JP2023083358A - ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜および偏光板、ならびにポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム、偏光膜および偏光板、ならびにポリビニルアルコール系フィルムの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】偏光膜製造時の膨潤性と延伸性とのバランスによく優れ、薄型偏光膜の製造時にも破断が生じず、高い偏光性能を示しかつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルム、そのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜および偏光板、ならびに上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供する。【解決手段】本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、長尺のポリビニルアルコール系フィルムであって、下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする。Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)上記Δn(MD)Aveは、ポリビニルアルコール系フィルムにおいて、長さ方向の複屈折率を厚み方向に平均化した値を示し、上記Δn(TD)Aveは、幅方向の複屈折率を厚み方向に平均化した値を示す。【選択図】なし

Description

本発明は、優れた染色性を有し、高偏光度でかつ色ムラの少ない偏光膜の形成材料となるポリビニルアルコール系フィルム、そのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜および偏光板、ならびに上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法に関するものである。
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、透明性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。その偏光膜は、液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大している。
このような中、液晶テレビや多機能携帯端末等の画面の高輝度化、高精細化、大面積化、薄型化に伴い、光学特性に優れた偏光膜が要求されている。その具体的な要求は、さらなる偏光度の向上や色ムラの解消である。
一般的に、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を材料として、連続キャスト法により製造される。具体的には、まず、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャストドラムやエンドレスベルト等のキャスト型に流延して製膜し、つづいて、その製膜されたフィルムを、キャスト型から剥離した後、ニップロール等を用いて流れ方向(MD)に搬送しながら、熱ロールやフローティングドライヤー等を用いて乾燥することにより製造される。上記搬送工程では、上記製膜されたフィルムは、流れ方向(MD)に引っ張られるため、ポリビニルアルコール系高分子は流れ方向(MD)に配向しやすい。
一方、一般的に、偏光膜は、その原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、まず、水(温水を含む)で膨潤させ、ついで、ヨウ素等の二色性染料で染色し、その後、延伸することにより製造される。
そして、上記膨潤工程において重要なことは、ポリビニルアルコール系フィルムを厚み方向に速やかに膨潤させること、および上記染色工程においてフィルム内部に染料がスムーズに浸入できるようにポリビニルアルコール系フィルムを均一に膨潤させることである。
また、上記延伸工程は、染色後のフィルムを流れ方向(MD)に延伸して、ポリビニルアルコール系フィルム中の二色性染料を高度に配向させる工程であり、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、この延伸工程において、原反となるポリビニルアルコール系フィルムが流れ方向(MD)に良好な延伸性を示すことが重要である。
なお、偏光膜製造において、延伸工程と染色工程の順序が上記と逆のケースも実施されている。すなわち、原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、まず、水(温水を含む)で膨潤させ、ついで、延伸し、その後、ヨウ素等の二色性染料で染色するケースである。このケースにおいても、偏光膜の偏光性能を向上させるために重要なことは、原反のポリビニルアルコール系フィルムが、厚み方向に良好な膨潤性を示し、かつ流れ方向(MD)に良好な延伸性を示すことである。
さらに、近年、偏光膜の薄型化のために、原反であるポリビニルアルコール系フィルムも薄型化されてきている。ところが、その薄型のポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜を製造する際の延伸によって破断してしまう等の生産性の問題がある。
ポリビニルアルコール系フィルムの膨潤性を改良する方法としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂に多価アルコールを水膨潤助剤として添加する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
また、ポリビニルアルコール系フィルムの延伸性を改良する方法として、例えば、フィルムを製膜する時のキャストドラムの速度と最終的なポリビニルアルコール系フィルムの巻き取り速度との比を特定する方法(例えば、特許文献2参照)、キャストドラムで製膜後にその製膜されたフィルムを浮遊させて乾燥する方法(例えば、特許文献3参照)、製膜されたフィルムの乾燥工程における引っ張り具合を制御する方法(例えば、特許文献4参照)、ポリビニルアルコール系重合体フィルムの流れ方向(MD)の複屈折率をそのポリビニルアルコール系重合体フィルムの厚み方向に平均化した値〔Δn(MD)Ave〕、およびポリビニルアルコール系重合体フィルムの幅方向(TD)の複屈折率をそのポリビニルアルコール系重合体フィルムの厚み方向に平均化した値〔Δn(TD)Ave〕が、特定の関係を満たすよう調整する方法(例えば、特許文献5および特許文献6参照)が提案されている。
特開2001-302867号公報 特開2001-315141号公報 特開2001-315142号公報 特開2002-79531号公報 国際公開第2012/132984号 国際公開第2016/084836号
しかしながら、上記薄型のポリビニルアルコール系フィルムに対して、上記特許文献1の方法では、上記膨潤性の改良が不充分であり、上記特許文献2~6の方法では、偏光膜製造時の延伸性の改良が不充分である。
すなわち、上記特許文献1に開示の技術では、ポリビニルアルコール系フィルム全体の膨潤性を向上できても、ポリビニルアルコール系高分子の配向状態までは考慮されておらず、偏光膜製造時の流れ方向(MD)への延伸性を効率的に改良するのは困難である。逆に、水膨潤助剤の添加により、高分子の配向状態が乱れ、流れ方向(MD)への均一な延伸が困難となる傾向がある。
上記特許文献2に開示の技術は、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する際の流れ方向(MD)への延伸度合い(引っ張り具合)を特定したものであるが、幅方向(TD)への延伸も考慮しなければ、偏光膜製造時の延伸性を改良するには不充分である。
上記特許文献3に開示の技術では、製膜されたフィルムを均一に乾燥できるものの、高分子の配向までは制御できず、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性を改良するには不充分である。
また、上記特許文献4に開示の技術では、ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚を均一にできるものの、高分子の配向までは制御できず、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性を改良するには不充分である。
上記特許文献5および6に開示の技術では、実施例で用いられている厚みが60μm程度と厚いポリビニルアルコール系フィルムでは高い延伸性を発揮することができるものの、Δn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveの特定が上記厚みの厚いポリビニルアルコール系フィルムに対するものであることから、偏光膜のさらなる薄型化に対応するのは困難であり、膜厚が50μm以下といった薄膜のポリビニルアルコール系フィルムにおいて、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性を改良するには不充分である。
そこで、本発明は、このような背景下において、偏光膜製造時の膨潤性と延伸性とのバランスによく優れ、薄型偏光膜の製造時にも破断が生じず、高い偏光性能を示しかつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルム、そのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜および偏光板、ならびに上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を提供する。
本発明者らは、このような事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、連続キャスト法により製造されるポリビニルアルコール系フィルムにおいて、そのフィルムの流れ方向(MD)の複屈折率をそのフィルムの厚み方向に平均化した値と、そのフィルムの幅方向(TD)の複屈折率をそのフィルムの厚み方向に平均化した値とを、共に従来の偏光膜製造用原反のポリビニルアルコール系フィルムよりも大きな値とすると、偏光膜製造時の膨潤性と延伸性とのバランスによく優れ、薄型偏光膜の製造時にも破断が生じず、高い偏光性能を示しかつ色ムラの少ない偏光膜を得られることを見出した。
すなわち、本発明は、長尺のポリビニルアルコール系フィルムであって、下記式(A)および(B)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムを第1の要旨とする。
Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)
Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)
〔上記式(A)中のΔn(MD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの長さ方向(MD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。また、上記式(B)中のΔn(TD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。〕
また、本発明は、上記ポリビニルアルコール系フィルムが用いられていることを特徴とする偏光膜を第2の要旨とする。さらに、その偏光膜と、その偏光膜の少なくとも片面に設けられた保護フィルムとを備えていることを特徴とする偏光板を第3の要旨とする。
そして、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を連続キャスト法により製膜する製膜工程と、その製膜したフィルムを、流れ方向(MD)に搬送しながら、そのフィルムに対し連続的な乾燥および連続的な延伸を施す乾燥・延伸工程とを備えたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であって、製造されるポリビニルアルコール系フィルムが、下記式(A)および(B)を満足するようにすることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を第4の要旨とする。
Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)
Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)
〔上記式(A)中のΔn(MD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。また、上記式(B)中のΔn(TD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。〕
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、上記式(A)および(B)を満足するため、偏光膜製造時の膨潤性および延伸性に優れており、それ自体を薄型にして、薄型の偏光膜の製造に用いても破断が生じないようにすることができる。さらに、そのポリビニルアルコール系フィルムを用いると、高い偏光性能を示しかつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができる。
特に、上記ポリビニルアルコール系フィルムの厚みが5~50μmである場合には、偏光膜製造時の膨潤性および延伸性により優れ、性能により優れた偏光膜を得ることができる。
また、本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムが用いられているため、高い偏光性能を示し、かつ色ムラの少ないものとなっている。
さらに、本発明の偏光板は、上記偏光膜が用いられているため、高い偏光性能を示し、かつ色ムラの少ないものとなっている。
そして、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法は、連続キャスト法による製膜工程と、その製膜したフィルムを流れ方向(MD)に搬送しながら、そのフィルムに対し連続的な乾燥および連続的な延伸を施す乾燥・延伸工程とを備えているため、それら各工程における製造条件が相俟って、特定の複屈折率を有する本発明の上記ポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。
特に、上記乾燥・延伸工程において、上記製膜したフィルムを幅方向(TD)に1.05~1.5倍延伸する場合には、複屈折率が好適となり、偏光膜製造時の膨潤性および延伸性により優れたポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。
つぎに、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、下記式(A)および(B)を満足することを特徴とする長尺のポリビニルアルコール系フィルムである。
Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)
Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)
[上記式(A)中のΔn(MD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの長さ方向(MD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。また、上記式(B)中のΔn(TD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。]
上記ポリビニルアルコール系フィルムの長さ方向(MD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値〔Δn(MD)Ave〕は、Δn(MD)Ave≧2.2×10-3であることが必要であり、好ましくはΔn(MD)Ave≧2.5×10-3、特に好ましくはΔn(MD)Ave≧3.0×10-3、さらに好ましくはΔn(MD)Ave≧3.5×10-3である。
上記Δn(MD)Aveの値が低すぎると、後述する偏光膜製造時の膨潤工程で皺が発生し偏光膜に色ムラが発生してしまうため、本発明の目的を達成することができない。
なお、上記Δn(MD)Aveの上限は、通常1.5×10-2(好ましくは1.0×10-2)であり、Δn(MD)Aveの値が大きすぎても、偏光膜に色ムラが発生しやすい傾向がある。
上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値〔Δn(TD)Ave〕は、Δn(TD)Ave≧2.0×10-3であることが必要であり、好ましくはΔn(TD)Ave≧2.5×10-3、特に好ましくはΔn(TD)Ave≧3.0×10-3、さらに好ましくはΔn(TD)Ave≧3.5×10-3である。
上記Δn(TD)Aveの値が低すぎると、後述する偏光膜製造時の膨潤工程で皺が発生し、偏光膜に色ムラが発生しやすくなり、本発明の目的を達成することができない。
なお、上記Δn(TD)Aveの上限は、通常1.5×10-2(好ましくは1.0×10-2)であり、Δn(TD)Aveの値が大きすぎても、偏光膜に色ムラが発生しやすくなる傾向がある。
本発明において、上記Δn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveを制御する方法としては、後述する連続キャスト法による上記ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法において、キャスト型で製膜したフィルムを、そのキャスト型から剥離した後に、幅方向(TD)に延伸する方法が好ましい。この場合、その幅方向(TD)の延伸条件(延伸倍率、延伸時の雰囲気温度、延伸時間等)に応じて、他の工程での条件が適正に調節される。その条件としては、例えば、上記ポリビニルアルコール系フィルムの形成材料であるポリビニルアルコール系樹脂の化学構造、上記フィルムの製膜条件(キャスト型の温度等)、上記製膜したフィルムを乾燥させる乾燥条件(温度、時間)、上記製膜したフィルムの流れ方向(MD)への搬送速度等があげられる。これら条件のうちの少なくとも一つと、上記幅方向(TD)の延伸条件とを合わせて、上記Δn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveが制御される。
なお、上記ポリビニルアルコール系フィルムでは、幅方向(TD)でΔn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveの少なくとも一方の値に変動があることが多く、特に幅方向(MD)の両端部ではΔn(MD)Aveが高くなりやすいが、少なくともポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の中央部で式(A)および(B)を満たしていればよく、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の中心部を中心とする幅方向(TD)の8割以上の部分の領域で式(A)および(B)を満たすことが好ましい。式(A)および(B)を満たさないポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)の両端部は、ポリビニルアルコール系フィルムを流れ方向(MD)に延伸する前に切断して除去(耳取り)することができる。
本発明における上記Δn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveは、例えば、下記の方法により測定される。なお、これらΔn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveの測定位置は、ポリビニルアルコール系フィルムの50mm×50mmの領域内にある。
〔Δn(MD)Aveの測定方法〕
(1)ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)の任意の位置で、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=5mm×10mmの大きさの細片を切り出す。ついで、その細片を厚み100μmのPET(ポリエチレンテフタレート)フィルムで両側を挟み、それをさらに木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付ける。
(2)つぎに、上記(1)で切り出した細片を、細片の流れ方向(MD)と平行に10μm間隔でスライスし、観察用の(MD×TD=5mm×10μm)を作製する。
(3)ついで、スライス面が観察できるように、スライス片を倒してスライス面を上向きとしてスライドガラス上に載せてカバーガラスとリン酸トリクレジル(屈折率1.557)で封じ、二次元光弾性評価システム「PA-micro」(フォトニックラティス社製)を用いてスライス片3個のレタデーションを測定する。
(4)スライス片のレタデーション分布を「PA-micro」の測定画面に表示した状態で、スライス片を横切るように当初の上記ポリビニルアルコール系フィルムの表面に垂直な線分Xを引き、その線分X上でライン解析を行ってスライス片の厚み方向のレタデーション分布データを取得する。なお、観察は対物レンズ40倍を用いて行い、線幅を3画素としてレタデーションの平均値を採用する。
(5)得られたスライス片の厚み方向のレタデーション分布データをスライス片の厚み10μmで除して、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布を求め、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布の平均値をとる。スライス片3個について求めたそれぞれのスライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布の平均値をさらに平均して、上記ポリビニルアルコール系フィルムの「Δn(MD)Ave」とする。
〔Δn(TD)Aveの測定方法〕
(1)ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)の任意の位置で、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=10mm×5mmの大きさの細片を切り出す。そして、その細片を厚み100μmのPETフィルムで両側を挟み、それをさらに木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付ける。
(2)つぎに、上記(1)で切り出した細片を、細片の幅方向(TD)と平行に10μm間隔でスライスし、観察用のスライス片(MD×TD=10μm×5mm)を作製する。
(3)ついで、スライス面が観察できるように、スライス片を倒してスライス面を上向きとしてスライドガラス上に載せてカバーガラスとリン酸トリクレジル(屈折率1.557)で封じ、二次元光弾性評価システム「PA-micro」(フォトニックラティス社製)を用いてスライス片3個のレタデーションを測定する。
(4)スライス片のレタデーション分布を「PA-micro」の測定画面に表示した状態で、スライス片を横切るように当初の上記ポリビニルアルコール系フィルムの表面に垂直な線分Xを引き、その線分X上でライン解析を行ってスライス片の厚み方向のレタデーション分布データを取得する。なお、観察は対物レンズ40倍を用いて行い、線幅を3画素としてレタデーションの平均値を採用する。
(5)得られたスライス片の厚み方向のレタデーション分布データをスライス片の厚み10μmで除して、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布を求め、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布の平均値をとる。スライス片3個について求めたそれぞれのスライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布の平均値をさらに平均して、上記ポリビニルアルコール系フィルムの「Δn(TD)Ave」とする。
ここで、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、工程順に説明する。
〔フィルム材料〕
まず、本発明で使用されるポリビニルアルコール系樹脂、およびそのポリビニルアルコール系樹脂水溶液に関して説明する。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、すなわち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2~30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n-ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。上記側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(1)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(2)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(3)酢酸ビニルと2,2-ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(4)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万~30万であることが好ましく、特に好ましくは11万~28万、さらに好ましくは12万~26万である。重量平均分子量が小さすぎると、ポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に、充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎると、偏光膜製造時のポリビニルアルコール系フィルムの延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC-MALS法により測定される重量平均分子量である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、さらに好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。平均ケン化度が小さすぎると、ポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜にする場合に、充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量、平均ケン化度等の異なる2種以上のものを併用してもよい。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の一般的に使用される可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、およびカチオン性の少なくとも一つの界面活性剤を含有させることが、製膜性の点から好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15~60重量%であることが好ましく、特に好ましくは17~55重量%、さらに好ましくは20~50重量%である。上記水溶液の樹脂濃度が低すぎると、乾燥負荷が大きくなるため、生産能力が低下する傾向があり、高すぎると、粘度が高くなりすぎて、均一な溶解ができにくくなる傾向がある。
つぎに、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡等の方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であればよく、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
〔製膜工程〕
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、キャスト法や溶融押出し法で製造されるが、本発明においては、透明性、厚み精度、表面平滑性等の点から、キャスト法が好ましく、特に好ましくは、生産性の点から、連続キャスト法である。
その連続キャスト法とは、例えば、上記ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、T型スリットダイから、回転するキャストドラム、エンドレスベルト、樹脂フィルム等のキャスト型に連続的に吐出および流延して製膜する方法である。
ここで、上記キャスト型がキャストドラムである場合の製膜工程を説明する。
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度は、80~100℃であることが好ましく、特に好ましくは85~98℃である。
上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の温度が低すぎると、流動不良となる傾向があり、高すぎると、発泡する傾向がある。
上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に(上記好ましい温度80~100℃において)50~200Pa・sであることが好ましく、特に好ましくは(上記特に好ましい温度85~98℃において)70~150Pa・sである。
上記ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度が低すぎると、流動不良となる傾向があり、高すぎると、流延が困難となる傾向がある。
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の吐出速度は、0.2~5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.4~4m/分、さらに好ましくは0.6~3m/分である。
上記吐出速度が遅すぎると、生産性が低下する傾向があり、速すぎると、流延が困難となる傾向がある。
上記キャストドラムの直径は、好ましくは2~5m、特に好ましくは2.4~4.5m、さらに好ましくは2.8~4mである。
上記キャストドラムの直径が小さすぎると、乾燥長が不足し速度が出にくい傾向があり、大きすぎると、輸送性が低下する傾向がある。
上記キャストドラムの幅は、好ましくは4m以上であり、特に好ましくは4.5m以上、さらに好ましくは5m以上、殊に好ましくは5~7mである。
上記キャストドラムの幅が小さすぎると、生産性が低下する傾向がある。
上記キャストドラムの回転速度は、5~50m/分であることが好ましく、特に好ましくは6~40m/分、さらに好ましくは7~35m/分である。
上記キャストドラムの回転速度が遅すぎると、生産性が低下する傾向があり、速すぎると、乾燥が不充分となる傾向がある。
上記キャストドラムの表面温度は、40~99℃であることが好ましく、特に好ましくは60~95℃である。
上記キャストドラムの表面温度が低すぎると、乾燥不良となる傾向があり、高すぎると、発泡してしまう傾向がある。
このようにして製膜工程がなされる。そして、その製膜されたフィルムは、上記キャストドラムから剥離され、流れ方向(MD)に搬送される。
上記製膜されたフィルムの含水率は、0.5~15重量%であることが好ましく、特に好ましくは1~13重量%、さらに好ましくは2~12重量%である。上記含水率が低すぎても高すぎても、目的とする膨潤性や延伸性の発現が困難となる傾向にある。
〔乾燥・延伸工程〕
上記含水率の調整は、幅方向(TD)の延伸前のフィルムの含水率が高すぎる場合は、幅方向(TD)への延伸前にフィルムを乾燥することが好ましく、逆に、幅方向(TD)の延伸前のフィルムの含水率が低すぎる場合は、幅方向(TD)への延伸前に調湿することが好ましい。特に好ましくは、含水率が上記範囲となるように乾燥工程の条件を調整することである。
上記乾燥は、連続的になされる。この連続的な乾燥は、加熱ロールや赤外線ヒーター等を使用し公知の方法で行うことができるが、本発明においては複数の加熱ロールで行うことが好ましく、特に好ましくは、加熱ロールの温度が40~150℃であり、さらに好ましくは50~140℃である。また、含水率の調整のため、幅方向(TD)への延伸前に、調湿エリアを設けてもよい。
本発明において、製膜されたフィルムを流れ方向(MD)へは特段延伸する必要はなく、フィルムがたわまない程度の引っ張り張力で搬送すれば充分である。当然のことながら、幅方向(TD)への延伸により、流れ方向(MD)にはポアソン比に依存したネックインが起こり、上記乾燥中は流れ方向(MD)に脱水収縮も生じる。これらの収縮ため、搬送ロールや加熱ロールの回転速度が一定でも、流れ方向(MD)に適度な張力が得られ、前記特許文献2の様な煩雑な回転速度の制御は不要である。製造的な観点から、フィルムの流れ方向(MD)の寸法は一定であることが好ましく、特に好ましくは、幅方向(TD)の延伸前後において、流れ方向(MD)の寸法変化率は0.8~1.2であり、特に好ましくは0.9~1.1である。
製膜されたフィルムの流れ方向(MD)への搬送速度は、5~30m/分であることが好ましく、特に好ましくは7~25m/分、さらに好ましくは8~20m/分である。この搬送速度が遅すぎると、生産性が低下する傾向があり、速すぎると、Δn(MD)Ave、Δn(TD)Aveの面内の変動が大きくなる傾向がある。
製膜されたフィルムの流れ方向(MD)への搬送と、幅方向(TD)への延伸を同時に行う方法は、特に限定されないが、例えば、フィルムの幅方向の両端部を複数のクリップで挟持して、搬送および延伸を同時に行うことが好ましい。この場合、それぞれの端部でのクリップの配置は、ピッチ200mm以下であることが好ましく、特に好ましくはピッチ100mm以下、さらに好ましくはピッチ50mm以下である。
上記クリップのピッチが広すぎると、延伸後のフィルムにたわみが生じたり、得られるポリビニルアルコール系フィルムの幅方向両端部におけるΔn(MD)Ave、Δn(TD)Aveの変動が大きくなったりする傾向がある。また、クリップの挟持位置(クリップの先端部)は、製膜されたフィルムの幅方向両端縁から100mm以下が好ましい。クリップの挟持位置(先端部)がフィルムの幅方向中心部に位置しすぎると、破棄するフィルム端部が増大し、製品幅が狭くなる傾向にある。
本発明における幅方向(TD)の延伸倍率は、1.05~1.5倍であることが好ましく、特に好ましくは1.05~1.4倍、さらに好ましくは1.1~1.3倍である。幅方向(TD)の延伸倍率が高すぎると、Δn(MD)Ave、Δn(TD)Aveの面内の変動が大きくなる傾向があり、低すぎると、偏光膜製造時に皺が発生しやすくなる傾向がある。
上記幅方向(TD)の延伸は、連続的になされる。この連続的な延伸は、1段階(1回)でもよいし、総延伸倍率が上記延伸倍率の範囲になるように複数段階(複数回)でもよい(逐次延伸とも呼ばれる)。例えば、1段階目の連続的な延伸を行った後、幅方向(TD)を固定した単純な搬送を行い、その後、2段階目以降の連続的な延伸を行ってもよい。特に、薄型フィルムの場合は、1段階目の連続的な延伸を行った後に、単純な幅固定の搬送工程を挿入することにより、フィルムの応力緩和がなされ、破断を回避することが可能になる。
幅固定の搬送工程を挿入する場合、固定幅を、1段階目の連続的な延伸後の幅よりも狭めることも可能である。延伸直後のフィルムは応力緩和のために収縮しやすく、脱水に伴う収縮も起きるため、固定幅をこれらの収縮幅まで狭めることが可能である。ただし、収縮幅以上に狭めると、フィルムにたわみが生じるため、好ましくない。
上記連続的な延伸は、先に述べたように、フィルムの乾燥工程後に行われることが好ましいが、フィルムの乾燥工程前、乾燥工程中、および乾燥工程後の少なくとも一つにて行われる。
本発明の好ましい一形態として、製膜されたフィルムの幅方向(TD)に、一時的に1.3倍を超えて延伸した後、最終的な幅方向(TD)の延伸倍率が1.05~1.5倍になるよう寸法収縮させる方法を用いることができる。
この場合、一時的に1.3倍を超えて延伸した後、延伸倍率1.05~1.5の固定幅で、フィルムを単純に搬送すればよい。この方法により、フィルムの応力緩和がなされ、特に薄型フィルムの場合に、破断を回避することが可能になる。
本発明において、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD)の延伸は、50~150℃の雰囲気温度で行うことが好ましい。この延伸時の雰囲気温度は、特に好ましくは60~140℃、さらに好ましくは70~130℃である。上記延伸時の雰囲気温度が低すぎても高すぎても、Δn(MD)Ave、Δn(TD)Aveの面内の変動が大きくなる傾向がある。逐次延伸を行う場合、上記延伸時の雰囲気温度は、各延伸段階で変更してもよい。
本発明において、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD)の延伸時の延伸時間は、2~60秒間が好ましく、特に好ましくは5~45秒間、さらに好ましくは10~30秒間である。この延伸時間が短すぎると、フィルムに破断が生じやすい傾向があり、逆に、長すぎると、設備負荷が増大する傾向にある。逐次延伸を行う場合、上記延伸時間は、各延伸段階で変更してもよい。
本発明においては、製膜されたフィルムを幅方向(TD)に延伸した後、必要に応じて、フローティングドライヤー等で上記フィルムの両面に対し熱処理を行ってもよい。この熱処理温度は、60~200℃であることが好ましく、特に好ましくは70~150℃である。なお、上記フローティングドライヤーによる熱処理は、熱風を吹き付ける処理であり、その熱処理温度は、上記吹き付ける熱風の温度を意味する。
上記熱処理温度が低すぎると、寸法安定性が低下しやすい傾向があり、逆に、高すぎると、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
また、熱処理時間は1~60秒間であることが好ましく、特に好ましくは5~30秒間である。熱処理時間が短すぎると、寸法安定性が低下する傾向があり、逆に、長すぎると、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
〔ポリビニルアルコール系フィルム〕
このようにして、本発明のポリビニルアルコール系フィルムが得られる。このポリビニルアルコール系フィルムは、流れ方向(MD)に長く、芯管にロール状に巻き取られることにより、フィルム巻装体に作製される。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、面内位相差の点から通常5~50μmであり、好ましくは、偏光膜の薄型化の点で5~45μmが好ましく、特に好ましくは、破断回避の点で10~40μm、さらに好ましくは10~30μmである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの幅は、2m以上であることが好ましく、特に好ましくは、破断回避の点で、2~6mである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムの長さは、2km以上であることが好ましく、特に好ましくは、大面積化の点で、3km以上、さらに好ましくは、輸送重量の点で、3~50kmである。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、延伸性に優れるため、偏光膜用の原反として特に好ましく用いられる。
つぎに、本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いて得られる偏光膜の製造方法について説明する。
〔偏光膜の製造方法〕
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、前記フィルム巻装体から繰り出して水平方向に搬送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥等の工程を経て製造される。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラ等を防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。その処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10~45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1~10分間程度である。
染色工程は、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素-ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1~2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1~100g/Lが適当である。染色時間は30~500秒間程度が実用的である。処理浴の温度は5~50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂等のホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水-有機溶媒混合液の形で濃度10~100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させることが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30~70℃程度、処理時間は0.1~20分間程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸方向〔流れ方向(MD)〕に3~10倍、好ましくは3.5~6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸〔幅方向(TD)の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸〕を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40~70℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は1段階(1回)のみならず、偏光膜製造工程において複数回実施してもよい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、そのポリビニルアルコール系フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1~80g/L程度である。洗浄処理時の温度は、通常、5~50℃、好ましくは10~45℃である。処理時間は、通常、1~300秒間、好ましくは10~240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、例えば、ポリビニルアルコール系フィルムを大気中で40~80℃で1~10分間乾燥することが行われる。
また、偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、より好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると、液晶ディスプレイにおけるコントラストを確保することができなくなる傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H1)より、下記式にしたがって算出される。
偏光度(%)=〔(H11-H1)/(H11+H1)〕1/2
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは42%以上である。この単体透過率が低すぎると、液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
つぎに、本発明の偏光膜を用いた、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、色ムラが少なく、偏光性能に優れた偏光板を製造するのに好適である。
〔偏光板の製造方法〕
本発明の偏光板は、本発明の偏光膜の片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性を有する樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合することにより、作製される。保護フィルムとしては、たとえば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ-4-メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の方法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜もしくは保護フィルム、またはその両方に、均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
なお、偏光膜の片面または両面に、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂等の硬化性樹脂を塗布し、硬化して硬化層を形成し、偏光板とすることもできる。このようにすると、上記硬化層が上記保護フィルムの代わりとなり、薄膜化を図ることができる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いる偏光膜および偏光板は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。
つぎに、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り後記の実施例に限定されるものではない。
そして、後記の実施例および比較例におけるポリビニルアルコール系フィルムの特性〔Δn(MD)Ave、Δn(TD)Ave〕と偏光膜の特性(偏光度、単体透過率、色ムラ)の測定および評価を下記のようにして行った。
〔ポリビニルアルコール系フィルムのΔn(MD)Aveの測定方法〕
(1)得られたポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)の任意の位置で、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=5mm×10mmの大きさの細片を切り出した。ついで、その細片を厚み100μmのPETフィルムで両側を挟み、それをさらに木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付けた。
(2)つぎに、上記(1)で切り出した細片を、細片の流れ方向(MD)と平行に10μm間隔でスライスし、観察用のスライス片(MD×TD=5mm×10μm)を作製した。
(3)ついで、スライス面が観察できるように、スライス片を倒してスライス面を上向きとしてスライドガラス上に載せてカバーガラスとリン酸トリクレジル(屈折率1.557)で封じ、二次元光弾性評価システム「PA-micro」(フォトニックラティス社製)を用いてスライス片3個のレタデーションを測定した。
(4)スライス片のレタデーション分布を「PA-micro」の測定画面に表示した状態で、スライス片を横切るように当初の上記ポリビニルアルコール系フィルムの表面に垂直な線分Xを引き、その線分X上でライン解析を行ってスライス片の厚み方向のレタデーション分布データを取得した。なお、観察は対物40倍レンズを用いて行い、線幅を3画素としてレタデーションの平均値を採用した。
(5)得られたスライス片の厚み方向のレタデーション分布データをスライス片の厚み10μmで除してスライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布を求め、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布の平均値をとった。スライス片3個について求めたそれぞれのスライス片の厚み方向の複屈折率Δn(MD)分布の平均値をさらに平均して、上記ポリビニルアルコール系フィルムの「Δn(MD)Ave」とした。
〔ポリビニルアルコール系フィルムのΔn(TD)Aveの測定方法〕
(1)得られたポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)の任意の位置で、ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向(TD)における中央部からMD×TD=10mm×5mmの大きさの細片を切り出した。ついで、その細片を厚み100μmのPETフィルムで両側を挟み、それをさらに木枠に挟んでミクロトーム装置に取り付けた。
(2)つぎに、上記(1)で切り出した細片を、細片の幅方向(TD)と平行に10μm間隔でスライスし、観察用のスライス片(MD×TD=10μm×5mm)を作製した。
(3)ついで、スライス面が観察できるように、スライス片を倒してスライス面を上向きとしてスライドガラス上に載せてカバーガラスとリン酸トリクレジル(屈折率1.557)で封じ、二次元光弾性評価システム「PA-micro」(フォトニックラティス社製)を用いてスライス片3個のレタデーションを測定した。
(4)スライス片のレタデーション分布を「PA-micro」の測定画面に表示した状態で、スライス片を横切るように当初の上記ポリビニルアルコール系フィルムの表面に垂直な線分Xを引き、その線分X上でライン解析を行ってスライス片の厚み方向のレタデーション分布データを取得した。なお、観察は対物40倍レンズを用い行い、線幅を3画素としてレタデーションの平均値を採用した。
(5)得られたスライス片の厚み方向のレタデーション分布データをスライス片の厚みの10μmで除して、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布を求め、スライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布の平均値をとった。スライス片3個について求めたそれぞれのスライス片の厚み方向の複屈折率Δn(TD)分布の平均値をさらに平均して、上記ポリビニルアルコール系フィルムの「Δn(TD)Ave」とした。
〔偏光度(%)、単体透過率(%)〕
得られた偏光膜の幅方向(TD)の中央部から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光社製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。
〔色ムラ〕
得られた偏光膜の幅方向(TD)の中央部から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・色ムラがなかった
△・・・かすかに色ムラがあった
×・・・はっきりとした色ムラがあった
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの作製)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミン0.25kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、濃度調整により樹脂濃度25重量%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。ついで、そのポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より、表面温度が80℃のキャストドラムに吐出(吐出速度1.3m/分)および流延して製膜した。その製膜したフィルムをキャストドラムから剥離し、流れ方向(MD)に搬送しながら、そのフィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接触させながら乾燥を行った。それにより、含水率7重量%のフィルム(幅2m、厚み30μm)を得た。つぎに、上記フィルムの左右両端部をクリップピッチ45mmのクリップで挟持し、そのフィルムを流れ方向(MD)に速度8m/分で搬送しながら、延伸機を用いて80℃で幅方向(TD)に1.2倍延伸した後、そのフィルムを固定幅2.4mで130℃の乾燥機中を搬送させ、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み25μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は後記の表1に示される通りであった。最後に、そのポリビニルアルコール系フィルムを芯管にロール状に巻き取り、フィルム巻装体を得た。
(偏光膜および偏光板の作製)
得られたポリビニルアルコール系フィルムを上記フィルム巻装体から繰り出し、水平方向に搬送しながら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら流れ方向(MD)に1.7倍に延伸した。その膨潤工程で、フィルムに折れや皺は発生しなかった。ついで、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら流れ方向(MD)に1.6倍に延伸し、つぎに、ホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(50℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら流れ方向(MD)に2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。この偏光膜製造中に破断は起きなかった。また、得られた偏光膜の特性は後記の表1に示される通りであった。
上記で得られた偏光膜の両面に、ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて、膜厚40μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼合し、70℃で乾燥して偏光板を得た。
<実施例2>
実施例1において、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を表面温度が88℃のキャストドラムに吐出(吐出速度1.9m/分)および流延して製膜した以外は同様に行い、含水率10重量%のフィルム(幅2m、厚み45μm)を得た。つぎに、実施例1と同様にして、そのフィルムを、延伸機を用いて80℃で幅方向(TD)に1.2倍延伸した後、固定幅2.4mで135℃の乾燥機中を搬送し、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み35μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は後記の表1に示される通りであった。
さらに、上記ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。偏光膜製造時の膨潤工程において、上記ポリビニルアルコール系フィルムに折れや皺の発生はなく、また破断も起きなかった。得られた偏光膜の特性は後記の表1に示される通りであった。
<実施例3>
実施例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分にして吐出し流延して製膜した以外は同様に行い、含水率5重量%のフィルム(幅2m、厚み20μm)を得た。つぎに、実施例1と同様にして、そのフィルムを、延伸機を用いて80℃で幅方向(TD)に1.4倍延伸した後、固定幅2.8mで130℃の乾燥機中を搬送し、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.8m、厚み14μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は後記の表1に示される通りであった。
さらに、上記ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。偏光膜製造時の膨潤工程において、上記ポリビニルアルコール系フィルムに折れや皺の発生はなく、また破断も起きなかった。得られた偏光膜の特性は後記の表1に示される通りであった。
<比較例1>
実施例1において、表面温度が90℃のキャストドラムにポリビニルアルコール系樹脂水溶液を吐出(吐出速度2.5m/分)および流延して製膜した。その製膜したフィルムに対しては、延伸機を用いた幅方向(TD)への延伸を行わずに、フローティングドライヤーを用いて110℃で熱処理を行った以外は実施例1と同様にして、含水率2.5重量%のポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚み60μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は後記の表1に示される通りであった。
さらに、上記ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を製造したところ、膨潤工程において、上記ポリビニルアルコール系フィルムに折れや皺が発生した。得られた偏光膜の特性は後記の表1に示される通りであった。
<比較例2>
実施例1において、表面温度が88℃のキャストドラムにポリビニルアルコール系樹脂水溶液を吐出(吐出速度1.9m/分)および流延して製膜した。その製膜したフィルムに対しては、延伸機を用いた幅方向(TD)への延伸を行わずに、表面温度105℃の熱処理ロールで熱処理を行った以外は実施例1と同様にして、含水率2.0重量%のポリビニルアルコールフィルム(幅2m、厚み45μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は下記の表1に示される通りであった。
さらに、上記ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を製造したところ、膨潤工程において、上記ポリビニルアルコール系フィルムに折れや皺が発生した。得られた偏光膜の特性は下記の表1に示される通りであった。
Figure 2023083358000001
上記実施例および比較例の結果から、Δn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveが式(A)および(B)を両方とも満足する実施例1~3のポリビニルアルコール系フィルムから得られる偏光膜は、高い偏光特性を有し、かつ色ムラがなく均一なものであることがわかる。
一方、これに対してΔn(MD)AveおよびΔn(TD)Aveの値が式(A)および(B)で特定する範囲よりも小さな値である比較例1,2のポリビニルアルコール系フィルムから得られる偏光膜は、偏光特性に劣り、色ムラも観察されてしまうものであることがわかる。
上記実施例においては、本発明における具体的な形態について示したが、上記実施例は単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。当業者に明らかな様々な変形は、本発明の範囲内であることが企図されている。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射低減層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。

Claims (6)

  1. 長尺のポリビニルアルコール系フィルムであって、下記式(A)および(B)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。
    Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)
    Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)
    上記式(A)中のΔn(MD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの長さ方向の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。また、上記式(B)中のΔn(TD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。
  2. 上記ポリビニルアルコール系フィルムの厚みが5~50μmであることを特徴とする請求項1記載のポリビニルアルコール系フィルム。
  3. 請求項1または2記載のポリビニルアルコール系フィルムが用いられていることを特徴とする偏光膜。
  4. 請求項3記載の偏光膜と、その偏光膜の少なくとも片面に設けられた保護フィルムとを備えていることを特徴とする偏光板。
  5. ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を連続キャスト法により製膜する製膜工程と、その製膜したフィルムを、流れ方向に搬送しながら、そのフィルムに対し連続的な乾燥および連続的な延伸を施す乾燥・延伸工程とを備えたポリビニルアルコール系フィルムの製造方法であって、製造されるポリビニルアルコール系フィルムが、下記式(A)および(B)を満足するようにすることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
    Δn(MD)Ave≧2.2×10-3・・・(A)
    Δn(TD)Ave≧2.0×10-3・・・(B)
    上記式(A)中のΔn(MD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。また、上記式(B)中のΔn(TD)Aveは、上記ポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の複屈折率を、そのポリビニルアルコール系フィルムの厚み方向に平均化した値を示す。
  6. 上記乾燥・延伸工程において、上記製膜したフィルムを幅方向に1.05~1.5倍延伸することを特徴とする請求項5記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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