JP2022151775A - ポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそれを用いた偏光膜、偏光板 - Google Patents

ポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそれを用いた偏光膜、偏光板 Download PDF

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JP2022151775A
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秀一 北村
Shuichi Kitamura
裕一 寺本
Yuichi Teramoto
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Abstract

【課題】偏光膜製造時の延伸性(限界延伸倍率)と加工特性に優れ、偏光性能が高く、かつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそのポリビニルアルコール系フィルムを用いた偏光膜を提供することを目的とするものである。【解決手段】ポリビニルアルコール系フィルムを23℃×50%RHの環境下、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に、50%のひずみを与えたときの引張応力A50(MPa)と100%のひずみを与えたときの引張応力をA100(MPa)が下記式(1)を満たすことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム。(1)0.9<A100/A50<1.1【選択図】なし

Description

本発明は、ポリビニルアルコール系フィルム、特に、偏光膜製造時の延伸性(限界延伸
倍率)が高く偏光性能に優れ、かつ色ムラの少ない偏光膜を得ることができるポリビニル
アルコール系フィルム、およびその製造方法、ならびにそのポリビニルアルコール系フィ
ルムを用いた偏光膜に関するものである。
従来、ポリビニルアルコール系フィルムは、透明性に優れたフィルムとして多くの用途
に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜が挙げられる。かかる偏光膜は液晶デ
ィスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求され
る機器へとその使用が拡大されている。
このような中、液晶テレビや多機能携帯端末などの画面の高輝度化、高精細化、大面積
化、薄型化に伴い、光学特性に優れた偏光膜が要求されている。具体的には、更なる偏光
度の向上や色ムラの解消が要求されている。
一般に、ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を
キャスト型に流延し、製膜されたフィルムをキャスト型から剥離し、ニップロール等を用
いながら乾燥ロールや熱処理ロール、フローティングドライヤーを用いた熱処理工程を経
て製造される。かかる乾燥工程においてロールtoロールにより製造されるポリビニルアル
コール系フィルムは搬送時の皺や弛みを抑制するために、流れ方向に一定の張力を付与し
ながら搬送される。このように製造されたポリビニルアルコール系フィルムは流れ方向(
MD)に延伸される傾向にあり、これにより偏光膜製造時の延伸性が低下し、偏光性能も
低下する傾向にある。さらに近年は偏光膜の薄膜化のためにポリビニルアルコール系フィ
ルムも薄型化されている。ポリビニルアルコール系フィルムを薄膜化するにつれて、製膜
時のポリビニルアルコール系フィルム自体の強度が低下するため、流れ方向に張力を付与
したときの流れ方向(MD)への延伸の影響が特に顕著になる。
一方、一般的に、偏光膜は、その原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(
温水を含む)で膨潤させた後、ヨウ素等の二色性染料で染色し、延伸することにより製造
される。
かかる膨潤工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを速やかに膨潤させるこ
と、および染色工程においてフィルム内部に染料がスムーズに侵入できるようにポリビニ
ルアルコール系フィルムを均一に膨潤させることが重要となる。
また、かかる延伸工程は、染色後のフィルムを流れ方向(MD)に延伸して、フィルム
中の二色性染料を高度に配向させる工程であるが、偏光膜の偏光性能を向上させるために
は、延伸工程において、原反となるポリビニルアルコール系フィルムが流れ方向(MD)
に良好な延伸性を示すことが重要である。
延伸性を改良する手法として、例えば、キャストドラムの速度と最終巻取速度を制御す
る手法(例えば、特許文献1参照)、フィルムの面内位相差を低減する手法(例えば、特
許文献2参照)、フィルムの光学軸(配向角)の向きを流れ方向(MD)に対して45°~
135°に制御する手法(例えば、特許文献3参照)、30℃の水に浸漬したときの流れ
方向(MD)および幅方向(TD)の伸び量を制御する手法や、連続する2本の熱処理ロ
ールの周速差および熱処理温度を制御する手法(例えば、特許文献4参照)、ポリビニル
アルコール系フィルムを幅方向(TD)に延伸しながら製造する手法(例えば、特許文献
5参照)が開示されている。
特開2001-315141号公報 特開2007-137042号公報 WO2009/028141号公報 WO2016/093259号公報 特開2017-102421号公報
しかしながら、上記特許文献の手法をもってしても、偏光膜製造時の延伸性を向上する
には不充分であった。
具体的には、上記特許文献1は、ポリビニルアルコール系フィルムを製造する時のMD
方向への延伸度合い(引っ張り具合)を特定したものであるが、薄膜のポリビニルアルコ
ール系フィルムについて、偏光膜製造時の延伸性は開示されていない。また、キャストド
ラムの速度と最終巻取速度の比率が1より大きく流れ方向(MD)に延伸されたポリビニ
ルアルコール系フィルムは偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向にある。一方、キャスト
ドラムの速度と最終巻取速度の比率を0.9より低下させた場合、皺や弛みの影響で搬送
(製造)安定性が悪化する傾向にある。
上記特許文献2の開示技術では、フィルムの面内位相差を低減するものであるが、フィ
ルムの面内位相差を低減した場合、偏光膜の色むらを少なくする効果があっても、偏光膜
製造時の延伸性を向上する効果は不充分である。
上記特許文献3の開示技術は、フィルムの幅方向の配向角を流れ方向(MD)に対して
45~135°に制御したポリビニルアルコール系フィルムであるが、配向角の方向を制
御しても偏光膜製造時の延伸性向上への効果は不充分である。また、配向角の角度範囲が
広く、実施例における配向角の範囲は、最も狭いもので54°であり、配向角のふれが大
きなものである。これほど大きくふれると、延伸性も幅方向でふれることになり、得られ
る偏光膜に色ムラが発生する傾向にある。更に、実施例におけるフィルムの厚さは75μ
mであり、近年の薄型化要望に対応するのは困難である。
上記特許文献4の開示技術では、偏光膜製造時の膨潤性に一定の改善効果はあるものの
、複数の熱ロールの温度、速度の制御を行う必要があり、その制御範囲も非常に繊細であ
るため、乾燥途中でポリビニルアルコール系フィルムに僅かでも不均一な収縮が起これば
、位相差ムラや膜厚ムラが発生することになり、面内均一性に優れた幅広かつ薄膜のポリ
ビニルアルコール系フィルムを長尺かつ安定的に生産性よく製造することが困難となる。
また、偏光膜製造時の延伸性について、限界延伸倍率が向上しているか不明である。
上記特許文献5の開示技術では、ポリビニルアルコール系フィルムを幅方向(TD)に
延伸しながら配向角を特定の範囲かつ特定の振れの範囲に制御することでフィルム面内の
均一性に優れたポリビニルアルコール系フィルムが得られているが、流れ方向(MD)へ
の寸法変化についてはフィルム搬送に必要な張力を付与しているだけにすぎない。偏光膜
製造においては色むらの発生を抑制する効果は確認されているが、偏光膜製造時の延伸性
に関しては、破断を抑制する効果について開示されているだけで、延伸性の向上に対して
はさらなる改善の余地があった。
そこで、本発明ではこのような背景下において、偏光膜製造時の延伸性(限界延伸倍率
)と加工特性に優れることにより、高い偏光性能を有し、かつ色ムラの少ない偏光膜を得
ることができるポリビニルアルコール系フィルムを提供すること、加えて、かかるポリビ
ニルアルコール系フィルムの製造方法、および、当該ポリビニルアルコール系フィルムか
らなる偏光膜、および偏光板を提供することを目的とするものである。
しかるに、本発明者等はかかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコー
ル系フィルムの流れ方向(MD)の引張応力が特定範囲にあるものが、偏光膜製造時の延
伸性(限界延伸倍率)と加工特性に優れるものであり、かかるポリビニルアルコール系フ
ィルムを用いて得られる偏光膜は、高偏光度で色ムラの少ない偏光膜となることを見出し
、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の要旨は、23℃×50%RHの環境下において、試験速度1
000mm/minで流れ方向(MD)に50%のひずみを与えたときの引張応力をA
(MPa)、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に100%のひずみを
与えたときの引張応力をA100(MPa)としたときに、下記式(1)を満足すること
を特徴とするポリビニルアルコール系フィルムである。
(1)0.9<A100/A50<1.1
さらに、23℃×50%RHの環境下において、試験速度1000mm/minで流れ
方向(MD)に200%のひずみを与えたときの引張応力をA200(MPa)、試験速
度1000mm/minで流れ方向(MD)に300%のひずみを与えたときの引張応力
をA300(MPa)としたときに、下記式(2)~(5)をすべて満足することを特徴
とするポリビニルアルコール系フィルムを、第2の要旨とする。
(2)15<A50<35
(3)15<A100<38
(4)25<A200<55
(5)40<A300<75
そして、23℃×50%RHの環境下において、試験速度1000mm/minで幅方
向(TD)に50%のひずみを与えたときの引張応力をB50(MPa)、試験速度10
00mm/minで幅方向(TD)に100%のひずみを与えたときの引張応力をB10
(MPa)、試験速度1000mm/minで幅方向(TD)に200%のひずみを与
えたときの引張応力をB200(MPa)、試験速度1000mm/minで幅方向(T
D)に300%のひずみを与えたときの引張応力をB300(MPa)としたときに、下
記式(6)~(9)をすべて満足することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム
を、第3の要旨とする。
(6)0.30<A50/B50<1.15
(7)0.30<A100/B100<1.22
(8)0.22<A200/B200<1.35
(9)0.22<A300/B300<1.30
なかでも、下記式(10)を満たすことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム
を、第4の要旨とする。
(10)0.75<(A100/B100)/(A50/B50)<1.05
さらに、ポリビニルアルコール系フィルムの厚みが5~65μm、幅が2m以上、長さ
が4km以上であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムを、第5の要旨と
する。
また、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をキャスト法により製膜して得るポリビニ
ルアルコール系フィルムの製造方法において、製膜されたフィルムをキャスト型から剥離
した後に、流れ方向(MD)の寸法変化率Xが0.7以上1未満となるように連続的に流
れ方向(MD)に収縮する工程を含むことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルム
の製造方法であって、該ポリビニルアルコール系フィルムが、23℃×50%RHの環境
下において、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に50%のひずみを与え
たときの引張応力をA50(MPa)、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD
)に100%のひずみを与えたときの引張応力をA100(MPa)としたときに下記式
(1)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、第6
の要旨とする。
(1)0.9<A100/A50<1.1
特に、連続的に流れ方向(MD)に収縮させる際の幅方向(TD)の寸法変化率Yが0
.9~1.5であることを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、第
7の要旨とする。
さらに、流れ方向(MD)の寸法変化率Xと幅方向(TD)の寸法変化率Yが下記式(
11)を満たすことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、第8の
要旨とする。
(11)Y≦-2.5X+2.75X+0.85
そして、流れ方向(MD)のひずみ速度が0.3~3.0%/sであることを特徴とす
るポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、第9の要旨とする。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜製造時の延伸性(限界延伸倍率)
と加工特性に優れることにより、高い偏光性能を有し、かつ色ムラの少ない偏光膜を得る
ことができるものである。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、23℃×50%RHの環境下、試験速度
1000mm/minで流れ方向(MD)に50%のひずみを与えたときの引張応力A
(MPa)と100%のひずみを与えたときの引張応力A100(MPa)が下記式(
1)を満たすことを最大の特徴とする。
(1)0.9<A100/A50<1.1
上記式(1)における、A100/A50値は、ポリビニルアルコール系フィルムの流
れ方向(MD)の延伸初期(ひずみが50%から100%)における引張応力の上昇率を
示す指標であり、この値が上記式(1)の範囲内、すなわち、延伸初期において、流れ方
向(MD)の引張応力の変動が小さく一定の引張応力を保つことが、本発明のポリビニル
アルコール系フィルムの最大の特徴である。
かかるA100/A50値が上記式(1)の下限値以下となると、ポリビニルアルコー
ル系フィルムの偏光膜製造時の延伸性は向上する傾向にあるものの、偏光膜製造中のポリ
ビニルアルコール系フィルムに皺や弛みが発生しやすくなり、加工特性が悪化する傾向と
なる。その結果、偏光膜の偏光度は低下し、色むらも発生しやすい傾向となる。一方、か
かるA100/A50値が上記式(1)の上限値以上となると、偏光膜製造時の延伸性が
低下することで、偏光膜の偏光度が低下する傾向となる。本発明のポリビニルアルコール
系フィルムは、偏光膜製造工程初期における、膨潤工程ないし染色工程において、応力の
上昇が抑えられ、一方、その後の延伸工程において応力が発現するという特徴により、得
られる偏光膜の偏光度がさらに向上するものと考えられる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、その流れ方向(MD)に連続的に搬送さ
れながら、膨潤工程、染色工程および延伸工程等を経て、偏光膜に形成される。ここで、
本発明のポリビニルアルコール系フィルムが上記式(1)を満たすため、偏光膜製造時の
延伸性と加工特性に優れ、得られた偏光膜は、高い偏光度を示し、かつ色ムラの少ないも
のとなる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜製造時の延伸性向上と加工特性に
優れる点で下記式(1’)を満たすことが特に好ましく、下記式(1’’)を満たすこと
がさらに好ましい。
(1’)0.92<A100/A50<1.08
(1’’)0.94<A100/A50<1.06
上記式(1)~(1’’)は、例えば、製膜されたフィルムをキャスト型から剥離した
後、流れ方向(MD)の寸法変化率Xが0.7以上1未満となるように収縮することによ
り達成することができるが、この場合の寸法変化率Xは、0.72以上0.98未満とす
ることが好ましく、特に好ましくは0.74以上0.96未満、更に好ましくは0.75
以上0.94未満、殊に好ましくは0.75以上0.92未満である。かかる流れ方向(
MD)の寸法変化率Xが高すぎても低すぎても、上記式(1)~(1’’)は満たされず
、偏光膜製造時の優れた延伸性と加工特性の両立は困難となる。
さらに、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、23℃×50%RHの環境下、
試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に、50%のひずみを与えたときの引
張応力をA50(MPa)、100%のひずみを与えたときの引張応力をA100(MP
a)、200%のひずみを与えたときの引張応力をA200(MPa)、300%のひず
みを与えたときの引張応力をA300(MPa)としたときに、下記式(2)~(5)を
満たすことが好ましく、
(2)15<A50<35
(3)15<A100<38
(4)25<A200<55
(5)40<A300<75
偏光膜製造時の延伸性向上と加工特性に優れる点で下記式(2’)~(5’)を満たす
ことが特に好ましく、
(2’)19<A50<33
(3’)18<A100<34
(4’)26<A200<53
(5’)41<A300<72
さらに好ましくは、下記式(2’’)~(5’’)を満たすことである。
(2’’)23<A50<31
(3’’)21<A100<30
(4’’)27<A200<51
(5’’)42<A300<69
上記式(2)~(5)における、各ひずみを与えたときの引張応力Aが上記下限値以下
となると、ポリビニルアルコール系フィルムの偏光膜製造時に適切な張力を付与すること
が困難となる結果、偏光膜製造中のポリビニルアルコール系フィルムに皺や弛みが発生し
やすくなり、加工特性が低下する傾向となる。一方、引張応力Aが上記上限値以上となる
と、ポリビニルアルコール系フィルムの偏光膜製造時の延伸性が低下することで、偏光膜
の偏光度が低下する傾向となる。
本発明の第2の要旨は、ポリビニルアルコール系フィルムが上記式(2)~(5)のい
ずれかを満たすだけでは本発明の効果を発揮できず不十分であり、上記式(2)~(5)
をすべて充足する必要があることを見出したものである。
ここで、本発明における流れ方向(MD)の引張応力Aとは、得られたポリビニルアル
コール系フィルムを23℃×50%RHの恒温恒湿器中で24時間調湿した後、120m
m(MD)×15mm(TD)の試験片を切り出し、島津製作所社製「精密万能試験機、
オートグラフ(AG-IS)」を用いて、JIS K7127:1999(引っ張り速度
1000mm/分、チャック間距離50mm、フィルム幅15mm)に準じ、23℃×5
0%RHの環境下で、流れ方向(MD)に引張試験を行い、各ひずみ量50%、100%
、200%、300%における引張強度A50(MPa)、A100(MPa)、A20
(MPa)、A300(MPa)をそれぞれ読み取ったものである。
また、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、23℃×50%RHの環境下、試
験速度1000mm/minで幅方向(TD)に、50%のひずみを与えたときの引張応
力をB50(MPa)、100%のひずみを与えたときの引張応力をB100(MPa)
、200%のひずみを与えたときの引張応力をB200(MPa)、300%のひずみを
与えたときの引張応力をB300(MPa)としたときに、下記式(6)~(9)を満た
すことが好ましく、
(6)0.30<A50/B50<1.15
(7)0.30<A100/B100<1.22
(8)0.22<A200/B200<1.35
(9)0.22<A300/B300<1.30
特に好ましくは、下記式(6’)~(9’)を満たすことであり、
(6’)0.40<A50/B50<1.05
(7’)0.32<A100/B100<1.07
(8’)0.26<A200/B200<1.15
(9’)0.26<A300/B300<1.10
さらに好ましくは、下記式(6’’)~(9’’)を満たすことである。
(6’’)0.45<A50/B50<0.95
(7’’)0.34<A100/B100<0.92
(8’’)0.26<A200/B200<0.90
(9’’)0.26<A300/B300<0.90
上記A/Bは、各ひずみを与えたときの流れ方向(MD)と幅方向(TD)の引張応力
(MPa)のバランスを示す指標であり、A/Bが上記式(6)~(9)の範囲内とする
ことにより、偏光膜製造時の加工特性に優れ、偏光膜の色むらが良好となる傾向にある。
さらに、本発明のポリビニルアルコール系フィルムは23℃×50%RHの環境下、試
験速度1000mm/minで50%のひずみを与えたときの引張応力と100%のひず
みを与えたときの引張応力が下記式(10)の関係を満たすことが好ましく、(10’)
を満たすことが特に好ましく、(10’’)を満たすことがさらに好ましい。
(10)0.75<(A100/B100)/(A50/B50)<1.05
(10’)0.76<(A100/B100)/(A50/B50)<1.01
(10’’)0.77<(A100/B100)/(A50/B50)<0.97
上記式(10)はポリビニルアルコール系フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD
)の引張応力のバランスに関し、延伸初期(ひずみが50%から100%)における変化
率を示す指標である。(A100/B100)/(A50/B50)が上記式(10)、
すなわち、ひずみ50%から100%にかけて、幅方向(TD)の引張応力に対する流れ
方向(MD)の引張応力の関係が上記式(10)の範囲の通り、わずかな上昇にとどまる
か、上記式(10)の範囲内において減少に転じること、つまりは、ひずみ50%から1
00%の引張応力の上昇率が流れ方向(MD)に比べての幅方向(TD)の方が大きくな
るような場合に特に、偏光膜製造時の延伸性と加工特性に優れ、高い偏光度かつ色むらが
良好な偏光膜を得ることができるポリビニルアルコール系フィルムとなる。
さらに、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの形態は厚みが5~65μm、幅が
2m以上、長さが4km以上であることが好ましい。薄膜化および広幅長尺化の観点から
、厚みが5~50μm、幅が3m以上、長さが5km以上であることが特に好ましく、さ
らなる薄型化と生産性向上の観点から、厚みが5~35μm、幅が4~7m、長さが6~
30kmであることが更に好ましい。
以下、本発明のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、工程順に、より詳しく
説明するが、本発明のポリビニルアルコール系フィルムはこれらの実施形態に限定される
ものではない。なお、本発明における流れ方向(MD)とは、フィルムをロール形状に巻
き取る際の搬送方向を意味する。
〔フィルム材料〕
まず、上記ポリビニルアルコール系フィルムの材料であるポリビニルアルコール系樹脂
、およびポリビニルアルコール系樹脂水溶液に関して説明する。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系
樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、すなわち、酢酸ビニルを重
合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて
、酢酸ビニルと、少量(通常10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと
共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビ
ニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、
アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2~30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロ
ピレン、n-ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげ
られる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹
脂を用いることもできる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2-ジオール構造を有するポリ
ビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2-ジオール構造を有
するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4-ジアセトキシ
-1-ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカー
ボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2-
ジアルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール
化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化
する方法、等により得られる。
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万~30万であることが好まし
く、特に好ましくは11万~28万、更に好ましくは12万~26万である。かかる重量
平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分
な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを
用いて偏光膜を製造する際に、延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアル
コール系樹脂の重量平均分子量は、GPC-MALS法により測定される重量平均分子量
である。
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上で
あることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以
上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。平均ケン化度が小さすぎるとポリビニル
アルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるも
のである。
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量
、平均ケン化度等の異なる2種以上のものを併用してもよい。
上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いて、製膜原液となるポリビニルアルコール系樹
脂水溶液を調液する。通常、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は5~70重
量%、好ましくは10~60重量%である。
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に
応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレ
ングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の一般的に使用され
る可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、およびカチオン性の少なくとも一つの界面活性剤
を含有させることが、製膜性の点でより好ましい。これらは単独もしくは2種以上併せて
用いることができる。
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15~60
重量%であることが好ましく、特に好ましくは17~55重量%、更に好ましくは20~
50重量%である。かかる水溶液の樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産
能力が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができにくくな
る傾向がある。
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法とし
ては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡等の方法があげられる。多軸押出機としては、ベ
ントを有した多軸押出機であればよく、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
〔製膜工程〕
脱泡処理ののち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイ
に導入され、回転するキャストドラム上に吐出および流延されて、連続キャスト法により
フィルムに製膜される。
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度は、80~10
0℃であることが好ましく、特に好ましくは85~98℃である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度が低すぎると流動不良となる傾向
があり、高すぎると発泡する傾向がある。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に、50~200Pa・s
であることが好ましく、70~150Pa・sであることが特に好ましい。
かかる水溶液の粘度が、高すぎると流動不良となる傾向があり、低すぎると流延製膜が
困難となる傾向がある。
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液
の吐出速度は、0.2~5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.4~4m/
分、更に好ましくは0.6~3m/分である。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流延が困難とな
る傾向がある。
かかるキャストドラムの直径は、好ましくは2~5m、特に好ましくは2.4~4.5
m、更に好ましくは2.8~4mである。
かかる直径が小さすぎるとキャストドラム上での乾燥区間が短くなることから速度が上
がりにくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの幅は、好ましくは4m以上であり、特に好ましくは4.5m以
上、更に好ましくは5m以上、殊に好ましくは5~8mである。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
かかるキャストドラムの回転速度は、3~50m/分であることが好ましく、特に好ま
しくは7~40m/分、更に好ましくは10~35m/分である。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不充分と
なる傾向がある。
かかるキャストドラムの表面温度は、40~99℃であることが好ましく、特に好まし
くは60~95℃である。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾
向がある。
キャストドラム上に流延されたポリビニルアルコール系樹脂はキャストドラムから剥離
された後、加熱ロールや赤外線ヒーター等の方法を用いて乾燥を行うこともできる。本発
明においては加熱ロールを用いて行うことが好ましく、加熱ロールの温度は好ましくは4
0~150℃であり、特に好ましくは50~140℃であり、更に好ましくは60~13
0℃である。また、含水率の調整のため、流れ方向(MD)への収縮、および/または幅
方向(TD)への収縮および/または延伸前に、調湿エリアを設けることもできる。
〔製膜されたフィルム〕
上記のようにして製膜されたフィルム〔キャスト型からの剥離後、流れ方向(MD)に
収縮を行なう前のフィルム〕の含水率は、1~30重量%であることが好ましく、特に好
ましくは3~27重量%、更に好ましくは5~24重量%である。
かかる含水率が低すぎると、フィルムの結晶化が進行して流れ方向(MD)の収縮が困
難となる傾向があり、かかる含水率が高すぎるとフィルムの強度が低下して面内均一な流
れ方向(MD)の収縮が困難となる傾向にある。
製膜されたフィルム〔キャスト型からの剥離後、流れ方向(MD)に収縮を行なう前の
フィルム〕の幅方向(TD)における含水率の振れは、5重量%以下であることが好まし
い。
かかる含水率の振れが大きくなると、フィルムの寸法変化の際に含水率の振れに応じて
部分的に伸縮度が異なってしまう現象が発生し、フィルム面内にムラが生じやすくなる傾
向がある。
かかる含水率を調整する方法として、流れ方向(MD)に収縮を行なう前の製膜された
フィルムの含水率が高すぎる場合は、流れ方向(MD)へ収縮する前に、フィルムの乾燥
を強くすることが好ましく、逆に、含水率が低すぎる場合は流れ方向(MD)へ収縮する
前に、フィルムの乾燥を弱くする、および/またはフィルムを調湿することが好ましい。
上記乾燥を強くする具体的な方法としては、キャストドラムの表面温度を上げる方法、キ
ャストドラムの回転速度を低下させる方法、熱風温度を上げる方法、熱風の吹き出し速度
を上げる方法、乾燥ロールの温度を上げる方法、等が用いられる。上記乾燥を弱くする具
体的な方法としては、キャストドラムの表面温度を下げる方法、キャストドラムの回転速
度を上昇させる方法、熱風温度を下げる方法、熱風の吹き出し速度を下げる方法、乾燥ロ
ールの温度を下げる方法、等が用いられる。
また、上記のようにして製膜されたフィルム〔キャスト型からの剥離後、流れ方向(M
D)に収縮を行なう前のフィルム〕の厚みは、1~80μmであることが好ましく、特に
好ましくは2~70μm、更に好ましくは3~60μmである。
かかる厚みが厚すぎると薄型フィルムが得られにくい傾向があり、薄すぎるとフィルム
の製造が困難となる傾向がある。
〔収縮工程〕
そして、好ましくは上記のようにして含水率が調製された製膜されたフィルムを、以下
に記載の方法を用いて流れ方向(MD)に収縮させる。これにより、本発明における式(
1)~(10)の特徴を有するポリビニルアルコール系フィルムを得ることができる。
製膜されたフィルムの流れ方向(MD)への収縮を連続的に行う方法としては、特に限
定されないが、例えば、乾燥ロールの周速差を利用する方法、フローティングドライヤー
による熱処理を行う方法、テンター延伸装置を利用する方法、逐次二軸延伸装置を利用す
る方法、ピンテンター装置を利用する方法、同時二軸延伸装置を利用する方法、リラック
ステンター装置を利用する方法などが挙げられ、これら複数の方法を組み合わせることも
可能である。流れ方向(MD)への収縮を安定的に制御でき、面内均一な流れ方向(MD
)への収縮を達成できる点で、同時二軸延伸装置を利用する方法やリラックステンター装
置を用いる方法が好ましい。
本発明において、フィルムの流れ方向(MD)の寸法変化率Xは0.7以上1未満であ
ることが必要であり、好ましくは0.72以上0.98未満、特に好ましくは0.74以
上0.96未満、更に好ましくは0.75以上0.94未満、殊に好ましくは0.75以
上0.92未満である。
かかる流れ方向(MD)の寸法変化率Xが0.7よりも低いと、偏光膜製造時に流れ方
向(MD)に膨潤しすぎて皺や弛みが生じるため好ましくなく、1以上であると偏光膜製
造時の延伸性が低下するため好ましくない。
製膜されたフィルムの流れ方向(MD)への搬送速度は、3~50m/分であることが
好ましく、特に好ましくは7~40m/分、更に好ましくは10~35m/分である。か
かる搬送速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると面内のムラが増大す
る傾向がある。
かかる流れ方向(MD)への連続的な収縮工程は、1段階(1回)でもよいし、上記寸
法変化率Xの範囲で複数の段階(複数回)でもよい。
すなわち、1段階目の流れ方向(MD)への収縮を行った後、2段階目以降の収縮を行
ってもよい。特に、薄型フィルムの場合は、かかる複数回の収縮工程を経ることにより、
フィルムにかかる応力を均一化することができ、皺や弛みの発生を回避することが可能に
なる。
かかる流れ方向(MD)への連続的な収縮工程は、フィルムの乾燥工程中に行われるこ
とが好ましいが、乾燥工程前、乾燥工程中、および乾燥工程後の少なくとも一つにて行わ
れてもよい。
製膜されたフィルムの流れ方向(MD)への収縮を連続的に行う方法として、製膜され
たフィルムの幅方向両端部を複数のクリップで挟持して、搬送および収縮を同時に行なう
ことが好ましい。かかる場合、それぞれの端部での流れ方向(MD)のクリップピッチは
、10~300mmであることが好ましく、特に好ましくはクリップピッチ20~250
mm、更に好ましくはピッチ30~200mmである。クリップピッチが大きすぎると、
フィルムがクリップ挟持部から切断されたり、フィルムにたわみが生じたり、得られるポ
リビニルアルコール系フィルムの厚みムラや位相差ムラが増大したりする傾向がある。ク
リップピッチが小さすぎると、流れ方向(MD)への収縮が困難となる傾向がある。ここ
でクリップピッチとは、流れ方向(MD)に隣り合うクリップの中心点間距離の長さを意
味する。
また、クリップの挟持位置(クリップの先端部)は、製膜されたフィルムの幅方向両端
から100mm以下であることが好ましく、特に好ましくは80mm以下、更に好ましく
は60mm以下である。クリップの挟持位置(先端部)が、フィルムの幅方向中心部に位
置しすぎると破棄するフィルム端部が増大し、製品幅が狭くなる傾向にある。
本発明におけるフィルムの幅方向(TD)の寸法変化率Yは0.9~1.5であること
が好ましく、特に好ましくは0.95~1.45、更に好ましくは1.0~1.4である
。幅方向(TD)の寸法変化率Yが低すぎると流れ方向(MD)への収縮に伴う流れ方向
(MD)の弛みを抑制できず搬送が不安定になりやすい傾向があり、また染色延伸工程で
幅方向(TD)の膨潤が大きくなりすぎて皺が発生して色むらが生じやすい傾向がある。
幅方向(TD)の寸法変化率Yが高すぎると、フィルム製膜時に張力がかかり過ぎ、部
分的な膜厚ムラや位相差ムラが発生することで面内均一性が低下して偏光膜の色むらが生
じやすい傾向がある。
製膜されたフィルムの幅方向(TD)への連続的な収縮および/または延伸を行う方法
としては、特に限定されないが、例えば、乾燥ロールやフローティングドライヤーを用い
た乾燥収縮によるネックインを利用する方法、テンター延伸装置を利用する方法、逐次二
軸延伸装置を利用する方法、ピンテンター装置を利用する方法、同時二軸延伸装置を利用
する方法、リラックステンター装置を利用する方法などが挙げられこれら複数の方法を組
み合わせることも可能である。幅方向(TD)への連続的な収縮および/または延伸を安
定して制御でき、面内均一な幅方向(TD)への連続的な収縮および/または延伸を達成
できる点で、同時二軸延伸装置を利用する方法やリラックステンター装置を用いる方法が
好ましい。
かかる幅方向(TD)への連続的な収縮および/または延伸工程は、1段階(1回)で
もよいし、上記延伸倍率の範囲で複数の段階(複数回)でもよい。
すなわち、1段階目の幅方向(TD)への収縮または延伸を行った後、幅方向(TD)
を固定した単純な搬送を行い、2段階目以降の収縮または延伸を行ってもよい。特に、薄
型フィルムの場合は、かかる単純な搬送工程を挿入することにより、フィルムの応力緩和
がなされ、破断を回避することが可能になる。
幅固定の搬送工程を挿入する場合、固定幅を、1段階目の幅方向(TD)への収縮また
は延伸後の幅よりも狭めることも可能である。幅方向(TD)への収縮または延伸直後の
フィルムは応力緩和のために幅方向(TD)に収縮しやすく、脱水に伴う収縮も起きるた
め、固定幅をこれらの収縮幅まで狭めることが可能である。ただし、収縮幅以上に狭める
と、フィルムにたわみが生じるため好ましくない。
また、かかる幅方向(TD)への連続的な収縮および/または延伸工程は、フィルムの
乾燥工程中に行われることが好ましいが、乾燥工程前、乾燥工程中、および乾燥工程後の
少なくとも一つにて行われてもよい。
また、流れ方向(MD)への寸法変化率Xと幅方向(TD)の寸法変化率Yの関係が下
記式(11)を満たすことが好ましく、特に好ましくは式(11’)、更に好ましくは式
(11’’)を満たすことである。
(11)Y≦-2.5X+2.75X+0.85
(11’)Y≦-2.5X+2.69X+0.87
(11’’)Y≦-2.25X+2.17X+1.09
かかる関係式を満たさない流れ方向(MD)の寸法変化率Xおよび幅方向(TD)の寸
法変化率Yを採用した場合、ポリビニルアルコール系フィルムの製膜時に張力がかかり過
ぎ、膜厚ムラや位相差ムラが発生し偏光膜の偏光度の低下や色むらが発生しやすくなる傾
向がある。
本発明の製造方法では、上記流れ方向(MD)の収縮と幅方向(TD)の収縮および/ま
たは延伸を同時に行う工程を少なくとも1回含むことが好ましい。
流れ方向(MD)の収縮と幅方向(TD)の収縮および/または延伸を同時に行う工程
とを少なくとも1回以上含むことで、効率よく流れ方向(MD)に収縮することが可能と
なる。
流れ方向(MD)の収縮のみを優先して実施した場合、流れ方向(MD)に弛みが生じ
、製造安定性が低下する傾向にある。幅方向(TD)の収縮および/または延伸のみを優
先して実施した場合、幅方向(TD)への分子鎖の配向が進んでしまい、その後に流れ方
向(MD)に収縮することが困難となる傾向がある。流れ方向(MD)の収縮と幅方向(
TD)の収縮および/または延伸は同時に行うことで面内均一性の高いポリビニルアルコ
ール系フィルムを得ることができる傾向にある。
本発明において、製膜されたフィルムに対する流れ方向(MD)の収縮は、20~12
0℃(雰囲気温度)で行うことが好ましく、特に好ましくは30~110℃、更に好まし
くは40~100℃である。
かかる温度が低すぎると、温度を安定に制御することが設備的に困難となったり、寸法
変化に乾燥収縮を利用しにくくなったりする傾向がある。
かかる温度が高すぎると、フィルムの収縮が急激に起こるため、フィルム面内にムラが
発生しやすくなる傾向がある。
さらに、製膜されたフィルムに対する流れ方向(MD)への収縮の際にフィルム面内に
かかる温度の振れは、その温度の最大値と最小値の差が5℃以下であることが好ましく、
特に好ましくは4℃以下、更に好ましくは3℃以下、殊に好ましくは2℃以下である。か
かる温度の振れが大きくなると、温度の振れに応じてフィルムの収縮量が部分的に異なる
現象(延伸ムラや収縮ムラ)が生じ、フィルム面内にムラが生じやすくなる傾向がある。
かかる温度の振れを均一化する手法としては、幅方向で熱風の風速を調整する手法、熱風
吹出ノズルの形状を調整する手法、幅方向の温度制御を細分化する手法、チャンバー内の
雰囲気循環を均一にする手法等が挙げられる。
また、製膜されたフィルムに対する流れ方向(MD)への収縮にかかる時間は2~60
秒間が好ましく、特に好ましくは5~45秒間、更に好ましくは10~30秒間である。
かかる収縮時間が短すぎるとフィルムに皺や弛みが生じやすい傾向があり、逆に、長すぎ
ると、製造コストが増大する傾向がある。
さらに、製膜されたフィルムに対する流れ方向(MD)への収縮におけるひずみ速度は
、0.3~3.0%/sが好ましく、特に好ましくは、0.4~2.8%/s、さらに好
ましくは、0.5~2.6%/s、殊に好ましくは、0.6~2.4%/sである。かか
るひずみ速度が下限値未満であるとフィルムの生産性が低下し、上限値以上であるとフィ
ルムに皺や弛みが生じやすい傾向がある。なお、当該流れ方向(MD)のひずみ速度は、
下記式により求められる。
{|1-(MD寸法変化率X)|/(流れ方向(MD)の寸法変化時間)}×100
本発明においては、製膜されたフィルムに対する流れ方向(MD)への収縮を施した後
、必要に応じて、フローティングドライヤー等で熱処理を行ってもよい。かかる熱処理の
温度は、60~200℃であることが好ましく、特に好ましくは70~150℃であり、
更に好ましくは100~140℃である。
かかる熱処理温度が高すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向にある。
また、熱処理時間は1~60秒間であることが好ましく、特に好ましくは5~30秒間
である。かかる熱処理時間が長すぎると偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
〔ポリビニルアルコール系フィルム〕
かくして本発明の製造方法によりポリビニルアルコール系フィルム(寸法変化が施され
た後のポリビニルアルコール系フィルム)が得られ、最終的にロールに巻き取られて製品
となる。かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、偏光膜の薄型化の点で5~6
5μmであることが好ましく、特に好ましくは5~50μm、更に好ましくは5~35μ
mである。かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、ポリビニルアルコール系樹
脂水溶液中の樹脂濃度、キャスト型への吐出速度、寸法変化率等により調整される。
かかるポリビニルアルコール系フィルムの幅は2m以上であることが好ましく、大面積
化の点から特に好ましくは3m以上、更に好ましくは4~7mである。
かかるポリビニルアルコール系フィルムの長さは4km以上であることが好ましく、大
面積化の点で特に好ましくは5km以上、輸送重量の点で、更に好ましくは6~30km
である。
本発明の製造方法により得られたポリビニルアルコール系フィルムは、光学用として有
用である。特に、偏光膜の原反フィルムとして非常に有用であり、以下、該ポリビニルア
ルコール系フィルムからなる偏光膜、および偏光板の製造方法について説明する。
〔偏光膜の製造方法〕
本発明の偏光膜は、本発明の製造方法により得られた上記ポリビニルアルコール系フィ
ルムを、ロールから繰り出して水平方向に移送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄
、乾燥等の工程を経て製造される。
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィ
ルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤
させることで染色ムラ等を防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通
常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等
の添加物、アルコール等が入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10~45℃程度で
あり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1~10分間程度である。
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによ
って行なわれる。通常は、ヨウ素-ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は
0.1~2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1~100g/Lが適当である。染色時間は
30~500秒間程度が実用的である。処理浴の温度は5~50℃が好ましい。水溶液に
は、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂等のホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合
物は水溶液または水-有機溶媒混合液の形で濃度10~100g/L程度で用いられ、液
中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温
度は30~70℃程度、処理時間は0.1~20分間程度が好ましく、また必要に応じて
処理中に延伸操作を行なってもよい。
延伸工程は、フィルムを一軸方向に3~10倍、好ましくは3.5~9倍、特に好まし
くは4~8倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅
方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時
の温度は、40~170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定され
ればよく、延伸操作は1段階のみならず、製造工程において複数回実施してもよい。
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にフィルムを浸漬するこ
とにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリ
ウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は10~1000g/L程度でよい。洗浄
処理時の温度は、通常、5~50℃、好ましくは10~45℃である。処理時間は、通常
、1~300秒間、好ましくは10~240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム
水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
乾燥工程は、例えば、乾燥機を用いてで40~100℃で0.1~10分間乾燥するこ
とが行われる。
かくして偏光膜が得られるが、かかる偏光膜の偏光度は、好ましくは99%以上、より
好ましくは99.5%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコント
ラストが低下する傾向がある。
なお、偏光度は、一般的に2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね
合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H11)と、2枚の偏光膜を、配
向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光
線透過率(H)より、下記式(1)にしたがって算出される。
偏光度=〔(H11-H)/(H11+H)〕1/2 ・・・(1)
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは43%以上である。かかる単体透
過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値であ
る。
次に、本発明の偏光膜を用いた、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、色ムラが少なく、偏光性能に優れた偏光板を製造するのに好適であ
る。
〔偏光板の製造方法〕
本発明の偏光板は、本発明の偏光膜の片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等
方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合することにより、作製される。保護フィル
ムとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボ
ネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポ
リマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ-4-メ
チルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルムまたはシートがあげられる。
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護
フィルム、あるいはその両方に、均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や
活性エネルギー線を照射することで行われる。
なお、偏光膜の片面または両面に、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂等の
硬化性樹脂を塗布し、硬化して硬化層を形成し、偏光板とすることもできる。このように
すると、上記硬化層が上記保護フィルムの代わりとなり、薄膜化を図ることができる。
本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いる偏光膜および偏光板は、偏光性能に
優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓
上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアル
バム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防
眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、フォルダブルディスプレイ、表示素
子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射防止層、光通信機器、医療機器
、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えな
い限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」、「%」とあるのは、重量基準を意味する。
<測定条件>
〔流れ方向(MD)の引張応力A(MPa)〕
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロール幅方向(TD)のセンター位置から
切り出し、23℃×50%RHの恒温恒湿器中で24時間調湿した後、120mm(MD
)×15mm(TD)の試験片を切り出し、島津製作所社製「精密万能試験機、オートグ
ラフ(AG-IS)」を用いて、JIS K7127:1999(引っ張り速度1000
mm/分、チャック間距離50mm、フィルム幅15mm)に準じ、23℃×50%RH
の環境下で、流れ方向(MD)に引張試験を行い、ひずみ量50%、100%、200%
、300%における引張強度A50(MPa)、A100(MPa)、A200(MPa
)、A300(MPa)をそれぞれ読み取った。
〔幅方向(TD)の引張応力B(MPa)〕
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロール幅方向(TD)のセンター位置から
切り出し、23℃×50%RHの恒温恒湿器中で24時間調湿した後、120mm(TD
)×15mm(MD)の試験片を切り出し、島津製作所社製「精密万能試験機、オートグ
ラフ(AG-IS)」を用いて、JIS K7127:1999(引っ張り速度1000
mm/分、チャック間距離50mm、フィルム幅15mm)に準じ、23℃×50%RH
の環境下で、幅方向(TD)に引張試験を行い、ひずみ量50%、100%、200%、
300%における引張強度B50(MPa)、B100(MPa)、B200(MPa)
、B300(MPa)をそれぞれ読み取った。
〔限界延伸倍率〕
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから繰り出し、水平方向に搬送しな
がら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら流れ方向(MD)に元の原反を基準と
して1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりな
る30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら流れ方向(MD方向)に元の原反を基準とし
て2.7倍になるように延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの
組成の水溶液(55℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら流れ方向(MD)に元の原反を基
準として5.0倍から0.1倍ずつ延伸倍率を上げていき、フィルムの破断が起こった倍
率を限界延伸倍率とした。
〔偏光度(%)、単体透過率(%)〕
得られた偏光膜から、長さ4cm×幅4cmのサンプルを切り出し、自動偏光フィルム
測定装置(日本分光社製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)
を測定した。
〔色ムラ〕
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状
態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟
んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的
な色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・色ムラなし
△・・・かすかに色ムラあり
×・・・色ムラあり
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの作製)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%の
ポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリ
ン105kg、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミン0.25kg
を入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、濃度調整により樹脂濃度2
5重量%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。次に、該ポリビニルアルコール
系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリ
ットダイ吐出口より、表面温度が80℃のキャストドラムに吐出(吐出速度1.8m/分
)および流延して製膜した。その製膜したフィルムをキャストドラムから剥離し、流れ方
向(MD)に搬送しながら、フィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接
触させながら乾燥を行った。それにより、含水率10重量%のフィルム(幅2m、厚み4
4μm)を得た。次に、フィルムの左右両端部をクリップピッチ60mmのクリップで挟
持し、フィルムを流れ方向(MD)に速度8m/分で搬送しながら、同時二軸延伸機を用
いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度1.3%/sで0.9倍に収縮させると同時
に幅方向(TD)に1.2倍延伸した後、フィルムを固定幅2.4mで130℃の乾燥炉
を搬送させ、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み41μm、長さ2km
)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであっ
た。
(偏光膜および偏光板の作製)
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから繰り出し、水平方向に搬送しな
がら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら流れ方向(MD)に元の原反を基準と
して1.7倍に延伸した。かかる膨潤工程で、フィルムに折れや皺は発生しなかった。次
に、最終的に得られる偏光膜の単体透過率が43.5%となるようにヨウ素量を調整し、
ヨウ化カリウム30g/Lを含む組成の水溶液(30℃)中に浸漬して染色しながら流れ方
向(MD方向)に元の原反を基準として2.7倍になるように延伸し、ついでホウ酸40
g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(55℃)に浸漬してホウ酸架橋しな
がら流れ方向(MD方向)に元の原反を基準として限界延伸倍率直前の延伸倍率(限界延
伸倍率の95%の延伸倍率)まで一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を
行い、70℃で2分間乾燥して偏光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通
りであった。
<実施例2>
実施例1において、二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)に0.8倍に収縮さ
せると同時に幅方向(TD)に1.35倍延伸した後、フィルムを固定幅2.7mで13
0℃の乾燥炉を搬送させる以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィル
ム(幅2.7m、厚さ40μm)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特
性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例3>
実施例1において、二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度0.6
%/sで0.95倍に収縮させると同時に幅方向(TD)に1.05倍延伸した後、フィ
ルムを固定幅2.1mで130℃の乾燥炉を搬送させる以外は、実施例1と同様にしてポ
リビニルアルコール系フィルム(幅2.1m、厚さ43μm)を得た。得られたポリビニ
ルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例4>
実施例1において、二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度1.6
%/sで0.75倍に収縮させると同時に幅方向(TD)に1.4倍延伸した後、フィル
ムを固定幅2.8mで130℃の乾燥炉を搬送させる以外は、実施例1と同様にしてポリ
ビニルアルコール系フィルム(幅2.8m、厚さ41μm)を得た。得られたポリビニル
アルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例5>
実施例1において、製膜時の吐出速度を1.1m/分とし、含水率7重量%のフィルム
(幅2m、厚み26μm)を用いること以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコ
ール系フィルム(幅2.4m、厚さ24μm)を得た。得られたポリビニルアルコール系
フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<実施例6>
実施例1において、製膜時の吐出速度を0.7m/分とし、含水率5重量%のフィルム
(幅2m、厚み17μm)を用いること以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコ
ール系フィルム(幅2.4m、厚さ15μm)を得た。得られたポリビニルアルコール系
フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例1>
実施例1において、同時二軸延伸機の代わりに120℃のフローティングドライヤー中
を搬送させて製膜したこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィル
ム(幅1.9m、厚み45μm)を得た。流れ方向(MD)寸法変化率Xはフローティン
グドライヤー前後のフィルムの速度比、幅方向(TD)寸法変化率Yはフローティングド
ライヤー前後のフィルムの幅変化量から求めた。得られたポリビニルアルコール系フィル
ムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光
膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例2>
実施例1において、同時二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度0
.5%/sで0.96倍に収縮させると同時に幅方向(TD)に1.2倍延伸すること以
外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚さ39μ
m)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであ
った。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光
膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例3>
実施例1において同時二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度1.
3%/sで1.2倍に延伸しながら幅方向(TD)に1.0倍で固定した後、フィルムを
固定幅2.0mで130℃の乾燥炉を搬送させる以外は、実施例1と同様にしてポリビニ
ルアルコール系フィルム(幅2.0m、厚み38μm)を得た。得られたポリビニルアル
コール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光
膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例4>
実施例1において同時二軸延伸機を用いて75℃で流れ方向(MD)にひずみ速度2.
3%/sで0.65倍に収縮させると同時に幅方向(TD)に1.6倍延伸した後、フィ
ルムを固定幅3.2mで130℃の乾燥炉を搬送させる以外は、実施例1と同様にしてポ
リビニルアルコール系フィルム(幅3.2m、厚み42μm)を得た。得られたポリビニ
ルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜の作製を試みたが、ポリビニルアルコール系フィルムに適切な張力を付与することが
できず、ポリビニルアルコール系フィルムが弛み、皺や折れ込みが発生したため偏光膜を
作製することができなかった。
<比較例5>
比較例1において、製膜時の吐出速度を1.1m/分とし、含水率7重量%のフィルム
(幅2m、厚み26μm)を用い、130℃のフローティングドライヤー中を搬送させて
製膜した以外は、比較例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅1.9m、
厚さ26μm)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示され
る通りであった。
更に、得られたポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏
光膜を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
<比較例6>
比較例1において、製膜時の吐出速度を0.7m/分とし、含水率5重量%のフィルム
(幅2m、厚み17μm)を用い140℃のフローティングドライヤー中を搬送させて製
膜した以外は、比較例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅1.9m、厚
さ17μm)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される
通りであった。
更に、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜を
得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
Figure 2022151775000001
Figure 2022151775000002
フィルム厚み40μ付近の本発明のポリビニルアルコール系フィルム(実施例1~4)は
、限界破断倍率が7.0~9.5と高く、偏光度も99.978以上と高い性能を有し、
色ムラもない偏光膜が得られたのに対し、比較例1~3では、限界破断倍率が5.0~6
.6と低く、偏光度も性能に劣り、色むらも観察された。また、比較例4については偏光
板製造時に流れ方向(MD)に適切な張力を付与することができず、弛み、皺、折れ込み
が発生したため偏光膜に加工することが不可能であった。
フィルム厚み25μ付近の本発明のポリビニルアルコール系フィルム(実施例5) は、
限界破断倍率が6.9と高く、色ムラもない偏光膜が得られたのに対し、従来品(比較例
5)は、限界破断倍率が6.2と低く、偏光度も99.942と性能に劣り、色むらも観
察された。
フィルム厚み15μ付近の本発明のポリビニルアルコール系フィルム (実施例6) は、
限界破断倍率が6.4と高く、色ムラもない偏光膜が得られたのに対し、従来品(比較例
6)については、限界破断倍率が5.7と低く、偏光度も99.925と性能に劣り、色
むらも観察された。
本発明の製造方法により得られるポリビニルアルコール系フィルムを用いる偏光膜は、
偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネー
ジ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、
フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サン
グラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、フォルダブルディスプレ
イ、ローラブルテレビ、ローラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL
、電子ペーパー等)用反射防止膜、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく
用いられる。

Claims (9)

  1. 23℃×50%RHの環境下において、試験速度1000mm/minで流れ方向(M
    D)に50%のひずみを与えたときの引張応力をA50(MPa)、試験速度1000m
    m/minで流れ方向(MD)に100%のひずみを与えたときの引張応力をA100
    MPa)としたときに、下記式(1)を満足することを特徴とするポリビニルアルコール
    系フィルム。
    (1)0.9<A100/A50<1.1
  2. 23℃×50%RHの環境下において、試験速度1000mm/minで流れ方向(M
    D)に200%のひずみを与えたときの引張応力をA200(MPa)、試験速度100
    0mm/minで流れ方向(MD)に300%のひずみを与えたときの引張応力をA30
    (MPa)としたときに、下記式(2)~(5)をすべて満足することを特徴とする請
    求項1に記載のポリビニルアルコール系フィルム。
    (2)15<A50<35
    (3)15<A100<38
    (4)25<A200<55
    (5)40<A300<75
  3. 23℃×50%RHの環境下において、試験速度1000mm/minで幅方向(TD
    )に50%のひずみを与えたときの引張応力をB50(MPa)、試験速度1000mm
    /minで幅方向(TD)に100%のひずみを与えたときの引張応力をB100(MP
    a)、試験速度1000mm/minで幅方向(TD)に200%のひずみを与えたとき
    の引張応力をB200(MPa)、試験速度1000mm/minで幅方向(TD)に3
    00%のひずみを与えたときの引張応力をB300(MPa)としたときに、下記式(6
    )~(9)をすべて満足することを特徴とする請求項2に記載のポリビニルアルコール系
    フィルム。
    (6)0.30<A50/B50<1.15
    (7)0.30<A100/B100<1.22
    (8)0.22<A200/B200<1.35
    (9)0.22<A300/B300<1.30
  4. 下記式(10)を満たすことを特徴とする請求項3に記載のポリビニルアルコール系フ
    ィルム。
    (10)0.75<(A100/B100)/(A50/B50)<1.05
  5. ポリビニルアルコール系フィルムの厚みが5~65μm、幅が2m以上、長さが4km
    以上であることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載のポリビニルアルコール系フィ
    ルム。
  6. ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液をキャスト法により製膜して得るポリビニルアル
    コール系フィルムの製造方法において、製膜されたフィルムをキャスト型から剥離した後
    に、流れ方向(MD)の寸法変化率Xが0.7以上1未満となるように連続的に流れ方向
    (MD)に収縮する工程を含むことを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造
    方法であって、該ポリビニルアルコール系フィルムが、23℃×50%RHの環境下にお
    いて、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に50%のひずみを与えたとき
    の引張応力をA50(MPa)、試験速度1000mm/minで流れ方向(MD)に1
    00%のひずみを与えたときの引張応力をA100(MPa)としたときに下記式(1)
    を満足することを特徴とするポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
    (1)0.9<A100/A50<1.1
  7. 連続的に流れ方向(MD)に収縮させる際の幅方向(TD)の寸法変化率Yが0.9~
    1.5であることを特徴とする請求項6に記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造
    方法。
  8. 流れ方向(MD)の寸法変化率Xと幅方向(TD)の寸法変化率Yが下記式(11)を
    満たすことを特徴とする請求項6または7記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造
    方法。
    (11)Y≦-2.5X+2.75X+0.85
  9. 流れ方向(MD)の寸法変化時のひずみ速度が0.3~3.0%/sであることを特徴
    とする請求項6~8いずれかに記載のポリビニルアルコール系フィルムの製造方法。
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