JP2023554154A - サイトカインタンパク質の治療スケジュール - Google Patents

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Abstract

本開示は、特に癌を治療するための、治療用RNAの分野に関する。対象において、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAに対する望ましくない応答もしくは反応、またはその両方を低減するための組成物、使用および方法が本明細書で開示される。

Description

本開示は、特に癌を治療するための、治療用RNAの分野に関する。対象において、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAに対する望ましくない応答もしくは反応、またはその両方を低減するための組成物、使用および方法が本明細書で開示される。
免疫系は、癌を予防し、癌と闘ううえで重要な役割を果たす(Mittal et al.,Curr.Opinion Immunol.(2014))。有効な抗腫瘍免疫は、異なる免疫細胞サブセットの協調作用を必要とする。T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞は、抗腫瘍免疫応答の重要なメディエータである。CD8T細胞およびNK細胞は、腫瘍細胞を直接溶解することができる。CD4T細胞は、腫瘍への免疫サブセットの流入を促進し、樹状細胞(DC)を抗腫瘍CD8T細胞応答のプライミングに使用し、腫瘍細胞増殖のIFNγ媒介阻害を誘導する。炎症中に誘導されるIFNγおよびI型インターフェロンは、MHCクラスI分子に関連して腫瘍抗原の提示を増加させ、それによってCD8T細胞による腫瘍細胞認識を促進する。
進行性固形腫瘍を有する患者では治癒が不十分なままであり、より効果的で毒性の低いレジメンに対する緊急の満たされていない医学的必要性が存在する。免疫賦活サイトカインは有効な抗腫瘍免疫応答に不可欠であり、サイトカインベースの治療は有望な治療手段である。
インターロイキン2(IL2)は、T細胞およびNK細胞を含む免疫系の多様な細胞に作用する強力な免疫賦活サイトカインである。IL2は、T細胞およびNK細胞の分化、増殖、生存およびエフェクタ機能を支援することが公知である(Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003))。このサイトカインは、活性化時に主にT細胞によって産生される(Spolski et al.,Nat.Rev.Immunol.(2018))。
IL2は、CD25(IL2Rα)、CD122(IL2Rβ)およびCD132(IL2Rγ)からなる高親和性IL2受容体(IL2Rαβγ)を発現する細胞を選択的に刺激する。高親和性IL2Rαβγ複合体は、免疫抑制制御性T(Treg)細胞上に構成的に発現され、活性化CD4およびCD8T細胞上に一時的に存在する。これは、IL2が抗腫瘍エフェクタT細胞およびNK細胞の機能を増強するだけでなく、Treg細胞の増殖および免疫阻害機能も刺激するので、抗腫瘍免疫応答におけるこのサイトカインの二重の役割を強調している(Spolski et al.,Nat.Rev.Immunol.(2018))。
組換えヒトIL2(rhIL2)、アルデスロイキンは、最初に承認された癌免疫療法である。アルデスロイキンは、末期の悪性黒色腫および腎細胞癌の治療において長い間使用されてきた(Kammula et al.1998)。rhIL2療法後に完全奏効を示したほとんどの患者は、初期治療後25年を超えて無再発のままであるが、全奏効率は低い(Klapper et al.2008,Rosenberg et al.1998)。
IL2の臨床的有効性を制限するいくつかの要因がある。第1に、その短い血漿半減期のために、rhIL2は高用量で頻繁に投与されなければならない(Jiang et al.,Oncoimmunol.(2016))。ナイーブT細胞およびメモリT細胞ならびにNK細胞の大部分は、中間親和性受容体IL2Rβγのみを発現するので(Stauber et al.,PNAS(2006);Walsh,Immunol.Rev.(2012))、これらの細胞を刺激し、それによって最適な抗腫瘍免疫を達成するためには、高用量のIL2が必要である。
高用量のrhIL2治療は、癌患者のサブセットにおける全生存率を有意に増加させ得る(McDermott et al.,J.Clin.Oncol.(2005))。残念なことに、そのようなレジメンは、しばしば血管漏出症候群(VLS)などの重篤な有害作用を引き起こし、最大4%の治療関連死亡率をもたらす(McDermott et al.,J.Clin.Oncol.(2005);Rosenberg,S.A.et al.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987))。VLSの正確な原因は部分的にしか理解されていない。IL2活性化NK細胞由来の炎症誘発性サイトカイン(IFNγなど)が必須の役割を果たすと考えられている(Assier et al.,2004)。IL2媒介毒性作用に対するNK細胞の全体的な寄与は、十分に文書化されている(Gately,J.Immunol.(1988)、Peace et al.,J.Exp.Med.(1989))。
rhIL2の別の固有の難点は、癌患者においてTreg細胞を刺激および増殖させるその能力である。Treg細胞は、抗腫瘍エフェクタT細胞およびNK細胞の機能を抑制することができ(Sim et al.,J.Clin.Invest.(2014);Todd et al.,PLoS Med.(2016))、これは全生存率の低下に関連しており、rhIL2に基づく癌免疫療法の開発にとって大きな障害である(Ahmadzadeh&Rosenberg,Blood(2006))。
rhIL2は、癌において堅固な臨床的有効性を示していないので(Jiang et al.,Oncoimmunol.(2016))、代替アプローチが必要である。本発明者らは、組換えサイトカインの制限に対処するリボサイトカインプラットフォーム技術(国際公開第2019154985A1号)を開発している。患者の肝細胞によるコードされたサイトカインへのリボサイトカインRNA翻訳は、活性薬物の循環中への安定した放出を確実にし、サイトカインのヒト血清アルブミン(hAlb)への融合は、二次リンパ器官および腫瘍における血清半減期の延長および濃縮を媒介する。リボサイトカインのこの好ましい薬物動態プロファイルは、それらの組換え対応物の薬物動態プロファイルとは対照的であり、血液中の高いサイトカイン濃度に関連する重篤な毒性の確率を低下させ、頻繁な投与を回避するのに役立つ。
組換えrhIL2の薬力学の欠点に特異的に対処するために、本発明者らは、ヒト血清アルブミンに融合したヒトIL2変異体、hAlb-hIL2_A4s8をコードする薬理学的に最適化されたRNAを以前に構築した。このIL2変異体は、IL2Rαに対するその親和性を低下させ、IL2Rβへのその結合を増加させる変異を有する。
マウスにおいて、hAlb-hIL2_A4s8をコードする脂質ナノ粒子(LNP)製剤化mRNAの注射は、腫瘍増殖阻害および生存率の改善をもたらす。hAlb-hIL2_A4s8による処置は、Treg細胞の刺激および拡大を回避しながら、CD8T細胞の抗腫瘍応答を強化する。
hAlb-hIL2_A4s8のこれらの独特の治療的および薬理学的特性は、最適にバランスのとれた安全性および有効性を有する治療プロトコルを開発することを必要とする。本開示は、RNAにコードされたIL2変異体、hAlb-hIL2_A4s8の忍容性を高め、CD8T細胞およびNK細胞の両方の拡大を可能にする臨床的に適切な治療レジメンを記載する。IL2およびIL2変異体に加えて、これらの所見は、NK細胞の拡大をもたらす任意の種類の免疫療法に関連する(例えば、IL-15およびその変異体、ならびにI型インターフェロン誘導物質)。
国際公開第2019154985A1号パンフレット
Mittal et al.,Curr.Opinion Immunol.(2014) Blattman,J.N.et al.Nat.Med.9,540-7(2003) Spolski et al.,Nat.Rev.Immunol.(2018) Kammula et al.1998 Klapper et al.2008 Rosenberg et al.1998 Jiang et al.,Oncoimmunol.(2016) Stauber et al.,PNAS(2006) Walsh,Immunol.Rev.(2012) McDermott et al.,J.Clin.Oncol.(2005) Rosenberg,S.A.et al.N.Engl.J.Med.316,889-97(1987) Assier et al.,2004 Gately,J.Immunol.(1988) Peace et al.,J.Exp.Med.(1989) Sim et al.,J.Clin.Invest.(2014) Todd et al.,PLoS Med.(2016) Ahmadzadeh&Rosenberg,Blood(2006)
本発明は、一般に、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNA、すなわち、サイトカイン、その機能的変異体、またはサイトカインもしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNA(免疫賦活RNA)の投与を含む、対象の免疫療法治療を包含する。サイトカイン、その機能的変異体、またはサイトカインもしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列は、本明細書では「サイトカイン免疫賦活剤」または単に「免疫賦活剤」とも呼ばれる。一実施形態では、RNAは、疾患関連抗原、例えば腫瘍によって発現される抗原に特異的なT細胞を維持するおよび/または刺激するために投与される。
一実施形態では、本発明は、例えば、抗原エピトープに特異的なT細胞を刺激するための1つ以上の抗原エピトープをコードするRNA(ワクチンRNA)を使用して、対象にワクチンを投与することをさらに含み得る。
対象において発現されたサイトカイン、機能的変異体または機能的断片によって引き起こされる望ましくない応答もしくは反応、またはその両方を低減する、すなわち低下させるまたは緩和するために、本発明は、スケジュールでの免疫賦活RNAの投与を提供し、このスケジュールでは、前記RNAの第1の用量および前記RNAの第2の用量が投与され、前記第1の用量および第2の用量の投与量および投与の期間は、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択される。一実施形態では、免疫賦活RNAおよびコードされた免疫賦活剤はそれぞれ、特に本明細書に記載されるスケジュールに従って投与されない場合、例えば免疫賦活RNAが、より低いプライミング用量(例えば本明細書に記載の第1の用量)を投与せずに、最初の用量(例えば本明細書に記載の第2の用量)より高い用量、例えば、治療有効用量または標的用量で投与された場合、望ましくない応答または反応を引き起こすようなものである。一実施形態では、望ましくない応答または反応はNK細胞を含み、NK細胞数の増加、発熱、倦怠感、体重の減少、肝酵素の活性の上昇、毛細血管漏出症候群、低血圧および浮腫からなる群より選択される1つ以上を含み得る。一実施形態では、肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)からなる群より選択される1つ以上を含む。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNA、例えばヒトIL2(hIL2)、その機能的変異体、またはhIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAを含むかまたはそれからなる。免疫賦活RNAは、T細胞刺激分子をコードするさらなるRNAを含み得、したがって、例えばIL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAをさらに含み得る。一実施形態では、免疫賦活剤、例えばILタンパク質、その機能的変異体、またはILタンパク質もしくはその機能的変異体の機能的断片は、直接またはリンカーを介して薬物動態修飾基に融合される。例えば、hIL、その機能的変異体、またはhILもしくはその機能的変異体の機能的断片は、直接またはリンカーを介して、ヒトアルブミン(hAlb)、その機能的変異体、またはhAlbもしくはその機能的変異体の機能的断片に融合され得る。
一実施形態では、1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAは、例えば標的抗原もしくはポリエピトープポリペプチドをコードするRNA分子、または異なる分子種のRNA分子、例えば2、3、4、5またはさらにそれ以上の異なる分子種のRNA分子の1つの分子種を含む。一実施形態では、そのようなRNA分子は、1つの抗原エピトープまたは2つ以上、例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15またはさらにそれ以上の抗原エピトープ、例えば異なる抗原エピトープをコードし得る。1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAは、本明細書では「ワクチンRNA」とも称される。そのようなワクチンRNAは、1つ以上の抗原エピトープを含むアミノ酸配列、すなわちワクチン配列、すなわち抗原配列をコードする。1つ以上の抗原エピトープは、1つ以上の標的抗原に由来してもよく、したがって、対象において1つ以上の標的抗原または1つ以上の標的抗原を発現する細胞に対する免疫応答を誘導するのに適し得る。ワクチンRNAは、(適切な標的細胞によるポリヌクレオチドの発現後に)標的抗原またはそのプロセシング産物を標的とし得る免疫応答、特に免疫エフェクタ細胞の誘導、すなわち刺激、プライミングおよび/または拡大のためのエピトープを提供するために投与される。一実施形態では、本開示に従って誘導される免疫応答は、T細胞媒介免疫応答である。一実施形態では、免疫応答は、腫瘍または癌細胞、特に腫瘍抗原を発現する腫瘍または癌細胞に対する免疫応答である。
本明細書に記載の組成物および方法は、レシピエントの細胞に入るとそれぞれのタンパク質に翻訳され得る一本鎖RNAを活性成分として含む。野生型またはコドン最適化コード配列に加えて、RNAは、安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性のために最適化された1つ以上の構造要素(5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール)を含み得る。5’-UTR配列として、翻訳効率を高めるために最適化された「コザック配列」を有していてもよい、ヒトα-グロビンmRNAの5’-UTR配列を使用し得る。3’-UTR配列として、より高い最大タンパク質レベルおよびmRNAの長期持続性を確実にするために、コード配列とポリ(A)テールとの間に配置された「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアコード12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素(FI要素)の組合せを使用し得る。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された(参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2017/060314号参照)。さらに、30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く(ランダムヌクレオチドの)10個のヌクレオチドリンカー配列および別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)テールを使用し得る。このポリ(A)テール配列は、RNA安定性および翻訳効率を高めるように設計された。
さらに、ワクチンRNAにおいて、sec(分泌シグナルペプチド)および/またはMITD(MHCクラスI輸送ドメイン)は、それぞれの要素がそれぞれN末端タグまたはC末端タグとして翻訳されるようにエピトープコード領域に融合され得る。ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)をコードする配列に由来する融合タンパク質タグは、抗原プロセシングおよび提示を改善することが示されている。secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への移行を誘導する分泌シグナルペプチドをコードする78bp断片に対応し得る。MITDは、MHCクラスI輸送ドメインとも呼ばれる、MHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応し得る。融合タンパク質に一般的に使用されるような、主にアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる短いリンカーペプチドをコードする配列は、GS/リンカーとして使用され得る。
抗原エピトープは、免疫寛容を破壊するためにヘルパーエピトープと組み合わせて投与され得る。ヘルパーエピトープは、破傷風トキソイド由来、例えば破傷風菌(Clostridium tetani)の破傷風トキソイド(TT)由来のP2P16アミノ酸配列であり得る。これらの配列は、プライミング中に腫瘍非特異的T細胞支援を提供することによって寛容機構を克服するのを支持し得る。破傷風トキソイド重鎖は、MHCクラスII対立遺伝子に無差別に結合し、破傷風ワクチン接種を受けたほぼ全ての個体においてCD4+メモリT細胞を誘導することができるエピトープを含む。さらに、TTヘルパーエピトープと腫瘍関連抗原との組合せは、プライミング中にCD4+媒介T細胞支援を提供することによって、腫瘍関連抗原単独の適用と比較して免疫刺激を改善することが公知である。CD8+T細胞を刺激するリスクを低減するために、無差別に結合するヘルパーエピトープを含むことが公知の2つのペプチド配列を使用して、可能な限り多くのMHCクラスII対立遺伝子、例えばP2およびP16への結合を確実にし得る。
一実施形態では、ワクチン配列は、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、ヘルパーエピトープ、好ましくは破傷風トキソイド由来のヘルパーエピトープを含む。免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、直接またはリンカーによって分離されて、抗原配列のC末端に融合され得る。任意で、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、抗原配列とMITDとを連結し得る。
一実施形態では、ワクチンRNAを、ヘルパーエピトープをコードするRNAと共に適用して、得られる免疫応答を増強する。ヘルパーエピトープをコードするこのRNAは、上述した安定性および翻訳効率に関してRNAの最大有効性のために最適化された構造要素(5’キャップ、5’UTR、3’UTR、ポリ(A)テール)を含み得る。
RNA、すなわち免疫賦活RNAおよびワクチンRNAは、静脈内(i.v.)投与のための血清安定性製剤を生成するために脂質粒子に製剤化され得る。免疫賦活RNAは、脂質ナノ粒子(LNP)中に存在し得る。RNAナノ粒子は、コードされたタンパク質の効率的な発現をもたらす肝臓を標的とし得る。一実施形態では、本明細書に記載の免疫賦活RNAは、静脈内投与用の脂質ナノ粒子として製剤化されるN1-メチルプソイドウリジン修飾dsRNA精製RNAである。ワクチンRNAは、RNA-リポプレックス(LPX)中に存在し得る。RNA-リポプレックスは、免疫系の効率的な刺激をもたらすリンパ器官の抗原提示細胞(APC)を標的とし得る。異なるRNAを別々に脂質と複合体化して、粒子製剤を生成し得る。一実施形態では、ワクチンRNAは、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列をコードするRNAと共に粒子として共製剤化される。
一態様では、対象において、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAに対する望ましくない応答もしくは反応、またはその両方を低減する方法であって、
前記RNAの第1の用量;
前記RNAの第2の用量;
を対象に投与する工程を含み、ならびに
前記第1および第2の用量の投与量および投与期間が、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択される、
方法が本明細書で提供される。
一実施形態では、前記第1の用量で投与される前記RNAの量は、前記第2の用量で投与される前記RNAの量の80%、75%、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%または5%以下である。
一実施形態では、前記第1の用量で投与される前記RNAの量は、体重1kg当たり200μg、150μg、100μg、90μg、80μg、70μg、60μg、50μg、40μg、30μg、20μg、10μg、5μg、4μg、3μg、2μg、1μg、0.5μg、0.4μg、0.3μg、0.2μg、または0.1μg以下であり、第2の用量は前記第1の用量よりも多い。
一実施形態では、前記第2の用量で投与される前記RNAの量は、体重1kg当たり20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、または400μgよりも多く、第2の用量は前記第1の用量よりも多い。
一実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、14、または21日を超える日数により、第1の用量の投与の完了と第2の用量の投与の開始とが分けられる。
一実施形態では、56、49、42、35、または28日以内の日数により、第1の用量の投与の完了と第2の用量の投与の開始とが分けられる。
一実施形態では、本方法は、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAの1つ以上のさらなる用量を対象に投与する工程をさらに含む。
一実施形態では、前記第1および第2の用量は、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、皮内または筋肉内注射または注入によって投与される。
一実施形態では、前記第1および第2の用量は静脈内投与される。
一実施形態では、望ましくない応答または反応はNK細胞を含む。
一実施形態では、望ましくない応答または反応は、NK細胞数の増加、発熱、倦怠感、体重の減少、肝酵素の活性の上昇、毛細血管漏出症候群、低血圧および浮腫からなる群より選択される1つ以上を含む。
一実施形態では、肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)からなる群より選択される1つ以上を含む。
一実施形態では、望ましくない応答または反応は、第1の用量を投与せずに第2の用量を投与した後に起こる。
一実施形態では、本方法は、第1の用量、第2の用量、またはその両方の投与後に、対象を望ましくない応答または反応の存在について評価する工程をさらに含む。
一実施形態では、前記方法は、検出可能な望ましくない応答または反応を引き起こさない。
一実施形態では、前記方法は、望ましくない応答または反応の減少をもたらす。
一実施形態では、本方法は、ワクチンを対象に投与する工程をさらに含む。
一実施形態では、ワクチンを対象に投与する工程は、1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAを対象に投与する工程を含む。
一実施形態では、エピトープはT細胞エピトープである。
一実施形態では、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列は、延長薬物動態(PK)ポリペプチドを含む。
一実施形態では、延長PKポリペプチドは融合タンパク質を含む。
一実施形態では、融合タンパク質は、薬物動態修飾基に融合したサイトカインタンパク質を含む。
一実施形態では、薬物動態修飾基は、アルブミン、その機能的変異体、またはアルブミンもしくはその機能的変異体の機能的断片を含む。
一実施形態では、薬物動態修飾基は、ヒトアルブミン、その機能的変異体、またはヒトアルブミンもしくはその機能的変異体の機能的断片を含む。
一実施形態では、薬物動態修飾基は、サイトカインタンパク質のN末端に融合される。
一実施形態では、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列は、N末端からC末端に向かって、N-薬物動態修飾基-GSリンカー-サイトカインタンパク質-Cを含む。
一実施形態では、サイトカインタンパク質はIL2変異体を含む。
一実施形態では、IL2変異体はヒトIL2変異体である。
一実施形態では、ヒトIL2変異体は、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体の置換変異体を含む。
一実施形態では、1つ以上の置換は、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性を増強する。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも80位(ロイシン)、81位(アルギニン)、85位(ロイシン)および92位(イソロイシン)で置換されている。
一実施形態では、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた80位(ロイシン)がフェニルアラニンで置換され、81位(アルギニン)がグルタミン酸で置換され、85位(ロイシン)がバリンで置換され、92位(イソロイシン)がフェニルアラニンで置換されている。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)でさらに置換されている。
一実施形態では、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)は、ヒスチジンで置換されている。
一実施形態では、1つ以上の置換は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のαサブユニットに対する親和性を低下させる。
一実施形態では、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上の置換は、IL2Rαβγに対する親和性をIL2Rβγに対する親和性よりも大きく低下させる。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも43位(リジン)および61位(グルタミン酸)で置換されている。
一実施形態では、43位(リジン)はグルタミン酸で置換され、61位(グルタミン酸)はリジンで置換されている。
一実施形態では、IL2変異体は、野生型ヒトIL2と比較して制御性T細胞を刺激する能力が低下している。
一実施形態では、IL2変異体は、野生型ヒトIL2と比較してエフェクタT細胞を刺激する能力が増加している。
一実施形態では、サイトカインタンパク質は、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含み、前記ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも43位(リジン)でグルタミン酸によって、61位(グルタミン酸)でリジンによって、74位(グルタミン)でヒスチジンによって、80位(ロイシン)でフェニルアラニンによって、81位(アルギニン)でグルタミン酸によって、85位(ロイシン)でバリンによって、および92位(イソロイシン)でフェニルアラニンによって置換されている。
一実施形態では、ヒトIL2は、配列番号1に従うアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列は、配列番号6に従うアミノ酸配列(hAlb-hIL2_A4s8)を含む。
一実施形態では、対象はヒトである。
一実施形態では、免疫賦活RNA、すなわちサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNA、例えばIL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAは、ヒトIL2(hIL2)、その機能的変異体、またはヒトIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAを含む。一実施形態では、ヒトIL2、その機能的変異体、またはヒトIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列は、ヒトアルブミン(hAlb)、その機能的変異体、またはhAlbもしくはその機能的変異体の機能的断片を含む。一実施形態では、hAlb、その機能的変異体、またはhAlbもしくはその機能的変異体の機能的断片は、ヒトIL2、その機能的変異体、またはヒトIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片と融合される。一実施形態では、hAlb、その機能的変異体、またはhAlbもしくはその機能的変異体の機能的断片は、ヒトIL2、その機能的変異体、またはヒトIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片のN末端に融合される。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、配列番号5もしくは6のアミノ酸配列、または配列番号5もしくは6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、免疫賦活RNAは、配列番号6のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、免疫賦活剤は、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、ここで、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、5’キャップm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGを含む。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、修飾RNA、特に安定化mRNAである。一実施形態では、免疫賦活RNAは、少なくとも1つのウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。一実施形態では、免疫賦活RNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。一実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、配列番号13のヌクレオチド配列、または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、配列番号14のヌクレオチド配列、または配列番号14のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
一実施形態では、免疫賦活RNAはポリA配列を含む。一実施形態では、ポリA配列は、少なくとも100個のヌクレオチドを含む。一実施形態では、ポリA配列は、配列番号15のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、免疫賦活剤は、N末端からC末端に向かって、N-hAlb-GSリンカー-hIL2/hIL2変異体-Cを含む。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである。
一実施形態では、免疫賦活RNAは注射用に製剤化され、および/または注射によって投与される。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、静脈内投与用に製剤化され、および/または静脈内注射によって投与される。
一実施形態では、免疫賦活RNAは、脂質粒子として製剤化されるか、または製剤化されることになる。一実施形態では、RNA脂質粒子は脂質ナノ粒子(LNP)である。一実施形態では、LNP粒子は、3D-P-DMA、PEG2000-C-DMA、DSPC、およびコレステロールを含む。
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、癌を治療または予防するための方法である。一実施形態では、1つ以上の抗原エピトープは、腫瘍抗原に由来するエピトープである。
一実施形態では、ワクチンRNA、すなわち抗原エピトープに特異的なT細胞を刺激するための1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAは、1つ以上の腫瘍抗原に由来するエピトープをコードする。
一実施形態では、ワクチンRNAによってコードされるアミノ酸配列、すなわちワクチン配列は、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、MHC分子、好ましくはMHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号9のアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、分泌シグナルペプチドをコードするアミノ酸配列をさらに含む。
一実施形態では、分泌シグナルペプチドは、配列番号8のアミノ酸配列、または配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、ワクチン配列は、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列を含み、および/またはワクチンRNAは、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列をコードするRNAと同時投与される。一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、ヘルパーエピトープ、好ましくは破傷風トキソイド由来のヘルパーエピトープを含む。一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列、または配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、ワクチン配列は、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされ、ここで、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされたアミノ酸配列の配列を変化させない。
一実施形態では、ワクチンRNAは、修飾RNA、特に安定化mRNAである。一実施形態では、RNAは、少なくとも1つのウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。一実施形態では、RNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。一実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)、および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。
一実施形態では、ワクチンRNAは、5’キャップm 7,2’-OGppp(5’)Gを含む。
一実施形態では、ワクチンRNAは、配列番号13のヌクレオチド配列、または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
一実施形態では、ワクチンRNAは、配列番号14のヌクレオチド配列、または配列番号14のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
一実施形態では、ワクチンRNAはポリA配列を含む。一実施形態では、ポリA配列は、少なくとも100個のヌクレオチドを含む。一実施形態では、ポリA配列は、配列番号15のヌクレオチド配列を含むかまたはそれからなる。
一実施形態では、ワクチン配列は、N末端からC末端に向かって、N-抗原配列-免疫寛容を破壊するアミノ酸配列-抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列-Cを含む。
一実施形態では、ワクチンRNAは、液体として製剤化されるか、固体として製剤化されるか、またはそれらの組合せである。
一実施形態では、ワクチンRNAは注射用に製剤化され、および/または注射によって投与される。
一実施形態では、ワクチンRNAは、静脈内投与用に製剤化され、および/または静脈内投与によって投与される。
一実施形態では、ワクチンRNAは、リポプレックス粒子として製剤化されるか、または製剤化されることになっている。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、RNAをリポソームと混合することによって得られる。
一態様では、本明細書に記載のRNA、すなわち、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第1の用量のRNAおよびサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第2の用量のRNAを含むキットであって、前記第1および第2の用量の投与量が、前記第1および第2の用量を対象に投与すると、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択される、キットが本明細書で提供される。キットは、いくつかの用量、例えば2、3、4、5またはさらにそれ以上の第1の用量および/または第2の用量を含み得る。キットは、抗原エピトープに特異的なT細胞を刺激するための1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAをさらに含み得る。これらのRNAの実施形態は、本明細書に記載される通り、例えば本明細書に記載される方法について記載される通りである。一実施形態では、異なるRNAおよび/または異なる用量のRNAは、別々のバイアル中に存在する。一実施形態では、キットは、本明細書に記載される方法においてRNAを使用するための説明書を含む。一実施形態では、キットは、癌を治療または予防するためのRNAの使用説明書を含む。一実施形態では、1つ以上の抗原エピトープは腫瘍抗原に由来する。一態様では、医薬用途のための本明細書に記載のキットが本明細書で提供される。一実施形態では、医薬用途は、疾患または障害の治療的または予防的処置を含む。一実施形態では、疾患または障害の治療的または予防的処置は、癌を治療または予防することを含む。
一態様では、本明細書に記載の方法において使用するための、本明細書に記載のRNA、すなわちサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第1の用量のRNAおよびサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第2の用量のRNAであって、前記第1および第2の用量の投与量が、前記第1および第2の用量を対象に投与すると、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択されるRNA、ならびに任意で、抗原エピトープに特異的なT細胞を刺激するための1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAが本明細書で提供される。
(図1)hAlb-hIL2_A4s8の投与はマウスにおいて毒性をもたらすが、hAlb-hIL2の投与は毒性をもたらさない。 ナイーブC57BL/6マウス(n=7/群)を、5μgのRNA-LPX(5つの前立腺腫瘍抗原をコードする)、3μgのhAlb-hIL2_A4s8および3μgのhIL7-hAlb;3μgのhAlb-hIL2_A4s8および3μgのhIL7-hAlb;5μgのRNA-LPXおよび3μgのhAlb-hIL2_A4s8;または5μgのRNA-LPXおよび3μgのhAlb-hIL2の三重の組合せのいずれかで静脈内(i.v.)処置した。全てのリボサイトカインを、本開示に記載される全ての実験を通してLNP製剤として投与した(実施例1を参照)。NaClで処置したマウスを陰性対照とした。(図1A)注射日(0日目)と比較したマウス体重の変化。点線は変化なしを示す。 統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用して決定した。 処置の3日後の肝臓および組織の損傷の代用としてのアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)活性についてのマウス血清の分析。点線、対照群の平均。統計的有意性は、ダネットの多重比較検定による一元配置ANOVAを使用して決定した。全ての分析は両側であり、GraphPad Prism 8を使用して実施した。ns、有意差なし:P>0.05;**P≦0.01、***P≦0.001、****P≦0.0001。平均±SEM(A)および平均(B)。 (図2)hAlb-IL2_A4s8はNK細胞の拡大を誘発し、続いて収縮および不応答性を誘発する。(図2A)BALB/cマウス(n=11/群)に5×10個のCT26腫瘍細胞を皮下(s.c.)接種し、10、17、24および31日目に腫瘍抗原gp70をコードする20μgのRNA-LPXワクチンで毎週i.v.処置した。リボサイトカインhAlb-hIL2、hAlb-hIL2_A4s8またはhIL7-hAlb(それぞれ3μg)をRNAワクチンと同時にi.v.投与した。対照群には、RNA-LPXワクチンおよびhAlbのみをコードする6μgのLNP製剤化RNAを投与した。血液中のCD49bCD19CD4CD8NK細胞の数を、各処置の7日後(17、24および31日目)にフローサイトメトリによって決定した。点線は処置日を示し、点線の数字はRNA-LPX+リボサイトカインの投与された回数を示す。統計的有意性は、二元配置ANOVA、続いてダネットの多重比較検定を使用して決定した。 BALB/cマウス(n=11/群)に5×10個のCT26腫瘍細胞をs.c.接種し、10、17、24および31日目に、20μgのgp70 RNA-LPXおよびhAlb-hIL2_A4s8をコードする3μgのRNAを個別にまたは組み合わせて毎週i.v.処置した。対照群には、抗原をコードしないLPX製剤化RNAおよび3μgのLNP製剤化hAlbコードRNAを投与した。血液中のCD49bCD19CD4CD8NK細胞の数を、最初の処置の7日後(17日目)にフローサイトメトリによって決定した。点線、対照群の平均。統計的有意性は、ダネットの多重比較検定による一元配置ANOVAを使用して決定した。全ての分析は両側であり、GraphPad Prism 8を使用して実施した。ns:P>0.05、****P≦0.0001。平均±SEM(A)および平均(B)。 (図3)hAlb-hIL2_A4s8に関連する毒性はNK細胞に依存する。 C57BL/6マウス(n=7/群)を、リボサイトカイン+RNA-LPX処置の1日前に、ポリクローナルNK細胞枯渇抗体(腹腔内注射によって投与された20μLの抗アシアロGM1抗体)による事前のNK細胞枯渇を伴ってまたは伴わずに、0、7、14および21日目に3μgのhAlb-hIL2_A4s8、3μgのhIL7-hAlbおよび5μgのRNA-LPXでi.v.処置した。NaClで処置したマウスを陰性対照とした。(図3A)0日目と比較したマウス体重の変化。点線は変化なしを示す。 統計的有意性は、二元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用して決定した。 処置の3日後の肝臓および組織の損傷の代用としてのALAT、ASATおよびLDH活性についてのマウス血清の分析。点線、NaCl群の平均。統計的有意性は、ダネットの多重比較検定による一元配置ANOVAを使用して決定した。全ての分析は両側であり、GraphPad Prism 8を使用して実施した。ns:P>0.05、**P≦0.01、****P≦0.0001。平均±SEM(A)および平均(B)。 (図4)低用量hIL2_A4s8の前処置は、その後の処置の忍容性を促進する。 C57BL/6マウスを、0日目にNaCl(対照;n=7);0日目に3μgのhAlb-hIL2_A4s8、3μgのhIL7-hAlbおよび5μgのRNA-LPX(3μg;n=7);0、7、14および21日目に0.5μgのhAlb-hIL2_A4s8、0.5μgのhIL7-hAlb、5μgのRNA-LPX(0.5μg;n=11);または0日目に0.5μgのhAlb-hIL2_A4s8、0.5μgのhIL7-hAlbおよび5μgのRNA-LPX、続いて7、14および21日目に3μgのhAlb-hIL2_A4s8、3μgのhIL7-hAlbおよび5μgのRNA-LPX(0.5μg/3μg;n=7)のいずれかでi.v.処置した。 (図4A)0日目と比較したマウス体重の変化。水平の点線は変化がないことを示す。垂直の点線は治療日を示し、点線の数字はRNA-LPX+リボサイトカインの投与された回数を示す。 ALAT、ASATおよびLDH活性についてのマウス血清の分析(3日目、n=7/群;24日目、n=4)。点線、対照群の平均。統計的有意性は、一元配置ANOVAおよびダネットの多重比較検定を使用して決定した。全ての分析は両側であり、GraphPad Prism 8を使用して実施した。ns:P>0.05、****P≦0.0001。平均±SEM(A)および平均(B)。 (図5)CD8T細胞は、hAlb-IL2_A4s8処置を繰り返すと拡大するが、NK細胞は抵抗性になるC57BL/6マウス(n=5/群)を、3週間空けて3μgのhAlb-hIL2A4s8で2回(0日目および21日目;3週間ごと);1.5μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(0日目)および3μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(21日目;3週間ごと_用量漸増);3μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(21日目;3週間のみ);または3μgのhAlb-hIL2A4s8で3回(0、7、14日目;毎週)のいずれかでi.v.処置した。NK細胞およびCD8T細胞の頻度を、0、7、14、21、28および35日目にフローサイトメトリによって血液中で測定した。(図5A)CD45細胞におけるNK細胞の頻度。 CD45細胞におけるCD8T細胞の頻度。点線は処置日を示し、点線の数字はリボサイトカインの投与された回数を示す。平均±SEM。 (図6)低用量の前処置は、3週間の投与レジメンでさえも、hAlb-hIL2_A4s8の忍容性を高める。C57BL/6マウス(n=5/群)を、3週間空けて3μgのhAlb-hIL2A4s8で2回(0日目および21日目;3週間ごと);1.5μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(0日目)および3μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(21日目;3週間ごと_用量漸増);3μgのhAlb-hIL2_A4s8で1回(21日目;3週間のみ);または3μgのhAlb-hIL2A4s8で3回(0、7、14日目;毎週)のいずれかでi.v.処置した。(図6A)0日目と比較したマウス体重の変化(0~3日目を示す)。 7日目と比較したマウス体重の変化(7~10日目を示す)。 14日目と比較したマウス体重の変化(14~17日目を示す)。 21日目と比較したマウス体重の変化(21~24日目を示す)。 0日目と比較したマウス体重の変化(0~28日目を示す)。点線は処置日を示し、点線の数字は処置の回数を示す。平均±SEM。
配列の説明
以下の表は、本明細書で参照される特定の配列のリストを提供する。
Figure 2023554154000001
Figure 2023554154000002
Figure 2023554154000003
Figure 2023554154000004
Figure 2023554154000005
Figure 2023554154000006
Figure 2023554154000007
本開示を以下で詳細に説明するが、この開示は本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
好ましくは、本明細書で使用される用語は、「A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)」,H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
本開示の実施は、特に指示されない限り、当分野の文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
以下において、本開示の要素を説明する。これらの要素を特定の実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および実施形態は、本開示を明示的に記載される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明示的に記載される実施形態を任意の数の開示される要素と組み合わせた実施形態を開示し、包含すると理解されるべきである。さらに、記載される全ての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、この説明によって開示されていると見なされるべきである。
「約」という用語は、およそ、またはほぼ、を意味し、本明細書に記載の数値または範囲の文脈において、一実施形態では、列挙または特許請求される数値または範囲の±20%、±10%、±5%、または±3%を意味する。
本開示を説明する文脈において(特に特許請求の範囲の文脈において)使用される「1つの」および「その」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別個の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個々の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本開示をよりよく説明することを意図しており、特許請求の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本開示の実施に不可欠な特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
特に明記されない限り、「含む」という用語は、「含む」によって導入されたリストのメンバーに加えて、さらなるメンバーが任意に存在し得ることを示すために本文書の文脈で使用される。しかしながら、「含む」という用語は、さらなるメンバーが存在しない可能性を包含することが本開示の特定の実施形態として企図され、すなわち、この実施形態の目的のためには、「含む」は、「からなる」または「から本質的になる」の意味を有すると理解されるべきである。
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される各資料(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書などを含む)は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本開示がそのような開示に先行する権利を有しなかったことの承認と解釈されるべきではない。
定義
以下において、本開示の全ての態様に適用される定義を提供する。以下の用語は、特に指示されない限り、以下の意味を有する。定義されていない任意の用語は、それらの技術分野で広く認められている意味を有する。
本明細書で使用される「低減する」、「減少させる」、「阻害する」または「損なう」などの用語は、好ましくは少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも75%またはさらにそれ以上のレベルの全体的な低下または全体的な低下を生じさせる能力に関する。これらの用語は、完全なまたは本質的に完全な阻害、すなわちゼロまたは本質的にゼロへの低減を含む。
「増加させる」、「増強する」または「超える」などの用語は、好ましくは、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも80%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、またはさらにそれ以上の増加または増強に関する。
本開示によれば、「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって互いに連結された約2個以上、約3個以上、約4個以上、約6個以上、約8個以上、約10個以上、約13個以上、約16個以上、約20個以上、および最大約50個、約100個または約150個までの連続するアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、大きなペプチド、特に少なくとも約150個のアミノ酸を有するペプチドを指すが、「ペプチド」、「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、本明細書では通常同義語として使用される。
「治療用タンパク質」は、治療有効量で対象に提供された場合、対象の状態または病態に対してプラスのまたは有利な効果を及ぼす。一実施形態では、治療用タンパク質は治癒特性または緩和特性を有し、疾患または障害の1つ以上の症状を改善する、緩和する、軽減する、逆転させる、発症を遅延させる、または重症度を軽減するために投与され得る。治療用タンパク質は予防特性を有し得、疾患の発症を遅延させるため、またはそのような疾患もしくは病的状態の重症度を軽減するために使用され得る。「治療用タンパク質」という用語は、タンパク質またはペプチド全体を含み、それらの治療的に活性な断片も指すことができる。それはまた、タンパク質の治療的に活性な変異体を含み得る。治療活性タンパク質の例としては、免疫賦活剤およびワクチン接種のためのエピトープが挙げられるが、これらに限定されない。
アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)に関する「断片」は、アミノ酸配列の一部、すなわちN末端および/またはC末端で短縮されたアミノ酸配列を表す配列に関する。C末端で短縮された断片(N末端断片)は、例えば、オープンリーディングフレームの3’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。N末端で短縮された断片(C末端断片)は、例えば、トランケートされたオープンリーディングフレームが翻訳を開始させるように働く開始コドンを含む限り、オープンリーディングフレームの5’末端を欠くトランケートされたオープンリーディングフレームの翻訳によって得ることができる。アミノ酸配列の断片は、例えば、アミノ酸配列からのアミノ酸残基の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%を含む。アミノ酸配列の断片は、好ましくは、アミノ酸配列からの少なくとも6個、特に少なくとも8個、少なくとも12個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも50個、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
本明細書における「変異体」とは、少なくとも1つのアミノ酸修飾によって親アミノ酸配列とは異なるアミノ酸配列を意味する。親アミノ酸配列は、天然もしくは野生型(WT)アミノ酸配列であり得るか、または野生型アミノ酸配列の改変形態であり得る。好ましくは、変異体アミノ酸配列は、親アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸修飾、例えば、親と比較して1~約20個のアミノ酸修飾、好ましくは1~約10個または1~約5個のアミノ酸修飾を有する。
本明細書における「野生型」または「WT」または「天然」とは、対立遺伝子変異を含む、自然界で見出されるアミノ酸配列を意味する。野生型アミノ酸配列、ペプチドまたはタンパク質は、意図的に改変されていないアミノ酸配列を有する。
本発明によれば、アミノ酸配列に関する「修飾」という用語は、野生型ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質の配列などの親配列と比較して、親配列の変異体をもたらすアミノ酸配列の配列変化に関する。
本開示の目的のために、アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。「変異体」という用語は、全ての突然変異体、スプライス変異体、翻訳後修飾変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体、および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。「変異体」という用語は、特にアミノ酸配列の断片を含む。
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、得られた産物の適切なスクリーニングを伴うランダムな挿入も可能である。アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合物を含む。アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、タンパク質の任意の位置にあってよい。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列内の位置にある修飾、および/またはアミノ酸を類似の特性を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。好ましくは、ペプチドおよびタンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち、同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化は、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換を含む。天然に存在するアミノ酸は、一般に4つのファミリー:酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸に分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。一実施形態では、保存的アミノ酸置換は、以下の群内の置換を含む:
グリシン、アラニン;
バリン、イソロイシン、ロイシン;
アスパラギン酸、グルタミン酸;
アスパラギン、グルタミン;
セリン、トレオニン;
リジン、アルギニン;および
フェニルアラニン、チロシン。
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20個、少なくとも約40個、少なくとも約60個、少なくとも約80個、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のアミノ酸、いくつかの実施形態では連続するアミノ酸について与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最良の配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::ニードル、マトリックス:Blosum62、ギャップオープン10.0、ギャップ伸長0.5を用いて行うことができる。
「配列類似性」は、同一であるか、または保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸のパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。
「%同一」、「同一性%」という用語または同様の用語は、特に、比較される配列間の最適なアラインメントにおいて同一であるヌクレオチドまたはアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図されている。前記パーセンテージは純粋に統計的であり、2つの配列間の差は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布していてもよいが、必ずしもそうではない。2つの配列の比較は、通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアラインメント後に、セグメントまたは「比較ウィンドウ」に関して配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で、またはSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444の類似性検索アルゴリズムを用いて、もしくは前記アルゴリズムを使用したコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)を援用して実施し得る。いくつかの実施形態では、2つの配列の同一性パーセントは、米国国立バイオテクノロジー情報センター(United States National Center for Biotechnology Information)(NCBI)のウェブサイト(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE_TYPE=BlastSearch&BLAST_SPEC=blast2seq&LINK_LOC=align2seq)で入手可能なBLASTNまたはBLASTPアルゴリズムを使用して決定される。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTNアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)28に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)1、-2に設定された一致/不一致スコア;(v)線形に設定されたギャップコスト;および(vi)使用されている低複雑度領域のフィルタ。いくつかの実施形態では、NCBIウェブサイトのBLASTPアルゴリズムに使用されるアルゴリズムパラメータは、以下を含む:(i)10に設定された期待閾値;(ii)3に設定されたワードサイズ;(iii)0に設定されたクエリ範囲内の最大一致;(iv)BLOSUM62に設定されたマトリックス;(v)存在:11、拡張:1に設定されたギャップコスト;および(vi)条件付き組成スコアマトリックス調整。
同一性パーセントは、比較する配列が一致する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列中の位置の数)で除して、この結果に100を乗じることによって得られる。
いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%または約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100個、少なくとも約120個、少なくとも約140個、少なくとも約160個、少なくとも約180個、または約200個のヌクレオチド、いくつかの実施形態では連続するヌクレオチドについて与えられる。いくつかの実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
相同なアミノ酸配列は、本開示によれば、アミノ酸残基の少なくとも40%、特に少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、少なくとも98または少なくとも99%の同一性を示す。
本明細書に記載のアミノ酸配列変異体は、例えば組換えDNA操作により、当業者によって容易に調製され得る。置換、付加、挿入または欠失を有するペプチドまたはタンパク質を調製するためのDNA配列の操作は、例えば、Sambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。さらに、本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、例えば固相合成および類似の方法などによる公知のペプチド合成技術を用いて容易に調製され得る。
一実施形態では、アミノ酸配列(ペプチドまたはタンパク質)の断片または変異体は、好ましくは「機能的断片」または「機能的変異体」である。アミノ酸配列の「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、それが由来するアミノ酸配列のものと同一または類似の1つ以上の機能特性を示す、すなわち機能的に等価である任意の断片または変異体に関する。免疫賦活剤に関して、1つの特定の機能は、断片または変異体が由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の免疫刺激活性である。抗原または抗原配列に関して、1つの特定の機能は、断片または変異体が由来するアミノ酸配列によって示される1つ以上の免疫原性活性(例えば免疫反応の特異性)である。本明細書で使用される「機能的断片」または「機能的変異体」という用語は、特に、親分子または配列のアミノ酸配列と比較して1つ以上のアミノ酸によって変化しており、それでも親分子または配列の機能の1つ以上を果たすことができる、例えば標的分子に対する免疫応答を刺激または誘導することができるアミノ酸配列を含む変異体分子または配列を指す。一実施形態では、親分子または配列のアミノ酸配列の改変は、分子または配列の特徴に有意に影響を及ぼさないかまたは変化させない。異なる実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、低下し得るが、依然として有意に存在し得、例えば、機能的変異体の免疫刺激活性または免疫原性は、親分子または配列の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%であり得る。しかしながら、他の実施形態では、機能的断片または機能的変異体の機能は、親分子または配列と比較して増強され得る。
指定されたアミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)に「由来する」アミノ酸配列(ペプチド、タンパク質またはポリペプチド)は、最初のアミノ酸配列の起源を指す。好ましくは、特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列またはその断片と同一、本質的に同一または相同であるアミノ酸配列を有する。特定のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列は、その特定の配列の変異体またはその断片であり得る。例えば、本明細書での使用に適したアミノ酸配列は、天然配列の望ましい活性を保持しながら、それらが由来する天然に存在する配列または天然配列とは配列が異なるように改変され得ることが当業者に理解されるであろう。
本明細書で使用される場合、「説明資料」または「説明書」は、本発明の組成物および方法の有用性を伝えるために使用することができる刊行物、記録、図、または任意の他の表現媒体を含む。本発明のキットの説明資料は、例えば、本発明の組成物を含む容器に貼付されてもよく、または組成物を含む容器と共に出荷されてもよい。あるいは、説明資料と組成物が受領者によって協働して使用されることを意図して、説明資料は容器とは別に出荷されてもよい。
「単離された」は、天然状態から改変されたまたは取り出されたことを意味する。例えば、生きている動物に天然に存在する核酸またはペプチドは「単離されて」いないが、その天然状態の共存物質から部分的または完全に分離された同じ核酸またはペプチドは「単離されて」いる。単離された核酸またはタンパク質は、実質的に精製された形態で存在し得るか、または例えば宿主細胞などの非天然環境に存在し得る。
本発明の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え核酸などの「組換え物」は、天然には存在しない。
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人によって意図的に改変されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
本明細書で使用される「生理学的pH」は、約7.5のpHを指す。
「遺伝子改変」または単に「改変」という用語は、核酸による細胞のトランスフェクションを含む。「トランスフェクション」という用語は、細胞への核酸、特にRNAの導入に関する。本発明の目的のために、「トランスフェクション」という用語はまた、細胞への核酸の導入またはそのような細胞による核酸の取り込みを含み、細胞は、対象、例えば患者に存在し得る。したがって、本発明によれば、本明細書に記載の核酸のトランスフェクションのための細胞は、インビトロまたはインビボで存在することができ、例えば、細胞は患者の器官、組織および/または生物の一部を形成することができる。本発明によれば、トランスフェクションは一過性または安定であり得る。トランスフェクションのいくつかの用途では、トランスフェクトされた遺伝物質が一過性にのみ発現されれば十分である。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。トランスフェクションプロセスで導入された核酸は、通常、核ゲノムに組み込まれないので、外来核酸は有糸分裂によって希釈されるかまたは分解される。核酸のエピソーム増幅を可能にする細胞は、希釈率を大幅に低下させる。トランスフェクトされた核酸が実際に細胞およびその娘細胞のゲノムに残ることが望ましい場合は、安定なトランスフェクションが起こらなければならない。そのような安定なトランスフェクションは、トランスフェクションのためにウイルスベースのシステムまたはトランスポゾンベースのシステムを使用することによって達成することができる。一般に、免疫賦活剤または抗原をコードする核酸は、細胞に一過性にトランスフェクトされる。RNAを細胞にトランスフェクトして、そのコードされたタンパク質を一過性に発現させることができる。
本明細書で使用される場合、「3D-P-DMA」という用語は、好ましくは(6Z,16Z)-12-((Z)-デカ-4-エン-1-イル)ドコサ-6,16-ジエン-11-イル5-(ジメチルアミノ)ペンタノエートを指す。
本明細書で使用される場合、「PEG2000-C-DMA」という用語は、好ましくは3-N-[(ω-メトキシポリ(エチレングリコール)2000)カルバモイル]-1,2-ジミリスチルオキシ-プロピルアミン(MPEG-(2kDa)-C-DMAまたはメトキシ-ポリエチレングリコール-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロピルカルバメート(2000))を指す。
本明細書で使用される場合、「DSPC」という用語は、好ましくは1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(1,2-ジオクタデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリンまたはPC(18:0/18:0))を指す。
本明細書で使用される場合、「コレステロール」という用語は、コレスタ-5-エン-3β-オール(3β-ヒドロキシ-5-コレステン5-コレステン-3β-オール)を指す。
免疫賦活剤
本発明は、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNA(免疫賦活RNA)の使用を含む。サイトカインタンパク質は、天然に存在するサイトカインまたはその機能的変異体またはサイトカインもしくは機能的変異体の機能的断片であり得る。一実施形態では、サイトカインタンパク質は、望ましくない応答または反応を誘導し、望ましくない応答または反応はNK細胞を含み得、NK細胞数の増加、発熱、倦怠感、体重の減少、肝酵素の活性の上昇、毛細血管漏出症候群、低血圧および浮腫からなる群より選択される1つ以上を含み得る。一実施形態では、肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)からなる群より選択される1つ以上を含む。一実施形態では、サイトカインタンパク質はNK細胞の拡大を誘導する。一実施形態では、サイトカインタンパク質は、IL2、IL15およびIL18、その機能的変異体、またはその機能的断片からなる群より選択される。
一実施形態では、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列は、IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列を含む。一実施形態では、本発明は、ヒトIL2、その機能的変異体、またはヒトIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAの使用を含む。
本明細書で投与される免疫賦活RNAは、IL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAをさらに含み得る。一実施形態では、本明細書で投与される免疫賦活RNAは、ヒトIL7、その機能的変異体、またはヒトIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAをさらに含み得る。
本明細書に記載される方法および薬剤は、免疫賦活部分(例えば、IL2またはIL7)が薬物動態修飾基(以下では「延長薬物動態(PK)」免疫賦活剤と呼ばれる)に結合している場合に特に有効である。一実施形態では、前記RNAは、全身アベイラビリティのために肝臓を標的とする。肝細胞は効率的にトランスフェクトすることができ、大量のタンパク質を産生することができる。
「免疫賦活剤」は、免疫系の成分のいずれか、特に免疫エフェクタ細胞の活性化を誘導するかまたは活性を増加させることによって免疫系を刺激する任意の物質である。
サイトカインは、細胞シグナル伝達に重要である小さなタンパク質(約5~20kDa)のカテゴリである。サイトカインの放出は、それらの周囲の細胞の挙動に影響を及ぼす。サイトカインは、免疫調節剤として自己分泌シグナル伝達、パラ分泌シグナル伝達および内分泌シグナル伝達に関与する。サイトカインには、ケモカイン、インターフェロン、インターロイキン、リンホカイン、および腫瘍壊死因子が含まれるが、一般にホルモンまたは成長因子は含まれない(用語が一部重複しているにもかかわらず)。サイトカインは、マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球および肥満細胞のような免疫細胞、ならびに内皮細胞、線維芽細胞および様々な間質細胞を含む幅広い細胞によって産生される。所与のサイトカインは、複数の種類の細胞によって産生され得る。サイトカインは受容体を介して作用し、免疫系において特に重要である;サイトカインは、体液性免疫応答と細胞性免疫応答との間のバランスを調整し、特定の細胞集団の成熟、成長、および応答性を調節する。一部のサイトカインは、他のサイトカインの作用を複雑な方法で増強または阻害する。
インターロイキン(IL)は、顕著な構造特徴に基づいて4つの主要な群に分けることができるサイトカイン(分泌タンパク質およびシグナル分子)の群である。しかしながら、それらのアミノ酸配列類似性はかなり弱い(典型的には15~25%の同一性)。ヒトゲノムは、50を超えるインターロイキンおよび関連タンパク質をコードする。
インターロイキン2(IL2)は、抗原活性化T細胞の増殖を誘導し、ナチュラルキラー(NK)細胞を刺激するサイトカインである。IL2の生物学的活性は、細胞膜にまたがる3つのポリペプチドサブユニット:p55(IL2Rα、αサブユニット、ヒトではCD25としても知られる)、p75(IL2Rβ、βサブユニット、ヒトではCD122としても知られる)およびp64(IL2Rγ、γサブユニット、ヒトではCD132としても知られる)のマルチサブユニットIL2受容体複合体(IL2R)を介して媒介される。IL2に対するT細胞応答は、(1)IL2の濃度;(2)細胞表面上のIL2R分子の数;および(3)IL2が占有するIL2Rの数(すなわち、IL2とIL2Rとの間の結合相互作用の親和性)を含む様々な因子に依存する(Smith,「Cell Growth Signal Transduction is Quantal」In Receptor Activation by Antigens,Cytokines,Hormones,and Growth Factors 766:263-271,1995))。IL2:IL2R複合体はリガンド結合時に内在化され、異なる成分は異なる選別を受ける。静脈内(i.v.)ボーラスとして投与された場合、IL2は急速な全身クリアランスを有する(半減期が12.9分の初期クリアランス期、続いて半減期が85分のより遅いクリアランス期)(Konrad et al.,Cancer Res.50:2009-2017,1990)。
癌患者におけるIL2の全身投与の結果は理想からほど遠い。患者の15~20%は高用量のIL2に客観的に応答するが、大多数は応答せず、多くが吐き気、錯乱、低血圧、および敗血症性ショックを含む重篤な生命を脅かす副作用を経験する。用量を減らし、投与レジメンを調整することによって血清濃度を低下させる試みがなされており、毒性は低くなるが、そのような治療は有効性も低かった。
本開示によれば、IL2は、ヒトIL2(hIL2)などの天然に存在するIL2であり得る。
一実施形態では、ヒトIL2は、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号1のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。
一実施形態では、IL2またはIL2の断片もしくは変異体は、IL2受容体に結合する。
本開示によれば、特定の実施形態では、IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片は、薬物動態修飾基に結合している。以下では「延長薬物動態(PK)IL2」と呼ばれる得られた分子は、遊離IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片と比較して、延長された循環半減期を有する。延長PK IL2の延長された循環半減期は、インビボの血清IL2濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的に、T細胞を含む多くの種類の免疫細胞の活性化の増強をもたらす。その好ましい薬物動態プロファイルのために、非修飾IL2と比較した場合、延長PK IL2はより少ない頻度でより長期間にわたって投与され得る。特定の実施形態では、延長PK IL2の薬物動態修飾基は、特にIL2がヒトIL2である場合、ヒトアルブミン(hAlb)である。
一実施形態では、hAlbは、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号3もしくは4のアミノ酸配列もしくは配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。
IL7は、骨髄および胸腺の間質細胞によって分泌される造血成長因子である。これは、ケラチノサイト、樹状細胞、肝細胞、ニューロン、および上皮細胞によっても産生されるが、正常なリンパ球によっては産生されない。IL7は、B細胞およびT細胞の発生に重要なサイトカインである。IL7サイトカインと肝細胞増殖因子は、プレプロB細胞増殖刺激因子として機能するヘテロ二量体を形成する。マウスにおけるノックアウト試験は、IL7がリンパ系細胞の生存に必須の役割を果たすことを示唆した。
IL7は、IL7受容体αおよび共通γ鎖受容体からなるヘテロ二量体であるIL7受容体に結合する。結合は、胸腺内でのT細胞発生および末梢内での生存に重要なシグナルのカスケードをもたらす。IL7受容体が遺伝的に欠損しているノックアウトマウスは、胸腺萎縮、T細胞発生の二重陽性段階での停止、および重度のリンパ球減少を示す。マウスへのIL7の投与は、胸腺移出T細胞の増加、B細胞およびT細胞の増加、ならびにシクロホスファミド投与後または骨髄移植後のT細胞の回復の増加をもたらす。
本開示によれば、IL7は、ヒトIL7(hIL7)などの天然に存在するIL7であり得る。
一実施形態では、ヒトIL7は、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列もしくは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。
一実施形態では、IL7またはIL7断片もしくは変異体は、IL7受容体に結合する。
本開示によれば、特定の実施形態では、IL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片は、薬物動態修飾基に結合している。以下では「延長薬物動態(PK)IL7」と呼ばれる得られた分子は、遊離IL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片と比較して、延長された循環半減期を有する。延長PK IL7の延長された循環半減期は、インビボの血清IL7濃度が治療範囲内に維持されることを可能にし、潜在的に、T細胞を含む多くの種類の免疫細胞の活性化の増強をもたらす。その好ましい薬物動態プロファイルのために、非修飾IL7と比較した場合、延長PK IL7はより少ない頻度でより長期間にわたって投与され得る。特定の実施形態では、延長PK IL7の薬物動態修飾基は、特にIL7がヒトIL7である場合、ヒトアルブミン(hAlb)である。
一実施形態では、hAlbは、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号3もしくは4のアミノ酸配列もしくは配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。
本明細書に記載の免疫賦活RNA、すなわちサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNA、例えば、IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードするRNAは、免疫賦活部分、例えばサイトカインもしくは機能的変異体、またはその機能的断片を含むポリペプチドをコードする。免疫賦活部分は、IL2由来の免疫賦活部分もしくはIL2免疫賦活部分、またはIL7由来の免疫賦活部分またはIL7免疫賦活部分であり得る。IL2免疫賦活部分は、IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片であり得る。IL7免疫賦活部分は、IL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片であり得る。
したがって、免疫賦活部分を含むポリペプチドは、IL2免疫賦活ポリペプチド(本明細書では「IL2、その機能的変異体、またはIL2もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列」とも称される)またはIL7免疫賦活ポリペプチド(本明細書では「IL7、その機能的変異体、またはIL7もしくはその機能的変異体の機能的断片を含むアミノ酸配列」とも称される)であり得る。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号1のアミノ酸配列もしくは配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、ヒトIL2などの天然に存在するIL2の変異体を含む。特に、天然に存在するIL2の変異体は、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含む。一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性が増強されるように置換されている。一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)に対する親和性が低下するようにさらに置換されている。一実施形態では、IL2の変異体は、制御性T細胞よりもエフェクタT細胞を活性化する。具体的には、IL2の変異体は、IL2Rβγ結合、特にCD122結合を増強する変異(「mutβγ」)を含み、および任意で、IL2Rαβγ結合、特にCD25結合に影響を及ぼす変異(「mutα」)をさらに含み得る。特に、IL2の変異体は、Treg細胞の拡大の減少ならびにエフェクタT細胞およびNK細胞の刺激、好ましくはIL2Rβγ+エフェクタT細胞およびNK細胞の刺激の増加を示し得る。本明細書に記載のIL2変異体hAlb-hIL2_A4s8は、野生型IL2と比較して、より低い濃度で既に、Treg細胞を活性化する能力が著しく低下し、エフェクタ免疫細胞、好ましくはCD8+T細胞およびNK細胞のようなIL2Rβγ+エフェクタ免疫細胞を刺激する能力が増加していることを示す。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含み、ここで、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、少なくとも80位(ロイシン)、81位(アルギニン)、85位(ロイシン)および92位(イソロイシン)で置換されており、その置換は、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性を高める。一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた86位(イソロイシン)で置換されていない。
一実施形態では、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた80位(ロイシン)がフェニルアラニンで置換され、81位(アルギニン)がグルタミン酸で置換され、85位(ロイシン)がバリンで置換され、92位(イソロイシン)がフェニルアラニンで置換されている。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)でさらに置換されている。一実施形態では、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)は、ヒスチジンで置換されている。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含み、ここで、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、少なくとも80位(ロイシン)でフェニルアラニンによって、81位(アルギニン)でグルタミン酸によって、85位(ロイシン)でバリンによって、および92位(イソロイシン)でフェニルアラニンによって置換されている。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)でヒスチジンによってさらに置換されている。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含み、ここで、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、少なくとも74位(グルタミン)でヒスチジンによって、80位(ロイシン)でフェニルアラニンによって、81位(アルギニン)でグルタミン酸によって、85位(ロイシン)でバリンによって、および92位(イソロイシン)でフェニルアラニンによって置換されている。
一実施形態では、置換は、IL2Rβγに対する親和性を増強する。
一実施形態では、上記の置換されたIL2またはその機能的変異体(IL2ムテイン)は、他の非置換残基では野生型IL2と同一のアミノ酸配列を有する。一実施形態では、上記のIL2ムテインは、野生型ヒトIL2の1つ以上の部位または他の残基においてアミノ酸置換などのアミノ酸修飾を有する。一実施形態では、そのようなアミノ酸置換は、野生型IL2と比較した場合、IL2Rαβγに対する相対的に低下した親和性をもたらす(本明細書では「mutα」変異とも呼ばれる)。一実施形態では、そのようなアミノ酸置換は、IL2Rαと接触するアミノ酸残基に存在する。
したがって、一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換をさらに含む。
一実施形態では、IL2Rαβγのαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、IL2Rαβγに対する親和性をIL2Rβγに対する親和性よりも大きく低下させる。
一実施形態では、IL2Rαβγのαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位(リジン)、43位(リジン)、61位(グルタミン酸)および62位(グルタミン酸)の少なくとも1つにヒトIL2またはその機能的変異体の置換を含む。一実施形態では、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2中の酸性アミノ酸残基である場合、置換は塩基性アミノ酸残基によるものであり、アミノ酸残基が野生型ヒトIL2中の塩基性アミノ酸残基である場合、置換は酸性アミノ酸残基によるものである。
異なる実施形態では、IL2Rαβγのαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、少なくとも以下の位置にヒトIL2またはその機能的変異体の置換を含む:
-35位、
-43位、
-61位、
-62位、
-35位および43位、
-35位および61位、
-35位および62位、
-43位および61位、
-43位および62位、
-61位および62位、
-35位、43位および61位、
-35位、43位および62位、
-35位、61位および62位、
-43位、61位および62位、または
-35位、43位、61位および62位。
一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
一実施形態では、35位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換されている。
一実施形態では、43位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換されている。
一実施形態では、61位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換されている。
一実施形態では、62位が置換されている。一実施形態では、62位がリジンで置換されている。
一実施形態では、43位および61位が置換されている。一実施形態では、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
一実施形態では、35位、43位および61位が置換されている。一実施形態では、35位がグルタミン酸で置換され、43位がグルタミン酸で置換され、61位がリジンで置換されている。
一実施形態では、61位および62位が置換されている。一実施形態では、61位がリジンで置換され、62位がリジンで置換されている。
一実施形態では、IL2Rαβγのαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上のアミノ酸置換は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた43位(リジン)および61位(グルタミン酸)にヒトIL2またはその機能的変異体の置換を含む。一実施形態では、43位(リジン)はグルタミン酸で置換され、61位(グルタミン酸)はリジンで置換されている。
一実施形態では、本開示は、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含むアミノ酸配列をコードするRNAの投与を提供し、ここで、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、少なくとも43位(リジン)でグルタミン酸によって、61位(グルタミン酸)でリジンによって、74位(グルタミン)でヒスチジンによって、80位(ロイシン)でフェニルアラニンによって、81位(アルギニン)でグルタミン酸によって、85位(ロイシン)でバリンによって、および92位(イソロイシン)でフェニルアラニンによって置換されている。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた86位(イソロイシン)で置換されていない。
一実施形態では、野生型ヒトIL2は、配列番号1に従うアミノ酸配列を有する。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体のムテインは、野生型ヒトIL2と比較して、制御性T細胞を刺激する能力が低下している。
一実施形態では、ヒトIL2またはその機能的変異体のムテインは、野生型ヒトIL2と比較して、エフェクタT細胞を刺激する能力が増加している。
本明細書に記載のIL2ムテインは、薬物動態修飾基に結合することができ、したがって、「延長薬物動態(PK)IL2」であり得る。
一実施形態では、本明細書に記載のポリペプチドは、延長薬物動態(PK)ポリペプチドである。一実施形態では、延長PKポリペプチドは融合タンパク質を含む。一実施形態では、融合タンパク質は、ヒトIL2またはその機能的変異体のムテインの部分と、ヒトIL2またはその機能的変異体に対して異種である部分とを含む。一実施形態では、融合タンパク質は、ヒトIL2またはその機能的変異体のムテインの部分と、血清アルブミン、免疫グロブリン断片、トランスフェリン、Fn3、およびそれらの変異体からなる群より選択される部分とを含む。一実施形態では、血清アルブミンは、マウス血清アルブミンまたはヒト血清アルブミンを含む。一実施形態では、免疫グロブリン断片は、免疫グロブリンFcドメインを含む。
本明細書で使用される場合、「IL2ムテイン」は、IL2の変異体(その機能的変異体を含む)、特にIL2タンパク質に対する特定の置換が行われているポリペプチドを意味する。
一実施形態では、IL2Rβγ結合、特にCD122結合を増強するヒトIL2タンパク質への置換(「mutβγ」)が行われている。例えば、IL2ムテインは、天然のIL2ポリペプチド鎖のアミノ酸置換によって特徴付けられ得、そのようなアミノ酸置換は、例えば、野生型IL2と比較した場合、IL2Rβγに対する相対的に増加した親和性をもたらし、その結果、IL2媒介刺激はもはやIL2Rαの係合を必要としない。そのような変異体は、強力なIL2シグナル伝達アゴニストである。特に好ましい実施形態は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、80位のロイシン(Leu)残基、81位のアルギニン(Arg)残基、85位のロイシン(Leu)残基、および92位のイソロイシン(Ile)残基を含む。
一実施形態では、IL2Rαβγ結合、特にCD25結合に影響を及ぼすヒトIL2タンパク質へのさらなる置換(「mutα」)が行われている。例えば、IL2ムテインはまた、天然のIL2ポリペプチド鎖のアミノ酸置換によって特徴付けられ得、そのようなアミノ酸置換は、例えば、野生型IL2と比較した場合、IL2Rαβγ、特にそのαサブユニットに対する相対的に低下した親和性をもたらす(すなわち、IL2ムテインは、「mutβγ」変異に加えて「mutα」変異も含む)。これらの変異は、IL2Rαと接触するアミノ酸残基に存在し得る。特に好ましい実施形態は、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた、35位のリジン(Lys)残基、43位のリジン(Lys)残基、61位のグルタミン酸(Glu)残基および62位のグルタミン酸(Glu)残基、またはそれらの任意の組合せを含む。
IL2ムテインは、他の非置換残基では野生型IL2と同一のアミノ酸配列を有し得る(すなわち、IL2ムテインは、「mutβγ」および任意で「mutα」変異を含む)。しかしながら、IL2ムテインは、天然のIL2ポリペプチド鎖中の1つ以上の部位または他の残基におけるアミノ酸の挿入、欠失、置換および修飾によっても特徴付けられ得る。本発明に従って、任意のそのような挿入、欠失、置換および修飾は、任意でIL2Rαβγに対する親和性を低下させる一方で、IL2Rβγに対する増強された親和性を有するIL2ムテインをもたらし得る。
1つ以上の置換アミノ酸残基は、保存的置換であり得るが、必ずしもそうではない。
「野生型IL2に従って番号付けされた」とは、選択されたアミノ酸を、そのアミノ酸が野生型IL2の成熟配列において通常存在する位置を参照して同定することを意味する。IL2ムテインに挿入または欠失が行われる場合、当業者は、特定の位置に通常存在するアミノ酸がムテイン中の位置でシフトされ得ることを理解するであろう。しかしながら、シフトされたアミノ酸の位置は、隣接するアミノ酸と野生型IL2中のアミノ酸に隣接するアミノ酸との精査および相関によって容易に決定することができる。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号2のアミノ酸配列もしくは配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号2のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸1~177のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸1~177のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸1~177のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸1~177のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸1~177のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、ヒトアルブミン(hAlb)などのアルブミンは、直接またはリンカーを介して免疫賦活部分に融合される。
一実施形態では、hAlbは、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列、配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号3もしくは4のアミノ酸配列もしくは配列番号3もしくは4のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、hAlbは、配列番号3または4のアミノ酸配列を含む。
hAlbは、好ましくは、免疫賦活部分の循環半減期の延長を促進するために用いられる。したがって、特に好ましい実施形態では、本明細書に記載される免疫賦活RNAは、免疫賦活部分をコードする少なくとも1つのコード領域とhAlbをコードするコード領域とを含み、前記hAlbは、好ましくは免疫賦活部分に、例えば免疫賦活部分のN末端および/またはC末端に融合されている。一実施形態では、hAlbおよび免疫賦活化部分は、GSリンカー、例えば配列番号11のアミノ酸配列を有するGSリンカーなどのリンカーによって分離されている。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号5もしくは6のアミノ酸25~752のアミノ酸配列、配列番号5もしくは6のアミノ酸25~752のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号5もしくは6のアミノ酸25~752のアミノ酸配列もしくは配列番号5もしくは6のアミノ酸25~752のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号5または6のアミノ酸25~752のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸26~772のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸26~772のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸26~772のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸26~772のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸26~772のアミノ酸配列を含む。
特定の実施形態によれば、シグナルペプチドは、直接またはリンカーを介して、任意で延長PK基、例えばアルブミン、特にhAlbに融合された免疫賦活部分に融合される。
そのようなシグナルペプチドは、典型的には約15~30アミノ酸の長さを示し、好ましくは融合されるポリペプチドのN末端に位置する配列であるが、これに限定されない。本明細書で定義されるシグナルペプチドは、好ましくは、融合されたペプチドまたはタンパク質を定義された細胞区画、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソーム区画に輸送することを可能にする。
一実施形態では、本明細書で定義されるシグナルペプチド配列は、インターロイキンのシグナルペプチド配列を含むが、これに限定されない。一実施形態では、本明細書で定義されるシグナルペプチド配列は、特に免疫賦活部分が免疫賦活ポリペプチドのN末端部分である場合、免疫賦活部分が由来するインターロイキンのシグナルペプチド配列を含むが、これに限定されない。したがって、免疫賦活部分は、非成熟IL、すなわち、その内因性シグナルペプチドを含有するILであり得る。
一実施形態では、本明細書で定義されるシグナルペプチド配列は、延長PK基、例えばアルブミンのシグナルペプチド配列を含むが、これに限定されない。一実施形態では、本明細書で定義されるシグナルペプチド配列は、特に延長PK基、例えばアルブミンが免疫賦活ポリペプチドのN末端部分である場合、延長PK基、例えばアルブミンが由来する延長PK基、例えばアルブミンのシグナルペプチド配列を含むが、これに限定されない。したがって、延長PK基、例えばアルブミンは、非成熟延長PK基、例えばアルブミン、すなわちその内因性シグナルペプチドを含有する延長PK基、例えばアルブミンであり得る。
一実施形態では、シグナル配列は、配列番号7のアミノ酸1~25のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸1~25のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸1~25のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸1~25のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、シグナル配列は、配列番号7のアミノ酸1~25のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、シグナル配列は、配列番号3のアミノ酸1~18のアミノ酸配列、配列番号3のアミノ酸1~18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号3のアミノ酸1~18のアミノ酸配列もしくは配列番号3のアミノ酸1~18のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、シグナル配列は、配列番号3のアミノ酸1~18のアミノ酸配列を含む。
そのようなシグナルペプチドは、好ましくは、それらが融合されるコードされたポリペプチドの分泌を促進するために使用される。
したがって、特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のRNAは、任意でhAlbに融合された免疫賦活タンパク質およびシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのコード領域を含み、前記シグナルペプチドは、好ましくは任意でhAlbに融合された免疫賦活タンパク質に、より好ましくは任意でhAlbに融合された免疫賦活タンパク質のN末端に融合されている。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号5もしくは6のアミノ酸配列、配列番号5もしくは6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号5もしくは6のアミノ酸配列もしくは配列番号5もしくは6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドは、配列番号5または6のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号18のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列、配列番号18のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号18のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列もしくは配列番号18のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号18のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号18のヌクレオチド配列、配列番号18のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号18のヌクレオチド配列もしくは配列番号18のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号5のアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号18のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号5のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号19のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列、配列番号19のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号19のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列もしくは配列番号19のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号6のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号19のヌクレオチド53~2308のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号19のヌクレオチド配列、配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号19のヌクレオチド配列もしくは配列番号19のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号6のアミノ酸配列、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号6のアミノ酸配列もしくは配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL2免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号19のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号6のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドは、配列番号7のアミノ酸配列を含む。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号20のヌクレオチド53~2368のヌクレオチド配列、配列番号20のヌクレオチド53~2368のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号20のヌクレオチド53~2368のヌクレオチド配列もしくは配列番号20のヌクレオチド53~2368のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号20のヌクレオチド53~2368のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号20のヌクレオチド配列、配列番号20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列、または配列番号20のヌクレオチド配列もしくは配列番号20のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列の断片を含み、および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号7のアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、IL7免疫賦活ポリペプチドをコードするRNAは、(i)配列番号20のヌクレオチド配列を含み、および/または(ii)配列番号7のアミノ酸配列を含むアミノ酸配列をコードする。
以下において、免疫賦活RNAの実施形態を説明し、その要素を説明するときに使用される特定の用語は以下の意味を有する:
hAg-コザック:翻訳効率を高めるための最適化された「コザック配列」を有するヒトα-グロビンmRNAの5’-UTR配列。
SP:シグナルペプチド。
hAlb:ヒトアルブミンをコードする配列。
IL2/IL7:それぞれのヒトILまたは変異体または断片をコードする配列。
リンカー(GS):融合タンパク質に一般的に使用される、主にアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなるリンカーペプチドをコードする配列。
FI要素:3’-UTRは、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアにコードされた12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素の組合せである。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された。
A30L70:30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く10個のヌクレオチドのリンカー配列、およびRNAの安定性と翻訳効率を高めるように設計された別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)テール。
一実施形態では、本明細書に記載されるIL2免疫賦活RNAは、構造:
hAgコザック-SP-hAlb-リンカー-成熟IL2-FI要素-ライゲーション3-A30LA70
を含む。
一実施形態では、本明細書に記載されるIL2免疫賦活剤は、構造:
SP-hAlb-リンカー-成熟IL2
を含む。
一実施形態では、本明細書に記載されるIL7免疫賦活RNAは、構造:
SP-リンカー-成熟hAlb-FI要素-ライゲーション3-A30LA70を伴うhAgコザック-IL7
を含む。
一実施形態では、本明細書に記載されるIL7免疫賦活剤は、構造:
SP-リンカー-成熟hAlbを伴うIL7
を含む。
一実施形態では、hAg-コザックは、配列番号13のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、IL2は、配列番号1のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL2は、配列番号6のアミノ酸620~752のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、IL7は、配列番号2のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、hAlbは、配列番号3または4のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、リンカーは、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、FIは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、A30L70は、配列番号15のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、本明細書に記載される免疫賦活RNAは、ウリジンの代わりに1-メチル-プソイドウリジンを含む。好ましい5’キャップ構造は、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGである。
上記で論じたように、IL2免疫賦活剤またはIL7免疫賦活剤などの本明細書に記載される免疫賦活剤は、一般に、延長PK基との融合タンパク質として存在する。
本明細書で使用される「融合タンパク質」という用語は、2つ以上のサブユニットを含むポリペプチドまたはタンパク質を指す。好ましくは、融合タンパク質は、2つ以上のサブユニット間の翻訳融合である。翻訳融合は、読み枠内の1つのサブユニットのコードヌクレオチド配列をさらなるサブユニットのコードヌクレオチド配列と遺伝子操作することによって生成され得る。サブユニットは、リンカーによって散在され得る。
本明細書で使用される場合、「連結された」、「融合された」、または「融合」という用語は、互換的に使用される。これらの用語は、2つ以上の要素または成分またはドメインの結合を指す。
本明細書に記載される免疫賦活ポリペプチドは、免疫賦活部分および異種ポリペプチド(すなわち、免疫賦活剤ではないポリペプチド)を含む融合ポリペプチドまたはキメラポリペプチドとして調製され得る。免疫賦活剤は、循環半減期を増加させる延長PK基に融合され得る。延長PK基の非限定的な例を以下で説明する。サイトカインまたはその変異体などの免疫賦活剤の循環半減期を増加させる他のPK基もまた、本開示に適用可能であることが理解されるべきである。特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミンドメイン(例えば、マウス血清アルブミン、ヒト血清アルブミン)である。
本明細書で使用される場合、「PK」という用語は、「薬物動態」の頭字語であり、例として、対象による吸収、分布、代謝、および排泄を含む化合物の特性を包含する。本明細書で使用される場合、「延長PK基」は、生物学的に活性な分子に融合されるかまたは生物学的に活性な分子と一緒に投与された場合、生物学的に活性な分子の循環半減期を増加させるタンパク質、ペプチド、または部分を指す。延長PK基の例としては、血清アルブミン(例えばHSA)、免疫グロブリンFcまたはFc断片およびその変異体、トランスフェリンおよびその変異体、ならびにヒト血清アルブミン(HSA)結合剤(米国特許出願公開第2005/0287153号および同第2007/0003549号に開示されている)が挙げられる。他の例示的な延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、Kontermann,Expert Opin Biol Ther,2016 Jul;16(7):903-15に開示されている。本明細書で使用される場合、「延長PK」免疫賦活剤は、延長PK基と組み合わせた免疫賦活部分を指す。一実施形態では、延長PK免疫賦活剤は、免疫賦活部分が延長PK基に連結または融合された融合タンパク質である。
特定の実施形態では、延長PK免疫賦活剤の血清半減期は、免疫賦活剤単独(すなわち、延長PK基に融合されていない免疫賦活剤)と比較して増加している。特定の実施形態では、延長PK免疫賦活剤の血清半減期は、免疫賦活剤単独の血清半減期と比較して少なくとも20、40、60、80、100、120、150、180、200、400、600、800、または1000%長い。特定の実施形態では、延長PK免疫賦活剤の血清半減期は、免疫賦活剤単独の血清半減期の少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、10倍、12倍、13倍、15倍、17倍、20倍、22倍、25倍、27倍、30倍、35倍、40倍、または50倍である。特定の実施形態では、延長PK免疫賦活剤の血清半減期は、少なくとも10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、50時間、60時間、70時間、80時間、90時間、100時間、110時間、120時間、130時間、135時間、140時間、150時間、160時間、または200時間である。
本明細書で使用される場合、「半減期」は、ペプチドまたはタンパク質などの化合物の血清または血漿濃度が、例えば分解および/またはクリアランスもしくは天然の機構による隔離に起因して、インビボで50%減少するのに要する時間を指す。本明細書での使用に適した延長PK免疫賦活剤は、インビボで安定化されており、その半減期は、例えば、分解および/またはクリアランスもしくは隔離に抵抗する血清アルブミン(例えばHSAまたはMSA)への融合によって増加している。半減期は、薬物動態分析などによる、それ自体公知の任意の方法で決定することができる。適切な技術は当業者には明らかであり、例えば一般に、適切な用量のアミノ酸配列または化合物を対象に適切に投与する工程;前記対象から血液試料または他の試料を一定の間隔で収集する工程;前記血液試料中のアミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度を決定する工程;およびこのようにして得られたデータ(のプロット)から、アミノ酸配列または化合物のレベルまたは濃度が投与時の初期レベルと比較して50%低下するまでの時間を計算する工程を含み得る。さらなる詳細は、例えば、Kenneth,A.et al.,Chemical Stability of Pharmaceuticals:A Handbook for Pharmacistsなどの標準的なハンドブックおよびPeters et al.,Pharmacokinetic Analysis:A Practical Approach(1996)に提供されている。Gibaldi,M.et al.,Pharmacokinetics,2nd Rev.Edition,Marcel Dekker(1982)も参照されたい。
特定の実施形態では、延長PK基は、血清アルブミンもしくはその断片、または血清アルブミンもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、それらの全てが「アルブミン」という用語に含まれる)を含む。本明細書に記載されるポリペプチドは、アルブミン(またはその断片もしくは変異体)に融合されてアルブミン融合タンパク質を形成し得る。そのようなアルブミン融合タンパク質は、米国特許出願公開第20070048282号に記載されている。
本明細書で使用される場合、「アルブミン融合タンパク質」は、少なくとも1分子のアルブミン(またはその断片もしくは変異体)と、少なくとも1分子の治療用タンパク質などのタンパク質、特に免疫賦活剤との融合によって形成されるタンパク質を指す。アルブミン融合タンパク質は、治療用タンパク質をコードするポリヌクレオチドがアルブミンをコードするポリヌクレオチドとインフレームで連結されている核酸の翻訳によって生成され得る。治療用タンパク質およびアルブミンは、アルブミン融合タンパク質の一部になると、それぞれ、アルブミン融合タンパク質の「一部」、「領域」または「部分」(例えば「治療用タンパク質部分」または「アルブミンタンパク質部分」)と呼ばれ得る。非常に好ましい実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、少なくとも1分子の治療用タンパク質(治療用タンパク質の成熟形態を含むがこれに限定されない)と、少なくとも1分子のアルブミン(アルブミンの成熟形態を含むがこれに限定されない)とを含む。一実施形態では、アルブミン融合タンパク質は、投与されたRNAの標的器官の細胞、例えば肝細胞などの宿主細胞によってプロセシングされ、循環中に分泌される。RNAの発現に使用される宿主細胞の分泌経路で起こる新生アルブミン融合タンパク質のプロセシングには、シグナルペプチド切断;ジスルフィド結合の形成;適切な折り畳み;炭水化物の付加およびプロセシング(例えばN-結合型およびO-結合型グリコシル化など);特異的タンパク質分解切断;ならびに/または多量体タンパク質へのアセンブリが含まれ得るが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質は、好ましくは、特にそのN末端にシグナルペプチドを有するプロセシングされていない形態でRNAによってコードされ、細胞による分泌後、好ましくは、特にシグナルペプチドが切断された、プロセシングされた形態で存在する。最も好ましい実施形態では、「アルブミン融合タンパク質のプロセシングされた形態」は、本明細書では「成熟アルブミン融合タンパク質」とも呼ばれる、N末端シグナルペプチド切断を受けたアルブミン融合タンパク質産物を指す。
好ましい実施形態では、治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質は、アルブミンに融合されていない場合の同じ治療用タンパク質の血漿安定性と比較して、より高い血漿安定性を有する。血漿安定性は、典型的には、治療用タンパク質がインビボで投与され、血流中に運ばれたときから、治療用タンパク質が分解され、血流から腎臓または肝臓などの臓器へと除去され、最終的に治療用タンパク質が体内から除去されるときまでの期間を指す。血漿安定性は、血流中の治療用タンパク質の半減期に関して計算される。血流中の治療用タンパク質の半減期は、当技術分野で公知の一般的なアッセイによって容易に決定することができる。
本明細書で使用される場合、「アルブミン」は、アルブミンの1つ以上の機能活性(例えば生物学的活性)を有する、アルブミンタンパク質もしくはアミノ酸配列、またはアルブミン断片もしくは変異体を集合的に指す。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミンまたはその断片もしくは変異体、特にヒトアルブミンの成熟形態、または他の脊椎動物由来のアルブミンもしくはその断片、またはこれらの分子の変異体を指す。アルブミンは、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジ、またはブタに由来し得る。非哺乳動物アルブミンとしては、雌鶏およびサケが挙げられるが、これらに限定されない。アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、治療用タンパク質部分とは異なる動物に由来し得る。
特定の実施形態では、アルブミンは、ヒト血清アルブミン(HSA)、またはその断片もしくは変異体、例えば米国特許第5,876,969号、国際公開第2011/124718号、国際公開第2013/075066号、および国際公開第2011/0514789号に開示されているものである。
ヒト血清アルブミン(HSA)およびヒトアルブミン(HA)という用語は、本明細書では互換的に使用される。「アルブミンおよび「血清アルブミン」という用語はより広範であり、ヒト血清アルブミン(ならびにその断片および変異体)ならびに他の種由来のアルブミン(ならびにその断片および変異体)を包含する。
本明細書で使用される場合、治療用タンパク質の治療活性または血漿安定性を延長するのに十分なアルブミンの断片は、アルブミン融合タンパク質の治療用タンパク質部分の血漿安定性が非融合状態での血漿安定性と比較して延長または拡大されるように、タンパク質の治療活性または血漿安定性を安定化または延長するのに十分な長さまたは構造のアルブミン断片を指す。
アルブミン融合タンパク質のアルブミン部分は、アルブミン配列の全長を含み得るか、または治療活性もしくは血漿安定性を安定化もしくは延長することができるその1つ以上の断片を含み得る。そのような断片は、10個以上のアミノ酸の長さであり得るか、またはアルブミン配列からの約15、20、25、30、50個、もしくはそれ以上の連続するアミノ酸を含み得るか、またはアルブミンの特定のドメインの一部もしくは全部を含み得る。例えば、最初の2つの免疫グロブリン様ドメインにまたがるHSAの1つ以上の断片を使用し得る。好ましい実施形態では、HSA断片はHSAの成熟形態である。
一般的に言えば、アルブミン断片または変異体は、少なくとも100アミノ酸長、好ましくは少なくとも150アミノ酸長である。
本開示によれば、アルブミンは、天然に存在するアルブミンまたはその断片もしくは変異体であり得る。アルブミンはヒトアルブミンであり得、任意の脊椎動物、特に任意の哺乳動物に由来し得る。
好ましくは、アルブミン融合タンパク質は、N末端部分としてアルブミンを含み、C末端部分として治療用タンパク質を含む。あるいは、C末端部分としてアルブミンを含み、N末端部分として治療用タンパク質を含むアルブミン融合タンパク質も使用し得る。
一実施形態では、1つ以上の治療用タンパク質は、1つ以上のペプチドリンカーを介してアルブミンに連結される。融合部分の間のリンカーペプチドは、部分間のより大きな物理的分離を提供し、したがって、例えばその同族受容体に結合するための治療用タンパク質部分のアクセス可能性を最大化し得る。リンカーペプチドは、それが柔軟であるかまたはより剛性であるようにアミノ酸で構成され得る。リンカー配列は、プロテアーゼによってまたは化学的に切断可能であり得る。
本明細書で使用される場合、「Fc領域」という用語は、天然免疫グロブリンの2本の重鎖のそれぞれのFcドメイン(またはFc部分)によって形成される天然免疫グロブリンの部分を指す。本明細書で使用される場合、「Fcドメイン」という用語は、FcドメインがFvドメインを含まない単一の免疫グロブリン(Ig)重鎖の一部または断片を指す。特定の実施形態では、Fcドメインは、パパイン切断部位のすぐ上流のヒンジ領域で始まり、抗体のC末端で終わる。したがって、完全なFcドメインは、少なくともヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメインを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジ(例えば上部、中間および/もしくは下部ヒンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、CH4ドメイン、またはそれらの変異体、部分もしくは断片の少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、完全なFcドメイン(すなわち、ヒンジドメイン、CH2ドメイン、およびCH3ドメイン)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したヒンジドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメイン(またはその一部)に融合したCH2ドメイン(またはその一部)を含む。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH3ドメインまたはその一部からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH3ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメイン(またはその一部)およびCH3ドメインからなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒンジドメイン(またはその一部)およびCH2ドメイン(またはその一部)からなる。特定の実施形態では、Fcドメインは、CH2ドメインの少なくとも一部(例えばCH2ドメインの全部または一部)を欠く。本明細書におけるFcドメインは、一般に、免疫グロブリン重鎖のFcドメインの全部または一部を含むポリペプチドを指す。これには、CH1、ヒンジ、CH2、および/またはCH3ドメイン全体を含むポリペプチド、ならびに、例えばヒンジ、CH2、およびCH3ドメインのみを含むそのようなペプチドの断片が含まれるが、これらに限定されない。Fcドメインは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体を含むがこれらに限定されない、任意の種および/または任意のサブタイプの免疫グロブリンに由来し得る。Fcドメインは、天然のFcおよびFc変異体分子を包含する。本明細書に記載されるように、任意のFcドメインを、アミノ酸配列が天然に存在する免疫グロブリン分子の天然Fcドメインとは異なるように修飾し得ることは、当業者に理解されるであろう。特定の実施形態では、Fcドメインは、エフェクタ機能(例えば、FcγR結合)が低下している。
本明細書に記載されるポリペプチドのFcドメインは、異なる免疫グロブリン分子に由来し得る。例えば、ポリペプチドのFcドメインは、IgG1分子に由来するCH2および/またはCH3ドメイン、ならびにIgG3分子に由来するヒンジ領域を含み得る。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG3分子に由来するキメラヒンジ領域を含むことができる。別の例では、Fcドメインは、一部はIgG1分子に由来し、一部はIgG4分子に由来するキメラヒンジを含むことができる。
特定の実施形態では、延長PK基は、Fcドメインもしくはその断片、またはFcドメインもしくはその断片の変異体(本開示の目的のために、その全てが「Fcドメイン」という用語に含まれる)を含む。Fcドメインは、抗原に結合する可変領域を含まない。本開示での使用に適したFcドメインは、いくつかの異なる供給源から得られ得る。特定の実施形態では、Fcドメインはヒト免疫グロブリンに由来する。特定の実施形態では、FcドメインはヒトIgG1定常領域に由来する。しかしながら、Fcドメインは、例えばげっ歯動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、モルモット)種または非ヒト霊長動物(例えばチンパンジー、マカク)種を含む別の哺乳動物種の免疫グロブリンに由来し得ることが理解される。
さらに、Fcドメイン(またはその断片もしくは変異体)は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む任意の免疫グロブリンクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意の免疫グロブリンアイソタイプに由来し得る。
様々なFcドメイン遺伝子配列(例えばマウスおよびヒト定常領域遺伝子配列)が、公的にアクセス可能な寄託物の形態で入手可能である。特定のエフェクタ機能を欠く、および/または免疫原性を低下させる特定の修飾を有するFcドメイン配列を含む定常領域ドメインを選択することができる。抗体および抗体をコードする遺伝子の多くの配列が公開されており、適切なFcドメイン配列(例えばヒンジ、CH2、および/もしくはCH3配列、またはその断片もしくは変異体)は、当技術分野で広く認められている技術を使用してこれらの配列から導くことができる。
特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2005/0287153号、米国特許出願第2007/0003549号、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2007/0269422号、米国特許出願第2010/0113339号、国際公開第2009/083804号、および国際公開第2009/133208号に記載されているものなどの血清アルブミン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,176,278号および米国特許第8,158,579号に開示されているように、トランスフェリンである。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2007/0178082号、米国特許出願第2014/0220017号、および米国特許出願第2017/0145062号に開示されているものなどの血清免疫グロブリン結合タンパク質である。特定の実施形態では、延長PK基は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願第2012/0094909号に開示されているものなどの、血清アルブミンに結合するフィブロネクチン(Fn)ベースの足場ドメインタンパク質である。フィブロネクチンベースの足場ドメインタンパク質を作製する方法もまた、米国特許出願第2012/0094909号に開示されている。Fn3ベースの延長PK基の非限定的な例は、Fn3(HSA)、すなわち、ヒト血清アルブミンに結合するFn3タンパク質である。
特定の態様では、本開示による使用に適した延長PK免疫賦活剤は、1つ以上のペプチドリンカーを使用することができる。本明細書で使用される場合、「ペプチドリンカー」という用語は、ポリペプチド鎖の直鎖状アミノ酸配列中の2つ以上のドメイン(例えば、延長PK部分および免疫賦活部分)を接続するペプチドまたはポリペプチド配列を指す。例えば、ペプチドリンカーを使用して、免疫賦活部分をHSAドメインに接続し得る。
例えば免疫賦活剤に延長PK基を融合するのに適したリンカーは、当技術分野で周知である。例示的なリンカーとしては、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、グリシン-プロリンポリペプチドリンカー、およびプロリン-アラニンポリペプチドリンカーが挙げられる。特定の実施形態では、リンカーは、グリシン-セリンポリペプチドリンカー、すなわちグリシンおよびセリン残基からなるペプチドである。
抗原エピトープ
本発明は、ワクチン接種のためのRNAの使用、すなわち1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAの使用を含み得る。
一実施形態では、1つ以上の抗原エピトープは、1つ以上の腫瘍抗原に由来する。一実施形態では、ワクチンRNAは、1つ以上の抗原エピトープをコードする単分子種のRNA、または各RNAが少なくとも1つの抗原エピトープをコードする異なる分子種のRNAを含む。したがって、各RNAは、1つ以上のエピトープを含むアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、RNA分子は、モノエピトープポリペプチドまたはポリエピトープポリペプチドをコードし得る。ポリペプチドが2つ以上の抗原エピトープを含む場合、前記エピトープは同一および/または異なり得る。ワクチンRNAは、コードされたアミノ酸配列を産生するために、対象の細胞、特に抗原提示細胞において翻訳され得る。一実施形態では、細胞によるアミノ酸配列の適切なプロセシング後、エピトープはMHCによって提示され、適切なT細胞の刺激のために対象の免疫系に提示される。
一実施形態では、ワクチンRNAは、患者に投与されると、MHC提示エピトープなどのエピトープの集合体、例えば2個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、25個以上、30個以上、および好ましくは最大60個まで、55個まで、50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのエピトープを提供し、これらのエピトープは腫瘍抗原に由来し得る。対象の細胞、特に抗原提示細胞によるこれらのエピトープの提示は、MHCに結合した場合にエピトープを標的化するT細胞をもたらし得、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現し、腫瘍細胞の表面に同じエピトープを提示する場合に、対象の腫瘍、好ましくは原発腫瘍ならびに腫瘍転移を標的化することをもたらし得る。
ワクチンRNAを提供するために、本発明は、1つ以上の腫瘍抗原に由来し得る十分な数のエピトープを(コード配列として)ワクチンRNAに任意に含めることを含み得る。エピトープはそのまま含まれてもよく、または天然に存在するタンパク質中の前記エピトープにも隣接するアミノ酸配列に隣接していてもよい。一実施形態では、エピトープは、それらが由来する完全な抗原によって(コード配列として)表される。そのような隣接配列は、それぞれ3個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、好ましくは最大50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含んでもよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接していてもよい。
ワクチンRNAは、ポリエピトープポリペプチドまたはマルチエピトープポリペプチドの形態のエピトープをコードし得る。本開示の特定の実施形態では、ポリペプチドは、同じおよび/または異なる腫瘍関連抗原に由来する少なくとも2個のエピトープ、少なくとも3個のエピトープ、少なくとも4個のエピトープ、少なくとも5個のエピトープ、少なくとも6個のエピトープ、少なくとも7個のエピトープ、少なくとも8個のエピトープ、少なくとも9個のエピトープ、または少なくとも10個のエピトープを含む。エピトープは、ワクチン配列の形態でポリペプチド中に存在してもよく、すなわちそれらの天然の配列状況で、例えば天然に存在するタンパク質中のエピトープにも隣接するアミノ酸配列に隣接して存在してもよい。そのような隣接配列は、それぞれ3個以上、5個以上、10個以上、15個以上、20個以上、好ましくは最大50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含んでもよく、N末端および/またはC末端でエピトープ配列に隣接していてもよい。したがって、ワクチン配列は、20個以上、25個以上、30個以上、35個以上、40個以上、好ましくは最大50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含み得る。一実施形態では、エピトープおよび/またはワクチン配列は、ポリペプチドの頭部から尾部へと整列している。
一実施形態では、エピトープおよび/またはワクチン配列は、リンカー、特に中性リンカーによって間隔を空けられている。本発明による「リンカー」という用語は、エピトープまたはワクチン配列などの2つのペプチドドメインの間に付加されて前記ペプチドドメインを接続するペプチドに関する。リンカー配列に関して特に制限はない。しかしながら、リンカー配列は、2つのペプチドドメインの間の立体障害を低減し、良好に翻訳され、エピトープのプロセシングを支援するまたは可能にすることが好ましい。さらに、リンカーは、免疫原性の配列要素を全く有さないかまたはごくわずかしか有さないべきである。リンカーは、好ましくは、望ましくない免疫反応を生じ得る、隣接するエピトープ間の接合部縫合から生じるもののような非内因性エピトープを生成すべきではない。したがって、ポリエピトープワクチンは、好ましくは、望ましくないMHC結合接合エピトープの数を減少させることができるリンカー配列を含むべきである。Hoyt et al.(EMBO J.25(8),1720-9,2006)およびZhang et al.(J.Biol.Chem.,279(10),8635-41,2004)は、グリシンリッチ配列がプロテアソームプロセシングを損ない、したがってグリシンリッチリンカー配列の使用が、プロテアソームによってプロセシングされ得るリンカー含有ペプチドの数を最小限に抑えるように作用することを示した。さらに、グリシンはMHC結合溝の位置で強い結合を阻害することが観察された(Abastado et al.,J.Immunol.151(7),3569-75,1993)。Schlessinger et al.(Proteins,61(1),115-26,2005)は、アミノ酸配列に含まれるアミノ酸グリシンおよびセリンが、プロテアソームによってより効率的に翻訳およびプロセシングされるより柔軟なタンパク質をもたらし、コードされているエピトープへのより良好なアクセスを可能にすることを見出した。リンカーはそれぞれ、3個以上、6個以上、9個以上、10個以上、15個以上、20個以上、および好ましくは最大50個まで、45個まで、40個まで、35個まで、または30個までのアミノ酸を含み得る。好ましくは、リンカーはグリシンおよび/またはセリンアミノ酸が濃縮されている。好ましくは、リンカーのアミノ酸の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも95%はグリシンおよび/またはセリンである。好ましい一実施形態では、リンカーは、アミノ酸グリシンおよびセリンから実質的に構成される。
一実施形態では、ワクチンRNAによって提供される1つ以上の抗原エピトープは、異なるポリペプチド上に前記エピトープを含むポリペプチドの集合体をコードする異なるRNA分子によってコードされ、前記ポリペプチドはそれぞれ1つ以上のエピトープを含み、これもまた重複し得る。2つ以上のポリエピトープおよび/またはマルチエピトープポリペプチドをコードする異なるRNA分子を含むワクチンRNAの場合、異なるポリペプチドによって提供されるエピトープは異なっていてもよく、または部分的に重複していてもよい。
抗原提示細胞などの対象の細胞中に存在すると、本発明によるポリペプチドは、抗原エピトープを産生するようにプロセシングされる。ワクチンRNAの投与は、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対するCD4+ヘルパーT細胞応答を誘発することができる、MHCクラスII提示エピトープを提供し得る。あるいはまたはさらに、ワクチンRNAの投与は、MHC提示エピトープが由来する抗原を発現する細胞に対するCD8+T細胞応答を誘発することができる、MHCクラスI提示エピトープを提供し得る。好ましくは、ワクチンRNAは、細胞傷害性および/またはヘルパーT細胞応答のポリエピトープ刺激に有用である。
ワクチン接種のために使用される本明細書に記載の1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAは、好ましくは、RNAが投与されている対象においてT細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。前記刺激された、プライミングされたおよび/または拡大されたT細胞は、好ましくは標的抗原、特に癌細胞、組織および/または器官によって発現される標的抗原、すなわち腫瘍抗原に向けられる。
本開示によれば、1つ以上の抗原エピトープを含むポリペプチドは、腫瘍抗原もしくはその断片(例えば、エピトープまたはワクチン配列)を含み得るか、または腫瘍抗原もしくはその断片の変異体を含み得る。一実施形態では、そのような変異体は、腫瘍抗原または断片と免疫学的に等価である。本開示の文脈において、「腫瘍抗原またはその断片の変異体」という用語は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす配列を意味し、刺激された、プライミングされた、および/または拡大されたT細胞は、特に疾患細胞、組織および/または器官によって提示された場合に、腫瘍抗原を標的とする。したがって、1つ以上の抗原エピトープを含むポリペプチドは、腫瘍抗原に対応し得るかもしくはそれを含み得る、腫瘍抗原の断片に対応し得るかもしくはそれを含み得る、または腫瘍抗原もしくはその断片に相同なアミノ酸配列に対応し得るかもしくはそれを含み得る。1つ以上のエピトープを含むポリペプチドが、腫瘍抗原の断片または腫瘍抗原の断片に相同なアミノ酸配列を含む場合、前記断片またはアミノ酸配列は、腫瘍抗原のT細胞エピトープなどのエピトープまたは腫瘍抗原のT細胞エピトープなどのエピトープに相同な配列を含み得る。したがって、本開示によれば、1つ以上のエピトープを含むポリペプチドは、腫瘍抗原の免疫原性断片または腫瘍抗原の免疫原性断片に相同なアミノ酸配列を含み得る。本開示による「抗原の免疫原性断片」は、好ましくは、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞を刺激、プライミングおよび/または拡大することができる抗原の断片に関する。T細胞による結合のための関連エピトープを提供するために、1つ以上のエピトープ(腫瘍抗原に類似)を含むポリペプチドが抗原提示細胞などの細胞によって提示され得ることが好ましい。
「免疫学的に等価」という用語は、免疫学的に等価なアミノ酸配列などの免疫学的に等価な分子が、同じもしくは本質的に同じ免疫学的特性を示し、および/または、例えば免疫学的効果の種類に関して、同じもしくは本質的に同じ免疫学的効果を及ぼすことを意味する。本開示の文脈において、「免疫学的に等価」という用語は、好ましくは、免疫化に使用される抗原または抗原変異体の免疫学的効果または特性に関して使用される。例えば、アミノ酸配列が、参照アミノ酸配列に結合するT細胞または参照アミノ酸配列を発現する細胞などの対象の免疫系に曝露されたときに、参照アミノ酸配列と反応する特異性を有する免疫反応を誘導する場合、前記アミノ酸配列は参照アミノ酸配列と免疫学的に等価である。したがって、抗原と免疫学的に等価である分子は、T細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大に関して、T細胞が標的とする抗原と同じもしくは本質的に同じ特性を示し、および/または同じもしくは本質的に同じ効果を及ぼす。
一実施形態では、本明細書に記載のワクチンRNAは、1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAを含む。一実施形態では、本明細書に記載のワクチンRNAは、2つ以上の抗原エピトープをコードするRNAを含む。異なる実施形態では、2つ以上は、3つ以上、4つ以上、5つ以上、6つ以上、7つ以上、8つ以上、9つ以上、または10以上を含む。2つ以上のRNAは、混合物中に存在してもよく、または互いに別々に存在してもよく、その結果、例えば異なる時点でおよび/または異なる経路によって互いに別々に対象に投与されてもよい。
本明細書に記載の抗原エピトープは、1つ以上の腫瘍抗原に由来し得る。一実施形態では、本明細書に記載のワクチンRNAは、1つ以上の腫瘍抗原またはその変異体もしくは断片をコードする。一実施形態では、腫瘍抗原は、癌組織と健常組織との間でそのアミノ酸配列が異ならない。あるいはまたはさらに、腫瘍抗原は、個体の腫瘍に特異的なネオ抗原であり得る。そのような実施形態では、1つ以上の抗原エピトープはネオエピトープを含み得る。ネオ抗原またはネオエピトープは、アミノ酸変化をもたらす癌細胞のゲノムにおける1つ以上の癌特異的変異から生じ得る。
本発明によれば、「ネオ抗原」という用語は、親ペプチドまたはタンパク質と比較して1つ以上のアミノ酸修飾を含むペプチドまたはタンパク質に関する。例えば、ネオ抗原は腫瘍関連ネオ抗原であり得、「腫瘍関連ネオ抗原」という用語は、腫瘍特異的変異、すなわち癌細胞の核酸における変異によるアミノ酸修飾を含むペプチドまたはタンパク質を含む。そのような変異は、公知の配列決定技術によって同定され得る。
本発明によれば、「腫瘍特異的変異」または「癌特異的変異」という用語は、腫瘍または癌細胞の核酸に存在するが、対応する正常な、すなわち非腫瘍または非癌細胞の核酸には存在しない体細胞変異に関する。「腫瘍特異的変異」および「腫瘍変異」という用語、ならびに「癌特異的変異」および「癌変異」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
一実施形態では、癌特異的アミノ酸修飾は、癌特異的体細胞変異を同定することによって、例えば癌組織または1つ以上の癌細胞のゲノムDNAおよび/またはRNAを配列決定することによって同定される。
一実施形態では、変異は、腫瘍標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームと、非腫瘍形成性標本のゲノム、エクソームおよび/またはトランスクリプトームとの間の配列相違を同定することによって決定され得る、癌患者の腫瘍標本における癌特異的体細胞変異である。
本発明によれば、腫瘍標本は、腫瘍または癌細胞を含むかまたは含むと予想される、患者に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液などの任意の組織試料、原発性腫瘍もしくは腫瘍転移から得られた組織試料、または腫瘍もしくは癌細胞を含む任意の他の試料であり得る。
非腫瘍形成性標本は、患者、または好ましくは患者と同じ種の別の個体、好ましくは腫瘍もしくは癌細胞を含まないもしくは含まないと予想される健常個体に由来する身体試料などの任意の試料に関する。身体試料は、血液などの任意の組織試料または非腫瘍形成性組織からの試料であり得る。
癌特異的変異の決定は、患者の癌変異シグネチャの決定を含み得る。「癌変異シグネチャ」という用語は、患者の1つ以上の癌細胞に存在する全ての癌変異を指し得るか、または患者の1つ以上の癌細胞に存在する癌変異の一部分のみを指し得る。したがって、癌特異的変異の決定は、患者の1つ以上の癌細胞に存在する全ての癌特異的変異の同定を含み得るか、または患者の1つ以上の癌細胞に存在する癌特異的変異の一部分のみの同定を含み得る。
好ましくは、同定される変異は、非同義変異、好ましくは腫瘍または癌細胞で発現されるタンパク質の非同義変異である。
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、1つ以上、好ましくは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個またはさらにそれ以上の癌細胞の単一細胞配列決定を含む。したがって、本発明は、前記1つ以上の癌細胞の癌変異シグネチャを同定することを含み得る。一実施形態では、癌細胞は循環腫瘍細胞である。循環腫瘍細胞などの癌細胞は、単一細胞配列決定の前に単離し得る。
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、次世代シーケンシング(NGS)を使用することを含む。
一実施形態では、癌特異的体細胞変異を同定するまたは配列相違を同定する工程は、腫瘍標本のゲノムDNAおよび/またはRNAを配列決定することを含む。
癌特異的体細胞変異または配列相違を明らかにするために、腫瘍標本から得られた配列情報を、好ましくは、患者または異なる個体のいずれかから得られ得る生殖系列細胞などの正常な非癌性細胞のDNAまたはRNAなどの核酸を配列決定することから得られた配列情報などの参照と比較する。一実施形態では、正常なゲノム生殖系列DNAは、末梢血単核細胞(PBMC)から得られる。
「ゲノム」という用語は、生物または細胞の染色体中の遺伝情報の総量に関する。
「エクソーム」という用語は、発現される遺伝子のコード部分であるエクソンによって形成される生物のゲノムの一部を指す。エクソームは、タンパク質および他の機能的遺伝子産物の合成において使用される遺伝的青写真を提供する。これはゲノムの最も機能的に関連する部分であり、したがって、生物の表現型に寄与する可能性が最も高い。ヒトゲノムのエクソームは、全ゲノムの1.5%を構成すると推定されている(Ng,PC et al.,PLoS Gen.,4(8):1-15,2008)。
「トランスクリプトーム」という用語は、1つの細胞または細胞の集団で産生されるmRNA、rRNA、tRNA、および他の非コードRNAを含む全てのRNA分子のセットに関する。本発明に関連して、トランスクリプトームは、特定の時点で1つの細胞、細胞の集団、好ましくは癌細胞の集団、または所与の個体の全ての細胞で産生される全てのRNA分子のセットを意味する。
「変異」という用語は、参照と比較した核酸配列の変化または相違(ヌクレオチド置換、付加または欠失)を指す。「体細胞変異」は、生殖細胞(精子および卵子)を除く身体のいずれの細胞でも起こる可能性があり、したがって子供には受け継がれない。これらの変化は、(常にではないが)癌または他の疾患を引き起こし得る。好ましくは、変異は非同義変異である。「非同義変異」という用語は、翻訳産物におけるアミノ酸置換などのアミノ酸変化をもたらす変異、好ましくはヌクレオチド置換を指す。
本明細書で使用される場合、「ワクチン」という用語は、対象への接種時に免疫応答を誘導する組成物を指す。いくつかの実施形態では、誘導された免疫応答は、治療的および/または防御的免疫を提供する。
一実施形態では、ワクチンRNAは、対象の細胞で発現されて、任意で発現されたアミノ酸配列のプロセシング後に、抗原エピトープを提供する。一実施形態では、抗原エピトープはMHCに関連して提示される。一実施形態では、抗原エピトープをコードするRNAは、対象の細胞において一過性に発現される。一実施形態では、抗原エピトープをコードするRNAの投与後、抗原エピトープをコードするRNAの発現が脾臓で起こる。一実施形態では、抗原エピトープをコードするRNAの投与後、抗原提示細胞、好ましくはプロフェッショナル抗原提示細胞における抗原エピトープをコードするRNAの発現が起こる。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージおよびB細胞からなる群より選択される。一実施形態では、抗原エピトープをコードするRNAの投与後、肺および/または肝臓では抗原エピトープをコードするRNAの発現は起こらないか、または本質的に起こらない。一実施形態では、抗原エピトープをコードするRNAの投与後、脾臓における抗原エピトープをコードするRNAの発現は、肺における発現量の少なくとも5倍である。
本明細書に記載の抗原エピトープは、標的抗原、すなわち免疫応答が誘発される抗原に由来し得る。例えば、抗原エピトープは、標的抗原の断片であり得る。標的抗原は腫瘍抗原であり得る。
抗原エピトープまたは抗原エピトープを含むアミノ酸配列をコードするワクチンRNAを投与することによって本発明に従って対象に提供され得る抗原エピトープは、抗原エピトープが提供されている対象において、好ましくは免疫応答、例えば細胞性免疫応答の誘導をもたらし、好ましくはT細胞の刺激、プライミングおよび/または拡大をもたらす。前記免疫応答は、好ましくは、疾患細胞、組織および/または器官によって発現される場合、標的抗原、すなわち疾患関連抗原、特に腫瘍抗原に向けられる。
本明細書で使用される「活性化」または「刺激」は、検出可能な細胞増殖を誘導するのに十分に刺激されたT細胞などの免疫エフェクタ細胞の状態を指す。活性化はまた、シグナル伝達経路の開始、サイトカイン産生の誘導、および検出可能なエフェクタ機能に関連し得る。「活性化免疫エフェクタ細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を受けている免疫エフェクタ細胞を指す。
「プライミング」という用語は、T細胞などの免疫エフェクタ細胞がその特異的抗原と最初に接触し、エフェクタT細胞などのエフェクタ細胞への分化を引き起こすプロセスを指す。
「クローン拡大」または「拡大」という用語は、特定の実体が増加するプロセスを指す。本開示の文脈において、この用語は、好ましくは、免疫エフェクタ細胞が抗原によって刺激され、増殖し、前記抗原を認識する特異的免疫エフェクタ細胞が増幅される免疫学的応答に関連して使用される。好ましくは、クローン拡大は免疫エフェクタ細胞の分化をもたらす。
「抗原」という用語は、免疫応答を生じさせることができるエピトープを含む作用物質に関する。「抗原」という用語は、特にタンパク質およびペプチドを含む。一実施形態では、抗原は、免疫系の細胞、例えば樹状細胞またはマクロファージのような抗原提示細胞によって提示される。抗原またはT細胞エピトープなどのそのプロセシング産物は、一実施形態では、T細胞受容体もしくはB細胞受容体によって、または抗体などの免疫グロブリン分子によって結合される。したがって、抗原またはそのプロセシング産物は、抗体またはTリンパ球(T細胞)と特異的に反応し得る。一実施形態では、抗原は、腫瘍抗原などの疾患関連抗原であり、エピトープはそのような抗原に由来する。
「疾患関連抗原」という用語は、その最も広い意味で使用されて、疾患に関連する任意の抗原を指す。疾患関連抗原は、宿主の免疫系を刺激して疾患に対する細胞性抗原特異的免疫応答および/または体液性抗体応答を生じさせるエピトープを含む分子である。したがって、疾患関連抗原またはそのエピトープは、治療目的に使用され得る。疾患関連抗原は、癌、典型的には腫瘍に関連し得る。
抗原標的は、疾患、例えば癌の間に上方制御され得る。疾患組織では、抗原は健常組織とは異なり得、早期検出、特異的診断および治療、特に標的療法のための独自の可能性を提供することができる。
いくつかの実施形態では、抗原は腫瘍抗原である。
本発明の文脈において、「腫瘍抗原」または「腫瘍関連抗原」という用語は、1つ以上の腫瘍または癌組織で発現または異常発現され、好ましくは正常条件下では限られた数の組織および/もしくは器官で、または特定の発生段階で特異的に発現されるタンパク質に関し、例えば、腫瘍抗原は、正常条件下では胃組織、好ましくは胃粘膜、生殖器官、例えば精巣、栄養膜組織、例えば胎盤、または生殖系列細胞で特異的に発現され得る。これに関連して、「限られた数」は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下を意味する。本発明の文脈における腫瘍抗原としては、例えば、分化抗原、好ましくは細胞型特異的分化抗原、すなわち正常条件下では特定の分化段階で特定の細胞型において特異的に発現されるタンパク質、癌/精巣抗原、すなわち正常条件下では精巣および時には胎盤において特異的に発現されるタンパク質、ならびに生殖系列特異的抗原が挙げられる。本発明の文脈において、腫瘍抗原は、好ましくは癌細胞の細胞表面に関連し、好ましくは正常組織では発現されないか、またはまれにしか発現されない。好ましくは、腫瘍抗原または腫瘍抗原の異常発現は、癌細胞を同定する。本発明の文脈において、対象、例えば癌疾患に罹患している患者において癌細胞によって発現される腫瘍抗原は、好ましくは前記対象における自己タンパク質である。好ましい実施形態では、本発明の文脈における腫瘍抗原は、正常条件下では非必須である組織もしくは器官、すなわち免疫系によって損傷された場合に対象の死をもたらさない組織もしくは器官において、または免疫系がアクセスできないかもしくはほとんどアクセスできない身体の器官もしくは構造において特異的に発現される。好ましくは、腫瘍抗原のアミノ酸配列は、正常組織で発現される腫瘍抗原と癌組織で発現される腫瘍抗原とで同一である。
腫瘍抗原の例としては、p53、ART-4、BAGE、β-カテニン/m、Bcr-abL CAMEL、CAP-1、CASP-8、CDC27/m、CDK4/m、CEA、クローディンファミリーの細胞表面タンパク質、例えばクローディン6、クローディン18.2およびクローディン12、c-MYC、CT、Cyp-B、DAM、ELF2M、ETV6-AML1、G250、GAGE、GnT-V、Gap100、HAGE、HER-2/neu、HPV-E7、HPV-E6、HAST-2、hTERT(またはhTRT)、LAGE、LDLR/FUT、MAGE-A、好ましくはMAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A5、MAGE-A6、MAGE-A7、MAGE-A8、MAGE-A9、MAGE-A10、MAGE-A11、またはMAGE-A12、MAGE-B、MAGE-C、MART-1/メランA、MC1R、ミオシン/m、MUC1、MUM-1、MUM-2、MUM-3、NA88-A、NF1、NY-ESO-1、NY-BR-1、p190マイナーBCR-abL、Pm1/RARa、PRAME、プロテイナーゼ3、PSA、PSM、RAGE、RU1またはRU2、SAGE、SART-1またはSART-3、SCGB3A2、SCP1、SCP2、SCP3、SSX、サバイビン、TEL/AML1、TPI/m、TRP-1、TRP-2、TRP-2/INT2、TPTEおよびWTが挙げられる。特に好ましい腫瘍抗原としては、クローディン18.2(CLDN18.2)およびクローディン6(CLDN6)が挙げられる。
「エピトープ」という用語は、免疫系によって認識される抗原などの分子の一部または断片を指す。例えば、エピトープは、T細胞、B細胞または抗体によって認識され得る。抗原のエピトープは、抗原の連続部分または不連続部分を含み得、約5~約100、例えば約5~約50、より好ましくは約8~約30、最も好ましくは約8~約25アミノ酸の長さであり得、例えば、エピトープは、好ましくは9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の長さであり得る。一実施形態では、エピトープは、約10~約25アミノ酸の長さである。「エピトープ」という用語は、T細胞エピトープを含み、好ましくはT細胞エピトープに関する。
「T細胞エピトープ」という用語は、MHC分子に関連して提示された場合にT細胞によって認識されるタンパク質の一部または断片を指す。「主要組織適合遺伝子複合体」という用語および「MHC」という略語は、MHCクラスIおよびMHCクラスII分子を含み、全ての脊椎動物に存在する遺伝子の複合体に関する。MHCタンパク質または分子は、免疫反応におけるリンパ球と抗原提示細胞または疾患細胞との間のシグナル伝達に重要であり、MHCタンパク質または分子は、ペプチドエピトープに結合し、T細胞上のT細胞受容体による認識のためにそれらを提示する。MHCによってコードされるタンパク質は、細胞の表面に発現され、自己抗原(細胞自体からのペプチド断片)および非自己抗原(例えば侵入微生物の断片)の両方をT細胞に表示する。クラスI MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約8~約10アミノ酸長であるが、より長いまたはより短いペプチドが有効であり得る。クラスII MHC/ペプチド複合体の場合、結合ペプチドは、典型的には約10~約25アミノ酸長であり、特に約13~約18アミノ酸長であるが、より長いおよびより短いペプチドが有効であり得る。
本明細書で使用される場合、「ネオエピトープ」という用語は、正常な非癌性細胞または生殖系列細胞などの参照中には存在しないが、癌細胞に見出されるエピトープを指す。これには、特に、正常な非癌性細胞または生殖系列細胞中に対応するエピトープが見出されるが、癌細胞における1つ以上の変異に起因して、エピトープの配列が変化してネオエピトープを生じさせる状況が含まれる。
特定の実施形態によれば、シグナルペプチドは、本明細書に記載のワクチンRNA(上記のマルチエピトープポリペプチドを含む)によってコードされる抗原配列に、直接またはリンカー、例えば配列番号11に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して融合される。
そのようなシグナルペプチドは、典型的には約15~30アミノ酸の長さを示し、好ましくは抗原配列のN末端に位置する配列であるが、これに限定されない。本明細書で定義されるシグナルペプチドは、好ましくは、RNAによってコードされる抗原配列を定義された細胞区画、好ましくは細胞表面、小胞体(ER)またはエンドソーム-リソソーム区画に輸送することを可能にする。一実施形態では、本明細書で定義されるシグナルペプチド配列は、ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)をコードする配列に由来するシグナルペプチド配列を含むが、これに限定されず、好ましくは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への移行を誘導する分泌シグナルペプチドをコードする78bp断片に対応し、特に配列番号8のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む配列を含む。
一実施形態では、シグナル配列は、配列番号8のアミノ酸配列、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号8のアミノ酸配列もしくは配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、シグナル配列は、配列番号8のアミノ酸配列を含む。
そのようなシグナルペプチドは、好ましくは、コードされた抗原配列の分泌を促進するために使用される。より好ましくは、本明細書で定義されるシグナルペプチドは、本明細書で定義されるコードされた抗原配列に融合される。
したがって、特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のRNAは、抗原配列およびシグナルペプチドをコードする少なくとも1つのコード領域を含み、前記シグナルペプチドは、好ましくは抗原配列、より好ましくは本明細書に記載の抗原配列のN末端に融合されている。
特定の実施形態によれば、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、直接またはリンカーを介して抗原配列に融合される。
抗原プロセシングおよび/または提示を増強するそのようなアミノ酸配列は、好ましくは抗原配列のC末端に(および任意で免疫寛容を破壊するアミノ酸配列のC末端に)位置するが、これに限定されない。本明細書で定義される抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、好ましくは抗原プロセシングおよび提示を改善する。一実施形態では、本明細書で定義される抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)に由来する配列、特に配列番号9のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む配列を含むが、これに限定されない。
一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号9のアミノ酸配列、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号9のアミノ酸配列もしくは配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、配列番号9のアミノ酸配列を含む。
抗原プロセシングおよび/または提示を増強するそのようなアミノ酸配列は、好ましくは、コードされた抗原配列の抗原プロセシングおよび/または提示を促進するために使用される。より好ましくは、本明細書で定義される抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列は、本明細書で定義されるコードされた抗原配列に融合される。
したがって、特に好ましい実施形態では、本明細書に記載のRNAは、抗原配列ならびに抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列をコードする少なくとも1つのコード領域を含み、抗原プロセシングおよび/または提示を増強する前記アミノ酸配列は、好ましくは抗原配列、より好ましくは本明細書に記載の抗原配列のC末端に融合されている。
破傷風菌(Clostridium tetani)の破傷風トキソイドに由来するアミノ酸配列は、プライミング中にT細胞支援を提供することによって自己抗原に対する免疫応答を効率的に開始するために、自己寛容機構を克服するために使用され得る。
破傷風トキソイド重鎖は、MHCクラスII対立遺伝子に無差別に結合し、破傷風ワクチン接種を受けたほぼ全ての個体においてCD4メモリT細胞を誘導することができるエピトープを含むことが公知である。さらに、破傷風トキソイド(TT)ヘルパーエピトープと腫瘍関連抗原との組合せは、プライミング中にCD4媒介T細胞支援を提供することによって、腫瘍関連抗原単独の適用と比較して免疫刺激を改善することが公知である。腫瘍抗原特異的T細胞応答の意図された誘導と競合し得る破傷風配列でCD8T細胞を刺激するリスクを低下させるために、破傷風トキソイドの断片C全体ではCD8T細胞エピトープを含有することが公知であるので、断片C全体は使用しない。可能な限り多くのMHCクラスII対立遺伝子への結合を確実にするために、無差別に結合するヘルパーエピトープを含有する2つのペプチド配列を代替的に選択した。エクスビボ試験のデータに基づいて、周知のエピトープp2(QYIKANSKFIGITEL;TT830-844)およびp16(MTNSVDDALINSTKIYSYFPSVISKVNQGAQG;TT578-609)を選択した。p2エピトープは、抗黒色腫活性を高めるために臨床試験におけるペプチドワクチン接種に既に使用されていた。
現在の非臨床データ(未公開)は、腫瘍抗原および無差別に結合する破傷風トキソイド配列の両方をコードするRNAワクチンが、腫瘍抗原に対するCD8T細胞応答の増強および寛容の破壊の改善をもたらすことを示した。腫瘍抗原特異的配列とインフレームで融合した配列を含むワクチンを接種した患者からの免疫モニタリングデータは、選択された破傷風配列がほぼ全ての患者において破傷風特異的T細胞応答を誘導することができることを明らかにする。
特定の実施形態によれば、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、直接またはリンカー、例えば配列番号11に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して、抗原配列に融合される。
免疫寛容を破壊するそのようなアミノ酸配列は、好ましくは抗原配列のC末端に(ならびに任意で抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列のN末端に、ここで、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列と抗原プロセシングおよび/または提示を増強するアミノ酸配列とは、直接またはリンカー、例えば配列番号12に従うアミノ酸配列を有するリンカーを介して融合されていてもよい)位置するが、これに限定されない。本明細書で定義される免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、好ましくはT細胞応答を改善する。一実施形態では、本明細書で定義される免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、破傷風トキソイド由来のヘルパー配列p2およびp16に由来する配列(P2P16)、特に配列番号10のアミノ酸配列またはその機能的変異体を含む配列を含むが、これに限定されない。
一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列、配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列、または配列番号10のアミノ酸配列もしくは配列番号10のアミノ酸配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するアミノ酸配列の機能的断片を含む。一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。
破傷風トキソイドヘルパーエピトープと融合した抗原RNAを使用する代わりに、抗原コードRNAを、ワクチン接種中にTTヘルパーエピトープをコードする別個のRNAと同時投与し得る。ここで、TTヘルパーエピトープコードRNAは、調製前に各抗原コードRNAに付加することができる。このようにして、両方の化合物を所与のAPCに送達するために、抗原およびヘルパーエピトープコードRNAの両方を含む混合リポプレックスナノ粒子を形成し得る。
したがって、本発明は、
(i)ワクチン抗原をコードするRNA、および
(ii)免疫寛容を破壊するアミノ酸配列をコードするRNA
を含むリポプレックス粒子などの粒子の使用を提供し得る。
一実施形態では、免疫寛容を破壊するアミノ酸配列は、ヘルパーエピトープ、好ましくは破傷風トキソイド由来のヘルパーエピトープを含む。
一実施形態では、ワクチン抗原をコードするRNAは、約4:1~約16:1、約6:1~約14:1、約8:1~約12:1、または約10:1の比で免疫寛容を破壊するアミノ酸配列をコードするRNAと共に、リポプレックス粒子などの粒子として共製剤化される。
以下において、ワクチンRNAの実施形態を説明し、その要素を説明するときに使用される特定の用語は以下の意味を有する:
hAg-コザック:翻訳効率を高めるための最適化された「コザック配列」を有するヒトα-グロビンmRNAの5’-UTR配列。
sec/MITD:抗原プロセシングおよび提示を改善することが示されている、ヒトMHCクラスI複合体(HLA-B51、ハプロタイプA2、B27/B51、Cw2/Cw3)をコードする配列に由来する融合タンパク質タグ。secは、新生ポリペプチド鎖の小胞体への移行を誘導する、分泌シグナルペプチドをコードする78bp断片に対応する。MITDは、MHCクラスI輸送ドメインとも呼ばれる、MHCクラスI分子の膜貫通および細胞質ドメインに対応する。
抗原:それぞれの抗原配列をコードする配列。
グリシン-セリンリンカー(GS):融合タンパク質に一般的に使用される、主にアミノ酸グリシン(G)およびセリン(S)からなる短いリンカーペプチドをコードする配列。
P2P16:免疫寛容を破壊するための破傷風トキソイド由来ヘルパーエピトープをコードする配列。
FI要素:3’-UTRは、「スプリットのアミノ末端エンハンサ」(AES)mRNA(Fと呼ばれる)およびミトコンドリアにコードされた12SリボソームRNA(Iと呼ばれる)に由来する2つの配列要素の組合せである。これらは、RNAの安定性を付与し、総タンパク質発現を増強する配列のエクスビボ選択プロセスによって同定された。
A30L70:30個のアデノシン残基のストレッチ、それに続く10個のヌクレオチドのリンカー配列、およびRNAの安定性と翻訳効率を高めるように設計された別の70個のアデノシン残基からなる、110ヌクレオチド長と測定されるポリ(A)テール。
一実施形態では、本明細書に記載のワクチンRNAは、構造:
hAg-コザック-sec-GS(1)-抗原-GS(2)-P2P16-GS(3)-MITD-FI-A30L70
を有する。
一実施形態では、本明細書に記載のワクチン抗原は、構造:
sec-GS(1)-抗原-GS(2)-P2P16-GS(3)-MITD
を有する。
一実施形態では、hAg-コザックは、配列番号13のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、secは、配列番号8のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、P2P16は、配列番号10のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、MITDは、配列番号9のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(1)は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(2)は、配列番号11のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、GS(3)は、配列番号12のアミノ酸配列を含む。一実施形態では、FIは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。一実施形態では、A30L70は、配列番号15のヌクレオチド配列を含む。好ましい5’キャップ構造は、β-S-ARCA(D1)である。
免疫賦活RNAの投与スケジュール
本発明は、2つの異なる用量、すなわち第1の用量および第2の用量のサイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNA(免疫賦活RNA)の使用を含む。免疫賦活RNAの第1の用量(プレ用量)を、免疫賦活RNAの第2の用量(例えば標的用量)よりも少ない量で投与することにより、対象における望ましくない応答または反応のレベルが低減されるまたは防止されることが見出された。第1の用量は、慣れ/馴化効果を生じさせるのに適していてもよく、免疫賦活RNAの治療有効用量よりも低くてもよい。第2の用量は、免疫賦活RNAの治療有効量であり得る。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫賦活RNAを投与するためのスケジュールは、許容できないレベルの望ましくない応答または反応を引き起こさない。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫賦活RNAを投与するためのスケジュールは、例えば、本明細書に記載の第1の用量の投与を伴わない本明細書に記載の第2の用量のみの投与と比較した場合、より低いレベルの望ましくない応答または反応を引き起こす。実施形態では、より低いレベルの望ましくない応答または反応は、例えば、1つ以上アッセイまたは症状によって測定される場合、望ましくない応答または反応の減少、例えば、1%、5%、10%、25%、30%、35%または40%未満の減少を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の免疫賦活RNAを投与するためのスケジュールは、検出可能なレベルの望ましくない応答または反応を引き起こさない。
一実施形態では、前記第1の用量で投与される前記RNAの量は、前記第2の用量で投与される前記RNAの量の80%、75%、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%または5%以下である。
一実施形態では、前記第1の用量で投与される免疫賦活RNAの量は、体重1kg当たり200μg、190μg、180μg、170μg、160μg、150μg、140μg、130μg、120μg、110μg、100μg、90μg、80μg、70μg、60μg、50μg、40μg、30μg、20μg、10μg、5μg、4μg、3μg、2μg、1μg、0.5μg、0.4μg、0.3μg、0.2μg、または0.1μg以下であり、第2の用量は前記第1の用量よりも多い。
一実施形態では、前記第2の用量で投与される免疫賦活RNAの量は、体重1kg当たり20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、または400μgよりも多く、第2の用量は前記第1の用量よりも多い。
前記第1の用量の量および/または前記第2の用量の量の免疫賦活RNAは、複数回、例えば2倍、3倍、4倍、5倍またはさらにそれ以上投与され得る。一実施形態では、第2の用量または複数の第2の用量の1つは、第1の用量または複数の第1の用量の投与の完了前には投与されない。一実施形態では、第2の用量/複数の第2の用量のうちの最初の用量は、第1の用量/複数の第1の用量のうちの最後の用量の投与後に投与される。
一実施形態では、1、2、3、4、5、6、7、14、または21日間を超える日数により、第1の用量の投与/1つ以上の第1の用量の投与の完了と、第2の用量の投与/1つ以上の第2の用量の投与の開始とが分けられる。
一実施形態では、56、49、42、35、または28日以下の日数により、第1の用量の投与/1つ以上の第1の用量の投与の完了と、第2の用量の投与/1つ以上の第2の用量の投与の開始とが分けられる。
望ましくない応答または反応は、NK細胞を含み得、NK細胞数の増加、発熱、倦怠感、体重の減少、肝酵素の活性の上昇、毛細血管漏出症候群、低血圧および浮腫からなる群より選択される1つ以上を含み得る。一実施形態では、肝酵素は、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)からなる群より選択される1つ以上を含む。一実施形態では、望ましくない応答または反応は、NK細胞拡大の誘導を含む。
本開示によれば、ワクチン接種、例えばワクチンRNAの投与は、抗原エピトープによるT細胞の刺激をもたらし得る。本開示はさらに、免疫賦活RNAを投与することによるT細胞の維持および/またはさらなる刺激を提供する。一実施形態では、T細胞は、腫瘍発現抗原/腫瘍提示抗原エピトープによって抗原刺激される。この実施形態では、ワクチン接種、すなわちワクチンの投与は行われなくてもよい。一実施形態では、1つ以上の免疫チェックポイント阻害剤および/または放射線療法も投与される。
核酸
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」または「核酸」という用語は、ゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子などのDNAおよびRNAを含むことが意図されている。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。
本明細書に記載の核酸は、組換えおよび/または単離された分子であり得る。
核酸は、ベクターに含まれ得る。本明細書で使用される「ベクター」という用語は、プラスミドベクター、コスミドベクター、λファージなどのファージベクター、レトロウイルス、アデノウイルスもしくはバキュロウイルスベクターなどのウイルスベクター、または細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)もしくはP1人工染色体(PAC)などの人工染色体ベクターを含む、当業者に公知の任意のベクターを含む。前記ベクターは、発現ベクターおよびクローニングベクターを含む。発現ベクターは、プラスミドおよびウイルスベクターを含み、一般に、所望のコード配列および特定の宿主生物(例えば、細菌、酵母、植物、昆虫もしくは哺乳動物)またはインビトロ発現系における作動可能に連結されたコード配列の発現に必要な適切なDNA配列を含む。クローニングベクターは、一般に、特定の所望のDNA断片を操作および増幅するために使用され、所望のDNA断片の発現に必要な機能的配列を欠いていてもよい。
本開示では、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む核酸分子に関する。好ましい実施形態では、RNAは、リボヌクレオチド残基の全部または大部分を含む。本明細書で使用される場合、「リボヌクレオチド」は、β-D-リボフラノシル基の2’位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを指す。RNAは、限定されないが、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然に存在するRNAとは異なる修飾RNAを包含する。そのような改変は、内部RNAヌクレオチドへの、またはRNAの末端(一方もしくは両方)への非ヌクレオチド物質の付加を指し得る。本明細書ではまた、RNA中のヌクレオチドが、化学的に合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準ヌクレオチドであり得ることが企図される。本開示では、これらの改変されたRNAは、天然に存在するRNAの類似体と考えられる。
本開示の特定の実施形態では、RNAは、ペプチドまたはタンパク質をコードするRNA転写物に関連するメッセンジャRNA(mRNA)である。当技術分野で確立されているように、mRNAは、一般に、5’非翻訳領域(5’-UTR)、ペプチドコード領域および3’非翻訳領域(3’-UTR)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって生成される。一実施形態では、mRNAは、DNA鋳型を使用するインビトロ転写によって生成され、DNAは、デオキシリボヌクレオチドを含む核酸を指す。
一実施形態では、RNAはインビトロ転写されたRNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
本開示の特定の実施形態では、RNAは、「レプリコンRNA」または単に「レプリコン」、特に「自己複製RNA」または「自己増幅RNA」である。特に好ましい一実施形態では、レプリコンまたは自己複製RNAは、ssRNAウイルス、特にアルファウイルスなどのプラス鎖ssRNAウイルスに由来するか、またはそれに由来する要素を含む。アルファウイルスは、プラス鎖RNAウイルスの典型的な代表例である。アルファウイルスは、感染細胞の細胞質で複製する(アルファウイルスの生活環の総説については、Jose et al.,Future Microbiol.,2009,vol.4,pp.837-856参照)。多くのアルファウイルスの全ゲノム長は、典型的には11,000~12,000ヌクレオチドの範囲であり、ゲノムRNAは、典型的には5’キャップおよび3’ポリ(A)テールを有する。アルファウイルスのゲノムは、非構造タンパク質(ウイルスRNAの転写、修飾および複製ならびにタンパク質修飾に関与する)および構造タンパク質(ウイルス粒子を形成する)をコードする。典型的には、ゲノム中に2つのオープンリーディングフレーム(ORF)が存在する。4つの非構造タンパク質(nsP1~nsP4)は、典型的には、ゲノムの5’末端付近から始まる第1のORFによって一緒にコードされ、一方アルファウイルスの構造タンパク質は、第1のORFの下流に見出され、ゲノムの3’末端付近に延びる第2のORFによって一緒にコードされる。典型的には、第1のORFは第2のORFよりも大きく、比率はおよそ2:1である。アルファウイルスに感染した細胞では、非構造タンパク質をコードする核酸配列のみがゲノムRNAから翻訳され、一方構造タンパク質をコードする遺伝情報は、真核生物のメッセンジャRNA(mRNA;Gould et al.,2010,Antiviral Res.,vol.87,pp.111-124)に類似したRNA分子であるサブゲノム転写物から翻訳可能である。感染後、すなわちウイルス生活環の初期段階に、(+)鎖ゲノムRNAは、非構造ポリタンパク質(nsP1234)をコードするオープンリーディングフレームの翻訳のためにメッセンジャRNAのように直接作用する。アルファウイルス由来のベクターは、外来遺伝情報を標的細胞または標的生物に送達するために提案されている。単純なアプローチでは、アルファウイルス構造タンパク質をコードするオープンリーディングフレームを、目的のタンパク質をコードするオープンリーディングフレームによって置き換える。アルファウイルスに基づくトランス複製系は、2つの別個の核酸分子上のアルファウイルスヌクレオチド配列要素に依存する:一方の核酸分子はウイルスレプリカーゼをコードし、他方の核酸分子はトランスで前記レプリカーゼによって複製されることができる(したがってトランス複製系という名称)。トランス複製は、所与の宿主細胞中にこれらの核酸分子の両方が存在することを必要とする。トランスでレプリカーゼによって複製され得る核酸分子は、アルファウイルスレプリカーゼによる認識およびRNA合成を可能にするために特定のアルファウイルス配列要素を含まなければならない。
一実施形態では、本明細書に記載のRNAは修飾ヌクレオシドを有し得る。いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つの(例えば全ての)ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
本明細書で使用される「ウラシル」という用語は、RNAの核酸中に存在し得る核酸塩基の1つを表す。ウラシルの構造は:
Figure 2023554154000008
である。
本明細書で使用される「ウリジン」という用語は、RNA中に存在し得るヌクレオシドの1つを表す。ウリジンの構造は:
Figure 2023554154000009
である。
UTP(ウリジン5’-三リン酸)は、以下の構造:
Figure 2023554154000010
を有する。
プソイドUTP(プソイドウリジン5’-三リン酸)は、以下の構造:
Figure 2023554154000011
を有する。
「プソイドウリジン」は、ウリジンの異性体である修飾ヌクレオシドの一例であり、ウラシルは、窒素-炭素グリコシド結合の代わりに炭素-炭素結合を介してペントース環に結合している。
別の例示的な修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1Ψ)であり、これは、構造:
Figure 2023554154000012
を有する。
N1-メチルプソイドUTPは、以下の構造:
Figure 2023554154000013
を有する。
別の例示的な修飾ヌクレオシドは5-メチルウリジン(m5U)であり、これは、構造:
Figure 2023554154000014
を有する。
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA中の1つ以上のウリジンは、修飾ヌクレオシドで置き換えられる。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは修飾ウリジンである。
いくつかの実施形態では、RNAは、少なくとも1つのウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、RNAは、各ウリジンの代わりに修飾ヌクレオシドを含む。
いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはプソイドウリジン(ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドはN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、2種類以上の修飾ヌクレオシドを含んでもよく、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から独立して選択される。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)およびN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。いくつかの実施形態では、修飾ヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)を含む。
いくつかの実施形態では、RNA中の1つ以上、例えば全てのウリジンを置換する修飾ヌクレオシドは、3-メチルウリジン(mU)、5-メトキシウリジン(moU)、5-アザウリジン、6-アザウリジン、2-チオ-5-アザウリジン、2-チオウリジン(sU)、4-チオウリジン(sU)、4-チオプソイドウリジン、2-チオプソイドウリジン、5-ヒドロキシウリジン(hoU)、5-アミノアリルウリジン、5-ハロウリジン(例えば5-ヨードウリジンもしくは5-ブロモウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmoU)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmoU)、5-カルボキシメチルウリジン(cmU)、1-カルボキシメチルプソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chmU)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchmU)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcmU)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウリジン(mcmU)、5-アミノメチル-2-チオウリジン(nmU)、5-メチルアミノメチルウリジン(mnmU)、1-エチルプソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnmU)、5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnmseU)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオウリジン(cmnmU)、5-プロピニルウリジン、1-プロピニルプソイドウリジン、5-タウリノメチルウリジン(τmU)、1-タウリノメチルプソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオプソイドウリジン)、5-メチル-2-チオウリジン(mU)、1-メチル-4-チオプソイドウリジン(mΨ)、4-チオ-1-メチルプソイドウリジン、3-メチルプソイドウリジン(mΨ)、2-チオ-1-メチルプソイドウリジン、1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザプソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチルジヒドロウリジン(mD)、2-チオジヒドロウリジン、2-チオジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシウリジン、2-メトキシ-4-チオウリジン、4-メトキシプソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオプソイドウリジン、N1-メチルプソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acpU)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acpΨ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inmU)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオウリジン(inmU)、α-チオウリジン、2’-O-メチルウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチルウリジン(mUm)、2’-O-メチルプソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチルウリジン(sUm)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチルウリジン(mcmUm)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチルウリジン(ncmUm)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチルウリジン(cmnmUm)、3,2’-O-ジメチルウリジン(mUm)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチルウリジン(inmUm)、1-チオウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジン、または当技術分野で公知の任意の他の修飾ウリジンのいずれか1つ以上であり得る。
一実施形態では、RNAは、他の修飾ヌクレオシドを含むか、またはさらなる修飾ヌクレオシド、例えば修飾シチジンを含む。例えば、一実施形態では、RNAにおいて、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。一実施形態では、RNAは、5-メチルシチジンと、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)および5-メチルウリジン(m5U)から選択される1つ以上とを含む。一実施形態では、RNAは、5-メチルシチジンおよびN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。いくつかの実施形態では、RNAは、各シチジンの代わりに5-メチルシチジンを含み、各ウリジンの代わりにN1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)を含む。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは5’キャップを含む。一実施形態では、本開示のRNAは、キャップされていない5’-三リン酸を有さない。一実施形態では、RNAは5’キャップ類似体によって修飾され得る。「5’キャップ」という用語は、mRNA分子の5’末端に見出される構造を指し、一般に、5’-5’三リン酸結合によってmRNAに接続されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。RNAに5’キャップまたは5’キャップ類似体を提供することは、5’キャップがRNA鎖に共転写的に発現されるインビトロ転写によって達成され得るか、またはキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合され得る。
いくつかの実施形態では、RNAのためのビルディングブロックキャップは、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApG(時にm 7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGとも呼ばれる)であり、これは、以下の構造:
Figure 2023554154000015
を有する。
以下は、RNAおよびm 7,3’OG(5’)ppp(5’)m2’-OApGを含む例示的なキャップ1 RNAである:
Figure 2023554154000016
以下は、別の例示的なキャップ1 RNA(キャップ類似体なし)である:
Figure 2023554154000017
いくつかの実施形態では、RNAは、一実施形態では、構造:
Figure 2023554154000018
を有するキャップ類似体アンチリバースキャップ(ARCAキャップ(m 7,3’OG(5’)ppp(5’)G))を使用して、「キャップ0」構造で修飾される。
以下は、RNAおよびm 7,3’OG(5’)ppp(5’)Gを含む例示的なキャップ0 RNAである:
Figure 2023554154000019
いくつかの実施形態では、「キャップ0」構造は、構造:
Figure 2023554154000020
を有するキャップ類似体β-S-ARCA(m 7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)を使用して生成される。
以下は、β-S-ARCA(m 7,2’OG(5’)ppSp(5’)G)およびRNAを含む例示的なキャップ0 RNAである:
Figure 2023554154000021
β-S-ARCAの「D1」ジアステレオマーまたは「β-S-ARCA(D1)」は、β-S-ARCAのD2ジアステレオマー(β-S-ARCA(D2))と比較してHPLCカラムで最初に溶出し、したがってより短い保持時間を示すβ-S-ARCAのジアステレオマーである(参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2011/015347号参照)。
特に好ましいキャップは、β-S-ARCA(D1)(m 7,2’-OGppSpG)またはm 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGである。一実施形態では、免疫賦活剤をコードするRNAの場合、好ましいキャップは、m 7,3’-OGppp(m 2’-O)ApGである。一実施形態では、ワクチン抗原をコードするRNAの場合、好ましいキャップは、β-S-ARCA(D1)(m 7,2’-OGppSpG)である。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、5’-UTRおよび/または3’-UTRを含む。「非翻訳領域」または「UTR」という用語は、転写されるがアミノ酸配列に翻訳されないDNA分子内の領域、またはmRNA分子などのRNA分子内の対応する領域に関する。非翻訳領域(UTR)は、オープンリーディングフレームの5’側(上流)(5’-UTR)および/またはオープンリーディングフレームの3’側(下流)(3’-UTR)に存在し得る。5’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の開始コドンの上流の5’末端に位置する。5’-UTRは5’キャップ(存在する場合)の下流にあり、例えば5’キャップに直接隣接している。3’-UTRは、存在する場合、タンパク質コード領域の終止コドンの下流の3’末端に位置するが、「3’-UTR」という用語は、好ましくはポリ(A)配列を含まない。したがって、3’-UTRはポリ(A)配列(存在する場合)の上流にあり、例えばポリ(A)配列に直接隣接している。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号13のヌクレオチド配列、または配列番号13のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む5’-UTRを含む。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号14のヌクレオチド配列、または配列番号14のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含む3’-UTRを含む。
特に好ましい5’-UTRは、配列番号13のヌクレオチド配列を含む。特に好ましい3’-UTRは、配列番号14のヌクレオチド配列を含む。
いくつかの実施形態では、本開示によるRNAは、3’-ポリ(A)配列を含む。
本発明で使用される場合、「ポリ(A)配列」または「ポリAテール」という用語は、典型的にはRNA分子の3’末端に位置するアデニル酸残基の連続的または断続的な配列を指す。ポリ(A)配列は当業者に公知であり、本明細書に記載のRNAの3’UTRに後続し得る。連続的なポリ(A)配列は、連続するアデニル酸残基を特徴とする。自然界では、連続的なポリ(A)配列が典型的である。本明細書に開示されるRNAは、転写後に鋳型非依存性RNAポリメラーゼによってRNAの遊離3’末端に結合されたポリ(A)配列、またはDNAによってコードされ、鋳型依存性RNAポリメラーゼによって転写されたポリ(A)配列を有し得る。
約120個のAヌクレオチドのポリ(A)配列は、トランスフェクトされた真核細胞におけるRNAのレベル、およびポリ(A)配列の上流(5’側)に存在するオープンリーディングフレームから翻訳されるタンパク質のレベルに有益な影響を及ぼすことが実証されている(Holtkamp et al.,2006,Blood,vol.108,pp.4009-4017)。
ポリ(A)配列は任意の長さであり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのAヌクレオチド、特に約120個のAヌクレオチドを含むか、本質的にそれらからなるか、またはそれらからなる。この文脈において、「から本質的になる」は、ポリ(A)配列中のほとんどのヌクレオチド、典型的にはポリ(A)配列中のヌクレオチドの数の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%がAヌクレオチドであるが、残りのヌクレオチドが、Uヌクレオチド(ウリジル酸)、Gヌクレオチド(グアニル酸)、またはCヌクレオチド(シチジル酸)などのAヌクレオチド以外のヌクレオチドであることを許容することを意味する。この文脈において、「からなる」は、ポリ(A)配列中の全てのヌクレオチド、すなわちポリ(A)配列中のヌクレオチドの数の100%がAヌクレオチドであることを意味する。「Aヌクレオチド」または「A」という用語は、アデニル酸を指す。
いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、コード鎖に相補的な鎖内に反復dTヌクレオチド(デオキシチミジル酸)を含むDNA鋳型に基づいて、RNA転写中、例えばインビトロ転写RNAの調製中に結合される。ポリ(A)配列をコードするDNA配列(コード鎖)は、ポリ(A)カセットと呼ばれる。
いくつかの実施形態では、DNAのコード鎖に存在するポリ(A)カセットは、本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、およびdT)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチド長であり得る。そのようなカセットは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/005324 A1号に開示されている。国際公開第2016/005324 A1号に開示されている任意のポリ(A)カセットを本発明で使用し得る。本質的にdAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(dA、dC、dG、dT)が均等に分布し、例えば5~50ヌクレオチドの長さを有するランダムな配列によって中断されているポリ(A)カセットは、DNAレベルでは、大腸菌(E.coli)におけるプラスミドDNAの持続的な増殖を示し、RNAレベルでは、RNAの安定性と翻訳効率を支持することに関して有益な特性と依然として関連している。結果として、いくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNA分子に含まれるポリ(A)配列は、本質的にAヌクレオチドからなるが、4つのヌクレオチド(A、C、G、U)のランダムな配列によって中断されている。そのようなランダムな配列は、5~50、10~30、または10~20ヌクレオチド長であり得る。
いくつかの実施形態では、Aヌクレオチド以外のヌクレオチドは、その3’末端でポリ(A)配列に隣接していない、すなわち、ポリ(A)配列は、A以外のヌクレオチドによってその3’末端でマスクされていないか、または後続されていない。
いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドを含み得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドから本質的になり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は、少なくとも20個、少なくとも30個、少なくとも40個、少なくとも80個、または少なくとも100個、および最大500個、最大400個、最大300個、最大200個、または最大150個までのヌクレオチドからなり得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は少なくとも100個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は約150個のヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(A)配列は約120個のヌクレオチドを含む。
いくつかの実施形態では、RNAは、配列番号15のヌクレオチド配列、または配列番号15のヌクレオチド配列と少なくとも99%、98%、97%、96%、95%、90%、85%、もしくは80%の同一性を有するヌクレオチド配列を含むポリ(A)配列を含む。
特に好ましいポリ(A)配列は、配列番号15のヌクレオチド配列を含む。
本開示によれば、RNAは、好ましくは、RNAを投与されている対象の細胞に入るとそれぞれのタンパク質に翻訳される一本鎖5’キャップmRNAとして投与される。好ましくは、RNAは、安定性および翻訳効率に関するRNAの最大の有効性のために最適化された構造要素(5’キャップ、5’-UTR、3’-UTR、ポリ(A)配列)を含む。
一実施形態では、例えばRNA脂質粒子として製剤化された、本明細書に記載のRNAの投与後、RNAの少なくとも一部が治療される対象の細胞に送達される。一実施形態では、RNAの少なくとも一部が細胞のサイトゾルに送達される。一実施形態では、RNAは、細胞によって翻訳されて、それがコードするペプチドまたはタンパク質を産生する。本発明の全ての態様の一実施形態では、RNAは対象の細胞で一過性に発現される。本発明の全ての態様の一実施形態では、RNAはインビトロ転写RNAである。本発明の全ての態様の一実施形態では、免疫賦活剤をコードするRNAの場合、細胞は肝細胞である。一実施形態では、免疫賦活剤の発現は細胞外空間にある、すなわち、免疫賦活剤は分泌される。本発明の全ての態様の一実施形態では、ワクチンRNAの場合、細胞は脾細胞である。本発明の全ての態様の一実施形態では、ワクチンRNAの場合、細胞は、脾臓中のプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施形態では、細胞は、樹状細胞またはマクロファージである。一実施形態では、ワクチン配列は、MHCに関連して発現および提示される。本明細書に記載のRNA脂質粒子などのRNA粒子は、そのような細胞にRNAを送達するために使用され得る。例えば、本明細書に記載の脂質ナノ粒子(LNP)は、免疫賦活剤をコードするRNAを肝臓に送達するために使用され得る。例えば、本明細書に記載のリポプレックス粒子(LPX)は、ワクチンRNAを脾臓に送達するために使用され得る。
本開示の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写されるプロセスに関する。その後、RNAはペプチドまたはタンパク質に翻訳され得る。
本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロで合成されるプロセスに関する。好ましくは、クローニングベクターが転写物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。本発明によれば、本発明で使用されるRNAは、好ましくはインビトロ転写RNA(IVT-RNA)であり、適切なDNA鋳型のインビトロ転写によって得られ得る。転写を制御するためのプロモータは、任意のRNAポリメラーゼのための任意のプロモータであり得る。RNAポリメラーゼの特定の例は、T7、T3、およびSP6 RNAポリメラーゼである。好ましくは、本発明によるインビトロ転写は、T7またはSP6プロモータによって制御される。インビトロ転写のためのDNA鋳型は、核酸、特にcDNAをクローニングし、それをインビトロ転写のための適切なベクターに導入することによって得られ得る。cDNAは、RNAの逆転写によって得られ得る。
本明細書で使用される「発現」という用語は、特定のヌクレオチド配列の転写および/または翻訳として定義される。
RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、mRNAの鎖がペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列のアセンブリを指令する、細胞のリボソームにおけるプロセスに関する。
「コードする」は、定義されたヌクレオチドの配列(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)または定義されたアミノ酸の配列のいずれかを有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーおよび高分子の合成のための鋳型として働く、遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド中のヌクレオチドの特定の配列の固有の特性、およびそれから生じる生物学的特性を指す。したがって、ある遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物系においてタンパク質を産生する場合、その遺伝子はタンパク質をコードする。ヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常は配列表に提供されるコード鎖と、遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される非コード鎖の両方が、その遺伝子またはcDNAのタンパク質または他の産物をコードすると呼ばれ得る。
一実施形態では、本発明に従って投与されるRNAは非免疫原性である。
本明細書で使用される「非免疫原性RNA」という用語は、例えば哺乳動物に投与したとき免疫系による応答を誘導しないか、または非免疫原性RNAを非免疫原性にする修飾および処理に供されていないという点においてのみ異なる同じRNAによって誘導されるよりも弱い応答を誘導する、すなわち標準RNA(stdRNA)によって誘導されるよりも弱い応答を誘導するRNAを指す。好ましい一実施形態では、本明細書において修飾RNA(modRNA)とも呼ばれる非免疫原性RNAは、自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオシドをRNAに組み込み、二本鎖RNA(dsRNA)を除去することによって非免疫原性にされる。
修飾ヌクレオシドの組み込みによって非免疫原性RNAを非免疫原性にするために、RNAの免疫原性を低下させるまたは抑制する限り、任意の修飾ヌクレオシドを使用し得る。自然免疫受容体のRNA媒介性活性化を抑制する修飾ヌクレオシドが特に好ましい。一実施形態では、修飾ヌクレオシドは、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換を含む。一実施形態では、修飾核酸塩基は修飾ウラシルである。一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、3-メチル-ウリジン(mU)、5-メトキシ-ウリジン(moU)、5-アザ-ウリジン、6-アザ-ウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ウリジン(sU)、4-チオ-ウリジン(sU)、4-チオ-プソイドウリジン、2-チオ-プソイドウリジン、5-ヒドロキシ-ウリジン(hoU)、5-アミノアリル-ウリジン、5-ハロ-ウリジン(例えば5-ヨード-ウリジンまたは5-ブロモ-ウリジン)、ウリジン5-オキシ酢酸(cmoU)、ウリジン5-オキシ酢酸メチルエステル(mcmoU)、5-カルボキシメチル-ウリジン(cmU)、1-カルボキシメチル-プソイドウリジン、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジン(chmU)、5-カルボキシヒドロキシメチル-ウリジンメチルエステル(mchmU)、5-メトキシカルボニルメチル-ウリジン(mcmU)、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオ-ウリジン(mcmU)、5-アミノメチル-2-チオ-ウリジン(nmU)、5-メチルアミノメチル-ウリジン(mnmU)、1-エチル-プソイドウリジン、5-メチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(mnmU)、5-メチルアミノメチル-2-セレノ-ウリジン(mnmseU)、5-カルバモイルメチル-ウリジン(ncmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウリジン(cmnmU)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン(cmnmU)、5-プロピニル-ウリジン、1-プロピニル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-ウリジン(τmU)、1-タウリノメチル-プソイドウリジン、5-タウリノメチル-2-チオ-ウリジン(τm5s2U)、1-タウリノメチル-4-チオ-プソイドウリジン、5-メチル-2-チオ-ウリジン(mU)、1-メチル-4-チオ-プソイドウリジン(mΨ)、4-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、3-メチル-プソイドウリジン(mΨ)、2-チオ-1-メチル-プソイドウリジン、1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、2-チオ-1-メチル-1-デアザ-プソイドウリジン、ジヒドロウリジン(D)、ジヒドロプソイドウリジン、5,6-ジヒドロウリジン、5-メチル-ジヒドロウリジン(mD)、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-ジヒドロプソイドウリジン、2-メトキシ-ウリジン、2-メトキシ-4-チオ-ウリジン、4-メトキシ-プソイドウリジン、4-メトキシ-2-チオ-プソイドウリジン、N1-メチル-プソイドウリジン、3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウリジン(acpU)、1-メチル-3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)プソイドウリジン(acpΨ)、5-(イソペンテニルアミノメチル)ウリジン(inmU)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2-チオ-ウリジン(inmU)、α-チオ-ウリジン、2’-O-メチル-ウリジン(Um)、5,2’-O-ジメチル-ウリジン(mUm)、2’-O-メチル-プソイドウリジン(Ψm)、2-チオ-2’-O-メチル-ウリジン(sUm)、5-メトキシカルボニルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(mcmUm)、5-カルバモイルメチル-2’-O-メチル-ウリジン(ncmUm)、5-カルボキシメチルアミノメチル-2’-O-メチル-ウリジン(cmnmUm)、3,2’-O-ジメチル-ウリジン(mUm)、5-(イソペンテニルアミノメチル)-2’-O-メチル-ウリジン(inmUm)、1-チオ-ウリジン、デオキシチミジン、2’-F-アラ-ウリジン、2’-F-ウリジン、2’-OH-アラ-ウリジン、5-(2-カルボメトキシビニル)ウリジン、および5-[3-(1-E-プロペニルアミノ)ウリジンからなる群より選択される。特に好ましい一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドは、プソイドウリジン(ψ)、N1-メチルプソイドウリジン(m1ψ)または5-メチルウリジン(m5U)、特にN1-メチルプソイドウリジンである。
一実施形態では、修飾核酸塩基を含むヌクレオシドによる1つ以上のウリジンの置換は、ウリジンの少なくとも1%、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも75%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%の置換を含む。
T7 RNAポリメラーゼを使用したインビトロ転写(IVT)によるmRNAの合成中、酵素の通常とは異なる活性のために二本鎖RNA(dsRNA)を含む有意な量の異常な産物が産生される。dsRNAは、炎症性サイトカインを誘導し、エフェクタ酵素を活性化してタンパク質合成の阻害をもたらす。dsRNAは、例えば、非多孔質または多孔質C-18ポリスチレン-ジビニルベンゼン(PS-DVB)マトリックスを使用するイオン対逆相HPLCによって、IVT RNAなどのRNAから除去することができる。あるいは、ssRNAではなくdsRNAを特異的に加水分解し、それによってIVT RNA調製物からdsRNA夾雑物を除去する大腸菌RNaseIIIを用いた酵素ベースの方法を使用することができる。さらに、セルロース材料を使用することによってdsRNAをssRNAから分離することができる。一実施形態では、RNA調製物をセルロース材料と接触させ、dsRNAのセルロース材料への結合を可能にし、ssRNAのセルロース材料への結合を許容しない条件下で、ssRNAをセルロース材料から分離する。
「除去する」または「除去」は、この用語が本明細書で使用される場合、dsRNAなどの第2の物質の集団の近傍から分離されている、非免疫原性RNAなどの第1の物質の集団の特徴を指し、第1の物質の集団は必ずしも第2の物質を欠くわけではなく、第2の物質の集団は必ずしも第1の物質を欠くわけではない。しかしながら、第2の物質の集団の除去を特徴とする第1の物質の集団は、第1の物質と第2の物質との分離されていない混合物と比較して、第2の物質の含有量が測定可能に低い。
一実施形態では、非免疫原性RNAからのdsRNAの除去は、非免疫原性RNA組成物中のRNAの10%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.3%未満、または0.1%未満がdsRNAであるようなdsRNAの除去を含む。一実施形態では、非免疫原性RNAは、dsRNAを含まないか、または本質的に含まない。いくつかの実施形態では、非免疫原性RNA組成物は、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物を含む。例えば、いくつかの実施形態では、一本鎖ヌクレオシド修飾RNAの精製調製物は、二本鎖RNA(dsRNA)を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、精製調製物は、他の全ての核酸分子(DNA、dsRNAなど)と比較して、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、少なくとも99.5%、または少なくとも99.9%の一本鎖ヌクレオシド修飾RNAである。
一実施形態では、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAよりも効率的に細胞内で翻訳される。一実施形態では、翻訳は、その非修飾対応物と比較して2倍増強される。一実施形態では、翻訳は3倍増強される。一実施形態では、翻訳は4倍増強される。一実施形態では、翻訳は5倍増強される。一実施形態では、翻訳は6倍増強される。一実施形態では、翻訳は7倍増強される。一実施形態では、翻訳は8倍増強される。一実施形態では、翻訳は9倍増強される。一実施形態では、翻訳は10倍増強される。一実施形態では、翻訳は15倍増強される。一実施形態では、翻訳は20倍増強される。一実施形態では、翻訳は50倍増強される。一実施形態では、翻訳は100倍増強される。一実施形態では、翻訳は200倍増強される。一実施形態では、翻訳は500倍増強される。一実施形態では、翻訳は1000倍増強される。一実施形態では、翻訳は2000倍増強される。一実施形態では、倍数は10~1000倍である。一実施形態では、倍数は10~100倍である。一実施形態では、倍数は10~200倍である。一実施形態では、倍数は10~300倍である。一実施形態では、倍数は10~500倍である。一実施形態では、倍数は20~1000倍である。一実施形態では、倍数は30~1000倍である。一実施形態では、倍数は50~1000倍である。一実施形態では、倍数は100~1000倍である。一実施形態では、倍数は200~1000倍である。一実施形態では、翻訳は、任意の他の有意な量または量の範囲だけ増強される。
一実施形態では、非免疫原性RNAは、同じ配列を有する標準RNAよりも有意に低い自然免疫原性を示す。一実施形態では、非免疫原性RNAは、その非修飾対応物よりも2倍低い自然免疫応答を示す。一実施形態では、自然免疫原性は3倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は4倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は5倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は6倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は7倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は8倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は9倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は10倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は15倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は20倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は50倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は100倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は200倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は500倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は1000倍低下する。一実施形態では、自然免疫原性は2000倍低下する。
「有意に低い自然免疫原性を示す」という用語は、自然免疫原性の検出可能な低下を指す。一実施形態では、この用語は、検出可能な自然免疫応答を誘発することなく有効量の非免疫原性RNAを投与することができるような低下を指す。一実施形態では、この用語は、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の産生を検出可能に減少させるのに十分な自然免疫応答を誘発することなく非免疫原性RNAを繰り返し投与することができるような低下を指す。一実施形態では、低下は、非免疫原性RNAによってコードされるタンパク質の検出可能な産生を排除するのに十分な自然免疫応答を誘発することなく非免疫原性RNAを繰り返し投与することができるようなものである。
「免疫原性」は、RNAなどの異物がヒトまたは他の動物の体内で免疫応答を引き起こす能力である。自然免疫系は、比較的非特異的で即時的な免疫系の成分である。これは、適応免疫系と共に、脊椎動物免疫系の2つの主要成分のうちの1つである。
本明細書で使用される場合、「内因性」は、生物、細胞、組織または系からの、またはそれらの内部で産生される任意の物質を指す。
本明細書で使用される場合、「外因性」という用語は、生物、細胞、組織または系から導入されるか、またはそれらの外部で産生される任意の物質を指す。
コドン最適化/G/C含有量の増加
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列は、コドン最適化されたコード配列および/またはそのG/C含有量が野生型コード配列と比較して増加しているコード配列によってコードされる。これはまた、コード配列の1つ以上の配列領域がコドン最適化されており、および/または野生型コード配列の対応する配列領域と比較してG/C含有量が増加している実施形態を含む。一実施形態では、コドン最適化および/またはG/C含有量の増加は、好ましくはコードされるアミノ酸配列の配列を変化させない。
「コドン最適化された」という用語は、好ましくは核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を改変することなく、宿主生物の典型的なコドン使用頻度を反映するための核酸分子のコード領域中のコドンの改変を指す。本発明の文脈内で、コード領域は、好ましくは、本明細書に記載のRNA分子を使用して治療される対象における最適な発現のためにコドン最適化される。コドン最適化は、翻訳効率が、細胞におけるtRNAの出現の異なる頻度によっても決定されるという所見に基づく。したがって、RNAの配列は、頻繁に生じるtRNAが利用可能であるコドンが「希少コドン」の代わりに挿入されるように改変され得る。
本発明のいくつかの実施形態では、本明細書に記載のRNAのコード領域のグアノシン/シトシン(G/C)含有量は、野生型RNAの対応するコード配列のG/C含有量と比較して増加しており、RNAによってコードされるアミノ酸配列は、好ましくは野生型RNAによってコードされるアミノ酸配列と比較して改変されていない。RNA配列のこの改変は、翻訳される任意のRNA領域の配列がそのmRNAの効率的な翻訳のために重要であるという事実に基づく。G(グアノシン)/C(シトシン)含有量が増加した配列は、A(アデノシン)/U(ウラシル)含有量が増加した配列よりも安定である。いくつかのコドンが全く同じアミノ酸をコードする(いわゆる遺伝暗号の縮重)という事実に関して、安定性のために最も好ましいコドンを決定することができる(いわゆる代替コドン使用頻度)。RNAによってコードされるアミノ酸に応じて、RNA配列の修飾には、その野生型配列と比較して様々な可能性がある。特に、Aおよび/またはUヌクレオチドを含むコドンは、これらのコドンを、同じアミノ酸をコードするがAおよび/もしくはUを含まないかまたはより低い含有量のAおよび/もしくはUヌクレオチドを含む他のコドンで置換することによって改変することができる。
様々な実施形態では、本明細書に記載のRNAのコード領域のG/C含有量は、野生型RNAのコード領域のG/C含有量と比較して、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、またはさらにそれ以上増加している。
核酸含有粒子
本明細書に記載のRNAなどの核酸は、粒子として製剤化されて投与され得る。
本開示の文脈において、「粒子」という用語は、分子または分子複合体によって形成される構造化された実体に関する。一実施形態では、「粒子」という用語は、媒体中に分散したマイクロサイズまたはナノサイズの緻密な構造体などのマイクロサイズまたはナノサイズの構造体に関する。一実施形態では、粒子は、DNA、RNAまたはそれらの混合物を含む粒子などの核酸含有粒子である。
ポリマーおよび脂質などの正に帯電した分子と負に帯電した核酸との間の静電相互作用は、粒子形成に関与する。これは、核酸粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。一実施形態では、核酸粒子はナノ粒子である。
本開示で使用される場合、「ナノ粒子」は、非経口投与に適した平均直径を有する粒子を指す。
「核酸粒子」を使用して、目的の標的部位(例えば細胞、組織、器官など)に核酸を送達することができる。核酸粒子は、少なくとも1つのカチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質、プロタミンなどの少なくとも1つのカチオン性ポリマー、またはそれらの混合物および核酸から形成され得る。核酸粒子には、脂質ナノ粒子(LNP)ベースおよびリポプレックス(LPX)ベースの製剤が含まれる。
いかなる理論にも拘束されることを意図するものではないが、カチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質および/またはカチオン性ポリマーは、核酸と一緒になって凝集体を形成し、この凝集はコロイド的に安定な粒子をもたらすと考えられる。
一実施形態では、本明細書に記載の粒子は、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の少なくとも1つの脂質または脂質様物質、カチオン性ポリマー以外の少なくとも1つのポリマー、またはそれらの混合物をさらに含む。
いくつかの実施形態では、核酸粒子は2種類以上の核酸分子を含み、核酸分子の分子パラメータは、モル質量または基本的な構造要素、例えば分子構造、キャッピング、コード領域もしくは他の特徴に関するように、互いに類似し得るかまたは異なり得る。
本明細書に記載の核酸粒子は、一実施形態では、約30nm~約1000nm、約50nm~約800nm、約70nm~約600nm、約90nm~約400nm、または約100nm~約300nmの範囲の平均直径を有し得る。
本明細書に記載の核酸粒子は、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、または約0.2以下の多分散指数を示し得る。例として、核酸粒子は、約0.1~約0.3または約0.2~約0.3の範囲の多分散指数を示し得る。
RNA脂質粒子に関して、N/P比は、脂質中の窒素基対RNA中のリン酸基の数の比を与える。窒素原子(pHに依存する)は通常正に帯電し、リン酸基は負に帯電するので、これは電荷比と相関する。電荷平衡が存在する場合、N/P比はpHに依存する。正に帯電したナノ粒子はトランスフェクションに有利であると考えられているので、脂質製剤は、4より大きく12までのN/P比で形成されることが多い。その場合、RNAはナノ粒子に完全に結合していると見なされる。
本明細書に記載の核酸粒子は、少なくとも1つのカチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質および/または少なくとも1つのカチオン性ポリマーからコロイドを得る工程、ならびにコロイドを核酸と混合して核酸粒子を得る工程を含み得る広範囲の方法を使用して調製することができる。
本明細書で使用される「コロイド」という用語は、分散した粒子が沈降しない均一な混合物の一種に関する。混合物中の不溶性粒子は微視的であり、粒径は1~1000ナノメートルである。混合物は、コロイドまたはコロイド懸濁液と呼ばれ得る。「コロイド」という用語は、混合物中の粒子のみを指し、懸濁液全体を指すのではない場合がある。
少なくとも1つのカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質および/または少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含むコロイドの調製のために、リポソーム小胞を調製するために従来使用され、適切に適合された方法が本明細書で適用可能である。リポソーム小胞を調製するために最も一般的に使用される方法は、以下の基本的段階を共有する:(i)有機溶媒中での脂質溶解、(ii)得られた溶液の乾燥、および(iii)乾燥した脂質の水和(様々な水性媒体を使用して)。
膜水和法では、脂質を最初に適切な有機溶媒に溶解し、乾燥させてフラスコの底部に薄膜を得る。得られた脂質膜を、適切な水性媒体を用いて水和して、リポソーム分散液を得る。さらに、さらなる小型化工程が含まれてもよい。
逆相蒸発は、水相と脂質を含有する有機相との間の油中水型エマルジョンの形成を含む、リポソーム小胞を調製するための膜水和の代替方法である。この混合物の短時間の超音波処理は、系の均質化のために必要である。減圧下での有機相の除去により、その後リポソーム懸濁液に変わる乳白色のゲルが得られる。
「エタノール注入技術」という用語は、脂質を含むエタノール溶液が針を通して水溶液に迅速に注入されるプロセスを指す。この作用は、溶液全体に脂質を分散させ、脂質構造体形成、例えばリポソーム形成などの脂質小胞形成を促進する。一般に、本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、コロイド状リポソーム分散液にRNAを添加することによって得られる。エタノール注入技術を使用して、そのようなコロイド状リポソーム分散液は、一実施形態では、以下のように形成される:カチオン性脂質およびさらなる脂質などの脂質を含むエタノール溶液を、撹拌しながら水溶液に注入する。一実施形態では、本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、押出工程なしで得られる。
「押し出す」または「押出」という用語は、固定された断面プロファイルを有する粒子の作製を指す。特に、この用語は粒子の小型化を指し、それによって粒子は規定された細孔を有するフィルタを通過することを強いられる。
有機溶媒を含まない特性を有する他の方法もまた、コロイドを調製するために本開示に従って使用され得る。
LNPは、典型的には4つの成分:イオン化可能なカチオン性脂質、リン脂質などの中性脂質、コレステロールなどのステロイド、およびポリエチレングリコール(PEG)-脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。各成分はペイロード保護を担い、有効な細胞内送達を可能にする。LNPは、エタノールに溶解した脂質を水性緩衝液中で核酸と迅速に混合することによって調製され得る。
「平均直径」という用語は、長さの次元を有するいわゆるZ平均、および無次元である多分散指数(PI)を結果として提供する、いわゆるキュムラントアルゴリズムを使用したデータ分析を伴う動的レーザー光散乱(DLS)によって測定される粒子の平均流体力学的直径を指す(Koppel,D.,J.Chem.Phys.57,1972,pp 4814-4820,ISO 13321)。ここで、粒子の「平均直径」、「直径」または「サイズ」は、このZ平均の値と同義で使用される。
「多分散指数」は、「平均直径」の定義で言及されているように、好ましくは、いわゆるキュムラント解析による動的光散乱測定に基づいて計算される。特定の前提条件下では、これは、ナノ粒子の集合体のサイズ分布の尺度と見なすことができる。
様々な種類の核酸含有粒子が微粒子形態の核酸の送達に適することが以前に記載されている(例えばKaczmarek,J.C.et al.,2017,Genome Medicine 9,60)。非ウイルス核酸送達ビヒクルの場合、核酸のナノ粒子封入は、核酸を分解から物理的に保護し、特定の化学的性質に応じて、細胞取り込みおよびエンドソーム脱出を助けることができる。
本開示は、核酸、少なくとも1つのカチオン性もしくはカチオンにイオン化可能な脂質もしくは脂質様物質、および/または核酸と会合して核酸粒子を形成する少なくとも1つのカチオン性ポリマーを含む粒子、ならびにそのような粒子を含む組成物を記載する。核酸粒子は、非共有結合相互作用によって様々な形態で粒子に複合体化される核酸を含み得る。本明細書に記載の粒子は、ウイルス粒子、特に感染性ウイルス粒子ではない、すなわち、それらは細胞にウイルス感染することができない。
適切なカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質およびカチオン性ポリマーは、核酸粒子を形成するものであり、「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語に含まれる。「粒子形成成分」または「粒子形成剤」という用語は、核酸と会合して核酸粒子を形成する任意の成分に関する。そのような成分は、核酸粒子の一部であり得る任意の成分を含む。
粒子製剤では、各RNA種(例えば、IL2免疫賦活剤をコードするRNAおよびIL7免疫賦活剤をコードするRNA)を個々の粒子製剤として別々に製剤化することが可能である。その場合、個々の粒子製剤はそれぞれ1つのRNA種を含む。個々の粒子製剤は、別個の実体として、例えば別個の容器中に存在し得る。そのような製剤は、粒子形成剤と一緒に各RNA種を別々に(典型的にはそれぞれRNA含有溶液の形態で)提供し、それにより粒子の形成を可能にすることによって得られる。それぞれの粒子は、粒子が形成されるときに提供される特定のRNA種のみを含む(個々の粒子製剤)。一実施形態では、医薬組成物などの組成物は、複数の個々の粒子製剤を含む。それぞれの医薬組成物は、混合粒子製剤と呼ばれる。本発明による混合粒子製剤は、上記のように、個々の粒子製剤を別々に形成し、続いて個々の粒子製剤を混合する工程によって得られる。混合する工程により、RNA含有粒子の混合集団を含む製剤が得られる(例示のために、例えば、粒子の第1の集団は、IL2免疫賦活剤をコードするRNAを含み得、粒子の第2の製剤は、IL7免疫賦活剤をコードするRNAを含み得る)。個々の粒子集団は、個々の粒子製剤の混合集団を含む1つの容器に一緒に存在し得る。あるいは、医薬組成物の全てのRNA種(例えば、IL2免疫賦活剤をコードするRNAおよびIL7免疫賦活剤をコードするRNA)を組み合わせた粒子製剤として一緒に製剤化することが可能である。そのような製剤は、粒子形成剤と共に全てのRNA種の組合せ製剤(典型的には組合せ溶液)を提供し、それにより粒子の形成を可能にすることによって得られる。混合粒子製剤とは対照的に、組合せ粒子製剤は、典型的には複数のRNA種を含有する粒子を含む。組合せ粒子組成物では、異なるRNA種が、典型的には単一の粒子中に一緒に存在する。
カチオン性ポリマー
ポリマーは、それらの高度な化学的柔軟性を考慮して、ナノ粒子ベースの送達のために一般的に使用される材料である。典型的には、カチオン性ポリマーは、負に帯電した核酸をナノ粒子に静電的に凝縮するために使用される。これらの正に帯電した基は、多くの場合、5.5~7.5のpH範囲でプロトン化の状態を変化させるアミンからなり、エンドソーム破裂をもたらすイオンの不均衡につながると考えられる。ポリ-L-リジン、ポリアミドアミン、プロタミンおよびポリエチレンイミンなどのポリマー、ならびにキトサンなどの天然に存在するポリマーは全て核酸送達に適用されており、本明細書におけるカチオン性ポリマーとして適している。さらに、一部の研究者は、特に核酸送達のためのポリマーを合成した。ポリ(β-アミノエステル)は、特に、その合成の容易さと生分解性のために核酸送達において広く使用されている。そのような合成ポリマーは、本明細書におけるカチオン性ポリマーとしても適している。
本明細書で使用される「ポリマー」は、その通常の意味、すなわち、共有結合によって連結された1つ以上の繰り返し単位(モノマー)を含む分子構造体という意味を与えられる。繰り返し単位は、全て同一であってもよく、または場合によっては、ポリマー内に複数の種類の繰り返し単位が存在してもよい。場合によっては、ポリマーは生物学的に誘導される、すなわちタンパク質などの生体高分子である。場合によっては、さらなる部分、例えば本明細書に記載されるような標的化部分もポリマー中に存在し得る。
複数の種類の繰り返し単位がポリマー内に存在する場合、そのポリマーは「コポリマー」であると言われる。本明細書で使用されるポリマーはコポリマーであり得ることが理解されるべきである。コポリマーを形成する繰り返し単位は、任意の方法で配置され得る。例えば、繰り返し単位は、ランダムな順序で、交互の順序で、または「ブロック」コポリマーとして、すなわちそれぞれが第1の繰り返し単位(例えば第1のブロック)を含む1つ以上の領域、およびそれぞれが第2の繰り返し単位(例えば第2のブロック)を含む1つ以上の領域、等を含むように配置され得る。ブロックコポリマーは、2つ(ジブロックコポリマー)、3つ(トリブロックコポリマー)、またはそれ以上の数の別個のブロックを有することができる。
特定の実施形態では、ポリマーは生体適合性である。生体適合性ポリマーは、典型的には中程度の濃度で有意な細胞死をもたらさないポリマーである。特定の実施形態では、生体適合性ポリマーは生分解性であり、すなわち、ポリマーは、体内などの生理学的環境内で、化学的および/または生物学的に分解することができる。
特定の実施形態では、ポリマーは、プロタミンまたはポリアルキレンイミン、特にプロタミンであり得る。
「プロタミン」という用語は、アルギニンに富み、(魚のような)様々な動物の精子細胞中で体細胞ヒストンの代わりに特にDNAと会合して見出される、比較的低分子量の様々な強塩基性タンパク質のいずれかを指す。特に、「プロタミン」という用語は、強塩基性で、水に可溶性であり、熱によって凝固せず、加水分解時に主にアルギニンを生成する、魚の精子に見出されるタンパク質を指す。精製形態では、それらは、インスリンの長時間作用型製剤において、ヘパリンの抗凝固作用を中和するために使用される。
本開示によれば、本明細書で使用される「プロタミン」という用語は、天然源または生物源から得られるまたはそれに由来する任意のプロタミンアミノ酸配列およびその断片、および前記アミノ酸配列またはその断片の多量体形態、ならびに人工の、特定の目的のために特別に設計された、天然源または生物源から単離することができない(合成された)ポリペプチドを含むことが意図されている。
一実施形態では、ポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミンおよび/またはポリプロピレンイミン、好ましくはポリエチレンイミンを含む。好ましいポリアルキレンイミンはポリエチレンイミン(PEI)である。PEIの平均分子量は、好ましくは0.75×10~10Da、好ましくは1000~10Da、より好ましくは10000~40000Da、より好ましくは15000~30000Da、さらにより好ましくは20000~25000Daである。
本開示によれば、直鎖状ポリエチレンイミン(PEI)などの直鎖状ポリアルキレンイミンが好ましい。
本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマー(ポリカチオン性ポリマーを含む)には、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性ポリマーが含まれる。一実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性ポリマーは、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化された小胞を形成することによって、核酸が会合することができる任意のカチオン性ポリマーを含む。
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性ポリマー以外のポリマー、すなわち非カチオン性ポリマーおよび/またはアニオン性ポリマーを含み得る。集合的に、アニオン性および中性ポリマーは、本明細書では非カチオン性ポリマーと呼ばれる。
脂質および脂質様物質
「脂質」および「脂質様物質」という用語は、本明細書では、1つ以上の疎水性部分または基、および任意で1つ以上の親水性部分または基も含む分子として広く定義される。疎水性部分および親水性部分を含む分子はまた、しばしば両親媒性物質として示される。脂質は通常、水に難溶性である。水性環境では、両親媒性の性質は、分子が組織化された構造体と様々な相とに自己集合することを可能にする。それらの相の1つは、それらが水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜中に存在する場合、脂質二重層からなる。疎水性は、長鎖飽和および不飽和脂肪族炭化水素基、ならびに1つ以上の芳香族、脂環式、または複素環式基で置換されたそのような基を含むがこれらに限定されない無極性基を含むことによって付与され得る。親水性基は、極性基および/または荷電基を含み得、炭水化物、リン酸基、カルボン酸基、硫酸基、アミノ基、スルフヒドリル基、ニトロ基、ヒドロキシル基、および他の同様の基を含む。
本明細書で使用される場合、「両親媒性」という用語は、極性部分と非極性部分の両方を有する分子を指す。多くの場合、両親媒性化合物は、長い疎水性尾部に結合した極性頭部を有する。いくつかの実施形態では、極性部分は水に可溶性であるが、非極性部分は水に不溶性である。さらに、極性部分は、形式正電荷または形式負電荷のいずれかを有し得る。あるいは、極性部分は、形式正電荷と形式負電荷の両方を有してもよく、双性イオンまたは内部塩であってもよい。本開示の目的のために、両親媒性化合物は、1つ以上の天然または非天然脂質および脂質様化合物であり得るが、これらに限定されない。
「脂質様物質」、「脂質様化合物」または「脂質様分子」という用語は、構造的および/または機能的に脂質に関連するが、厳密な意味で脂質とは見なされ得ない物質に関する。例えば、この用語は、水性環境で小胞、多層/単層リポソーム、または膜中に存在する場合に両親媒性層を形成することができる化合物を含み、界面活性剤、または親水性部分と疎水性部分の両方を有する合成化合物を含む。一般的に言えば、この用語は、脂質の構造と類似していても類似していなくてもよい、異なる構造組織を有する親水性部分と疎水性部分とを含む分子を指す。本明細書で使用される場合、「脂質」という用語は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈上明らかに矛盾しない限り、脂質および脂質様物質の両方を包含すると解釈されるべきである。
両親媒性層に含まれ得る両親媒性化合物の具体的な例としては、リン脂質、アミノ脂質およびスフィンゴ脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
特定の実施形態では、両親媒性化合物は脂質である。「脂質」という用語は、水に不溶性であるが、多くの有機溶媒に可溶性であることを特徴とする有機化合物の群を指す。一般に、脂質は、8つのカテゴリ:脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、ポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する)、ステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)に分けられ得る。「脂質」という用語は時に脂肪の同義語として使用されるが、脂肪はトリグリセリドと呼ばれる脂質のサブグループである。脂質はまた、脂肪酸およびその誘導体(トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、およびリン脂質を含む)などの分子、ならびにコレステロールなどのステロール含有代謝物を包含する。
脂肪酸、または脂肪酸残基は、末端がカルボン酸基である炭化水素鎖からなる多様な分子の群である;この配置は、分子に、極性の親水性末端と水に不溶性の非極性の疎水性末端とを付与する。典型的には4~24炭素長である炭素鎖は、飽和であっても不飽和であってもよく、酸素、ハロゲン、窒素、および硫黄を含む官能基に結合していてもよい。脂肪酸が二重結合を含む場合、シスまたはトランス幾何異性のいずれかの可能性があり、これは分子の立体配置に有意に影響を及ぼす。シス二重結合は脂肪酸鎖を屈曲させ、これは、鎖中のより多くの二重結合と組み合わされる影響である。脂肪酸カテゴリにおける他の主要な脂質クラスは、脂肪酸エステルおよび脂肪酸アミドである。
グリセロ脂質は、一置換、二置換、および三置換グリセロールから構成され、最もよく知られているのは、トリグリセリドと呼ばれるグリセロールの脂肪酸トリエステルである。「トリアシルグリセロール」という語は、「トリグリセリド」と同義に使用されることがある。これらの化合物では、グリセロールの3つのヒドロキシル基はそれぞれ、典型的には異なる脂肪酸によってエステル化されている。グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシド結合を介してグリセロールに結合した1つ以上の糖残基の存在を特徴とする、グリコシルグリセロールによって代表される。
グリセロリン脂質は、エステル結合によって2つの脂肪酸由来の「尾部」に、およびリン酸エステル結合によって1つの「頭部」基に結合したグリセロールコアを含む両親媒性分子(疎水性領域と親水性領域の両方を含む)である。通常リン脂質と呼ばれる(スフィンゴミエリンもリン脂質として分類されるが)グリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC、GPChoまたはレシチンとしても公知)、ホスファチジルエタノールアミン(PEまたはGPEtn)、およびホスファチジルセリン(PSまたはGPSer)である。
スフィンゴ脂質は、スフィンゴイド塩基骨格という共通の構造的特徴を共有する化合物の複雑なファミリーである。哺乳動物における主要なスフィンゴイド塩基は、一般にスフィンゴシンと呼ばれる。セラミド(N-アシル-スフィンゴイド塩基)は、アミド結合脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。脂肪酸は、典型的には、16~26個の炭素原子の鎖長を有する飽和または一不飽和である。哺乳動物の主要なスフィンゴリン脂質はスフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であるが、昆虫は主にセラミドホスホエタノールアミンを含有し、真菌はフィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有頭部基を有する。スフィンゴ糖脂質は、グリコシド結合を介してスフィンゴイド塩基に結合した1つ以上の糖残基から構成される分子の多様なファミリーである。これらの例は、セレブロシドおよびガングリオシドなどの単純なおよび複雑なスフィンゴ糖脂質である。
コレステロールおよびその誘導体、またはトコフェロールおよびその誘導体などのステロール脂質は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンと共に膜脂質の重要な成分である。
サッカロ脂質は、脂肪酸が糖骨格に直接連結され、膜二重層と適合性である構造を形成する化合物を表す。サッカロ脂質では、単糖が、グリセロ脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール骨格と置き換わる。最もよく知られているサッカロ脂質は、グラム陰性菌のリポ多糖のリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。典型的なリピドA分子は、7本もの脂肪アシル鎖で誘導体化されている、グルコサミンの二糖である。大腸菌での増殖に必要な最小限のリポ多糖は、2つの3-デオキシ-D-マンノ-オクツロソン酸(Kdo)残基でグリコシル化されたグルコサミンのヘキサアシル化二糖である、Kdo2-リピドAである。
ポリケチドは、古典的な酵素、ならびに脂肪酸シンターゼと機構的特徴を共有する反復およびマルチモジュラー酵素によるアセチルおよびプロピオニルサブユニットの重合によって合成される。それらは、動物、植物、細菌、真菌および海洋源からの多数の二次代謝物および天然産物を含み、大きな構造的多様性を有する。多くのポリケチドは、その骨格がグリコシル化、メチル化、ヒドロキシル化、酸化、または他のプロセスによってさらに修飾されることが多い環状分子である。
本開示によれば、脂質および脂質様物質は、カチオン性、アニオン性または中性であり得る。中性脂質または脂質様物質は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在する。
カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質
本明細書に記載の核酸粒子は、粒子形成剤として少なくとも1つのカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含み得る。本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、核酸に静電的に結合することができる任意のカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む。一実施形態では、本明細書での使用が企図されるカチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、例えば核酸と複合体を形成することによって、または核酸が封入もしくはカプセル化された小胞を形成することによって、核酸と会合することができる。
本明細書で使用される場合、「カチオン性脂質」または「カチオン性脂質様物質」は、正味の正電荷を有する脂質または脂質様物質を指す。カチオン性脂質または脂質様物質は、静電相互作用によって負に帯電した核酸に結合する。一般に、カチオン性脂質は、ステロール、アシル鎖、ジアシル鎖またはそれ以上のアシル鎖などの親油性部分を有し、脂質の頭部基は、典型的には正電荷を担持する。
特定の実施形態では、カチオン性脂質または脂質様物質は、特定のpH、特に酸性pHでのみ正味の正電荷を有するが、生理学的pHなどの異なる、好ましくはより高いpHでは、好ましくは正味の正電荷を有さず、好ましくは電荷を有さず、すなわち中性である。このイオン化可能な挙動は、生理学的pHでカチオン性のままである粒子と比較して、エンドソーム脱出を助け、毒性を低減することによって有効性を高めると考えられる。
本開示の目的のために、そのような「カチオンにイオン化可能な」脂質または脂質様物質は、状況と矛盾しない限り、「カチオン性脂質または脂質様物質」という用語に含まれる。
一実施形態では、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質は、正に帯電しているかまたはプロトン化され得る少なくとも1つの窒素原子(N)を含む頭部基を含む。
カチオン性脂質の例としては、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP);N,N-ジメチル-2,3-ジオレイルオキシプロピルアミン(DODMA)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)、3-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエタン)カルバモイル)コレステロール(DC-Chol)、ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDAB);1,2-ジオレオイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP);1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン;ジオクタデシルジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、1,2-ジステアリルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DSDMA)、2,3-ジ(テトラデコキシ)プロピル-(2-ヒドロキシエチル)ジメチルアザニウム(DMRIE)、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DMEPC)、l,2-ジミリストイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DMTAP)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、および2,3-ジオレオイルオキシ-N-[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]-N,N-ジメチル-l-プロパナミウムトリフルオロアセテート(DOSPA)、1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2-ジリノレニルオキシ-N,N-ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-ジメチルアミノ-2-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシブタン-4-オキシ)-1-(シス、シス-9,12-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CLinDMA)、2-[5’-(コレスト-5-エン-3-ベータ-オキシ)-3’-オキサペントキシ)-3-ジメチル-1-(シス、シス-9’,12’-オクタデカジエンオキシ)プロパン(CpLinDMA)、N,N-ジメチル-3,4-ジオレイルオキシベンジルアミン(DMOBA)、1,2-N,N’-ジオレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DOcarbDAP)、2,3-ジリノレオイルオキシ-N,N-ジメチルプロピルアミン(DLinDAP)、1,2-N,N’-ジリノレイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLincarbDAP)、1,2-ジリノレオイルカルバミル-3-ジメチルアミノプロパン(DLinCDAP)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノメチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-K-XTC2-DMA)、2,2-ジリノレイル-4-(2-ジメチルアミノエチル)-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA)、ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル-4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(DLin-MC3-DMA)、N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(DMRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(シス-9-テトラデセニルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMORIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DLRIE)、(±)-N-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(GAP-DMRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)-1-プロパナミニウムブロミド(βAE-DMRIE)、N-(4-カルボキシベンジル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(オレオイルオキシ)プロパン-1-アミニウム(DOBAQ)、2-({8-[(3β)-コレスト-5-エン-3-イルオキシ]オクチル}オキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-1-アミン(オクチル-CLinDMA)、1,2-ジミリストイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DMDAP)、1,2-ジパルミトイル-3-ジメチルアンモニウムプロパン(DPDAP)、N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノ-プロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-エチルホスホコリン(DOEPC)、2,3-ビス(ドデシルオキシ)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチルプロパン-1-アモニウムブロミド(DLRIE)、N-(2-アミノエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミニウムブロミド(DMORIE)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)8,8’-((((2(ジメチルアミノ)エチル)チオ)カルボニル)アザンジイル)ジオクタノエート(ATX)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(ドデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DLDMA)、N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシルオキシ)プロパン-1-アミン(DMDMA)、ジ((Z)-ノン-2-エン-1-イル)-9-((4-(ジメチルアミノブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319)、N-ドデシル-3-((2-ドデシルカルバモイル-エチル)-{2-[(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-2-{(2-ドデシルカルバモイル-エチル)-[2-(2-ドデシルカルバモイル-エチルアミノ)エチル]-アミノ}-エチルアミノ)プロピオンアミド(リピドイド98N12-5)、1-[2-[ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル-[2-[4-[2-[ビス(2ヒドロキシドデシル)アミノ]エチル]ピペラジン-1-イル]エチル]アミノ]ドデカン-2-オール(リピドイドC12-200)が挙げられるが、これらに限定されない。
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は、粒子中に存在する総脂質の約10モル%~約100モル%、約20モル%~約100モル%、約30モル%~約100モル%、約40モル%~約100モル%、または約50モル%~約100モル%を構成し得る。
さらなる脂質または脂質様物質
本明細書に記載の粒子はまた、カチオン性またはカチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質以外の脂質または脂質様物質、すなわち非カチオン性脂質または脂質様物質(非カチオンにイオン化可能な脂質または脂質様物質を含む)を含み得る。集合的に、アニオン性および中性脂質または脂質様物質は、本明細書では非カチオン性脂質または脂質様物質と呼ばれる。イオン化可能/カチオン性脂質または脂質様物質に加えて、コレステロールおよび脂質などの他の疎水性部分を添加することによって核酸粒子の製剤を最適化することにより、粒子の安定性および核酸送達の有効性を高め得る。
核酸粒子の全体的な電荷に影響を及ぼしても及ぼさなくてもよいさらなる脂質または脂質様物質を組み込み得る。特定の実施形態では、さらなる脂質または脂質様物質は、非カチオン性脂質または脂質様物質である。非カチオン性脂質は、例えば、1つ以上のアニオン性脂質および/または中性脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「アニオン性脂質」は、選択されたpHで負に帯電している任意の脂質を指す。本明細書で使用される場合、「中性脂質」は、選択されたpHで非荷電または中性の双性イオン形態で存在するいくつかの脂質種のいずれかを指す。好ましい実施形態では、さらなる脂質は、以下の中性脂質成分の1つを含む:(1)リン脂質;(2)コレステロールもしくはその誘導体;または(3)リン脂質とコレステロールもしくはその誘導体との混合物。コレステロール誘導体の例としては、コレスタノール、コレスタノン、コレステノン、コプロスタノール、コレステリル-2’-ヒドロキシエチルエーテル、コレステリル-4’-ヒドロキシブチルエーテル、トコフェロールおよびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
使用することができる特定のリン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルセリンまたはスフィンゴミエリンが挙げられるが、これらに限定されない。そのようなリン脂質としては、特に、ジアシルホスファチジルコリン、例えばジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジペンタデカノイルホスファチジルコリン、ジラウロイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジアラキドイルホスファチジルコリン(DAPC)、ジベヘノイルホスファチジルコリン(DBPC)、ジトリコサノイルホスファチジルコリン(DTPC)、ジリグノセロイルファチジルコリン(DLPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルコリン(POPC)、1,2-ジ-O-オクタデセニル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(18:0ジエーテルPC)、1-オレオイル-2-コレステリルヘミスクシノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(OChemsPC)、1-ヘキサデシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(C16 Lyso PC)およびホスファチジルエタノールアミン、特にジアシルホスファチジルエタノールアミン、例えばジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、ジステアロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、ジパルミトイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイル-ホスファチジルエタノールアミン(DMPE)、ジラウロイル-ホスファチジルエタノールアミン(DLPE)、ジフィタノイル-ホスファチジルエタノールアミン(DPyPE)、およびさらに様々な疎水性鎖を有するホスファチジルエタノールアミン脂質が挙げられる。
特定の好ましい実施形態では、さらなる脂質は、DSPC、またはDSPCとコレステロールである。
特定の実施形態では、核酸粒子は、カチオン性脂質とさらなる脂質の両方を含む。
一実施形態では、本明細書に記載の粒子は、ペグ化脂質などのポリマーコンジュゲート脂質を含む。「ペグ化脂質」という用語は、脂質部分とポリエチレングリコール部分の両方を含む分子を指す。ペグ化脂質は当技術分野で公知である。
理論に拘束されることを望むものではないが、少なくとも1つのさらなる脂質の量と比較した少なくとも1つのカチオン性脂質の量は、電荷、粒径、安定性、組織選択性、および核酸の生物活性などの重要な核酸粒子特性に影響を及ぼし得る。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質と少なくとも1つのさらなる脂質とのモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2または約3:1~約1:1である。
いくつかの実施形態では、非カチオン性脂質、特に中性脂質(例えば1つ以上のリン脂質および/またはコレステロール)は、粒子中に存在する総脂質の約0モル%~約90モル%、約0モル%~約80モル%、約0モル%~約70モル%、約0モル%~約60モル%、または約0モル%~約50モル%を構成し得る。
リポプレックス粒子
本開示の特定の実施形態では、本明細書に記載のRNAは、RNAリポプレックス粒子中に存在し得る。
本開示の文脈において、「RNAリポプレックス粒子」という用語は、脂質、特にカチオン性脂質、およびRNAを含有する粒子に関する。正に帯電したリポソームと負に帯電したRNAとの間の静電相互作用は、RNAリポプレックス粒子の複合体化および自発的形成をもたらす。正に帯電したリポソームは、一般に、DOTMAなどのカチオン性脂質、およびDOPEなどのさらなる脂質を使用して合成され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子はナノ粒子である。
特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、カチオン性脂質およびさらなる脂質の両方を含む。例示的な実施形態では、カチオン性脂質はDOTMAであり、さらなる脂質はDOPEである。
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約10:0~約1:9、約4:1~約1:2、または約3:1~約1:1である。特定の実施形態では、モル比は、約3:1、約2.75:1、約2.5:1、約2.25:1、約2:1、約1.75:1、約1.5:1、約1.25:1、または約1:1であり得る。例示的な実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質対少なくとも1つのさらなる脂質のモル比は、約2:1である。
本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子は、一実施形態では、約200nm~約1000nm、約200nm~約800nm、約250nm~約700nm、約400nm~約600nm、約300nm~約500nm、または約350nm~約400nmの範囲の平均直径を有する。特定の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約200nm、約225nm、約250nm、約275nm、約300nm、約325nm、約350nm、約375nm、約400nm、約425nm、約450nm、約475nm、約500nm、約525nm、約550nm、約575nm、約600nm、約625nm、約650nm、約700nm、約725nm、約750nm、約775nm、約800nm、約825nm、約850nm、約875nm、約900nm、約925nm、約950nm、約975nm、または約1000nmの平均直径を有する。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約250nm~約700nmの範囲の平均直径を有する。別の実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約300nm~約500nmの範囲の平均直径を有する。例示的な実施形態では、RNAリポプレックス粒子は、約400nmの平均直径を有する。
本明細書に記載のRNAリポプレックス粒子およびRNAリポプレックス粒子を含む組成物は、非経口投与後、特に静脈内投与後の標的組織へのRNAの送達に有用である。RNAリポプレックス粒子は、脂質のエタノール溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得るリポソームを使用して調製され得る。一実施形態では、水相は酸性pHを有する。一実施形態では、水相は、例えば約5mMの量の酢酸を含む。リポソームは、リポソームをRNAと混合することによってRNAリポプレックス粒子を調製するために使用され得る。一実施形態では、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は、少なくとも1つのカチオン性脂質および少なくとも1つのさらなる脂質を含む。一実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および/または1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)を含む。一実施形態では、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、コレステロール(Chol)および/または1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DOPC)を含む。一実施形態では、少なくとも1つのカチオン性脂質は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)を含み、少なくとも1つのさらなる脂質は、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。一実施形態では、リポソームおよびRNAリポプレックス粒子は、1,2-ジ-O-オクタデセニル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTMA)および1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)を含む。
脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子は、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的とするために使用し得ることが見出された。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓においてRNAを発現させるために使用され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現は、全く起こらないかまたは本質的に起こらない。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓ではプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞においてRNAを発現させるために使用され得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
脂質ナノ粒子(LNP)
一実施形態では、本明細書に記載のRNAなどの核酸は、脂質ナノ粒子(LNP)の形態で投与される。LNPは、1つ以上の核酸分子が結合している、または1つ以上の核酸分子が封入されている粒子を形成することができる任意の脂質を含み得る。
一実施形態では、LNPは、1つ以上のカチオン性脂質および1つ以上の安定化脂質を含む。安定化脂質は、中性脂質およびペグ化脂質を含む。
一実施形態では、LNPは、カチオン性脂質、中性脂質、ステロイド、ポリマーコンジュゲート脂質、および脂質ナノ粒子内に封入されるかまたは脂質ナノ粒子と会合したRNAを含む。
一実施形態では、LNPは、40~60モル%または50~60モル%のカチオン性脂質を含む。
一実施形態では、中性脂質は、5~15モル%、7~13モル%、または9~12モル%の範囲の濃度で存在する。
一実施形態では、ステロイドは、30~50モル%、または30~40モル%の範囲の濃度で存在する。
一実施形態では、LNPは、1~10モル%、1~5モル%、または1~2.5モル%のポリマーコンジュゲート脂質を含む。
一実施形態では、LNPは、40~60モル%のカチオン性脂質;5~15モル%の中性脂質;30~50モル%のステロイド;1~10モル%のポリマーコンジュゲート脂質;および脂質ナノ粒子内に封入されるかまたは脂質ナノ粒子と会合したRNAを含む。
一実施形態では、モルパーセントは、脂質ナノ粒子中に存在する脂質の総モルに基づいて決定される。
一実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPE、DOPG、DPPG、POPE、DPPE、DMPE、DSPE、およびSMからなる群より選択される。一実施形態では、中性脂質は、DSPC、DPPC、DMPC、DOPC、POPC、DOPEおよびSMからなる群より選択される。一実施形態では、中性脂質はDSPCである。
一実施形態では、ステロイドはコレステロールである。
一実施形態では、ポリマーコンジュゲート脂質はペグ化脂質である。一実施形態では、ペグ化脂質は、以下の構造:
Figure 2023554154000022
式中、nは、約50などの30~60の範囲の平均値を有する、
を有する。一実施形態では、ペグ化脂質はPEG2000-C-DMAである。
一実施形態では、LNPのカチオン性脂質成分は、以下の構造:
Figure 2023554154000023
を有する。
一実施形態では、カチオン性脂質は3D-P-DMAである。
いくつかの実施形態では、LNPは、3D-P-DMA、RNA、中性脂質、ステロイドおよびペグ化脂質を含む。いくつかの実施形態では、中性脂質はDSPCである。いくつかの実施形態では、ステロイドはコレステロールである。いくつかの実施形態では、ペグ化脂質はPEG2000-C-DMAである。
いくつかの実施形態では、3D-P-DMAは、LNP中に約40~約60モル%の量で存在する。一実施形態では、中性脂質は、LNP中に約5~約15モル%の量で存在する。一実施形態では、ステロイドは、LNP中に約30~約50モル%の量で存在する。一実施形態では、PEG2000-C-DMAなどのペグ化脂質は、LNP中に約1~約10モル%の量で存在する。
RNA標的化
本開示のいくつかの態様は、本明細書に開示されるRNA(例えば、ワクチンRNAまたは免疫賦活RNA)の標的化送達を含む。
一実施形態では、本開示は、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることを含む。投与されるRNAがワクチンRNAである場合、リンパ系、特に二次リンパ器官、より具体的には脾臓を標的とすることが特に好ましい。
一実施形態では、標的細胞は脾細胞である。一実施形態では、標的細胞は、脾臓におけるプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞である。一実施形態では、標的細胞は脾臓中の樹状細胞である。
「リンパ系」は、循環系の一部であり、リンパを運ぶリンパ管のネットワークを含む免疫系の重要な部分である。リンパ系は、リンパ器官、リンパ管の伝導ネットワーク、および循環リンパからなる。一次または中枢リンパ器官は、未成熟な前駆細胞からリンパ球を生成する。胸腺および骨髄は、一次リンパ器官を構成する。リンパ節および脾臓を含む二次または末梢リンパ器官は、成熟したナイーブリンパ球を維持し、適応免疫応答を開始する。
RNAは、RNAがカチオン性脂質および任意でさらなる脂質またはヘルパー脂質を含むリポソームに結合して、注射可能なナノ粒子製剤を形成する、いわゆるリポプレックス製剤によって脾臓に送達され得る。リポソームは、脂質のエタノール溶液を水または適切な水相に注入することによって得られ得る。RNAリポプレックス粒子は、リポソームをRNAと混合することによって調製され得る。脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2013/143683号に記載されている。正味の負電荷を有するRNAリポプレックス粒子は、脾臓組織または脾臓細胞、例えば抗原提示細胞、特に樹状細胞を選択的に標的とするために使用し得ることが見出された。したがって、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、脾臓においてRNAを発現させるために使用され得る。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、肺および/または肝臓におけるRNA蓄積および/またはRNA発現は、全く起こらないかまたは本質的に起こらない。一実施形態では、RNAリポプレックス粒子の投与後、脾臓ではプロフェッショナル抗原提示細胞などの抗原提示細胞におけるRNA蓄積および/またはRNA発現が起こる。したがって、本開示のRNAリポプレックス粒子は、そのような抗原提示細胞においてRNAを発現させるために使用され得る。一実施形態では、抗原提示細胞は、樹状細胞および/またはマクロファージである。
本開示のRNAリポプレックス粒子の電荷は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する電荷とRNAに存在する電荷との合計である。電荷比は、少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷との比である。少なくとも1つのカチオン性脂質に存在する正電荷とRNAに存在する負電荷との電荷比は、以下の式によって計算される:電荷比=[(カチオン性脂質濃度(モル))*(カチオン性脂質中の正電荷の総数)]/[(RNA濃度(モル))*(RNA中の負電荷の総数)]。
生理学的pHでの本明細書に記載の脾臓を標的とするRNAリポプレックス粒子は、好ましくは、約1.9:2~約1:2、または約1.6:2~約1:2、または約1.6:2~約1.1:2の正電荷対負電荷の電荷比などの正味の負電荷を有する。特定の実施形態では、生理学的pHでのRNAリポプレックス粒子中の正電荷対負電荷の電荷比は、約1.9:2.0、約1.8:2.0、約1.7:2.0、約1.6:2.0、約1.5:2.0、約1.4:2.0、約1.3:2.0、約1.2:2.0、約1.1:2.0、または約1:2.0である。
IL2および/またはIL7などの免疫賦活剤は、肝臓または肝臓組織へのRNAの選択的送達のための製剤中の免疫賦活剤をコードするRNAを対象に投与する工程によって対象に提供され得る。そのような標的器官または組織へのRNAの送達は、特に、大量の免疫賦活剤を発現することが望ましい場合、および/または免疫賦活剤の全身的な存在、特に有意な量での存在が望ましいもしくは必要とされる場合に好ましい。
RNA送達システムは、肝臓への固有の選択性を有する。これは、脂質ベースの粒子、カチオン性および中性ナノ粒子、特にリポソーム、ナノミセルおよびバイオコンジュゲート中の親油性リガンドなどの脂質ナノ粒子に関連する。肝臓蓄積は、肝血管系の不連続な性質または脂質代謝(リポソームおよび脂質もしくはコレステロールコンジュゲート)によって引き起こされる。
肝臓へのRNAのインビボ送達のために、薬物送達システムを使用して、その分解を防止することによってRNAを肝臓に輸送し得る。例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)被覆表面およびmRNA含有コアからなるポリプレックスナノミセルは、ナノミセルが生理学的条件下でRNAの優れたインビボ安定性を提供するので、有用な系である。さらに、高密度PEGパリセードで構成されるポリプレックスナノミセル表面によって提供されるステルス特性は、宿主の免疫防御を有効に回避する。さらに、本明細書に記載の脂質ナノ粒子(LNP)を使用して、RNAを肝臓に輸送し得る。
免疫チェックポイント阻害剤
本明細書に記載されるように、一実施形態では、ワクチンRNAおよび/または免疫賦活RNAなどの本明細書に記載のRNAは、チェックポイント阻害剤と一緒に対象、例えば患者に投与される、すなわち同時投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤およびRNAは、単一組成物として対象に投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤およびRNAは、対象に同時に(別々の組成物として同時に)投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤およびRNAは、対象に別々に投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、RNAの前に対象に投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤は、RNAの後に対象に投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤およびRNAは、同じ日に対象に投与される。特定の実施形態では、チェックポイント阻害剤およびRNAは、異なる日に対象に投与される。
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント」は、免疫系の調節因子、特に、抗原のT細胞受容体認識の大きさおよび質を調節する共刺激シグナルおよび阻害シグナルを指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイントは阻害シグナルである。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PD-1とPD-L1および/またはPD-L2との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD28結合を置き換えるためのCTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、LAG-3とMHCクラスII分子との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、TIM-3とガレクチン9、PtdSer、HMGB1およびCEACAM1などのそのリガンドの1つ以上との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、1つまたはいくつかのKIRとそれらのリガンドとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、TIGITとそのリガンドであるPVR、PVRL2およびPVRL3の1つ以上との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD94/NKG2AとHLA-Eとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、VISTAとその1つ以上の結合パートナーとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、1つ以上のSiglecとそれらのリガンドとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、GARPとそのリガンドの1つ以上との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD47とSIRPαとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、PVRIGとPVRL2との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CSF1RとCSF1との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、BTLAとHVEMとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、CD39およびCD73によって産生される、アデノシン作動性経路の一部、例えばA2ARおよび/またはA2BRとアデノシンとの間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、B7-H3とその受容体および/またはB7-H4とその受容体との間の相互作用である。特定の実施形態では、阻害シグナルは、IDO、CD20、NOXまたはTDOによって媒介される。
「プログラム死1(PD-1)」受容体は、CD28ファミリーに属する免疫抑制受容体を指す。PD-1は、インビボで以前に活性化されたT細胞上に主に発現され、2つのリガンド、PD-L1(B7-H1またはCD274としても公知)およびPD-L2(B7-DCまたはCD273としても公知)に結合する。本明細書で使用される「PD-1」という用語は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。「プログラム死リガンド1(PD-L1)」は、PD-1に結合するとT細胞の活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1の2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの1つ(他はPD-L2)である。本明細書で使用される「PD-L1」という用語は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PD-L2」という用語は、ヒトPD-L2(hPD-L2)、hPD-L2の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPD-L2と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。PD-1のリガンド(PD-L1およびPD-L2)は、樹状細胞またはマクロファージなどの抗原提示細胞、および他の免疫細胞の表面に発現される。PD-1のPD-L1またはPD-L2への結合は、T細胞活性化の下方制御をもたらす。PD-L1および/またはPD-L2を発現する癌細胞は、抗癌免疫応答の抑制をもたらすPD-1を発現するT細胞をスイッチオフにすることができる。PD-1とそのリガンドとの間の相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介増殖の減少、および癌性細胞による免疫回避をもたらす。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所的相互作用を阻害することによって逆転させることができ、PD-1とPD-L2との相互作用も同様に遮断される場合、その効果は相加的である。
「細胞傷害性Tリンパ球関連抗原4(CTLA-4)」(CD152としても公知)は、T細胞表面分子であり、免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである。このタンパク質は、CD80(B7-1)およびCD86(B7-2)に結合することによって免疫系を下方制御する。本明細書で使用される「CTLA-4」という用語は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCTLA-4と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。CTLA-4は、CD80およびCD86に対してはるかに高い結合親和性を有する刺激性チェックポイントタンパク質CD28のホモログである。CTLA4は活性化T細胞の表面に発現され、そのリガンドはプロフェッショナル抗原提示細胞の表面に発現される。CTLA-4のそのリガンドへの結合は、CD28の共刺激シグナルを妨げ、阻害シグナルを生成する。したがって、CTLA-4はT細胞活性化を下方制御する。
「IgドメインおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体」(TIGIT、WUCAMまたはVstm3としても公知)は、T細胞およびナチュラルキラー(NK)細胞上の免疫受容体であり、DC、マクロファージなどのPVR(CD155)ならびにPVRL2(CD112;ネクチン-2)およびPVRL3(CD113;ネクチン-3)に結合し、T細胞媒介免疫を調節する。本明細書で使用される「TIGIT」という用語は、ヒトTIGIT(hTIGIT)、hTIGITの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhTIGITと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PVR」という用語は、ヒトPVR(hPVR)、hPVRの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPVRと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PVRL2」という用語は、ヒトPVRL2(hPVRL2)、hPVRL2の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPVRL2と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PVRL3」という用語は、ヒトPVRL3(hPVRL3)、hPVRL3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPVRL3と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「B7ファミリー」は、受容体が未定義の阻害性リガンドを指す。B7ファミリーはB7-H3およびB7-H4を包含し、どちらも腫瘍細胞および腫瘍浸潤細胞で上方制御される。本明細書で使用される「B7-H3」および「B7-H4」という用語は、ヒトB7-H3(hB7-H3)およびヒトB7-H4(hB7-H4)、その変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにそれぞれB7-H3およびB7-H4と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「BおよびTリンパ球アテニュエータ」(BTLA、CD272としても公知)は、Th1細胞で発現されるがTh2細胞では発現されないTNFRファミリーメンバーである。BTLA発現は、T細胞の活性化中に誘導され、特にCD8+T細胞の表面上に発現される。本明細書で使用される「BTLA」という用語は、ヒトBTLA(hBTLA)、hBTLAの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhBTLAと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。BTLA発現は、ヒトCD8+T細胞のエフェクタ細胞表現型への分化中に徐々に下方制御される。腫瘍特異的ヒトCD8+T細胞は高レベルのBTLAを発現する。BTLAは「ヘルペスウイルス侵入メディエータ」(HVEM、TNFRSF14またはCD270としても公知)に結合し、T細胞阻害に関与する。本明細書で使用される「HVEM」という用語は、ヒトHVEM(hHVEM)、hHVEMの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhHVEMと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。BTLA-HVEM複合体は、T細胞免疫応答を負に調節する。
「キラー細胞免疫グロブリン様受容体」(KIR)は、健康な細胞と疾患細胞の区別に関与するNK T細胞およびNK細胞上のMHCクラスI分子の受容体である。KIRは、正常な免疫細胞活性化を抑制するヒト白血球抗原(HLA)A、BおよびCに結合する。本明細書で使用される「KIR」という用語は、ヒトKIR(hKIR)、hKIRの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhKIRと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「HLA」という用語は、HLAの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにHLAと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用されるKIRは、特に、KIR2DL1、KIR2DL2、および/またはKIR2DL3を指す。
「リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)」は(CD223としても公知)、MHCクラスII分子に結合することによるリンパ球活性の阻害に関連する阻害性受容体である。この受容体は、Treg細胞の機能を増強し、CD8+エフェクタT細胞の機能を阻害し、免疫応答抑制をもたらす。LAG-3は、活性化T細胞、NK細胞、B細胞およびDC上に発現される。本明細書で使用される「LAG-3」という用語は、ヒトLAG-3(hLAG-3)、hLAG-3の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「T細胞膜タンパク質3(TIM-3)」(HAVcr-2としても公知)は、Th1細胞応答の阻害によるリンパ球活性の阻害に関与する阻害性受容体である。そのリガンドは、様々な種類の癌において上方制御されるガレクチン9(GAL9)である。他のTIM-3リガンドとしては、ホスファチジルセリン(PtdSer)、高移動度群タンパク質1(HMGB1)および癌胎児性抗原関連細胞接着分子1(CEACAM1)が挙げられる。本明細書で使用される「TIM-3」という用語は、ヒトTIM3(hTIM-3)、hTIM-3の変異体、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「GAL9」という用語は、ヒトGAL9(hGAL9)、hGAL9の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PdtSer」という用語は、少なくとも1つの共通エピトープを有する変異体および類似体を含む。本明細書で使用される「HMGB1」という用語は、ヒトHMGB1(hHMGB1)、hHMGB1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「CEACAM1」という用語は、ヒトCEACAM1(hCEACAM1)、hCEACAM1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「CD94/NKG2A」は、ナチュラルキラー細胞およびCD8+T細胞の表面上に主に発現される阻害性受容体である。本明細書で使用される「CD94/NKG2A」という用語は、ヒトCD94/NKG2A(hCD94/NKG2A)、hCD94/NKG2Aの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。CD94/NKG2A受容体は、CD94およびNKG2Aを含むヘテロ二量体である。これは、おそらくHLA-Eなどのリガンドに結合することによって、NK細胞活性化およびCD8+T細胞機能を抑制する。CD94/NKG2Aは、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)、ナチュラルキラーT細胞(NK-T細胞)およびT細胞(α/βおよびγ/δ)のサイトカイン放出および細胞傷害性応答を制限する。NKG2Aは腫瘍浸潤細胞で頻繁に発現され、HLA-Eはいくつかの癌で過剰発現される。
「インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ」(IDO)は、免疫阻害特性を有するトリプトファン異化酵素である。本明細書で使用される「IDO」という用語は、ヒトIDO(hIDO)、hIDOの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。IDOは、キヌレニンへの変換を触媒するトリプトファン分解における律速酵素である。したがって、IDOは必須アミノ酸の枯渇に関与している。TおよびNK細胞の抑制、Tregおよび骨髄由来サプレッサ細胞の生成および活性化、ならびに腫瘍血管新生の促進に関与することが公知である。IDOは多くの癌において過剰発現され、局所炎症によって誘導された場合、腫瘍細胞の免疫系回避を促進し、慢性腫瘍進行を促進することが示された。
本明細書で使用される「アデノシン作動性経路」または「アデノシンシグナル伝達経路」では、ATPがエクトヌクレオチダーゼCD39およびCD73によってアデノシンに変換され、阻害性アデノシン受容体である「アデノシンA2A受容体」(A2AR、ADORA2Aとしても公知)および「アデノシンA2B受容体」(A2BR、ADORA2Bとしても公知)の1つ以上によるアデノシン結合を介した阻害シグナル伝達をもたらす。アデノシンは、免疫抑制特性を有するヌクレオシドであり、腫瘍微小環境に高濃度で存在し、免疫細胞浸潤、細胞傷害性およびサイトカイン産生を制限する。したがって、アデノシンシグナル伝達は、宿主免疫系クリアランスを回避するための癌細胞の戦略である。A2ARおよびA2BRを介したアデノシンシグナル伝達は、腫瘍微小環境に典型的に存在する高アデノシン濃度によって活性化される、癌治療における重要なチェックポイントである。CD39、CD73、A2ARおよびA2BRは、T細胞、インバリアントナチュラルキラー細胞、B細胞、血小板、肥満細胞および好酸球を含むほとんどの免疫細胞によって発現される。A2ARおよびA2BRを介したアデノシンシグナル伝達は、T細胞受容体が媒介する免疫細胞の活性化を妨げ、Tregの数の増加ならびにDCおよびエフェクタT細胞の活性化の減少をもたらす。本明細書で使用される「CD39」という用語は、ヒトCD39(hCD39)、hCD39の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「CD73」という用語は、ヒトCD73(hCD73)、hCD73の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「A2AR」という用語は、ヒトA2AR(hA2AR)、hA2ARの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「A2BR」という用語は、ヒトA2BR(hA2BR)、hA2BRの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「T細胞活性化のVドメインIg抑制因子」(VISTA、C10orf54としても公知)は、PD-L1と相同性を有するが、造血区画に限定された固有の発現パターンを示す。本明細書で使用される「VISTA」という用語は、ヒトVISTA(hVISTA)、hVISTAの変異体、アイソフォームおよび種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。VISTAは、T細胞抑制を誘導し、腫瘍内の白血球によって発現される。
「シアル酸結合免疫グロブリン型レクチン」(Siglec)ファミリーメンバーは、シアル酸を認識し、「自己」と「非自己」の区別に関与する。本明細書で使用される「Siglec」という用語は、ヒトSiglec(hSiglec)、hSiglecの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに1つ以上のhSiglecと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。ヒトゲノムは14個のSiglecを含み、限定されないが、Siglec-2、Siglec-3、Siglec-7およびSiglec-9を含むそのうちのいくつかは、免疫抑制に関与している。Siglec受容体は、シアル酸を含むグリカンに結合するが、シアル酸残基の結合位置化学および空間分布の認識が異なる。このファミリーのメンバーはまた、異なる発現パターンを有する。広範囲の悪性腫瘍は、1つ以上のSiglecを過剰発現する。
「CD20」は、B細胞およびT細胞の表面上に発現される抗原である。CD20の高発現は、B細胞リンパ腫、毛様細胞白血病、B細胞慢性リンパ性白血病、および黒色腫癌幹細胞などの癌において見出され得る。本明細書で使用される「CD20」という用語は、ヒトCD20(hCD20)、hCD20の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「糖タンパク質A反復優勢」(GARP)は、免疫寛容および腫瘍が患者の免疫系から逃れる能力において役割を果たす。本明細書で使用される「GARP」という用語は、ヒトGARP(hGARP)、hGARPの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびに少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。GARPは、末梢血中のTreg細胞および腫瘍部位の腫瘍浸潤T細胞を含むリンパ球上に発現される。これは、おそらく、潜在性「トランスフォーミング増殖因子β」(TGF-β)に結合する。TregにおけるGARPシグナル伝達の破壊は、寛容の減少をもたらし、Tregの腸への移動および細胞傷害性T細胞の増殖の増加を阻害する。
「CD47」は、リガンド「シグナル調節タンパク質アルファ」(SIRPα)に結合する膜貫通タンパク質である。本明細書で使用される「CD47」という用語は、ヒトCD47(hCD47)、hCD47の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCD47と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「SIRPα」という用語は、ヒトSIRPα(hSIRPα)、hSIRPαの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhSIRPαと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。CD47シグナル伝達は、アポトーシス、増殖、接着および遊走を含む様々な細胞プロセスに関与する。CD47は、多くの癌において過剰発現され、マクロファージに対する「don’t eat me」シグナルとして機能する。阻害性抗CD47または抗SIRPα抗体を介したCD47シグナル伝達の遮断は、癌細胞のマクロファージ食作用を可能にし、癌特異的Tリンパ球の活性化を促進する。
「ポリオウイルス受容体関連免疫グロブリンドメイン含有」(PVRIG、CD112Rとしても公知)は、「ポリオウイルス受容体関連2」(PVRL2)に結合する。PVRIGおよびPVRL2は、いくつかの癌において過剰発現される。PVRIG発現はまた、TIGITおよびPD-1発現を誘導し、PVRL2およびPVR(TIGITリガンド)は、いくつかの癌において同時過剰発現される。PVRIGシグナル伝達経路の遮断は、T細胞機能およびCD8+T細胞応答の増加、したがって免疫抑制の減少およびインターフェロン応答の上昇をもたらす。本明細書で使用される「PVRIG」という用語は、ヒトPVRIG(hPVRIG)、hPVRIGの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhPVRIGと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「PVRL2」は、上記で定義されたhPVRL2を含む。
「コロニー刺激因子1」経路は、本開示に従って標的とすることができる別のチェックポイントである。CSF1Rは、CSF1に結合する骨髄増殖因子受容体である。CSF1Rシグナル伝達の遮断は、マクロファージ応答を機能的に再プログラムし、それによって抗原提示および抗腫瘍T細胞応答を増強することができる。本明細書で使用される「CSF1R」という用語は、ヒトCSF1R(hCSF1R)、hCSF1Rの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCSF1Rと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。本明細書で使用される「CSF1」という用語は、ヒトCSF1(hCSF1)、hCSF1の変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhCSF1と少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸NADPHオキシダーゼ」は、免疫抑制活性酸素種(ROS)を生成する骨髄細胞の酵素のNOXファミリーの酵素を指す。5つのNOX酵素(NOX1~NOX5)が癌の発症および免疫抑制に関与することが見出されている。ROSレベルの上昇は、ほとんど全ての癌で検出されており、腫瘍の発生および進行の多くの局面を促進する。NOX産生ROSは、NKおよびT細胞の機能を弱め、骨髄細胞におけるNOXの阻害は、隣接するNK細胞およびT細胞の抗腫瘍機能を改善する。本明細書で使用される「NOX」という用語は、ヒトNOX(hNOX)、hNOXの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhNOXと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
本開示に従って標的とすることができる別の免疫チェックポイントは、「トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ」(TDO)によって媒介されるシグナルである。TDOは、トリプトファン分解におけるIDOの代替経路であり、免疫抑制に関与する。腫瘍細胞はIDOの代わりにTDOを介してトリプトファンを異化し得るので、TDOはチェックポイント遮断のためのさらなる標的であり得る。実際に、いくつかの癌細胞株は、TDOを上方制御することが見出されており、TDOはIDO阻害を補完し得る。本明細書で使用される「TDO」という用語は、ヒトTDO(hTDO)、hTDOの変異体、アイソフォーム、および種ホモログ、ならびにhTDOと少なくとも1つの共通エピトープを有する類似体を含む。
免疫チェックポイントの多くは、上記のような特異的受容体とリガンドの対の間の相互作用によって調節される。したがって、免疫チェックポイントタンパク質は免疫チェックポイントシグナル伝達を媒介する。例えば、チェックポイントタンパク質は、T細胞活性化、T細胞増殖および/またはT細胞機能を直接的または間接的に調節する。癌細胞は、免疫系による攻撃から自身を保護するために、しばしばこれらのチェックポイント経路を利用する。したがって、本開示に従って調節されるチェックポイントタンパク質の機能は、典型的には、T細胞活性化、T細胞増殖および/またはT細胞機能の調節である。したがって、免疫チェックポイントタンパク質は、自己寛容ならびに生理学的免疫応答の持続時間および大きさを調節し、維持する。免疫チェックポイントタンパク質の多くは、B7:CD28ファミリーまたは腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリーに属し、特異的リガンドに結合することによって、細胞質ドメインに動員されるシグナル伝達分子を活性化する(Suzuki et al.,2016,Jap J Clin Onc,46:191-203)。
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント調節剤」または「チェックポイントモジュレータ」という用語は、1つ以上のチェックポイントタンパク質の機能を調節する分子または化合物を指す。免疫チェックポイント調節剤は、典型的には、自己寛容ならびに/または免疫応答の大きさおよび/もしくは持続時間を調節することができる。好ましくは、本開示に従って使用される免疫チェックポイント調節剤は、1つ以上のヒトチェックポイントタンパク質の機能を調節し、したがって「ヒトチェックポイント調節剤」である。好ましい実施形態では、本明細書で使用されるヒトチェックポイント調節剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。
本明細書で使用される場合、「免疫チェックポイント阻害剤」または「チェックポイント阻害剤」は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にもしくは部分的に低減するか、阻害するか、妨げるかもしくは負に調節するか、または1つ以上のチェックポイントタンパク質の発現を全体的にもしくは部分的に低減するか、阻害するか、妨げるかもしくは負に調節する分子を指す。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上のチェックポイントタンパク質に結合する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイントタンパク質を調節する1つ以上の分子に結合する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、例えばDNAまたはRNAレベルで、1つ以上のチェックポイントタンパク質の前駆体に結合する。本開示によるチェックポイント阻害剤として機能する任意の薬剤を使用することができる。
本明細書で使用される「部分的に」という用語は、レベル、例えばチェックポイントタンパク質の阻害レベルの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%を意味する。
特定の実施形態では、本明細書に開示される方法で使用するのに適した免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナルのアンタゴニスト、例えば、PD-1、PD-L1、CTLA-4、LAG-3、B7-H3、B7-H4、またはTIM-3を標的とする抗体である。これらのリガンドおよび受容体は、Pardoll,D.,Nature.12:252-264,2012に総説されている。本開示に従って標的化され得るさらなる免疫チェックポイントタンパク質が本明細書に記載される。
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナルを防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントに関連する阻害シグナル伝達を妨害する抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害する小分子である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害するペプチドベースの阻害剤である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害シグナル伝達を妨害する阻害性核酸分子である。
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、チェックポイント遮断タンパク質間の相互作用を防止する抗体、その断片、または抗体模倣物、例えば、PD-1とPD-L1またはPD-L2との間の相互作用を防止する抗体またはその断片である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA-4とCD80またはCD86との間の相互作用を防止する抗体、その断片、または抗体模倣物である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG-3とそのリガンド、またはTIM-3とそのリガンドとの間の相互作用を防止する抗体、その断片、または抗体模倣物である。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CD39および/もしくはCD73を介した阻害シグナル伝達ならびに/またはA2ARおよび/もしくはA2BRとアデノシンとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、B7-H3とその受容体との相互作用および/またはB7-H4とその受容体との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、BTLAとそのリガンドHVEMとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上のKIRとそれらのそれぞれのリガンドとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、LAG-3とそのリガンドの1つ以上との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、TIM-3とそのリガンドであるガレクチン-9、PtdSer、HMGB1およびCEACAM1の1つ以上との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、TIGITとそのリガンドであるPVR、PVRL2およびPVRL3の1つ以上との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CD94/NKG2AとHLA-Eとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、VISTAとその結合パートナーの1つ以上との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、1つ以上のSiglecとそれらのそれぞれのリガンドとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CD20シグナル伝達を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、GARPとそのリガンドの1つ以上との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CD47とSIRPαとの相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、PVRIGとPVRL2との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CSF1RとCSF1との相互作用を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、NOXシグナル伝達を防止する。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、IDOおよび/またはTDOシグナル伝達を防止する。
本明細書に記載の阻害性免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害または遮断は、癌細胞に対する免疫抑制およびT細胞免疫の確立または増強の防止または逆転をもたらす。一実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、免疫系の機能不全を低減または阻害する。一実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、機能不全の免疫細胞の機能不全の程度をより少なくする。一実施形態では、本明細書に記載の免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害は、機能不全のT細胞の機能不全の程度をより少なくする。
本明細書で使用される「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態を指す。この用語は、抗原認識が起こり得る枯渇および/またはアネルギーの両方の共通要素を含むが、続いて起こる免疫応答は、感染または腫瘍成長を制御するのには無効である。機能不全には、機能不全の免疫細胞のために抗原認識が遅延している状態も含まれる。
本明細書で使用される「機能不全」という用語は、抗原刺激に対する免疫応答性が低下した状態にある免疫細胞を指す。機能不全には、抗原認識に対する不応答性、および抗原認識を下流のT細胞エフェクタ機能、例えば増殖、サイトカイン産生(例えばIL-2)および/または標的細胞死滅に変換する能力の障害が含まれる。
本明細書で使用される「アネルギー」という用語は、T細胞受容体(TCR)を介して送達される不完全または不十分なシグナルから生じる、抗原刺激に対する不応答性の状態を指す。T細胞アネルギーはまた、共刺激の非存在下での抗原による刺激時にも生じることがあり、その結果細胞は、共刺激の状況でさえも、抗原によるその後の活性化に対して抵抗性になる。不応答性状態は、IL-2の存在によってしばしば解除され得る。アネルギーT細胞は、クローン拡大を受けず、および/またはエフェクタ機能を獲得しない。
本明細書で使用される「枯渇」という用語は、免疫細胞枯渇、例えば多くの慢性感染症および癌の間に起こる持続的なTCRシグナル伝達から生じるT細胞機能不全の状態としてのT細胞枯渇を指す。これは、不完全または不十分なシグナル伝達によってではなく、持続的なシグナル伝達によって生じるという点でアネルギーとは区別される。枯渇は、不十分なエフェクタ機能、阻害性受容体の持続的発現、および機能性エフェクタまたはメモリT細胞とは異なる転写状態によって定義される。枯渇は、疾患(例えば感染症および腫瘍)の最適な制御を妨げる。枯渇は、外因性負調節経路(例えば免疫調節性サイトカイン)ならびに細胞内因性負調節経路(本明細書に記載されるような阻害性免疫チェックポイント経路)の両方に起因し得る。
「T細胞機能を増強する」とは、T細胞が持続的もしくは増幅された生物学的機能を有するように、または枯渇したもしくは不活性なT細胞を再生もしくは再活性化するように、T細胞を誘導する、導くもしくは刺激することを意味する。T細胞機能を増強する例としては、介入前のレベルと比較して、CD8+T細胞からのγ-インターフェロンの分泌増加、増殖増加、抗原応答性の増加(例えば腫瘍クリアランス)が挙げられる。一実施形態では、増強のレベルは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、200%またはそれ以上である。この増強を測定する方法は当業者に公知である。
免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性核酸分子であり得る。本明細書で使用される「阻害性核酸」または「阻害性核酸分子」という用語は、1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げるまたは負に調節する核酸分子、例えばDNAまたはRNAを指す。阻害性核酸分子には、限定されないが、オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、アンチセンスDNAまたはRNA分子、およびアプタマー(例えば、DNAアプタマーまたはRNAアプタマー)が含まれる。
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」という用語は、タンパク質発現、特に本明細書に記載のチェックポイントタンパク質などのチェックポイントタンパク質の発現を減少させることができる核酸分子を指す。オリゴヌクレオチドは、典型的には2~50ヌクレオチドを含む短いDNAまたはRNA分子である。オリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖であり得る。チェックポイント阻害剤オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチドであり得る。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、所与の配列、特にチェックポイントタンパク質の核酸配列(またはその断片)の配列に相補的な一本鎖DNAまたはRNA分子である。アンチセンスRNAは、典型的には、mRNA、例えばチェックポイントタンパク質をコードするmRNAに結合することによって、前記mRNAのタンパク質翻訳を防止するために使用される。アンチセンスDNAは、典型的には、特定の相補的(コードまたは非コード)RNAを標的とするために使用される。結合が起こる場合、そのようなDNA/RNAハイブリッドは酵素RNase Hによって分解され得る。さらに、モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチドは、脊椎動物における遺伝子ノックダウンに使用され得る。例えば、Kryczek et al.,2006(J Exp Med,203:871-81)は、マクロファージにおけるB7-H4発現を特異的にブロックするB7-H4特異的モルホリノを設計し、腫瘍関連抗原(TAA)特異的T細胞を有するマウスにおいてT細胞増殖の増加および腫瘍体積の減少をもたらした。
「siRNA」または「低分子干渉RNA」または「低分子阻害性RNA」という用語は、本明細書では互換的に使用され、相補的なヌクレオチド配列を有する特定の遺伝子、例えばチェックポイントタンパク質をコードする遺伝子の発現を妨げる、典型的な長さが20~25塩基対の二本鎖RNA分子を指す。一実施形態では、siRNAはmRNAを妨げ、したがって翻訳、例えば免疫チェックポイントタンパク質の翻訳を遮断する。外因性siRNAのトランスフェクションは、遺伝子ノックダウンのために使用され得るが、その効果は、特に急速に分裂する細胞では、一過性にすぎない場合がある。安定なトランスフェクションは、例えばRNA修飾によって、または発現ベクターを使用することによって達成され得る。siRNAによる細胞の安定なトランスフェクション有用な修飾およびベクターは、当技術分野で公知である。siRNA配列はまた、2本の鎖の間に短いループを導入して「低分子ヘアピンRNA」または「shRNA」をもたらすように修飾され得る。shRNAは、ダイサーによって機能的siRNAにプロセシングされ得る。shRNAは、比較的低い分解速度および代謝回転速度を有する。したがって、免疫チェックポイント阻害剤はshRNAであり得る。
本明細書で使用される「アプタマー」という用語は、ポリペプチドなどの標的分子に結合することができる、典型的には25~70ヌクレオチドの長さのDNAまたはRNAなどの一本鎖核酸分子を指す。一実施形態では、アプタマーは、本明細書に記載の免疫チェックポイントタンパク質などの免疫チェックポイントタンパク質に結合する。例えば、本開示によるアプタマーは、免疫チェックポイントタンパク質もしくはポリペプチド、または免疫チェックポイントタンパク質もしくはポリペプチドの発現を調節するシグナル伝達経路中の分子に特異的に結合することができる。アプタマーの生成および治療的使用は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第5,475,096号参照)。
「低分子阻害剤」または「低分子」という用語は、本明細書では互換的に使用され、上記のように1つ以上のチェックポイントタンパク質を全体的にまたは部分的に低減する、阻害する、妨げる、または負に調節する、通常は最大1000ダルトンの低分子量有機化合物を指す。そのような低分子阻害剤は、通常、有機化学によって合成されるが、植物、真菌、および微生物などの天然源からも単離され得る。低分子量は、低分子阻害剤が細胞膜を横切って急速に拡散することを可能にする。例えば、当技術分野で公知の様々なA2ARアンタゴニストは、500ダルトン未満の分子量を有する有機化合物である。
免疫チェックポイント阻害剤は、必要な特異性の抗原結合断片を有する抗体部分を含む抗体、その抗原結合断片、抗体模倣物または融合タンパク質であり得る。抗体またはその抗原結合断片は、本明細書に記載される通りである。免疫チェックポイント阻害剤である抗体またはその抗原結合断片には、特に、免疫チェックポイントタンパク質、例えば免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドに結合する抗体またはその抗原結合断片が含まれる。抗体または抗原結合断片はまた、本明細書に記載されるように、さらなる部分にコンジュゲートされ得る。特に、抗体またはその抗原結合断片は、キメラ化抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。好ましくは、免疫チェックポイント阻害剤抗体またはその抗原結合断片は、免疫チェックポイント受容体または免疫チェックポイント受容体リガンドのアンタゴニストである。
好ましい実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤である抗体は、単離された抗体である。
本開示による免疫チェックポイント阻害剤またはその抗原結合断片である抗体はまた、任意の公知の免疫チェックポイント阻害剤抗体と抗原結合について交差競合する抗体であり得る。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤抗体は、本明細書に記載の免疫チェックポイント阻害剤抗体の1つ以上と交差競合する。抗原への結合について交差競合する抗体の能力は、これらの抗体が、抗原の同じエピトープ領域に結合し得るか、または別のエピトープに結合する場合、その特定のエピトープ領域への公知の免疫チェックポイント阻害剤抗体の結合を立体的に妨げ得ることを示す。これらの交差競合抗体は、同じエピトープに結合することによって、またはリガンドの結合を立体的に妨げることによって、そのリガンドへの免疫チェックポイントの結合を遮断すると予想されるので、それらが交差競合しているものと非常に類似した機能的特性を有し得る。交差競合抗体は、表面プラズモン共鳴分析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリなどの標準的な結合アッセイにおいて公知の抗体の1つ以上と交差競合するそれらの能力に基づいて容易に同定することができる(例えば、国際公開第2013/173223号参照)。
特定の実施形態では、所与の抗原への結合について1つ以上の公知の抗体と交差競合するか、または所与の抗原の同じエピトープ領域に結合する抗体またはその抗原結合断片は、モノクローナル抗体である。ヒト患者への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体、またはヒト化もしくはヒト抗体であり得る。そのようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当技術分野で周知の方法によって調製および単離することができる。
チェックポイント阻害剤はまた、分子(またはその変異体)自体の可溶性形態、例えば可溶性PD-L1またはPD-L1融合物の形態であり得る。
本開示の文脈では、複数のチェックポイント阻害剤を使用することができ、複数のチェックポイント阻害剤は、異なるチェックポイント経路または同じチェックポイント経路を標的とする。好ましくは、複数のチェックポイント阻害剤は、異なるチェックポイント阻害剤である。好ましくは、複数の異なるチェックポイント阻害剤が使用される場合、特に少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9または10個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、好ましくは2、3、4または5個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、より好ましくは2、3または4個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、さらにより好ましくは2または3個の異なるチェックポイント阻害剤が使用され、最も好ましくは2個の異なるチェックポイント阻害剤が使用される。異なるチェックポイント阻害剤の組合せの好ましい例には、PD-1シグナル伝達の阻害剤とCTLA-4シグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とTIGITシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とB7-H3および/またはB7-H4シグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とBTLAシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とKIRシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とLAG-3シグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とTIM-3シグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とCD94/NKG2Aシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とIDOシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とアデノシンシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とVISTAシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とSiglecシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とCD20シグナル伝達阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とGARPシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤およびCD47シグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とPVRIGシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とCSF1Rシグナル伝達の阻害剤、PD-1シグナル伝達の阻害剤とNOXシグナル伝達の阻害剤、およびPD-1シグナル伝達の阻害剤とTDOシグナル伝達の阻害剤の組合せが含まれる。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子(免疫チェックポイント遮断薬)は、PD-1/PD-L1またはPD-1/PD-L2シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-1阻害剤である。特定の実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-L1阻害剤またはPD-L2阻害剤などのPD-1リガンド阻害剤である。好ましい実施形態では、PD-1シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PD-1受容体とそのリガンドであるPD-L1および/またはPD-L2の1つ以上との間の相互作用を妨害する抗体またはその抗原結合部分である。PD-1に結合し、PD-1とそのリガンドの1つ以上との間の相互作用を妨害する抗体は、当技術分野で公知である。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-1に特異的に結合する。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L1に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それによって免疫活性を増加させる。特定の実施形態では、抗体またはその抗原結合部分は、PD-L2に特異的に結合し、PD-1とのその相互作用を阻害し、それによって免疫活性を増加させる。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CTLA-4シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CTLA-4シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、CTLA-4シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CTLA-4阻害剤である。特定の実施形態では、CTLA-4シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CTLA-4リガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TIGITシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TIGITシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、TIGITシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、TIGIT阻害剤である。特定の実施形態では、TIGITシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、TIGITリガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、B7ファミリーシグナル伝達経路の成分である。特定の実施形態では、B7ファミリーメンバーは、B7-H3およびB7-H4である。本開示の特定の実施形態は、B7-H3および/またはB7-4のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。したがって、本開示の特定の実施形態は、B7-H3またはB7-H4を標的とする抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを提供する。B7ファミリーは定義された受容体を有さないが、これらのリガンドは、腫瘍細胞または腫瘍浸潤細胞上で上方制御される。前臨床マウスモデルは、これらのリガンドの遮断が抗腫瘍免疫を増強し得ることを示している。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、BTLAシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、BTLAシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、BTLAシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、BTLA阻害剤である。特定の実施形態では、BTLAシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、HVEM阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、1つ以上のKIRシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、1つ以上のKIRシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、1つ以上のKIRシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、KIR阻害剤である。特定の実施形態では、1つ以上のKIRシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、KIRリガンド阻害剤である。例えば、本開示によるKIR阻害剤は、KIR2DL1、KIR2DL2、および/またはKIR2DL3に結合する抗KIR抗体であり得る。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、LAG-3シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、LAG-3シグナル伝達のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、LAG-3シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、LAG-3阻害剤である。特定の実施形態では、LAG-3シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、LAG-3リガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TIM-3シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TIM-3シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、TIM-3シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、TIM-3阻害剤である。特定の実施形態では、TIM-3シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、TIM-3リガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CD94/NKG2Aシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CD94/NKG2Aシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、CD94/NKG2Aシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD94/NKG2A阻害剤である。特定の実施形態では、CD94/NKG2Aシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD94/NKG2Aリガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、IDOシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、IDOシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤、例えばIDO阻害剤を対象に投与することを提供する。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、アデノシンシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、アデノシンシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、アデノシンシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD39阻害剤である。特定の実施形態では、アデノシンシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD73阻害剤である。特定の実施形態では、アデノシンシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、A2AR阻害剤である。特定の実施形態では、アデノシンシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、A2BR阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、VISTAシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、VISTAシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、VISTAシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、VISTA阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、1つ以上のSiglecシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、1つ以上のSiglecシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、1つ以上のSiglecシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、Siglec阻害剤である。特定の実施形態では、1つ以上のSiglecシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、Siglecリガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CD20シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CD20シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、CD20シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD20阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、GARPシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、GARPシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、GARPシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、GARP阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CD47シグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CD47シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、CD47シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CD47阻害剤である。特定の実施形態では、CD47シグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、SIRPα阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、PVRIGシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、PVRIGシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、PVRIGシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PVRIG阻害剤である。特定の実施形態では、PVRIGシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、PVRIGリガンド阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、CSF1Rシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、CSF1Rシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤を対象に投与することを提供する。特定の実施形態では、CSF1Rシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CSF1R阻害剤である。特定の実施形態では、CSF1Rシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤は、CSF1阻害剤である。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、NOXシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、NOXシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤、例えばNOX阻害剤を対象に投与することを提供する。
特定の実施形態では、阻害性免疫調節因子は、TDOシグナル伝達経路の成分である。したがって、本開示の特定の実施形態は、TDOシグナル伝達経路のチェックポイント阻害剤、例えばTDO阻害剤を対象に投与することを提供する。
例示的なPD-1阻害剤としては、限定されないが、抗PD-1抗体、例えばBGB-A317(BeiGene;米国特許第8,735,553号、国際公開第2015/35606号および米国特許出願公開第2015/0079109号参照)、セミプリマブ(Regeneron;国際公開第2015/112800号参照)およびラムブロリズマブ(例えば、国際公開第2008/156712号にhPD109Aならびにそのヒト化誘導体h409A1、h409A16およびh409A17として開示されている)、AB137132(Abcam)、EH12.2H7およびRMP1-14(#BE0146;Bioxcell Lifesciences Pvt.LTD.)、MIH4(Affymetrix eBioscience)、ニボルマブ(OPDIVO,BMS-936558;Bristol Myers Squibb;国際公開第2006/121168号参照)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475;Merck;国際公開第2008/156712号参照)、ピジリズマブ(CT-011;CureTech;Hardy et al.,1994,Cancer Res.,54(22):5793-6および国際公開第2009/101611号参照)、PDR001(Novartis;国際公開第2015/112900号参照)、MEDI0680(AMP-514;AstraZeneca;国際公開第2012/145493号参照)、TSR-042(国際公開第2014/179664号参照)、REGN-2810(H4H7798N;米国特許出願公開第2015/0203579号参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al.,2007,J.Hematol.Oncol.70:136)、AMP-224(GSK-2661380;Li et al.,2016,Int J Mol Sci,17(7):1151および国際公開第2010/027827号および国際公開第2011/066342号参照)、PF-06801591(Pfizer)、BGB-A317(BeiGene;国際公開第2015/35606号および米国特許出願公開第2015/0079109号参照)、BI 754091、SHR-1210(国際公開第2015/085847号参照)、ならびに国際公開第2006/121168号に記載されている抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4;INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても公知;国際公開第2015/085847号参照),TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても公知;国際公開第2014/179664号参照),GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても公知;Si-Yang et al.,2017,J.Hematol.Oncol.70:136参照)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;国際公開第2014/194302号参照)、AGEN2034(Agenus;国際公開第2017/040790号参照)、MGA012(Macrogenics;国際公開第2017/19846号参照)、IBI308(Innovent;国際公開第2017/024465号、国際公開第2017/025016号、国際公開第2017/132825号および国際公開第2017/133540号参照)、例えば米国特許第7,488,802号、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,168,757号、国際公開第03/042402号、国際公開第2010/089411号(抗PD-L1抗体をさらに開示する)、国際公開第2010/036959号、国際公開第2011/159877号(TIM-3に対する抗体をさらに開示する)、国際公開第2011/082400号、国際公開第2011/161699号、国際公開第2009/014708号、国際公開第03/099196号、国際公開第2009/114335号、国際公開第2012/145493号(PD-L1に対する抗体をさらに開示する)、国際公開第2015/035606号、国際公開第2014/055648号(抗KIR抗体をさらに開示する)、米国特許出願公開第2018/0185482号(抗PD-L1抗体および抗TIGIT抗体をさらに開示する)、米国特許第8,008,449号、米国特許第8,779,105号、米国特許第6,808,710号、米国特許第8,168,757号、米国特許出願公開第2016/0272708号および米国特許第8,354,509号に記載されている抗PD-1抗体、例えばShaabani et al.,2018,Expert Op Ther Pat.,28(9):665-678およびSasikumar and Ramachandra,2018,BioDrugs,32(5):481-497に開示されているPD-1シグナル伝達経路に対する低分子アンタゴニスト、例えば国際公開第2019/000146号および国際公開第2018/103501号に開示されているPD-1に対するsiRNA、国際公開第2018/222711号に開示されている可溶性PD-1タンパク質、ならびに例えば国際公開第2018/022831号に記載されている可溶性形態のPD-1を含む腫瘍溶解性ウイルスが挙げられる。
特定の実施形態では、PD-1阻害剤は、ニボルマブ(OPDIVO;BMS-936558)、ペムブロリズマブ(KEYTRUDA;MK-3475)、ピジリズマブ(CT-011)、PDR001、MEDI0680(AMP-514)、TSR-042、REGN2810、JS001、AMP-224(GSK-2661380)、PF-06801591、BGB-A317、BI 754091、またはSHR-1210である。
例示的なPD-1リガンド阻害剤はPD-L1阻害剤およびPD-L2阻害剤であり、限定されないが、MEDI4736(デュルバルマブ;AstraZeneca;国際公開第2011/066389号参照)、MSB-0010718C(米国特許出願公開第2014/0341917号参照)、YW243.55.S70(国際公開第2010/077634号の配列番号20および米国特許第8,217,149号参照)、MIH1(Affymetrix eBioscience;欧州特許第3 230 319号参照)、MDX-1105(Roche/Genentech;国際公開第2013019906号および米国特許第8,217,149号参照)、STI-1014(Sorrento;国際公開第2013/181634号参照)、CK-301(チェックポイント治療薬)、KN035(3D Med/Alphamab;Zhang et al.,2017,Cell Discov.3:17004参照)、アテゾリズマブ(TECENTRIQ;RG7446;MPDL3280A;R05541267;米国特許第9,724,413号参照)、BMS-936559(Bristol Myers Squibb;米国特許第7,943,743号、国際公開第2013/173223号参照)、アベルマブ(バベンチオ;米国特許出願公開第2014/0341917号参照)、LY3300054(Eli Lilly Co.)、CX-072(Proclaim-CX-072;CytomXとも呼ばれる;国際公開第2016/149201号参照)、FAZ053、KN035(国際公開第2017020801号および国際公開第2017020802号参照)、MDX-1105(米国特許出願公開第2015/0320859号参照)などの抗PD-L1抗体、3G10、12A4(BMS-936559とも呼ばれる)、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を含む米国特許第7,943,743号に開示されている抗PD-L1抗体、国際公開第2010/077634号、米国特許第8,217,149号、国際公開第2010/036959号、国際公開第2010/077634号、国際公開第2011/066342号、米国特許第8,217,149号、米国特許第7,943,743号、国際公開第2010/089411号、米国特許第 7,635,757号、米国特許第 8,217,149号、米国特許第2009/0317368号、国際公開第2011/066389号、国際公開第2017/034916号、国際公開第2017/020291号、国際公開第2017/020858号、国際公開第2017/020801号、国際公開第2016/111645号、国際公開第2016/197367号、国際公開第2016/061142号、国際公開第2016/149201号、国際公開第2016/000619号、国際公開第2016/160792号、国際公開第2016/022630号、国際公開第2016/007235号、国際公開第2015/179654号、国際公開第2015/173267号、国際公開第2015/181342号、国際公開第2015/109124号、国際公開第2018/222711号、国際公開第2015/112805号、国際公開第2015/061668号、国際公開第2014/159562号、国際公開第2014/165082号、国際公開第2014/100079号に記載されている抗PD-L1抗体が含まれる。
例示的なCTLA-4阻害剤としては、限定されないが、モノクローナル抗体であるイピリムマブ(Yervoy;Bristol Myers Squibb)およびトレメリムマブ(Pfizer/Medlmmune)、トレビリズマブ、AGEN-1884(Agenus)およびATOR-1015、国際公開第2001/014424号、米国特許第2005/0201994号、欧州特許第1212422号、米国特許第5,811,097号、米国特許第5,855,887号、米国特許第6,051,227号、米国特許第6,682,736号、米国特許第6,984,720号、国際公開第01/14424号、国際公開第00/37504号、米国特許第2002/0039581号、米国特許第2002/086014号、国際公開第98/42752号、米国特許第6,207,156号、米国特許第5,977,318号、米国特許第7,109,003号および米国特許第7,132,281号に開示されている抗CTLA4抗体、CTLA-4 ECDに融合したIgG1のFe領域を含むドミナントネガティブタンパク質アバタセプト(Orencia;欧州特許第2855533号参照)、ならびにアバタセプトと比較してCTLA-4 ECD内に2つのアミノ酸置換を有する第2世代のより高親和性のCTLA-4-Ig変異体であるベラタセプト(Nulojix;国際公開第2014/207748号参照)、可溶性CTLA-4ポリペプチド、例えばRG2077およびCTLA4-IgG4m(米国特許第6,750,334号参照)、抗CTLA-4アプタマー、ならびに例えば米国特許出願公開第2015/203848号に開示されているCTLA-4に対するsiRNAが挙げられる。例示的なCTLA-4リガンド阻害剤は、Pile et al.,2015(Encyclopedia of Inflammatory Diseases,M.Parnham(ed.),doi:10.1007/978-3-0348-0620-6_20)に記載されている。
TIGITシグナル伝達経路の例示的なチェックポイント阻害剤としては、限定されないが、BMS-986207、COM902(CGEN-15137;Compugen)、AB154(Arcus Biosciences)もしくはエチギリマブ(OMP-313M32;OncoMed Pharmaceuticals)などの抗TIGIT抗体、または国際公開第2017/059095号に開示されている抗体、特に「MAB10」、米国特許出願公開第2018/0185482号、国際公開第2015/009856号および米国特許出願公開第2019/0077864号に開示されている抗体が挙げられる。
B7-H3の例示的なチェックポイント阻害剤としては、限定されないが、Fc最適化モノクローナル抗体エノブリツズマブ(MGA271;Macrogenics;米国特許出願公開第2012/0294796号参照)ならびに抗B7-H3抗体MGD009(Macrogenics)およびピジリズマブ(米国特許第7,332,582号参照)が挙げられる。
例示的なB7-H4阻害剤としては、限定されないが、Dangaj et al.,2013(Cancer Research 73:4820-9)およびSmith et al.,2014(Gynecol Oncol,134:181-189)、国際公開第2013/025779号(例えば配列番号3および4によってコードされる2D1、配列番号37および39によってコードされる2H9、ならびに配列番号41および43によってコードされる2E11)および国際公開第2013/067492号(例えば配列番号1~8から選択されるアミノ酸配列を有する抗体)に記載されている抗体、例えばKryczek et al.,2006(J Exp Med,203:871-81)に記載されているモルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチド、または米国特許出願公開第2012/0177645号に開示されているようなB7-H4の可溶性組換え形態が挙げられる。
例示的なBTLA阻害剤としては、限定されないが、Crawford and Wherry,2009(J Leukocyte Biol 86:5-8)、国際公開第2011/014438号(例えば4C7、または配列番号8および15ならびに/もしくは配列番号11および18に従う重鎖および軽鎖を含む抗体)、国際公開第2014/183885号(例えばCNCM I-4752の番号で寄託された抗体)および米国特許出願公開第2018/155428号に記載されている抗BTLA抗体が挙げられる。
KIRシグナル伝達のチェックポイント阻害剤としては、限定されないが、モノクローナル抗体リリルマブ(1-7F9;IPH2102;米国特許第8,709,411号参照)、IPH4102(Innate Pharma;Marie-Cardine et al.,2014,Cancer 74(21):6060-70参照)、例えば、米国特許出願公開第2018/208652号、米国特許出願公開第2018/117147号、米国特許出願公開第2015/344576号、国際公開第2005/003168号、国際公開第2005/009465号、国際公開第2006/072625号、国際公開第2006/072626号、国際公開第2007/042573号、国際公開第2008/084106号(例えば、配列番号2および3に従う重鎖および軽鎖を含む抗体)、国際公開第2010/065939号、国際公開第2012/071411号、国際公開第2012/160448号および国際公開第2014/055648号に開示されている抗KIR抗体が挙げられる。
LAG-3阻害剤としては、限定されないが、抗LAG-3抗体BMS-986016(Bristol-Myers Squibb;国際公開第2014/008218号および国際公開第2015/116539号参照)、25F7(米国特許出願公開第2011/0150892参照)、IMP731(国際公開第2008/132601号参照)、H5L7BW(国際公開第2014140180号参照)、MK-4280(28G-10;Merck;国際公開第2016/028672号参照)、REGN3767(Regneron/Sanofi)、BAP050(国際公開第2017/019894号参照)、IMP-701(LAG-525;Novartis)、Sym022(Symphogen)、TSR-033(Tesaro)、MGD013(MacroGenicsによって開発されたLAG-3およびPD-1を標的とする二重特異性DART抗体)、BI754111(Boehringer Ingelheim)、FS118(F-starによって開発されたLAG-3およびPD-1を標的とする二重特異性抗体)、GSK2831781(GSK)、ならびに国際公開第2009/044273号、国際公開第2008/132601号、国際公開第2015/042246号、欧州特許第2 320 940号、米国特許出願公開第2019/169294号、米国特許出願公開第2019/169292号、国際公開第2016/028672号、国際公開第2016/126858号、国際公開第2016/200782号、国際公開第2015/200119号、国際公開第2017/220569号、国際公開第2017/087589号、国際公開第2017/219995号、国際公開第2017/019846号、国際公開第2017/106129号、国際公開第2017/062888号、国際公開第2018/071500号、国際公開第2017/087901号、米国特許出願公開第2017/0260271号、国際公開第2017/198741号、国際公開第2017/220555号、国際公開第2017/015560号、国際公開第2017/025498号、国際公開第2017/149143号、国際公開第2018/069500号、国際公開第2018/083087号、国際公開第2018/034227号、国際公開第2014/140180号に開示されている抗体、LAG-3アンタゴニストタンパク質AVA-017(Avacta)、可溶性LAG-3融合タンパク質IMP321(エフチラギモドアルファ;Immutep;欧州特許第2 205 257号およびBrignone et al.,2007,J.Immunol.,179:4202-4211)、ならびに国際公開第2018/222711号に開示されている可溶性LAG-3タンパク質が挙げられる。
TIM-3阻害剤としては、限定されないが、F38-2E2(BioLegend)、コボリマブ(TSR-022;Tesaro)、LY3321367(Eli Lilly)、MBG453(Novartis)などのTIM-3を標的とする抗体、ならびに例えば、国際公開第2013/006490号、国際公開第2018/085469号(例えば、配列番号3および4に従う核酸配列によってコードされる重鎖および軽鎖配列を含む抗体)、国際公開第2018/106588号、国際公開第2018/106529号(例えば、配列番号8~11に従う重鎖および軽鎖配列を含む抗体)に開示されている抗体が挙げられる。
TIM-3リガンド阻害剤としては、限定されないが、抗CEACAM1抗体CM10(cCAM Biotherapeutics;国際公開第2013/054331号参照)などのCEACAM1阻害剤、国際公開第2015/075725号(例えば、CM-24、26H7、5F4、TEC-11、12-140-4、4/3/17、COL-4、F36-54、34B1、YG-C28F2、D14HD11、M8.7.7、D11-AD11、HEA81、B l.l、CLB-gran-10、F34-187、T84.1、B6.2、B 1.13、YG-C94G7、12-140-5、scFv DIATHIS1、TET-2;cCAM Biotherapeutics)に開示されている抗体、Watt et al.,2001(Blood,98:1469-1479)および国際公開第2010/12557号に記載されている抗体、ならびにバビツキシマブ(Peregrine)などのPtdSer阻害剤が挙げられる。
CD94/NKG2A阻害剤には、限定されないが、モナリズマブ(IPH2201;Innate Pharma)、ならびに米国特許第9,422,368号(例えばヒト化Z199;欧州特許第2 628 753号参照)、欧州特許第3 193 929号および国際公開第2016/032334号(例えばヒト化Z270;欧州特許第2 628 753号参照)に開示されている抗体およびそれらの生成のための方法が含まれる。
IDO阻害剤としては、限定されないが、エキシグアミンA、エパカドスタット(INCB024360;InCyte;米国特許第9,624,185号参照)、インドキシモド(Newlink Genetics;CAS番号:110117-83-4)、NLG919(Newlink Genetics/Genentech;CAS番号:1402836-58-1)、GDC-0919(Newlink Genetics/Genentech;CAS番号:1402836-58-1)、F001287(Flexus Biosciences/BMS;CAS番号:2221034-29-1)、KHK2455(Cheong et al.,2018,Expert Opin Ther Pat.28(4):317-330)、PF-06840003(国際公開第2016/181348号参照)、ナボキシモド(RG6078、GDC-0919、NLG919;CAS番号:1402837-78-8)、リンロドスタット(BMS-986205;Bristol-Myers Suibb;CAS番号:1923833-60-6)、小分子、例えば1-メチル-トリプトファン、ピロリジン-2,5-ジオン誘導体(国際公開第2015/173764号参照)およびSheridan,2015,Nat Biotechnol 33:321-322によって開示されているIDO阻害剤が挙げられる。
CD39阻害剤としては、限定されないが、A001485(Arcus Biosciences)、PSB 069(CAS番号:78510-31-3)および抗CD39モノクローナル抗体IPH5201(Innate Pharma;Perrot et al.,2019,Cell Reports 8:2411-2425.E9参照)が挙げられる。
CD73阻害剤としては、限定されないが、CPI-006(Corvus Pharmaceuticals)、MEDI9447(MedImmune;国際公開第2016075099号参照)、IPH5301(Innate Pharma;Perrot et al.,2019,Cell Reports 8:2411-2425.E9参照)などの抗CD73抗体、国際公開第2018/110555号に記載されている抗CD73抗体、低分子阻害剤PBS 12379(Tocris Bioscience;CAS番号:1802226-78-3)、A000830、A001190およびA001421(Arcus Biosciences;Becker et al.,2018,Cancer Research 78(13 Supplement):3691-3691,doi:10.1158/1538-7445.AM2018-3691参照)、CB-708(Calithera Biosciences)、ならびにAllard et al.,2018(Immunol Rev.,276(1):121-144)に記載されているプリン細胞傷害性ヌクレオシド類似体に基づくジホスホネートが挙げられる。
A2AR阻害剤としては、限定されないが、イストラデフィリン(KW-6002;CAS番号:155270-99-8)、PBF-509(Palobiopharma)、シフォラデナント(CPI-444:Corvus Pharma/Genentech;CAS番号:1202402-40-1)、ST1535([2ブチル-9-メチル-8-(2H-1,2,3-トリアゾール2-イル)-9H-プリン-6-キシラミン];CAS番号:496955-42-1)、ST4206(Stasi et al.,2015,Europ J Pharm 761:353-361;CAS番号:1246018-36-9)、トザデナント(SYN115;CAS番号:870070-55-6)、V81444(国際公開第2002/055082号参照)、プレラデナント(SCH420814;Merck;CAS番号:377727-87-2)、ビパデナント(BIIB014;CAS番号:442908-10-3)、ST1535(CAS番号:496955-42-1)、SCH412348(CAS番号:377727-26-9)、SCH442416(Axon 2283;Axon Medchem;CAS番号:316173-57-6)、ZM241385(4-(2-(7-アミノ-2-(2-フリル)-(1,2,4)トリアゾロ(2,3-a)-(1,3,5)トリアジン-5-イル-アミノ)エチル)フェノール;CAS番号:139180-30-6)、AZD4635(AstraZeneca)、AB928(二重A2AR/A2BR低分子阻害剤;Arcus Biosciences)およびSCH58261(Popoli et al.,2000,Neuropsychopharm 22:522-529参照;CAS番号:160098-96-4)などの低分子阻害剤が挙げられる。
A2BR阻害剤としては、限定されないが、AB928(二重A2AR/A2BR低分子阻害剤;Arcus Biosciences)、MRS 1706(CAS番号:264622-53-9)、GS6201(CAS番号:752222-83-6)およびPBS1115(CAS番号:152529-79-8)が挙げられる。
VISTA阻害剤としては、限定されないが、JNJ-61610588(オンバチリマブ;Janssen Biotech)などの抗VISTA抗体ならびに低分子阻害剤CA-170(抗PD-L1/L2および抗VISTA低分子;CAS番号:1673534-76-3)が挙げられる。
Siglec阻害剤としては、限定されないが、米国特許出願公開第2019/023786号および国際公開第2018/027203号に開示されている抗Sigle-7抗体、(例えば、配列番号1に従う可変重鎖領域および配列番号15に従う可変軽鎖領域を含む抗体)、抗Siglec-2抗体イノツズマブオゾガマイシン(Besponsa;米国特許第8,153,768号および米国特許第9,642,918号参照)、抗Siglec-3抗体ゲムツズマブオゾガマイシン(Mylotarg;米国特許第9,359,442号参照)、または米国特許出願公開第2019/062427号、米国特許出願公開第2019/023786号、国際公開第2019/011855号、国際公開第2019/011852号(例えば、配列番号171~176、もしくは3および4、もしくは5および6、もしくは7および8、もしくは9および10、もしくは11および12、もしくは13および14、もしくは15および16、もしくは17および18、もしくは19および20、もしくは21および22、もしくは23および24、もしくは25および26に従うCDRを含む抗体)、米国特許出願公開第2017/306014号および欧州特許第3 146 979号に開示されている抗Siglec-9抗体が挙げられる。
CD20阻害剤としては、限定されないが、リツキシマブ(RITUXAN;IDEC-102;IDEC-C2B8;米国特許第5,843,439号参照)、ABP 798(リツキシマブバイオシミラー)、オファツムマブ(2F2;国際公開第2004/035607号参照)、オビヌツズマブ、オクレリズマブ(2h7;国際公開第2004/056312号参照)、イブリツモマブチウキセタン(Zevalin)、トシツモマブ、ウブリツキシマブ(LFB-R603;LFB Biotechnologies)などの抗CD20抗体、および米国特許出願公開第2018/0036306号に開示されている抗体(例えば、配列番号1~3および4~6、または7および8、または9および10に従う軽鎖および重鎖を含む抗体)が挙げられる。
GARP阻害剤には、限定されないが、ARGX-115(arGEN-X)などの抗GARP抗体、ならびに米国特許出願公開第2019/127483号、米国特許出願公開第2019/016811号、米国特許出願公開第2018/327511号、米国特許出願公開第2016/251438号、欧州特許第3 253 796号に開示されている抗体およびそれら生成のための方法が含まれる。
CD47阻害剤としては、限定されないが、例えばHuF9-G4(Stanford University/Forty Seven)、CC-90002/INBRX-103(Celgene/Inhibrx)、SRF231(Surface Oncology)、IBI188(Innovent Biologics)、AO-176(Arch Oncology)などの抗CD47抗体、TG-1801(NI-1701;CD47およびCD19を標的とする二重特異性モノクローナル抗体;Novimmune/TG Therapeutics)およびNI-1801(CD47およびメソテリンを標的とする二重特異性モノクローナル抗体;Novimmune)を含むCD47を標的とする二重特異性抗体、ならびにALX148(ALX Oncology;Kauder et al.,2019,PLoS One,doi:10.1371/journal.pone.0201832)などのCD47融合タンパク質が挙げられる。
SIRPα阻害剤としては、限定されないが、OSE-172(Boehringer Ingelheim/OSE)、FSI-189(Forty Seven)などの抗SIRPα抗体、TTI-621およびTTI-662(Trillium Therapeutics;国際公開第2014/094122号参照)などの抗SIRPα融合タンパク質が挙げられる。
PVRIG阻害剤としては、限定されないが、COM701(CGEN-15029)などの抗PVRIG抗体、ならびに例えば国際公開第2018/033798号に開示されている抗体およびそれらの製造方法(例えば、CHA.7.518.1H4(S241P)、CHA.7.538.1.2.H4(S241P)、CPA.9.086H4(S241P)、CPA.9.083H4(S241P)、CHA.9.547.7.H4(S241P)、CHA.9.547.13.H4(S241P)、ならびに配列番号5に従う可変重鎖ドメインと国際公開第2018/033798号の配列番号10に従う可変軽鎖ドメインとを含む抗体、または配列番号9に従う重鎖と配列番号14に従う軽鎖とを含む抗体;国際公開第2018/033798号は、抗TIGIT抗体ならびに抗TIGIT抗体と抗PVRIG抗体との併用療法をさらに開示する)、国際公開第2016134333号、国際公開第2018017864号(例えば、配列番号11と少なくとも90%の配列同一性を有する配列番号5~7に従う重鎖および/もしくは配列番号12と少なくとも90%の配列同一性を有する配列番号8~10に従う軽鎖を含む抗体、または配列番号13および/もしくは14もしくは配列番号24および/もしくは29によってコードされる抗体、または国際公開第2018/017864号に開示されている別の抗体)に開示されている抗体およびそれらの製造方法、ならびに国際公開第2016/134335号に開示されている抗PVRIG抗体および融合ペプチドが挙げられる。
CSF1R阻害剤としては、限定されないが、抗CSF1R抗体カビラリズマブ(FPA008;FivePrime;国際公開第2011/140249号、国際公開第2013/169264号および国際公開第2014/036357号参照)、IMC-CS4(EiiLilly)、エマクツズマブ(R05509554;Roche)、RG7155(国際公開第2011/70024号、国際公開第2011/107553号、国際公開第2011/131407号、国際公開第2013/87699号、国際公開第2013/119716号、国際公開第2013/132044号)、ならびに低分子阻害剤BLZ945(CAS番号:953769-46-5)およびペキシダルチニブ(PLX3397;Selleckchem;CAS番号:1029044-16-3)が挙げられる。
CSF1阻害剤としては、限定されないが、欧州特許第1 223 980号およびWeir et al.,1996(J Bone Mineral Res 11:1474-1481)、国際公開第2014/132072号に開示されている抗CSF1抗体、ならびに国際公開第2001/030381号に開示されているアンチセンスDNAおよびRNAが挙げられる。
例示的なNOX阻害剤としては、限定されないが、低分子ML171(Gianni et al.,2010,ACS Chem Biol 5(10):981-93、NOS31(Yamamoto et al.,2018,Biol Pharm Bull.41(3):419-426)などのNOX1阻害剤、低分子セプレン(ヒスタミン二塩酸塩;CAS番号:56-92-8)、BJ-1301(Gautam et al.,2017,Mol Cancer Ther 16(10):2144-2156;CAS番号:1287234-48-3)およびLu et al.,2017,Biochem Pharmacol 143:25-38によって記載されている阻害剤などのNOX2阻害剤、低分子阻害剤VAS2870(Altenhofer et al.,2012,Cell Mol Life Sciences 69(14):2327-2343)、ジフェニレンヨードニウム(CAS番号:244-54-2)およびGKT137831(CAS番号:1218942-37-0;Tang et al.,2018,19(10):578-585参照)などのNOX4阻害剤が挙げられる。
TDO阻害剤としては、限定されないが、4-(インドール-3-イル)-ピラゾール誘導体(米国特許第9,126,984号および米国特許出願公開第2016/0263087号参照)、3-インドール置換誘導体(国際公開第2015/140717号、国際公開第2017/025868号、国際公開第2016/147144号参照)、3-(インドール-3-イル)-ピリジン誘導体(米国特許出願公開第2015/0225367号および国際公開第2015/121812号参照)、国際公開第2015/150097号、国際公開第2015/082499号、国際公開第2016/026772号、国際公開第2016/071283号、国際公開第2016/071293号、国際公開第2017/007700号に開示されている低分子二重IDO/TDO阻害剤などの二重IDO/TDOアンタゴニスト、ならびに低分子阻害剤CB548(Kim,C,et al.,2018,Annals Oncol 29(suppl_8):viii400-viii441)が挙げられる。
本開示によれば、免疫チェックポイント阻害剤は、阻害性チェックポイントタンパク質の阻害剤であるが、好ましくは刺激性チェックポイントタンパク質の阻害剤ではない。本明細書に記載されるように、多数のCTLA-4、PD-1、TIGIT、B7-H3、B7-H4、BTLA、KIR、LAG-3、TIM-3、CD94/NKG2A、IDO、A2AR、A2BR、VISTA、Siglec、CD20、CD39、CD73、GARP、CD47、PVRIG、CSF1R、NOXおよびTDOの阻害剤ならびにそれぞれのリガンドの阻害剤が公知であり、それらのいくつかは既に臨床試験中であるか、さらには承認されている。これらの公知の免疫チェックポイント阻害剤に基づいて、代替免疫チェックポイント阻害剤が開発され得る。特に、好ましい免疫チェックポイントタンパク質の公知の阻害剤をそのまま使用してもよく、またはその類似体を使用してもよく、特にキメラ化、ヒト化またはヒト形態の抗体および本明細書に記載される抗体のいずれかと交差競合する抗体を使用してもよい。
標的化が、T細胞増殖の増加、T細胞活性化の増強、および/またはサイトカイン産生の増加(例えばIFN-γ、IL2)に反映されるような抗腫瘍免疫応答などの免疫応答の刺激をもたらす限り、他の免疫チェックポイント標的もまた、アンタゴニストまたは抗体によって標的化され得ることが当業者に理解されるであろう。
チェックポイント阻害剤は、当技術分野で公知の任意の方法および任意の経路によって投与され得る。投与の方法および経路は、使用されるチェックポイント阻害剤の種類に依存する。
チェックポイント阻害剤は、本明細書に記載の任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。
チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイント阻害剤、例えば阻害性核酸分子または抗体もしくはその断片をコードする核酸、例えばDNAまたはRNA分子の形態で投与され得る。例えば、抗体は、本明細書に記載されるように、発現ベクターにコードされて送達され得る。核酸分子は、それ自体で、例えばプラスミドもしくはmRNA分子の形態で送達され得るか、または送達ビヒクル、例えばリポソーム、リポプレックスもしくは核酸脂質粒子と複合体化され得る。チェックポイント阻害剤はまた、チェックポイント阻害剤をコードする発現カセットを含む腫瘍溶解性ウイルスを介して投与され得る。チェックポイント阻害剤はまた、例えば細胞ベースの治療法の形態で、チェックポイント阻害剤を発現することができる内因性または同種異系細胞の投与によって投与され得る。
「細胞ベースの治療法」という用語は、疾患または障害(例えば癌疾患)を治療する目的で、免疫チェックポイント阻害剤を発現する細胞(例えばTリンパ球、樹状細胞、または幹細胞)を対象に移植することを指す。一実施形態では、細胞ベースの治療法は、遺伝子操作された細胞を含む。一実施形態では、遺伝子操作された細胞は、本明細書に記載されるような免疫チェックポイント阻害剤を発現する。一実施形態では、遺伝子操作された細胞は、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、アプタマー、抗体もしくはその断片、または可溶性免疫チェックポイントタンパク質もしくは融合物などの阻害性核酸分子である免疫チェックポイント阻害剤を発現する。遺伝子操作された細胞はまた、T細胞機能を増強するさらなる作用物質を発現し得る。そのような作用物質は当技術分野で公知である。免疫チェックポイントシグナル伝達の阻害において使用するための細胞ベースの治療法は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/222711号に開示されている。
本明細書で使用される「腫瘍溶解性ウイルス」という用語は、インビトロまたはインビボのいずれかで、正常細胞には全く影響を及ぼさないかまたは最小限の影響しか及ぼさずに、癌性または過剰増殖性細胞において選択的に複製し、その成長を遅らせるかまたはその死を誘導することができるウイルスを指す。免疫チェックポイント阻害剤の送達のための腫瘍溶解性ウイルスは、siRNA、shRNA、オリゴヌクレオチド、アンチセンスDNAもしくはRNA、アプタマー、抗体もしくはその断片、または可溶性免疫チェックポイントタンパク質もしくは融合物などの阻害性核酸分子である免疫チェックポイント阻害剤をコードし得る発現カセットを含む。腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくは複製能を有し、発現カセットはウイルスプロモータ、例えば合成初期/後期ポックスウイルスプロモータの制御下にある。例示的な腫瘍溶解性ウイルスとしては、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、ラブドウイルス(例えばセネカバレーウイルス;SVV-001などのピコルナウイルス)、コクサッキーウイルス、パルボウイルス、ニューカッスル病ウイルス(NDV)、単純ヘルペスウイルス(HSV;OncoVEX GMCSF)、レトロウイルス(例えばインフルエンザウイルス)、麻疹ウイルス、レオウイルス、シンドビスウイルス、国際公開第2017/209053号に例示的に記載されているワクシニアウイルス(Copenhagen、Western Reserve、Wyeth株を含む)、およびアデノウイルス(例えばDelta-24、Delta-24-RGD、ICOVIR-5、ICOVIR-7、Onyx-015、ColoAd1、H101、AD5/3-D24-GMCSF)が挙げられる。可溶性形態の免疫チェックポイント阻害剤を含む組換え腫瘍溶解性ウイルスの作製およびそれらの使用方法は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際公開第2018/022831号に開示されている。腫瘍溶解性ウイルスは、弱毒化ウイルスとして使用することができる。
放射線療法
放射線療法(RT)は、使用される2番目に一般的な治療レジメンであり、癌患者の約50%に行われる。放射線を悪性組織に局所的に送達するために、高エネルギー光子(X線およびγ線)、粒子照射(例えば陽子、炭素イオン)または放射性核種(セシウム137、イリジウム192、ヨウ素125)を使用する、様々な種類のRT治療が存在する。局所RT(LRT)は、120年以上にわたる技術的改善および放射線量の精緻化の歴史に向き合っている。
電離放射線とは、物質をイオン化するのに十分なエネルギーを有し、電磁放射線(X線およびγ線)と粒子放射線(αおよびβ粒子、陽子、重イオン)とに分けることができる放射線を指す。電離放射線の天然源は、放射性崩壊時に、α(He2+)、β(eまたはe)およびγ線(高エネルギー光子)の固有のスペクトルを放出する放射性同位体である。イオン化事象の数および組織浸透深さは、一次運動エネルギー、および帯電している場合はクーロンエネルギーの関数である。放射線量は、物質の単位質量当たりの吸収放射線量(1J放射線/kg物質)についての国際単位系(SI)単位としてグレイ(Gy)で測定される。
電離放射線が生体物質を横断するとき、電離放射線は、細胞、組織および全体としての生物に対する直接的かつ深刻な影響を伴って、化学結合を破壊し、分子をイオン化することができる。全ての細胞構造は、直接的または間接的に(放射線誘発活性酸素種(ROS)による間接イオン化)放射線によって害され得るが、DNA損傷は、最終的かつ最も深刻な結果と見なされる。電離放射線は、塩基損傷、一本鎖切断(SSB)および二本鎖切断(DSB)などの様々な種類のDNA損傷を引き起こし得る。DNA損傷の種類および密度は、放射線の種類(例えば電磁気または微粒子)および線量の関数である。しかしながら、正確な細胞運命は、開始されたDNA損傷応答(DDR)の関数としての細胞型、細胞周期相、修復能力および細胞死能力などの細胞固有因子に依存する。第1に、細胞が修復能力を有し、損傷が最小限である場合、細胞はその損傷を修復し得る。塩基損傷およびSSBは、塩基除去修復(BER)またはヌクレオチド除去修復(NER)を介して修復されるが、より重度のDSBは、非相同末端結合(NHEJ、全細胞周期相)または相同組換え(HR、SおよびG2期のみ)を介して修復される。第2に、細胞はDNA損傷を修復しようとし得るが、成功せず、その損傷形態で再生する。未修復のDSBは、有糸分裂崩壊による細胞死をもたらし得るが、誤って修復されたDSBは、染色体転座およびゲノム不安定性を生じさせ、二次癌を引き起こし得る。第3に、細胞は損傷を認識し、プログラム細胞死(アポトーシス)を受ける。
ほとんどの癌細胞は、異常なDNA修復経路および損なわれた細胞周期制御を示すので、それらは、それらの健康な対応物とは異なって電離放射線に応答し得る。
細胞死滅の線形二次(LQ)モデルは、放射線生物学および物理学における重要な数学的ツールの1つであり、送達される線量と細胞生存率との間の単純な関係を提供する。異なる放射線量をインビトロで適用し、クローン原性生存アッセイで測定される前駆細胞の生存コロニーを産生する能力によって細胞の生存率を決定する。クローン原性生存アッセイは、放射線に応答した細胞生存率を測定するための認められているゴールドスタンダードであり、
Figure 2023554154000024
によって定義され、Sは生存細胞率であり、Dは総線量であり、αおよびβは細胞の放射線感受性の尺度である。生存率は、放射線量に対して対数スケールでプロットされる。生存曲線は、低線量では線形勾配(α)および高線量では曲線勾配(β)に従う。この曲線の初期および後期の屈曲は細胞固有の特性であり、α/β比として表される。α/β比が高い細胞は、異なる線量にわたって比較的一定の細胞死速度を経験するが、α/β比が低い細胞は顕著な曲率を示し、高線量放射線に応答して細胞死が増加する。ほとんどの健康な細胞などのゆっくり増殖する細胞または組織は、一般に非常に良好に修復し、低いα/β比を有する(後期応答組織)。腫瘍細胞などの急速に増殖する細胞または組織は、一般に修復不良であり、高いα/β比を有する(急性応答組織)。特に低線量(<2~2.5Gy)では、正常細胞は、より遅い増殖および無傷のDNA修復のために腫瘍細胞よりも生存上の利点を有する。低線量での腫瘍細胞のより高い放射線感受性は、今日の標準的な臨床診療で依然として使用されている分割放射線療法の基礎を形成する。
しかしながら、電離放射線効果を予測するためのLQモデルには重大な制限がある:(i)これは、インビボ放射線効果を予測するために使用されるインビトロモデルであり、(ii)クローン原性生存率を測定するが、誘導される細胞死の種類、例えば有糸分裂崩壊、アポトーシス、壊死、ネクロトーシス、オートファジーまたは複製老化についての情報は提供されておらず、(iii)免疫系の反応を説明しておらず、および(iv)分割当たりのより高い線量(>10Gy)では正確ではない。
腫瘍の放射線治療処置には、2種類の放射線装置、すなわち電磁装置および粒子装置が利用される。種類(電磁または粒子)および一次エネルギーに依存して、放射線ビームは組織への異なる線量沈着プロファイルを有する。
光子は組織に深く浸透することができず、一次エネルギーに応じて、最初の5~10cmの水中にエネルギーを沈着するが、陽子ビームのような粒子ビームは、組織により深く浸透することができる。X線は比較的安価であり、微粒子照射ほど有害ではなく、したがってより安全であると考えられるため、従来の放射線療法で最も一般的に使用されている。
X線の治療的使用は、技術開発の長い歴史に向き合っており、今日でも初期の放射線装置の多くが依然として使用されている。1930年代の常用電圧X線管(200~500キロボルト(kV))の開発により、初めてX線ビームによる腫瘍の外部治療が可能になった。自然のX線またはγ線放出放射性核種とは対照的に、X線管は、電気入力からX線を生成する真空管である。電子はカソードから放出され、真空を通ってアノードに向かって加速される。管電圧(50kV~500kV)に応じて、電子は異なる速度に加速され、異なるエネルギーのX線が生成される。電子がアノード材料に衝突すると、電子ビームに垂直にX範囲の制動放射が生成される。自然放出放射性核種とは対照的に、放射線は、X線管がオンになっている限り生成されるのみである。得られるX線エネルギーは、管電圧およびアノード材料の関数である。組織浸透深さが低いため、常用電圧X線は臨床診療では断念されているが、前臨床研究では依然として頻繁に適用されている。
今日、治療目的で高エネルギーX線を生成するために医療用線形加速器(LINAC)を利用した大容量X線(1~25MeV)が使用されている。ビームのサイズ、形状および角度は、健康な組織を避けながら腫瘍を覆うように制御される。従来の3DコンフォーマルRT(3D-CRT)および強度変調RT(IMRT)は、外部ビームRT(EBRT)の異なる形態である。従来のRTでは、放射線量は、複数の重なり合うビームにおいて異なる角度から送達される。最高線量は腫瘍内のビーム交差部で送達され、線量は交点からの距離と共に減少する。3D-CRTでは、腫瘍3D画像(コンピュータ断層撮影法(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)または陽電子放射断層撮影法(PET))を使用して、腫瘍の形状により適合し、リスクのある臓器の輪郭をより正確に描画する放射線ビームを設計する。IMRTは、ビームが異なる強度の数百のビームレットに分割され、高コンフォーマル線量分布および高精度の腫瘍標的化を可能にする、先進的な形態の3D-CRTである。
電磁照射とは対照的に、陽子または炭素ビームを使用して、1970年代に治療的使用のために粒子照射が導入された。粒子照射は、その良好な浸透可能性およびその範囲の末端における高いエネルギー沈着(ブラッグピーク)を特徴とする。これは、軌道に沿った線量沈着が制限された極めて急峻な線量勾配を可能にする。しかしながら、放射線装置は非常にコストがかかり、高線量沈着は二次癌の高いリスクを伴う。
放射線送達および放射線装置が基本的であったときに、基礎となる生物学の認識のためではなく、技術的な制限およびオフターゲット効果を低減するという要求のために、総放射線量は複数のより小さい放射線量に分割された。今日、臨床LRTプロトコルは依然として分割LRTに基づいており、6~8週間にわたって毎日1.8~2Gy(月曜日から金曜日まで)を適用し、60~80Gyの総線量を累積する。
放射線送達の技術的進歩により、放射線量を高い精度、減少したマージンおよび高い線量コンフォメーションで送達することができる。これは、リスクの低い単回照射でより高い放射線量を送達することを可能にし、体幹部定位RT(SBRT)と呼ばれる。さらに、特に分割当たりの高線量を適用した場合に、LRTの免疫調節効果が知られるようになった。好ましい免疫学的効果のために、変化が進行中であり、高線量LRTを単独でまたは他の免疫調節剤と組み合わせて適用することが増えつつある。
医薬組成物
本明細書に記載の薬剤は、医薬組成物または医薬品で投与され得るか、任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。
医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含んでいてもよく、任意で1つ以上のアジュバント、安定剤などを含んでいてもよい。一実施形態では、医薬組成物は、治療的または予防的処置のため、例えば疾患を治療または予防するのに使用するためのものである。
「医薬組成物」という用語は、治療上有効な薬剤を、好ましくは薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と一緒に含む製剤に関する。上記医薬組成物は、前記医薬組成物を対象に投与することによって疾患または障害を治療する、予防する、またはその重症度を低下させるのに有用である。医薬組成物は、当技術分野では医薬製剤としても公知である。
本開示の医薬組成物は、1つ以上のアジュバントを含んでいてもよく、または1つ以上のアジュバントと共に投与されてもよい。「アジュバント」という用語は、免疫応答を延長、増強または加速する化合物に関する。アジュバントは、油エマルジョン(例えばフロイントアジュバント)、無機化合物(ミョウバンなど)、細菌産物(百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素など)、または免疫賦活複合体などの不均一な化合物の群を含む。アジュバントの例としては、限定されることなく、LPS、GP96、CpGオリゴデオキシヌクレオチド、成長因子、およびサイトカイン、例えばモノカイン、リンホカイン、インターロイキン、ケモカインが挙げられる。サイトカインは、IL1、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL10、IL12、IFNα、IFNγ、GM-CSF、LT-aであり得る。さらなる公知のアジュバントは、水酸化アルミニウム、フロイントアジュバント、またはMontanide(登録商標)ISA51などの油である。本開示で使用するための他の好適なアジュバントとしては、Pam3Cysなどのリポペプチドが挙げられる。
本開示による医薬組成物は、一般に、「薬学的有効量」および「薬学的に許容される調製物」で適用される。
「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
「薬学的有効量」または「治療有効量」という用語は、単独でまたはさらなる用量と共に所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅らせること、特に疾患の進行を中断するまたは逆転させることを含む。疾患の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の予防であり得る。本明細書に記載の組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の組成物の投与される用量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍/病変を縮小させるのに十分な量を含む。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の成長速度を低下させる(例えば、腫瘍の成長を抑制する)のに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の発生を遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の再発を予防するまたは遅延させるのに十分な量である。いくつかの実施形態では、有効量は、腫瘍の成長および/またはサイズおよび/または転移が減少、遅延、改善および/または予防されるように、腫瘍に対する対象の免疫応答を増加させるのに十分な量である。有効量は、1回以上の投与で投与することができる。いくつかの実施形態では、(例えば、mRNAを含む組成物の)有効量の投与は、(i)癌細胞の数を減少させ得る;(ii)腫瘍サイズを縮小させ得る;(iii)末梢器官への癌細胞浸潤を阻害し、遅延させ、ある程度減速させ、停止させ得る;(iv)転移を阻害し得る(例えば、ある程度減速させ得るおよび/またはブロックもしくは防止し得る);(v)腫瘍成長を阻害し得る;(vi)腫瘍の発生および/または再発を予防または遅延させ得る;ならびに/または(vii)癌に関連する症状の1つ以上をある程度軽減し得る。
本開示の医薬組成物は、塩、緩衝剤、防腐剤および任意で他の治療薬を含有し得る。一実施形態では、本開示の医薬組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤を含む。
本開示の医薬組成物で使用するための適切な防腐剤としては、限定されることなく、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが挙げられる。
本明細書で使用される「賦形剤」という用語は、本開示の医薬組成物中に存在し得るが、活性成分ではない物質を指す。賦形剤の例としては、限定されないが、担体、結合剤、希釈剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤または着色剤が挙げられる。
「希釈剤」という用語は、希釈するおよび/または希薄にする薬剤に関する。さらに、「希釈剤」という用語は、流体、液体または固体の懸濁液および/または混合媒体のいずれか1つ以上を含む。適切な希釈剤の例としては、エタノール、グリセロールおよび水が挙げられる。
「担体」という用語は、医薬組成物の投与を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然、合成、有機、無機であり得る成分を指す。本明細書で使用される担体は、対象への投与に適した1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質であり得る。適切な担体としては、限定されないが、滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、等張食塩水、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーが挙げられる。一実施形態では、本開示の医薬組成物は等張食塩水を含む。
治療的使用のための薬学的に許容される担体、賦形剤または希釈剤は、製薬分野で周知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.(A.R Gennaro edit.1985)に記載されている。
医薬担体、賦形剤または希釈剤は、意図される投与経路および標準的な製薬慣行に関して選択することができる。
一実施形態では、本明細書に記載の医薬組成物は、静脈内、動脈内、皮下、皮内または筋肉内に投与され得る。特定の実施形態では、医薬組成物は、局所投与または全身投与用に製剤化される。全身投与は、消化管を介した吸収を含む経腸投与、または非経口投与を含み得る。本明細書で使用される場合、「非経口投与」は、静脈内注射などによる、消化管を介する以外の任意の方法での投与を指す。別の実施形態では、医薬組成物は、全身投与用、例えば静脈内投与用に製剤化される。
本明細書で使用される「同時投与」という用語は、異なる化合物または組成物(例えば、抗原エピトープをコードするRNAおよび免疫賦活剤をコードするRNA)を同じ患者に投与するプロセスを意味する。異なる化合物または組成物は、同時に、本質的に同時に、または連続的に投与され得る。
治療
本発明は、対象において免疫応答を誘導するための、特に標的抗原または標的抗原を発現する細胞、例えば標的抗原を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を誘導するための方法および薬剤であって、免疫賦活剤をコードするRNAおよび任意で抗原エピトープをコードするRNAの有効量を投与する工程を含む方法および薬剤を提供する。
一実施形態では、本明細書に記載の方法および薬剤は、標的抗原に関連する疾患または障害に対する対象における免疫を提供する。したがって、本発明は、標的抗原に関連する疾患または障害を治療または予防するための方法および薬剤を提供する。
一実施形態では、本明細書に記載の方法および薬剤は、標的抗原に関連する疾患または障害を有する対象に投与される。一実施形態では、本明細書に記載の方法および薬剤は、標的抗原に関連する疾患または障害を発症するリスクがある対象に投与される。
本発明の治療化合物または治療組成物は、疾患もしくは障害に罹患しているか、または疾患もしくは障害を発症するリスクがある(もしくは発症しやすい)対象に、予防的に(すなわち疾患または障害を予防するために)または治療的に(すなわち疾患または障害を治療するために)投与され得る。そのような対象は、標準的な臨床方法を用いて同定され得る。本発明の文脈において、予防的投与は、疾患または障害が予防されるか、あるいはその進行が遅延されるように、疾患の明白な臨床症状の発現の前に行われる。医学の分野の文脈において、「予防する」という用語は、疾患による死亡または罹患の負担を軽減する任意の活性を包含する。予防は、一次、二次および三次予防レベルで行うことができる。一次予防は疾患の発症を回避するが、二次および三次レベルの予防は、機能を回復させ、疾患関連合併症を減少させることによって、疾患の進行および症状の出現を予防すること、ならびに既に確立された疾患の悪影響を減少させることを目的とした活動を包含する。
いくつかの実施形態では、本発明の組成物の投与は、単回投与によって実施され得るか、または複数回投与によってブーストされ得る。
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部源に由来する因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能不全によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能不全、窮迫、社会的問題、もしくは死亡を引き起こす、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、ならびに構造および機能の非定型の変化を含む場合があるが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリと見なされ得る。多くの疾患を患い、それらと共に生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。
「倦怠感」という用語は、しばしば感染症または他の疾患の最初の徴候である、一般的な不快感、不安、または痛みに関する。
本文脈において、「治療」、「治療する」または「治療的介入」という用語は、疾患または障害などの状態と闘うことを目的とした対象の管理およびケアに関する。この用語は、症状もしくは合併症を緩和するため、疾患、障害もしくは状態の進行を遅らせるため、症状および合併症を緩和もしくは軽減するため、ならびに/または疾患、障害もしくは状態を治癒もしくは排除するため、ならびに状態を予防するための治療上有効な化合物の投与などの、対象が罹患している所与の状態に対するあらゆる範囲の治療を含むことが意図されており、ここで、予防は、疾患、状態または障害と闘うことを目的とした個体の管理およびケアとして理解されるべきであり、症状または合併症の発症を防止するための活性化合物の投与を含む。
「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長する(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し得る、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ得る、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ得る、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ得る、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
「予防的処置」または「予防処置」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的処置」または「予防処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害に罹患し得るかまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有していても有していなくてもよいヒトまたは別の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、小児、および新生児を包含する。本開示の実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。
「患者」という用語は、治療のための個体または対象、特に疾患個体または対象を意味する。
本開示の一実施形態では、目的は、癌細胞に対する免疫応答を提供すること、および癌疾患を治療することである。一実施形態では、癌は抗原陽性癌である。
本明細書に記載の医薬組成物は、免疫応答を誘導または増強するために適用可能である。したがって、本明細書に記載の医薬組成物は、抗原またはエピトープが関与する疾患の予防的および/または治療的処置に有用である。
本明細書で使用される場合、「免疫応答」は、抗原または抗原を発現する細胞に対する統合された身体応答を指し、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を指す。免疫系は、より原始的な自然免疫系と、それぞれが体液性成分および細胞性成分を含む脊椎動物の獲得免疫系または適応免疫系とに分けられる。
「細胞媒介性免疫」、「細胞性免疫」、「細胞性免疫応答」、または同様の用語は、抗原の発現を特徴とする、特にクラスIまたはクラスII MHCによる抗原の提示を特徴とする細胞に向けられる細胞応答を含むことが意図されている。細胞応答は、免疫エフェクタ細胞、特に「ヘルパー」または「キラー」のいずれかとして働くT細胞またはTリンパ球と呼ばれる細胞に関する。ヘルパーT細胞(CD4T細胞とも呼ばれる)は、免疫応答を調節することによって中心的な役割を果たし、キラー細胞(細胞傷害性T細胞、細胞溶解性T細胞、CD8T細胞またはCTLとも呼ばれる)は、癌細胞などの疾患細胞を死滅させ、さらなる疾患細胞の産生を防止する。
本発明の文脈における「エフェクタ機能」という用語は、例えば癌細胞などの疾患細胞の死滅をもたらす免疫系の成分によって媒介される任意の機能を含む。一実施形態では、本発明の文脈におけるエフェクタ機能は、T細胞媒介エフェクタ機能である。そのような機能は、ヘルパーT細胞(CD4T細胞)の場合、サイトカインの放出ならびに/またはCD8リンパ球(CTL)および/もしくはB細胞の活性化を含み、CTLの場合、例えばアポトーシスまたはパーフォリン媒介細胞溶解を介した、細胞、すなわち抗原の発現を特徴とする細胞の排除、IFN-γおよびTNF-αなどのサイトカインの産生、ならびに抗原を発現する標的細胞の特異的細胞溶解性死滅を含む。
本発明の文脈における「免疫エフェクタ細胞」または「免疫反応性細胞」という用語は、免疫反応中にエフェクタ機能を発揮する細胞に関する。一実施形態における「免疫エフェクタ細胞」は、細胞上のMHCに関連して提示されるか、または細胞の表面上に発現される抗原などの抗原に結合し、免疫応答を媒介することができる。例えば、免疫エフェクタ細胞は、T細胞(細胞傷害性T細胞、ヘルパーT細胞、腫瘍浸潤T細胞)、B細胞、ナチュラルキラー細胞、好中球、マクロファージ、および樹状細胞を含む。好ましくは、本発明の文脈において、「免疫エフェクタ細胞」は、T細胞、好ましくはCD4および/またはCD8T細胞、最も好ましくはCD8T細胞である。本発明によれば、「免疫エフェクタ細胞」という用語はまた、適切な刺激で免疫細胞(T細胞、特にTヘルパー細胞、または細胞溶解性T細胞など)に成熟することができる細胞を含む。免疫エフェクタ細胞は、CD34造血幹細胞、未成熟および成熟T細胞ならびに未成熟および成熟B細胞を含む。T細胞前駆体の細胞溶解性T細胞への分化は、抗原に曝露された場合、免疫系のクローン選択に類似する。活性化されると、細胞傷害性リンパ球は標的細胞の破壊を引き起こす。例えば、細胞傷害性T細胞は、以下の手段のいずれかまたは両方によって標的細胞の破壊を引き起こす。第1に、活性化されると、T細胞は、パーフォリン、グランザイム、およびグラニュライシンなどの細胞毒を放出する。パーフォリンおよびグラニュライシンは標的細胞に細孔を作り、グランザイムは細胞に進入し、細胞のアポトーシス(プログラム細胞死)を誘導する細胞質のカスパーゼカスケードを引き起こす。第2に、アポトーシスは、T細胞と標的細胞との間のFas-Fasリガンド相互作用を介して誘導され得る。
「リンパ系細胞」は、細胞性免疫応答などの免疫応答を生成することができる細胞、またはそのような細胞の前駆細胞であり、リンパ球、好ましくはTリンパ球、リンパ芽球および形質細胞を含む。リンパ系細胞は、本明細書に記載される免疫エフェクタ細胞であり得る。好ましいリンパ系細胞はT細胞である。
「T細胞」および「Tリンパ球」という用語は、本明細書では互換的に使用され、Tヘルパー細胞(CD4+T細胞)および細胞溶解性T細胞を含む細胞傷害性T細胞(CTL、CD8+T細胞)を含む。「抗原特異的T細胞」、「抗原に特異的なT細胞」という用語または同様の用語は、特にMHC分子に関連して抗原提示細胞または癌細胞などの疾患細胞の表面に提示された場合、T細胞が標的とする抗原を認識し、好ましくはT細胞のエフェクタ機能を発揮するT細胞に関する。
T細胞は、リンパ球として公知の白血球の群に属し、細胞性免疫において中心的な役割を果たす。これらは、T細胞受容体(TCR)と呼ばれるこれらの細胞表面上の特別な受容体の存在によって、B細胞およびナチュラルキラー細胞などの他のリンパ球型と区別することができる。胸腺は、T細胞の成熟に関与する主要な器官である。T細胞のいくつかの異なるサブセットが発見されており、それぞれが異なる機能を有する。
Tヘルパー細胞は、数ある機能の中でも特に、B細胞の形質細胞への成熟ならびに細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的プロセスにおいて他の白血球を補助する。これらの細胞は、その表面にCD4糖タンパク質を発現するので、CD4+T細胞としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面上に発現されるMHCクラスII分子によってペプチド抗原と共に提示されたときに活性化される。活性化されると、これらは速やかに分裂し、能動免疫応答を調節または補助するサイトカインと呼ばれる小さなタンパク質を分泌する。
細胞傷害性T細胞は、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を破壊し、移植拒絶反応にも関与する。これらの細胞は、その表面にCD8糖タンパク質を発現するので、CD8+T細胞としても公知である。これらの細胞は、身体のほぼあらゆる細胞の表面に存在する、MHCクラスIに関連する抗原に結合することによってそれらの標的を認識する。
T細胞の大部分は、いくつかのタンパク質の複合体として存在するT細胞受容体(TCR)を有する。T細胞のTCRは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に結合し、標的細胞の表面に提示される免疫原性ペプチド(エピトープ)と相互作用することができる。TCRの特異的結合は、T細胞内のシグナルカスケードを誘発し、増殖および成熟エフェクタT細胞への分化をもたらす。実際のT細胞受容体は、独立したT細胞受容体アルファおよびベータ(TCRαおよびTCRβ)遺伝子から産生され、α-TCR鎖およびβ-TCR鎖と呼ばれる2つの別個のペプチド鎖で構成される。γδ T細胞(ガンマデルタT細胞)は、その表面に異なるT細胞受容体(TCR)を有するT細胞の小さなサブセットである。しかし、γδ T細胞では、TCRは1本のγ鎖と1本のδ鎖で構成される。このT細胞の群は、αβ T細胞よりもはるかにまれである(全T細胞の2%)。
「体液性免疫」または「体液性免疫応答」は、分泌抗体、補体タンパク質、および特定の抗菌ペプチドなどの細胞外液に見出される高分子によって媒介される免疫の態様である。これは、細胞媒介性免疫とは対照的である。抗体が関与するその態様は、しばしば抗体媒介性免疫と呼ばれる。
本開示は、保護的、防御的、予防的および/または治療的であり得る免疫応答を企図する。本明細書で使用される場合、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」は、誘導前に特定の抗原に対する免疫応答が存在しなかったことを示し得るか、または誘導前に特定の抗原に対する基礎レベルの免疫応答があり、これが誘導後に増強されたことを示し得る。したがって、「免疫応答を誘導する(または誘導すること)」は、「免疫応答を増強する(または増強すること)」を含む。
「免疫療法」という用語は、免疫応答を誘導または増強することによる疾患または状態の治療に関する。「免疫療法」という用語は、抗原免疫化または抗原ワクチン接種および免疫刺激を含む。
「免疫化」または「ワクチン接種」という用語は、例えば治療上または予防上の理由により、免疫応答を誘導する目的で個体に抗原を投与するプロセスを表す。
「マクロファージ」という用語は、単球の分化によって産生される食細胞のサブグループを指す。炎症、免疫サイトカインまたは微生物産物によって活性化されるマクロファージは、外来病原体をマクロファージ内に非特異的に貪食し、病原体の分解をもたらす加水分解および酸化攻撃によって死滅させる。分解されたタンパク質由来のペプチドはマクロファージ細胞表面に提示され、そこでT細胞によって認識され得、B細胞表面の抗体と直接相互作用して、T細胞およびB細胞の活性化ならびに免疫応答のさらなる刺激をもたらすことができる。マクロファージは抗原提示細胞のクラスに属する。一実施形態では、マクロファージは脾臓マクロファージである。
「樹状細胞」(DC)という用語は、抗原提示細胞のクラスに属する食細胞の別のサブタイプを指す。一実施形態では、樹状細胞は、造血骨髄前駆細胞に由来する。これらの前駆細胞は、最初に未成熟な樹状細胞に変化する。これらの未成熟細胞は、高い食作用活性と低いT細胞活性化能とを特徴とする。未成熟な樹状細胞は、ウイルスおよび細菌などの病原体について周囲環境を絶えずサンプリングする。それらは、提示可能な抗原と接触すると、活性化されて成熟樹状細胞となり、脾臓またはリンパ節に移動し始める。未成熟樹状細胞は病原体を貪食し、それらのタンパク質を小さな断片に分解し、成熟すると、MHC分子を使用してそれらの断片を細胞表面に提示する。同時に、それらは、CD80、CD86およびCD40などのT細胞活性化における共受容体として機能する細胞表面受容体を上方制御し、T細胞を活性化するそれらの能力を大幅に増強する。それらはまた、樹状細胞が血流を通って脾臓に、またはリンパ系を通ってリンパ節に移動するように誘導する走化性受容体であるCCR7を上方制御する。ここで、それらは抗原提示細胞として働き、非抗原特異的共刺激シグナルと共に、抗原を提示することによってヘルパーT細胞およびキラーT細胞ならびにB細胞を活性化する。したがって、樹状細胞は、T細胞またはB細胞に関連する免疫応答を積極的に誘導することができる。一実施形態では、樹状細胞は脾臓樹状細胞である。
「抗原提示細胞」(APC)という用語は、その細胞表面上に(またはその細胞表面で)少なくとも1つの抗原または抗原断片を表示、獲得、および/または提示することができる様々な細胞の1つである。抗原提示細胞は、プロフェッショナル抗原提示細胞と非プロフェッショナル抗原提示細胞とに区別することができる。
「プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、ナイーブT細胞との相互作用に必要な主要組織適合遺伝子複合体クラスII(MHCクラスII)分子を構成的に発現する抗原提示細胞に関する。T細胞が抗原提示細胞の膜上のMHCクラスII分子複合体と相互作用する場合、抗原提示細胞は、T細胞の活性化を誘導する共刺激分子を産生する。プロフェッショナル抗原提示細胞は、樹状細胞およびマクロファージを含む。
「非プロフェッショナル抗原提示細胞」という用語は、MHCクラスII分子を構成的に発現しないが、インターフェロンγなどの特定のサイトカインによる刺激を受けると発現する抗原提示細胞に関する。例示的な非プロフェッショナル抗原提示細胞としては、線維芽細胞、胸腺上皮細胞、甲状腺上皮細胞、グリア細胞、膵臓ベータ細胞または血管内皮細胞が挙げられる。
「抗原プロセシング」は、抗原の、前記抗原の断片であるプロセシング産物への分解(例えばタンパク質のペプチドへの分解)、および抗原提示細胞などの細胞による特異的T細胞への提示のためのMHC分子とこれらの断片の1つ以上との会合(例えば結合による)を指す。
「抗原が関与する疾患」という用語は、抗原に関係する任意の疾患、例えば抗原の存在を特徴とする疾患を指す。抗原が関与する疾患は癌であり得る。上述のように、抗原は、腫瘍抗原などの疾患関連抗原であり得る。一実施形態では、抗原が関与する疾患は、抗原を発現する細胞が関与する疾患である。
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする個体における生理学的状態を指すかまたは表す。癌の例としては、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例としては、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が挙げられる。
本開示による「癌」という用語は、癌転移も含む。
本明細書で参照される文書および試験の引用は、前述のいずれかが関連する先行技術であることの承認として意図されていない。これらの文書の内容に関する全ての記述は、出願人が入手可能な情報に基づいており、これらの文書の内容の正確さに関するいかなる承認も構成しない。
以下の説明は、当業者が様々な実施形態を作成および使用することを可能にするために提示される。特定の装置、技術および用途の説明は、例としてのみ提供される。本明細書に記載される例に対する様々な変更は、当業者には容易に明らかであり、本明細書で定義される一般的な原理は、様々な実施形態の精神および範囲から逸脱することなく他の例および用途に適用され得る。したがって、様々な実施形態は、本明細書に記載され、示される例に限定されることを意図するものではなく、特許請求の範囲と一致する範囲を与えられるべきである。
実施例1.リボサイトカインRNA脂質ナノ粒子およびRNAワクチンの調製
リボサイトカインmRNAを、ヌクレオシドウリジンをN1-メチルプソイドウリジンで置換して、Kreiter et al.(Kreiter,S.et al.Cancer lmmunol.lmmunother.56,1577-87(2007))に基づくインビトロ転写によって作製した。得られたmRNAはキャップ1構造を備えており、二本鎖(dsRNA)分子をセルロース精製によって枯渇させた(Baiersdorfer et al.,Mol.Ther.(2019))。精製したmRNAをHOで溶出し、さらに使用するまで-80°Cで保存した。記載されている全てのmRNA構築物のインビトロ転写は、BioNTech RNA Pharmaceuticals GmbHで実施された。修飾RNAを、i.v.投与後の肝臓へのRNAの選択的送達を媒介する脂質ナノ粒子(LNP)内に封入した。ワクチン接種のためのRNAを、β-S-ARCA(D1)キャップを使用してKreiter et al.(Kreiter,S.et al.Cancer lmmunol.lmmunother.56,1577-87(2007))に基づいて作製した。Kranz et al.,Nature(2016)に基づいてRNA-LPX製剤化を行った。
実施例2.hAlb-hIL2_A4s8の投与はマウスにおいて毒性をもたらすが、hAlb-hIL2の投与は毒性をもたらさない
本発明者らは、2つの合理的な組合せパートナーである、IL-7をコードするリボサイトカイン(hIL7-hAlb)および抗原をコードするT細胞ワクチン(RNA-リポプレックス(RNA-LPX))を用いてhAlb-hIL2_A4s8投与の潜在的な有害作用を評価することを目指した。この目的のために、ナイーブC57BL/6マウスを、5μgのRNA-LPX、3μgのhAlb-hIL2_A4s8、および3μgのhIL7-hAlb(n=7);3μgのhAlb-hIL2_A4s8および3μgのhIL7-hAlb(n=7);5μgのRNA-LPXおよび3μgのhAlb-hIL2_A4s8(n=7);または5μgのRNA-LPX、3μgのhAlb-hIL2および3μgのhIL7-hAlb(n=7)の三重の組合せのいずれかでi.v.処置した。NaCl処置動物を陰性対照とした(n=7)。
実験でモニターしたパラメータには、体重ならびにALAT、ASATおよびLDHの活性が含まれた。処置後2日目および3日目に動物の体重を記録した。体重変化を、各動物の現在の体重対処置前(0日目)の体重の比として計算した。全ての酵素を、肝臓および組織の損傷の代用として3日目に分析した。酵素レベルの分析のために、標準的な手順に従って顔面静脈から血液試料を採取した。血清分離管に血液を採取した後、遠心分離前に試料を約30分間凝固させた。遠心分離直後に血清を凍結し、保存した。測定の前に、血清を周囲温度で解凍し、水で希釈し、酵素活性を、Indiko(商標)Clinical Chemistry Analyzer(Thermo Fisher Scientific)を使用して製造業者のプロトコルに従って決定した。
hIL7-hAlbおよびRNA-LPXワクチン接種と組み合わせた3μgのhAlb-hIL2_A4s8によるマウスの投与は、処置後3日以内に10%を超える有意な体重減少をもたらしたが、3μgのhAlb-hIL2では体重減少をもたらさなかった(図1A)。hAlb-hIL2_A4s8をhIL7-hAlbまたはRNA-LPXのみと一緒に投与した群でわずかに少ない体重減少が観察され、両方の組合せパートナーが全体的な毒性に寄与することが示された。同様に、肝酵素ALAT、ASAT、およびLDHの活性の有意な増加は、hAlb-hIL2_A4s8を投与した群でのみ検出され、hAlb-hIL2では検出されなかった(図1B)。
実施例3.hAlb-hIL2_A4s8は、最初の処置後にのみNK細胞の一時的な増加を誘発する
実施例1に記載される望ましくない効果の潜在的なメディエータの1つはNK細胞であると仮定された。活性化NK細胞は、IL15スーパーアゴニストによって誘導される免疫毒性の原因となる大量のIFNγを分泌することが示された(Guo et al.J.Immunol.2015)。この目的のために、本発明者らは、CT26結腸癌を担持するマウスにおけるNK細胞動態を検討した。hlL7-hAlb、hAlb-hlL2、ならびにhAlb-hlL2_A4s8を、CT26腫瘍特異的抗原gp70に対するRNA-LPXワクチン接種と一緒に評価した。
BALB/cマウスに、0日目に5×10個のCT26結腸癌細胞を皮下(s.c.)接種した。10日後、マウスを、腫瘍体積に従ってそれぞれ11匹のマウスからなる4つの処置群に層別化した。処置は、10、17、24および31日目に、i.v.投与したリボサイトカイン(hAlb-hlL2、IL7-hAlbまたはhAlb-hlL2_A4s8;それぞれ3μg)および同時に20μgのgp70 RNA-LPXワクチンの週1回で合計4回の注射からなった。対照群には、6μgのhAlbをコードするRNAを投与した。
処置した動物の血液中のCD49bCD19CD4CD8NK細胞の数を、17、24および31日目にフローサイトメトリによって分析した。手短に述べると、50μLの血液を滴定量の抗体で染色し、その後、BD溶解溶液を用いて赤血球を溶解した。細胞をPBSで洗浄し、再懸濁し、Trucountチューブ(BD Biosciences)に移した。BD FACSCelesta(商標)フローサイトメータ(BD Biosciences)でデータを取得し、FlowJoソフトウェアバージョン10.3およびGraphPad Prismバージョン8.4で分析した。
hAlb-hlL2_A4s8処置は、最初の投与の1週間後にNK細胞の一時的な2.8倍の増加をもたらした(図2A)。数は最初の処置後14日以内に正常化し、17および24日目のその後のhAlb-hlL2_A4s8投与によって上昇しなかった。hAlb-hlL2注射もIL7-hAlb注射も、顕著なNK細胞拡大をもたらさなかった。
NK細胞拡大に対するRNAワクチンの潜在的な寄与に対処するために、BALB/cマウスに5×10個のCT26結腸癌細胞を0日目にs.c.接種した。10日後、マウスを腫瘍体積に従ってそれぞれ11匹のマウスからなる4つの処置群に層別化し、20μgのgp70 RNA-LPX、hAlb-hIL2_A4s8をコードする3μgのLNP製剤化RNA、または両方の組合せでi.v.処置した。対照群には、RNA-LPX(いかなる抗原もコードしない)+3μgのLNP製剤化hAlbコードRNAを投与した。上記のように末梢血中のNK細胞数を評価した。
gp70-RNA-LPXワクチン接種にかかわらず、hAlb-hIL2_A4s8処置は、処置の7日後(腫瘍接種後17日目;図2B)にNK細胞の有意な2.8倍の増加をもたらした。gp70-RNA-LPX注射単独後に細胞数の変化は観察されなかった。これらの結果は、RNA-LPXワクチンではなく、hAlb-hIL2_A4s8自体が観察されたNK細胞拡大の原因であることを示唆する。
まとめると、これらの所見は、最初の投与後にNK細胞拡大を駆動するhAlb-hlL2_A4s8の能力を強調し、この後に急速な収縮およびその後の処置に対する不応答性が続く。
実施例4.hAlb-hIL2_A4s8関連毒性はNK細胞に依存する
NK細胞がhAlb-hlL2_A4s8処置マウスで観察された毒性を説明するかどうかを決定するために(実施例1)、本発明者らは、処置開始の1日前に20μLの抗アシアロGM1抗体を腹腔内投与することによるNK細胞枯渇を伴ってまたは伴わずに、0、7、14および21日目に3μgのhAlb-hIL2_A4s8、3μgのhIL7-hAlbおよびRNA-LPXで処置したマウスにおける体重動態および血清肝酵素活性を比較した(n=7/群)。
処置開始前のNK細胞枯渇は、体重減少を予防し(図3A)、初回投与後にNK細胞枯渇抗体を投与されなかった群で観察された肝酵素活性の上昇を妨げた(3日目;図3B)。
これらのデータは、NK細胞をhAlb-hIL2_A4s8処置の毒性作用に直接結び付ける。
実施例5.低用量hAlb-hIL2_A4s8の前処置は処置忍容性を高める
hAlb-hIL2_A4s8処置の毒性副作用は、NK細胞の一時的な拡大に依存することが示された(実施例4)。重要なことに、NK細胞は、最初のhAlb-hIL2_A4s8注射後にのみ拡大することができ、その後は抵抗性のままであった(実施例3)。これらの所見に基づいて、本発明者らは、NK細胞活性化がより低い、より毒性の少ない用量で実現可能であり、初期低用量のhAlb-hIL2_A4s8がその後の高用量の忍容性を改善すると仮定した。
C57BL/6マウス(n=7/群)を、NaCl(対照);0日目に5μgのRNA-LPXワクチン、3μgのhAlb-hIL2_A4s8および3μgのhIL7-hAlb(3μg)、または0、7、14および21日目に5μgのRNA-LPXワクチン、0.5μgのhAlb-hIL2_A4s8および0.5μgのhIL7-hAlb(0.5μg)のいずれかでi.v.処置した。3μgまたは0.5μgのサイトカイン用量の処置忍容性を、0日目に5μgのRNA-LPX、0.5μgのhIL7-hAlbおよび0.5μgのhAlb-hIL2_A4s8による前処置を受け、7、14および21日目に5μgのRNA-LPXおよび3μgの各サイトカインで処置された群(0.5/3μg)と比較した。体重ならびに血清中の肝酵素活性を、実施例2に記載されるように決定した。
本発明者らは、初期低用量前処置が、その後の高サイトカイン用量(0.5/3μg群)の体重減少(図4A)ならびに血清中の肝酵素活性の上昇(図4B)を軽減したことを見出した。高用量リボサイトカインで直接処置した動物(3μg群)は、処置開始から最初の3日以内に14%を超える体重減少ならびに肝酵素活性の有意な上昇を示した。比較すると、0.5μgのサイトカインのみを投与されたマウス(0.5μg群)では、対照動物と同様の体重増加が観察された。同様に、0.5μgのサイトカインの1回の投与後または4回の投与後の肝酵素は、対照動物の範囲内にとどまった。
これらのデータは、動物がその後より高いリボサイトカイン用量を受けたか、または低用量リボサイトカインレジメンで維持されたかにかかわらず、最初の低用量リボサイトカインを受けた動物における堅固な処置忍容性を強調する。
実施例6.低用量前処置は、3週間の投与レジメンでさえもhAlb-hIL2_A4s8の忍容性を高める
これまでに示した全ての実験は、週1回のリボサイトカイン投与を評価した。しかし、臨床現場では、リボサイトカインは3週間ごとなどのより緩和された頻度で投与される可能性が高い。理論的には、個々の処置間の時間の増加は、反復的なNK細胞拡大および関連する毒性を可能にし得る。したがって、本発明者らは、前処置レジメンが、3週間ごとに緩和されるように投与された場合でもhAlb-hIL2_A4s8の忍容性を高めるかどうかを試験した。
C57BL/6マウス(n=5/群)に、0、7および14日目(週1回)、0および21日目(3週間ごと)、または21日目のみ(3週間目のみ)のいずれかに3μgのhAlb-hIL2_A4s8を投与した。前処置レジメンは、0日目に1.5μgのhAlb-hIL2_A4s8用量、続いて21日目に3μgのhAlb-hIL2_A4s8用量(3週間ごとに用量漸増)からなった。NK細胞およびCD8T細胞の頻度を、実施例3に記載されるように、0、7、14、21、28および35日目に採取した血液試料においてフローサイトメトリによって決定した。hAlb-hIL2_A4s8処置の忍容性を評価するために、各hAlb-hIL2_A4s8注射後3日間連続して動物の体重を評価した。
NK細胞頻度は、最初のhAlb-hIL2_A4s8注射の7日後(7日目)に、処置マウスの全ての群において3倍を超えて増加した(図5A)。14日目までに、NK細胞頻度は、処置スケジュールにかかわらず、ベースラインレベルに低下し、抵抗性のままであった。CD8T細胞の頻度もまた、最初のhAlb-hIL2_A4s8投与の7日後に有意に増加し、全ての処置群において同様の値に達した(図5B)。3週間のスケジュールでは、これに続いて、14日目までにベースラインレベルまで収縮し、その後2回目の投与時に同様の拡大動態を示した。これらのデータは、3週間の間隔の後、CD8T細胞が、最初のリボサイトカイン注射時と同じ増殖能を依然として有し、NK細胞とは異なって、反復hAlb-hIL2_A4s8処置に抵抗性ではないようであることを示した。
hAlb-hIL2_A4s8での処置は、初期処置後3日以内に5%(1.5μg)から最大9%(3μg)までの用量依存的体重減少をもたらした(図6A)。その後の週1回の処置は忍容性が高かった(図6B、C)。NK細胞拡大プロファイルから予想されるように(図5A)、21日目以降の毒性は、この時点で最初の3μg用量のhAlb-hIL2_A4s8を投与されたマウスでのみ観察されたが、3週間前に1.5μgで前処置されていたマウスでは観察されなかった(図6D、E)。
要約すると、本開示において、本発明者らは、NK細胞の拡大をもたらす任意の種類の免疫療法のための、潜在的な臨床的関連性のある忍容性の高いリボサイトカイン治療レジメンを同定した(例えばIL-15およびその変異体、ならびにI型インターフェロン誘導物質)。これらの治療スケジュールは、癌患者の緊急の医学的必要性を満たすことができる安全かつ有効な免疫療法の臨床開発のための重要なプラットフォームを提供する。

Claims (48)

  1. 対象において、サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAに対する望ましくない応答もしくは反応、またはその両方を低減する方法であって、
    前記RNAの第1の用量;
    前記RNAの第2の用量;
    を対象に投与する工程を含み、ならびに
    前記第1および第2の用量の投与量および投与期間が、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択される、方法。
  2. 前記第1の用量で投与される前記RNAの量が、前記第2の用量で投与される前記RNAの量の80%、75%、50%、40%、30%、25%、20%、15%、10%または5%以下である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記第1の用量で投与される前記RNAの量が、体重1kg当たり200μg、150μg、100μg、90μg、80μg、70μg、60μg、50μg、40μg、30μg、20μg、10μg、5μg、4μg、3μg、2μg、1μg、0.5μg、0.4μg、0.3μg、0.2μg、または0.1μg以下であり、前記第2の用量が前記第1の用量よりも多い、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記第2の用量で投与される前記RNAの量が、体重1kg当たり20μg、30μg、40μg、50μg、60μg、70μg、80μg、90μg、100μg、150μg、200μg、250μg、300μg、350μg、または400μgよりも多く、前記第2の用量が前記第1の用量よりも多い、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 1、2、3、4、5、6、7、14、または21日を超える日数により、前記第1の用量の投与の完了と前記第2の用量の投与の開始とが分けられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 56、49、42、35、または28日以下の日数により、前記第1の用量の投与の完了と前記第2の用量の投与の開始とが分けられる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
  7. サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードするRNAの1つ以上のさらなる用量を前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記第1および第2の用量が、静脈内、動脈内、皮下、腹腔内、皮内または筋肉内注射または注入によって投与される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 前記第1および第2の用量が静脈内投与される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記望ましくない応答または反応がNK細胞を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記望ましくない応答または反応が、NK細胞数の増加、発熱、倦怠感、体重の減少、肝酵素の活性の上昇、毛細血管漏出症候群、低血圧および浮腫からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
  12. 前記肝酵素が、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALAT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(ASAT)、および乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)からなる群より選択される1つ以上を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記望ましくない応答または反応が、前記第1の用量を投与せずに前記第2の用量を投与した後に起こる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記第1の用量、前記第2の用量、またはその両方の投与後に、前記対象を望ましくない応答または反応の存在について評価する工程をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
  15. 検出可能な望ましくない応答または反応を引き起こさない、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
  16. 望ましくない応答または反応の減少をもたらす、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
  17. ワクチンを前記対象に投与する工程をさらに含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
  18. ワクチンを前記対象に投与する工程が、1つ以上の抗原エピトープをコードするRNAを前記対象に投与する工程を含む、請求項17に記載の方法。
  19. 前記エピトープがT細胞エピトープである、請求項18に記載の方法。
  20. サイトカインタンパク質を含む前記アミノ酸配列が延長薬物動態(PK)ポリペプチドを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の方法。
  21. 前記延長PKポリペプチドが融合タンパク質を含む、請求項20に記載の方法。
  22. 前記融合タンパク質が、薬物動態修飾基に融合したサイトカインタンパク質を含む、請求項21に記載の方法。
  23. 前記薬物動態修飾基が、アルブミン、その機能的変異体、または前記アルブミンもしくはその機能的変異体の機能的断片を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記薬物動態修飾基が、ヒトアルブミン、その機能的変異体、または前記ヒトアルブミンもしくはその機能的変異体の機能的断片を含む、請求項22または23に記載の方法。
  25. 前記薬物動態修飾基が、前記サイトカインタンパク質のN末端に融合される、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
  26. サイトカインタンパク質を含む前記アミノ酸配列が、N末端からC末端に向かって、N-薬物動態修飾基-GSリンカー-サイトカインタンパク質-Cを含む、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
  27. 前記サイトカインタンパク質がIL2変異体を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の方法。
  28. 前記IL2変異体がヒトIL2変異体である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記ヒトIL2変異体が、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体の置換変異体を含む、請求項28に記載の方法。
  30. 1つ以上の前記置換が、βγ IL2受容体複合体(IL2Rβγ)に対する親和性を増強する、請求項29に記載の方法。
  31. 前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも80位(ロイシン)、81位(アルギニン)、85位(ロイシン)および92位(イソロイシン)で置換されている、請求項29または30に記載の方法。
  32. 野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた80位(ロイシン)がフェニルアラニンで置換され、81位(アルギニン)がグルタミン酸で置換され、85位(ロイシン)がバリンで置換され、92位(イソロイシン)がフェニルアラニンで置換されている、請求項31に記載の方法。
  33. 前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)でさらに置換されている、請求項31または32に記載の方法。
  34. 野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた74位(グルタミン)がヒスチジンで置換されている、請求項33に記載の方法。
  35. 1つ以上の前記置換が、αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のαサブユニットに対する親和性を低下させる、請求項29~34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 前記αβγ IL2受容体複合体(IL2Rαβγ)のαサブユニットに対する親和性を低下させる1つ以上の前記置換が、IL2Rαβγに対する親和性をIL2Rβγに対する親和性よりも大きく低下させる、請求項35に記載の方法。
  37. 前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも43位(リジン)および61位(グルタミン酸)で置換されている、請求項29~36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 43位(リジン)がグルタミン酸で置換され、61位(グルタミン酸)がリジンで置換されている、請求項37に記載の方法。
  39. 前記IL2変異体が、野生型ヒトIL2と比較して制御性T細胞を刺激する能力が低下している、請求項27~38のいずれか一項に記載の方法。
  40. 前記IL2変異体が、野生型ヒトIL2と比較してエフェクタT細胞を刺激する能力が増加している、請求項27~39のいずれか一項に記載の方法。
  41. 前記サイトカインタンパク質が、ヒトIL2またはヒトIL2の機能的変異体のムテインを含み、前記ヒトIL2またはその機能的変異体が、野生型ヒトIL2と比較して、野生型ヒトIL2に従って番号付けされた少なくとも43位(リジン)でグルタミン酸によって、61位(グルタミン酸)でリジンによって、74位(グルタミン)でヒスチジンによって、80位(ロイシン)でフェニルアラニンによって、81位(アルギニン)でグルタミン酸によって、85位(ロイシン)でバリンによって、および92位(イソロイシン)でフェニルアラニンによって置換されている、請求項1~40のいずれか一項に記載の方法。
  42. ヒトIL2が、配列番号1に従うアミノ酸配列を有する、請求項28~41のいずれか一項に記載の方法。
  43. サイトカインタンパク質を含む前記アミノ酸配列が、配列番号6に従うアミノ酸配列(hAlb-hIL2_A4s8)を含む、請求項1~42のいずれか一項に記載の方法。
  44. 前記対象がヒトである、請求項1~43のいずれか一項に記載の方法。
  45. サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第1の用量のRNA;および
    サイトカインタンパク質を含むアミノ酸配列をコードする第2の用量のRNA;
    を含むキットであって、
    前記第1および第2の用量の投与量が、前記第1および第2の用量を対象に投与すると、前記対象において望ましくない応答または反応のレベルが低下するように選択される、キット。
  46. 前記第1の用量の前記RNAおよび/または前記第2の用量の前記RNAの組成および/または量が、前記請求項のいずれか一項で定義された通りである、請求項45に記載のキット。
  47. 前記第1の用量の前記RNAと前記第2の用量の前記RNAとが別々のバイアル中に存在する、請求項45または46に記載のキット。
  48. 請求項1~44のいずれか一項に記載の方法において前記RNAを使用するための説明書を含む、請求項45~47のいずれか一項に記載のキット。
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