JP2021001128A - メタンスルホン酸の精製方法、及び精製されたメタンスルホン酸の使用方法 - Google Patents

メタンスルホン酸の精製方法、及び精製されたメタンスルホン酸の使用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】一旦PAEK樹脂の合成に使用したメタンスルホン酸であっても精製することにより、再びPAEK樹脂の合成に使用できるまで純度を上げることができる、メタンスルホン酸の精製方法の提供。【解決手段】メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む第1の混合物から、精製されたメタンスルホン酸を得る、メタンスルホン酸の精製方法であって、前記第1の混合物を蒸留することにより、前記第1の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第1の工程と、前記第1の工程で得られた蒸留残渣を蒸留することにより、前記蒸留残渣からメタンスルホン酸を留去する第2の工程と、前記第2の工程で留分として留去されたメタンスルホン酸を含む第2の混合物を蒸留することにより、前記第2の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第3の工程と、を含むメタンスルホン酸の精製方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、メタンスルホン酸の精製方法、及び精製されたメタンスルホン酸の使用方法に関する。
ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(以下「PAEK樹脂」と略すことがある。)は、耐熱性、耐薬品性、強靭性等に優れ、高温で連続使用可能な結晶性スーパーエンプラとして、電気電子部品、自動車部品、医療用部品、繊維、フィルム用途等に幅広く利用されている。
従来、PAEK樹脂としては、4,4’−ジフルオロベンゾフェノンとハイドロキノンの2つのモノマーを、ジフェニルスルホン中で炭酸カリウムを用いた芳香族求核置換型溶液重縮合反応(例えば、特許文献1参照)により製造される、1つの繰り返し単位中に2つのエーテル基と1つのケトン基を持つポリエーテルエーテルケトン樹脂(以下「PEEK樹脂」と略すことがある。)がよく知られている。
しかしながら、芳香族求核置換型溶液重縮合反応は、モノマーに高価な4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを使用するため原料費が高く、かつ、反応温度が300℃以上で製造工程費も高いという欠点があり、樹脂の価格が高くなる傾向にある。
そこで、モノマーに4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを用いることなく、かつ、温和な重合条件で、PAEK樹脂を製造する芳香族求電子置換型溶液重縮合反応が知られている。
芳香族求電子置換型溶液重縮合反応を用いた例として、4−フェノキシ安息香酸をメタンスルホン酸と五酸化二リンの混合物存在下で反応させる方法によるポリエーテルケトン樹脂(例えば、特許文献2参照)等がある。
米国特許第4320224号明細書 特開昭61−247731号公報
メタンスルホン酸と五酸化二リンの混合物存在下でPAEK樹脂を合成する場合、高価なメタンスルホン酸を繰り返し使用してPAEK樹脂を合成できれば、製造コストの観点から極めて望ましい。
しかし、一旦PAEK樹脂の合成に使用したメタンスルホン酸は、純度が低く、使用済みのメタンスルホン酸を利用してPAEK樹脂を合成しても、良好な物性のPAEK樹脂を得ることは難しい。
PAEK樹脂の製造プロセスにおいて、PAEK樹脂の合成に使用したメタンスルホン酸を再びPAEK樹脂の合成に利用できる方法の提供が望まれている。
そこで、本発明は、一旦PAEK樹脂の合成に使用したメタンスルホン酸であっても精製することにより、再びPAEK樹脂の合成に使用できるまで純度を上げることができる、メタンスルホン酸の精製方法を提供することを目的とする。
さらにまた、本発明は、精製されたメタンスルホン酸を用いてPAEK樹脂を合成することにより、良好な特性を示すPAEK樹脂を製造することができる、精製されたメタンスルホン酸の使用方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の蒸留工程を含むメタンスルホン酸の精製方法が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む第1の混合物から、精製されたメタンスルホン酸を得る、メタンスルホン酸の精製方法であって、
前記第1の混合物を蒸留することにより、前記第1の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第1の工程と、
前記第1の工程で得られた蒸留残渣を蒸留することにより、前記蒸留残渣からメタンスルホン酸を留去する第2の工程と、
前記第2の工程で留分として留去されたメタンスルホン酸を含む第2の混合物を蒸留することにより、前記第2の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第3の工程と
を含むことを特徴とするメタンスルホン酸の精製方法。
[2]前記第2の工程で留分として留去された前記第2の混合物に含有されているメタンスルホン酸エステル及び/又はメタンスルホン酸無水物を加水分解する工程を、前記第3の工程の前にさらに有する、前記[1]に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
[3]前記加水分解する工程において、前記第1の混合物に含有されているメタンスルホン酸に対して1〜500質量%の量の水を添加する、前記[2]に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
[4]前記加水分解する工程において、添加した前記水と前記第2の混合物とを20〜140℃の温度条件で混合する、前記[3]に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
[5]前記精製されたメタンスルホン酸の純度が、90〜100%である、前記[1]から[4]のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
[6]前記第1の混合物におけるメタンスルホン酸の質量に対する、前記第1の工程から前記第3の工程を経て得られた精製されたメタンスルホン酸の質量の割合(回収率)が、80〜100%である、前記[1]から[5]のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
[7]前記[1]から[6]のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法を用いて精製されたメタンスルホン酸をポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法に使用する、精製されたメタンスルホン酸の使用方法であって、
メタンスルホン酸と五酸化二リンの混合物の存在下でポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造した際に、濾別したポリアリーレンエーテルケトン樹脂から分離された、メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む廃液に対して、前記[1]から[6]のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法を用いることにより、前記廃液から精製されたメタンスルホン酸(A)を得て、
前記廃液から得られた精製されたメタンスルホン酸(A)と五酸化二リンの混合物の存在下でポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する
ことを特徴とする精製されたメタンスルホン酸の使用方法。
[8]前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が下記一般式(3)で表される構造を有する、前記[7]に記載の精製されたメタンスルホン酸の使用方法。

Figure 2021001128
ただしXは下記一般式(3−1)、Yは下記一般式(3−2)で表される。
Figure 2021001128
(式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
Figure 2021001128
(式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)
[9]前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が、下記一般式(4―1)及び(4−2)で表されるモノマーの群から選ばれるモノマーを、メタンスルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させることで製造される、前記[8]に記載の精製されたメタンスルホン酸の使用方法。
Figure 2021001128
(式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
Figure 2021001128
(式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)
本発明によれば、一旦PAEK樹脂の合成に使用したメタンスルホン酸であっても精製することにより、再びPAEK樹脂の合成に使用できるまで純度を上げることができる、メタンスルホン酸の精製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、精製されたメタンスルホン酸を用いてPAEK樹脂を合成することにより、良好な特性を示すPAEK樹脂を製造することができる、精製されたメタンスルホン酸の使用方法を提供することができる。
以下、本発明のメタンスルホン酸の精製方法、及び精製されたメタンスルホン酸の使用方法について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
(メタンスルホン酸の精製方法)
本発明のメタンスルホン酸の精製方法は、メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む第1の混合物から、精製されたメタンスルホン酸を得る方法である。
本発明のメタンスルホン酸の精製方法は、第1の混合物に対して蒸留を行う第1の工程と、第1の工程で得られた蒸留残渣に対して蒸留を行う第2の工程と、第2の工程で留分として留去されたメタンスルホン酸を含む第2の混合物に対して蒸留を行う第3の工程とを含む。
<第1の混合物>
メタンスルホン酸と五酸化二リンの混合物の存在下でPAEK樹脂を合成する場合、析出したPAEK樹脂を濾過するときに、メタンスルホン酸を含む廃液が生成される。この廃液には、メタンスルホン酸の他、有機溶剤及び/又は水、(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステル(第1の混合物と同等の構成成分)が含まれている。
そこで、本発明は、第1の混合物に含まれるメタンスルホン酸をPAEK樹脂の合成に再利用できるまで、高純度に精製する方法を提供する。これにより、PAEK樹脂の製造プロセスにおいて、メタンスルホン酸を繰り返し利用することが可能となる。
尚、PAEK樹脂の製造方法については、後で詳しく説明する。
<第1の工程>
第1の工程では、第1の混合物を蒸留することにより、第1の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する。
第1の工程における蒸留条件(圧力、温度、時間等)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、常圧下で蒸留を行っても、減圧下で蒸留を行ってもよい。例えば、10から1000mbarの圧力下で、20から150℃の温度条件下で蒸留することができる。蒸留時間は、適宜設定することができるが、例えば、1から20hrsとすることができる。
また、第1の工程において、蒸留条件を多段階に分け、異なる条件の蒸留を複数組み合わせて蒸留を行ってもよい。さらに、液の突沸を防ぐため、蒸留の進行に応じて段階的に昇温させてもよい。例えば、100から500mbarの減圧下で、40から100℃の温度条件下で蒸留を行い、続いて20から100mbarの減圧下で、120から150℃の温度条件下で蒸留を行うことができる。より好ましい実施態様として、100から300mbarの減圧下で、40から60℃の温度条件下で蒸留を行い、続いて20mbarの減圧下で、150℃まで段階的に昇温させて蒸留を行うことができる。この場合、先の蒸留で、メタノール等の有機溶剤と水を留去し、後の蒸留で水を留去することができる。
<第2の工程>
第2の工程では、第1の工程で得られた蒸留残渣を蒸留することにより、蒸留残渣からメタンスルホン酸を留去する。
第2の工程における蒸留条件(圧力、温度、時間等)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、常圧下で蒸留を行っても、減圧下で蒸留を行ってもよい。例えば、1から10mbarの圧力下で、150から250℃の温度条件下で蒸留することができる。蒸留時間は、適宜設定することができるが、例えば、1から20hrsとすることができる。なお、200℃より高い温度条件下では、強酸による腐食性が著しく増加し、実用的ではない。より好ましい実施態様として、1から3mbarの減圧下で、150から200℃の温度条件下で蒸留を行うことができる。
<第3の工程>
第3の工程では、第2の工程で留分として留去されたメタンスルホン酸を含む第2の混合物を蒸留することにより、第2の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する。
第2の混合物には、メタンスルホン酸の他、蒸留中に縮合して副生したメタンスルホン酸エステル類、及びメタンスルホン酸無水物等のメタンスルホン酸誘導体が含まれている。
第3の工程において、有機溶剤及び/又は水の留去後は、蒸留残渣として高純度のメタンスルホン酸が回収できる。
第3の工程における蒸留条件(圧力、温度、時間等)は、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。例えば、常圧下で蒸留を行っても、減圧下で蒸留を行ってもよい。例えば、5から1000mbarの圧力下で、80から150℃の温度条件下で蒸留することができる。蒸留時間は、脱水にかかる時間に応じて、単蒸留時の気相部の温度が120℃以上になったところで終了するものとして、適宜設定することができる。例えば、1から20hrsとすることができる。より好ましい実施態様として、5から100mbarの減圧下で、100から150℃の温度条件下で蒸留を行うことができる。
また、第3の工程における蒸留時間は、後述する加水分解工程において添加する水の量に応じて、適宜調整することができる。
第1の混合物に対して、上記第1の工程及び第2の工程の2つの蒸留工程を行うことにより、メタンスルホン酸を単蒸留で分離する。メタンスルホン酸を蒸留工程に供すると、加熱時のリン酸触媒の効果によりメタンスルホン酸の縮合反応が進み、メタンスルホン酸無水物及びメタンスルホン酸エステル等のメタンスルホン酸誘導体が生成される。本発明では、上記第2の工程の後に、上記第3の工程の蒸留工程を加えることで、蒸留中に縮合して副生する不純物であるメタンスルホン酸エステル類、及びメタンスルホン酸無水物を再蒸留により効果的に留去することができる。そして、本発明により、高純度のメタンスルホン酸を高効率で回収することができる。
<加水分解工程>
本発明の好ましい態様の1つとして、上記第2の工程と第3の工程の間に、さらに加水分解工程を含む方法が挙げられる。
ここで、加水分解工程とは、第2の工程で留分として留去された第2の混合物に含有されているメタンスルホン酸エステル及び/又はメタンスルホン酸無水物を加水分解するための工程をいう。尚、メタンスルホン酸エステル及びメタンスルホン酸無水物以外のメタンスルホン酸誘導体(他のメタンスルホン酸誘導体ともいう)が、蒸留中に副生され第2の混合物中に含有されている場合、これら他のメタンスルホン酸誘導体が加水分解されることを排除するものではない。つまり、メタンスルホン酸エステル及び/又はメタンスルホン酸無水物が加水分解される際に、他のメタンスルホン酸誘導体が加水分解されてもされなくても、本発明でいう加水分解工程に該当するものとする。
第1の混合物に対して、上記第1の工程及び第2の工程の2つの蒸留工程を行うことにより、メタンスルホン酸を単蒸留で分離する。本発明では、上記第2の工程の後に、加水分解工程、及び上記第3の工程の蒸留工程を加えることで、蒸留中に縮合して副生する不純物であるメタンスルホン酸エステル類、及びメタンスルホン酸無水物を加水分解及び再蒸留により効果的に留去することができる。そして、本発明により、より高純度のメタンスルホン酸を高効率で回収することができる。
加水分解工程において、添加する水の量や、添加した水と第2の混合物との混合条件(温度、時間等)などは、特に制限はないが、メタンスルホン酸エステル及び/又はメタンスルホン酸無水物を効果的に加水分解するために、適宜、条件を選択することができる。
加水分解する工程において添加される水の量としては、例えば、第3の工程における蒸留時間が長時間にならないように、第1の混合物に含有されているメタンスルホン酸に対して1〜500質量%の量の水を添加することが好ましい。また、20〜100質量%の水を添加することがより好ましい。
尚、第1の混合物に含有されているメタンスルホン酸の量は、NMR等の分析方法などを用いることにより求めることができる。
加水分解する工程において、添加した水と第2の混合物との混合条件としては、適宜選択することができるが、例えば、20〜140℃の温度条件が好ましく、50〜140℃の温度条件がより好ましく、90〜110℃の温度条件がさらに好ましい。また、混合時間としては、例えば、0.5から10hrsとすることができる。より好ましい実施態様として、90から110℃の温度条件下で1から2hr混合することができる。
<精製されたメタンスルホン酸>
本発明により精製されたメタンスルホン酸の純度としては、90〜100%であることが好ましい。また、純度が、95〜100%であるとより好ましく、99〜100%であるとさらに好ましい。
また、第1の混合物におけるメタンスルホン酸の質量に対する、上記第1の工程から上記第3の工程を経て得られた精製されたメタンスルホン酸の質量の割合(回収率)としては、80〜100%であることが好ましい。また、回収率が、85〜100%であるとより好ましく、90〜100%であるとさらに好ましい。
(精製されたメタンスルホン酸の使用方法)
本発明の精製されたメタンスルホン酸の使用方法は、本発明のメタンスルホン酸の精製方法を用いて精製されたメタンスルホン酸をPAEK樹脂の製造方法に使用する方法である。
本発明の精製されたメタンスルホン酸の使用方法は、PAEK樹脂の合成の際に生成された廃液に対して、本発明のメタンスルホン酸の精製方法を用いることにより、廃液中のメタンスルホン酸を精製して、精製されたメタンスルホン酸(A)を得、次に、精製されたメタンスルホン酸(A)を使用してPAEK樹脂を合成する。
メタンスルホン酸中にメタンスルホン酸無水物やメタンスルホン酸エステル類の不純物が残存したまま、係るメタンスルホン酸を用いてPAEK樹脂を製造しても、この場合、PAEK樹脂の重合反応が阻害され、良好な特性を示すPAEK樹脂を得ることは難しい。
しかし、本発明のメタンスルホン酸の精製方法を用いると、使用済みのメタンスルホン酸に対して精製することができる。得られた高純度のメタンスルホン酸を用いてPAEK樹脂を製造すると、良好な特性を示すPAEK樹脂を得ることができる。
使用済みのメタンスルホン酸を用いて、良好な特性を示すPAEK樹脂を得ることができ、本発明により、一旦使用したメタンスルホン酸であっても再利用できる有効な方法が提供できる。
<ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)の構造>
本発明の精製されたメタンスルホン酸を使用して合成されるPAEK樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択されるが、例えば、下記一般式(3)で表される構造を有するものであることが好ましい。
Figure 2021001128
ただしXは下記一般式(3−1)、Yは下記一般式(3−2)で表される。
Figure 2021001128
(式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
Figure 2021001128
(式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)
以下に、本発明に係るPAEK樹脂の製造方法について詳しく説明する。
<ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)の製造方法>
上記の構造を有するPAEK樹脂の製造方法として、本発明では、以下の製造方法によりPAEK樹脂を製造することが好ましい。
下記一般式(4―1)及び(4−2)で表されるモノマーの群から選ばれるモノマーを、メタンスルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させることにより、PAEK樹脂を製造する。
Figure 2021001128
(式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
Figure 2021001128
(式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)
上記一般式(4−1)で表されるモノマーとしては、ジフェニルエーテル(m=0)、1、4−ジフェノキシベンゼン(m=1)、4,4’−オキシビス(フェノキシベンゼン)(m=2)が挙げられる。
上記一般式(4−2)で表されるモノマーとしては、テレフタル酸(n=0)、4、4’−オキシビス安息香酸(n=1)、1,4−ビス(4−カルボキシフェノキシ)ベンゼン(n=2)、4,4’−ビス(p−カルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル(n=3)が挙げられる。
PAEK樹脂の製造方法においては、本発明に係るPAEK樹脂の効果を維持する範囲で、上記一般式(4−1)で表されるエーテル基を有する芳香族モノマーや、上記一般式(4−2)で表されるカルボン酸モノマー以外にも、他のエーテル基を有する芳香族モノマーや他のカルボン酸モノマー等のその他のモノマーを併用することができる。その他のモノマーとしては、例えば、イソフタル酸、5−メチルイソフタル酸、2−メチルイソフタル酸、4−メチルイソフタル酸、5−エチルイソフタル酸、2−エチルイソフタル酸、4−エチルイソフタル酸、5−プロピルイソフタル酸、2−プロピルイソフタル酸、4−プロピルイソフタル酸、5−ブチルイソフタル酸、2−ブチルイソフタル酸、4−ブチルイソフタル酸、ジフェン酸、2、2’−ビフェニルジカルボン酸、6,6’−ジメチルビフェニル−2,2’−ジカルボン酸等が挙げられる。
メタンスルホン酸の添加量と、五酸化二リンの添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、100:25〜100:1の範囲であることが好ましく、100:20〜100:2の範囲であることがより好ましく、100:15〜100:5の範囲であることがさらに好ましい。
上記一般式(4−1)で表されるモノマーの添加量と、上記一般式(4−2)で表されるモノマーの添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、以下の割合であることが好ましい。尚、反応成分中、エーテル基を有する芳香族モノマーが、上記一般式(4−1)のモノマー以外の他のエーテル基を有する芳香族モノマーも含む場合には、下記割合は、上記一般式(4−1)のモノマーを含む芳香族モノマー全体の合計量を基準としている。また、反応成分中、カルボン酸モノマーが、上記一般式(4−2)のモノマー以外の他のカルボン酸モノマーも含む場合には、下記割合は、上記一般式(4−2)のモノマーを含むカルボン酸モノマー全体の合計量を基準としている。つまり、エーテル基を有する芳香族モノマー(上記一般式(4−1)のモノマーを含む)/カルボン酸モノマー(上記一般式(4−2)のモノマーを含む)は、モル比で、0.8〜1.2が好ましく、0.9〜1.1がより好ましく、1.0〜1.1がさらに好ましい。
芳香族モノマー/カルボン酸モノマーが0.8以上であれば、カルボン酸モノマーの割合が高くなることにより生じる問題、つまりポリマー末端構造にカルボキシ基が存在し、そのカルボキシ基により成形加工時に脱炭酸反応が起こりガスが発生し、成形物にボイドが生じるという問題を有効に防止することができる。一方、芳香族モノマー/カルボン酸モノマーが1.2以下であれば、実用上十分な分子量のPAEK樹脂を得ることができる。
上記一般式(4−1)で表されるモノマー及び上記一般式(4−2)で表されるモノマーの合計の添加量と、メタンスルホン酸及び五酸化二リンの合計の添加量との割合は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、質量比で、1:100〜40:100の範囲であることが好ましく、2:100〜30:100の範囲であることがより好ましく、5:100〜20:100の範囲であることがさらに好ましい。
本発明の精製されたメタンスルホン酸を使用して製造されたPAEK樹脂は、他の配合物と合わせて樹脂組成物を作製することができる。また、本発明の精製されたメタンスルホン酸を使用して製造されたPAEK樹脂は、後述する各種成形品への適用が可能である。
<ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)を含有する樹脂組成物>
本発明に係るPAEK樹脂は、他の配合物と合わせて樹脂組成物を作製することができる。
他の配合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択できるが、例えば、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
フィラーの形状としては、特に限定はなく、例えば、粒子状、板状、繊維状等のフィラーが挙げられる。
PAEK樹脂を含有する樹脂組成物は、フィラーとしては繊維状フィラーを含有することがより好ましい。繊維状フィラーの中でも、カーボン繊維とガラス繊維は、産業上利用範囲が広いため、好ましい。
<ポリアリーレンエーテルケトン樹脂(PAEK樹脂)を含む成形体>
本発明に係るPAEK樹脂は、耐熱性に優れ高いガラス転移温度(Tg)を有するとともに、高い結晶性を保持したまま結晶融点(Tm)を制御することが可能で、良好な成形加工性を有する。そのため、ニートレジンとしての使用や、ガラス繊維、炭素繊維、フッ素樹脂等のコンパウンドとしての使用が可能である。そして、本発明に係るPAEK樹脂を成形することで、ロッド、ボード、フィルム、フィラメント等の一次加工品や、各種射出加工品、各種切削加工品、ギア、軸受、コンポジット、インプラント、3D成形品等の二次加工品を製造することができ、これらの本発明に係るPAEK樹脂を成形してなる成形品は、自動車、航空機、電気電子、医療用部材等の利用が可能である。
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
(純度(中和滴定))
自動滴定装置を用いて、ビーカーに、約50mLの純水とメタンスルホン酸1g(0.1mgの桁まで秤量)を加え、撹拌子を入れてスターラーで均一に混合し、電極をビーカーに浸漬させて、1mol/Lの水酸化ナトリウム標準水溶液で滴定し、次式により純度(A(%))を測定した。
A(%)=0.02403(g/mL)×b(mL)×f/S(g)
ここで、Aは純度(%)、bは1mol/Lの水酸化ナトリウム溶液の滴定量(mL)、fは水酸化ナトリウム溶液のファクター、Sは試料の秤量値(g)、0.02403(g/mL)は1mol/L水酸化ナトリウム溶液1mLのメタンスルホン酸相当量(g)を示す。
(還元粘度(PAEK樹脂の分子量相当)dL/g)
キャノンフェンスケ粘度計(柴田科学株式会社製)を用いて、25℃において、溶媒、及び、溶媒100mL中にポリマー0.3gを溶解したポリマー溶液の流出時間を測定し、次式で還元粘度を算出した。なお溶媒には、クロロホルムとトリフルオロ酢酸を4:1の質量比で混合した溶液を用いた。
還元粘度(dL/g)=(t−t0)/(c×t0)
ここで、t0は溶媒の流出時間、tはポリマー溶液の流出時間、cはポリマー溶液中のポリマー濃度(g/dL)を示す。
(5%重量減少温度(Td5(℃)))
リガク製TG−DTA装置 TG−8120を用いて、20mL/minの窒素流下、20℃/minの昇温速度で測定を行い、5%重量減少温度を測定した。
(参考例)
窒素導入管、温度計、還流冷却器、及び撹拌装置を備えた4つ口のセパラブルフラスコに、メタンスルホン酸818gと五酸化二リン82gを仕込み、窒素雰囲気下の室温で20時間撹拌した。その後、イソフタル酸2.0gとジフェニルエーテル40.2gを仕込み、10時間反応させた。その後、4,4’−オキシビス安息香酸57.9gを添加し、更に40時間反応させた。室温まで冷却後、反応溶液を、メタンスルホン酸に対し2質量倍の強撹拌したメタノール中に注ぎ込み、ポリマーを析出させ、濾過した。次に、ポリマーを、仕込みモノマー量に対し6質量倍のメタノール中で60℃において30分撹拌した後、濾過する操作を2回行った。更に、ポリマーを、仕込みモノマー量に対し6質量倍のイオン交換水中で100℃において30分撹拌した後、濾過する操作を2回行った。その後、ポリマーを真空下の180℃で10時間乾燥させた。還元粘度を測定したところ、1.1dL/gであった。
回収した濾液として、未精製メタンスルホン酸の混合物である濾液Aを得た。濾液Aには、メタンスルホン酸808gが含まれていた。
(実施例1)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して50質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が99%、回収率94%であった。
ここで、精製メタンスルホン酸の回収率(%)とは、参考例で回収されたPAEK樹脂の製造における廃液(濾液A)中のメタンスルホン酸の質量に対する、第1の工程から第3の工程を経て得られた精製されたメタンスルホン酸の質量の割合をいう。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。尚、用いる各成分の仕込み量は、用いる精製メタンスルホン酸の量に応じて適宜調整した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度(dL/g)を測定したところ、1.1dL/gであり、参考例に係るPAEK樹脂と同じ値を示した。還元粘度は、PAEK樹脂の分子量に相関する指標である。したがって、参考例に係るPAEK樹脂が示す還元粘度の値に近い値を示すほど(大きい値を示すほど)望ましい。実施例1の結果から、実施例1の精製メタンスルホン酸を使用すれば、使用済のメタンスルホン酸を再利用した場合であっても、未使用のメタンスルホン酸を使ってPAEK樹脂を合成した参考例と同じようなレベルの良好なPAEK樹脂を製造できることがわかった。
また、合成されたPAEK樹脂の5%重量減少温度(℃)を測定したところ、550℃であった。5%重量減少温度は、溶融安定性の指標であり、PAEK樹脂の成形体を形成するうえで実用上500℃以上であることが望ましい。
合成されたPAEK樹脂の物性値の測定結果を下記表1に示す。
(実施例2)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、3mbarまで減圧して、190℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して20質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が99%、回収率86%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例3)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して800質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで7時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が99%、回収率92%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例4)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して500質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで5時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が99%、回収率93%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例5)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して100質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が99%、回収率93%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例6)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して5質量%の水を添加して、100℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が98%、回収率85%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例7)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して50質量%の水を添加して、20℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が98%、回収率85%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例8)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸と、仕込んだ濾液A中のメタンスルホン酸の量に対して50質量%の水を添加して、50℃で1時間撹拌した。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が98%、回収率86%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(実施例9)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、採取したメタンスルホン酸を仕込んだ。その後5mbarまで減圧して、150℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、水を蒸留留分受器に留去した(第3の工程)。
第3の工程において、フラスコに残った精製メタンスルホン酸を採取した。精製メタンスルホン酸は、純度が96%、回収率82%であった。
得られた精製メタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(比較例1)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて20mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、200℃まで6時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
このとき、採取したメタンスルホン酸は、純度が88%、回収率82%であった。
得られたメタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。
(比較例2)
窒素導入管、温度計、凝縮器及び蒸留留分受器付き真空ポンプ、及び撹拌装置を備えた4つ口のフラスコに、濾液Aを仕込み、160mbarまで減圧して、60℃で3時間撹拌し、続いて10mbarまで減圧して、150℃で3時間撹拌し、メタノール及び水を蒸留留分受器に留去した(第1の工程)。
蒸留留分受器を新しいものに取り替えた後、1mbarまで減圧して、170℃まで3時間かけて昇温しながら撹拌し、メタンスルホン酸を蒸留留分受器に採取した(第2の工程)。
このとき、採取したメタンスルホン酸は、純度が96%、回収率40%であった。
得られたメタンスルホン酸を用いて、参考例と同様の方法により、PAEK樹脂を合成した。
合成されたPAEK樹脂の還元粘度、及び5%重量減少温度(℃)を測定した。測定結果を下記表1に示す。

Figure 2021001128
実施例で示すように、本発明のメタンスルホン酸の精製方法を用いると、使用済みのメタンスルホン酸に対して有効に精製することができる。得られた高純度のメタンスルホン酸を用いてPAEK樹脂を製造すると、良好な特性を示すPAEK樹脂を得ることができる。
使用済みのメタンスルホン酸を用いて、良好な特性を示すPAEK樹脂を得ることができ、本発明により使用済みのメタンスルホン酸を再利用できる有効な方法が提供できることが確認できた。

Claims (9)

  1. メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む第1の混合物から、精製されたメタンスルホン酸を得る、メタンスルホン酸の精製方法であって、
    前記第1の混合物を蒸留することにより、前記第1の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第1の工程と、
    前記第1の工程で得られた蒸留残渣を蒸留することにより、前記蒸留残渣からメタンスルホン酸を留去する第2の工程と、
    前記第2の工程で留分として留去されたメタンスルホン酸を含む第2の混合物を蒸留することにより、前記第2の混合物から有機溶剤及び/又は水を留去する第3の工程と
    を含むことを特徴とするメタンスルホン酸の精製方法。
  2. 前記第2の工程で留分として留去された前記第2の混合物に含有されているメタンスルホン酸エステル及び/又はメタンスルホン酸無水物を加水分解する工程を、前記第3の工程の前にさらに有する、請求項1に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
  3. 前記加水分解する工程において、前記第1の混合物に含有されているメタンスルホン酸に対して1〜500質量%の量の水を添加する、請求項2に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
  4. 前記加水分解する工程において、添加した前記水と前記第2の混合物とを20〜140℃の温度条件で混合する、請求項3に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
  5. 前記精製されたメタンスルホン酸の純度が、90〜100%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
  6. 前記第1の混合物におけるメタンスルホン酸の質量に対する、前記第1の工程から前記第3の工程を経て得られた精製されたメタンスルホン酸の質量の割合(回収率)が、80〜100%である、請求項1から5のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法。
  7. 請求項1から6のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法を用いて精製されたメタンスルホン酸をポリアリーレンエーテルケトン樹脂の製造方法に使用する、精製されたメタンスルホン酸の使用方法であって、
    メタンスルホン酸と五酸化二リンの混合物の存在下でポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造した際に、濾別したポリアリーレンエーテルケトン樹脂から分離された、メタンスルホン酸と有機溶剤及び/又は水と(ポリ)リン酸及び/又は(ポリ)リン酸エステルとを含む廃液に対して、請求項1から6のいずれか一項に記載のメタンスルホン酸の精製方法を用いることにより、前記廃液から精製されたメタンスルホン酸(A)を得て、
    前記廃液から得られた精製されたメタンスルホン酸(A)と五酸化二リンの混合物の存在下でポリアリーレンエーテルケトン樹脂を製造する
    ことを特徴とする精製されたメタンスルホン酸の使用方法。
  8. 前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が下記一般式(3)で表される構造を有する、請求項7に記載の精製されたメタンスルホン酸の使用方法。
    Figure 2021001128
    ただしXは下記一般式(3−1)、Yは下記一般式(3−2)で表される。
    Figure 2021001128
    (式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
    Figure 2021001128
    (式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)
  9. 前記ポリアリーレンエーテルケトン樹脂が、下記一般式(4―1)及び(4−2)で表されるモノマーの群から選ばれるモノマーを、メタンスルホン酸及び五酸化二リンの混合物の存在下で反応させることで製造される、請求項8に記載の精製されたメタンスルホン酸の使用方法。
    Figure 2021001128
    (式中、mは0〜2のいずれかの整数を示す。)
    Figure 2021001128
    (式中、nは0〜3のいずれかの整数を示す。)

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