JP2514905B2 - 渋柿の処理方法及び渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法 - Google Patents

渋柿の処理方法及び渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法

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JP2514905B2 JP5307795A JP30779593A JP2514905B2 JP 2514905 B2 JP2514905 B2 JP 2514905B2 JP 5307795 A JP5307795 A JP 5307795A JP 30779593 A JP30779593 A JP 30779593A JP 2514905 B2 JP2514905 B2 JP 2514905B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、 高水圧により渋柿
果肉の脱渋、復渋抑制、殺菌をする渋柿の処理方法及び
高水圧により渋柿果肉を脱渋、復渋抑制、殺菌をしジャ
ム状またはジェリー状の加工食品とする渋柿果肉を用い
た加工食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の渋柿の加工食品化においては、ド
ライアイスやエタノールで脱渋しているものでは、加熱
温度が高いほど脱渋後の柿ペーストの渋戻りつまり復渋
することが知られており、例えば加熱温度が80°Cで
は渋みが感じられ、70°Cでは渋みが感じられない。
しかし、この渋みが戻らない加熱温度の限界ともいえる
70°Cでは脱渋柿の殺菌効果が十分でないということ
が渋柿加工上の問題点の1つであった。
【0003】従来の渋柿の脱渋について、例えば建帛
社、昭和63年6月1日発行の三浦洋、荒木忠治共著
「果実とその加工」の80ページに「渋柿の脱渋は渋柿
に含まれる可溶性タンニンが不溶性タンニンに変化する
ことにより渋味が感じられなくなる。(中略)人工脱渋
法にアルコール、炭酸ガス、温湯、乾燥などがある。
(中略)アルコール処理は現在商業規模で主に実施され
ている方法である。」と記載されている。
【0004】脱渋柿の復渋抑制については、相原宏、河
瀬準、愛媛工業技術センター研究報告NO,23、19
85年5月の34ページに、「脱渋及び未脱渋愛宕柿か
ら復渋しないジャムの調製を行った。1)脱渋柿を85
℃以上に10分加熱すると復渋した。2)黄卵、スーパ
ーエルアミノ、脱脂粉乳、ゼラチンを添加することで復
渋が抑制された。(中略)3)ゼラチンに蛋白分解酵素
またはキウイフルーツ磨砕液を作用することでゼラチン
の凝固性が消失した。(中略)5)未脱渋柿からもゼラ
チンを添加することで、渋みのないジャムが得られた
が、風味に乏しかった。キウイフルーツ、メチオニンを
併用することで好ましい風味が得られた。」と記載され
ている。
【0005】また、上口容子、福井県農業試験場食品加
工研究所、平成元年度食品加工に関する試験成績、(1
990)14ページには、「脱渋柿を原料とする柿ジュ
ース加工において、加熱殺菌時における渋の再現を明ら
かにし、果汁中に含まれるタンニン細胞を遠心分離で除
去することにより、渋の再現防止技術が確立された。
(1)柿果肉ホモジネート液は、加熱時間が長い程、ま
た、加熱時のpHが4以下になると渋みが増し、可溶性
タンニン量も著しく増加した。(2)柿果肉のホモジネ
ート液を遠心分離すると、下層と中間層と上澄みの3層
に分かれ、タンニン細胞はほとんど下層に集積してい
た。(3)下層を含まず中間層がかなり残っている液
は、2,000rpmでの連続遠心分離によって得ら
れ、この液を低いPHで加熱しても渋みの増加はなかっ
た。」と記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来公知のアルコー
ル、炭酸ガス等を利用した渋柿の脱渋方法では、アセト
アルデヒド含量が高まり、やや風味を損なうという問題
を有している。
【0007】また、可溶性タンニン質とゼラチンの酵素
分解物を結合させて、脱渋柿の加熱時の復渋を抑制する
方法では、脱渋柿にゼラチンの酵素分解物を必ず加えな
くてはならず、加熱されるところから風味が損なわれ
る。
【0008】また、脱渋柿の加熱時の渋味の原因となる
タンニン細胞を除去する復渋抑制方法では、柿の濃度が
薄くなり、固形分が減少し、加熱加工するところから風
味が損なわれる。
【0009】そしてまた、渋柿にゼラチン酵素分解物と
メチオニンを加えて調製したジャムと渋柿にゼラチン酵
素分解物とキュウイフルーツを加えて調製したジャムと
を等量混用して再加熱したものでは、加工工程が複雑に
なるとともに加熱されるために風味が損なわれるという
問題がある。
【0010】この発明は、前記事項に鑑みてなされたも
のであって、渋柿の脱渋、脱渋柿の復渋の抑制、殺菌の
各処理を同時に短時間でするとともに、柿の風味を損な
うことなく、熟した柿の持つ特有の色調を保持すること
ができる渋柿の処理方法及び柿の風味を損なうことな
く、熟した柿の持つ特有の色調を保持したゲル状の加工
食品を簡略化した加工工程によりすることができる渋柿
果肉を用いた加工食品の製造方法の提供を目的とするも
のである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、この発明に係る渋柿の処理方法は、渋柿果肉を入
れて密封した柔軟な容器を水が充填された圧力容器に入
れ、加圧時の圧力容器内の水温を常温とし、その水圧を
500MPa以上となるように油圧装置を作動させて前
記圧力容器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中に
所定時間置くことにより渋柿の脱渋、復渋抑制、殺菌を
同時にする。
【0012】上記の目的を達成するために、この発明に
係る渋柿の処理方法は、渋柿果肉を入れて密封した柔軟
な容器を水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の前記
圧力容器内の水温を常温よりも高くし、水温が40°C
以下ではその水圧を400MPa以上、水温が40°C
より高く60°C未満の場合はその水圧をほぼ300M
Pa以上、水温が60°C以上の場合はその水圧を20
0MPa以上となるように油圧装置を作動させて前記圧
力容器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中に所定
時間置くことにより渋柿の脱渋、復渋抑制、殺菌を同時
にする。
【0013】上記の目的を達成するために、この発明に
係る渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法は、ゲル化剤
を添加した渋柿果肉ペーストを入れて密封した柔軟な容
器を水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の圧力容器
内の水温を常温とし、その水圧を500MPa以上とな
るように油圧装置を作動させて前記圧力容器内の渋柿果
肉を加圧した後、その加圧水中に所定時間置くことによ
り渋柿果肉を脱渋し、復渋抑制し、殺菌し、ジャム状ま
たはジェリー状の加工食品とする。
【0014】上記の目的を達成するために、この発明に
係る渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法は、ゲル化剤
を添加した渋柿果肉ペーストを入れて密封した柔軟な容
器を水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の前記圧力
容器内の水温を常温よりも高くし、水温が40°C以下
ではその水圧を400MPa以上、水温が40°Cより
高く60°C未満の場合はその水圧をほぼ300MPa
以上、水温が60°C以上の場合はその水圧を200M
Pa以上となるように油圧装置を作動させて前記圧力容
器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中に所定時間
置くことにより渋柿果肉を脱渋し、復渋抑制し、殺菌
し、ジャム状またはジェリー状の加工食品とする。
【0015】上記の目的を達成するために、この発明に
係る渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法は、ゲル化剤
を分散させた調味液中に渋柿果肉を入れて密封した柔軟
な容器を水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の圧力
容器内の水温を常温とし、その水圧を500MPa以上
となるように油圧装置を作動させて前記圧力容器内の渋
柿果肉を加圧した後、その加圧水中に所定時間置くこと
により渋柿果肉を脱渋し、復渋抑制し、殺菌し、ジャム
状またはジェリー状の加工食品とする。
【0016】上記の目的を達成するために、この発明に
係る渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法は、ゲル化剤
を分散させた調味液中に渋柿果肉を入れて密封した柔軟
な容器を水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の前記
圧力容器内の水温を常温よりも高くし、水温が40°C
以下ではその水圧を400MPa以上、水温が40°C
より高く60°C未満の場合はその水圧をほぼ300M
Pa以上、水温が60°C以上の場合はその水圧を20
0MPa以上となるように油圧装置を作動させて前記圧
力容器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中に所定
時間置くことにより渋柿果肉を脱渋し、復渋抑制し、殺
菌し、ジャム状またはジェリー状の加工食品とする。
【0017】
【作用】渋柿の処理方法の発明においては、果皮、ヘ
タ、種子を除去した塊状の渋柿果肉または果皮、ヘタ、
種子を除去した渋柿果肉をスライスしあるいはペースト
状とした渋柿果肉を、軟質の合成樹脂製容器に充填し、
必要により該容器内の空気を抜いた後(脱気後)、該容
器を密封する。
【0018】次いで、この渋柿果肉が充填され、必要に
より脱気し、密封された前記容器を、水が充填された圧
力容器のシリンダに入れ、圧力容器のシリンダ内の加圧
時の水温が常温のときは圧力容器のシリンダ内の水圧を
500MPa以上となるように、そして圧力容器のシリ
ンダ内の加圧時の水温が常温より高いときは圧力容器の
シリンダ内の水圧を500MPa以下となるように油圧
装置を作動させ、加圧ピストンを圧力容器のシリンダに
挿入し密封された前記容器内の渋柿果肉を加圧する。
【0019】圧力容器のシリンダ内の水圧が所定の圧力
に到達すると油圧装置の加圧作動を止め、圧力容器のシ
リンダ内の所定水圧を所定時間維持する。
【0020】圧力容器内の渋柿果肉に上記所定の水圧が
所定時間作用することにより、渋柿果肉は同時に脱渋さ
れ、復渋抑制され、殺菌される。
【0021】圧力容器内の渋柿果肉に上記所定の水圧を
所定時間作用させた後、油圧装置を作動させ加圧ピスト
ンを上昇させ、圧力容器のシリンダから抜き圧力容器の
シリンダ内の水圧を常圧にまで落し、圧力容器のシリン
ダ内の渋柿果肉を密封した合成樹脂製等からなる容器を
取り出す。
【0022】渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法の発
明においては、渋柿の果皮、ヘタ、種子を除去した後、
渋柿果肉をスライスしまたはペースト状としてゲル化
剤、糖類、酸味料、及びpH調整剤等を添加し、攪は
ん、分散させた後、軟質の合成樹脂製容器に充填し、必
要により該容器内の空気を抜き(脱気し)、該容器を密
封する。
【0023】次いで、この渋柿果肉等が充填された前記
容器を、水が充填された圧力容器のシリンダに入れ、圧
力容器のシリンダ内の加圧時の水温が常温のときは圧力
容器のシリンダ内の水圧を500MPa以上となるよう
に、そして圧力容器のシリンダ内の加圧時の水温が常温
より高いときは圧力容器のシリンダ内の水圧を500M
Pa以下となるように油圧装置を作動させ、加圧ピスト
ンを圧力容器のシリンダに挿入し密封された前記容器内
の渋柿果肉を加圧する。
【0024】圧力容器のシリンダ内の水圧が所定の圧力
に到達すると油圧装置の加圧作動をを止め、圧力容器の
シリンダ内の所定水圧を所定時間維持する。
【0025】圧力容器のシリンダ内の渋柿果肉に上記所
定の水圧が所定時間作用することにより、渋柿果肉は同
時に脱渋され、復渋抑制され、殺菌されたジャム状また
はジェリー状の柿果肉の加工食品となる。
【0026】圧力容器のシリンダ内の渋柿果肉に上記所
定の水圧を所定時間作用させた後、油圧装置を作動させ
加圧ピストンを上昇させ、圧力容器のシリンダから抜き
圧力容器のシリンダ内の水圧を常圧にまで落し、圧力容
器のシリンダ内の渋柿果肉を密封した合成樹脂製等から
なる容器を取り出す。
【0027】また、渋柿果肉を用いた加工食品の製造方
法の発明においては、予めゲル化剤、水または果汁、糖
類、酸味料、及びpH調整剤等を攪はん、分散させた
後、果皮、ヘタ、種子を除去した渋柿果肉をスライスし
またはペースト状としたものを前記予め攪はんし、分散
させておいたものと共に攪はんし、混和した後、軟質の
合成樹脂製容器に充填し、必要により該容器内の空気を
抜き(脱気し)、該容器を密封する。
【0028】次いで、この渋柿果肉等が充填され、密封
された前記容器を、水が充填された圧力容器に入れ、加
圧時の圧力容器内の水温が常温のときは圧力容器内の水
圧を500MPa以上となるように、そして圧力容器内
の加圧時の水温が常温より高いときは圧力容器内の水圧
を500MPa以下となるように油圧装置を作動させ、
加圧ピストンを圧力容器のシリンダに挿入し密封された
前記容器内の渋柿果肉を加圧する。
【0029】圧力容器のシリンダ内の水圧が所定の圧力
に到達すると油圧装置の加圧作動をを止め、圧力容器の
シリンダ内の所定水圧を所定時間維持する。
【0030】圧力容器内のスライスされまたはペースト
状とされ、ゲル化剤等共に軟質の合成樹脂製容器に充填
された渋柿果肉に上記所定の水圧が所定時間作用するこ
とにより、渋柿果肉は同時に脱渋され、復渋抑制され、
殺菌されたジャム状またはジェリー状の加工食品とな
る。
【0031】圧力容器のシリンダ内の渋柿果肉に上記所
定の水圧を所定時間作用させた後、油圧装置を作動させ
加圧ピストンを上昇させ、圧力容器のシリンダから抜き
圧力容器のシリンダ内の水圧を常圧にまで落し、圧力容
器のシリンダ内の渋柿果肉を密封した合成樹脂製等から
なる容器を取り出す。
【0032】
【実施例】この発明に係る渋柿の処理方法及び渋柿果肉
を用いた加工食品の製造方法の実施に使用する高圧処理
装置の1実施例を、図1を参照して説明する。図1は渋
柿の処理方法及び渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法
の実施に使用する高圧処理装置の1実施例を示す断面図
である。そして、図1において、円筒形の圧力容器1に
は、シリンダ2が設けられており、加圧ピストン8が出
入、往復動する。油圧装置は、油圧ポンプ、切り替えバ
ルブ等(図示せず)からなる油圧ユニット9と、これに
油圧管10よつて連結され作動する油圧シリンダ5と、
その中を往復動する油圧ピストン6と、油圧ピストン6
と加圧ピストン8とを連結するロッド7とから構成され
ている。
【0033】シリンダ2内には水3または温水3が充填
され、合成樹脂製軟質容器4に渋柿果肉、ゲル化剤等を
入れ必要により容器4内の空気を抜きつまり脱気して密
封したものを入れる。容器4が圧力容器1のシリンダ2
内に入れられると油圧装置を作動させ加圧ピストン8を
シリンダ2に挿入しシリンダ2内の水3の圧力を500
MPaまたはそれ以上にまで上昇させ、容器4内の渋柿
果肉、ゲル化剤等を所定時間高圧下におく。加圧ピスト
ン8はその外周に耐高圧シール部材11が設けられてい
るので、シリンダ2内の水3は高圧が作用しても噴出す
ることはない。圧力容器1は基台14上に設けられてお
り、油圧装置の油圧シリンダ5は基台14に取り付けら
れた支持柱13上の支持台12固定されている。
【0034】渋柿の処理方法の発明の一実施例を説明す
ると、渋柿(西条柿)の果皮、ヘタ、種子を除去した塊
状の渋柿果肉または果皮、ヘタ、種子を除去した渋柿果
肉をスライスしあるいはペースト状とした渋柿果肉を、
必要により軟質の合成樹脂製容器4に充填し、該容器4
内の空気を抜いた後(脱気後)、該容器4を密封する。
【0035】次いで、この渋柿果肉を入れ密封された前
記容器4を水3が充填された圧力容器1のシリンダ2に
入れ、圧力容器1のシリンダ2内の加圧時の水温が20
℃のときはシリンダ2内の水圧を500MPa以上の水
圧となるように、また圧力容器1のシリンダ2内の加圧
時の水温が20℃以上のときはシリンダ2の水圧を50
0MPa以下になるように油圧装置を作動させる。
【0036】圧力容器1のシリンダ2内の水圧が所定の
圧力に到達すると油圧装置の作動を止め、シリンダ2内
の所定水圧を所定時間例えば約10分間維持する。
【0037】圧力容器1のシリンダ2内の渋柿果肉に上
記所定の水圧例えば500MPaが所定時間例えば約1
0分間作用することにより、渋柿果肉は同時に脱渋さ
れ、復渋抑制され、殺菌される。
【0038】
【表1】 表1に示すように、圧力容器1のシリンダ2内の加圧時
の水温が20℃では処理水圧500MPa、シリンダ2
内の加圧時の水温が40℃でも処理水圧500MPa、
そしてシリンダ2内の加圧時の水温が60℃では処理水
圧400MPa以上から、渋柿を10分間の高圧処理し
たときの可溶性タンニンの量は急速に低下していること
が分かる。そして、表1において*印を記した圧力容器
1のシリンダ2内の加圧時の水温が20℃では処理水圧
700MPa、シリンダ2内の加圧時の水温が40℃で
は処理水圧700MPa及び600MPa、そしてシリ
ンダ2内の加圧時の水温が60℃では処理水圧700M
Pa、600MPa及び500MPaで、渋味は感じら
れなかった。
【0039】
【表2】 また表2に示すように、加圧時の水温20°C、300
MPaの水圧で10分間処理した後、7日間保存したも
のでは表2において*印を記したものに渋味は感じられ
なかった。また、可溶性タンニンの量も、高圧処理直後
のものと比較して5mg%ときわめて少なかった。この
ように、高水圧処理と低温処理との組合せにより、高圧
処理のみの脱渋よりも緩やかな高水圧処理条件で脱渋が
できる。
【0040】アルコールにより脱渋された市販の脱渋柿
(西条)を用いて、柿ペーストについて、加熱温度と加
熱時間を変えての加熱処理、並びに処理圧力と処理水温
を変えての高圧処理したものを官能的に渋味の判定した
結果、表3に示すように、*印を記したものに渋みは感
じられず、70°C以下の加熱処理では復渋がみられな
かった。なお、高温長時間の熱処理には復渋が確認され
た。
【表3】
【表4】
【0041】表4に示すように、加圧時の温度が20°
Cでは水圧500MPa以上、40°Cでは400MP
a以上、60°Cでは200MPa以上で10分間の高
圧処理をすることにより殺菌効果ができた。
【0042】
【表5】 そして、この表5において、(−)はゲル化しないも
の、(±)はジャム状にゲル化したもの、(+)はジェ
リー状にゲル化したものを示しており、前記した表4に
示す殺菌のための処理条件で渋柿果肉を処理しても、表
5に示すように、渋味が感じられず、復渋することなく
殺菌ができた。
【0043】圧力容器1のシリンダ2内の渋柿果肉に上
記の水圧を10分間作用させた後、油圧装置を作動させ
て加圧ピストン8を上昇させ、圧力容器1のシリンダ2
内の水圧を常圧にまで落とし、シリンダ2内の渋柿果肉
を密封した合成樹脂製等からなる容器4を取り出し渋柿
果肉の処理工程が終わる。なお、本発明の実施例におい
て、可溶性タンニン含量の定量は、メタノール抽出液に
ついて、ホーリン・デニス法に準じて行った。
【0044】渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法の発
明の一実施例である実施例1について説明すると、渋柿
(例えば西条柿)の果皮、ヘタ、種子を除去した後、渋
柿果肉をスライスしまたはペースト状として、適当量の
カラジーナン、ペクチン等のゲル化剤、前記柿果肉ペー
ストと同量またはそれ以下の量の砂糖等の糖類、適量の
クエン酸等の酸味料、及び適量のpH調整剤等と共に、
攪はん、分散させた後、軟質の合成樹脂製容器4に入
れ、必要により該容器4内の空気を抜き(脱気し)、該
容器4を密封する。
【0045】次いで、この渋柿果肉をスライスしまたは
ペースト状として、適当量のカラジーナン、ペクチン等
のゲル化剤、前記柿果肉ペーストと同量またはそれ以下
の量の砂糖等の糖類、適量のクエン酸等の酸味料、及び
適量のpH調整剤等と共に入れ密封された前記容器4を
水3が充填された圧力容器1のシリンダ2に入れ、圧力
容器1のシリンダ2内の加圧時の水温が20℃のときは
シリンダ2内の水圧を500MPa以上の水圧となるよ
うに、また圧力容器1のシリンダ2内の加圧時の水温が
20℃以上のときはシリンダ2の水圧を500MPa以
下になるように油圧装置を作動させる。
【0046】圧力容器1のシリンダ2内の水圧が所定の
圧力に到達すると油圧装置の作動を止め、圧力容器1の
シリンダ2内の所定水圧を所定時間例えば約10分間維
持する。
【0047】圧力容器1のシリンダ2内の渋柿果肉に上
記所定の水圧例えば500MPaが所定時間例えば約1
0分間作用することにより、渋柿果肉は同時に脱渋さ
れ、復渋抑制され、殺菌される。
【0048】この発明の実施例1による渋柿果肉の脱渋
と殺菌は、渋柿の脱渋において述べたように、脱渋のた
めには20°Cで300MPa以上の水圧処理が必要で
あり、脱渋柿果肉の水圧処理による復渋制御及び殺菌で
説明したように殺菌のためには加圧時の温度が20°C
では水圧が500MPa以上、40°Cでは400MP
a以上、60°Cでは200MPa以上の水圧処理が必
要であった。
【0049】そして、渋柿果肉の脱渋と殺菌のための水
圧処理条件は、加圧時の温度が20°Cでは500MP
a以上、40°Cでは400MPa以上、60°Cでは
200MPa以上で処理条件とが一致する範囲がみら
れ、渋柿の脱渋と殺菌が同時にできた。
【0050】ゲル化剤を添加した渋柿果肉ペーストを入
れて脱気密封した柔軟な容器4を、水3が充填された圧
力容器1のシリンダ2内に入れ、シリンダ2内の加圧時
の水温が20°Cのときは圧力容器内の水圧を少なくと
も500MPa以上のものとした加圧水中に所定時間置
くことによりジャム状またはジェリー状の加工食品とす
ることができた。
【0051】圧力容器1のシリンダ2内の加圧時の水温
が20°Cよりも高いときはシリンダ2内の水圧を50
0MPa以下としてよい。
【0052】渋柿を用いた加工食品の製造方法の発明の
他の実施例である実施例2について説明すると、予め水
または柿、梨、りんご、柑橘類等の果汁の適当量、適当
量のカラジーナン、ペクチン等のゲル化剤、前記柿果肉
ペーストと同量またはそれ以下の量の砂糖等の糖類、適
量のクエン酸等の酸味料、及び適量のpH調整剤等と共
に、攪はん、分散させた後、果皮、ヘタ、種子を除去し
た渋柿果肉の塊状のもの、あるいは果皮、ヘタ、種子を
除去した渋柿果肉をスライスし、あるいはペースト状と
したものを前記ゲル化剤等と共に攪はんし、混和した
後、軟質の合成樹脂製容器4に入れ、必要により該容器
4内の空気を抜き(脱気し)、該容器4を密封する。
【0053】次いで、予め水または柿、梨、りんご、柑
橘類等の果汁の適当量、適当量のカラジーナン、ペクチ
ン等のゲル化剤、前記柿果肉ペーストと同量またはそれ
以下の量の砂糖等の糖類、適量のクエン酸等の酸味料、
及び適量のpH調整剤等と共に、果皮、ヘタ、種子を除
去した渋柿果肉の塊状のもの、あるいは果皮、ヘタ、種
子を除去した渋柿果肉をスライスし、あるいはペースト
状としたものを入れ密封された前記容器4を水3が充填
された圧力容器1のシリンダ2に入れ、圧力容器1のシ
リンダ2内の加圧時の水温が20℃のときはシリンダ2
内の水圧を500MPa以上の水圧となるように、また
圧力容器1のシリンダ2内の加圧時の水温が20℃以上
のときはシリンダ2の水圧を500MPa以下になるよ
うに油圧装置を作動させる。
【0054】圧力容器1のシリンダ2内の水圧が所定の
圧力に到達すると油圧装置の作動を止め、圧力容器1の
シリンダ2内の所定水圧を所定時間例えば約10分間維
持する。
【0055】圧力容器1のシリンダ2内の渋柿果肉に上
記所定の水圧例えば500MPaが所定時間例えば約1
0分間作用することにより、渋柿果肉は同時に脱渋さ
れ、復渋抑制され、殺菌される。
【0056】この発明の実施例2による渋柿果肉の脱渋
と殺菌は、渋柿の脱渋において述べたように、脱渋のた
めには20°Cで300MPa以上の水圧処理が必要で
あり、脱渋柿果肉の水圧処理による復渋制御及び殺菌で
説明したように殺菌のためには加圧時の温度が20°C
では水圧が500MPa以上、40°Cでは400MP
a以上、60°Cでは200MPa以上の水圧処理が必
要であった。
【0057】そして、渋柿果肉の脱渋と殺菌のための水
圧処理条件は、加圧時の温度が20°Cでは500MP
a以上、40°Cでは400MPa以上、60°Cでは
200MPa以上で処理条件とが一致する範囲がみら
れ、渋柿の脱渋と殺菌が同時にできた。
【0058】ゲル化剤を添加した渋柿果肉ペーストを入
れて脱気密封した柔軟な容器4を、水3が充填された圧
力容器1のシリンダ2内に入れ、シリンダ2内の加圧時
の水温が20°Cのときは圧力容器内の水圧を少なくと
も500MPa以上のものとした加圧水中に所定時間置
くことによりジャム状またはジェリー状の加工食品とす
ることができた。
【0059】圧力容器1のシリンダ2内の加圧時の水温
が20°Cよりも高いときはシリンダ2内の水圧を50
0MPa以下としてよい。ゲル化剤を分散させた砂糖の
水溶液または果汁中に渋柿果肉を入れて脱気密封した柔
軟な容器を、水が充填された増圧可能な圧力容器中に入
れ、圧力容器内の加圧時の水温が20°Cのときは圧力
容器内の水圧を少なくとも500MPa以上のものとし
た加圧水中に所定時間置くことにより渋柿果肉の脱渋、
復渋抑制、殺菌と同時にジャム状またはジェリー状の加
工食品とすることができ、ジャム状またはジェリー状の
加工食品の製造工程を簡素化することができた。
【0060】
【発明の効果】この渋柿の処理方法の発明は、柿の風味
を生かした渋柿果肉の脱渋、脱渋柿果肉の復渋抑制、並
びに未脱渋柿果肉の加工を同時にすることができるとと
もに各加工工程を簡易なものとすることができるという
効果を奏する。
【0061】また、この渋柿の処理方法の発明は、渋柿
の規格外品の利用拡大をはかるとともに、脱渋柿として
市場に流通しているものの加工及び利用を促進し、渋柿
並びに脱渋柿を用いた加工食品の利用を一層促進すとい
う効果を有する。
【0062】そしてまた、この渋柿の処理方法の発明
は、渋柿果肉の脱渋、脱渋柿果肉の復渋の抑制、殺菌の
各処理工程を同時にするので、これら処理時間を大幅に
短縮するとともに、柿の風味を損なうことなく、熟した
柿の持つ特有の色調を保持することができるという効果
を奏する。
【0063】渋柿果肉を用いた加工食品の製造方法の発
明は、柿の風味を損なうことなく、熟した柿の持つ特有
の色調を保持したゲル状の加工食品を簡略化した加工工
程によりすることができるという効果を有する。
【0064】また、渋柿果肉を用いた加工食品の製造方
法の発明は、ゲル化剤等を添加した渋柿果肉のゲル化、
脱渋、復渋しないゲル化、殺菌の各工程を同時に行い、
ゲル状の加工食品の加工工程を簡略化することができる
という効果を奏する。
【0065】この発明は、柿の風味を損なうことなく、
熟した柿の持つ特有の色調を保持したゲル状の加工食品
を簡略化した加工工程によりすることができるという効
果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る渋柿の処理方法及び渋柿果肉を
用いた加工食品の製造方法の実施に使用する高圧処理装
置の1実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 圧力容器 2 シリンダ 3 水または温水 4 渋柿果肉、ゲル化剤等を入れた合成樹脂製軟質容器 5 油圧シリンダ 6 油圧ピストン 8 加圧ピストン 9 油圧ユニット

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 渋柿果肉を入れて密封した柔軟な容器を
    水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の圧力容器内の
    水温を常温とし、その水圧を500MPa以上となるよ
    うに油圧装置を作動させて前記圧力容器内の渋柿果肉を
    加圧した後、その加圧水中に所定時間置くことにより渋
    柿の脱渋、復渋抑制、殺菌を同時にすることを特徴とす
    る渋柿の処理方法。
  2. 【請求項2】 渋柿果肉を入れて密封した柔軟な容器を
    水が充填された圧力容器に入れ、加圧時の前記圧力容器
    内の水温を常温よりも高くし、水温が40°C以下では
    その水圧を400MPa以上、水温が40°Cより高く
    60°C未満の場合はその水圧をほぼ300MPa以
    上、水温が60°C以上の場合はその水圧を200MP
    a以上となるように油圧装置を作動させて前記圧力容器
    内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中に所定時間置
    くことにより渋柿の脱渋、復渋抑制、殺菌を同時にする
    ことを特徴とする渋柿の処理方法。
  3. 【請求項3】 ゲル化剤を添加した渋柿果肉ペーストを
    入れて密封した柔軟な容器を水が充填された圧力容器に
    入れ、加圧時の圧力容器内の水温を常温とし、その水圧
    を500MPa以上となるように油圧装置を作動させて
    前記圧力容器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧水中
    に所定時間置くことにより渋柿果肉を脱渋し、復渋抑制
    し、殺菌し、ジャム状またはジェリー状の加工食品とす
    ることを特徴とする渋柿果肉を用いた加工食品の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 ゲル化剤を添加した渋柿果肉ペーストを
    入れて密封した柔軟な容器を水が充填された圧力容器に
    入れ、加圧時の前記圧力容器内の水温を常温よりも高く
    し、水温が40°C以下ではその水圧を400MPa以
    上、水温が40°Cより高く60°C未満の場合はその
    水圧をほぼ300MPa以上、水温が60°C以上の場
    合はその水圧を200MPa以上となるように油圧装置
    を作動させて前記圧力容器内の渋柿果肉を加圧した後、
    その加圧水中に所定時間置くことにより渋柿果肉を脱渋
    し、復渋抑制し、殺菌し、ジャム状またはジェリー状の
    加工食品とすることを特徴とする渋柿果肉を用いた加工
    食品の製造方法。
  5. 【請求項5】 ゲル化剤を分散させた調味液中に渋柿果
    肉を入れて密封した柔軟な容器を水が充填された圧力容
    器に入れ、加圧時の圧力容器内の水温を常温とし、その
    水圧を500MPa以上となるように油圧装置を作動さ
    せて前記圧力容器内の渋柿果肉を加圧した後、その加圧
    水中に所定時間置くことにより渋柿果肉を脱渋し、復渋
    抑制し、殺菌し、ジャム状またはジェリー状の加工食品
    とすることを特徴とする渋柿果肉を用いた加工食品の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 ゲル化剤を分散させた調味液中に渋柿果
    肉を入れて密封した柔軟な容器を水が充填された圧力容
    器に入れ、加圧時の前記圧力容器内の水温を常温よりも
    高くし、水温が40°C以下ではその水圧を400MP
    a以上、水温が40°Cより高く60°C未満の場合は
    その水圧をほぼ300MPa以上、水温が60°C以上
    の場合はその水圧を200MPa以上となるように油圧
    装置を作動させて前記圧力容器内の渋柿果肉を加圧した
    後、その加圧水中に所定時間置くことにより渋柿果肉を
    脱渋し、復渋抑制し、殺菌し、ジャム状またはジェリー
    状の加工食品とすることを特徴とする渋柿果肉を用いた
    加工食品の製造方法。
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