針先案内面７２と縫い針１１の軸線Ｌ１とによっ
て形成される角度

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内かまの外向きフランジに、内かまの半
   径方向外方になるにつれて縫い針の軸線から離反する方
   向に傾斜する第１案内面と、前記第１案内面の半径方向
   内方の終端に連なり、前記縫い針の軸線に平行な第２案
   内面とを、前記縫い針が挿入する針落ち穴に臨んで形成
   し、 前記第２案内面は、縫い針が最下点にある状態で、縫い
   針の糸穴に上方から臨む部分よりも半径方向内方に形成
   され、 前記第１案内面の縫い針の軸線に対する傾斜角度は、縫
   い針の針先案内面と軸線が成す角度よりも大きく設定さ
   れていることを特徴とするミシンの全回転かま。