JP2534440Y2 - パウダースラッシュ成形装置におけるシール構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この考案は、自動車用内装部品の
表皮材の成形に好適なパウダースラッシュ成形装置に係
り、特に、パウダースラッシュ成形装置におけるシール
構造の改良に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来から、自動車用ドアトリム，インス
トルメントパッド等の自動車用内装部品のように、比較
的良好な表面外観，表面感触が要求される内装部品の表
皮材の成形方法として、パウダースラッシュ成形が多用
されている。

【０００３】図６は自動車用ドアトリムの構成を示す断
面図であり、自動車用ドアトリム１は、所要形状に成形
され、保形性と車体パネルへの取付剛性を備えた芯材２
と、所望ならば、ポリウレタンフォーム等のパッド材２
ａを介してその表面側に表皮材３が貼着されて構成され
ている。

【０００４】そして、パウダースラッシュ成形により表
皮材３を成形する場合、例えば、熱可塑性樹脂シートを
真空成形，コールドプレス成形等の熱成形により所要形
状に成形する工法に比べ、成形性において極めて優れる
とともに、シワ，タルミ等が生じることがなく、良好な
表面外観が得られるとともに、パウダースラッシュ成形
は余剰材料を回収できるため、材料ロスがほとんどな
く、経済性においても極めて優れている。

【０００５】図７は、従来のパウダースラッシュ成形装
置の概略構成を示すもので、所定の型面形状を備え、樹
脂パウダー５の溶融点以上に加熱された電鋳型等のスラ
ッシュ成形用金型４の内面に対向させて、樹脂パウダー
５を収容するパウダーボックス６がシリコーンゴム等の
耐熱性クッション材７からなるシール部材７を介して取
付けられている。なお、取付用治具等は図示しない。

【０００６】そして、この金型４に対してパウダーボッ
クス６を固定した状態で回転操作させることにより、金
型４の型面に樹脂パウダー５を付着させ、軟質の表皮材
３を所要形状に成形するというものである。

【０００７】さらに、シール部材７の構成は、アルミあ
るいはエポキシ樹脂等の材料からなるパウダーボックス
６の周壁６ａ上縁に、発泡性シリコーンラバー体からな
るシール部材７をシリコーン系接着剤を介して接着固定
することにより、シール部材７をパウダーボックス６に
取付けるか、または、図８に示すように、接着固定した
後、補強金具８の先端をシール部材７内に食い込ませた
状態で、この補強金具８をビス９を介してパウダーボッ
クス６に固定して、取付強度を向上させることも提案さ
れている。

【０００８】

【考案が解決しようとする課題】このように、従来、パ
ウダースラッシュ成形装置におけるシール部の構造は、
発泡性シリコーンラバー体をシリコーン系接着剤を介し
てパウダーボックス６に接着固定するか、あるいは補強
金具８により取付強度を補完した構造を採用している
が、パウダースラッシュ成形においては、金型４に対し
てパウダーボックス６をクランプ状態としたときと、フ
リー状態としたときの相互の状態が繰返されるため、シ
ール部材７が疲労しやすく、例えば、図９，図１０に示
すように、パウダーボックス６とシール部材７との接着
部分に破れ等の不具合が生じやすく、また金型４と接触
する接触面が損傷を受けるという欠点が指摘されてい
る。

【０００９】また、補強金具８を使用した構成では、補
強金具８を食い込ませた部分で亀裂が起きやすく、図１
１に示すように、この部分から損傷しやすいという欠点
があった。

【００１０】この考案は、このような事情に鑑みてなさ
れたもので、本考案の目的とするところは、パウダース
ラッシュ成形におけるシール構造において、耐久性に優
れ、シール部材の交換頻度を大幅に削減でき、生産能率
を著しく向上できるパウダースラッシュ成形装置におけ
るシール構造を提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本考案は、樹脂パウダーの溶融温度以上に加熱され
たパウダースラッシュ成形用金型と、内部に樹脂パウダ
ーを収容するパウダーボックスとを備え、上記金型にシ
ール部材を介してパウダーボックスを取付けた後、両者
を回転操作することにより金型の型面に樹脂パウダーを
付着，ゲル化させ、スラッシュ成形体を所要形状に成形
するパウダースラッシュ成形装置において、前記シール
部材は、金型に当接する耐熱性に優れ、かつ高硬度のシ
ール層と、低硬度で弾性を備える弾性層との２層構造体
から構成されているとともに、前記弾性層内にインサー
トされた補強金具がパウダーボックスの周壁上縁に固着
されることにより、シール部材がパウダーボックスに取
付けられていることを特徴とする。

【００１２】

【作用】以上の構成から明らかなように、シール部材は
金型と当接する耐熱性に優れ、かつ高硬度のシール層
と、低硬度で弾性を備える弾性層との２層構造体から構
成されているため、金型と接触する部位の耐久性が向上
するとともに、金型のクランプ時加わる圧縮力を弾性層
により吸収することが可能となる。

【００１３】さらに、補強金具は弾性層にインサートさ
れているため、従来のように補強金具取付部から損傷が
始まる等の不具合はない。

【００１４】

【実施例】以下、本考案によるパウダースラッシュ成形
装置におけるシール構造の実施例について、添付図面を
参照しながら詳細に説明する。

【００１５】図１，図２はパウダースラッシュ成形によ
り製作される自動車用ドアトリムを示す正面図ならびに
断面図、図３は本考案によるシール構造を採用したパウ
ダースラッシュ成形装置の概略構成を示す断面図、図４
は図３に示すパウダースラッシュ成形装置のクランプ状
態を示す断面図、図５は本考案によるシール構造の別実
施例の構成を示す断面図である。

【００１６】図１，図２は、本考案によるパウダースラ
ッシュ成形装置を使用して製作した自動車用ドアトリム
を示すもので、この自動車用ドアトリム１０は、所要形
状に成形され、適度の保形性と車体パネルへの取付剛性
を備えた芯材１１と、この芯材１１の表面側にクッショ
ン性を付与するパッド材１２が積層一体化され、さらに
その表面にパウダースラッシュ成形による表皮材１３が
被覆一体化されている。

【００１７】なお、このパウダースラッシュ成形による
表皮材１３は、スラッシュスキン層とスラッシュ発泡層
の２層構造体からなる。そして、この表皮材１３は、良
好な表面感触，表面外観を備えており、成形性に優れて
いるため、どのような曲面形状にも容易に対応でき、製
品の造形自由度の向上にも貢献している。

【００１８】次いで、図３において、パウダースラッシ
ュ成形装置におけるシール構造について説明する。

【００１９】まず、符号２０は、電鋳型等からなるパウ
ダースラッシュ成形用金型であり、自動車用ドアトリム
１０の造形形状を形作る所望の曲面形状を備えている。

【００２０】一方、このスラッシュ成形用金型２０に対
して樹脂パウダー（本実施例では塩ビ樹脂パウダーを使
用する）３０を供給するためアルミあるいはエポキシ樹
脂からなるパウダーボックス４０が用意されており、本
考案の特徴は、スラッシュ成形用金型２０とパウダーボ
ックス４０とのシール構造にその特徴がある。

【００２１】すなわち、図３中拡大して示すように、パ
ウダーボックス４０の周壁４１上縁にシール部材５０が
取付けられるが、このシール部材５０は、耐熱性に優
れ、かつ高硬度のシール層５１と、低硬度で弾性を備え
た弾性層５２との２層構造体から構成されている。

【００２２】この実施例では、シール層５１としてソリ
ッドシリコーンラバー体を使用し、弾性層５２として発
泡性シリコーンラバー体を使用し、両者はシリコーン系
接着剤により強固に接着されている。

【００２３】さらに、この２層構造体からなるシール部
材５０をパウダーボックス４０の周壁４１上縁に固定す
る固定構造として、補強金具５３が設置されている。こ
の補強金具５３は、弾性層５２の成形と同時にその内部
にインサートされている。そして、シール部材５０をシ
リコーン系接着剤を介して、パウダーボックス４０の周
壁４１上縁に接着固定した後、補強金具５３の脚部５３
ａをパウダーボックス４０の周壁４１にビス５４止めす
ることにより強固に固定されている。

【００２４】本考案によるシール構造は、以上のように
構成されており、実際、自動車用ドアトリム１０の表皮
材１３をパウダースラッシュ成形するには、図４に示す
ように、樹脂パウダー３０を充填したパウダーボックス
４０をシール部材５０を介してスラッシュ成形用金型２
０に固定し、クランプ装置６０により適切なシール圧力
を加えて回転操作させて、樹脂パウダー３０をスラッシ
ュ成形用金型（塩ビ樹脂パウダーの溶融点以上の温度に
加熱されている）に付着，ゲル化させて表皮材１３を成
形する。

【００２５】このとき、クランプ装置６０によるクラン
プ圧がシール部材５０に加わっても、弾性層５２の弾性
変形によりこの圧縮力を吸収することができ、シール層
５１と金型２０との接触圧をほぼ均一圧に維持でき、し
かもシール層５１は耐熱性に優れ、かつ高硬度であるた
め、クランプ状態，フリー状態を繰返し行なっても、シ
ール層５１表面が傷付くおそれがなく、シール部材５０
の耐久性が極めて良好なものとなる。

【００２６】また、パウダーボックス４０の周壁４１と
シール部材５０は、弾性層５２内にインサートされた補
強金具５３を介して行なわれるため、従来のように補強
金具の取付部から亀裂が生じることがなく、パウダーボ
ックス４０とシール部材５０とは強固に接合しており、
このこともシール部材５０の耐久性を高める一要因であ
る。

【００２７】したがって、このようにシール部材５０の
耐久性が著しく向上しているため、従来のようにシール
部材を頻繁に交換する回数を大幅に削減でき、パウダー
スラッシュ成形装置におけるシール性能の向上ととも
に、シール部材交換作業を大幅に削減できるため、生産
能率を高めることができるという利点がある。

【００２８】次いで、図５は本考案によるシール構造の
別実施例を示すもので、本実施例では、シール部材５０
のシール層５１として四フッ化エチレン樹脂（商品名テ
フロン（デュポン社製造））を使用し、弾性層５２とし
ては上述実施例同様、発泡性シリコーンラバー体を使用
している。

【００２９】この実施例では、シール層５１として四フ
ッ化エチレン樹脂（融点３２７℃）を使用することによ
り、金型２０に対するシール部材５０のシール性能，耐
久性能をさらに向上させることができる。

【００３０】

【考案の効果】以上説明した通り、本考案によるパウダ
ースラッシュ成形装置におけるシール構造は、以下に記
載する格別の作用効果を有する。

【００３１】（１）パウダースラッシュ成形用金型とパ
ウダーボックスとの間に設置されるシール部材は、耐熱
性に優れ、かつ高硬度のシール層と、弾性を備える弾性
層との２層構造体から構成されるとともに、弾性層内に
インサートされた補強金具をパウダーボックスに固着す
るという構成であるため、金型への接触部分あるいはパ
ウダーボックスとの取付部において、従来の構成のもの
に比べ耐久性を著しく向上させることができ、パウダー
スラッシュ成形装置におけるシール性能を大幅に向上さ
せることができるという効果を有する。

【００３２】（２）パウダースラッシュ成形用金型とパ
ウダーボックスとの間に設置されるシール部材は、耐熱
性に優れ、かつ高硬度のシール層と、低硬度で弾性を備
える弾性層との２層構造体から構成されるとともに、弾
性層内にインサートされた補強金具をパウダーボックス
に固着するという構成であるため、シール部材の耐久性
が著しく向上することから、シール部材の交換作業を大
幅に削減することができ、生産能率を大幅に高めること
ができるという効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案によるパウダースラッシュ成形装置によ
り製作された自動車用ドアトリムを示す正面図。

【図２】図１中II−II線断面図。

【図３】本考案によるシール構造を採用したパウダース
ラッシュ成形装置の構成を示す断面図。

【図４】本考案によるシール構造を採用したパウダース
ラッシュ成形装置による成形工程を説明する断面図。

【図５】本考案によるシール構造の別実施例の構成を示
す断面図。

【図６】自動車用ドアトリムの一般構成を示す断面図。

【図７】従来のパウダースラッシュ成形装置の概略構成
を示す断面図。

【図８】従来のパウダースラッシュ成形装置におけるシ
ール構造を示す断面図。

【図９】従来のシール構造の不具合点を示す説明図。

【図１０】従来のシール構造の不具合点を示す説明図。

【図１１】従来のシール構造の不具合点を説明する断面
図。

【符号の説明】

１０ 自動車用ドアトリム １３ 表皮材 ２０ パウダースラッシュ成形用金型 ３０ 樹脂パウダー ４０ パウダーボックス ４１ 周壁 ５０ シール部材 ５１ シール層 ５２ 弾性層 ５３ 補強金具 ５４ ビス ６０ クランプ装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｂ２９Ｌ 31:58

Claims (3)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 樹脂パウダー（３０）の溶融温度以上に
   加熱されたパウダースラッシュ成形用金型（２０）と、
   内部に樹脂パウダー（３０）を収容するパウダーボック
   ス（４０）とを備え、上記金型（２０）にシール部材
   （５０）を介してパウダーボックス（４０）を取付けた
   後、両者を回転操作することにより金型（２０）の型面
   に樹脂パウダー（３０）を付着，ゲル化させ、スラッシ
   ュ成形体（１３）を所要形状に成形するパウダースラッ
   シュ成形装置において、 前記シール部材（５０）は、金型（２０）に当接する耐
   熱性に優れ、かつ高硬度のシール層（５１）と、低硬度
   で弾性を備える弾性層（５２）との２層構造体から構成
   されているとともに、前記弾性層（５２）内にインサー
   トされた補強金具（５３）がパウダーボックス（４０）
   の周壁（４１）上縁に固着されることにより、シール部
   材（５０）がパウダーボックス（４０）に取付けられて
   いることを特徴とするパウダースラッシュ成形装置にお
   けるシール構造。
2. 【請求項２】 シール層（５１）をソリッドシリコーン
   ラバー体で構成するとともに、弾性層（５２）を発泡性
   シリコーンラバー体により構成したことを特徴とする請
   求項１記載のパウダースラッシュ成形装置におけるシー
   ル構造。
3. 【請求項３】 シール層（５１）を四フッ化エチレン樹
   脂により構成するとともに、弾性層（５２）を発泡性シ
   リコーンラバー体により構成したことを特徴とする請求
   項１記載のパウダースラッシュ成形装置におけるシール
   構造。