インピーダンスの低減を図るために、一次コイルの内側及び外側それぞれに二次コイルを配置させて、三重コイルの変成器を作製することが考えられる。しかし、それぞれのコイルはボビンによって保持されており、費用が嵩む。
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、インピーダンスの低減及び費用の削減を図ることができる変成器を提供することを目的とする。
本開示に係る変成器は、第一コイルと、該第一コイルの内側に同軸的に配置された第二コイルと、前記第一コイルの外側に同軸的に配置された第三コイルと、前記第一コイル及び第二コイルの間、並びに前記第一コイル及び第三コイルの間に配置され、前記第一コイルを保持する単一のボビンとを備える。
本開示においては、一つのボビンを使用して、コイルを三重に配置させ、ボビンの数を削減する。
本開示に係る変成器は、前記第二コイル及び第三コイルは、自身の形状を保持する構造を備える。
本開示においては、第二コイル及び第三コイルは、ボビンが無くても、自身の形状を保持する。そのため、ボビン数を削減しても、三重コイル構造を実現することができる。
本開示に係る変成器は、前記構造は、平角線又は複数の丸線を一体化した線群によって構成される。
本開示においては、第二コイル及び第三コイルの巻線を平角線又は複数の丸線を一体化した線群にすることによって、第二コイル及び第三コイルの形状保持がボビン無しで実現される。
本開示に係る変成器は、前記第一コイル、第二コイル及び第三コイルの内側及び外側を覆って保持する保持カバーを備える。
本開示においては、保持カバーによって、第一コイル、第二コイル及び第三コイルが一体的に保持され、ユニット化される。
本開示に係る変成器は、前記第一コイルと、前記第二コイル又は第三コイルとの間に配置されたスペーサを備える。
本開示においては、スペーサによって、第一コイルと第二コイルとの間、又は第一コイルと第三コイルとの間に所定距離が確保され、両者が絶縁される。
本開示に係る変成器にあっては、一つのボビンを使用して、コイルを三重に配置させ、ボビンの数を削減する。そのため、インピーダンスの低減及び費用の削減を図ることができる。
以下本発明を実施の形態に係る変成器を示す図面に基づいて説明する。図1は、実施の形態に係る変成器の略示斜視図、図2は、変成器の略示分解図である。変成器1は矩形環状をなす樹脂製のボビン2を備える。ボビン2の外周面には周方向に延びる溝が形成され、該溝はボビン2の全周に設けられている。前記溝の底には、径方向外向きに突出した壁2aが形成されている。壁2aは周方向に延び、ボビン2の全周に亘って設けられている。壁2aの一面側に一次コイル3が巻回され、壁2aの他面側に一次コイル4が巻回されている。ボビン2は一次コイル3、4を保持する。一次コイル3、4は第一コイルに対応する。
ボビン2の径方向内側に、二次コイル7(以下、内側二次コイル7という)が設けられている。内側二次コイル7の外周の径方向寸法は、ボビン2の内周の径方向寸法及び軸方向寸法に対応し、内側二次コイル7はボビン2の内側に収まる。内側二次コイル7は、自身の形状を保持する構造を備え、ボビンなどの保持機構が無くとも、コイル形状を保つことができる。内側二次コイル7は、例えば平角線によって構成され、平角線を折り曲げることによって、形成されている。内側二次コイル7は第二コイルに対応する。平角線に代えて、複数の丸線を一体化した線群を使用してもよい。例えば、複数の丸線をバンドによって拘束するか又は樹脂によって固めて、線群は作成される。線群は平角線と同様、形状保持が実現できる。
ボビン2の径方向外側に、二次コイル6(以下、外側二次コイル6という)が設けられている。外側二次コイル6の内周の径方向寸法及び軸方向寸法は、ボビン2の外周の径方向寸法に対応し、ボビン2は外側二次コイル6の内側に収まる。外側二次コイル6は、自身の形状を保持する構造を備え、ボビンなどの保持機構が無くとも、コイル形状を保つことができる。外側二次コイル6は、例えば平角線によって構成され、平角線を折り曲げることによって、形成されている。なお、平角線に限らず、自身の形状を保持することができる線材、例えば、コイル形状の保持が可能な直径を有する丸線によって、外側二次コイル6、内側二次コイル7を構成してもよい。外側二次コイル6は第三コイルに対応する。
ボビン2、外側二次コイル6及び内側二次コイル7の二つの長辺部は、円筒形をなす二つの保持カバー8によって、それぞれ覆われている。保持カバー8の周囲に円筒形の鉄心20が設けられている。
図3は、ボビン2、外側二次コイル6、内側二次コイル7及び保持カバー8の略示断面図である。図3において、左右方向は軸方向に対応する。ボビン2の外周部分の軸方向寸法は、ボビン2の内周部分の軸方向寸法よりも長い。外側二次コイル6及び内側二次コイル7の軸方向寸法は略同じである。外側二次コイル6及び内側二次コイル7の軸方向寸法は、ボビン2の内周部分よりも短い。軸方向において、外側二次コイル6はボビン2の外周部分よりも外側に突出せず、内側二次コイル7はボビン2の内周部分よりも外側に突出しない。
ボビン2の外周部分と外側二次コイル6との間に絶縁体5(スペーサ)が設けられている。絶縁体5はシート状且つ環状をなし、一次コイル3、4及び壁2aを覆う。絶縁体5と外側二次コイル6と間には絶縁物10(スペーサ)が設けられている。絶縁物10はシート状且つ環状をなし、両縁部から径方向外向きに突出した部分を有する。絶縁物10は外側二次コイル6の内周部分及び端面を覆う。
ボビン2の内周部分と内側二次コイル7との間に絶縁物11(スペーサ)が設けられている。絶縁物11はシート状且つ環状をなし、内側二次コイル7の外周部分を覆う。本実施例においては、内側二次コイル7はボビン2の内周部分よりも軸方向外側に突出しないので、絶縁物11は、設けなくてもよい。なお、内側二次コイル7がボビン2の内周よりも軸方向外側に突出している場合、内側二次コイル7を保持する手段として、絶縁物11は必要である。
保持カバー8は二つの半円筒部8a、8bを備える。半円筒部8a、8bは、円筒を軸方向に沿って半分に切断したような形状を有する。半円筒部8aの内周面には二つのリブ9が形成されている。二つのリブ9は半円筒部8aにおける半円の頂部と半円の端部との間に配置され、対向する。軸方向にて半円筒部8aを視認した場合、リブ9は略直角なL形をなし、リブ9のL形の両端部は半円筒部8aの内周面に連なる。リブ9は軸方向に沿って延びる。半円筒部8bの内周面にも、半円筒部8aと同様に、リブ9が形成されている。
二つの半円筒部8a、8bそれぞれの軸方向に延びる縁部を突き合わせて、円筒形の保持カバー8が形成される。外側二次コイル6は、二つの半円筒部8a、8bそれぞれのリブ9の間に狭持される。リブ9と外側二次コイル6との間には、絶縁物10の前記突出した部分が介在する。内側二次コイル7は、二つの半円筒部8a、8bそれぞれのリブ9の間に狭持される。リブ9によって、外側二次コイル6及び内側二次コイル7は安定に支持される。
図4は、構成を一部変更したボビン2、外側二次コイル6、内側二次コイル7及び保持カバー8の略示断面図である。リブ9は外側二次コイル6及び内側二次コイル7を安定に支持することができればよく、リブ9の形状はL形に限定されない。例えば、図4に示すように、軸方向にて半円筒部8a、8bを視認した場合、リブ9は、L形の角を切り取ったようなI形をなしてもよい。
図4に示すように、絶縁物10は軸方向に延び、絶縁物10の軸方向端部はリブ9と絶縁体5との間に配置されている。外側二次コイル6は軸方向に延びる。外側二次コイル6は、軸方向に間隔を空けて並んだI形の二つのリブ9の間に配置されている。また絶縁物11は軸方向に延び、絶縁物11の軸方向端部は、リブ9のボビン2に対向する面に配置されている。内側二次コイル7は軸方向に延び、ボビン2の内周よりも外側に突出する。内側二次コイル7の軸方向端部は、軸方向に間隔を空けて並んだI形の二つのリブ9の間に配置されている。
実施の形態に係る変成器1にあっては、一つのボビン2を使用して、コイルを三重に配置させ、ボビン2の数を削減する。そのため、インピーダンスの低減及び費用の削減を図ることができる。
また外側二次コイル6及び内側二次コイル7は、自身を保持するボビンが無くても、自身の形状を保持する。そのため、ボビン数を削減しても、三重コイル構造を実現することができる。例えば、外側二次コイル6及び内側二次コイル7の巻線を平角線にすることによって、外側二次コイル6及び内側二次コイル7の形状保持がボビン無しで実現される。
保持カバーによって、一次コイル3、4、外側二次コイル6及び内側二次コイル7が一体的に保持され、複数のコイルをユニット化させることができる。
絶縁体5及び絶縁物10、11によって、一次コイル3、4と外側二次コイル6との間、又は一次コイル3、4と内側二次コイル7との間に所定距離が確保され、両者が絶縁される。なお、一次コイル3、4と内側二次コイル7との間には、一次コイル3、4を保持する樹脂製のボビン2が介在しており、絶縁性を保つことができるので、絶縁物11は、無くてもよい。ただし、前述したように、内側二次コイル7がボビン2の内周よりも軸方向外側に突出している場合、コイルを保持するための手段として、絶縁物11は必要である。この場合、絶縁物11に代えて、絶縁性を有さない部材を、コイルを保持する手段として使用してもよい。
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。