JP2021137013A5 - - Google Patents

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本開示は、タンパク質発達の分野に関する。具体的には、本開示は、野生型タンパク質から条件的活性型キメラ抗原受容体を生成する方法に関する。本条件的活性型キメラ抗原受容体は、野生型正常生理条件では可逆的又は不可逆的に不活性化されるが、異常条件では活性である。
タンパク質、特に酵素の種々の特性を発達させる可能性について記載している文献は多数ある。例えば、高温など、異なる条件で動作が安定するように酵素を発達させてもよい。高温で活性が向上する状況では、その向上のかなりの部分は、一般にQ10法則(酵素の場合に10℃の上昇で代謝回転が二倍になると推定される)によって説明されるより高い速度論的活性によるものであり得る。
加えて、その正常な動作条件でタンパク質を不安定化させる天然の突然変異の例がある。ある種の突然変異体は低温では活性であるものの、そのレベルは野生型タンパク質と比較して低いものであり得る。これもまた、典型的にはQ10又は同様の法則によって導かれるとおりの活性の低下によって説明される。
条件的に活性化される有用な分子を生成することが望ましい。例えば、野生型動作条件では事実上不活性であるが、野生型動作条件以外では野生型動作条件と同等又はそれより良好なレベルで活性であるか、又はある種の微小環境で活性化又は不活性化されるか、又は時間の経過に伴い活性化又は不活性化される分子を生成することが望ましい。温度に加え、タンパク質を発達させ又は最適化し得る他の条件としては、pH、浸透圧、重量オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度が挙げられる。発達させる際に最適化し得る他の望ましい特性としては、化学的抵抗性、及びタンパク質分解抵抗性が挙げられる。
分子を発達させ、又は操作するための戦略が多数発表されている。しかしながら、タンパク質が野生型動作条件では不活性又は事実上不活性(10%未満の活性、好ましくは1%未満の活性)となる一方で、野生型動作条件以外の条件ではその対応する野生型タンパク質と同等か又はそれより良好な活性を維持するように操作し、又は発達させるためには、不安定化させる突然変異が、その不安定効果を打ち消すことのない、活性を増加させる突然変異と共存する必要がある。不安定化により、Q10などの標準法則によって予測される効果を超えてタンパク質の活性が低下するであろうことが予想される。従って、対応する野生型タンパク質にとって正常な動作条件下では不活性化される一方で、例えば低温では効率的に働くタンパク質を発達させることが可能になれば、予期せぬ新規クラスのタンパク質が作り出される。
癌の治療にキメラ抗原受容体が用いられている。米国特許出願公開第2013/0280220号明細書は、腫瘍抗原を含めた2つ以上の抗原に特異的なキメラ抗原受容体をコードする改良された細胞を提供する方法及び組成物を開示している。キメラ抗原受容体を発現する細胞は、細胞療法に用いることができる。かかる細胞療法は任意の医学的状態に好適であり得るが、具体的な実施形態では、固形腫瘍が関わる癌を含め、癌の細胞療法である。
本発明は、正常生理条件では不活性又は低活性であるが、異常生理条件では活性な、操作された条件的活性型キメラ抗原受容体を提供する。
本出願全体を通じて、様々な刊行物が著者及び日付によって参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に説明及び特許請求される開示の日付時点における当業者に公知のとおりの当該分野の技術水準をより十全に説明するため、本明細書によって全体として参照により本出願に援用される。
一態様において、本発明は、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体(CAR)であって、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ(a)正常生理条件での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)異常条件下での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体を提供する。一部の実施形態において、本キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
本キメラ抗原受容体は、正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
本キメラ抗原受容体は、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有し、且つ正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
前述のキメラ抗原受容体のいずれかにおいて、抗原特異的標的領域はまた、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加も有し得る。
前述のキメラ抗原受容体のいずれかは、本抗原受容体を含有するタンパク質が野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成され得る。
代替的実施形態において、本発明は、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体(CAR)であって、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体を提供する。一部の実施形態において、本キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
別の態様において、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを提供する。本発現ベクターは、レンチウイルスベクター、γレトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、及びトランスポゾン媒介性ベクターから選択される。
さらに別の態様において、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む遺伝子操作された細胞傷害性細胞を提供する。この細胞傷害性細胞はT細胞であってもよく、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、及びエフェクターメモリーT細胞から選択され得る。
さらに別の態様において、本発明は、本発明のキメラ抗原受容体、発現ベクター、及び/又は遺伝子操作された細胞傷害性細胞と、薬学的に受容可能な賦形剤とを含む医薬組成物を提供する。
さらに別の態様において、本発明は、少なくとも1つの抗原特異的標的領域と膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体の作製方法を提供する。本方法は、標的抗原に特異的に結合する野生型タンパク質又はそのドメインから1つ以上の発達的技術を用いて野生型タンパク質又はそのドメインをコードするDNAを発達させることにより少なくとも1つの抗原特異的標的領域を生成する工程であって、それにより変異DNAを作成する工程と;変異DNAを発現させる工程であって、それにより変異ポリペプチドを得る工程と;変異ポリペプチド及び野生型タンパク質又はそのドメインを正常生理条件下での分析及び異常条件下での分析に供する工程と;変異ポリペプチドから、(a)正常生理条件での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)異常条件下での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を呈する条件的活性型抗原特異的標的領域を選択する工程とを含む。
本方法によって作製されたキメラ抗原受容体は、正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
本方法によって作製されたキメラ抗原受容体は、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有し、且つ正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
本方法によって作製された前述のキメラ抗原受容体のいずれかにおいて、抗原特異的標的領域はまた、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加も有し得る。
本方法によって作製された前述のキメラ抗原受容体のいずれかは、抗原受容体を含有するタンパク質が野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成され得る。
本方法の代替的実施形態において、標的抗原と結合するための本方法によって作製されるキメラ抗原受容体(CAR)は、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。一部の実施形態において、キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
さらに別の態様において、本発明は、対象の癌を治療する方法であって、本発明のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、対象から得られた細胞傷害性細胞に導入する工程であって、それにより遺伝子操作された細胞傷害性細胞を作製する工程と;遺伝子操作された細胞傷害性細胞を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。
本発明の一実施形態におけるキメラ抗原受容体の概略図を示す。ASTRは抗原特異的標的領域であり、Lはリンカーであり、ESDは細胞外スペーサードメインであり、TMは膜貫通ドメインであり、CSDは共刺激ドメインであり、及びISDは細胞内シグナル伝達ドメインである。 実施例6の条件的活性型抗体が二価又は一価抗体として発現しても、pH6.0未満及びpH7.4超でこれらの抗体の当該の選択性に有意な変化はないことを示す。 実施例6の条件的活性型抗体が二価又は一価抗体として発現しても、pH6.0未満及びpH7.4超でこれらの抗体の当該の選択性に有意な変化はないことを示す。 実施例7の条件的活性型抗体が凝集しないことを示すサイズ排除クロマトグラフのプロファイルである。 表面プラズモン共鳴(SPR)分析によって計測したときの実施例7の条件的活性型抗体のオン及びオフ速度を示す。 実施例7のSPR分析によって計測したときの条件的活性型抗体の選択性を示す。 実施例7のSPR分析によって計測したときの条件的活性型抗体の選択性を示す。
定義
本明細書に提供される実施例の理解を容易にするために、特定のしばしば登場する方法及び/又は用語は以下に記載される。
測定量と関連して本明細書で使用される用語「約」は、測定を行い、測定の目的に相応の注意レベルと使用される測定機器の精度を行使する当業者によって期待される測定量における通常の変動に関連するものである。特に明記しない限り、「約」は、与えられた値の+/-10%の変動に関連する。
用語「薬剤」は、化学化合物、化学化合物の混合物、空間的に局所化された化合物の配列(例えば、VLSIPSペプチド配列、ポリヌクレオチド配列、及び/又はコンビナトリアル小分子配列)、生体高分子、バクテリオファージペプチドディスプレイライブラリー、バクテリオファージ抗体(例えばscFV)ディスプレイライブラリー、ポリソームペプチドディスプレイライブラリー、又は、バクテリア、植物、菌類又は動物(特に哺乳類)の細胞又は組織のような生体材料からつくられる抽出物を示すのに用いられる。薬剤は、本明細書の以下に記載されているスクリーニング分析に含まれることにより条件的活性型生物学的治療酵素として潜在的酵素活性のために評価される。薬剤は、以下の本明細書の以下に記載されているスクリーニング分析に含まれることにより条件的活性型生物学的治療酵素として潜在的活性のために評価される。
本明細書で使用される用語「アミノ酸」は、アミノ基(-NH2)及びカルボキシル基(-COOH)を含む任意の有機化合物である、好適には、自由群又はペプチドの部分として縮合後のどちらでも結合する。「アルファ-アミノ酸を形成する20種の自然にエンコードされたポリペプチド」は従来技術において知られており、アラニン(ala又はA)、アルギニン(arg又はR)、アスパラギン(asn又はN)、アスパラギン酸(asp又はD)、システイン(cys又はC)、グルタミン酸(glu又はG)、ヒスチジン(his又はH)、イソロイシン(ile又はI)、ロイシン(leu又はL)、リシン(lys又はK)、メチオニン(met又はM)、フェニルアラニン(phe又はF)、プロリン(Pro又はP)、セリン(ser又はS)、スレオニン(thr又はT)、トリプトファン(tip又はW)、チロシン(tyr又はY)及びバリン(val又はV)に関連するものである。
用語「増幅」は、本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチドのコピー数が増加することを意味する。
用語「抗体」は、本明細書で使用されるとき、インタクトな免疫グロブリン分子、並びにFab、Fab’、(Fab’)2、Fv、及びSCAフラグメントなど、抗原のエピトープとの結合能を有する免疫グロブリン分子のフラグメントを指す。これらの抗体フラグメントは、その由来である抗体の抗原(例えばポリペプチド抗原)に選択的に結合するいくらかの能力を保持しているものであり、当該技術分野において周知の方法を用いて作製することができ(例えば、Harlow and Lane,前掲を参照)、以下のとおり、さらに説明される。抗体は、イムノアフィニティークロマトグラフィーによる抗原の調製分量の単離に使用することができる。かかる抗体の他の様々な用途は、疾患(例えば新生物形成)の診断及び/又はステージ判定、並びに、例えば、新生物形成、自己免疫疾患、AIDS、心血管疾患、感染症などの疾患を治療するための治療適用である。キメラ抗体、ヒト様抗体、ヒト化抗体又は完全ヒト抗体が、ヒト患者への投与に特に有用である。
Fabフラグメントは抗体分子の一価抗原結合フラグメントからなり、全抗体分子を酵素パパインで消化して、インタクトな軽鎖と重鎖の一部分とからなるフラグメントを生じさせることによって作製し得る。
抗体分子のFab’フラグメントは、全抗体分子をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖と重鎖の一部分とからなる分子を生じさせることによって得られ得る。このように処理した抗体分子1つにつき2つのFab’フラグメントが得られる。
抗体の(Fab’)2フラグメントは、続く還元なしに全抗体分子を酵素ペプシンで処理することによって得られ得る。(Fab’)2フラグメントは、2つのジスルフィド結合によって一体に保持された2つのFab’フラグメントの二量体である。
Fvフラグメントは、2本の鎖として発現した軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域とを含む遺伝子操作されたフラグメントとして定義される。
用語「抗原」又は「Ag」は、本明細書で使用されるとき、免疫応答を誘発する分子として定義される。この免疫応答には、抗体産生、又は特異的免疫適格細胞の活性化の一方、又は両方が含まれ得る。当業者は、事実上全てのタンパク質又はペプチドを含めた任意の巨大分子が抗原として働き得ることを理解するであろう。さらに、抗原は組換えDNA又はゲノムDNAに由来することができる。当業者は、従って、免疫応答を誘発するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分ヌクレオチド配列を含む任意のDNAが、この用語が本明細書において用いられるとおりの「抗原」をコードすることを理解するであろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の完全長ヌクレオチド配列によってコードされることに限られる必要はないことを理解するであろう。本発明には、限定はされないが、2つ以上の遺伝子の部分ヌクレオチド配列の使用が含まれ、及びこれらのヌクレオチド配列が、所望の免疫応答を誘発するため様々な組み合わせで配置されることは容易に明らかである。さらに、当業者は、抗原が「遺伝子」によってコードされる必要は全くないことを理解するであろう。抗原が生体試料から生成され、合成されてもよく、又はそれに由来してもよいことは容易に明らかである。かかる生体試料としては、限定はされないが、組織試料、腫瘍試料、細胞又は生体液を挙げることができる。
「抗原欠損エスケープ変異体」は、本明細書で使用されるとき、標的抗原の発現の低下又は欠失を呈する細胞を指し、この抗原は本発明のCARによって標的化される。
用語「自己免疫疾患」は、本明細書で使用されるとき、自己免疫応答に起因する障害として定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切で過剰な応答の結果である。自己免疫疾患の例としては、限定はされないが、特に、アジソン病、円形脱毛症(alopecia agreata)、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(1型)、栄養障害型表皮水疱症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー(Guillain-Barre)症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎が挙げられる。
用語「自家」は、本明細書で使用されるとき、後に材料を再導入するのと同じ個体から得られた任意の材料を指す。例えば、患者からのT細胞は単離され、遺伝子操作されてCARを発現し、次に患者に再導入され得る。
用語「B細胞関連疾患」は、本明細書で使用されるとき、B細胞免疫不全症、B細胞に関連する自己免疫疾患及び/又は過剰な/制御されない細胞増殖(リンパ腫及び/又は白血病を含む)を含む。本発明の二重特異性CARを治療手法に用い得るかかる疾患の例としては、限定はされないが、全身性エリテマトーデス(SLE)、糖尿病、関節リウマチ(RA)、反応性関節炎、多発性硬化症(MS)、尋常性天疱瘡、セリアック病、クローン病、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、自己免疫性甲状腺疾患、X連鎖無ガンマグロブリン血症(X-linked agammaglobulinaemia)、プレB急性リンパ芽球性白血病、全身性エリテマトーデス、分類不能型免疫不全症、慢性リンパ性白血病、選択的IgA欠損症及び/又はIgGサブクラス欠損症に関連する疾患、B系列リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び/又は非ホジキンリンパ腫)、胸腺腫を伴う免疫不全症、一過性低ガンマグロブリン血症及び/又は高IgM症候群、並びにウイルス媒介性B細胞疾患、例えば、EBV媒介性リンパ増殖性疾患、及びB細胞が病態生理に関与する慢性感染症が挙げられる。
用語「血液脳関門」又は「BBB」は、たとえ尿素(60ダルトン)などの極めて小さい分子であっても脳への分子の輸送を制限する緊密な障壁を作り出す、脳毛細血管内皮細胞膜内にタイトジャンクションによって形成される末梢循環と脳及び脊髄との間の生理的障壁を指す。脳内の血液脳関門、脊髄内の血液脊髄関門、及び網膜内の血液網膜関門は、中枢神経系(CNS)内の連続的な毛細血管障壁であり、本明細書ではまとめて「血液脳関門」又は「BBB」と称される。BBBにはまた血液脳脊髄液関門(脈絡叢)も包含され、この関門は毛細血管内皮細胞よりむしろ上衣細胞を含む。
用語「癌」及び「癌性」は、本明細書で使用されるとき、典型的には制御されない細胞成長によって特徴付けられる哺乳動物における生理的状態を指し、又はそれを記述する。癌の例としては、限定はされないが、B細胞リンパ腫(ホジキンリンパ腫及び/又は非ホジキンリンパ腫)、脳腫瘍、乳癌、結腸癌、肺癌、肝細胞癌、胃癌、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、尿路癌、甲状腺癌、腎癌、癌腫、黒色腫、頭頸部癌、脳癌、及び限定はされないがアンドロゲン依存性前立腺癌及びアンドロゲン非依存性前立腺癌を含めた前立腺癌が挙げられる。
用語「キメラ抗原受容体」又は「CAR」又は「CARs」は、本明細書で使用されるとき、細胞傷害性細胞、例えばT細胞、NK細胞及びマクロファージに抗原特異性をグラフトする操作された受容体を指す。本発明のCARは、少なくとも1つの抗原特異的標的領域(ASTR)と細胞外スペーサードメイン(ESD)と膜貫通ドメイン(TM)と1つ又はそれ以上の共刺激ドメイン(CSD)と細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)とを含み得る。ある実施形態では、ESD及び/又はCSDは任意選択である。別の実施形態において、CARは、2つの異なる抗原又はエピトープに特異的な二重特異性CARである。ASTRが標的抗原に特異的に結合すると、ISDが細胞内シグナル伝達を活性化する。例えば、ISDは、抗体の抗原結合特性を利用して、MHCの制限を受けない形でT細胞特異性及び反応性を選択の標的にリダイレクトすることができる。MHCの制限を受けない抗原認識により、CARを発現するT細胞は抗原プロセシングと独立した抗原認識能を得るため、従って主要な腫瘍エスケープ機構を回避する。さらに、T細胞で発現するとき、CARは有利には、内因性T細胞受容体(TCR)α鎖及びβ鎖と二量化しない。
用語「共発現する」は、本明細書で使用されるとき、2つ以上の遺伝子の同時の発現を指す。遺伝子は、例えば単一タンパク質又は単一ポリペプチド鎖としてのキメラタンパク質をコードする核酸であってもよい。例えば、本発明のCARを治療対照(例えばトランケート型上皮成長因子(EGFRt))と共発現させてもよく、ここでCARは第一ポリヌクレオチド鎖によってコードされ、治療対照は第二ポリヌクレオチド鎖によってコードされる。ある実施形態では、第一及び第二ポリヌクレオチド鎖は、切断可能なリンカーをコードする核酸配列によって連結されている。或いは、CAR及び治療対照は、リンカーを介して連結されていない、代わりに例えば2つの異なるベクターによってコードされる2つの異なるポリヌクレオチドによってコードされる。
本明細書で使用される用語「相同」とは、種間に関して発達的及び機能的である遺伝子配列を意味する。例えば、限定はされないが、ヒトの遺伝子において、ヒトCD4遺伝子はマウス3d4遺伝子と相同遺伝子であり、これら2つの遺伝子の配列及び構造は、高い相同性を示し、及び、両遺伝子はMHCクラスIIを制限された抗原認識によるT細胞活性化の信号を送る際に機能するタンパク質をエンコードする。
用語「条件的活性型生物学的タンパク質」は、1つ又はそれ以上の正常生理条件下の親野生型タンパク質よりも活性が多い又は少ない野生型タンパク質の変異体又は変異を意味する。この条件的活性型タンパク質は、体の選択された領域でも活性を示し、又は、異常又は感染に対して許容な生理条件下で活性の増加又は減少を示す。正常生理条件は、投与の部位での、又は対象への投与の部位又は作用部位での組織又は器官における通常範囲内で考慮される温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度である。異常条件は、通常受け入れられる範囲から逸脱する条件のことをさす。一態様において、条件的活性型生物学的タンパク質は、野生型条件において実質的に不活性であるが、野生型条件と等しい又は野生型条件よりも良いレベルにおける他の野生型条件においては活性である。例えば、部位の多様において、発達した条件的活性型生物学的タンパク質は体温において実質的に不活性であるが、低温では活性である。他の態様において、当該条件的活性型生物学的タンパク質は、野生型条件において、可逆的又は不可逆的に不活性である。さらなる態様において、当該野生型タンパク質は治療タンパク質である。他の態様において、当該条件的活性型生物学的タンパク質は、薬又は治療薬剤として用いられる。さらにもう一つの態様において、当該タンパク質は、例えば、肺を通過した後のような高い酸素濃度の血液中において、又は、腎臓においてみられる低いpHにおいて、多い又は、少ない活性を示す。
「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有する残基の互換性を意味する。例えば、脂肪族側鎖を有するアミノ酸の群は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン、カルボン酸側鎖を有するアミノ酸の群は、セリン及びトレオニン、アミドを含む側鎖を有するアミノ酸の群は、アスパラギン及びグルタミン、芳香族側鎖を有するアミノ酸の群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン、塩基性側鎖を有するアミノ酸の群は、アルギニン、及びヒスチジン、及び、含硫側鎖を有するアミノ酸の群は、システイン及びメチオニンである。好適な保存的アミノ酸置換群は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リシン-アルギニン、アラニン-バリン、及びアスパラギン-グルタミンである。
用語「対応する」は、本明細書において、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列の全て又は一部に対して相同である(つまり、厳密に発達的に関連がなくても同一である)、又は、ポリヌクレオチド配列が参照ポリヌクレオチド配列と同一であることを意味する。これと対比的に、用語「相補的」は、本明細書において、相補的配列が参照ポリヌクレオチド配列の全て又は一部に対して相同であることを意味する。例えば、ヌクレオチド配列が「TATAC」は参照「TATAC」に対応し、参照配列「GTATA」に対して相補的である。
用語「共刺激リガンド」は、本明細書で使用されるとき、抗原提示細胞上(例えば、樹状細胞、B細胞など)の分子であって、T細胞上のコグネイト共刺激分子に特異的に結合し、それによって、例えばペプチドを担持したMHC分子とのTCR/CD3複合体の結合により提供される一次シグナルに加えて、限定はされないが、増殖、活性化、分化などを含めたT細胞応答を媒介するシグナルを提供する分子を含む。共刺激リガンドには、限定はされないが、CD7、B7-1(CD80)、B7-2(CD86)、PD-L1、PD-L2、4-1BBL、OX40L、誘導性共刺激リガンド(ICOS-L)、細胞間接着分子(ICAM)、CD30L、CD40、CD70、CD83、HLA-G、MICA、MICB、HVEM、リンホトキシンβ受容体、3/TR6、ILT3、ILT4、HVEM、Tollリガンド受容体に結合するアゴニスト又は抗体及びB7-H3と特異的に結合するリガンドが含まれ得る。共刺激リガンドにはまた、特に、限定はされないが、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、及びCD83と特異的に結合するリガンドなど、T細胞上に存在する共刺激分子と特異的に結合する抗体も包含される。
用語「共刺激分子」は、本明細書で使用されるとき、共刺激リガンドと特異的に結合して、それによりT細胞による共刺激応答、例えば、限定はされないが増殖を媒介するT細胞上のコグネイト結合パートナーを指す。共刺激分子としては、限定はされないが、MHCクラス1分子、BTLA及びTollリガンド受容体が挙げられる。
用語「共刺激シグナル」は、本明細書で使用されるとき、TCR/CD3ライゲーションなどの一次シグナルとの組み合わせでT細胞増殖及び/又は鍵分子の上方制御若しくは下方制御をもたらすシグナルを指す。
用語「細胞傷害性細胞」は、本明細書で使用されるとき、侵入微生物、腫瘍細胞又は他の罹患組織細胞に傷害を与え、又はそれを破壊することのできる細胞を意味する。この用語は、数ある細胞型の中でも特に、ナチュラルキラー(NK)細胞、活性化NK細胞、好中球、T細胞、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞を含むことが意図される。細胞傷害性細胞は、抗体、受容体、リガンド又はそのフラグメント/誘導体を介して標的細胞に結合することにより安定複合体を形成し、細胞傷害性細胞を刺激して標的細胞を破壊する。
細胞傷害性細胞にはまた、限定はされないが、ナチュラルキラーT細胞(Heczey et al.,“Invariant NKT cells with chimeric antigen receptor provide a novel platform for safe and effective cancer immunotherapy,”Blood,vol.124,pp.2824-2833,2014)及び顆粒球を含めた、腫瘍溶解能を有する他の免疫細胞も含まれ得る。さらに、細胞傷害性細胞には、限定はされないが、マクロファージ及び顆粒球、幹細胞及び/又は前駆細胞特性を有する細胞、例えば、限定はされないが、造血幹/前駆細胞(Zhen et al.,“HIV-specific Immunity Derived From Chimeric Antigen Receptor-engineered Stem Cells,”Mol Ther.,vol.23,pp.1358-1367,2015)、胚性幹細胞(ESC)、臍帯血幹細胞、及び人工多能性幹細胞(iPSC)(Themeli et al.,“New cell sources for T cell engineering and adoptive immunotherapy,”Cell Stem Cell.,vol.16,pp.357-366,2015)を含めた、貪食能を有する免疫細胞が含まれ得る。加えて、細胞傷害性細胞には、iPSC由来T細胞(TiPSC)(Themeli et al.,“Generation of tumor-targeted human T lymphocytes from induced pluripotent stem cells for cancer therapy,”Nat Biotechnol.,vol.31,pp.928-933,2013)又はiPSC由来NK細胞などの「合成細胞」が含まれる。
用語「分解有効」量は、基質を酵素に接触させない場合と比較したとき、基質の少なくとも50%を処理するのに必要な酵素の量を指す。
用語「ディレクショナルライゲーション」は、ポリヌクレオチドの5’末端及び3’末端が好ましいライゲーション方向を特定するのに十分に異なるライゲーションを指す。例えば、2つの平滑末端を有する他の点では未処置且つ未消化のPCR産物は、典型的には、その多重クローニング部位において平滑末端を生じるように消化されたクローニングベクターにライゲーションするとき、好ましいライゲーション方向を有しない;従って、このような状況下では典型的にはディレクショナルライゲーションが示されることはない。対照的に、典型的には、5’EcoR I処理末端及び3’BamH Iを有する消化PCR産物が、EcoR I及びBamH Iで消化される多重クローニング部位を有するクローニングベクターにライゲーションされるとき、ディレクショナルライゲーションが示される。
用語「遺伝子修飾された細胞傷害性細胞によって標的化される疾患」は、本明細書で使用されるとき、その遺伝子修飾細胞が治療上有益な結果をもたらすために罹患細胞を標的にするか、それとも健常細胞を標的にするかに関わらず、いかなる形であれ任意の疾患に関与する任意の細胞を本発明の遺伝子修飾細胞によって標的化することを包含する。遺伝子修飾細胞には、限定はされないが、遺伝子修飾T細胞、NK細胞、及びマクロファージが含まれる。遺伝子修飾細胞は本発明のCARを発現し、CARは、標的細胞の表面上に発現する抗原のいずれかを標的化し得る。標的化され得る抗原の例としては、限定はされないが、B細胞上に発現する抗原;癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、及び芽細胞腫上に発現する抗原;様々な免疫細胞上に発現する抗原;及び様々な血液疾患、自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患に関連する細胞上に発現する抗原が挙げられる。標的化され得る他の抗原が当業者には明らかであり、本発明の代替的実施形態に関連して本発明のCARにより標的化され得る。
用語「遺伝子修飾細胞」、「リダイレクト細胞」、「遺伝子操作細胞」又は「修飾細胞」は、本明細書で使用されるとき、本発明のCARを発現する細胞を指す。
用語「DNAシャフリング」は、実質的に相同ではあるが、同一ではない配列間での組換えを示すために本明細書において使用され、実施形態によっては、DNAシャフリングは、cer/lox及び/又はflp/frtシステムなどを介してのように、非相同組換えを介しての乗換えを含むことがある。
用語「薬剤」又は「薬剤分子」は、ヒト又は動物の体に投与された際に、ヒト又は動物の体に有益な効果を有する物質を含む治療剤を意味する。好適には、当該薬剤は、1つ又はそれ以上の症状、病気、又は、ヒト又は動物の体における異常条件を治療する、治す又は緩和する、又は、ヒト又は動物の体の健康を増進させることができるものである。
「有効量」は、若干の期間にわたって投与された者の生存生物における条件を治療する又は防止する、例えば、所望の投薬期間の間に治療的な効果を提供するのに有効的である、条件的活性型生物学的タンパク質又はフラグメントの量のことである。
用語「電解質」は、血液又は電荷を運搬する他の体液内の鉱物を定義するために本明細書で使用される。例えば、一態様において、正常生理条件及び異常条件は、「電解質濃度」の条件であることがある。一態様において、試験される電解質濃度は、イオン化されたカルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩化物、重炭酸塩、及びリン酸塩濃度の1つ又はそれ以上から選択される。例えば、一態様において、血清カルシウムの通常範囲は、8.5~10.2mg/dLである。この態様において、異常血清カルシウム濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清塩化物は1リットルあたり96~106ミリグラム当量(mEq/L)である。この態様において、異常血清塩化物濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清マグネシウム濃度の通常範囲は1.7~2.2mg/dLである。この態様において、異常血清マグネシウム濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清リン酸塩の通常範囲は、2.4~4.1mg/dLである。この態様において、異常血清リン酸塩濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清又は血液のナトリウムの通常範囲は135~145mEq/Lである。この態様において、異常血清又は血液ナトリウム濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。他の実施例で、一態様において、血清又は血液カリウムの通常範囲は、3.7~5.2mEq/Lである。この態様において、異常血清又は血液カリウム濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。さらなる態様において、血清重炭酸塩の通常範囲は20~29mEq/Lである。この態様において、異常血清又は血液重炭酸塩濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。異なる態様において、重炭酸塩レベルは、血液における酸性の通常レベル(pH)を示すために使用されることがある。用語「電解質濃度」は、組織、又は、血液又は血漿以外の体液における特定の電解質濃度を定義するためにも使用されることがある。この場合において、正常生理条件は、その組織又は体液において臨床的通常範囲であるように考慮される。この態様において、異常組織又は体液電解質濃度は、通常範囲の上又は下から選択されることがある。
本明細書で使用される用語「抗原決定基」は、酵素ポリペプチドのような抗原上の抗原性決定要素に関連する。そして、酵素特異抗体のような抗体の抗原結合部位が結合する。抗原決定基は通常、アミノ酸又は当側鎖のような分子の化学表面活性分属からなり、及び、特異3次元構造性質も特異的な電荷性を有することがある。本明細書で使用されているように、「抗原決定基」は、抗原のその部分又は抗体の本体と結合する可変領域と相互に作用する結合相互佐用を形成することができる他の巨大分子を意味する。典型的には、このような結合相互作用は、1つ又はそれ以上のCDRのアミノ酸残基との分子間作用として明らかにされる。
本明細書で使用されるとき、用語「発達」、又は「発達している」は、1つ以上の突然変異誘発方法を用いて、新規ポリペプチドをコードする新規ポリヌクレオチドを生成することを指し、この新規ポリペプチドはそれ自体が改良された生物学的分子であり、及び/又は別の改良された生物学的分子の生成に寄与する。詳細な非限定的態様において、本開示は、親野生型タンパク質からの条件的活性型生物学的タンパク質の発達に関する。一態様において、例えば、発達は、米国特許出願公開第2009/0130718号明細書(参照により本明細書に援用される)に開示される非確率的ポリヌクレオチドキメラ化及び非確率的部位特異的点突然変異誘発の両方を実施する方法に関する。より詳細には、本開示は、正常生理条件では野生型酵素親分子と比較して活性の低下を呈するが、1つ以上の異常条件下では野生型酵素の抗原特異的標的領域と比較して活性の亢進を呈する条件的活性型生物学的酵素を発達させる方法を提供する。
用語「フラグメント」、「誘導体」及び「相似器官」は、参照ポリペプチドを参照する際に、少なくとも1つの、少なくとも本質的に参照ポリペプチドと同じ生理機能又は活性を保有するポリペプチドを有する。さらに、用語「フラグメント」、「誘導体」及び「相似器官」は、著しく高い活性を有する成熟した酵素を生成するために開裂により修飾され得る低活性前駆タンパク質のような「前形態」分子によって例示される。
本明細書で使用される用語「遺伝子」はポリペプチド鎖の生成において含まれるDNAセグメントを意味し、個々のコーディングセグメント(エキソン)間に介在配列(ニトロン)と同様にコーディング領域(リーダー及びトレーダー)を先行する、及び、続く領域を含む。
本明細書で使用される用語「非相同」は、一本鎖核酸配列が、他の一本鎖核酸配列又はその相補的配列にハイブリダイズできないことを意味する。したがって、非相同な部分は、ポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドが、他の核酸又はポリヌクレオチドにハイブリダイズできない配列における部分又は領域を有することを意味する。このような領域又は部分は例えば変異の部分である。
本明細書で使用される用語「相同」又は「相同」は、一本鎖核酸配列が相補的な一本鎖核酸配列にハイブリダイズできることを意味する。ハイブリダイゼーションの程度は、配列間の同一性の量、及び、後述するような温度及び塩濃度のようなハイブリダイゼーション条件を含む要因の数によることがある。好適には、同一の領域が約5bpより大きく、さらに好適には、同一の領域が10bpよりも大きい。
本開示の利益は「産業的応用」(又は産業的工程)にまで及び、用語は、非商業的な産業的応用(例えば、非営利機関での正医学的調査)と同様に、適切な商業的な産業的(又は単に産業的な)応用を含むために用いられる。関連する応用には、診断、医学、農業、製造及び学究的世界の分野を含む。
用語「免疫細胞」は、本明細書で使用されるとき、限定はされないが、抗原提示細胞、B細胞、好塩基球、細胞傷害性T細胞、樹状細胞、好酸球、顆粒球、ヘルパーT細胞、白血球、リンパ球、マクロファージ、マスト細胞、メモリー細胞、単球、ナチュラルキラー細胞、好中球、食細胞、形質細胞及びT細胞を含めた哺乳類免疫系の細胞を指す。
用語「免疫応答」は、本明細書で使用されるとき、限定はされないが、自然免疫、体液性免疫、細胞性免疫、免疫、炎症反応、獲得(適応)免疫、自己免疫及び/又は過剰反応免疫を含めた免疫を指す。
用語「単離されている」は、本明細書で使用されるとき、材料がその元の環境(例えば、それが天然に存在する場合には自然環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きている動物が持つ天然に存在するポリヌクレオチド又は酵素は単離されていないが、自然系内で共存する材料の一部又は全てから分離されている同じポリヌクレオチド又は酵素は、単離されている。かかるポリヌクレオチドはベクターの一部であってもよく、及び/又はかかるポリヌクレオチド又は酵素は組成物の一部であってもよく、かかるベクター又は組成物がその自然環境の一部でない点でなおも単離されている。
本明細書で使用される用語「分離された核酸」は核酸、例えば、DNA又はRNA分子を定義するのに用いられる。DNA又はRNA分子のような核酸は、それが誘導される有機体の自然発生遺伝子において存在するときに通常直接に隣接する5'及び3'隣接配列に、直接隣接しない。従って、用語は、例えば、プラスミド又はウイルスベクター、異種細胞の遺伝子内(又は異種細胞の遺伝子ではあるが、自然は生のものとは異なる部位)に組み込まれた核酸、及び、例えばPCR増幅又は制限酵素消化によってつくられたDNAフラグメント、又は、生体外転写でつくられたRNA分子のような分離された分子として存在する核酸のように、ベクター内に組み込まれる核酸を言い表す。この用語はまた、例えば溶融タンパク質の製造において用いることができる付加的タンパク質をエンコードする交雑遺伝子の一部を形成する組換え核酸も意味する。
用語「レンチウイルス」は、本明細書で使用されるとき、レトロウイルス科(Retroviridae)の属を指す。レンチウイルスは、レトロウイルスの中でも、非分裂細胞を感染させることができる点でユニークである;レンチウイルスは宿主細胞のDNAに多量の遺伝情報を送達することができ、従ってレンチウイルスは、最も効率的な遺伝子デリバリーベクター送達方法の一つである。HIV、SIV、及びFIVは、全てレンチウイルスの例である。レンチウイルスに由来するベクターは、インビボで高い遺伝子導入レベルを実現するための手段を提供する。
用語「リガンド」は、本明細書で使用されるとき、特定の受容体によって認識される分子、例えばランダムペプチド又は可変セグメント配列を指す。当業者は認識するであろうとおり、分子(又は巨大分子複合体)は受容体及びリガンドの両方であり得る。一般に、より小さい分子量を有する結合パートナーがリガンドと称され、より大きい分子量を有する結合パートナーが受容体と称される。
用語「ライゲーション」は、本明細書で使用されるとき、2つの二本鎖核酸フラグメントの間におけるリン酸ジエステル結合の形成過程を指す(Sambrook et al.,(1982).Molecular Cloning:A Laboratory Manual.Cold Spring Harbour Laboratory,Cold Spring Harbor,NY.,p.146;Sambrook et al.,Molecular Cloning:a laboratory manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。特に提供されない限り、ライゲーションは、ライゲーションする0.5マイクログラムの略等モル量のDNAフラグメント当たり10単位のT4 DNAリガーゼ(「リガーゼ」)とする公知の緩衝液及び条件を用いて達成し得る。
用語「リンカー」又は「スペーサー」は、本明細書で使用されるとき、2つの分子、例えばDNA結合タンパク質及びランダムペプチドをつなぐ分子又は分子群であって、例えば、ランダムペプチドがDNA結合タンパク質からの立体障害を最小限として受容体に結合することができるように、それらの2つの分子を好ましい配置に置く働きをする分子又は分子群を指す。「リンカー」(L)又は「リンカードメイン」又は「リンカー領域」は、本明細書で使用されるとき、本発明のCARの任意のドメイン/領域を一体に連結する約1~100アミノ酸長のオリゴペプチド又はポリペプチド領域を指す。リンカーは、隣接するタンパク質ドメイン同士が互いに自由に動くことができるように、グリシン及びセリンなどの可動性の残基で構成されてもよい。2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないようにすることが望ましい場合、より長いリンカーが用いられ得る。リンカーは切断可能又は切断不可能であってもよい。切断可能リンカーの例としては、2Aリンカー(例えばT2A)、2A様リンカー又はその機能的等価物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、リンカーとしては、ピコルナウイルス2A様リンカー、ブタテッショウウイルスのCHYSEL配列(P2A)、トセア・アシグナ(Thosea asigna)ウイルス(T2A)又はこれらの組み合わせ、変異体及び機能的等価物が挙げられる。当業者には他のリンカーが明らかであり、本発明の代替的な実施形態に関連して用いることができる。
用語「哺乳類細胞表面ディスプレイ」は、本明細書で使用されるとき、スクリーニング目的で(例えば、磁気ビーズと蛍光活性化細胞選別との組み合わせによって特異的抗原結合に関してスクリーニングすることによる)、タンパク質又は抗体、又は抗体の一部分を哺乳類宿主細胞表面に発現させて提示する技法を指す。一態様では、DuBridge et al.,米国特許出願公開第2009/0136950号明細書(参照により本明細書に援用される)にあるとおり、哺乳類発現ベクターを使用して免疫グロブリンを分泌型及び細胞表面結合型の両方として同時に発現させる。別の態様では、この技法が、Gao et al.,米国特許出願公開第2007/0111260号明細書(参照により本明細書に援用される)にあるとおり、細胞で発現すると細胞膜上に提示される抗体又は抗体フラグメントのライブラリをコードするウイルスベクターのスクリーニングに用いられる。哺乳類細胞上の全IgG表面ディスプレイが公知である。例えば、Akamatsuu et al.は、IgG分子をその抗原結合親和性及び生物学的活性に基づき直接単離するのに好適な哺乳類細胞表面ディスプレイベクターを開発した。エプスタイン・バーウイルス由来のエピソームベクターを使用して抗体ライブラリが細胞表面上に全IgG分子として提示され、磁気ビーズと蛍光活性化細胞選別との組み合わせによって特異的抗原結合に関してスクリーニングされた。選別された細胞から所望の結合特性を有する抗体をコードするプラスミドが回収され、可溶性IgGの産生に好適な形態に変換された。Akamatsuu et al.J.Immunol.Methods,vol.327,pages 40-52,2007(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。Ho et al.は、親和性成熟のための単鎖Fv抗体の細胞表面ディスプレイに、一過性のタンパク質発現に広く用いられているヒト胎児腎臓293T細胞を使用した。親和性がやや低いWT抗体を発現する大過剰の細胞から、より高い親和性を有するまれな変異抗体を発現する細胞が、シングルパスの細胞選別によって240倍エンリッチされた。さらに、固有の抗体ホットスポットをランダム化するコンビナトリアルライブラリの1回の選択後に、CD22に対する結合親和性が増加した、高度にエンリッチされた変異体が得られた。Ho et al.,“Isolation of anti-CD22 Fv with high affinity by Fv display on human cells,”Proc Natl Acad Sci U S A,vol.103,pages 9637-9642,2006(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
抗原に特異的なB細胞もまた使用することができる。かかるB細胞は、ヒトドナーの末梢血単核細胞(PBMC)から直接単離し得る。このB細胞プールから組換え抗原特異的単鎖Fv(scFv)ライブラリを作成し、シンドビスウイルス発現系を使用することにより哺乳類細胞表面ディスプレイによってスクリーニングする。陽性クローンから重鎖(HC)及び軽鎖(LC)の可変領域(VR)を単離し、全IgG又はFabフラグメントとして組換え完全ヒト抗体を産生することができる。このようにして、モデルウイルス抗原のQβウイルス様粒子(VLP)を結合するいくつかの超変異高親和性抗体、並びにニコチンに特異的な抗体を単離することができる。Beerli et al.,“Isolation of human monoclonal antibodies by mammalian cell display,”Proc Natl Acad Sci U S A,vol.105,pages 14336-14341,2008(参照により本明細書に援用される)を参照のこと。
酵母細胞表面ディスプレイもまた本発明において使用することができ、例えば、Kondo and Ueda,“Yeast cell-surface display-applications of molecular display,”Appl.Microbiol.Biotechnol.,vol.64,pages 28-40,2004を参照されたく、これは、例えば、酵母サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)を使用した細胞表面エンジニアリングシステムについて記載している。酵母S.セレビシエ(S.cerevisiae)における発現用のいくつかの代表的なディスプレイシステムが、Lee et al,“Microbial cell-surface display,”TRENDS in Bitechnol.,vol.21,pages 45-52,2003に記載されている。また、Boder and Wittrup,“Yeast surface display for screening combinatorial polypeptide libraries,”Nature Biotechnol.,vol.15,pages 553,1997。
用語「製造する」は、本明細書で使用されるとき、治療用タンパク質の少なくとも第I相臨床試験を可能にするのに十分な分量、又は診断用タンパク質の規制当局の承認に十分な分量でタンパク質を作製することを指す。
本明細書で使用されるとき、用語「微小環境」は、組織又は体において、組織の他の領域又は体の他の領域と恒常的又は一時的な物理的又は化学的違いを有する任意の部分又は領域を意味する。
本明細書で使用されるとき、用語「発達させる分子特性」には、ポリヌクレオチド配列を含む分子、ポリペプチド配列を含む分子、及び部分的にポリヌクレオチド配列を含み、且つ部分的にポリペプチド配列を含む分子への言及が含まれる。発達させる分子特性の特に関連性のある(但し何ら限定するものではない)例としては、温度;塩分;浸透圧;pH;酸化的ストレス、及びグリセロール濃度、DMSO濃度、界面活性剤濃度、及び/又は反応環境において接触する任意の他の分子種に関する等、特定の条件におけるタンパク質活性が挙げられる。発達させる分子特性のさらなる特に関連性のある(但し何ら限定するものではない)例としては、安定性-例えば、貯蔵中に直面し得るような特定の環境に特定の時間曝露した後に存在する残留分子特性の量が挙げられる。
用語「突然変異」は、本明細書で使用されるとき、野生型核酸配列の配列の変化又はペプチドの配列の変化を意味する。かかる突然変異は、転移又は転換などの点突然変異であり得る。突然変異は欠失、挿入又は重複であり得る。
用語「多重特異性抗体」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合親和性を有する抗体である。多重特異性抗体は完全長抗体又は抗体フラグメント(例えばF(ab’)2二重特異性抗体)として調製することができる。操作された抗体は、2つ、3つ又はそれ以上(例えば4つ)の抗原に結合し得る(例えば、米国特許出願公開第2002/0004587 A1号明細書を参照)。1つの条件的活性型抗体が多重特異性となるように操作されてもよく、又は2つの抗体が、2つの抗原に結合するヘテロ二量体を含むように操作されてもよい。多重特異性抗体はまた、多機能性でもあり得る。
本明細書で使用されるとき、縮重「N,N,G/T」ヌクレオチド配列は、32個の可能なトリプレットを表し、ここで「N」はA、C、G又はTであり得る。
用語「自然発生」は、本明細書で使用されているように、対象が自然においてみられるという事実に関連して適用されるものである。例えば、自然において原料から分離され得る有機体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列で、実験室内で人によって意図的に修飾されたのではないものは自然発生である。一般的に、用語「自然発生」は、種において典型的であるように、非病理学的な(病気ではない)個体において存在するような対象に関連する。
本明細書で使用されるように、「正常生理条件」又は「野生型操作条件」は、対象への投与の部位又は作用部位での通常範囲内で考慮される温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度の条件である。
本明細書で使用されるように、「核酸分子」は、一本鎖又は二本鎖であるかによって、それぞれ少なくとも一塩基又は一塩基対からなる。さらに、核酸分子は、非限定ではあるが、RNA、DNA、遺伝子核酸、非遺伝子核酸、自然発生及び非自然発生核酸、及び合成核酸など核酸分子の群などのような分子を含むヌクレオチドの任意の群にのみ、又はキメラ的に属することができる。これは、非限定的な実施例として、ミトコンドリア、リボソームRNA、及び、1つ又はそれ以上の自然発生の成分と自然発生ではない成分からキメラ的になる核酸分子のような任意の細胞小器官に関連した核酸を含む。
加えて、「核酸分子」は、限定はされないがアミノ酸及び糖類によって例示されるとおりの1つ以上の非ヌクレオチドベースの成分を一部に含み得る。従って、例として、限定されないが、一部がヌクレオチドベースであり、且つ一部がタンパク質ベースであるリボザイムは、「核酸分子」と見なされる。
用語「~をコードする核酸配列」又は「~のDNAコード配列」又は「~をコードするヌクレオチド配列」は、本明細書で使用されるとき、プロモーターなどの適切な調節配列の制御下に置かれたとき転写及び翻訳されて酵素になるDNA配列を指す。「プロモーター」は、細胞においてRNAポリメラーゼに結合して、下流(3’方向)コード配列の転写を開始する能力を有するDNA調節領域である。プロモーターはDNA配列の一部である。この配列領域は、その3’末端に開始コドンを有する。プロモーター配列は、バックグラウンドを上回る検出可能なレベルで転写の開始に必要な最小数のエレメントであるところの塩基を含む。しかしながら、RNAポリメラーゼが配列に結合し、開始コドン(プロモーターを有する3’末端)で転写が始まった後、転写は3’方向に下流に進む。プロモーター配列内には、転写開始部位(好都合にはヌクレアーゼS1でマッピングすることによって定義される)並びにRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)が見られる。
用語「オリゴヌクレオチド」(又は同義語として「オリゴ」)は、一本鎖ポリデオキシヌクレオチド又は化学的に合成され得る2つの相補的なポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかを指す。かかる合成オリゴヌクレオチドは5’リン酸を有することも、又は有しないこともある。有しないものは、キナーゼの存在下でATPによってリン酸を加えなければ別のオリゴヌクレオチドにライゲーションしない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていないフラグメントにライゲーションする。
本明細書で使用されるように、用語「操作可能な状態で結合」は、機能的関係性におけるポリヌクレオチド要素の結合を意味する。核酸は、他の核酸配列と機能的関係性におかれた際に「操作可能な状態で結合」である。例えば、それがコーディング配列の転写に影響を及ぼす場合、プロモーター又はエンハンサーはコーディング配列に操作可能な状態で結合される。操作可能な状態で結合は、結合されているDNA配列が、典型的には隣接しており、及び、2つのタンパク質コーディング領域を接合するのに必要な場合、隣接し、リーディングフレーム内にあることを意味する。
RNAポリメラーゼが単一mRNAにおいて2つのコーディング配列を転写するときに、コーディング配列は、他のコーディング配列に「操作可能な状態で結合」し、両方のコーディング配列に由来したアミノ酸を有する単一ポリペプチド内に翻訳される。発現された配列が所望のタンパク質をつくるために最終的に処理される限り、コーディング配列は、互いに隣接する必要はない。
本明細書で使用されるように、用語「親のポリヌクレオチドセット」は1つ又はそれ以上の異なるポリヌクレオチド種からなる。通常、この用語は、好適には親のセットの突然変異生成により得られる子孫ポリヌクレオチドセットを参照するのに用いられ、この場合において、用語「親の」、「起動」及び「テンプレート」は、互換性がある。
用語「患者」又は「対象」は、治療の目的となる、ヒトのような例えば哺乳類などの動物を意味する。対象又は患者には男性でも女性でもあり得る。
本明細書で使用されるとき、用語「生理条件」は、生存生物に適合する、及び/又は生存培養酵母細胞又は哺乳類細胞において細胞内に典型的に存在する温度、pH、浸透圧、イオン強度、粘度、及び同様の生化学的パラメータを指す。例えば、典型的な実験室培養条件下で成長する酵母細胞の細胞内条件は、生理条件である。インビトロ転写カクテルに好適なインビトロ反応条件は、概して生理条件である。一般に、インビトロ生理条件は、50~200mMのNaCl又はKCl、pH6.5~8.5、20~45℃及び0.001~10mMの二価陽イオン(例えばMg++"、Ca++);好ましくは、約150mMのNaCl又はKCl、pH7.2~7.6、5mMの二価陽イオンを含み、多くの場合に0.01~1.0%非特異的タンパク質(例えばウシ血清アルブミン(BSA))を含む。非イオン性界面活性剤(Tween、NP-40、Triton X-100)が、通常約0.001~2%、典型的には0.05~0.2%(v/v)で存在することも多くある。詳細な水溶液条件は、実施者が従来方法により選択し得る。一般的な指針として、以下の緩衝水溶液条件を適用することができる:10~250mMのNaCl、5~50mMのトリスHCl、pH5~8、任意選択で二価陽イオン及び/又は金属キレート剤及び/又は非イオン性界面活性剤及び/又は膜画分及び/又は消泡剤及び/又はシンチラントの添加。正常生理条件は、患者の正常範囲内と見なし得る、患者又は対象の生体内の投与部位又は作用部位における温度、pH、浸透圧、オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度の条件を指す。
標準規定(5'~3')は二本鎖ポリヌクレオチドの配列を記載するために本明細書において用いられる。
用語「個体群」は、ポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドの部分又はタンパク質のような組成物の収集を意味する。「混合された個体群」は、核酸又はタンパク質の同じ属ではある(つまり関連している)が、その配列において異なり(つまり同一ではない)従ってその生理的知的活性において異なる組成物の収集である。
「代用形」を有する分子とは、参照代用形分子との比較において、異なる性質(例えば活性の増加)を有するより成熟した分子形態を得るために、1つ又はそれ以上の共有結合及び非共有結合化学的修飾(例えば、グリコシル化、タンパク質分解開裂、二量体化又はオリゴマー化、温度による誘発又はpHによって誘発された高次構造的変化、補助因子との会合など)の任意の組み合わせを途中で経た分子を意味する。2つ又はそれ以上の化学的修飾(例えば、2つのタンパク質分解開裂、又はタンパク質分解開裂及び非グリコシル化)が成熟した分子の製造への途中で区別されることができるときに、参照前駆体分子は、「前駆代用形」分子と称される。
本明細書で使用されるとき、用語「受容体」は、所与のリガンドに親和性を有する分子を指す。受容体は天然に存在する分子又は合成分子であり得る。受容体は改変されていない状態で用いられてもよく、又は他の種との凝集体として用いられてもよい。受容体は、結合メンバーと直接、或いは特異的結合物質を介して、共有結合的又は非共有結合的に結合することができる。受容体の例としては、限定はされないが、特定の抗原決定基(ウイルス、細胞、又は他の材料などにあるもの)との反応性を示すモノクローナル抗体を含めた抗体及び抗血清、細胞膜受容体、複合糖質及び糖タンパク質類、酵素、及びホルモン受容体が挙げられる。
用語「減少的再集合」は、本明細書で使用されるとき、反復配列によって媒介される欠失(及び/又は挿入)イベントを通じて生じる分子の多様性の増加を指す。
本明細書で使用される用語「制限部位」は、制限酵素の作用の発現に必要な認識配列を意味し、接触開裂の部位を含む。開裂の部位は、低い曖昧性配列(つまり、制限部位の発生の頻度の主要な決定要素を含む配列)からなる制限部位の部分において含まれること、又は含まれないことがあると認められる。酵素(例えば制限酵素)がポリヌクレオチドを「開裂する」というのは、制限酵素がポリヌクレオチドの開裂を触媒する又は容易にすることを意味すると理解されている。
本明細書で使用されるとき、用語「一本鎖抗体」は、概してスペーサーペプチドを介して連結された、ポリペプチド連鎖におけるVHドメインとVLドメインとを含むポリペプチドを指し、これはアミノ末端及び/又はカルボキシ末端に追加的なアミノ酸配列を含み得る。例えば、一本鎖抗体は、コードポリヌクレオチドに連結するための係留セグメントを含み得る。例として、scFvは一本鎖抗体である。一本鎖抗体は、概して、免疫グロブリンスーパーファミリーの遺伝子によって実質的にコードされる(例えば、The Immunoglobulin Gene Superfamily,A.F.Williams and A.N.Barclay,in Immunoglobulin Genes,T.Honjo,F.W.Alt,and THE.Rabbits,eds.,(1989)Academic press:San Diego,Calif.,pp.361-368(参照により本明細書に援用される)を参照)、最も多くの場合にはげっ歯類、非ヒト霊長類、トリ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、又はヒト重鎖又は軽鎖遺伝子配列によってコードされる、少なくとも10連続アミノの1つ又はそれ以上のポリペプチドセグメントからなるタンパク質である。機能性一本鎖抗体は、概して特異的標的分子、典型的には受容体又は抗原(エピトープ)との結合特性を保持するために十分な免疫グロブリンスーパーファミリー遺伝子産物の一部分を含有する。
一対の分子(例えば、抗体-抗原対及びリガンド-受容体対)のメンバーは、それらが他の非特異的分子と比べて高い親和性で互いに結合する場合、互いに「特異的に結合する」と言われる。例えば、非特異的タンパク質に対する結合と比べてそれがより効率的に結合する抗原に対して産生される抗体は、抗原に特異的に結合すると記載することができる。
用語「刺激」は、本明細書で使用されるとき、刺激分子(例えば、TCR/CD3複合体)がそのコグネイトリガンドに結合し、それにより、限定はされないがTCR/CD3複合体を介したシグナル伝達など、シグナル伝達イベントが媒介されることによって生じる一次応答を意味する。刺激は、TGF-βの下方制御、及び/又は細胞骨格構造の再編成など、ある種の分子の発現の変化を媒介し得る。
用語「刺激分子」は、本明細書で使用されるとき、抗原提示細胞上に存在するコグネイト刺激リガンドと特異的に結合するT細胞上の分子を意味する。
用語「刺激性リガンド」は、本明細書で使用されるとき、抗原提示細胞上(例えば、樹状細胞、B細胞など)に存在するときT細胞上のコグネイト結合パートナー(本明細書では「刺激分子」と称される)と特異的に結合して、それにより、限定はされないが、活性化、免疫応答の惹起、増殖などを含めた、T細胞による一次応答を媒介することのできるリガンドを意味する。刺激性リガンドは当該技術分野において周知であり、特に、ペプチドを担持したMHCクラスI分子、抗CD3抗体、スーパーアゴニスト抗CD28抗体、及びスーパーアゴニスト抗CD2抗体を包含する。
用語「標的細胞」は、本明細書で使用されるとき、疾患に関与する細胞であって、且つ本発明の遺伝子修飾細胞傷害性細胞(限定はされないが、遺伝子修飾T細胞、NK細胞、及びマクロファージを含む)によって標的化され得る細胞を指す。他の標的細胞が当業者には明らかであり、本発明の代替的な実施形態に関連して用いられ得る。
用語「T細胞」と「Tリンパ球」とは互換性があり、本明細書では同義語として用いられる。例としては、限定はされないが、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、エフェクターメモリーT細胞及びこれらの組み合わせが挙げられる。
用語「形質導入」は、本明細書で使用されるとき、ウイルスベクターを使用した細胞への外来核酸の導入を指す。「トランスフェクション」は、本明細書で使用されるとき、組換えDNA技術を使用した細胞への外来核酸の導入を指す。用語「形質転換」は、宿主細胞への「外来性」(すなわち外因的な、又は細胞外の)遺伝子、DNA又はRNA配列の導入を意味し、従って宿主細胞は導入された遺伝子又は配列を発現して、導入された遺伝子又は配列によってコードされるタンパク質又は酵素などの所望の物質を産生することになる。導入された遺伝子又は配列はまた、「クローニングされた」又は「外来性の」遺伝子又は配列と呼ばれることもあり、開始、停止、プロモーター、シグナル、分泌、又は他の配列など、細胞の遺伝機構によって用いられる調節又は制御配列を含み得る。遺伝子又は配列は、非機能性配列又は機能不明の配列を含み得る。導入されたDNA又はRNAを受け入れて発現する宿主細胞は「形質転換」されており、「形質転換体」又は「クローン」である。宿主細胞に導入されるDNA又はRNAは、宿主細胞と同じ属又は種の細胞、又は異なる属又は種の細胞を含め、任意の供給源に由来することができる。
用語「治療する」は、(1)状態、疾患又は条件の臨床的又は潜在的症状に苦しむ、又はそれらに罹患しやすいが、状態の臨床的又は潜在的症状、疾患又は条件をまだ経験していない又は示していない動物において進行する状態、疾患又は条件の臨床的症状の出現を防止する又は遅延させること、(2)状態、疾患又は条件を阻害すること(つまり、疾患又は維持療法の場合においてはそれらの逆戻り又は、少なくとも1つの臨床的又は潜在性症状の進行を抑制し、減少させ、又は遅延させること)及び/又は(3)状態を楽にすること(つまり、状態、疾患、又は条件又は臨床又は潜在性症状の少なくとも1つの後退を引き起こすこと)治療される患者の利点は、統計学的にも有意であり、又は、少なくとも患者又は医師に少なくとも認知可能である。
「腫瘍」は、本明細書で使用されるとき、悪性か良性かに関わらず、あらゆる新生物性細胞成長及び増殖、並びにあらゆる前癌性及び癌性細胞及び組織を指す。
本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍微小環境」は、悪性過程が生き残り、及び/又は拡大し、及び/又は広がるための構造的及び/又は機能的環境を作り出すエレメントを含めた、腫瘍環境のあらゆるエレメントを指す。
本明細書で使用されているように、用語「可変性セグメント」は、ランダム、擬似ランダム、又は定義された仁配列からなる発生期のペプチドの部分を意味する。「可変性セグメント」は、ランダム、擬似ランダム、又は定義された仁配列からなる発生期のペプチドの部分を意味する。可変性セグメントは変異体及び不変異体残基位置の両方からなることがあり、及び、変異体残基位置における変異体残基の度合いは、限定されることがあり、両方の選択肢は、実行者の裁量で選択される。典型的には可変性セグメントは、長さにおいて約5~20アミノ酸残基(例えば8~10)であり、しかし、可変性セグメントはそれより長いこともあり、及び、抗体フラグメント、タンパク質結合核酸、受容体タンパク質などのような抗体タンパク質又は受容体タンパク質からなることもある。
「ベクター」、「クローニングベクター」及び「発現ベクター」は、本明細書で使用されるとき、宿主細胞にポリヌクレオチド配列(例えば外来性遺伝子)を導入して宿主を形質転換し、導入された配列の発現(例えば転写及び翻訳)を促進することができる媒体を指す。ベクターには、プラスミド、ファージ、ウイルス等が含まれる。
本明細書で使用されるとき、用語「野生型」は、ポリヌクレオチドがいかなる突然変異も含まないことを意味する。「野生型(wild type)タンパク質」、「野生型(wild-type)タンパク質」、「野生型(wild-type)生物学的タンパク質」、又は「野生型(wild type)生物学的タンパク質」は、自然から単離することのできる、自然中に見られる活性レベルで活性な、且つ自然中に見られるアミノ酸配列を含むタンパク質を指す。用語「親分子」及び「標的タンパク質」もまた、野生型タンパク質を指す。「野生型タンパク質」は好ましくは、より高い結合親和性、又は酵素活性など、何らかの所望の特性を有し、これは、種々の温度又はpH環境におけるより良好な安定性、又は向上した選択性及び/又は溶解度を含めた所望の特性に関してタンパク質のライブラリをスクリーニングすることによって得られ得る。
例えば「ワーキング試料」にあるような用語「ワーキング」は、単に人が作業している試料である。同様に、例えば「ワーキング分子」は、人が作業している分子である。
例示を目的として、様々な例示的実施形態を参照することにより、本発明の原理を説明する。本明細書には本発明の特定の実施形態が具体的に説明されるが、当業者は、同じ原理を他のシステム及び方法において同様に適用可能であり、用い得ることを容易に認識するであろう。本発明の開示される実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用が示される任意の特定の実施形態の詳細に限定されないことが理解されるべきである。加えて、本明細書で使用される用語法は、限定ではなく、説明を目的とするものである。さらに、いくつかの方法は、本明細書に特定の順序で提示される工程を参照して記載されるが、多くの場合、当業者が理解し得るとおり、これらの工程は任意の順序で実施することができる;従って新規方法は、本明細書に開示される特定の工程順に限定されない。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、文脈上特に明確に指示されない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」には複数形の参照が含まれることに留意しなければならない。さらに、用語「a」(又は「an」)、「1つ又はそれ以上」及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同義的に用いられ得る。用語「~を含む(comprising)」、「~を含む(including)」、「~を有する(having)」及び「~で構成される(constructed from)」もまた、同義的に用いられ得る。
本開示は、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体(CAR)であって、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ(a)正常生理条件での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)異常条件下での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体に関する。一部の実施形態において、キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
本発明のCARは、(1)正常生理条件で可逆的又は不可逆的に低下する標的抗原に対するその親和性、及び(2)条件的活性型抗原特異的標的領域を有しない同じCARとの比較で、親和性の増加、のうちの少なくとも一方を有する。これらのCARは、腫瘍微小環境又は滑液など、異常条件が存在する疾患部位に細胞傷害性細胞を導くことができる。これらの特性の結果として、CARは、正常組織に対するその低親和性を理由としながら、細胞傷害性細胞を疾患部位に優先的に導くことができる。かかるCARは副作用が劇的に低下し、より高用量の治療薬の使用が可能となるため、治療有効性が高まり得る。CARは、対象の体内にある期間がより短い又は限られていることが必要な新規治療薬の開発に特に有効である。有益な利用の例としては、高投薬量での全身治療、並びに高濃度での局所治療が挙げられる。
本キメラ抗原受容体は、正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
キメラ抗原受容体は、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有し、且つ正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
前述のキメラ抗原受容体のいずれかにおいて、本抗原特異的標的領域はまた、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加も有し得る。
前述のキメラ抗原受容体のいずれかは、この抗原受容体を含有するタンパク質が野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成され得る。
代替的実施形態において、本発明は、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体(CAR)であって、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを有するキメラ抗原受容体を提供する。一部の実施形態において、キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
本開示はまた、(a)正常生理条件での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)異常条件下での分析における野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を有する条件的活性型タンパク質を生成するため野生型タンパク質又はそのドメインを発達させる方法にも関する。条件的活性型タンパク質は、CARとなるように操作することができる。
本方法によって作製されるキメラ抗原受容体は、正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
本方法によって作製されるキメラ抗原受容体は、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有し、且つ正常生理条件で野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して標的抗原に対する結合親和性の低下を有する抗原特異的標的領域を含み得る。
本方法によって作製される前述のキメラ抗原受容体のいずれかにおいて、抗原特異的標的領域はまた、異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加も有し得る。
本方法によって作製される前述のキメラ抗原受容体のいずれかは、この抗原受容体を含有するタンパク質が野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成され得る。
本方法の代替的実施形態において、標的抗原と結合するための本方法によって作製されるキメラ抗原受容体(CAR)は、野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ異常条件下での分析において野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と;膜貫通ドメインと;細胞内シグナル伝達ドメインとを含む。一部の実施形態において、キメラ抗原受容体は、細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む。
キメラ抗原受容体
哺乳動物、特にヒトの免疫系は、罹患組織及び/又は病原体を標的化して破壊する細胞傷害性細胞を有する。これらの細胞傷害性細胞を使用して腫瘍などの望ましくない組織(即ち標的組織)を除去することは、有望な治療手法である。除去の標的とし得る他の組織としては、腺(例えば前立腺)過形成、疣贅、及び望ましくない脂肪組織が挙げられる。しかしながら、この比較的新しい治療手法は、これまでのところ限られた成功しか収めていない。例えば、T細胞を使用した腫瘍の標的化及び破壊は、癌細胞が表面抗原の発現を低下させて新しい療法に適応することによりこの療法の有効性が低下し得るため、長期的利益が比較的少ない。癌細胞は、腫瘍特異的T細胞に応答した検出を逃れるため脱分化することさえある。Maher,“Immunotherapy of Malignant Disease Using Chimeric Antigen Receptor Engrafted T Cells,”ISRN Oncology,vol.2012,article ID 278093,2012。
キメラ抗原受容体を発現する細胞傷害性細胞は、これらの細胞傷害性細胞の特異性及び感受性を大幅に改善し得る。例えば、CARを発現するT細胞(CAR-T細胞)は、CARを使用して、CARに特異的に結合する細胞表面抗原を発現する腫瘍細胞へとT細胞を導く能力を有する。かかるCAR-T細胞は細胞傷害剤をより選択的に腫瘍細胞に送達することができる。CAR-T細胞は標的分子を直接認識することができ、従って典型的にはヒト白血球抗原(HLA)などの多型性を呈する要素による制限を受けない。このCARによる標的化戦略の利点は三点から成る。第一に、CAR-T細胞機能がHLA状態に依存しないため、原則として、同じ標的表面抗原を発現する腫瘍を有するあらゆる患者で同じCARベースの手法を用いることができる。第二に、抗原プロセシング及び提示機構の改変は腫瘍細胞の一般的な特質であり、免疫エスケープを促進し得る。しかしながら、これがCAR-T細胞に対する無防備をもたらす。第三に、このシステムを使用して、タンパク質、炭水化物、及び糖脂質を含めた様々な巨大分子を標的化することができる。
本発明のキメラ抗原受容体は、少なくとも1つの抗原特異的標的領域(ASTR)と膜貫通ドメイン(TM)と細胞内シグナル伝達ドメイン(ISD)とを含むキメラ人工タンパク質である。一部の実施形態において、CARは、細胞外スペーサードメイン(ESD)及び/又は共刺激ドメイン(CSD)をさらに含み得る。図1を参照のこと。
ASTRは、タンパク質、炭水化物、及び糖脂質を含む特定の標的抗原に結合するためのCARの細胞外領域である。一部の実施形態において、ASTRは、抗体、特に一本鎖抗体、又はそのフラグメントを含む。ASTRは、完全長重鎖、Fabフラグメント、単鎖Fv(scFv)フラグメント、二価一本鎖抗体又はダイアボディを含むことができ、これらの各々が標的抗原に特異的である。
ASTRはまた、標的抗原を認識してそれに結合するための別のタンパク質機能ドメインも含み得る。標的抗原は、受容体又はリガンドとして働くなど、他の生物学的機能を有し得るため、或いはASTRは、抗原と特異的に結合するための機能ドメインを含み得る。機能ドメインを有するタンパク質のいくつかの例としては、連結サイトカイン(これは、サイトカイン受容体を担持する細胞の認識につながる)、アフィボディ(affibody)、天然に存在する受容体由来のリガンド結合ドメイン、例えば腫瘍細胞上の受容体に対する可溶性タンパク質/ペプチドリガンドが挙げられる。当業者は理解するであろうとおり、事実上、所与の抗原と高親和性で結合する能力を有するほぼどの分子もASTRに使用することができる。
一実施形態において、本発明のCARは、少なくとも2つの異なる抗原又は同じ抗原上の2つのエピトープを標的化する少なくとも2つのASTRを含む。ある実施形態では、CARは、少なくとも3つ又はそれ以上の異なる抗原又はエピトープを標的化する3つ以上のASTRを含む。CARに複数のASTRが存在するとき、ASTRはタンデムに配置されてもよく、且つリンカーペプチドによって隔てられていてもよい(図1)。
一実施形態において、ASTRは、標的抗原に特異的な、且つ抗原特異性を付与するのにVHドメイン単独で十分な場合(「シングルドメイン抗体」)、VH、CH1、ヒンジ、並びにCH2及びCH3(Fc)Igドメインを有する完全長IgG重鎖を含む。完全に活性なASTRの作成にVH及びVLドメインの両方が必要な場合、VH含有CAR及び完全長λ軽鎖(IgL)が両方ともに同じ細胞傷害性細胞に導入されて、活性ASTRが作成される。別の実施形態において、CARの各ASTRは、各々が異なる標的抗原に特異的な少なくとも2つの一本鎖抗体可変フラグメント(scFv)を含む。scFvは、一方の可変ドメイン(VH又はVL)のC末端が他方の可変ドメイン(それぞれVL又はVH)のN末端にポリペプチドリンカーを介して係留されているものであり、抗原結合性又は結合特異性を大きく妨げることなしに開発されている(Chaudhary et al.,“A recombinant single-chain immunotoxin composed of anti-Tac variable regions and a truncated diphtheria toxin,”Proc.Natl.Acad.Sci.,vol.87,page 9491,1990;Bedzyk et al.,“Immunological and structural characterization of a high affinity anti-fluorescein single-chain antibody,”J.Biol.Chem.,vol.265,page 18615,1990)。これらのscFvは、天然抗体の重鎖及び軽鎖に存在する定常領域(Fc)を欠いている。少なくとも2つの異なる抗原に特異的なscFvは、タンデムに配置される。ある実施形態では、ASTRと膜貫通ドメインとの間に細胞外(extracellular)スペーサードメインが連結され得る。
別の実施形態において、scFvフラグメントは重鎖の定常ドメインの全て又は一部分に融合していてもよい。さらなる実施形態において、CARのASTRは二価(divalent)(又は二価(bivalent))の一本鎖可変フラグメント(di-scFv、bi-scFv)を含む。di-scFVを含むCARでは、各々抗原に特異的な2つのscFvが一体に連結されて、2つのVH領域及び2つのVL領域を含む単一のペプチド鎖を形成する(Xiong et al.,“Development of tumor targeting anti-MUC-1 multimer:effects of di-scFv unpaired cysteine location on PEGylation and tumor binding,”Protein Engineering Design and Selection,vol.19,pages 359-367,2006;Kufer et al.,“A revival of bispecific antibodies,”Trends in Biotechnology,vol.22,pages 238-244,2004)。
さらに別の実施形態において、ASTRはダイアボディを含む。ダイアボディでは、scFvは、2つの可変領域が一緒になって折り畳まれるには短過ぎるためscFvの二量化を駆動するリンカーペプチドを伴い作成される。さらに短いリンカー(1又は2アミノ酸)は、三量体、いわゆるトリアボディ又はトリボディの形成につながる。テトラボディもまたASTRに使用し得る。
CARに2つ以上のASTRが存在するとき、ASTRは、オリゴペプチド若しくはポリペプチドリンカー、Fcヒンジ又は膜ヒンジ領域を介して単一のポリペプチド鎖上で互いに共有結合的に結合される。
CARによって標的化される抗原は、腫瘍、腺(例えば前立腺)過形成、疣贅、及び望ましくない脂肪組織など、除去の標的となる組織の細胞の表面上又は内部に存在する。表面抗原はCARのASTRによってより効率的に認識及び結合されるが、細胞内抗原もまたCARによって標的化され得る。一部の実施形態において、標的抗原は、好ましくは、癌、炎症性疾患、ニューロン障害、糖尿病、心血管疾患、又は感染性疾患に特異的である。標的抗原の例には、様々な免疫細胞、癌腫、肉腫、リンパ腫、白血病、胚細胞腫瘍、芽細胞腫、並びに様々な血液疾患、自己免疫疾患、及び/又は炎症性疾患に関連する細胞によって発現される抗原が含まれる。
ASTRによって標的化され得る癌に特異的な抗原としては、4-IBB、5T4、腺癌抗原、αフェトプロテイン、BAFF、Bリンパ腫細胞、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、C-MET、CCR4、CD152、CD19、CD20、CD200、CD22、CD221、CD23(IgE受容体)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD33、CD4、CD40、CD44 v6、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CEA、CNT0888、CTLA-4、DR5、EGFR、EpCAM、CD3、FAP、フィブロネクチンエクストラドメイン-B、葉酸受容体1、GD2、GD3ガングリオシド、糖タンパク質75、GPNMB、HER2/neu、HGF、ヒト散乱因子受容体キナーゼ、IGF-1受容体、IGF-I、IgGl、LI-CAM、IL-13、IL-6、インスリン様成長因子I受容体、インテグリンα5β1、インテグリンανβ3、MORAb-009、MS4A1、MUC1、ムチンCanAg、N-グリコリルノイラミン酸、NPC-1C、PDGF-R a、PDL192、ホスファチジルセリン、前立腺癌細胞、RANKL、RON、ROR1、SCH 900105、SDC1、SLAMF7、TAG-72、テネイシンC、TGFβ2、TGF-β、TRAIL-R1、TRAIL-R2、腫瘍抗原CTAA16.88、VEGF-A、VEGFR-1、VEGFR2又はビメンチンの1つ又はそれ以上が挙げられる。
ASTRによって標的化され得る炎症性疾患に特異的な抗原としては、AOC3(VAP-1)、CAM-3001、CCL11(エオタキシン-1)、CD125、CD147(ベイシジン)、CD154(CD40L)、CD2、CD20、CD23(IgE受容体)、CD25(IL-2受容体のa鎖)、CD3、CD4、CD5、IFN-a、IFN-γ、IgE、IgE Fc領域、IL-1、IL-12、IL-23、IL-13、IL-17、IL-17A、IL-22、IL-4、IL-5、IL-5、IL-6、IL-6受容体、インテグリンa4、インテグリンα4β7、ラマ・グラマ(Lama glama)、LFA-1(CD1 la)、MEDI-528、ミオスタチン、OX-40、rhuMAb β7、スクレロスシン(scleroscin)、SOST、TGFβ1、TNF-a又はVEGF-Aの1つ又はそれ以上が挙げられる。
本発明のASTRによって標的化され得るニューロン障害に特異的な抗原としては、βアミロイド又はMABT5102Aの1つ又はそれ以上が挙げられる。本発明のASTRによって標的化され得る糖尿病に特異的な抗原としては、L-Iβ又はCD3の1つ又はそれ以上が挙げられる。本発明のASTRによって標的化され得る心血管疾患に特異的な抗原としては、C5、心臓ミオシン、CD41(インテグリンα-llb)、フィブリンII、β鎖、ITGB2(CD18)及びスフィンゴシン-1-リン酸の1つ又はそれ以上が挙げられる。
本発明のASTRによって標的化され得る感染性疾患に特異的な抗原としては、炭疽毒素、CCR5、CD4、クランピング因子A、サイトメガロウイルス、サイトメガロウイルス糖タンパク質B、エンドトキシン、大腸菌(Escherichia coli)、B型肝炎表面抗原、B型肝炎ウイルス、HIV-1、Hsp90、インフルエンザA型ヘマグルチニン、リポタイコ酸、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、狂犬病ウイルス糖タンパク質、呼吸器合胞体ウイルス及びTNF-aの1つ又はそれ以上が挙げられる。
標的抗原のさらなる例としては、癌細胞上に特異的な又は増幅された形で見られる表面タンパク質、例えばIL-14受容体、B細胞リンパ腫のCD19、CD20及びCD40、種々の癌のルイスY及びCEA抗原、乳癌及び結腸直腸癌のTag72抗原、肺癌のEGF-R、ヒト乳癌及び卵巣癌で増幅されることが多い葉酸結合タンパク質及びHER-2タンパク質、又はウイルスタンパク質、例えばHIVのgp120及びgp41エンベロープタンパク質、B型及びC型肝炎ウイルスからのエンベロープタンパク質、ヒトサイトメガロウイルスの糖タンパク質B及び他のエンベロープ糖タンパク質、並びにカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスなどのオンコウイルスからのエンベロープタンパク質が挙げられる。他の潜在的な標的抗原としては、リガンドがHIV gp120エンベロープ糖タンパク質であるCD4、及び他のウイルス受容体、例えばヒトライノウイルスの受容体であるICAM、及びポリオウイルスの関連受容体分子が挙げられる。
別の実施形態において、本CARは、癌治療細胞、例えばNK細胞及び本明細書で言及する他の細胞が会合する抗原を標的化して、免疫エフェクター細胞として働くことによりそれらの癌治療細胞(cancer-treating cells)を活性化させ得る。この一例は、CD16A抗原を標的化して、NK細胞を会合させることによりCD30を発現する悪性病変と闘わせるCARである。二重特異性四価AFM13抗体は、この効果を送達し得る抗体の例である。この種の実施形態のさらなる詳細については、例えば、Rothe,A.,et al.,“A phase 1 study of the bispecific anti-CD30/CD16A antibody construct AFM13 in patients with relapsed or refractory Hodgkin lymphoma,”Blood,25 June 2015,Vl.125,no.26,pp.4024-4031を参照することができる。
CARの細胞外スペーサードメインは、ASTRと膜貫通ドメインとの間に位置する親水性領域である。一部の実施形態において、このドメインは、CARに適切なタンパク質フォールディングを促進する。細胞外スペーサードメインはCARの任意選択の構成要素である。細胞外スペーサードメインは、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列又はこれらの組み合わせから選択されるドメインを含み得る。細胞外スペーサードメインの例としては、CD8aヒンジ、3個のグリシン(Gly)程の大きさしかないものであり得るポリペプチドで作られた人工スペーサー、並びにIgG(ヒトIgG4など)のCH1及びCH3ドメインが挙げられる。
CARの膜貫通ドメインは、細胞傷害性細胞の細胞膜に架かる能力を有する領域である。膜貫通ドメインは、例えばI型膜貫通タンパク質などの膜貫通タンパク質の膜貫通領域、人工疎水性配列又はこれらの組み合わせから選択される。膜貫通ドメインの例としては、T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、CD154の膜貫通領域が挙げられる。合成膜貫通ドメインは、フェニルアラニンとトリプトファンとバリンとのトリプレットを含み得る。任意選択で、短い、好ましくは2~10アミノ酸長のオリゴペプチド又はポリペプチドリンカーが、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間の連結を形成し得る。グリシン-セリンダブレットが、膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間の特に好適なリンカーを提供する。
本発明のCARはまた、細胞内シグナル伝達ドメインも含む。細胞内シグナル伝達ドメインはエフェクター機能シグナルを伝達し、細胞傷害性細胞にその特化した機能、すなわち標的細胞の阻害及び/又は破壊を果たすよう指図する。細胞内シグナル伝達ドメインの例としては、T細胞受容体複合体のζ鎖又はその相同体のいずれか、例えば、η鎖、FcsRly及びβ鎖、MB 1(Iga)鎖、B29(Ig)鎖等、ヒトCD3ζ鎖、CD3ポリペプチド(Δ、δ及びε)、sykファミリーチロシンキナーゼ(Syk、ZAP 70等)、srcファミリーチロシンキナーゼ(Lck、Fyn、Lyn等)及びT細胞形質導入に関与する他の分子、例えばCD2、CD5及びCD28が挙げられる。具体的には、細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を担持する免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)及びこれらの組み合わせであり得る。
CARに用いられる細胞内シグナル伝達ドメインには、いくつかのタイプの様々な他の免疫シグナル伝達受容体、例えば、限定はされないが、CD3、B7ファミリー共刺激、及び腫瘍壊死因子受容体(TNFR)スーパーファミリー受容体を含む第1世代、第2世代、及び第3世代T細胞シグナル伝達タンパク質の細胞内シグナル伝達ドメインが含まれ得る(Park et al.,“Are all chimeric antigen receptors created equal?”J Clin Oncol.,vol.33,pp.651-653,2015)。加えて細胞内シグナル伝達ドメインには、NK及びNKT細胞によって使用されるシグナル伝達ドメイン(Hermanson、et al.,“Utilizing chimeric antigen receptors to direct natural killer cell activity,”Front Immunol.,vol.6,p.195,2015)、例えば、NKp30(B7-H6)(Zhang et al.,“An NKp30-based chimeric antigen receptor promotes T cell effector functions and antitumor efficacy in vivo,”J Immunol.,vol.189,pp.2290-2299,2012)、及びDAP12(Topfer et al.,“DAP12-based activating chimeric antigen receptor for NK cell tumor immunotherapy,”J Immunol.,vol.194,pp.3201-3212,2015)、NKG2D、NKp44、NKp46、DAP10、及びCD3zのシグナル伝達ドメインなどが含まれる。加えて、細胞内シグナル伝達ドメインにはまた、免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)を含むヒト免疫グロブリン受容体、例えば、FcγRI、FcγRIIA、FcγRIIC、FcγRIIIA、FcRL5のシグナル伝達ドメインも含まれる(Gillis et al.,“Contribution of Human FcγRs to Disease with Evidence from Human Polymorphisms and Transgenic Animal Studies,”Front Immunol.,vol.5,p.254,2014)。
一部の実施形態において、細胞内シグナル伝達ドメインは、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、又はCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインを含む。CARの細胞内シグナル伝達ドメインは、ヒトCD3ζの細胞質シグナル伝達ドメインを含むことが特に好ましい。
本発明のCARは共刺激ドメインを含んでもよく、これは、CARを発現する細胞傷害性細胞の細胞増殖、細胞生存及びメモリー細胞の発生を増進する働きを有する。本発明のCARは、TNFRスーパーファミリーのタンパク質、CD28、CD137(4-1BB)、CD134(OX40)、DaplO、CD27、CD2、CD7、CD5、ICAM-1、LFA-1(CD1 la/CD18)、Lck、TNFR-I、PD-1、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS LIGHT、NKG2C、B7-H3、又はこれらの組み合わせの共刺激ドメインから選択される1つ又はそれ以上の共刺激ドメインを含み得る。CARが2つ以上の共刺激ドメインを含む場合、これらのドメインは、任意選択でリンカーによって隔てられて、タンデムに配置され得る。共刺激ドメインは、CARの膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとの間に位置し得る細胞内ドメインである。
一部の実施形態において、本発明のCARの2つ以上の構成要素は1つ又はそれ以上のリンカーによって隔てられている。例えば、少なくとも2つのASTRを含むCARでは、それらの2つのASTRがリンカーによって隔てられていてもよい。リンカーは、約1~100アミノ酸長のオリゴペプチド又はポリペプチド領域である。一部の実施形態において、リンカーは、例えば、5~12アミノ酸長、5~15アミノ酸長又は5~20アミノ酸長であり得る。リンカーは、隣接するタンパク質ドメイン同士が互いに自由に動くことができるように、グリシン及びセリンなどの可動性の残基で構成されてもよい。より長いリンカー、例えば100アミノ酸より長いものが本発明の代替的な実施形態に関連して使用されてもよく、例えば2つの隣接するドメインが互いに立体的に干渉しないように選択され得る。本発明で使用し得るリンカーの例としては、限定はされないが、2Aリンカー(例えばT2A)、2A様リンカー又はその機能的等価物が挙げられる。
条件的活性型抗原特異的標的領域
CARは、上記で考察した種々のドメインを全て共に融合して融合タンパク質を形成することによって生成されるキメラタンパク質である。CARは、典型的には、CARの種々のドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターによって生成される。標的細胞上の抗原を認識してそれと結合する働きをする本発明のASTRは、条件的活性型である。具体的には、ASTRは、対応する野生型タンパク質のASTRと比較して、標的抗原との結合に関して正常生理条件では低活性又は不活性であり、異常条件では活性である。本発明は、野生型タンパク質又はその結合ドメイン(野生型ASTR)から条件的活性型ASTRを生成する方法を提供する。
本発明におけるASTRは、タンパク質ライブラリを作成し、且つ標的抗原に対して所望の結合親和性を有するタンパク質に関してそのライブラリをスクリーニングすることによって発見し得るため、少なくとも全体又は一部を標的抗原に対するその結合ドメインに使用することが好適な野生型タンパク質。野生型タンパク質は、cDNAライブラリをスクリーニングすることにより発見し得る。cDNAライブラリは、宿主細胞のコレクションに挿入されたクローニングされたcDNA(相補DNA)フラグメントの組み合わせであり、一緒になって生物のトランスクリプトームのある一部を構成するものである。cDNAは完全に転写されたmRNAから作製され、従って生物の発現タンパク質のコード配列を含む。cDNAライブラリの情報は、標的抗原に対して所望の結合親和性を有するタンパク質に関してライブラリをスクリーニングすることによる、所望の特性を有するタンパク質の発見に強力且つ有用なツールである。
野生型タンパク質が抗体である一部の実施形態において、野生型抗体は、抗体ライブラリを作成してスクリーニングすることにより発見し得る。抗体ライブラリは、ポリクローナル抗体ライブラリ又はモノクローナル抗体ライブラリのいずれであってもよい。標的抗原に対するポリクローナル抗体ライブラリは、その抗原を動物に直接注射することによるか、又はその抗原を非ヒト動物に投与することによって作成し得る。このように得られた抗体は、その抗原に結合するポリクローナル抗体のライブラリに相当する。モノクローナル抗体ライブラリの調製には、連続細胞株培養によって産生される抗体をもたらす任意の技法を用いることができる。例としては、ハイブリドーマ法、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、及びEBV-ハイブリドーマ法が挙げられる(例えば、Cole(1985)in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照)。一本鎖抗体の作成について記載される技法(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照)は、一本鎖抗体ライブラリの作製に適合させることができる。
野生型抗体を発見するための抗体ライブラリの作成及びスクリーニング方法は他にもある。例えば、完全ヒト抗体ディスプレイライブラリを利用することができる。かかるライブラリは、1つ又は複数の宿主細胞の表面上に提示された抗体の集合である。好ましくは、抗体ライブラリは、それが多種多様な抗原との結合能を有する点でヒト抗体レパートリーを代表する。抗体は細胞の表面上に提示されるため、ライブラリにおける各抗体の(アビディティに起因する)有効親和性は増加する。ファージディスプレイライブラリなどの他の一般的なライブラリタイプ(スクリーニング及び同定の目的上、抗体のアビディティがあまり望ましくない)と異なり、本発明における細胞表面ディスプレイによって提供される超アビディティは望ましい。細胞表面ディスプレイライブラリでは、スクリーニング又は選択工程において、結合親和性が低い、中程度の、及び高い抗体の同定、並びに免疫原性がない及び弱いエピトープの同定が可能となる。
親分子からの発達分子の生成
野生型タンパク質、又はその結合ドメイン(野生型ASTR)が突然変異誘発のプロセスを受けると変異ポリペプチドの集団が産生され、次にそれをスクリーニングすることにより、野生型ASTRとの比較において異常条件では標的抗原に対する結合親和性が増強した、且つ任意選択で、正常生理条件では標的抗原に対する結合親和性が実質的に同じか、又は低い変異ASTRを同定することができる。
任意の化学的合成又は組換え突然変異誘発方法を用いて変異ポリペプチド集団を生成し得る。本発明の実施には、特に指示されない限り、細胞生物学、細胞培養、分子生物学、トランスジェニック生物学、微生物学、組換えDNA、及び免疫学の従来技術を用いることができ、それらの技術は当該分野の技術の範囲内にある。かかる技法は文献に十分に説明されている。例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual,2nd Ed.,ed.by Sambrook,Fritsch and Maniatis(Cold Spring Harbor Laboratory Press:1989);DNA Cloning,Volumes I and II(D.N.Glover ed.,1985);Oligonucleotide Synthesis(M.J.Gait ed.,1984);Mullis et al.米国特許第4,683,195号明細書;Nucleic Acid Hybridization(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Transcription And Translation(B.D.Hames & S.J.Higgins eds.1984);Culture Of Animal Cells(R.I.Freshney,Alan R.Liss,Inc.,1987);Immobilized Cells And Enzymes(IRL Press,1986);B.Perbal,A Practical Guide To Molecular Cloning(1984);the treatise,Methods In Enzymology(Academic Press,Inc.,N.Y.);Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells(J.H.Miller and M.P.Cabs eds.,1987,Cold Spring Harbor Laboratory);Methods In Enzymnology,Vols.154 and 155(Wu et al.eds.),Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology(Mayer and Walker,eds.,Academic Press,London,1987);Handbook Of Experimental Immunology,Volumes l-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell,eds.,1986);Manipulating the Mouse Embryo,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1986)を参照のこと。
本開示は、条件的活性型の変異ポリペプチドをコードする核酸変異体を生成する方法を提供し、この方法は、(i)1つ以上のヌクレオチドを異なるヌクレオチドに置換すること(このヌクレオチドは天然又は非天然ヌクレオチドを含む);(ii)1つ以上のヌクレオチドを欠失させること、(iii)1つ以上のヌクレオチドを付加すること、又は(iv)これらの任意の組み合わせによって核酸を修飾する工程を含む。一態様において、非天然ヌクレオチドはイノシンを含む。別の態様において、本方法は、修飾核酸によってコードされたポリペプチドを酵素活性の変化に関して分析する工程であって、それにより酵素活性が変化したポリペプチドをコードする1つ又は複数の修飾核酸を同定する工程をさらに含む。一態様において、工程(a)の修飾は、PCR、エラープローンPCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、アセンブリPCR、セクシャルPCR突然変異誘発、インビボ突然変異誘発、カセット突然変異誘発、再帰的アンサンブル突然変異誘発、指数関数的アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子リアセンブリ、遺伝子部位飽和突然変異誘発、リガーゼ連鎖反応、インビトロ突然変異誘発、リガーゼ連鎖反応、オリゴヌクレオチド(oligonucleotide)合成、任意のDNA生成技術及びこれらの任意の組み合わせによって作られる。別の態様において、本方法は、修飾工程の少なくとも1つの反復をさらに含む。
この方法はさらに、2つ又はそれ以上の核酸からポリヌクレオチドを製造するための方法を提供する。この方法は、次の(a)~(c)からなる。(a)2つ又はそれ以上の核酸間で同一の領域及び多様な領域を同定する工程。そこにおいて、この核酸の少なくとも1つは、本開示の核酸からなる。(b)2つ又はそれ以上の核酸の少なくとも2つの配列に対応するオリゴヌクレオチドのセットを提供する工程。及び(c)ポリメラーゼでオリゴヌクレオチドを延長し、それにより、ポリヌクレオチドを製造する工程。
任意の突然変異誘発の技術は、本開示の様々な実施形態において使用されることがある。確率的又はランダムな突然変異誘発は、予定されていない突然変異を有する一連の子孫分子を得るために、親分子が変異する(修飾される又は変えられる)状況によって例証される。従って、生体外確率的突然変異誘発反応は、例えば、その製造が意図されたものではない、特に予定されていない製造物である。むしろ、得られる変異の正確な性質に関して、従って、生成される製造物に関して、不確定、従ってランダムである。確率的突然変異誘発は、エラープローンPCR及び確率的シャフリングのような、変異がランダム又は予定されていない方法において示される。変異体形成は、エラープローンPCRのようなエラープローン転写や、プルーフリーディング活性が欠けるポリメラーゼの使用(Liao(1990)Gene 88:107-111参照)又は、変異株(変異宿主細胞は以下にさらに詳細に議論されており、これは一般的によく知られている)において第一形態の複製によるものである。突然変異誘発因子株は、不整合な修復の機能において欠損される任意の変異体を含むことができる。これらは、mutS、mutT、mutH、mutL、ovrD、dcm、vsr、umuC、umuD、sbcB、recJなどの変異遺伝子生成物を含む。欠損は、遺伝子突然変異、対立遺伝子交換、微小化合物又は発現されたアンチセンスRNA又は他の技術によって得られる。欠損は、記述された遺伝子又は任意の有機体における相同遺伝子であることがある。
他の突然変異誘発方法としては、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発技術、エラープローンポリメラーゼ連鎖反応(エラープローンPCR)及びカセット突然変異誘発が挙げられ、ここでは親ポリヌクレオチドの特定の領域が、合成的に突然変異を誘発されたオリゴヌクレオチドに置き換えられる。このような場合、親配列の特定の部位の周りにいくつもの突然変異部位が生成される。
オリゴヌクレオチド指定突然変異において、短い配列は、合成的に突然変異を誘発されたオリゴヌクレオチドと置換される。オリゴヌクレオチド指定突然変異において、ポリヌクレオチドの短い配列は、制限酵素消化を使用する合成ポリヌクレオチドから除かれ、様々な塩基がもとの配列から変更された合成ポリヌクレオチドと置換される。ポリヌクレオチド配列は化学的突然変異誘発によって変更されることもある。化学的突然変異ゲ原は、例えば、重亜硫酸ナトリウム、亜硝酸、ヒドロキシルアミン、ヒドラジン、又はギ酸を含む。ヌクレオチド前駆体と類似の他の薬剤は、ニトロソグアニジン、5-ブロモウラシル、2-アミノプリン、又はアクリジンを含む。一般的に、これらの薬剤は、それにより配列を変位させるヌクレオチド前駆体の代わりにPCR反応に加えられる。プロフラビン、アクリフラビン、キナクリンなどのような薬剤の挿入が使用されることもある。ポリヌクレオチド配列のランダムな突然変異誘発は、X線又は紫外線照射によって得られることがある。一般的に、突然変異誘発されたプラスミドポリヌクレオチドは、大腸菌(E.coli)内に導入され、交雑プラスミドのプール又はライブラリーとして伝播される。
エラープローンPCRは、長い配列にわたってランダムに点突然変異の低レベルを導入するための低忠実度重合条件を使用する。未知の配列のフラグメントの混合物において、エラープローンPCRは、混合物を突然変異誘発するのに用いられることがある。
カセット突然変異誘発において、単一テンプレートの配列遮断は、典型的にはランダム配列によって(部分的に)置換される。Reidhaar-Olson J F and Sauer R T:タンパク質配列の情報内容のプローブとしての組み合わせカセット突然変異誘発。Science 241(4861):53-57,1988。
或いは、非確率的又は非ランダムな遺伝子突然誘発の任意の技術も本開示の様々な実施形態において使用することができる。非確率的突然変異誘発は、1つ又はそれ以上の予め決定された変異を有する分子を得るために、親分子が変異される(修飾される、又は、変化される)状況によって例証される。ある程度の量におけるバックグラウンド製造物の存在が、分子プロセシングの起こる多くの反応において実在し、及び、バックグラウンド製造物の存在が、予定されていない製造物を有する突然変異誘発工程の非確率的性質から減じないことはよく理解されている。部位-飽和突然変異誘発及び合成結紮リアセンブリは、遺伝子突然変異誘発技術の例であり、そこにおいて意図された製造物の正確な化学的構造は、予定されたものである。
部位-飽和点突然変異誘発の1つの方法は、米国特許出願公開第2009/0130718号明細書に記載されており、本明細書に参照により組み込まれている。この方法は、テンプレートポリヌクレオチドのコドンに対応する一連の変性プライマーを提供し、及び、変性プライマーに対応する配列を含む子孫ポリヌクレオチドを製造するためのポリメラーゼ伸長を実行する。子孫ポリヌクレオチドは、直接的発達において発現され、及び、スクリーニングされる。具体的には、これは、一連の子孫ポリペプチドを製造するための方法であって、工程(a)テンプレートポリペプチド配列をエンコードするコドンの複数からそれぞれなるテンプレートポリペプチドのコピーを提供する工程、及び(b)テンプレートポリヌクレオチドの各コドンにおいて、(1)一連の変性プライマーを提供する工程、そこにおいて、各プライマーはテンプレートポリヌクレオチドのコドンに対応する変性コドンからなり、少なくとも1つの隣接配列は、テンプレートポリヌクレオチドのコドンに隣接する配列に相同である、(2)プライマーがテンプレートポリヌクレオチドのコピーにアニール可能な条件を提供する工程、及び、(3)テンプレートに沿ったプライマーからのポリメラーゼ伸長反応を実行する工程、の(1)~(3)の工程を実行し、それによって子孫ポリヌクレオチドを提供し、それぞれがアニールされたプライマーの変性コドンに対応する配列を含み、それによって一連の子孫ポリヌクレオチドを製造する。
部位飽和突然変異誘発は、概して、1)1つ以上の祖先又は親世代鋳型から、少なくとも1つの点突然変異、付加、欠失、及び/又はキメラ化を実現するように突然変異を誘発された1つ又は複数の分子(ポリヌクレオチド配列を含む分子、ポリペプチド配列を含む分子、及び部分的にポリヌクレオチド配列を含み、且つ部分的にポリペプチド配列を含む分子を含む)の子孫世代を調製し;2)標的抗原に対する所望の結合親和性に関して1つ又は複数の子孫世代分子を-好ましくはハイスループット方法を用いて-スクリーニングし;3)任意選択で親及び/又は子孫世代分子に関する構造及び/又は機能情報を入手及び/又はカタログ化し;及び4)任意選択で工程1)~3)のいずれかを反復する方法に関する。
部位飽和突然変異誘発において、生成された(例えば、親ポリヌクレオチドテンプレートから)「コドン部位飽和突然変異誘発」と称されるポリヌクレオチドの子孫世代は、全てのコドン(又は同じアミノ酸をエンコードする変性コドンの全系統)が各コドン位置で表れるように、それぞれが、3つ以上の隣接点突然変異(つまり、新しいコドンからなる異なる塩基)の少なくとも1組を有する。このポリヌクレオチドの子孫世代に対応する、及び、このポリヌクレオチドの子孫世代によってエンコードされるのは、それぞれ少なくとも1つの単一アミノ酸点突然変異を有する、生成された一連の子孫ポリペプチドである。好適な態様において、生成された「アミノ酸部位飽和突然変異誘発」と称される一例は、ポリペプチドに沿った各アミノ酸位置及び全アミノ酸位置でアルファアミノ酸置換を形成する、自然にエンコードされる19のポリペプチドのそれぞれにおける変異ポリペプチドである。この収量は-親ポリペプチドに沿った各アミノ酸位置及び全アミノ酸位置-もとのアミノ酸を含む20の異なる子孫ポリペプチドの全て、又は、付加アミノ酸が、20の自然にエンコードされたアミノ酸の代わりに、又は付加されてのどちらかで使用される場合、潜在的に21以上の異なる子孫ポリペプチドである。
他の突然変異誘発技術は、組換えを含んで用いられることがあり、より具体的には、部分的相同の領域を含むポリヌクレオチド配列の生体内再集合の方法によって、ポリペプチドをエンコードするポリヌクレオチドを調製するための方法、少なくとも1つのポリヌクレオチドを形成するためのポリヌクレオチドをアセンブリする方法、有用な性質を有するポリペプチドの製造のためにポリヌクレオチドをスクリーニングする方法を含む。
他の態様において、突然変異誘発技術は、分子を組換えるため、及び/又は配列及び相同領域を有する反復又は連続した配列の範囲の煩雑さを減らす縮小した方法を伝達するため、細胞の本来の性質を利用する。
様々な突然変異誘発技術は、生物学的活性交雑ポリペプチドをエンコードする交雑ポリペプチドを生成するための方法を提供するため、単独で、又は組み合わせて用いられることがある。これら及び他の目的を達成することにおいて、本開示の一態様に従って、適当な宿主細胞内にポリペプチドを導入し、交雑ポリペプチドを製造するための条件下で宿主細胞を成長させる方法が設けられている。
キメラ遺伝子は、制限酵素によって生成される互換性のある粘着末端を使用する2つのポリヌクレオチドフラグメントを接合することによってつくられる。ここにおいて、各フラグメントは、別々の祖先(親)分子に由来する。他の実施例は、単一部位突然変異誘発されたポリペプチドのためにエンコードする単一子孫ポリヌクレオチドを生成するための親ポリヌクレオチドにおいて、単一コドン位置の突然変異誘発(つまり、コドン置換、付加、欠失を得るため)である。
さらに、生体内部位特異的組換え系は、生体内組換えのランダムな方法と同様に、遺伝子の交雑の生成、及び、相同であるが、プラスミド上で切断された遺伝子間の組換えの生成のために利用される。突然変異誘発はまた、重複拡張及びPCRによっても報告された。
非ランダムな方法は、点突然変異及び/又はキメラ化のより大きい数を得るために使用し、例えば、総合的又は包括的な方法は、テンプレート分子において特異的構造群(例えば、特異的単一アミノ酸位置又は2つ又はそれ以上のアミノ酸位置からなる配列)に機能的に属するために、及び突然変異の特異的な群化を分類し、比較するために、特定の突然変異の群化において全ての分子種を生成するために用いられる。
本開示において、野生型タンパク質から変異ポリペプチドの新規集団(ライブラリ)を生成するため、これら又は他の発達方法のいずれを用いることもできる。
発達分子の発現
発達工程から生成された変異ポリヌクレオチドは、変異ポリペプチドの産生(発現)のため、既発表のプロトコルに従いアガロースゲルでサイズ分画され、発現ベクターに挿入され、及び適切な宿主細胞にトランスフェクトされても、又はされなくてもよい。発現は、ルーチンの分子生物学的技術を用い得る。従って、発現工程は様々な公知の方法を用いることができる。
例えば、簡潔に言えば、発達工程から生成された変異ポリヌクレオチドを、次に標準的な分子生物学的技術を用いて消化し、プラスミドDNAなどの発現ベクターにライゲーションする。次に標準的なプロトコルを用いてベクターを細菌又は他の細胞に形質転換する。これは、ハイスループット発現及びスクリーニング用の96ウェルトレイなどのマルチウェルトレイの個々のウェルで行うことができる。このプロセスを各変異ポリヌクレオチドについて繰り返す。
このようにして選抜され単離されたポリヌクレオチドは、適切な宿主細胞に導入される。適切な宿主細胞は、遺伝子組換え及び/又は減少的再集合を促進することができる任意の細胞である。選抜されたポリヌクレオチドは、好ましくは、適切な制御配列を含むベクターに既にあるものである。宿主細胞は、哺乳細胞等の高等真核細胞であり、又は酵母細胞等の下等真核細胞であっても良く、又は好ましくは宿主細胞は、細菌細胞等の原核細胞であってもよい。宿主細胞へのコンストラクトの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、又はエレクトロポレーションによって遂行されることができる(例えば、Ecker and Davis,1986,Inhibition of gene expression in plant cells by expression of antisense RNA,Proc Natl Acad Sci USA,83:5372-5376)。
使用可能な発現ベクターの代表例として、ウイルス粒子、バキュロウイルス、ファージ、プラスミド、ファージミド、コスミド、フォスミド、細菌人工染色体、ウイルスDNA(例えば、ワクシニア、アデノウイルス、foul pox virus、仮性狂犬病、及びSV40派生物)plに基づく人工染色体、酵母プラスミド、酵母人工染色体、及び特定の目的宿主に特異的な任意の他のベクター(例えば桿菌、アスペルギルス、及び酵母)が言及され得る。従って、例えば、DNAは、ポリペプチドを発現するための様々な発現ベクターのいずれか一つに含まれ得る。このようなベクターは、染色体性のDNA配列、非染色体性のDNA配列、及び合成DNA配列を含む。多数の適切なベクターは当業者に周知であり、市販されている。例として以下のベクターを挙げる。細菌性:pQEベクター(Qiagen)、pBluescriptプラスミド、pNHベクター、ラムダZAPベクター(Stratagene);ptrc99a、ρKK223-3、pDR540、pRIT2T(Pharmacia);真核性:pXTl、ρSG5(Stratagene)pSVK3、pBPV、pMSG、pSVLSV40(Pharmacia)。しかしながら、それらが宿主において複製可能であり且つ生存可能である限り、他のいかなるプラスミドも又は他のベクターも使用可能である。低コピー数ベクター又は高コピー数ベクターが、本発明において使用されることができる。
発現ベクターにおける変異ポリヌクレオチド配列は、RNA合成を導くための適切な発現制御配列(プロモーター)と操作可能に連結される。特定の名づけられた細菌プロモーターは、lad、lacZ、T3、T7、gpt、ラムダPR、PL、及びtrpを含む。真核生物プロモーターは、前初期CMV、HSVチミジンキナーゼ、初期及び後期SV40、レトロウイルス由来のLTR、及びマウスメタロチオネイン-1を含む。適切なベクター及びプロモーターの選択は、十分に当業者の水準の範囲内にある。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソーム結合部位及び転写ターミネーターを含む。このベクターは、発現を増幅するための適切な配列を含んでもよい。プロモーター領域は、選択可能なマーカーを有するクロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)ベクター、又は他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択されることができる。加えて、発現ベクターは、真核細胞培養に対するジヒドロ葉酸還元酵素又はネオマイシン耐性等、又は大腸菌(E.coli)におけるテトラサイクリン又はアンピシリン耐性等の、形質転換された宿主細胞の選抜のための表現型の特徴を提供するために、好ましくは、1若しくはそれ以上の選択可能なマーカー遺伝子を含む。
真核生物DNA転写は、発現ベクターにエンハンサー配列を挿入することによって増加させ得る。エンハンサーは、プロモーターによる転写を増加させる10~300bpのシス作用配列である。エンハンサーは、転写ユニットの5’側又は3’側のいずれにあるときも、転写を有効に増加させることができる。エンハンサーはまた、イントロン内又はコード配列それ自体の中に位置する場合も有効である。典型的には、SV40エンハンサー、サイトメガロウイルスエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、及びアデノウイルスエンハンサーを含めたウイルスエンハンサーが用いられる。マウス免疫グロブリン重鎖エンハンサーなど、哺乳類系由来のエンハンサー配列もまたよく用いられる。
哺乳類発現ベクター系はまた、典型的には選択可能なマーカー遺伝子も含む。好適なマーカーの例としては、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(DHFR)、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、又は薬剤耐性を付与する原核生物遺伝子が挙げられる。最初の2つのマーカー遺伝子については、成長培地にチミジンを添加しなければ成長することができない変異細胞株の使用が好ましい。次に、非補足培地で成長する能力によって形質転換細胞を同定することができる。マーカーとして有用な原核生物薬剤耐性遺伝子の例としては、G418、ミコフェノール酸及びハイグロマイシンに対する耐性を付与する遺伝子が挙げられる。
目的のDNAセグメントを含有する発現ベクターは、細胞産生宿主のタイプに応じた周知の方法によって宿主細胞に移入することができる。例えば、原核生物宿主細胞には塩化カルシウムトランスフェクションがよく利用され、一方、リン酸カルシウム処理、リポフェクション、又は電気穿孔は真核生物宿主細胞に用いられ得る。哺乳類細胞産生宿主の形質転換に用いられる他の方法としては、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、電気穿孔、及びマイクロインジェクションの使用が挙げられる(一般に、Sambrook et al.,前掲を参照)。
適切な宿主に発現ベクターが導入されると、導入された変異ポリヌクレオチド配列が高度に発現して変異ポリペプチドが産生されるように、宿主が好適な条件下に維持される。発現ベクターは典型的には、エピソームとして、或いは宿主染色体DNAの一体部分として、宿主生物において複製可能である。一般に、発現ベクターは、所望のDNA配列で形質転換された細胞の検出を可能にするため、選択マーカー、例えばテトラサイクリン又はネオマイシンを含み得る(例えば、米国特許第4,704,362号明細書(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
従って、本願発明の他の態様においては、変異ポリヌクレオチドは、減少的再集合の方法によって生成されることができる。方法は、連続的な配列(オリジナルのコード配列配列)、適切なベクターへのそれらの挿入、及び適切な宿主細胞へのその後のそれらの導入を含むコンストラクトの生成を含む。個々の分子同一性の再集合は、相同領域を有するコンストラクトにおける連続的な配列間での、又は擬似繰り返し単位間での組合せ方法によって発生する。再集合方法は、複雑さ及び反復配列の範囲を再結合させ及び/又は減少させ、新しい分子種の生成をもたらす。さまざまな処理を、再集合の割合を増強させるために適用することができる。これらは、紫外線処理又はDNA損害性化学薬品、及び/又は増強した水準の「遺伝的不安定性」を示す宿主細胞株の使用を含むことができる。したがって、再集合方法は、それら自身の発達を導くために、相同組換え又は準反復配列の自然の特性を含むことができる。
細胞はその後増殖し、「減少的再集合」は達成される。減少的再集合方法の割合は、必要に応じて、DNA損傷の導入によって刺激され得る。インビボでの再集合は「遺伝子組換え」とまとめて呼ばれる「分子間の」方法に向けられ、これは細菌においては、「RecA依存性」の現象として通常観察される。本発明は、配列を組換え且つ再集合させるための宿主細胞の遺伝子組換え方法、又は欠損によって細胞における準反復配列の複雑性を減少させるための縮小方法を調節する細胞の能力に依存することができる。「縮小再集合」のこの方法は、「分子内の」、RecA非依存性の方法によって生じる。最終結果は、すべての可能な組合せへの分子の再集合である。
一態様において、宿主生物又は細胞は、グラム陰性菌、グラム陽性菌又は真核生物を含む。本開示の別の態様において、グラム陰性菌は、大腸菌(Escherichia coli)、又は蛍光菌(Pseudomonas fluorescens)を含む。本開示の別の態様において、グラム陽性菌は、ストレプトミセス・ディベルサ(Streptomyces diversa)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトコッカス・ラクチス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、又はバチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)を含む。本開示の別の態様において、真核生物は、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)を含む。適切な宿主の代表例として、細菌細胞、例えば、大腸菌(E.coli)、ストレプトミセス属(Streptomyces)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium);真菌細胞、例えば、酵母;昆虫細胞、例えば、ショウジョウバエ属(Drosophila)S2及びスポドプテラ(Spodoptera)Sf9;動物細胞、例えば、CHO、COS又はBowesメラノーマ;アデノウイルス;及び植物細胞を挙げることができる。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から当業者の範囲内にあると見なされる。
酵母などの真核微生物に加えて、哺乳類組織細胞培養物もまた、本発明の変異ポリペプチドの発現に使用し得る(Winnacker,“From Genes to Clones,”VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)(参照により本明細書に援用される)を参照)。真核細胞は、インタクトな免疫グロブリンの分泌能を有するいくつもの好適な宿主細胞株が当該技術分野において開発されているため好ましく、CHO細胞株、様々なCOS細胞株、HeLa細胞、骨髄腫細胞株、B細胞又はハイブリドーマが含まれる。これらの細胞の発現ベクターは、発現制御配列、例えば、複製起点、プロモーター、エンハンサー(Queen et al.,Immunol.Rev.,vol.89,page 49,1986)、及び必須のプロセシング情報部位、例えば、リボソーム結合部位、RNAスプライス部位、ポリアデニル化部位、及び転写終結配列を含み得る。好ましい発現制御配列は、免疫グロブリン遺伝子、サイトメガロウイルス、SV40、アデノウイルス、ウシパピローマウイルスなどに由来するプロモーターである。
一実施形態において、真核生物宿主細胞は、CHO、HEK293、IM9、DS-1、THP-1、Hep G2、COS、NIH 3T3、C33a、A549、A375、SK-MEL-28、DU 145、PC-3、HCT 116、Mia PACA-2、ACHN、ジャーカット、MM1、Ovcar 3、HT 1080、Panc-1、U266、769P、BT-474、Caco-2、HCC 1954、MDA-MB-468、LnCAP、NRK-49F、及びSP2/0細胞株;及びマウス脾細胞及びウサギPBMCから選択される。一態様において、哺乳類宿主細胞(mammalian host cell)は、CHO又はHEK293細胞株から選択される。具体的な一態様において、哺乳類宿主細胞はCHO-S細胞株である。別の具体的な態様において、哺乳類系はHEK293細胞株である。別の実施形態において、真核生物宿主は酵母細胞系である。一態様において、真核生物宿主は、S.セレビシエ(S.cerevisiae)酵母細胞又はピキア属(pichia)酵母細胞から選択される。
別の実施形態において、哺乳類宿主細胞は開発業務受託機関又は医薬品製造受託機関によって商業的に作成されてもよい。例えば、組換え抗体又は他のタンパク質については、Lonza(Lonza Group Ltd、Basel,Switzerland)が、ベクターを作成し、GS Gene Expression System(商標)技術をCHOK1SV又はNS0細胞産生宿主のいずれかと共に用いてこれらの産物を発現させることができる。目的のポリヌクレオチドを含む宿主細胞は、プロモーターの活性化、形質転換体の選択又は遺伝子の増幅のため適宜改良した従来の栄養培地で培養することができる。温度、pHなどの培養条件は、発現用に選択された宿主細胞で以前使用したものであり、当業者には明らかであろう。
上記で考察したとおり、条件的活性型ASTRの発現最適化は、用いるベクター(ベクター成分、例えば、プロモーター、スプライス部位、5’及び3’末端及びフランキング配列)の最適化、宿主細胞の遺伝子修飾による遺伝子欠失及び再構成の低減、関連性のある遺伝子をインビボ又はインビトロで発達させる方法による宿主細胞遺伝子活性の発達、関連性のある遺伝子を発達させることによる宿主グリコシル化酵素の最適化によって、及び/又は染色体ワイドな宿主細胞突然変異誘発及び発現能が増進した細胞を選択するための選択戦略によって達成することができる。
タンパク質発現は様々な周知の方法によって誘導されることができ、多くの遺伝系がタンパク質発現の誘導のために公表されている。例えば、適切な系については、誘導剤品の追加によってタンパク質発現が誘導される。細胞はその後、遠心分離によってペレットにされ、上澄みが取り除かれる。ペリプラズムタンパク質は、DNAse、RNAse及びリソチームを有する細胞を培養することによって高められ得る。遠心分離後、新規なタンパク質を含む上澄みは、アッセイ前に新しいマルチウェルトレイに移され、保存される。
細胞は一般的には遠心分離によって採取され、物理的又は化学的手段によって分離され、そして得られたクルードの抽出物は更なる精製のために保持される。タンパク質の発現のために使用される微生物細胞は、凍結融解サイクル、音波処理、機械分離、又は細胞溶解剤の使用を含む任意の都合のよい方法によって分離されることができる。このような方法は当業者に周知である。発現したポリペプチド又はその断片は、硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸抽出、陰イオン又は陽イオン交換クロマトグラフィ、ホスホセルロースクロマトグラフィ、疎水性相互作用クロマトグラフィ、アフィニティークロマトグラフィ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィ、及びレクチンクロマトグラフィを含む方法によって、組換え細胞培養物から回収され、精製され得る。タンパク質のリフォールディング過程が、必要に応じて、ポリペプチドの構造を仕上げる際に用いられることができる。必要に応じて、高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)が、最終的な精製過程のために使用されることができる。条件的活性型ASTRのスクリーニングは、好都合なハイスループットスクリーニング又は選択プロセスを利用可能であることによって促進され得る。細胞表面ディスプレイ発現及びスクリーニング技術(例えば、上記に定義するとおりの)を用いて、条件的活性型ASTRに関して変異タンパク質をスクリーニングすることができる。
可逆的又は非可逆的な変異を同定するための変異スクリーニング
望ましい分子の同定は、許容型の条件及び野生型の条件におけるタンパク質活性を測定することによって、非常に直接的に達成される。最も高い活性の比(許容型/野生型)を示す変異体を、次いで選択し、標準的な方法を用いて個々の変異を組み合わせることで、点変異の並べ替え(permutation)を生成することが出来る。次いで、この組み合わせた並べ替えタンパク質ライブラリーから、許容型と野生型の活性に最も大きい差を示すタンパク質をスクリーニングする。
上清の活性を、様々な方法、例えば、蛍光アッセイなどのハイスループットな活性アッセイを使ってスクリーニングして、希望する特性(温度、pHなど)に感受性をもつ、タンパク質変異体を同定することが可能である。例えば、時間的感受性の変異体をスクリーニングするためには、個々の変異体ごとに、低い温度(25℃など)と、元のタンパク質が機能する温度(37℃など)とにおいて、商業的に利用可能な基質を用いて、酵素活性又は抗体活性の測定を行う。スクリーニングは、特に血清及びBSAなど、種々の培地で行うことができる。反応は、初めは96ウェル分析など、マルチウェル分析フォーマットで実施し、14mlチューブフォーマットなど、別のフォーマットを用いて確認することができる。
一態様においては、本方法はさらに、候補の条件的生理活性をテストする前に、少なくとも一つの核酸又はポリペプチドを改変する工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、宿主細胞又は宿主生物におけるポリペプチドの発現の上昇をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、テストする工程(c)はさらに、約pH3~約pH12のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、テストする工程(c)はさらに、約pH5~約pH10のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、テストする工程(c)はさらに、約pH6~約pH8のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。さらなる態様においては、テストする工程(c)はさらに、約pH6.7~約pH7.5のpH範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、約4℃~約55℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、約15℃~約47℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、約20℃~約40℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、約25℃~約37℃の温度範囲内における酵素活性をテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、通常の浸透圧下での酵素活性と、(正方向又は負方向に)異常な浸透圧下での酵素活性とをテストする工程を有するものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、通常の電解質濃度下での酵素活性と、(正方向又は負方向に)異常な電解質濃度下での酵素活性とをテストする工程を有するものである。テストされる電解質濃度は、カルシウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、塩素、重炭酸、及びリン酸の濃度から選択されるものである。別の態様においては、テストする工程(c)はさらに、安定した反応産物をもたらす酵素活性をテストする工程を有するものである。
別の態様においては、本開示は、酵素活性を持つ本開示のポリペプチド又はその断片に特異的に結合する、精製抗体を提供するものである。一態様においては、本開示は、酵素活性を持つポリペプチドに特異的に結合する抗体の断片を提供するものである。
抗体及び抗体ベースのスクリーニング方法
本開示は、本開示の酵素に特異的に結合する、単離された抗体又は組換え抗体を提供する。これらの抗体を用いて、本開示の酵素、又は関連するポリペプチドの酵素を、単離、同定、又は定量化することが出来る。これらの抗体を用いて、本開示の範囲内の他のポリペプチド、又は他の関連する酵素を単離することが出来る。抗体は、酵素の活性部位に結合するように設計することが出来る。従って、本開示は、本開示の抗体を用いて、酵素を抑制する方法を提供する。
抗体は、免疫沈降、染色、及び免疫親和性カラムなどで用いることが出来る。必要な場合、特定の抗原をエンコードする核酸配列は、免疫処置とそれに続くポリペプチド又は核酸の単離、増幅又はクローニング、並びに本開示のアレイへのポリペプチドの固定化によって生成することが出来る。或いは、本開示の方法を用いて、細胞によって生産された抗体の構造を改変することが可能であり、抗体を改変し、例えば抗体の親和性を上昇又は低下させることが可能である。さらに、抗体を作成又は改変する能力を、本開示の方法により細胞中に設計された表現型とすることが出来る。
免疫処置、抗体の作製及び単離(ポリクローナル及びモノクローナル)の方法は、当業者に公知であり、科学文献及び特許文献に記載されている。例えば、Coligan,CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY,Wiley/Greene,NY(1991);Stites(eds.)BASIC AND CLINICAL IMMUNOLOGY(7th ed.)Lange Medical Publications,Los Altos,Calif.("Stites");Goding,MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND PRACTICE(2d ed.)Academic Press,New York,N.Y.(1986);Kohler(1975)"Continuous cultures of fused cells secreting antibody of predefined specificity",Nature 256:495;Harlow(1988)ANTIBODIES,A LABORATORY MANUAL,Cold Spring Harbor Publications,New York.を参照のこと。抗体はまた、例えば、従来的な動物を用いたインビボの方法に加えて、組換え抗体の結合部位を発現するファージディスプレイライブラリーを用いることで、インビトロで作製することも可能である。例えば、Hoogenboom(1997)"Designing and optimizing library selection strategies for generating high-affinity antibodies",Trends Biotechnol.15:62-70;及びKatz(1997)"Structural and mechanistic determinants of affinity and specificity of ligands discovered or engineered by phage display",Annu.Rev.Biophys.Biomol.
Struct.26:27-45.を参照のこと。
ポリペプチド又はペプチドを用いて、特異的に本開示のポリペプチド、例えば酵素に結合する抗体を作製することが出来る。結果得られる抗体は、ポリペプチドを単離又は精製するため、或いはポリペプチドが生体サンプルの中に存在するかどうかを決定するために、免疫親和性クロマトグラフィーの手法の中で用いられてもよい。そうした手法においては、抽出物などのタンパク質調製物、又は生体サンプルを、本開示のポリペプチドの中の1つに特異的に結合することが出来る抗体と接触させる。
免疫親和性手法においては、抗体を、ビーズ又はその他のカラム基材などの、固体支持体に結合させる。タンパク質調製物を、本開示のポリペプチドの中の1つに特異的に抗体が結合する条件下で、抗体と接触するように置く。洗浄を行い、非特異的に結合したタンパク質を除去した後、特異的に結合したポリペプチドを溶出する。
生体サンプル中のタンパク質の、抗体対する結合能力を、当業者に公知の様々な手法を用いて決定することが出来る。例えば、蛍光物質、酵素ラベル、放射性同位体などの、検出可能な標識を用いて抗体を標識することによって、結合能を決定してもよい。或いは、表面にそうした検出可能な標識を持つ二次抗体を用いて検出することによって、サンプルに対する抗体の結合能を決定してもよい。特定のアッセイとしては、ELISAアッセイ、サンドイッチアッセイ、ラジオイムノアッセイ、及びウェスタンブロットが含まれる。
本開示のポリペプチドに対して製作されるポリクロ―ナル抗体は、動物へのポリペプチドの直接注射か、又は非ヒト動物へのポリペプチドの投与によって、得ることが出来る。そうして得られた抗体を、次いでポリペプチドそれ自体に結合させる。この方法においては、ポリペプチドの断片のみをエンコードする配列さえ、未変性の全長ポリペプチドに結合する可能性のある抗体を作成するのに用いることが出来る。次いで、そうした抗体を用いて、ポリペプチドを発現する細胞からポリペプチドを単離することが出来る。
モノクローナル抗体を調整するために、継代培養細胞株によって生産される抗体を提供する、任意の手法を用いることが出来る。例として、ハイブリドーマ法、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイブリドーマ法、及びEBVハイブリドーマ法(例えば、Cole(1985)in Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,pp.77-96を参照のこと)が含まれる。
単鎖抗体を作製するために記載された手法(例えば、米国特許第4,946,778号明細書を参照のこと)を、本開示のポリペプチドに対する単鎖抗体を作製するために適応することが出来る。或いは、トランスジェニックマウスを用いて、ポリペプチド又はその断片に対するヒト化抗体を発現させてもよい。本開示のポリペプチドに対して製作される抗体を用いて、他の生物及びサンプル由来の類似のポリペプチド(例えば、酵素)をスクリーニングすることが出来る。そうした手法においては、生物由来のポリペプチドを抗体と接触させ、抗体と特異的に結合するポリペプチドを検出する。上述した手法から任意のものを、抗体の結合を検出するために用いてもよい。
スクリーニング方法、及び「オンライン」モニタリング装置
本開示の方法の実施においては、様々な装置及び方法を本開示のポリペプチド及び核酸と併せて使用することが出来る。その装置及び方法には、例えば、酵素活性によるペプチドのスクリーニングするためのもの、酵素活性に対してアクチベーター又はインヒビターなどの潜在モジュレーターとなる化合物のスクリーニングするためのもの、本開示のポリペプチドに結合する抗体のためのもの、本開示の核酸にハイブリダイズする核酸のためのもの、本開示のポリペプチドを発現する細胞をスクリーニングするためのものなどが挙げられる。
アレイ又は「バイオチップ」
本開示の核酸又はポリペプチドは、アレイに固定化又は適用することが出来る。アレイを用いることで、組成物(例えば、小分子、抗体、核酸など)のライブラリーに対して、本開示の核酸又はポリペプチドに結合する能力、又はそれらの活性を調整する能力によって、スクリーニング又はモニターすることが出来る。例えば、本開示の一態様においては、モニターされるパラメーターは酵素遺伝子の転写発現である。ある細胞の転写産物の、1つ又は複数、或いは全てを、その細胞の転写産物或いは細胞の転写産物の代表的又は相補的な核酸を有するサンプルを、アレイ又は「バイオチップ」に固定化した核酸にハイブリダイズすることで、測定することが可能である。マイクロチップ上の核酸の「アレイ」を用いることで、転写産物の一部又は全部を同時に定量化する事が出来る。或いは、ゲノム核酸を有するアレイを用いることで、本開示の方法によって作られた、新たに設計された株の遺伝子型を決定することも出来る。ポリペプチド「アレイ」を用いることで、同時に複数のタンパク質を定量化することも出来る。本開示は、任意の既知の「アレイ」とともに実施することが可能であって、この「アレイ」は、「マイクロアレイ」又は「核酸アレイ」又は「ポリペプチドアレイ」又は「抗体アレイ」又は「バイオチップ」又はそれらの変型とも見なされる。アレイは一般的に、複数の「スポット」又は「標的要素」であって、それぞれの標的要素は、規定の量の1つ又は複数の生体分子、例えば、オリゴヌクレオチドを有するものであり、サンプル分子、例えばmRNA転写産物に特異的に結合する基質表面の規定の領域に、固定化されているものである。
本開示の方法の実施においては、以下の文献中に記載されているような、任意の既知のアレイ及び/又はアレイを作成及び使用する方法が、それらの全体又は一部、或いはそれらの変型について援用され得る。例えば、米国特許第6,277,628号明細書;同第6,277,489号明細書;同第6,261,776号明細書;同第6,258,606号明細書;同第6,054,270号明細書;同第6,048,695号明細書;同第6,045,996号明細書;同第6,022,963号明細書;同第6,013,440号明細書;同第5,965,452号明細書;同第5,959,098号明細書;同第5,856,174号明細書;同第5,830,645号明細書;同第5,770,456号明細書;同第5,632,957号明細書;同第5,556,752号明細書;同第5,143,854号明細書;同第5,807,522号明細書;同第5,800,992号明細書;同第5,744,305号明細書;同第5,700,637号明細書;同第5,556,752号明細書;同第5,434,049号明細書;例えば、国際公開第99/51773号パンフレット;国際公開第99/09217号パンフレット;国際公開第97/46313号パンフレット;国際公開第96/17958号パンフレットも参照のこと;例えば、Johnston(1998)"Gene chips:Array of hope for understanding gene regulation",Curr.Biol.8:R171-R174;Schummer(1997)"Inexpensive Handheld Device for the Construction of High-Density Nucleic Acid Arrays",Biotechniques 23:1087-1092;Kern(1997)"Direct hybridization of large-insert genomic clones on high-density gridded cDNA filter arrays",Biotechniques 23:120-124;Solinas-Toldo(1997)"Matrix-Based Comparative Genomic Hybridization:Biochips to Screen for Genomic Imbalances",Genes,Chromosomes & Cancer 20:399-407;Bowtell(1999)"Options Available-From Start to Finish ̄for Obtaining Expression Data by Microarray",Nature Genetics Supp.21:25-32も参照のこと。米国特許出願公開第20010018642号明細書;米国特許出願公開第20010019827号明細書;米国特許出願公開第20010016322号明細書;米国特許出願公開第20010014449号明細書;米国特許出願公開第20010014448号明細書;米国特許出願公開第20010012537号明細書;米国特許出願公開第20010008765号明細書も参照のこと。
キャピラリーアレイ
GIGAMATRIX(商標)(Diversa Corporation、San Diego,Calif.)などのキャピラリーアレイを、本開示の方法において用いることが出来る。本開示の核酸又はポリペプチドを、キャピラリーアレイを含むアレイに対して固定化又は適用することが出来る。アレイを用いることで、組成物(例えば、小分子、抗体、核酸など)のライブラリーに対して、本開示の核酸又はポリペプチドに結合する能力、又はそれらの活性を調整する能力によって、スクリーニング又はモニターすることが出来る。キャピラリーアレイは、サンプルを保持且つスクリーニングするためのもう一つのシステムを提供する。例えば、サンプルスクリーニング装置は、隣接したキャピラリーアレイとして形成される複数のキャピラリーを含むことが出来、ここで各キャピラリーは少なくとも1つの、サンプルを保持する管腔を形成する壁を有するものである。装置は、さらに、アレイ中の隣接したキャピラリーの間に配置される間質材を含み得るものであって、その間質剤の中に、1つまた複数の参照指標が形成されているものである。サンプルをスクリーニングするためのキャピラリーは、キャピラリーアレイに結合するように適合されたものであって、サンプルを保持するための管腔を形作る第一の壁と、サンプルを励起するために管腔に与えられる励起エネルギーをフィルターするフィルター材から形成される第二の壁を含み得るものである。ポリペプチド又は核酸、例えばリガンドを、キャピラリーアレイの少なくとも一部のキャピラリーの第一成分に、導入することが出来る。キャピラリーアレイの各キャピラリーは、少なくとも1つの、第一成分を保持する管腔を形作る壁を有することが出来る。キャピラリー中の第一成分の後ろに、気泡を導入することが出来る。第二成分をキャピラリーに導入することが可能であり、ここでこの第二成分は気泡によって第一成分と分離される。対象サンプルは、検出可能粒子で標識された第一液として、キャピラリーアレイ中の一つのキャピラリーに導入され、このキャピラリーアレイ中の各キャピラリーは、第一液と検出可能粒子とを保持するための管腔を形作る少なくとも1つの壁を有するものであって、少なくとも一つの壁は、検出可能粒子を結合させるための結合材料で被覆されている。本方法は、さらに、結合した検出可能粒子が保持されているキャピラリーチューブから第一液を除去する工程と、そのキャピラリーに第二液を導入する工程とを含むものである。キャピラリーアレイは、管腔を形作る少なくとも一つの外壁を有する、複数の個々のキャピラリーを含むものである。外壁は、互いに融合した1つ又は複数の壁であってもよい。同様に、壁は、その壁が液体又はサンプルを保持する管腔を形成する限り、円筒形、四角形、六角形、又はその他の幾何学的形態の管腔を形作ることができる。キャピラリーアレイ中のキャピラリーは、平面構造を形成するように近接して互いに支え合うことが出来る。キャピラリーは、隣同士を融合(例えば、ここではキャピラリーはガラス製)、接着、粘結、又は固定することによって、互いに結合することが出来る。キャピラリーアレイは、任意の数、例えば100~4,000,000の、個々のキャピラリーから形成することが可能である。キャピラリーアレイは、約100,000又はそれより多くの、互いに結合した個々のキャピラリーを持つ、マイクロタイタープレートを形成することが出来る。
条件的活性型抗体の操作
条件的活性型抗体は、多重特異性条件的活性型抗体を生成するように操作し得る。多重特異性抗体は、国際公開第2013/170168号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるとおりの、多エピトープ特異性を有する抗体であり得る。多重特異性抗体には、限定はされないが、VHL単位が多エピトープ特異性を有する重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体、各VHL単位が異なるエピトープに結合する2つ以上のVL及びVHドメインを有する抗体、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する2つ以上の単一可変ドメインを有する抗体、及び1つ又はそれ以上の抗体フラグメントを含む抗体並びに共有結合的又は非共有結合的に連結されている抗体フラグメントを含む抗体が含まれる。
二重特異性抗体を含めた多重特異性抗体を構築するため、少なくとも1つの遊離スルフヒドリル基を有する抗体フラグメントが入手される。抗体フラグメントは完全長条件的活性型抗体から入手されてもよい。条件的活性型抗体を酵素消化すると、抗体フラグメントを生じさせることができる。例示的酵素消化方法としては、限定はされないが、ペプシン、パパイン及びLys-Cが挙げられる。例示的抗体フラグメントとしては、限定はされないが、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ダイアボディ(Db);タンデムダイアボディ(taDb)、線状抗体(米国特許第5,641,870号明細書、実施例2;Zapata et al.,Protein Eng.,vol.8,pages 1057-1062(1995)を参照);1アーム抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ(Olafsen et al(2004)Protein Eng.Design & Sel.,vol.17,pages 315-323)、一本鎖抗体分子、Fab発現ライブラリによって作製されるフラグメント、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、相補性決定領域(CDR)、及びエピトープ結合フラグメントが挙げられる。抗体フラグメントはまた、DNA組換え技術を用いて作製されてもよい。抗体フラグメントをコードするDNAをプラスミド発現ベクター又はファージミドベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)で直接発現させてもよい。抗体酵素消化方法、DNAクローニング及び組換えタンパク質発現方法は、当業者に周知である。
抗体フラグメントは従来技術を用いて精製してもよく、遊離チオール基を生成するため還元に供され得る。遊離チオール基を有する抗体フラグメントは架橋剤、例えばビスマレイミドと反応し得る。かかる架橋された抗体フラグメントを精製し、次に遊離チオール基を有する第二抗体フラグメントと反応させる。2つの抗体フラグメントが架橋された最終産物が精製される。特定の実施形態において、各抗体フラグメントはFabであり、2つのFabがビスマレイミドを介して連結した最終産物は、本明細書ではビスマレイミド-(チオ-Fab)2、又はビス-Fabと称される。かかる多重特異性抗体及び抗体類似体は、ビス-Fabを含め、多数の抗体フラグメントの組み合わせ、又は天然抗体の構造変異体又は特定の抗体/フラグメントの組み合わせを迅速に合成するために利用することができる。
多重特異性抗体は、多重特異性抗体に追加的な機能性部分が付加され得るように修飾架橋剤と合成することができる。修飾架橋剤は任意のスルフヒドリル反応性部分の結合を可能にする。一実施形態では、N-スクシンイミジル-S-アセチルチオアセテート(SATA)がビスマレイミドに結合してビスマレイミドアセチルチオアセテート(BMata)を形成する。マスクされたチオール基の脱保護後、スルフヒドリル反応性(又はチオール反応性)部分を有する任意の官能基を多重特異性抗体に結合し得る。
例示的チオール反応性試薬としては、多機能性リンカー試薬、捕捉、すなわちアフィニティー標識試薬(例えばビオチン-リンカー試薬)、検出標識(例えばフルオロフォア試薬)、固相固定化試薬(例えばSEPHAROSE(商標)、ポリスチレン、又はガラス)、又は薬物-リンカー中間体が挙げられる。チオール反応性試薬の一例は、N-エチルマレイミド(NEM)である。修飾架橋剤を有するかかる多重特異性抗体又は抗体類似体は、薬物部分試薬又は他の標識とさらに反応させてもよい。多重特異性抗体又は抗体類似体と薬物-リンカー中間体との反応は、それぞれ多重特異性抗体-薬物コンジュゲート又は抗体類似体-薬物コンジュゲートをもたらす。
多重特異性抗体を作製するための他の技法もまた本発明において用いることができる。それらの技法について記載している文献(参照により本明細書に援用される)としては、以下が挙げられる:(1)異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現に関して、Milstein and Cuello,Nature,vol.305,page 537(1983))、国際公開第93/08829号パンフレット、及びTraunecker et al.,EMBO J.,vol.10,page 3655(1991);(2)「ノブ・イン・ホール」操作に関して、米国特許第5,731,168号明細書;(3)静電ステアリング効果を操作することによる抗体Fc-ヘテロ二量体分子の作製に関して、国際公開第2009/089004A1号パンフレット;(4)2つ以上の抗体又はフラグメントの架橋結合に関して、米国特許第4,676,980号明細書、及びBrennan et al.,Science,vol.229,page 81(1985);(5)ロイシンジッパーを使用した二重特異抗体の作製に関して、Kostelny et al.,J.Immunol.,vol.148,pages 1547-1553(1992);(6)「ダイアボディ」技術を用いた二重特異性抗体フラグメントの作製に関して、Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.90,pages 6444-6448(1993);(7)単鎖Fv(sFv)二量体の使用に関して、Gruber et al.,J.Immunol.,vol.152,page 5368(1994);(8)三重特異性抗体の調製に関して、Tutt et al.J.Immunol.147:60(1991);及び(9)「オクトパス抗体」又は「デュアル可変ドメイン免疫グロブリン」(DVD)を含めた、3つ以上の機能性抗原結合部位を有する操作された抗体に関して、米国特許出願公開第2006/0025576A1号明細書及びWu et al.Nature Biotechnology,vol.25,pages 1290-1297(2007)。
本発明の多重特異性抗体はまた、国際公開第2011/109726号パンフレット(全体として参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり生成することもできる。
一実施形態では、血液脳関門(BBB)を通過するための条件的活性型抗体を操作して多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)が作製される。この多重特異性抗体は、BBB-Rに結合する第一抗原結合部位と脳抗原に結合する第二抗原結合部位とを含む。少なくとも、BBB-Rに対する第一抗原結合部位は、条件的活性型である。脳抗原は、脳で発現する抗原であり、抗体又は小分子によって標的化され得る。かかる抗原の例としては、限定なしに、以下が挙げられる:β-セクレターゼ1(BACE1)、アミロイドβ(Aβ)、上皮成長因子受容体(EGFR)、ヒト上皮成長因子受容体2(HER2)、タウ、アポリポタンパク質E4(ApoE4)、α-シヌクレイン、CD20、ハンチンチン、プリオンタンパク質(PrP)、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)、パーキン、プレセニリン1、プレセニリン2、γセクレターゼ、デスレセプター6(DR6)、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、p75ニューロトロフィン受容体(p75NTR)、及びカスパーゼ6。一実施形態において、抗原はBACE1である。
BBBは、BBB受容体(BBB-R)によって媒介される内因性の輸送系を有し、BBB-Rは、BBBを通る巨大分子の輸送を可能にする特異的受容体である。例えば、BBB-Rに結合することのできる抗体は、この内因性輸送系を用いることでBBBを通って輸送され得る。かかる抗体は、BBBを通り抜ける内因性のBBB受容体媒介性の輸送系を使用することによりBBBを通って薬物又は他の作用物質を輸送するための輸送手段として働き得る。かかる抗体は、BBB-Rに対して高親和性を有する必要はない。米国特許出願公開第2012/0171120号明細書(参照により本明細書に援用される)に記載されるとおり、BBB-Rに対する親和性が低い条件的活性型抗体でない抗体が、高親和性抗体より高い効率でBBBを通過するものとして記載されている。
抗体を操作して脳に入る別の方法は、中枢神経系リンパ管を介して脳に送達されるように抗体を操作することである。従って、抗体は、リンパ管を通って中枢神経系に移動するT細胞などの免疫細胞、又は滑液若しくは脳脊髄液に結合するか、又はそれを模倣するように操作することができる。中枢神経系のリンパ管の詳細については、例えば、Louveau,A.,et al.,“Structural and functional features of central nervous system lymphatic vessels,”Nature 523,pp.337-341,16 July 2015及び本願の出願日現在で公的に利用可能な、この論文を引用する論文(これらは全て、本明細書によって、中枢神経系リンパ系並びにこの系を通って移動する体液及び細胞の詳細を提供する目的で本明細書に全体として参照により援用される)に記載されている。
従来の抗体と異なり、条件的活性型抗体は、BBBを通過するためBBB-Rに対して低親和性を有する必要はなく、脳の内部に留まる。条件的活性型抗体は、BBBの血液側でBBB-Rに対して高親和性を有し、且つBBBの脳側で親和性がほとんど又は全くないものであり得る。薬物コンジュゲートなどの薬物は条件的活性型抗体にカップリングすることにより、抗体と共にBBBを通って脳内へと輸送され得る。
BBB-Rは脳内皮細胞上に発現する膜貫通受容体タンパク質であり、血液脳関門を通じて分子を輸送する能力を有する。BBB-Rの例としては、トランスフェリン受容体(TfR)、インスリン受容体、インスリン様成長因子受容体(IGF-R)、低密度リポタンパク質受容体、例えば限定なしに、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1(LRP1)及び低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質8(LRP8)、及びヘパリン結合上皮成長因子様成長因子(HB-EGF)が挙げられる。本明細書における例示的BBB-Rは、トランスフェリン受容体(TfR)である。TfRは、脊椎動物における鉄の取り込みに関与する2つのジスルフィド結合したサブユニット(各々の見かけの分子量約90,000)で構成される膜貫通糖タンパク質(分子量約180,000)である。
一部の実施形態において、本発明は、BBB-Rに対する親抗体又は野生型抗体から生成される条件的活性型抗体を提供する。この条件的活性型抗体は、BBBの血液側ではBBB-Rに結合し、BBBの脳側ではBBB-Rに対する親和性が親抗体又は野生型抗体より低い。一部の他の実施形態において、この条件的活性型抗体は、BBBの血液側では野生型抗体又は親抗体と比べてBBB-Rに対する親和性を有し、BBBの脳側ではBBB-Rに対する親和性を有しない。
血漿は、脳細胞外液(ECF)と大きく異なる体液である。Somjen(“Ions in the Brain:Normal Function,Seizures,and Stroke,”Oxford University Press,2004,pages 16 and 33)及びRedzic(“Molecular biology of the blood-brain and the blood-cerebrospinal fluid barriers:similarities and differences,”Fluids and Barriers of the CNS,vol.8:3,2011)によって考察されるとおり、脳細胞外液は血漿と比べてK+が大幅に少なく、Mg2+及びH+が多い。血漿と脳ECFとのイオン濃度の違いにより、これらの2つの体液に浸透圧及び重量オスモル濃度の著しい違いがもたらされる。表1は、血漿及び脳ECFの両方の共通イオンの濃度(ミリモル単位)を示す。
Figure 2021137013000001
脳ECFはまた、血漿と比べて含有する乳酸塩が大幅に多く、血漿と比べてグルコースが大幅に少ない(Abi-Saab et al.,“Striking Differences in Glucose and Lactate Levels Between Brain Extracellular Fluid and Plasma in Conscious Human Subjects:Effects of Hyperglycemia and Hypoglycemia,”Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism,vol.22,pages 271-279,2002)。
従って、pH、様々な物質の濃度(ラクトース、グルコース、K+、Mg2+など)、浸透圧及び重量オスモル濃度など、BBBの両側で異なるいくつかの生理条件がある。pHの生理条件に関して、ヒト血漿はヒト脳ECFより高いpHを有する。K+濃度の生理条件に関して、脳ECFはヒト血漿より低いK+濃度を有する。Mg2+濃度の生理条件に関して、ヒト脳ECFはヒト血漿より大幅に多いMg2+を有する。浸透圧の生理条件に関して、ヒト脳ECFはヒト血漿と異なる浸透圧を有する。一部の実施形態において、脳ECFの生理条件は、特定の神経障害を有する患者の脳ECFの組成、pH、浸透圧及び重量オスモル濃度であってもよく、これは一般集団の脳ECFの生理条件と異なり得る。
従って本発明は、BBB-Rに対するテンプレート抗体をコードするDNAを発達させて変異DNAライブラリを作成する方法を提供する。次にこの変異DNAライブラリを発現させると、変異抗体が得られる。これらの変異抗体は、少なくとも1つの血漿生理条件下でBBB-Rに結合し、且つ脳ECF中の少なくとも1つの脳生理条件下でテンプレート抗体と比較してBBB-Rに対する親和性が低いか、又はそれを有しない条件的活性型抗体に関してスクリーニングされる。従って、選択された変異抗体は、血漿側ではBBB-Rに対して低親和性又は高親和性を有し、脳ECF側ではBBB-Rに対する親和性が低いか、又はそれを有しない。この選択された変異抗体は、BBBを通って輸送するための条件的活性型抗体として有用である。
かかる条件的活性型抗体は、BBBの通過及び脳ECFへの滞留に有利である。脳側ではBBB-Rに対する親和性が低いため、テンプレート抗体と比べ、条件的活性型抗体がBBBを通って脳から出て血液中へと輸送し戻される速度は低下する(又はそのようなことはなくなる)。
一部の他の実施形態において、本発明は、BBB-Rに対するテンプレート抗体をコードするDNAを発達させて変異DNAライブラリを作成する方法を提供する。次にこの変異DNAライブラリを発現させると、変異抗体が得られる。これらの変異抗体は、少なくとも1つの血漿生理条件下でBBB-Rに結合し、且つ少なくとも1つの脳生理条件下でBBB-Rに対する親和性がほとんど又は全くない条件的活性型抗体に関してスクリーニングされる。従って、選択された変異抗体は、血漿側ではBBB-Rに対する親和性を有し、且つ脳ECF側ではBBB-Rに対する親和性がほとんど又は全くない。この選択された変異抗体が、条件的活性型抗体である。
かかる条件的活性型抗体は、BBBの通過及び脳ECFへの滞留に有利である。血漿側でBBB-Rに結合した後、条件的活性型抗体はBBBを通って輸送され、及び脳ECF側ではBBB-Rに対する親和性がほとんど乃至全くなく、これはつまり、条件的活性型抗体が脳から運び出される可能性が低いことを意味する。
BBB-Rに対する条件的活性型抗体の親和性は、その最大半数阻害濃度(IC50)によって計測することができ、IC50は、BBB-Rに対する既知のBBB-Rリガンドの結合を50%阻害するためにどのくらいの抗体が必要かの尺度である。一般的な手法は、競合ELISA分析(assy)などの競合的結合分析を実施することである。TfR(BBB-R)に関するIC50を計測する例示的競合ELISA分析は、漸増濃度の抗TfR抗体がTfRとの結合についてビオチン化TfRAと競合するものである。抗TfR抗体競合ELISAは、PBS中2.5μg/mlの精製マウスTfR細胞外ドメインでコートしたMaxisorpプレート(Neptune、N.J.)において4℃で一晩実施し得る。プレートをPBS/0.05%Tween 20で洗浄し、PBS中のSuperblockブロッキング緩衝液(Thermo Scientific、Hudson、N.H.)を使用してブロックする。各個別の抗TfR抗体のタイトレーション(1:3段階希釈)をビオチン化抗TfRA(0.5nM最終濃度)と組み合わせて、室温で1時間プレートに加える。プレートをPBS/0.05%Tween 20で洗浄し、プレートにHRP-ストレプトアビジン(Southern Biotech、Birmingham)を加え、室温で1時間インキュベートする。プレートをPBS/0.05%Tween 20で洗浄し、プレートに結合したビオチン化抗TfRAをTMB基質(BioFX Laboratories、Owings Mills)を使用して検出する。
高いIC50は、BBB-Rの既知のリガンドの結合を阻害するためにより多くの条件的活性型抗体が必要であり、従って当該のBBB-Rに対する抗体の親和性が比較的低いことを示す。逆に、低いIC50は、既知のリガンドの結合を阻害するために必要な条件的活性型抗体がより少なくてすみ、従って当該のBBB-Rに対する抗体の親和性が比較的高いことを示す。
一部の実施形態において、血漿中のBBB-Rからの条件的活性型抗体のIC50は、約1nM~約100μM、又は約5nM~約100μM、又は約50nM~約100μM、又は約100nM~約100μM、又は約5nM~約10μM、又は約30nM~約1μM、又は約50nM~約1μMであり得る。
滑液に対する条件的活性型生物学的タンパク質
関節疾患は、工業先進国における身体障害及び早期退職の主な原因である。関節疾患は多くの場合に関節の損傷をもたらし、これは修復が困難である。滑液は、ヒト又は動物の体の関節(例えば、膝、股関節部、肩)の滑膜腔において向かい合う関節表面の軟骨と滑膜との間に見られる体液である。滑液は軟骨に栄養を供給し、また関節の潤滑剤としても働く。軟骨及び滑膜の細胞は、関節表面間の潤滑剤として働く体液を分泌する。ヒト滑液は約85%の水を含む。これは血漿の透析液に由来し、この透析液それ自体は、水、溶解したタンパク質、グルコース、凝固因子、無機イオン、ホルモン等から成る。アルブミン及びグロブリンなどのタンパク質が滑液中に存在し、関節領域の潤滑において重要な役割を果たすと考えられる。ヒト滑液中には、α-1-酸性糖タンパク質(AGP)、α-1-アンチトリプシン(A1AT)及びルブリシンなどの糖タンパク質を含め、いくつかの他のタンパク質もまた見られる。
滑液は、体の他の部分と極めて異なる組成を有する。従って、滑液は、血漿などの体の他の部分とは異なる生理条件を有する。例えば、滑液は約10mg/dL未満のグルコースを有するが、ヒト血漿の平均正常グルコース値は約100mg/dLであり、1日を通じて70~100mg/dLの範囲内で変動する。加えて、タンパク質などの大型分子が滑膜を通過して滑液中に入ることは容易でなく、従って滑液の全タンパク質レベルは血漿タンパク質レベルの約3分の1である。また、ヒト滑液のpHはヒト血漿のpHより高いことも分かっている(Jebens et al.,“On the viscosity and pH of synovial fluid and the pH of blood,”The Journal of Bone and Joint Surgery,vol.41 B,pages 388-400,1959;Farr et al.,“Significance of the hydrogen ion concentration in synovial fluid in Rheumatoid Arthritis,”Clinical and Experimental Rheumatology,vol.3,pages 99-104,1985)。
従って、滑液は、血漿中の生理条件など、体の他の部分の生理条件と異なるいくつかの生理条件を有する。滑液は、体の他の部分、特に血漿と比べてpHが高い。滑液は、血漿などの体の他の部分と比べてグルコースの濃度が低い。滑液はまた、血漿などの体の他の部分と比べてタンパク質の濃度も低い。
関節疾患を治療するため、滑液に抗体を導入することによっていくつかの抗体が用いられている。例えば、傷害された関節の滑液は、骨関節炎の進行に影響を及ぼす多くの因子を含有することが知られている(例えば、Fernandes,et al,“The Role of Cytokines in Osteoarthritis Pathophysiology,”Biorheology,vol.39,pages 237-246,2002を参照)。インターロイキン-1(IL-I)及び腫瘍壊死因子-α(TNF-α)などのサイトカインは、活性化した滑膜細胞によって産生されるものであり、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)遺伝子発現を上方制御することが知られている。MMPが上方制御されると、関節におけるマトリックス及び非マトリックスタンパク質の分解(degradation)が引き起こされる。サイトカインを中和する抗体は、骨関節炎の進行を止めることができる。
抗体を薬物として使用することは、関節疾患の治療に有望な戦略である。例えば、関節疾患の中で群を抜いて高い罹患率を有する骨関節炎を治療するため、抗体(アグレカン又はアグリカナーゼに対する抗体など)が開発されている(国際公開第1993/022429A1号パンフレット)。関節炎など、炎症性、自己免疫性、神経変性又は悪性疾患/障害である関節疾患の診断又は治療に、アセチル化高移動度グループボックス1(HMGB1)に対する抗体が開発されている。この抗体は、滑液中のアセチル化形態のHMGB1を検出するために使用し得る(国際公開第2011/157905A1号パンフレット)。関節の結合組織及び軟骨の損傷を治療するため、別の抗体(CD20抗体)もまた開発されている。
しかしながら、これらの抗体の抗原は、多くの場合に、重要な生理学的機能を担う体の他の部分で発現する。これらの抗原に対する抗体は、関節疾患の治療に有効であるものの、体の他の部分におけるこれらの抗原の正常な生理学的機能もまた著しく妨げ得る。従って、患者に重度の副作用が起こり得る。このように、副作用を低減するため、滑液中ではより高い親和性でそれらの抗原(タンパク質又は他の巨大分子)に優先的に結合し得る一方、体の他の部分では同じ抗原に結合しないか、又は弱く結合するのみである療法薬、例えばサイトカイン又は他の抗原に対する抗体を開発することが望ましい。
かかる条件的活性型生物学的タンパク質は、条件的活性型抗体であり得る。一部の実施形態において、本発明はまた、抗体以外のタンパク質である条件的活性型生物学的タンパク質も提供する。例えば、本発明によって、滑液中で免疫応答を優先的に調節するための、体の他の部分では免疫応答に対する効果が低いか、又はないものであり得る条件的活性型免疫調節因子が開発され得る。
条件的活性型生物学的タンパク質は、条件的活性型サイトカインシグナル伝達サプレッサー(SOCS)であり得る。これらのSOCSの多くはJAK-STATシグナル伝達経路の阻害に関与する。条件的活性型サイトカインシグナル伝達サプレッサーは、滑液中ではサイトカインシグナル伝達を優先的に抑制し得る一方、体の他の部分ではサイトカインシグナル伝達を抑制しないか、又は抑制の程度が低い。
一部の実施形態において、本発明は、野生型生物学的タンパク質に由来する条件的活性型生物学的タンパク質を提供する。条件的活性型生物学的タンパク質は、血漿などの体の特定の部分における少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より低い活性を有し、滑液における少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より高い活性を有する。かかる条件的活性型生物学的タンパク質は、滑液中で優先的に機能し得るが、体の他の部分には作用せず、又は作用の程度が低い。結果的に、かかる条件的活性型生物学的タンパク質は副作用が低減され得る。
一部の実施形態において、条件的活性型生物学的タンパク質は、滑液中にあるか、又は滑液に曝露される抗原に対する抗体である。かかる抗原は、関節疾患における免疫応答/炎症に関与する任意のタンパク質であってもよく、しかし抗原は多くの場合にサイトカインである。条件的活性型抗体は、体の他の部分(血漿など)における少なくとも1つの生理条件下では抗原に対する親和性が同じ抗原に対する野生型抗体と比べて低いが、滑液の少なくとも1つの生理条件下では抗原に対する親和性は野生型抗体より高い。かかる条件的活性型抗体は、体の他の部分では抗原に弱く結合するか、又は全く結合しないが、滑液中では抗原に結合し、例えば強く緊密に結合し、又はより強く結合し得る。
腫瘍に対する条件的活性型生物学的タンパク質
固形腫瘍の癌細胞は、その周囲に腫瘍微小環境を形成して癌細胞の成長及び転移を支援する能力を有する。腫瘍微小環境は、周囲血管、免疫細胞、線維芽細胞、他の細胞、可溶性因子、シグナル伝達分子、細胞外マトリックス、並びに新生物形質転換を促進し、腫瘍成長及び浸潤を支援し、腫瘍を宿主免疫から保護し、治療抵抗性を助長し、及び潜伏転移が発育するためのニッチを提供することのできる機械的キューを含めた、腫瘍が存在する細胞環境である。腫瘍及びその周囲微小環境は密接に関係し、常に相互作用している。腫瘍は、細胞外シグナルを放出し、腫瘍血管新生を促進し、及び末梢性免疫寛容を誘導することによってその微小環境に影響を与え得る一方、微小環境における免疫細胞が癌性細胞の成長及び発達に影響を及ぼし得る。Swarts et al.“Tumor Microenvironment Complexity:Emerging Roles in Cancer Therapy,”Cancer Res,vol.,72,pages 2473-2480,2012を参照のこと。
腫瘍微小環境は、多くの場合に低酸素である。腫瘍塊が増加するに従い、腫瘍の内部が成長して既存の血液供給からさらに離れ、腫瘍微小環境に酸素を完全に供給することが困難になる。腫瘍環境における酸素分圧は、局所進行固形腫瘍の50%超で5mmHg未満であり、対して血漿中では約40mmHgの酸素分圧である。対照的に、体の他の部分は低酸素でない。低酸素環境はヌクレオチド除去修復及びミスマッチ修復経路の下方制御を介して遺伝的不安定性につながり、これは癌の進行に関連する。低酸素はまた、低酸素誘導因子1α(HIF1-α)の上方制御も引き起こし、HIF1-αは血管新生を誘導し、予後不良及び転移に関連する遺伝子の活性化に関連する。Weber et al.,“The tumor microenvironment,”Surgical Oncology,vol.21,pages 172-177,2012及びBlagosklonny,“Antiangiogenic therapy and tumor progression,”Cancer Cell,vol.5,pages 13-17,2004を参照のこと。
加えて、腫瘍細胞は、酸素を必要としない乳酸発酵によって生成されるエネルギーに頼る傾向がある。そのため腫瘍細胞は、酸素を必要とする通常の好気的呼吸を使用することが少ない。乳酸発酵を使用する結果、腫瘍微小環境は酸性となり(pH6.5~6.9)、これは典型的に中性又は弱塩基性のいずれかである体の他の部分と対照的である。例えば、ヒト血漿は約7.4のpHを有する。Estrella et al.,“Acidity Generated by the Tumor Microenvironment Drives Local Invasion,”Cancer Research,vol.73,pages 1524-1535,2013を参照のこと。腫瘍微小環境においては、体の他の部分に位置する細胞と比較して、増殖癌細胞の栄養素要求が比較的高いため栄養素の利用可能性も低い。
さらに、腫瘍微小環境はまた、体の他の部分にはあまり見られない多くの特徴的な細胞型も含有する。これらの細胞型には、内皮細胞及びその前駆体、周皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞(fibroblast)、癌関連線維芽細胞(fibroblast)、筋線維芽細胞(myofibroblast)、好中球、好酸球、好塩基球、マスト細胞、T及びBリンパ球、ナチュラルキラー細胞及び抗原提示細胞(APC)、例えばマクロファージ及び樹状細胞が含まれる(Lorusso et al.,“The tumor microenvironment and its contribution to tumor evolution toward metastasis,”Histochem Cell Biol,vol.130,pages 1091-1103,2008)。
従って、腫瘍微小環境は、血漿中における生理条件など、体の他の部分の生理条件と異なる少なくともいくつかの生理条件を有する。腫瘍微小環境は、体の他の部分、特に血漿(pH7.4)と比べてpH(酸性)が低い。腫瘍微小環境は、血漿などの体の他の部分と比べて酸素濃度が低い。また、腫瘍微小環境は、体の他の部分、特に血漿と比べて栄養素の利用可能性も低い。腫瘍微小環境はまた、体の他の部分、特に血漿にはあまり見られないいくつかの特徴的な細胞型も有する。
ある種の制癌薬には、腫瘍微小環境内に侵入して、そこで癌細胞に作用することのできる抗体が含まれる。抗体ベースの癌療法は十分に確立されており、血液系悪性病変及び固形腫瘍患者の治療に関して最も成功している重要な戦略の一つになっている。ヒト癌細胞が発現する細胞表面抗原であって、正常組織と比較して癌細胞で過剰発現するか、突然変異するか、又は選択的に発現する細胞表面抗原は多岐にわたる。これらの細胞表面抗原は、抗体癌療法の優れた標的である。
抗体が標的とし得る癌細胞表面抗原は、いくつかの異なる種類に分類される。造血分化抗原は、通常分化クラスター(CD)分類に関連付けられる糖タンパク質であり、CD20、CD30、CD33及びCD52が含まれる。細胞表面分化抗原は、正常細胞及び腫瘍細胞の両方の表面上に見られる多様な一群の糖タンパク質及び炭水化物である。成長及び分化シグナル伝達に関与する抗原は、多くの場合に成長因子及び成長因子受容体である。癌患者において抗体の標的となる成長因子には、CEA2、上皮成長因子受容体(EGFR;ERBB1としても知られる)12、ERBB2(HER2としても知られる)13、ERBB3(文献18)、MET(HGFRとしても知られる)19、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)20、エフリン受容体A3(EPHA3)21、腫瘍壊死因子(TNF)関連アポトーシス誘導リガンド受容体1(TRAILR1;TNFRSF10Aとしても知られる)、TRAILR2(TNFRSF10Bとしても知られる)及び核内因子κBの受容体アクチベーターリガンド(RANKL;TNFSF11としても知られる)22が含まれる。血管新生に関与する抗原は、通常、新しい微小血管系の形成を補助するタンパク質又は成長因子であり、血管内皮成長因子(VEGF)、VEGF受容体(VEGFR)、インテグリンαVβ3及びインテグリンα5β1が含まれる(文献10)。腫瘍間質及び細胞外マトリックスは、腫瘍にとって不可欠な支持構造である。治療標的となる間質性及び細胞外マトリックス抗原には、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)及びテネイシンが含まれる。Scott et al.,“Antibody therapy of cancer,”Nature Reviews Cancer,vol.12,pages 278-287,2012を参照のこと。
抗体に加えて、他の生物学的タンパク質もまた、癌の治療において有望となっている。例としては、腫瘍抑制因子、例えば、網膜芽細胞腫タンパク質(pRb)、p53、pVHL、APC、CD95、ST5、YPEL3、ST7、及びST14が挙げられる。腫瘍サイズを縮小させるため、癌細胞においてアポトーシスを誘導する一部のタンパク質もまた腫瘍に導入し得る。腫瘍においてアポトーシスを誘導することのできる機構は少なくとも2つある:腫瘍壊死因子によって誘導される機構及びFas-Fasリガンドによって媒介される機構。これらの2つのアポトーシス機構のいずれかに関与するタンパク質の少なくとも一部を、治療のため腫瘍に導入し得る。
癌幹細胞は、特定の癌試料に見られるあらゆる細胞型を生じる能力を有する癌細胞であり、従って腫瘍形成性である。癌幹細胞は、自己再生して複数の細胞型へと分化する幹細胞プロセスを通じて腫瘍を生じさせ得る。癌幹細胞は腫瘍において特徴的な集団として存在し続け、新たな腫瘍を生じさせることによって再発及び転移を引き起こすと考えられる。癌幹細胞を標的とする特異的療法の開発は、癌患者、特に転移性疾患患者の生存及びクオリティ・オブ・ライフを向上させ得る。
これらの腫瘍治療薬は、多くの場合に、腫瘍以外の体の他の部分における正常な生理学的機能を妨げる。例えば、腫瘍においてアポトーシスを誘導するタンパク質はまた、体の他の何らかの部分においてもアポトーシスを誘導し、ひいては副作用を引き起こし得る。抗体を使用して腫瘍を治療する実施形態において、抗体の抗原はまた、正常な生理学的機能を果たす体の他の部分においても発現し得る。例えば、腫瘍血管成長を止めるモノクローナル抗体ベバシズマブ(血管内皮成長因子を標的化する)。この抗体はまた、体の他の部分における血管成長及び修復も阻止し得るため、出血、創傷治癒不良、血餅、及び腎臓損傷を引き起こし得る。より有効性の高い腫瘍治療には、主に又は専ら腫瘍を標的化することに集中する条件的活性型生物学的タンパク質の開発が極めて望ましい。
一部の実施形態において、本発明は、腫瘍治療候補であり得る野生型生物学的タンパク質から生成される条件的活性型生物学的タンパク質を提供する。この条件的活性型生物学的タンパク質は、血漿など、腫瘍微小環境以外の体の部分における少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より低い活性を有し、一方、腫瘍微小環境における少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より高い活性を有する。かかる条件的活性型生物学的タンパク質は、腫瘍を治療するため腫瘍微小環境にある癌細胞に優先的に作用することができ、従って副作用を引き起こしにくい。生物学的タンパク質が腫瘍細胞の表面上の抗原(抗原が腫瘍微小環境に曝露している)に対する抗体である実施形態において、条件的活性型抗体は、体の他の部分、例えば非腫瘍微小環境では抗原に対する親和性が野生型抗体より低く、一方、腫瘍微小環境では抗原に対する親和性が野生型抗体より高い。かかる条件的活性型抗体は、体の他の部分では抗原に弱く結合し得るか、又は全く結合せず、しかし、腫瘍微小環境では抗原により高い結合性を有し、又は強力且つ緊密に結合する。
一部の実施形態において、条件的活性型抗体は、免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体であり、免疫チェックポイントの阻害をもたらす。かかる条件的活性型抗体は、(1)その条件的活性型抗体が由来する野生型抗体と比較した、腫瘍微小環境における免疫チェックポイントタンパク質に対する結合親和性の増加、及び(2)その条件的活性型抗体が由来する野生型抗体と比較した、非腫瘍微小環境における免疫チェックポイントタンパク質に対する結合親和性の低下、のうちの少なくとも一方を有する。
免疫チェックポイントは、自己寛容を維持し、且つ抗原刺激、すなわち外来性の分子、細胞及び組織に対する免疫応答の持続時間及び程度を調節する免疫系の内因性阻害経路として機能する。Pardoll,Nature Reviews Cancer,vol.12,pages 252-264,2012を参照のこと。1つ又はそれ以上のチェックポイントタンパク質を抑制することによる免疫チェックポイントの阻害は、免疫系、特にT細胞の過剰な活性化を引き起こし、ひいては免疫系が誘導されて腫瘍を攻撃し得る。本発明に好適なチェックポイントタンパク質としては、CTLA4並びにそのリガンドCD80及びCD86、PD1並びにそのリガンドPDL1及びPDL2、T細胞免疫グロブリン及びムチンタンパク質-3(TIM3)及びそのリガンドGAL9、B及びTリンパ球アテニュエーター(BTLA)及びそのリガンドHVEM(ヘルペスウイルス侵入メディエーター)、キラー細胞免疫グロブリン様受容体(KIR)などの受容体、リンパ球活性化遺伝子-3(LAG3)及びアデノシンA2a受容体(A2aR)、並びにリガンドB7-H3及びB7-H4が挙げられる。さらなる好適な免疫チェックポイントタンパク質が、Pardoll,Nature Reviews Cancer,vol.12,pages 252-264,2012及びNirschl & Drake,Clin Cancer Res,vol.19,pages 4917-4924,2013(これらの開示は本明細書によって参照により本明細書に援用される)に記載されている。
CTLA-4及びPD1は、最もよく知られている免疫チェックポイントタンパク質の2つである。CTLA-4は、T細胞活性化経路を下方制御し得る(Fong et al.,Cancer Res.69(2):609-615,2009;及びWeber,Cancer Immunol.Immunother,58:823-830,2009)。CTLA-4を遮断すると、T細胞活性化及び増殖が増大することが示されている。CTLA-4の阻害薬としては、抗CTLA-4抗体が挙げられる。抗CTLA-4抗体はCTLA-4に結合してCTLA-4とそのリガンドCD80又はCD86との相互作用を遮断し、それによりCTLA-4とそのリガンドとの相互作用によって誘発される免疫応答の下方制御を遮断する。
チェックポイントタンパク質PD1は、感染に対する炎症反応が起こったときに末梢組織におけるT細胞の活性を抑制し、自己免疫を抑えることが知られている。インビトロでPD1を遮断すると、特異的抗原標的によるか、又は混合リンパ球反応における同種細胞による刺激に応答したT細胞増殖及びサイトカイン産生が増強され得る。PD1発現と免疫応答低下との間の強い相関は、PD1の阻害機能、すなわち免疫チェックポイントの誘導によって生じることが示された(Pardoll,Nature Reviews Cancer,12:252-264,2012)。PD1の遮断は、PD1又はそのリガンドPDL1又はPDL2に結合する抗体を含め、種々の機構によって達成することができる。
これまでの研究において、いくつかのチェックポイントタンパク質(CTLA4、PD1、PD-L1)に対する抗体が発見されている。これらの抗体は、免疫チェックポイントを阻害して、それにより腫瘍を攻撃するため免疫系、特にT細胞を過剰に活性化させることにより、腫瘍の治療に有効となる(Pardoll,Nature Reviews Cancer,vol.12,pages 252-264,2012)。しかしながら、活性化過剰のT細胞はまた、宿主細胞及び/又は組織も攻撃し得るため、患者の体に付随的損傷をもたらし得る。従って、免疫チェックポイントを阻害するこれらの公知の抗体の使用に基づく治療法は管理が難しく、患者のリスクが重大な懸念事項である。例えば、FDAが承認済みのCTLA-4に対する抗体は、その高い毒性のため黒枠警告を有する。
本発明は、免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体を提供することにより、活性化過剰のT細胞による付随的損傷の問題に対処する。これらの条件的活性型抗体は、腫瘍微小環境において免疫チェックポイントを優先的に活性化する。同時に、非腫瘍微小環境、例えば正常な生体組織における免疫チェックポイントは、条件的活性型抗体によって阻害されないか、又は阻害が少なく、従って非腫瘍微小環境では体に対する付随的損傷の可能性が低減される。この目標は、非腫瘍微小環境と比べて腫瘍微小環境においてより高活性となるように条件的活性型抗体(antibody)を操作することによって達成される。
一部の実施形態において、免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体は、非腫瘍微小環境における免疫チェックポイントタンパク質との結合活性に対する腫瘍微小環境における同じ免疫チェックポイント(checkpoint)タンパク質との結合活性の比が、少なくとも約1.1、又は少なくとも約1.2、又は少なくとも約1.4、又は少なくとも約1.6、又は少なくとも約1.8、又は少なくとも約2、又は少なくとも約2.5、又は少なくとも約3、又は少なくとも約5、又は少なくとも約7、又は少なくとも約8、又は少なくとも約9、又は少なくとも約10、又は少なくとも約15、又は少なくとも約20であり得る。抗体の結合活性を計測するための典型的な分析は、ELISA分析である。
高免疫原性腫瘍、例えば悪性黒色腫は、免疫系の操作によって達成される活性化過剰の免疫系に対して最も脆弱である。従って、免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体は、かかる高免疫原性腫瘍の治療に特に有効であり得る。しかしながら、他のタイプの腫瘍もまた活性化過剰の免疫系に対して脆弱である。
一部の実施形態において、免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体は併用療法で用いられ得る。例えば、併用療法は、腫瘍細胞表面分子(腫瘍特異性抗原)に対する条件的活性型抗体と免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体とを含み得る。一実施形態において、腫瘍細胞表面分子に対する条件的活性型抗体の結合活性と免疫チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体の結合活性との両方が単一のタンパク質に存在してもよく、すなわち、本明細書に開示されるとおりの二重特異性条件的活性型抗体であってもよい。一部のさらなる実施形態において、併用療法は、腫瘍細胞表面分子(腫瘍特異性抗原)に対する条件的活性型抗体と2つ以上の異なる免疫チェックポイントタンパク質に対する2つ以上の条件的活性型抗体とを含み得る。一実施形態において、これらの結合活性の全てが単一のタンパク質に存在してもよく、すなわち、本明細書に開示されるとおりの多重特異性抗体であってもよい。
条件的活性型抗体は、その条件的活性型抗体が由来する野生型抗体の活性と比較して、同じ腫瘍細胞表面分子又はチェックポイントタンパク質に対し腫瘍微小環境においてより高活性であるため、これらの併用療法は、有効性の増強及び毒性の大幅な低下の両方をもたらし得る。これらの条件的活性型抗体、特に免疫チェックポイントタンパク質に対する抗体の毒性の低下は、強力な抗体、例えば本明細書に記載されるとおりのADC抗体、並びにより高用量の抗体の安全な使用を可能にし得る。
一部の実施形態において、チェックポイントタンパク質に対する条件的活性型抗体はプロドラッグ形態であってもよい。例えば、条件的活性型抗体は、開裂されて薬物形態に変わる前は所望の薬物活性を有しないプロドラッグであり得る。プロドラッグは、かかる開裂を触媒する酵素が腫瘍微小環境に優先的に存在するか、又は条件的活性型抗体が非腫瘍微小環境(microenvironment)における開裂部位への到達し易さと比較して腫瘍微小環境では開裂部位に到達し易くなるかのいずれかの理由により、腫瘍微小環境で優先的に開裂し得る。
腫瘍幹細胞を含めた幹細胞ニッチに対する条件的活性型生物学的タンパク質
幹細胞は体の幹細胞ニッチと呼ばれる環境に存在し、幹細胞ニッチは組織生理学の基本的な単位を成し、生物の要求に対する幹細胞の応答を媒介するシグナルを統合する。しかしニッチは、幹細胞又は他の標的に異常機能を課すことによって病理もまた誘導し得る。幹細胞とそれらのニッチとの間の相互作用により、組織の持続及び幹細胞療法の最終設計に必要な動的システムが作り出される(Scadden,“The stem-cell niche as an entity of action,”Nature,vol.441,pages 1075-1079,2006)。脊椎動物における一般的な幹細胞ニッチには、生殖細胞系列幹細胞ニッチ、造血幹細胞ニッチ、毛包幹細胞ニッチ、腸幹細胞ニッチ、及び心血管幹細胞ニッチが含まれる。
幹細胞ニッチは、体の他の部分(例えば血漿)と異なる特殊化した環境である(Drummond-Barbosa,“Stem Cells,Their Niches and the Systemic Environment:An Aging Network,”Genetics,vol.180,pages 1787-1797,2008;Fuchs,“Socializing with the Neighbors:Stem Cells and Their Niche,”Cell,vol.116,pages 769-778,2004)。幹細胞ニッチは低酸素であり、酸化的DNA損傷が低下している。酸素レベルを直接計測することにより、一般に骨髄が血漿と比較して事実上低酸素である(約1%~2%O2)ことが明らかになっている(Keith et al.,“Hypoxia-Inducible Factors,Stem Cells,and Cancer,”Cell,vol.129,pages 465-472,2007;Mohyeldin et al.,“Oxygen in Stem Cell Biology:A Critical Component of the Stem Cell Niche,”Cell Stem Cell,vol.7,pages 150-161,2010)。加えて、幹細胞ニッチは、ニッチ内で幹細胞特性を調節するためいくつかの他の因子:細胞外マトリックス成分、成長因子、サイトカイン、及び環境の生理化学的性質の因子、例えば、pH、イオン強度(例えばCa2+濃度)及び代謝産物を有しなければならない。
従って、幹細胞ニッチは、血漿中の生理条件など、体の他の部分の生理条件と異なる少なくともいくつかの生理条件を有する。幹細胞ニッチは、体の他の部分、特に血漿と比べて酸素濃度が低い(1~2%)。pH及びイオン強度を含めた幹細胞ニッチの他の生理条件もまた、体の他の部分と異なり得る。
幹細胞療法は、疾患又は傷害を治療するため新規の成体幹細胞を損傷組織に導入するインターベンショナルな戦略である。この戦略は、幹細胞が自己再生して、分化能の程度が様々な続く子孫を生じる能力に依存する。幹細胞療法は、拒絶反応及び副作用のリスクを最小限に抑えつつ体の罹患及び損傷範囲を取り替えることが潜在的に可能な、組織再生の大きな潜在的可能性をもたらす。従って、幹細胞の再生及び分化に影響を及ぼすため幹細胞ニッチに薬物(生物学的タンパク質(例えば抗体)又は化学的化合物)を送達することは、幹細胞療法の重要な部分である。
幹細胞ニッチが哺乳動物における幹細胞の再生及び/又は分化にどのように影響を及ぼすかに関するいくつかの例がある。第一の例は皮膚におけるもので、ここではβ-1インテグリンが原始細胞上で差次的に発現し、且つマトリックス糖タンパク質リガンドとの相互作用を介した幹細胞集団の制約的な局在化に関与することが知られている。第二に、神経系においては、テネイシンCが存在しないことにより脳室下帯の神経幹細胞の数及び機能が変化する。テネイシンCは、線維芽細胞成長因子2(FGF2)及び骨形成タンパク質4(BMP4)に対する幹細胞感受性を調節して幹細胞性向の増加をもたらすものと思われる。第三に、別のマトリックスタンパク質、Arg-Gly-Aspを含有するシアロタンパク質、オステオポンチン(OPN)は、現在、造血幹細胞調節に寄与することが実証されている。OPNは、造血幹細胞CD44、並びにα4及びα5β1インテグリン上にあることが知られるいくつかの受容体と相互作用する。OPN産生は、特に骨芽細胞の活性化によって著しく変化し得る。OPN欠損動物は、OPNがないことによって刺激条件下で超生理学的な幹細胞増大が生じるため、HS細胞数が増加している。従って、OPNは、恒常条件下又は刺激下で幹細胞の数を制限する造血幹細胞数の制約因子として働くものと思われる。Scadden,“The stem-cell niche as an entity of action,”Nature,vol.441,pages 1075-1079,2006を参照のこと。
Xie et al.“Autocrine signaling based selection of combinatorial antibodyies that transdifferentiate human stem cells,”Proc Natl Acad Sci U S A,vol.110,pages 8099-8104,2013)は、抗体を使用して幹細胞分化に影響を及ぼす方法を開示している。この抗体は、顆粒球コロニー刺激因子受容体のアゴニストである。細胞を活性化して所定の経路に沿って分化させる天然の顆粒球コロニー刺激因子と異なり、この単離アゴニスト抗体はヒト骨髄系統CD34+骨髄細胞を神経前駆細胞に分化転換させた。Melidoni et al.(“Selecting antagonistic antibodies that control differentiation through inducible expression in embryonic stem cells,”Proc Natl Acad Sci U S A,vol.110,pages 17802-17807,2013)もまた、抗体を使用してFGF4とその受容体FGFR1βとの間の相互作用に干渉し、ひいてはオートクリンFGF4媒介性胚性幹細胞分化を遮断する方法を開示している。
幹細胞分化におけるリガンド/受容体の機能の理解により、幹細胞分化を調節し、又はさらには指図するため生物学的タンパク質を利用してこれらのリガンド/受容体に干渉する戦略が可能となっている。遺伝子修飾されていないヒト幹細胞の分化を幹細胞ニッチへの抗体の投与によって制御可能であることにより、幹細胞ベースの療法の新規エキソビボ又はインビボ手法がもたらされ得る。一部の実施形態において、本発明は、癌幹細胞を含め、幹細胞ニッチに侵入して幹細胞又は腫瘍の発育を調節する能力を有する野生型生物学的タンパク質から生成される条件的活性型生物学的タンパク質を提供する。この条件的活性型生物学的タンパク質は、体の他の部分における少なくとも1つの生理条件下では野生型生物学的タンパク質より低い活性を有し、一方、幹細胞ニッチ、例えば癌幹細胞環境における少なくとも1つの生理条件下では野生型生物学的タンパク質より高い活性を有する。かかる条件的活性型生物学的タンパク質は副作用を生じにくく、幹細胞ニッチで優先的に作用して幹細胞の再生及び分化を調節する。一部の実施形態において、条件的活性型生物学的タンパク質は抗体である。かかる条件的活性型抗体は、体の他の部分ではその抗原に弱く結合し、又は全く結合せず、しかし幹細胞ニッチでは抗原に強く緊密に結合し得る。
本発明の滑液、腫瘍微小環境及び幹細胞ニッチに対する条件的活性型タンパク質は、野生型生物学的タンパク質をコードするDNAを発達させて変異DNAライブラリを作成する方法によって生成される。次にこの変異DNAライブラリを発現させると、変異タンパク質が得られる。この変異タンパク質は、滑液、腫瘍微小環境、及び幹細胞ニッチからなる群から選択される体の第一部分の少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より高い活性を有し、且つ体の第一部分と異なる体の第二部分における少なくとも1つの生理条件下で野生型生物学的タンパク質より低い活性を有する条件的活性型生物学的タンパク質に関してスクリーニングされる。体の第二部分は血漿であってもよい。かかる選択された変異生物学的タンパク質が、体の第一部分では高い活性を有するが体の第二部分では低い活性を有する条件的活性型生物学的タンパク質である。
条件的活性型生物学的タンパク質が作用することが意図されない体の他の部分では条件的活性型生物学的タンパク質の活性はより低いため、かかる条件的活性型生物学的タンパク質は野生型タンパク質の副作用を低下させるのに有利である。例えば、条件的活性型生物学的タンパク質を腫瘍微小環境に導入することが意図される場合、腫瘍微小環境以外の体の部分で条件的活性型生物学的タンパク質の活性が低いということは、かかる条件的活性型生物学的タンパク質が腫瘍微小環境以外の体の部分で正常な生理学的機能に干渉する可能性が低いことを意味する。同時に、条件的活性型生物学的タンパク質は腫瘍微小環境では活性が高く、これにより条件的活性型生物学的タンパク質は腫瘍の治療における有効性がより高いものとなる。
副作用が低いため、この条件的活性型生物学的タンパク質は、野生型生物学的タンパク質と比較して大幅に高い用量のタンパク質を安全に使用することが可能である。サイトカイン又は成長因子に対する抗体は体の他の部分におけるサイトカイン又は成長因子の正常な生理学的機能を妨げ得るため、これはサイトカイン又は成長因子に対する抗体について特に有益である。副作用が低い条件的活性型生物学的タンパク質を使用することにより、より高用量を用いてより高い有効性を達成し得る。
滑液、腫瘍微小環境、又は幹細胞ニッチの1つにおいて作用する条件的活性型生物学的タンパク質はまた、新規薬物標的の使用も可能にし得る。従来の生物学的タンパク質を療法薬として使用すると、許容できない副作用が生じ得る。例えば、上皮成長因子受容体(EGFR)の阻害は腫瘍成長の抑制に極めて有効であり得る。しかしながら、EGFRを阻害する薬物はまた、皮膚及び胃腸(GI)管における成長も抑制し得る。この副作用のため、EGFRは腫瘍薬標的として不適となる。腫瘍微小環境においてのみEGFRに高親和性で結合するが、体の任意の他の部分では全く又は極めて低い親和性でしか結合しない条件的活性型抗体を使用すると、副作用を大幅に低減すると同時に腫瘍成長を抑制し得る。この場合、条件的活性型抗体を使用することにより、EGFRが有効な新規腫瘍薬標的となり得る。
別の例では、関節損傷の修復において多くの場合にサイトカインの抑制が有益である。しかしながら、体の他の部分におけるサイトカインの抑制はまた、体の免疫応答も抑制し、免疫不全を引き起こし得る。従って、滑液中のサイトカインは、関節損傷治療用の従来の抗体薬の開発に理想的な標的ではない。しかしながら、滑液中ではサイトカインに優先的に結合する一方で、体の他の部分では同じサイトカインに全く又は弱くしか結合しない条件的活性型抗体を使用することにより、免疫不全の副作用を劇的に低減することができる。従って、条件的活性型抗体を使用することにより、滑液中のサイトカインが関節損傷の修復に好適な標的となり得る。
条件的活性型ウイルス粒子
ウイルス粒子は、長年、タンパク質、核酸分子、化学的化合物又は放射性同位元素を標的細胞又は組織に輸送するための送達媒体として使用されている。送達媒体として一般的に用いられているウイルス粒子としては、レトロウイルス(retrovirus)、アデノウイルス、レンチウイルス、ヘルペスウイルス、及びアデノ随伴ウイルスが挙げられる。ウイルス粒子は、多くの場合にリガンド-受容体結合系において、標的細胞の標的タンパク質として働く細胞タンパク質との特異的結合のための認識タンパク質として働く表面タンパク質を介してその標的細胞を認識する(Lentz,“The recognition event between virus and host cell receptor:a target for antiviral agents,”J.of Gen.Virol.,vol.71,pages 751-765,1990(参照により本明細書に援用される))。例えば、ウイルス認識タンパク質は、標的細胞上の受容体に対するリガンドであり得る。リガンドと受容体との間の特異性により、ウイルス粒子が標的細胞を特異的に認識して、そこにその内容物を送達することが可能となる。
野生型ウイルスから人工ウイルス粒子を作る技法は当業者に周知である。送達媒体として公知の人工ウイルス粒子には、レトロウイルス(例えば、国際公開第90/07936号パンフレット;国際公開第94/03622号パンフレット;国際公開第93/25698号パンフレット;国際公開第93/25234号パンフレット;米国特許第5,219,740号明細書;国際公開第93/11230号パンフレット;国際公開第93/10218号パンフレット;米国特許第4,777,127号明細書;英国特許第2,200,651号明細書;欧州特許第0 345 242号明細書;及び国際公開第91/02805号パンフレットを参照のこと)、アルファウイルス(例えば、シンドビスウイルスベクター、セムリキ森林ウイルス(ATCC VR-67;ATCC VR-1247)、ロスリバーウイルス(ATCC VR-373;ATCC VR-1246)、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(ATCC VR-923;ATCC VR-1250;ATCC VR 1249;ATCC VR-532))、及びアデノ随伴ウイルス(例えば、国際公開第94/12649号パンフレット、国際公開第93/03769号パンフレット;国際公開第93/19191号パンフレット;国際公開第94/28938号パンフレット;国際公開第95/11984号パンフレット及び国際公開第95/00655号パンフレットを参照のこと)をベースとするものが含まれる。
概して、人工ウイルス粒子は、ウイルス粒子への外来性認識タンパク質の挿入、多くの場合に組換え技術による天然認識タンパク質の置換によって構築される。外来性認識タンパク質は、例えば、抗体、受容体、リガンド又はコラーゲン結合ドメインであり得る。本発明は、正常生理条件では細胞に対する結合が不活性又は低活性であり、且つ異常条件では細胞に対する結合が活性又は高活性である条件的活性型認識タンパク質を提供する。従って条件的活性型認識タンパク質は、罹患組織及び/又は疾患部位の標的細胞に対しては当該部位における異常条件の存在に基づき優先的に結合し、且つ正常生理条件が存在する正常組織の細胞との結合は回避し、又はごく最小限であり得る。条件的活性型認識タンパク質はウイルス粒子の表面上に発現し、提示され得る。
一部の実施形態において、本発明は、野生型認識タンパク質を発達させて、条件的活性型認識タンパク質に関してスクリーニングする方法を提供する。条件的活性型認識タンパク質は、正常生理条件下では野生型認識タンパク質と比べて細胞に対する結合活性が低く、異常条件下では野生型認識タンパク質と比べて細胞に対する結合活性が高い。かかる条件的活性型認識タンパク質を周知の組換え技術によってウイルス粒子に挿入すると、条件的活性型ウイルス粒子が生成され得る。
別の実施形態において、本発明は、条件的活性型認識タンパク質を含む条件的活性型ウイルス粒子を提供し、条件的活性型認識タンパク質は、条件的活性型ウイルス粒子が罹患組織又は疾患部位の標的細胞を認識してそれに結合するが、正常組織の細胞は認識及び結合しないことを可能にする。かかる条件的活性型ウイルス粒子はウイルス粒子内の療法薬を疾患組織又は疾患部位に優先的に送達することができる一方、この条件的活性型ウイルス粒子は正常組織の細胞にはより少ない療法薬を送達するか、又は送達しない。
一部の実施形態において、疾患部位における標的細胞は、健常な、又は特定の疾患若しくは病状に罹患していない体の他の部分におけるpH又は温度と比較して異常なpH(例えば、pH6.5)又は異常な温度を有する領域又は微小環境の内部にある。この実施形態において、条件的活性型認識タンパク質は、正常な生理的pH又は温度では野生型認識タンパク質と比べて標的細胞の標的タンパク質との結合活性が低く、異常なpH又は温度では野生型認識タンパク質と比べて標的細胞の標的タンパク質との結合活性が高い。このように、この認識タンパク質は異常なpH又は温度が起こる部位に優先的に結合し、それによって治療を疾患部位に送達し得る。
一実施形態において、ウイルス粒子は本発明の条件的活性型抗体、特に抗体の可変領域(例えば、Fab、Fab’、Fv)を含み得る。かかる条件的活性型抗体は、正常組織を含む部位で起こり得る正常生理条件下では野生型抗体より低い親和性で、及び疾患部位又は罹患組織で起こり得る異常条件下では野生型抗体より高い親和性で、標的細胞の標的タンパク質(抗原として)に結合し得る。条件的活性型抗体は、本発明の方法に従い野生型抗体から誘導し得る。
ある実施形態では、標的細胞上の標的タンパク質には、例えば多くの腫瘍において細胞表面上で過剰発現するチロシンキナーゼ成長因子受容体が含まれる。例示的チロシンキナーゼ成長因子は、VEGF受容体、FGF受容体、PDGF受容体、IGF受容体、EGF受容体、TGF-α受容体、TGF-β受容体、HB-EGF受容体、ErbB2受容体、ErbB3受容体、及びErbB4受容体である。
条件的活性型DNA/RNA修飾タンパク質
新規ゲノム操作ツールの一形態としてDNA/RNA修飾タンパク質、特にCRISPRと呼ばれるものが発見されており、これらによれば、研究者は遺伝子にマイクロサージェリーを施して、染色体上の正確な位置にあるDNA配列を精密且つ容易に変化させることが可能になる(ゲノム編集、Mali et al.,“Cas9 as a versatile tool for engineering biology,”Nature Methods,vol.10,pages 957-963,2013)。例えば、鎌状赤血球貧血は単一塩基突然変異によって引き起こされ、これはDNA/RNA修飾タンパク質を使用して修正し得る可能性がある。この技術は、染色体の小片を、一塩基対の変更による場合であっても、精密に欠失させ、又は編集し得る(Makarova et al.,“Evolution and classification of the CRISPR-Cas systems,”Nature Reviews Microbiology,vol.9,pages 467-477,2011)。
CRISPRによるゲノム編集は、細胞に複数の遺伝子変化を迅速且つ同時に作製する能力を有する。多くのヒトの病気は、心疾患、糖尿病、及び神経系疾患を含め、複数の遺伝子における突然変異の影響を受ける。このCRISPRベースの技術は、疾患を引き起こす突然変異を復帰させ、これらの疾患を治癒し、又は少なくともこれらの疾患の重症度を低減し得る可能性を有する。ゲノム編集は、ゲノムDNAの切断についてCRISPR関連(Cas)タンパク質(酵素ファミリー)に頼る。典型的には、Casタンパク質は、小さいガイドRNAによってゲノム内の標的領域に案内され、ここでガイドRNAは標的領域と一致している。Casタンパク質は配列特異性がほとんど又は全くないため、ガイドRNAが、Casタンパク質が正確なゲノム編集を達成するための指示者として働く。一実施形態では、1つのCasタンパク質を複数のガイドRNAと共に使用して、複数の遺伝子突然変異を同時に修正し得る。
多くのCasタンパク質が存在する。例としては、Cas1、Cas2、Cas3’、Cas3’’、Cas4、Cas5、Cas6、Cas6e、Cas6f、Cas7、Cas8a1、Cas8a2、Cas8b、Cas8c、Cas9、Cas10、Cas10d、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、及びCsf4が挙げられる((Makarova et al.,“Evolution and classification of the CRISPR-Cas systems,”Nature Reviews Microbiology,vol.9,pages 467-477,2011)。
ゲノム編集を行うには、Casタンパク質が標的細胞に侵入する必要がある。対象の細胞は、細胞内部において異なる細胞内pHを有し得る。罹患組織の一部の細胞は異常な細胞内pHを有する。例えば、一部の腫瘍細胞は約7.12~7.65のアルカリ性の細胞内pHを有する傾向があり、一方、正常組織の細胞は6.99~7.20の範囲の中性の細胞内pHを有する。Cardone et al.,“The role of disturbed pH dynamics and the Na(+)/H(+)exchanger in metastasis,”Nat.Rev.Cancer,vol.5,pages 786-795,2005を参照のこと。慢性低酸素では、罹患組織の細胞は約7.2~7.5の細胞内pHを有し、これもまた正常組織の細胞内pHより高い(Rios et al.,“Chronic hypoxia elevates intracellular pH and activates Na+/H+ exchange in pulmonary arterial smooth muscle cells,”American Journal of Physiology-Lung Cellular and Molecular Physiology,vol.289,pages L867-L874,2005)。さらに、虚血細胞では、細胞内pHは典型的に6.55~6.65の範囲であり、これは正常組織の細胞内pHより低い(Haqberg,“Intracellular pH during ischemia in skeletal muscle:relationship to membrane potential,extracellular pH,tissue lactic acid and ATP,”Pflugers Arch.,vol.404,pages 342-347,1985)。罹患組織における異常な細胞内pHのさらなる例が、Han et al.,“Fluorescent Indicators for Intracellular pH,”Chem Rev.,vol.110,pages 2709-2728,2010において考察されている。
本発明は、野生型Casタンパク質から条件的活性型Casタンパク質を作製する方法を提供し、ここで条件的活性型Casタンパク質は、(1)正常細胞内部の正常生理条件下で野生型Casタンパク質の活性と比べて低下した酵素活性、及び(2)上記で考察した罹患細胞の1つなどの標的細胞内部の異常条件下で野生型Casタンパク質の活性と比べて増加した酵素活性、のうちの少なくとも一方を有する。一部の実施形態において、正常生理条件はほぼ中性の細胞内pHであり、異常条件は、中性より高いか、又はそれより低い異なる細胞内pHである。ある実施形態では、異常条件は、7.2~7.65の細胞内pH又は6.5~6.8の細胞内(intracellular)pHである。
一部の実施形態において、条件的活性型Casタンパク質は、本発明の条件的活性型ウイルス粒子を使用して標的細胞に送達し得る。条件的活性型ウイルス粒子は、条件的活性型Casタンパク質と、Casタンパク質がゲノムDNAを編集することになる位置にCasタンパク質を導くための少なくとも1つのガイドRNAとを含む。
多重特異性抗体は、多重特異性抗体が結合し得る標的(抗原)の全て又はほとんどを含有する優先的標的組織において高い選択性を有する。例えば、二重特異性抗体は、抗原のうち一方のみを発現し得る非標的細胞と比較して、その二重特異性抗体によって認識される抗原の両方を発現する標的細胞により高い選好性を示すことにより、標的細胞に対する選択性を提供する。従って、この系のダイナミズムに起因して、平衡状態ではより多くの二重特異性抗体が非標的細胞と比べて標的細胞に結合する。
本明細書において操作される多重特異性抗体、又はそれらの抗原認識フラグメントは、本発明のキメラ抗原受容体のASTRとして使用し得る。
細胞傷害性細胞の操作
スクリーニング工程によって条件的活性型ASTRが同定されると、個々のドメインをコードするポリヌクレオチド配列をライゲートして単一のポリヌクレオチド配列(CAR遺伝子、これは条件的活性型CARをコードする)を形成することにより、キメラ抗原受容体をアセンブルし得る。個々のドメインには、条件的活性型ASTR、TM、及びISDが含まれる。一部の実施形態において、ESD及びCSDを含めた他のドメインもまたCARに導入され得る(図1)。条件的活性型CARが二重特異性CARである場合、CAR遺伝子は、例えば、N末端からC末端の向きに以下の構成:N末端シグナル配列-ASTR1-リンカー-ASTR2-細胞外スペーサードメイン-膜貫通ドメイン-共刺激ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメインであってもよい。一実施形態において、かかるCAR遺伝子は2つ以上の共刺激ドメインを含み得る。
或いは、条件的活性型CARをコードするポリヌクレオチド配列は、N末端からC末端の向きに以下の構成:N末端シグナル配列-ASTR1-リンカー-ASTR2-膜貫通ドメイン-共刺激ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメインであってもよい。ある実施形態では、かかるCARは2つ以上の共刺激ドメインを含み得る。CARが3つ以上のASTRを含む場合、CARをコードするポリヌクレオチド配列は、N末端からC末端の向きに以下の構成:N末端シグナル配列-ASTR1-リンカー-ASTR2-リンカー-(抗原特異的標的領域)n-膜貫通ドメイン-共刺激ドメイン-細胞内シグナル伝達ドメインであってもよい。かかるCARは細胞外スペーサードメインをさらに含み得る。各ASTRはリンカーによって隔てられていてもよい。ある実施形態では、かかるCARは2つ以上の共刺激ドメインを含み得る。
条件的活性型CARは発現ベクターによって細胞傷害性細胞に導入される。本発明の条件的活性型CARをコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターもまた、本明細書に提供される。好適な発現ベクターとしては、レンチウイルスベクター、γレトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、アデノウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、ネイキッドDNA、例えば限定はされないが、トランスポゾン媒介性ベクター、例えばSleeping Beauty、Piggybak、及びインテグラーゼ、例えばPhi31が挙げられる。一部の他の好適な発現ベクターとしては、単純ヘルペスウイルス(HSV)及びレトロウイルス発現ベクターが挙げられる。
アデノウイルス発現ベクターはアデノウイルスをベースとし、これはゲノムDNAへの組み込み能力が低く、しかし宿主細胞のトランスフェクション効率は高い。アデノウイルス発現ベクターは、(a)発現ベクターのパッケージングの補助、及び(b)宿主細胞におけるCAR遺伝子の最終的な発現に十分なアデノウイルス配列を含む。アデノウイルスゲノムは36kbの線状二本鎖DNAであり、ここでは本発明の発現ベクターを作製するため外来性DNA配列(CAR遺伝子など)が挿入されて、アデノウイルスDNAの大きい断片を置換し得る(Grunhaus and Horwitz,“Adenoviruses as cloning vectors,”Seminars Virol.,vol.3,pages 237-252,1992)。
別の発現ベクターはアデノ随伴ウイルスをベースとし、これはアデノウイルスカップリングシステムを利用するものである。このAAV発現ベクターは宿主ゲノムへの組込み頻度が高い。これは非分裂細胞さえ感染させることができ、従って例えば組織培養又はインビボでの哺乳類細胞への遺伝子送達に有用となる。AAVベクターは、感染力に関して広い宿主域を有する。AAVベクターの作成及び使用に関する詳細は、米国特許第5,139,941号明細書及び同第4,797,368号明細書(各々、参照により本明細書に援用される)に記載される。
レトロウイルス発現ベクターは、宿主ゲノムに組み込まれ、多量の外来性遺伝物質を送達し、広域の種及び細胞型を感染させ、及び特定の細胞株にパッケージングされる能力を有する。レトロウイルスベクターは、核酸(例えば、CARをコードするもの)をウイルスゲノムの特定の位置に挿入して複製欠損のウイルスを作製することによって構築される。レトロウイルスベクターは幅広い種類の細胞型を感染させることができるが、CAR遺伝子の組込み及び安定発現には宿主細胞の分裂が必要である。
レンチウイルスベクターはレンチウイルスに由来し、これは、一般的なレトロウイルス遺伝子gag、pol、及びenvに加えて、調節又は構造上の機能を有する他の遺伝子を含有する複合的レトロウイルスである(米国特許第6,013,516号明細書及び同第5,994,136号明細書)。レンチウイルスのいくつかの例としては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1、HIV-2)及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられる。レンチウイルスベクターはHIV病原性遺伝子の多重弱毒化によって作成されており、例えば、遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefを欠失させることで、ベクターが生物学的に安全にされている。レンチウイルスベクターは非分裂細胞を感染させる能力を有し、インビボ及びエキソビボの両方でのCAR遺伝子の遺伝子導入及び発現に使用することができる(米国特許第5,994,136号明細書、参照により本明細書に援用される)。
条件的活性型CAR遺伝子を含む発現ベクターは、当業者に公知の任意の手段によって宿主細胞に導入することができる。発現ベクターは、必要であれば、トランスフェクション用のウイルス配列を含み得る。或いは、発現ベクターは、融合、電気穿孔、微粒子銃、トランスフェクション、リポフェクションなどによって導入されてもよい。宿主細胞は発現ベクターの導入前に培養下で成長及び拡大させてもよく、続いてベクターの導入及び組込みに適切な処理が行われ得る。次に宿主細胞を拡大し、ベクターに存在するマーカーによってスクリーニングする。使用し得る様々なマーカーには、hprt、ネオマイシン耐性、チミジンキナーゼ、ハイグロマイシン耐性等が含まれる。本明細書で使用されるとき、用語「細胞」、「細胞株」、及び「細胞培養物」は同義的に用いられ得る。一部の実施形態において、宿主細胞は、T細胞、NK細胞及びNKT細胞である。
別の態様において、本発明はまた、本発明の条件的活性型CARを含んでそれを安定に発現する遺伝子操作された細胞傷害性細胞も提供する。一実施形態において、遺伝子操作細胞としては、治療的に関連性のある子孫を生じる能力を有するTリンパ球(T細胞)、ナイーブT細胞(TN)、メモリーT細胞(例えば、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリー細胞(TEM))、ナチュラルキラー細胞、及びマクロファージが挙げられる。別の実施形態において、遺伝子操作細胞は自己細胞である。好適なT細胞の例としては、CD4+/CD8-、CD4-/CD8+、CD4-/CD8-又はCD4+/CD8+T細胞が挙げられる。T細胞は、CD4+/CD8-及びCD4-/CD8+細胞の混合集団又は単一のクローンの集団であってもよい。本発明のCD4+T細胞はまた、標的抗原を発現する細胞(例えばCD20+及び/又はCD19+腫瘍細胞)とインビトロで共培養すると、IL-2、IFN-γ、TNF-α及び他のT細胞エフェクターサイトカインも産生し得る。本発明のCD8+T細胞は、標的抗原を発現する細胞を溶解させ得る。一部の実施形態において、T細胞は、CD45RA+ CD62L+ナイーブ細胞、CD45RO CD62I7セントラルメモリー細胞、CD62L+エフェクターメモリー細胞又はこれらの組み合わせのうちの任意の1つ又はそれ以上であり得る(Berger et al.,“Adoptive transfer of virus-specific and tumor-specific T cell immunity,”Curr.Opin.Immunol.,vol.21,pages 224-232,2009)。
遺伝子操作された細胞傷害性細胞は、本発明のCAR遺伝子を含む発現ベクターを細胞に安定にトランスフェクトすることによって作製し得る。発現ベクターを使用して細胞を遺伝子操作するさらなる方法には、化学的形質転換方法(例えば、リン酸カルシウム、デンドリマー、リポソーム及び/又はカチオン性ポリマーの使用)、非化学的形質転換方法(例えば、電気穿孔、光学的形質転換、遺伝子エレクトロトランスファー及び/又は流体力学的デリバリー)及び/又は粒子ベースの方法(例えば、インペールフェクション(impalefection)、遺伝子銃の使用及び/又はマグネトフェクション)が含まれる。再配列されていない組み込まれた単一のベクターの存在を示し且つ条件的活性型CARを発現するトランスフェクト細胞が、エキソビボで拡大され得る。
発現ベクターを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子ボンバードメント、マイクロインジェクション、電気穿孔などが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞の作製方法は当該技術分野において周知である。例えば、Sambrook et al.(2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照のこと。発現ベクターを宿主細胞に導入するための化学的方法としては、コロイド分散系、例えば、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び脂質ベースのシステム、例えば、水中油型エマルション、ミセル、混合ミセル、及びリポソームが挙げられる。
望ましい条件的活性型CARを発現させるための細胞傷害性細胞の遺伝子修飾前か、それとも遺伝子修飾後かに関わらず、例えば、米国特許第6,352,694号明細書;同第6,534,055号明細書;同第6,905,680号明細書;同第6,692,964号明細書;同第5,858,358号明細書;同第6,887,466号明細書;同第6,905,681号明細書;同第7,144,575号明細書;同第7,067,318号明細書;同第7,172,869号明細書;同第7,232,566号明細書;同第7,175,843号明細書;同第5,883,223号明細書;同第6,905,874号明細書;同第6,797,514号明細書;同第6,867,041号明細書;及び米国特許出願公開第20060121005号明細書に記載されるような方法を用いて細胞を活性化し、数を拡大することができる。例えば、本発明のT細胞は、CD3/TCR複合体関連シグナルを刺激する薬剤及びT細胞の表面上の共刺激分子を刺激するリガンドが結合している表面に接触させることにより拡大し得る。詳細には、T細胞集団は、表面に固定化された抗CD3抗体、又はその抗原結合フラグメント、又は抗CD2抗体に接触させることによるか、又はカルシウムイオノフォアと共にプロテインキナーゼCアクチベーター(例えば、ブリオスタチン)に接触させることにより刺激し得る。T細胞の表面上のアクセサリー分子の共刺激には、そのアクセサリー分子と結合するリガンドが用いられる。例えば、T細胞は、T細胞の増殖を刺激するのに適切な条件下で抗CD3抗体及び抗CD28抗体に接触させることができる。CD4+T細胞又はCD8+T細胞のいずれの増殖を刺激するにも、抗CD3抗体及び抗CD28抗体。抗CD28抗体の例としては、9.3、B-T3、XR-CD28(Diaclone、Besancon,France)が挙げられ、これらは、当該技術分野において一般に知られている他の方法と同様に、本発明において使用することができる(Berg et al.,Transplant Proc.30(8):3975-3977,1998;Haanen et al.,J.Exp.Med.190(9):13191328,1999;Garland et al.,J.Immunol.Meth.227(1-2):53-63,1999)。
様々な実施形態において、本発明は、薬学的に受容可能な賦形剤と本発明の条件的活性型CARの治療有効量とを含む医薬組成物を提供する。この組成物中の条件的活性型CARは、CARをコードするポリヌクレオチド、CARを含むタンパク質又はCARタンパク質を発現する遺伝子修飾細胞のうちの任意の1つ又はそれ以上であり得る。CARタンパク質は薬学的に受容可能な塩の形態であってもよい。薬学的に受容可能な塩とは、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウムなどの塩、及びプロカイン、ジベンジルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、メチルグルカミン、タウリンなどのアミン塩、並びに塩酸塩などの酸付加塩、及び塩基性アミノ酸などを含めた、製薬工業において治療的タンパク質の塩として使用し得る塩を指す。
薬学的に受容可能な賦形剤としては、概して安全で非毒性の望ましい医薬組成物の調製において有用な任意の賦形剤を挙げることができ、動物への使用並びにヒト医薬品としての使用が許容される賦形剤が挙げられる。かかる賦形剤は、固体、液体、半固体、又はエアロゾル組成物の場合には気体であり得る。ある種の賦形剤は薬学的に受容可能な担体を含み、これは組成物を増強し若しくは安定化させ、又は組成物の調製を促進するために添加され得るものである。液体担体としては、シロップ、ピーナッツ油、オリーブ油、グリセリン、生理食塩水、アルコール及び水が挙げられる。固体担体としては、デンプン、ラクトース、硫酸カルシウム、二水和物、白土、ステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸、タルク、ペクチン、アカシア、寒天及びゼラチンが挙げられる。担体はまた、徐放材料、例えばモノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリルを単独で、又はワックスと共に含み得る。
薬学的に受容可能な担体は、一部には、投与される詳細な組成物によって決まるとともに、組成物の投与に用いられる詳細な方法によっても決まる。従って、本発明の医薬組成物の好適な製剤は多種多様である。例えば緩衝生理食塩水など、種々の水性担体が用いられ得る。これらの溶液は無菌であり、概して望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌され得る。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなど、生理条件を近似するため適宜薬学的に受容可能な補助物質を含有し得る。これらの製剤中のCARの濃度は幅広く異なり得るとともに、主に液量、粘度、及び体重に基づき、選択された詳細な投与方法及び患者の必要性に従い選択されることになる。
様々な実施形態において、本発明に係る医薬組成物は、任意の好適な投与経路による送達用に製剤化され得る。「投与経路」は、限定はされないが、エアロゾル、経鼻、経口、静脈内、筋肉内、腹腔内、吸入、経粘膜、経皮、非経口、植込み型ポンプ、持続注入、局所適用、カプセル及び/又は注射を含めた、当該技術分野において公知の任意の投与経路を指し得る。
本発明に係る医薬組成物は、経口投与用にカプセル化され、錠剤化され、又はエマルション若しくはシロップ中に調製されてもよい。医薬組成物は、錠剤形態については粉砕、混合、顆粒化、及び圧縮(必要な場合);又は硬ゼラチンカプセル形態については粉砕、混合及び充填が関わる従来の製薬技術に従い作製される。液体担体が用いられる場合、製剤は、シロップ、エリキシル剤、エマルション又は水性若しくは非水性懸濁液の形態であり得る。かかる液体製剤は直接経口投与されてもよく、又は軟ゼラチンカプセルに充填されてもよい。
医薬組成物は、(a)液状溶液、例えば、水、生理食塩水又はPEG 400などの希釈剤中に懸濁された有効量のパッケージングされた核酸;(b)各々が液体、固体、顆粒又はゼラチンとしての所定量の活性成分を含有するカプセル、サシェ又は錠剤;(c)適切な液体中の懸濁液;及び(d)好適なエマルションとして製剤化され得る。特に、好適な剤形としては、限定はされないが、錠剤、丸薬、散剤、糖衣剤、カプセル、液剤、ロゼンジ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液等が挙げられる。
固形製剤は、例えば、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールなどの糖類;トウモロコシ、コムギ、コメ、ジャガイモ、又は他の植物由来のデンプン;メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(hydroxypropylmethyl cellulose)、及びナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;並びにアラビア及びトラガカントを含めたゴム;及びタンパク質、例えばゼラチン及びコラーゲンを含めた、炭水化物又はタンパク質充填剤などの好適な固体賦形剤を含む。架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸、又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩など、崩壊剤又は可溶化剤が添加されてもよい。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、リン酸カルシウム、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、トラガカント、微結晶性セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム(croscarmellose sodium)、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色料、充填剤、結合剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、色素、崩壊剤、及び薬学的に受容可能な担体のうちの1つ以上を含み得る。
液体懸濁剤は、水性懸濁剤の製造に適する賦形剤との混合物中に、条件的活性型CARを有する。そのような賦形剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム及びアラビアガムのような懸濁化剤、及び天然に存在するホスファチド(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリエチレンソルビトールモノオレート)、又はエチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導された部分エステルとの縮合生成物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)のような核酸剤又は湿潤剤を含むことが出来る。液体懸濁剤はまた、エチル又はn-プロピル-p-ヒドロキシベンゾエートなどの1つ又は複数の保存剤、1つ又は複数の着色剤、1つ又は複数の香味料、並びにスクロース、アスパルテーム又はサッカリンなどの1つ又は複数の甘味料を含有することが出来る。製剤は浸透圧について調整されてもよい。
トローチ剤形は、活性成分を通常、スクロース及びアカシア又はトラガカントといった香味料中に有し、また、香錠剤は、ゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア乳剤、ゲル剤などの、不活性基材中に活性成分を有し、これらの活性成分に加え当該技術分野で既知の担体を有することが出来る。条件的活性型CARは、経口投与されるとき、消化から保護されていなければならないと理解されている。これは、一般的には、条件的CARを、酸性的及び酵素的な加水分解への耐性を付与する組成物と複合体を作ることによって、或いは条件的活性型CARを、リポソームなどの適切な耐性を持つ担体中に包装することによって、達成される。タンパク質を消化から保護する方法は、当該技術分野において公知である。医薬組成物は、例えば、リポソーム中に、又は活性成分を徐放出来るようにする製剤中に、封入することが出来る。
本医薬組成物は、吸入による投与のため、エアロゾル製剤として製剤化されてもよい(例えばそれらは「噴霧」することができる)。エアロゾル製剤は、加圧された許容可能な噴射剤、例えば、ジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素などの中に置かれ得る。直腸投与に好適な製剤には、例えば、坐剤基剤と共にパッケージング核酸からなる坐薬が含まれる。好適な坐剤基剤としては、天然若しくは合成トリグリセリド又はパラフィン炭化水素が挙げられ、加えて、例えば、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、及びパラフィン炭化水素を含む基剤とパッケージング核酸との組み合わせからなるゼラチン直腸カプセルを使用することも可能である。
本医薬組成物は、例えば、関節内(intra-articular)(関節内(in the joints))、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、及び皮下経路によるなど、非経口投与用に製剤化されてもよく、製剤を意図されるレシピエントの血液と等張にする抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び溶質を含有し得る水性及び非水性の等張性滅菌注射溶液、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤、及び保存剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含んでもよく、この発明の実施において、組成物は、例えば、静脈内注入によって、経口的に、局所的に、腹腔内に、膀胱内に又はくも膜下腔内に投与することができる。一態様において、非経口投与方法は、CARタンパク質又は遺伝子操作された細胞傷害性細胞を含む組成物に好ましい投与方法である。組成物は、好都合には単位剤形で投与されてもよく、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Co.Easton Pa.,18th Ed.,1990に記載されるとおりの、製薬技術分野で周知の方法のいずれかによって調製されてもよい。静脈内投与用の製剤は、滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール類、植物由来の油、水素化ナフタレンなど、薬学的に受容可能な担体を含有し得る。
本医薬組成物は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内(intraarticular)、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内(intracerebellar)、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、腟、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも1つの方法によって投与され得る。本方法は、任意選択で、条件的活性型CARの前、それと同時、又はその後に、検出可能標識又はレポーター、TNFアンタゴニスト、抗リウマチ薬、筋弛緩薬、麻薬、非ステロイド系抗炎症薬(NSAK))、鎮痛薬、麻酔薬、鎮静薬、局所麻酔薬、神経筋遮断薬、抗菌薬、抗乾癬薬、コルチコステロイド(corticosteroid)、アナボリックステロイド、エリスロポエチン、免疫化、免疫グロブリン、免疫抑制薬、成長ホルモン、ホルモン補充薬、放射性医薬品、抗うつ薬、抗精神病薬、刺激薬、喘息薬、βアゴニスト、吸入ステロイド薬、エピネフリン又はその類似体、細胞傷害性薬剤又は他の抗癌剤、メトトレキサートなどの代謝拮抗薬、又は抗増殖剤のうちの少なくとも1つから選択される少なくとも1つの化合物又はタンパク質の有効量を含む少なくとも1つの組成物を投与する工程をさらに含むことができる。
本発明の遺伝子操作された細胞傷害性細胞又は医薬組成物で治療される癌の種類としては、癌腫、芽細胞腫、及び肉腫、及び特定の白血病又はリンパ性悪性腫瘍、良性及び悪性腫瘍、及び悪性疾患、例えば、肉腫、癌腫、及び黒色腫が挙げられる。癌は非固形腫瘍(血液腫瘍など)又は固形腫瘍であってもよい。成人腫瘍/癌及び小児腫瘍/癌もまた含まれる。
血液癌は、血液又は骨髄の癌である。血液癌(又は血行性癌)の例としては、白血病、例えば、急性白血病(急性リンパ性白血病、急性骨髄球性白血病、急性骨髄性白血病並びに骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病など)、慢性白血病(慢性骨髄球性(顆粒球性)白血病、慢性骨髄性白血病、及び慢性リンパ性白血病など)、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(無痛性型及び高悪性度型)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病及び骨髄形成異常が挙げられる。
固形腫瘍は、通常は嚢胞又は液体領域を含まない異常な組織塊である。固形腫瘍は良性又は悪性であり得る。固形腫瘍の異なるタイプは、それを形成する細胞のタイプにちなんで命名される(肉腫、癌腫、及びリンパ腫など)。肉腫及び癌腫など、固形腫瘍の例としては、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性腫瘍、膵癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、黒色腫、及びCNS腫瘍(神経膠腫(脳幹神経膠腫及び混合性神経膠腫など)、膠芽腫(多形性膠芽腫としても知られる)、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(meningioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫及び脳転移など)が挙げられる。
本発明はまた、少なくとも1つのCARタンパク質、CARをコードするポリヌクレオチド配列、又はCARを発現する宿主細胞を含む医療器具も提供し、この器具は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内(intraarticular)、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内(intracerebellar)、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、腟、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、又は経皮から選択される少なくとも1つの方法によって少なくとも1つの条件的活性型CARを投与するのに好適である。
さらなる態様において、本発明は、第一容器内にある凍結乾燥形態の少なくとも1つのCARタンパク質、CARをコードするポリヌクレオチド配列、又はCARを発現する宿主細胞と、滅菌水、滅菌緩衝用水、又は水性希釈剤中のフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、亜硝酸フェニル水銀、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム、アルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、若しくはこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つの保存剤を含む任意選択の第二容器とを含むキットを提供する。一態様において、このキットでは、第一容器内の条件的活性型CAR又は特定の部分若しくは変異体の濃縮物が第二容器の内容物で約0.1mg/ml~約500mg/mlの濃度に再構成され、別の態様において、第二容器は等張剤をさらに含む。別の態様において、第二容器は生理学的に許容可能な緩衝液をさらに含む。一態様において、本開示は、少なくとも1つの野生型タンパク質が媒介する病態を治療する方法であって、キットに提供され、且つ投与前に再構成される製剤を、それを必要としている患者に投与する工程を含む方法を提供する。
また、溶液又は凍結乾燥形態の少なくとも1つのCARタンパク質、CARをコードするポリヌクレオチド配列、又はCARを発現する宿主細胞を含む容器と包装材料とを含むヒト医薬用途又は診断用途の製品も提供される。この製品は、任意選択で、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内(intrarticular)、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、洞内、腔内、小脳内(intracelebellar)、脳室内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎臓内、網膜内、脊髄内、滑液嚢内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、腟、直腸、頬側、舌下、鼻腔内、又は経皮送達装置又はシステムの構成要素として容器を有することを含み得る。
一部の実施形態において、本発明は、対象から細胞傷害性細胞を回収する工程と、本発明のCAR遺伝子を細胞傷害性細胞に導入することによって細胞傷害性細胞を遺伝子操作する工程と、遺伝子操作された細胞傷害性細胞を対象に投与する工程とを含む方法を提供する。一部の実施形態において、細胞傷害性細胞は、T細胞、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、エフェクターT細胞、ナチュラルキラー細胞、及びマクロファージから選択される。一実施形態において、細胞傷害性細胞はT細胞である。
一実施形態において、T細胞は対象から得られる。T細胞は、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、胸腺組織、感染部位の組織、腹水、胸水、脾臓組織、及び腫瘍を含めたいくつもの供給源から得ることができる。本発明の特定の実施形態では、当該技術分野で利用可能なあらゆるT細胞株を使用し得る。本発明の特定の実施形態では、T細胞は、対象から採取された血液から、Ficoll(商標)分離など、当業者に公知のあらゆる技法を用いて得ることができる。
好ましい一実施形態では、個体の循環血液からの細胞はアフェレーシスによって得られる。アフェレーシス産物は典型的には、リンパ球、例えばT細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、及び血小板を含有する。一実施形態において、アフェレーシスによって収集された細胞は、洗浄して血漿画分を除去し、続く処理工程のため細胞を適切な緩衝液又は培地中に入れることができる。本発明の一実施形態において、細胞はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。代替的実施形態において、洗浄溶液はカルシウムを含まず、且つマグネシウムを含まなくてもよく、又は全てではないにしろ多くの二価カチオンを含まなくてもよい。この場合もまた、意外にも、カルシウムの非存在下における初期活性化工程が活性化の増大につながる。当業者であれば容易に理解するとおり、洗浄工程は、半自動「フロースルー」遠心機(例えば、Cobe 2991細胞処理機、Baxter CytoMate、又はHaemonetics Cell Saver 5)を製造者の指示に従い使用するなど、当業者に公知の方法によって達成し得る。洗浄後、細胞は、種々の生体適合性緩衝液、例えば、Ca2+不含、Mg2+不含PBS、PlasmaLyte A、又は緩衝液含有若しくは不含の別の生理食塩水中に再懸濁し得る。或いは、アフェレーシス試料の望ましくない成分を除去し、細胞を培養培地中に直接再懸濁してもよい。
別の実施形態において、T細胞は、赤血球を溶解して、例えばPERCOLL(商標)勾配で遠心するか、又は向流遠心エルトリエーションによって単球を枯渇させることにより、末梢血から単離される。CD3+、CD28+、CD4+、CD8+、CD45RA+、及びCD45RO+T細胞などの特定の一部のT細胞集団をポジティブ又はネガティブ選択法によってさらに単離することができる。例えば、ネガティブ選択によるT細胞集団のエンリッチメントは、ネガティブ選択される細胞にユニークな表面マーカーに対する抗体と組み合わせて達成することができる。一つの方法は、ネガティブ選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーに対するモノクローナル抗体のカクテルを使用するネガティブ磁気免疫粘着又はフローサイトメトリーによる細胞分取及び/又は選択である。ネガティブ選択によってCD4+細胞をエンリッチするには、モノクローナル抗体カクテルは典型的には、CD14、CD20、CD11b、CD16、HLA-DR、及びCD8に対する抗体を含む。特定の実施形態では、典型的にCD4+、CD25+、CD62Lhi、GITR+、及びFoxP3+を発現する調節性T細胞をエンリッチするか又はポジティブ選択することが望ましい場合もある。
例えば、一実施形態において、T細胞は、抗CD3/抗CD28(すなわち、3×28)コンジュゲートビーズ、例えばDYNABEADS(登録商標)M-450 CD3/CD28 Tと共に、所望のT細胞のポジティブ選択に十分な時間にわたってインキュベートすることにより単離される。一実施形態において、この時間は約30分である。さらなる実施形態において、この時間は30分~36時間又はそれ以上、及びそれらの間にある全ての整数値の範囲である。さらなる実施形態において、この時間は少なくとも1、2、3、4、5、又は6時間である。さらに別の好ましい実施形態において、この時間は10~24時間である。好ましい一実施形態において、インキュベーション時間は24時間である。白血病患者からのT細胞の単離には、24時間など、より長いインキュベーション時間を用いると、細胞収率が高まり得る。より長いインキュベーション時間は、腫瘍組織又は免疫不全者からの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の単離など、他の細胞型と比較したときT細胞が少ない任意の状況でT細胞を単離するために用い得る。さらに、より長いインキュベーション時間を用いると、CD8+T細胞の捕捉効率が高まり得る。従って、単純に、T細胞をCD3/CD28ビーズに結合させる時間を短縮又は延長することにより、及び/又はビーズとT細胞の比を増加又は減少させることにより(本明細書にさらに記載されるとおり)、培養開始時又はプロセス中の他の時点で一部のT細胞集団の優先的な正又は負の選択を行うことができる。加えて、ビーズ又は他の表面上の抗CD3及び/又は抗CD28抗体の比率を増加又は減少させることにより、培養開始時又はプロセス中の他の時点で一部のT細胞集団の優先的な正又は負の選択を行うことができる。当業者であれば、本発明の文脈で複数の選択ラウンドも用い得ることを認識するであろう。特定の実施形態において、選択手順を実施し、活性化及び拡大プロセスに「選択されなかった」細胞を使用することが望ましい場合もある。「選択されなかった」細胞もまた、さらなる選択ラウンドに供することができる。
得られた細胞傷害性細胞は、次に本明細書に記載されるとおり遺伝子操作される。CARをコードするポリヌクレオチド(典型的には発現ベクターに位置する)は、細胞傷害性細胞がCARを発現、好ましくは安定に発現するように細胞傷害性細胞に導入される。CARをコードするポリヌクレオチドは、典型的には細胞傷害性細胞宿主ゲノムに組み込まれる。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドの導入によって組込みが生じる必要はなく、むしろ導入されたポリヌクレオチドが一過性に維持されるだけで十分であり得る。このようにして短期的な効果を得ることができ、ここで細胞傷害性細胞は宿主に導入され、次に所定の時間後、例えば細胞が特定の治療部位に移動できた後に作動し得る。
細胞傷害性細胞及び治療される疾患の性質に応じて、遺伝子操作された細胞傷害性細胞は多種多様な方法で対象、例えば哺乳動物に導入され得る。遺伝子操作された細胞傷害性細胞は腫瘍の部位に導入され得る。一実施形態において、遺伝子操作された細胞傷害性細胞は癌まで進み、又は癌まで進むように修飾される。用いられる遺伝子操作された細胞傷害性細胞の数は、状況、導入の目的、細胞の寿命、用いるプロトコルなど、いくつもの要因に依存することになる。例えば、投与回数、細胞の増殖能力、及び組換え構築物の安定性。遺伝子操作された細胞傷害性細胞は、概して目的の部位又はその近傍に注入される分散液として適用され得る。細胞は生理学的に許容可能な媒体中にあり得る。
治療方法は、CARに対する細胞応答、細胞傷害性細胞によるCARの発現効率、及び適宜、発現したCARの分泌レベル、活性、対象の特定の必要性(これらは時間及び状況に応じて変わり得る)、遺伝子操作された細胞傷害性細胞の損失に起因する細胞活性の損失速度又は個々の細胞の発現活性など、多くの変動要因の影響を受けることが理解されなければならない。従って、各個別の患者について、全体としての集団に投与し得る普遍的な細胞があったとしても、その者に適切な投薬量について各患者がモニタされることが予想され、そのような患者をモニタする業務は当該技術分野においてルーチンである。
以下の例は本開示の方法を例示するものであり、限定するものではない。当業者には明らかな、現場で通常直面する種々の条件及びパラメータの他の好適な変更及び適合は、本開示の範囲内である。
実施例1:温度変異体についてのマルチウォールアッセイ(例えば、96ウェルアッセイ)についての概要
マルチウォールプレートの各ウェルに蛍光基質を加え、野生型の温度と、新規の型で低い反応温度の両方(例えば、上述の通り37℃又は25℃のいずれか)に適切な時間おく。蛍光プレートリーダーによって、適切な励起及び発光スペクトル(例えば、320nmの励起スペクトル、405nmの発光スペクトル)において、蛍光を測定することによって、蛍光を検出する。相対蛍光ユニット(Relative fluorescence unit:RFU)を決定する。野生型分子からの上清及びプラスミド/ベクターで形質転換された細胞を、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールとして用いる。各サンプル、反応温度、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールにおいて、複製反応を行う。
低い温度(例えば、25℃で活性化する変異体)で活性化し、野生型の温度(例えば、37℃で、10%、20%、30%、40%、又はそれ以上活性が低下する)で活性が低下し、すなわち活性の比が1.1以上か又はより大きい値以上(例えば25℃又は37℃における活性の比(25℃/37℃)が1.1以上か又はより大きい値以上)である、変異体を、推定温度感受性の一次ヒットとしてみなすことが出来る。この温度感受性一次ヒットを、次いで、同じアッセイを用いてスクリーニングし、全ての一次ヒットを確かめることが出来る。
実施例2:温度変異体の確認試験のための異なるアッセイ形式(例えば、14mLアッセイ)についての概要
温度感受性一次ヒットとして同定された変異体を、14mLの培養チューブで発現させ、それらの酵素活性を野生型の温度(例えば、37℃)とより低い温度(例えば、25℃)とにおいて測定する。タンパク質を発現させ、上述の通りにマルチウォール形式で用いるために精製するが、マルチウォール(96ウェルプレート)でない異なる形式(14mlチューブ)における発現も別に行う。
各変異体の上清を、マルチウォールプレート、例えば96ウェルのマイクロプレートに移動する。各チューブに蛍光基質を加え、指定の温度(野生型の温度、より低い温度)に適切な時間おく。野生型分子をポジティブコントロールとして使用し、ベクターのみにより形質転換した細胞からの上清をネガティブコントロールとして使用する。蛍光プレートリーダーによって、適切な発光スペクトル(例えば、320nmの励起スペクトル、405nmの発光スペクトル)において、蛍光を測定することによって、蛍光を検出する。相対蛍光ユニット(Relative fluorescence unit:RFU)を決定する。各サンプル、反応温度、ポジティブコントロール及びネガティブコントロールにおいて、複製反応を行う。
低い温度(例えば、25℃)で活性化するが、野生型の温度(例えば、37℃)で、少なくとも30%かそれ以上の活性の低下を見せ、すなわち野生型の温度(例えば、37℃)での活性に対する、低い温度(例えば25℃)での活性の比が1.1以上である変異体を、温度感受性ヒットとして同定する。
低い温度(例えば、25℃)における変異体の活性を、野生型の温度(例えば、37℃)における野生型分子の活性と比較する。もし、低い温度(例えば、25℃)において野生型分子よりも活性が高いことが、残存活性が1より大きく、好ましくは2以上であることで示される場合、且つ、変異体が野生型の温度(37℃)において野生型分子と比べたときに、全体的な活性の低下を示す場合、変異体の表現型が温度感受性変異体であると確認出来る。
実施例3:発見したヒットのさらなる発達についての概要
必要な場合、新規のコンビナトリアル変異体ライブラリーを、上述において同定した変異体ヒットの全て又は選択したものから作成する。この新規のライブラリーを、選択した変異体それぞれについて、可能な全てのアミノ酸変異体を含むようにデザインし、新しいヒットについての記載の通り再度スクリーニングをすることが出来る。
実施例4:温度低下後の酵素活性の可逆性についての概要
温度感受性の発達させた変異体に対してさらにアッセイを行い、低い温度(例えば、25℃)における酵素活性が可逆的か非可逆的か、当該変異体を高い温度に曝し、続けて低い温度(例えば、25℃)に戻すことによって、確認することが出来る。この温度感受性変異体を、所望の形式、例えば、概述のような14mL培養チューブにおいて発現させる。この変異体を、野生型の温度(例えば、37℃)及びその他の温度を含んだ幾つかの条件下においてテストし、続いて、必要な低い温度(例えば、25℃)に再度曝す。低い温度において活性のある変異体であって、より高い温度又は野生型の温度まで上昇させたとき、活性の低下を示し(つまり、低い温度における活性の高い温度に対する活性の比が、1、1.5、2、又はそれより高い値以上である)、再度低い温度まで下げられたときにベースラインの活性を示す、変異体を、「可逆性ヒット」と判定する。低い温度において活性のある変異体であって、より高い温度又は野生型の温度まで上昇させたとき、活性の低下を示し(つまり、低い温度における活性の高い温度に対する活性の比が、1、1.5、2、又はそれより高い値以上である)、再度低い温度まで下げられたときに少なくとも低下した活性と同じ程度の活性を示す、変異体を、「非可逆性ヒット」と判定する。
実施例5:条件的活性型のアンジオスタチン変異体のスクリーニングについての材料及び方法。条件的活性型のアンジオスタチン変異体のスクリーニングについての材料及び方法は、Chi and Pizzo,"Angiosatin is directly cytotoxic to tumor cells at low extracellular pH:a mechanism dependent on cell surface-associated ATP synthase",Cancer Res.2006;66(2):875-882から適用することが可能であり、この文献は参照することによって本明細書に援用される。
材料
ヒトのプラスミノーゲン由来の、野生型アンジオスタチンのクリングル1~3は、Calbiochem(Darmstadt,Germany)から入手可能であり、無菌PBS中で再構成することが出来る。過去に記載されているように、ATP合成酵素の触媒的βサブユニットに対するポリクローナル抗体は作製可能であり、ウシのATP合成酵素F1サブユニットは精製可能である((Moser et al.,"Angiostatin binds ATP synthase on the surface of human endothelial cells",Proc Natl Acad Sci USA 1999;96:2811-6;Moser et al."Endothelial cell surface Fl-FO ATP synthase is active in ATP synthesis and is inhibited by angiostatin",Proc Natl Acad Sci USA;2001;98:6656-61)。カリポリドは、無菌の水に可溶化し、無菌にフィルターすることが出来る。
細胞培養
A549(肺がん組織由来のヒト上皮細胞株)又は他のがん細胞株(DU145、LNCaP、又はPC-3細胞)は、例えばATCCから入手可能である。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)は、文献に記載されているようにヒト臍帯静脈から単離可能である(Grant et al.,"Matrigel induces thymosin h 4 gene in differentiating endothelial cells",J Cell Sci 1995;108:3685-94.)。HUVEC細胞は、ATP合成酵素を細胞表面に発現する細胞株で、ポジティブコントロールとして使用することが出来る。細胞は、1%ペニシリンストレプトマイシン及び10%血清置換培地3(Sigma、St.Louis,MO)を入れたDMEM(Life Technologies、Carlsbad,CA)で培養し、プラスミミノーゲンの存在を最小限にすることが出来る。低いpH(6.7)の培地は、重炭酸塩を5%CO2条件下で10mmol/Lまで減少させ、浸透圧を維持するために34mmol/LのNaClを追加するか、又は22mmol/Lの重炭酸塩培地を17%CO2条件下でインキュベートすることで調製することが出来る。pHを低下させる方法は、実験的制約及びアッセイによって変化してもよい。
フローサイトメトリー
ATP合成酵素が腫瘍細胞株の細胞表面において機能的であることを確認するために、フローサイトメトリー実験を行うことが出来る。例えば、A549細胞株を、低酸素状態(0.5%O2、5%CO2、N2平衡)対酸素正常状態(21%O2、5%CO2)で、異なるpHの培地(10、22、及び44mmol/Lの重炭酸塩DMEM)において、0、12、24、48、お及び72時間培養することが出来る。生細胞をブロックし、抗βサブユニット抗体とともにインキュベートし、洗浄し、ブロックし、二次抗体のヤギ抗ウサギ抗体FITC(Southern Biotech、Birmingham,AL)とともにインキュベートし、再度洗浄することが出来る(全ての工程は4℃で行われる)。ヨウ化プロピジウム(BD Biosciences、San Jose,CA)を、細胞膜を損傷した細胞を識別するために全てのサンプルに含めることが出来る。10,000細胞中のFITCの平均蛍光強度を、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson、Franklin Lakes,NJ)によって定量化し、CELLQuestソフトウェア(BD Biosciences)上で、ヨウ化プロピジウムを取り込んだ細胞を取り除くことで、ミトコンドリアATP合成酵素の検出を除去することが出来る。
細胞表面のATP合成アッセイ
96ウェルプレート中のA549又は1-LN細胞(ウェル毎に60,000個)を、培地で満たし、アンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウシ血清アルブミンに対して作成されたウサギIgG(Organon Teknika、West Chester,PA)、ピセタノール(既知のATP合成酵素F1の阻害剤でポジティブコントロールとして用いられる、Sigma)、又は培地のみによって、37℃、5%CO2で30分間処理することが出来る。次いで、細胞を0.05mmol/LのADPで20秒間インキュベートすることが出来る。上清を除去し、記載(23)の通り、にCellTiterGloルミネセンスアッセイ(Promega、Madison,WI)によって、ATP産生を分析することが出来る。細胞溶解物を同様に分析し、ATPの細胞内プールが全ての条件において変わらないことを確認することが出来る。記録を、Luminoskan Ascent(Thermo Labsystems、Helsinki,Finland)上でとることが出来る。データは、それぞれの独立した実験において決定された基準に基づいて、細胞毎のATPのモル数によって表される。
細胞増殖アッセイ
アンジオスタチンのがん細胞株への効果を、無血清培地に置いて、3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシフェニル)-2-(4-スルホフェニル)-2H-テトラゾリウム、分子内塩(MTS)増殖アッセイによって評価することが出来る。アンジオスタチンの存在下又は非存在下において、37℃、5%CO2で20時間インキュベートした後、96ウェルマイクロプレートの各ウェルにおける相対的な細胞数を、AQueous One細胞増殖アッセイ(Promega)を用いて製品のプロトコルに従って、決定することが出来る。培地のpHを、5%CO2において重炭酸塩濃度によって調節することが出来る。
細胞毒性の評価
細胞死及び細胞溶解を定量化するために、サイトゾルから上清に放出された乳酸デヒドロゲナーゼ(lactate cehydrogenase:LDH)の活性を、Cytotoxicity Detectionキット(Roche、Indianapolis,IN)によって計測することが出来る。アンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウサギIgG、カリポリド、及びトリトンX(細胞を透過処理する界面活性剤でポジティブコントロールとして用いる)によって処理したがん細胞(例えば、A549細胞)(ウェル毎に5,000個)を、5%CO2又は17%CO2(それぞれ、中性及び低pH条件)で、37℃、15時間インキュベートすることが出来る。細胞毒性の指標は、同じpHの培地に対応させて、4組の処理したサンプルの平均吸光度を、4組の未処理サンプルの平均吸光度によって除算することで計算することが出来る。細胞のネクローシス及びアポトーシスの評価アンジオスタチンの細胞死を引き起こす作用を決定するために、ヒストン-DNA ELISAを行うことが出来る。A549細胞(ウェル毎に5,000個)に対するアンジオスタチン、アンジオスタチン変異体、抗βサブユニット抗体、ウサギIgG、カリポリドの効果を、核外のヒストン-DNA断片の検出に基づいた、ELISAアポトーシス及びネクローシスアッセイ(Roche)を用いることで、決定することが出来る。試薬の存在下又は非存在下で、37℃15時間インキュベートした後、4組のサンプルの細胞溶解物又は上清から、それぞれアポトーシス又はネクローシスを決定することが出来る。アポトーシス又はネクローシスは、同じpHの培地に対応させて、4組の処理したサンプルの平均吸光度を、4組の未処理サンプルの平均吸光度によって除算することで計算することが出来る。培地のpHを、5%CO2又は17%CO2においてインキュベートすることで調節することが出来る。
細胞内pH(pHi)の計測
pHiは、カバーガラス付きの35mmマイクロウェルディッシュ(MatTek、Ashland,MA)にプレーティングした細胞の蛍光によって計測することができる。細胞を成長因子低減フェノールレッド不含Matrigel(BD Biosciences)にプレーティングすることができる。一晩成長させた後、培地を交換することができ、細胞にpH感受性蛍光色素cSNARF(Molecular Probes、Eugene,OR)を15分間ロードし、続いて新鮮培地中で20分間回復させることができる。次に細胞を顕微鏡ステージに37℃、5%CO2でマウントし、1時間にわたる発光スペクトル収集から、各7~15細胞を含む視野からのpHiを記載のとおり計算することができる(Wahl ML,Grant DS.“Effects of microenvironmental extracellular pH and extracellular matrix proteins on angiostatin’s activity and on intracellular pH,”Gen Pharmacol 2002;35:277-85)。スペクトル収集の開始時に、ディッシュから培地を取り除くことができ、pH阻害薬アンジオスタチン、抗β-サブユニット、ウサギIgG、又はナトリウム-プロトン交換阻害薬カリポリドの存在下又は非存在下で細胞を1mLの新鮮培地によってチャレンジすることができる。培地pHは、%CO2を一定として、上記に記載したとおり重炭酸塩濃度によって調節することができる。
実施例6:scFv条件的活性型抗体の生成
薬物標的Xに対する2つの条件的活性型抗体(CAB-scFv-63.9-4及びCAB-scFv-63.9-6)を野生型ヒトIgG1 Fcとのホモ二量体として発現させ(図2~図3の二価抗体CAB-scFv-63.9-4-01及びCAB-scFv-63.9-6-01が得られた)、並びにノブ・イン・ホールシステムのヘテロ二量体として発現させて一価scFvを得た(図2~図3の一価抗体scFv CAB-scFv-63.9-4-02及びCAB-scFv-63.9-6-02が得られた)。
pH6.0及びpH7.4での薬物標的Xに対するこれらの抗体の結合親和性をELISA分析によって計測した。図2に示されるとおり、これらのscFv抗体はpH6.0及びpH7.4の両方で薬物標的Xに親和性を示し、これらの親和性は完全二価抗体と同等であった。さらに、図3に示されるとおり、pH7.4と比べたpH6.0でのこれらのscFv抗体の選択性もまた、完全二価抗体と同等であった。この例では、本発明の条件的活性型抗体がscFv抗体又は完全二価抗体のいずれとしても同等の親和性及び選択性を有することが実証された。従って、本発明の条件的活性型抗体は、本発明のCAR-TプラットフォームにおいてCARをコードするDNA分子に単一DNA鎖として挿入し得る。
実施例7:CAR-T細胞
本発明の一実施形態において、選択性及び親和性、並びにpH6.0及びpH7.4の両方での発現レベルに関して同時にスクリーニングすることにより、薬物標的Xに対する条件的活性型抗体を生成した。血清中にはスクリーニングに関して偽陽性を生じ得るヒト抗体があったため、スクリーニングは血清中でFLAGタグを使用して行った。スクリーニング緩衝液はカーボネート緩衝液(リンゲル標準緩衝液を含むがPBSとは異なるクレブス緩衝液)であった。生成された条件的活性型抗体は、両方ともに野生型抗体との比較において、pH6.0で薬物標的Xに対してより高い親和性を有するが、同じ薬物標的Xに対してpH7.4では親和性がより低いことが分かった。さらに、これらの条件的活性型抗体は全て、以下の表2に示すとおり(列「クローン」は抗体を示し、及び発現レベル「mg/ml」が2番目の列に示される)、高い発現レベルを有する。
これらの抗体のクローンを依頼発現レベル(「注文量」、予想発現レベル)と共にサービス提供者に送った。しかしながら、これらの抗体の実際の発現レベル(「納品量」)は極めて高く、予想発現レベルを超えていた。
Figure 2021137013000002
図4に例としてBAP063.9-13-1抗体を使用して示すとおり、条件的活性型抗体は緩衝液中で凝集を示さなかった。BAP063.9-13-1抗体はサイズ排除クロマトグラフィーによって分析した。図4では唯1つのピークが検出され、抗体の凝集がほとんど又は全くないことが実証された。
条件的活性型抗体はまた、表面プラズモン共鳴(SPR)も用いて分析し、薬物標的Xに対するそのオン及びオフ速度を計測した。SPR分析は、条件的活性型抗体のオン及びオフ速度を計測することが知られている。SPR分析は重炭酸塩の存在下で実施した。条件的活性型抗体のインビボでの(動物及びヒトにおける)オン及びオフ速度は、条件的活性型抗体にとって極めて重要な特徴である。
条件的活性型抗体は、陰性対照(BAP063 10F10、これはpH6.0及びpH7.4の両方で同様のオン速度を有する)との比較において、pH6.0でオン速度が速く、pH7.4ではより遅いオン速度であることが観察された(図5)。加えて、室温から60℃に温度を上げても、SPR分析結果が大幅に変わることはない(図5)。SPR分析はまた、これらの条件的活性型抗体がpH7.4と比較したときpH6.0で極めて選択的であることも示した(図6A~図6Bは例として1つの抗体を示す)。
条件的活性型生物学的抗体について、表3に要約する。これらの抗体のうちの2つはscFvとして発現させたもので(BAP063.9-13.3及びBAP063.9-48.3)、これらは直ちにCAR-TプラットフォームでCARに挿入し得る状態であった。抗体を60℃で1時間インキュベートしたが、抗体の多くの親和性は変化しなかった(「熱安定性」)。SPRを用いたpH6.0及びpH7.4での結合活性の計測データを報告する2つの列において(表3の最後2つのカラム)、「BAP063.6-hum10F10-FLAG」(陰性対照、表3の第2列)との比較を行った。これらの抗体の選択性は、2つの最終カラムのデータ間の差により決定し得る。2つのscFv抗体は極めて高い選択性(pH7.4で0%に対し、pH6で75%及び50%)を有した。
Figure 2021137013000003
本明細書で言及される文献は全て、本明細書によって全体として、或いはそれらの文献が具体的に頼られた開示を提供するため、参照により援用される。
しかしながら、前述の説明に本発明の多くの特徴及び利点が本発明の構造及び機能の詳細と共に示されているとしても、本開示は例示的なものに過ぎず、詳細、特に要素の形状、サイズ及び配置の点で、添付の特許請求の範囲を表現している用語の広義の一般的な意味によって示される最大限の範囲まで本発明の原理内で変更を行い得ることが理解されるべきである。
発明の態様
態様1
標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体であって、
i.野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ(a)正常生理条件での分析における前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)異常条件下での分析における前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域と、
ii.膜貫通ドメインと、
iii.細胞内シグナル伝達ドメインと
を含む、キメラ抗原受容体。
態様2
前記抗原特異的標的領域が、正常生理条件で前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して前記標的抗原に対する結合親和性の低下を有する、請求項1に記載のキメラ抗原受容体。
態様3
前記抗原特異的標的領域が、異常条件下での前記分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有する、態様1又は2に記載のキメラ抗原受容体。
態様4
前記抗原特異的標的領域が、異常条件下での前記分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する、態様1~3のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様5
前記抗原受容体を含有するタンパク質が前記野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成される、態様1~4のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様6
細胞外スペーサードメイン又は少なくとも1つの共刺激ドメインをさらに含む、態様1~5のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様7
前記少なくとも1つの抗原特異的標的領域が2つの抗原特異的標的領域を含み、各抗原特異的標的領域が異なる標的抗原又は同じ標的抗原の異なるエピトープと結合する、態様1~6のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様8
前記少なくとも1つの抗原特異的標的領域が、抗体、リガンド、リガンドの受容体結合ドメイン、受容体、受容体のリガンド結合ドメイン、及びaffibodyから選択される、態様1~7のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様9
前記抗体が、完全長抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、(Fab’)2フラグメント、Fvフラグメント、及び二価一本鎖抗体又はダイアボディから選択される、態様8に記載のキメラ抗原受容体。
態様10
前記細胞外スペーサードメインが、抗体のFcフラグメント、抗体のヒンジ領域、抗体のCH2領域、抗体のCH3領域、人工スペーサー配列及びこれらの組み合わせから選択される、態様1~9のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様11
前記膜貫通ドメインが、人工疎水性配列、並びにI型膜貫通タンパク質、T細胞受容体のα鎖、β鎖又はζ鎖、CD28、CD3ε、CD45、CD4、CD5、CD8、CD9、CD16、CD22、CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、及びCD154の膜貫通ドメインから選択される、態様1~10のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様12
前記共刺激ドメインが、TNFRスーパーファミリーのタンパク質、CD28、CD137、CD134、DaplO、CD27、CD2、CD5、ICAM-1、LFA-1、Lck、TNFR-I、TNFR-II、Fas、CD30、CD40、ICOS LIGHT、NKG2C、及びB7-H3の共刺激ドメインから選択される、態様1~11のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様13
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、ヒトCD3ζ鎖、FcyRIII、FcsRI、Fc受容体の細胞質テール、細胞質受容体を担持する免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)、TCRζ、FcRγ、FcRβ、CD3γ、CD3δ、CD3ε、CD5、CD22、CD79a、CD79b、及びCD66dの細胞質シグナル伝達ドメインから選択される、態様1~12のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様14
前記標的抗原が癌細胞の表面上に位置する、態様1~13のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様15
前記標的抗原が、4-1BB、5T4、腺癌抗原、α-フェトプロテイン、BAFF、Bリンパ腫細胞、C242抗原、CA-125、炭酸脱水酵素9(CA-IX)、C-MET、CCR4、CD152、CD19、CD20、CD200、CD22、CD221、CD23(IgE受容体)、CD28、CD30(TNFRSF8)、CD33、CD4、CD40、CD44 v6、CD51、CD52、CD56、CD74、CD80、CEA、CNT0888、CTLA-4、DR5、EGFR、EpCAM、CD3、FAP、フィブロネクチンエクストラドメイン-B、葉酸受容体1、GD2、GD3ガングリオシド、糖タンパク質75、GPNMB、HER2/neu、HGF、ヒト散乱因子受容体キナーゼ、IGF-1受容体、IGF-I、IgGl、Ll-CAM、IL-13、IL-6、インスリン様成長因子I受容体、インテグリンα5β1、インテグリンανβ3、MORAb-009、MS4A1、MUC1、ムチンCanAg、N-グリコリルノイラミン酸、NPC-1C、PDGF-R a、PDL192、ホスファチジルセリン、前立腺癌細胞、RANKL、RON、ROR1、SCH 900105、SDC1、SLAMF7、TAG-72、テネイシンC、TGFβ2、TGF-β、TRAIL-R1、TRAIL-R2、腫瘍抗原CTAA16.88、VEGF-A、VEGFR-1、VEGFR2、及びビメンチンから選択される、態様1~14のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様16
前記正常生理条件が、正常生理的温度、pH、浸透圧、重量オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度のうちの1つ以上から選択される、態様1~15のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体。
態様17
前記正常生理条件が温度であり;及び前記条件的活性型生物学的タンパク質が正常生理的温度では実質的に不活性であり、且つ前記正常生理的温度未満の異常温度では活性である、態様16に記載のキメラ抗原受容体。
態様18
態様1~17のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、発現ベクター。
態様19
前記発現ベクターが、レンチウイルスベクター、γレトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、及びトランスポゾン媒介性ベクターから選択される、態様18に記載の発現ベクター。
態様20
態様1~17のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む、遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様21
前記細胞傷害性細胞がT細胞である、態様20に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様22
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、及びエフェクターメモリーT細胞から選択される、態様21に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様23
前記細胞傷害性細胞が、ナチュラルキラー細胞、活性化NK細胞、好中球、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ及びリンホカイン活性化キラー細胞から選択される、態様20に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様24
前記ポリヌクレオチド配列が前記細胞傷害性細胞のゲノムに組み込まれる、態様20~23のいずれか一に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様25
前記細胞傷害性細胞が、治療用途に十分な量の前記キメラ抗原受容体を産生する、態様20~24のいずれか一に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞。
態様26
a.態様1~17のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体の1つ以上、態様18又は19に記載の発現ベクター、及び態様20~25のいずれか一に記載の遺伝子操作された細胞傷害性細胞と、
b.薬学的に受容可能な賦形剤と
を含む、医薬組成物。
態様27
少なくとも1つの抗原特異的標的領域と膜貫通ドメインと細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ抗原受容体の作製方法であって、
標的抗原に特異的に結合する野生型タンパク質又はそのドメインから、
i.前記野生型タンパク質又はそのドメインをコードするDNAを1つ以上の発達的技術を用いて発達させる工程であって、それにより変異DNAを作成する工程と、
ii.前記変異DNAを発現させる工程であって、それにより変異ポリペプチドを得る工程と、
iii.前記変異ポリペプチド及び前記野生型タンパク質又はそのドメインを正常生理条件下での分析及び異常条件下での分析に供する工程と、
iv.工程(iii)において発現した前記変異ポリペプチドから、(a)前記正常生理条件での前記分析における前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の低下、及び(b)前記異常条件下での前記分析における前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較した活性の増加、のうちの少なくとも一方を呈する条件的活性型抗原特異的標的領域を選択する工程と
によって前記少なくとも1つの抗原特異的標的領域を生成する工程
を含む方法。
態様28
前記抗原特異的標的領域が、正常生理条件での前記分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して前記標的抗原に対する結合親和性の低下もまた有する、態様27に記載の方法。
態様29
前記抗原特異的標的領域が、異常条件下での前記分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して活性の増加を有する、態様27又は28に記載の方法。
態様30
前記抗原特異的標的領域が、異常条件下での前記分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する、態様27~29のいずれか一に記載の方法。
態様31
前記抗原受容体を含有するタンパク質が前記野生型タンパク質又はそのドメインと比較して発現レベルの増加を有するように構成される、態様27~30のいずれか一に記載の方法。
態様32
前記正常生理条件が、正常生理的温度、pH、浸透圧、重量オスモル濃度、酸化的ストレス及び電解質濃度のうちの1つ以上から選択される、態様30又は31に記載の方法。
態様33
前記正常生理条件が温度であり;及び前記条件的活性型生物学的タンパク質が、前記正常生理的温度では実質的に不活性であり、且つ前記正常生理的温度未満の異常温度では活性である、態様30又は31に記載の方法。
態様34
前記発達させる工程が、PCR、エラープローンPCR、シャッフリング、オリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発、アセンブリPCR、セクシャルPCR突然変異誘発、インビボ突然変異誘発、カセット突然変異誘発、再帰的アンサンブル突然変異誘発、指数関数的アンサンブル突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、遺伝子リアセンブリ、遺伝子部位飽和突然変異誘発、インビトロ突然変異誘発、リガーゼ連鎖反応、オリゴヌクレオチド合成及びこれらの組み合わせから選択される技術を含む、態様30~33のいずれか一に記載の方法。
態様35
a.態様1~17のいずれか一に記載のキメラ抗原受容体をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現ベクターを、前記対象から得られた細胞傷害性細胞に導入する工程であって、それにより遺伝子操作された細胞傷害性細胞を作製する工程と、
b.前記遺伝子操作された細胞傷害性細胞を前記対象に投与する工程と
を含む、対象の癌を治療する方法。
態様36
前記発現ベクターが、レンチウイルスベクター、γレトロウイルスベクター、フォーミーウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、アデノウイルスベクター、ポックスウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、操作されたハイブリッドウイルス、及びトランスポゾン媒介性ベクターから選択される、態様35に記載の方法。
態様37
前記細胞傷害性細胞がT細胞である、態様35に記載の方法。
態様38
前記T細胞が、ナイーブT細胞、セントラルメモリーT細胞、及びエフェクターメモリーT細胞から選択される、態様37に記載の方法。
態様39
前記細胞傷害性細胞が、ナチュラルキラー細胞、活性化NK細胞、好中球、好酸球、好塩基球、B細胞、マクロファージ及びリンホカイン活性化キラー細胞から選択される、態様35に記載の方法。
態様40
前記ポリヌクレオチド配列が前記細胞傷害性細胞のゲノムに組み込まれる、態様35~39のいずれか一に記載の方法。
態様41
前記細胞傷害性細胞が、治療用途に十分な量の前記キメラ抗原受容体を産生する、態様35~40のいずれか一に記載の方法。
態様42
前記癌が、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、及び他の肉腫、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、リンパ性悪性病変、膵癌、乳癌、肺癌、卵巣癌、前立腺癌、肝細胞癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、甲状腺髄様癌、甲状腺乳頭癌、褐色細胞腫、皮脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、髄様癌、気管支原性癌、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、絨毛癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、精巣腫瘍、セミノーマ、膀胱癌、メラノーマ、神経膠腫、膠芽腫、星状細胞腫、CNSリンパ腫、胚細胞腫、髄芽腫、シュワン腫、頭蓋咽頭腫(craniopharyngioma)、上衣腫、松果体腫、血管芽細胞腫、聴神経腫、乏突起膠腫、髄膜腫(meningioma)、神経芽細胞腫、網膜芽細胞腫及び脳転移から選択される固形腫瘍である、態様35~41のいずれか一に記載の方法。
態様43
前記癌が、白血病、真性赤血球増加症、リンパ腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、重鎖病、骨髄異形成症候群、ヘアリー細胞白血病及び骨髄形成異常から選択される血液腫瘍である、態様42に記載の方法。
態様44
i.野生型タンパク質又はそのドメインから発達させた、且つ異常条件下での分析において前記野生型タンパク質又はそのドメインの抗原特異的標的領域と比較して選択性の増加を有する少なくとも1つの抗原特異的標的領域を含む、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体(CAR)と、
ii.膜貫通ドメインと、
iii.細胞内シグナル伝達ドメインと
を含む、標的抗原と結合するためのキメラ抗原受容体。
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