以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。以下で述べる構成は、説明のための例示であって、車両、空調装置、接部加熱装置の仕様等に合わせて適宜変更が可能である。全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、暖房装置12が搭載された車両10を模式的に示す図である。車両10には3つ以上のシートが存在するが、図1には、そのうちの2つのシート70,71が描かれている。車両10は、バッテリ92からモータ(不図示)に電力が供給されることにより駆動する電気自動車である。
暖房装置12は、車室空間94へ空調用空気を送風する空調装置14と、乗員が着座するシート70,71を加熱するシート加熱装置74,75(接部加熱装置とも言う)を含む。空調装置14は、車両前方に配置されており、空調用空気を加熱する空気加熱装置18を含む。シート加熱装置は、シート毎に設けられる。空気加熱装置18の熱源(後述する水加熱ヒータ)と、シート加熱装置74,75の熱源(後述するシートヒータ78,79)は、バッテリ92から電力が供給されて発熱する。
図2は、暖房装置12の構成を模式的に示す図であり、図3は、暖房装置12の電気的構成を示すブロック図である。図2では、複数のシートのうち運転席70のみが描かれており、同様に、図3では、複数のシート加熱装置74,75のうち運転席70のシート加熱装置74のみが描かれている。
図2に示すように、空調装置14は、送風空気の通風路を形成する空調ケース20と、送風空気の冷却や除湿を行う冷却除湿装置16と、送風空気の加熱を行う空気加熱装置18を含む。
空調ケース20は、一方側に内気吸入口21及び外気吸入口22が形成され、他方側に、車室内へ向かう空気が通過する複数の吹出口60,62,64が形成される。内気吸入口21は、車室内空気を空調ケース20内へ取り込む空気入口であり、外気吸入口22は、車両外部の空気を空調ケース20内へ取り込む空気入口である。内気吸入口21と外気吸入口22に隣接して、内外気切替ドア23が設けられる。内外気切替ドア23は、サーボモータなどのアクチュエータによって駆動され、内気吸入口21と外気吸入口22との開度を変更する。内外気切替ドア23より空気下流側にはブロワ32が設けられる。ブロワ32は、空調ケース20内において車室内に向かう空気流を発生させる遠心式送風機である。ブロワ32は、吹出口60,62,64から車室内に向けて吹き出される空調風の吹出風量を変更する機能を有する。
ブロワ32よりも空気下流側には、冷却除湿装置の一部であるエバポレータ36と、空気加熱装置18の一部であるヒータコア50が設けられる。エバポレータ36は、空調ケース20内を通過する空気を冷却し、除湿する機能を有し、ヒータコア50は、空調ケース20内を通過する空気を加熱する機能を有する。ヒータコア50は、エバポレータ36よりも空気下流側に設けられる。
空調ケース20内には、エバポレータ36を通過した空気のうち、ヒータコア50を通過させる空気と、ヒータコア50をバイパスさせる空気との比率を変化させるエアミックスドア24が設けられる。エアミックスドア24は、サーボモータなどのアクチュエータにより駆動される。
空調ケース20の複数の吹出口60,62,64のそれぞれには、吹出口ドア26,28,30が設けられる。各吹出口ドア26,28,30は、サーボモータなどのアクチュエータにより駆動され、各吹出口60,62,64から吹き出す空調風の風量を変更する機能を有する。
次に、冷却除湿装置16について説明する。冷却除湿装置16は、エバポレータ36の周囲を空気が通過することにより空気を冷却及び除湿する装置である。冷却除湿装置16は、冷媒が循環する冷凍サイクル34を有する。冷凍サイクル34は、エバポレータ36から流入した冷媒を圧縮して吐出するコンプレッサ38と、コンプレッサ38から吐出された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ42と、コンデンサ42から流入した液冷媒を気液分離するレシーバタンク44と、レシーバタンク44より流入した液冷媒を断熱膨張させる膨張弁46と、膨張弁46より流入した気液二相状態の冷媒を蒸発気化させるエバポレータ36を含む。エバポレータ36には、モータ40から回転動力が伝達される。エバポレータ36の空気冷却能力は、モータ40の回転数を変更することにより可変となっている。
次に、空気加熱装置18について説明する。空気加熱装置18は、ヒータコア50の周囲を空気が通過することにより空気を加熱する装置である。空気加熱装置18は、温水が循環する温水回路48を有する。温水回路48は、水(温水)を温水回路48に循環させるための電動ウォータポンプ54と、バッテリ92から電力が供給されて、水を加熱する水加熱ヒータ56と、水加熱ヒータ56で生成された温水と送風空気との熱交換を行うヒータコア50と、温水を一時的に溜めるリザーブタンク52を含む。ヒータコア50の空気加熱能力は、水加熱ヒータ56に供給する電力を変更することにより可変となっている。
次に、空調装置14の電気的構成について説明する。図3に示すように、空調装置14は、空調ECU66(制御部とも言う)と空調操作パネル68を含む。空調ECU66の内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAMなどのメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成されるマイクロコンピュータが設けられている。空調操作パネル68は、例えば、液晶ディスプレイと複数のスイッチを含み、乗員により操作されて、空調装置14のオン/オフや設定温度等を受け付ける。空調操作パネル68は、空調ECU66と接続されており、乗員から受け付けた操作情報は空調ECU66へ入力される。
空調ECU66には、車室内温度を検出する内気温センサ100、車両外部の温度(外気温)を検出する外気温センサ102、および日射量を検出する日射センサ104が接続されており、各センサ100,102,104の検出値が入力される。また、空調ECU66には、空調ケース20内に配置されたブロワ32、冷却除湿装置16のコンプレッサ38を駆動するモータ40のモータ駆動回路110、内外気切替ドア23のアクチュエータ112、エアミックスドア24のアクチュエータ114、および吹出口ドア26,28,30のそれぞれのアクチュエータ116,118、120が接続され、空調ECU66は、これらの機器を制御する。
空気加熱装置18は、温水回路48を循環する温水の温度を検出する水温センサ58を含む。空調ECU66には、水温センサ58が接続され、その検出値が入力される。また、空調ECU66には、空気加熱装置18の電動ウォータポンプ54と水加熱ヒータ56が接続され、空調ECU66は、これらの機器を制御する。詳細は後述するが、空調ECU66は、空気加熱装置18の温水回路48の目標水温を決定し、目標水温と温水回路48の温水の実温度(水温センサ58の検出値)の誤差が無くなるように、水加熱ヒータ56へ供給する電力を調整し、水加熱ヒータ56の発熱量を調整する。
次に、シート加熱装置74について説明する。図2に示すように、シート加熱装置74は、シート70の座部と背もたれに配置されたシートヒータ78を含む。また、図3に示すように、シート加熱装置74は、シートECU82とシート操作パネル86を含む。シートECU82の内部には、図示は省略するが、演算処理や制御処理を行うCPU(中央演算装置)、ROMやRAMなどのメモリ、およびI/Oポート(入力/出力回路)などの機能を含んで構成されるマイクロコンピュータが設けられている。シートECU82には、シート操作パネル86とシートヒータ78が接続されており、シートECU82は、シート操作パネル86から入力される操作情報に基づいて、シートヒータ78に供給する電力を変化させ、その発熱量を変化させる。また、シートECU82は、空調ECU66と接続されており、空調ECU66と情報のやりとりが可能となっている。
シート操作パネル86は、乗員がシートヒータ78を操作するための「OFF」、「AUTO」、「Low」、「Mid」、「High」のスイッチ90を含む。シート操作パネル86の「OFF」のスイッチ90が押下された際には、シートECU82は、シートヒータ78への電力供給を停止(シートヒータ78をオフ)し、シートヒータ78の発熱を止める。一方、シート操作パネル86の「AUTO」、「Low」、「Mid」、「High」のスイッチ90が押下された際には、シートヒータ78への電力供給を行い(シートヒータ78をオン)、シートヒータ78を発熱させる。具体的には、シート操作パネル86の「Low」のスイッチ90が押下された際には、シートECU82は、シートヒータ78へ小さな電力を供給し、シートヒータ78を低い発熱量で発熱させ、「Mid」のスイッチ90が押下された際には、シートECU82は、「Low」のスイッチ90が押下された場合よりも大きな電力をシートヒータ78へ供給し、シートヒータ78を発熱させ、「High」のスイッチ90が押下された際には、シートECU82は、「Mid」のスイッチ90が押下された場合よりも大きな電力をシートヒータ78へ供給し、シートヒータ78を高い発熱量で発熱させる。
また、シート操作パネル86の「AUTO」のスイッチ90が押下された際には、シートECU82は、車室温度に応じて、シートヒータ78へ供給する電力を変化させ、その発熱量を変化させる。この際、シートECU82は、例えば、空調ECU66を介して内気温センサ100の検出値を車室温度として取得する。シートECU82は、車室温度に応じて、「Low」、「Mid」、「High」のスイッチ90が押下された際にシートヒータ78へ供給する3段階の電力のうちのいずれかをシートヒータ78へ適用する。具体的には、シートECU82は、車室温度が第1閾値より高い場合には、スイッチが「Low」の際の電力でシートヒータ78を作動させ(以下、シートヒータの作動状態が「Low」と言う)、車室温度が第1閾値以下であり、かつ、第2閾値より高い場合には、スイッチが「Mid」の際の電力でシートヒータ78を作動させ(以下、シートヒータの作動状態が「Mid」と言う)、車室温度が第2閾値以下である場合には、スイッチが「High」の際の電力でシートヒータ78を作動させる(以下、シートヒータの作動状態が「High」と言う)。
次に、空調装置14の制御処理について説明する。図4は、空調装置14の制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。図4のフローは、空調ECU66(制御部)が所定周期で実行する。本実施形態では、空調装置14の空気加熱装置18の水加熱ヒータ56が、運転席のシートヒータ78のオン/オフにしたがって制御される点に特徴があり、以下、図4のフローを参照しながらそれについて詳しく説明する。
まず、図4のS100で、空調ECU66は、空調装置14がオンにされているかを確認する。空調装置14がオフの場合(S100:No)には、この周期の処理を終了する。一方、空調装置14がオンの場合(S100:Yes)には、S102に進む。
S102で、空調ECU66は、空調ケース20の吹出口60,62,64から吹き出す空調空気の目標温度である目標吹出温度(TAOとも言う)を算出する。TAOの算出に際し、まず、空調ECU66は、空調操作パネル68を介して乗員から設定された設定温度Tsetと、内気温センサ100の検出値である車室内温度Trと、外気温センサ102の検出値である外気温Tamと、日射センサ104の検出値である日射量Tsを取得する。そして、空調ECU66は、例えば、以下の数式1を用いてTAOを算出する。
TAO=Kset×Tset−Kr×Tr−Kam×Tam−Ks×Ts+C
・・・(1)
数式1において、Kset,Kr,KamおよびKsはゲインであり、Cは全体にかかる補正用の定数である。Kset,Kr,Kam,KsおよびCは、例えば、空調ECU66のメモリに予め記憶しておく。
次に、S104で、空調ECU66は、TAOに基づいてブロワ32の風量を決定し、決定された風量となるようにブロワ32を制御する。そして、S106で、空調ECU66は、TAOに基づいて内外気切替ドア23とエアミックスドア24のそれぞれの開度を決定し、決定された開度となるように内外気切替ドア23のアクチュエータ112と、エアミックスドア24のアクチュエータ114を制御する。例えば、冬季に、車室内温度に比べて目標吹出温度(TAO)が非常に高い場合には、図2に示すように、エバポレータ36を通過した空気のほぼ全てがヒータコア50を通過するようにエアミックスドア24の開度が制御される。
次に、S108で、空調ECU66は、TAOに基づいて冷却除湿装置16のコンプレッサ38を回転駆動するモータ40の回転数を決定し、決定された回転数となるようにモータ40のモータ駆動回路110を制御する。
次に、S110で、空調ECU66は、TAOに基づいて空気加熱装置18の温水の目標水温Tgwを決定する。例えば、空調ECU66のメモリに、TAOとTgwを関連付けたマップを予め記憶しておき、空調ECU66は、当該マップを参照することによりTAOからTgwを決定する。または、空調ECU66は、TAOを用いて所定の演算を行うことによりTgwを算出する。ここで、Tgwは、TAOが高くなるほど、高い値となるように決定される。
次に、S112で、空調ECU66は、運転席のシート加熱装置74のシートECU82から、運転席のシートヒータ78のオン/オフの情報を取得する。そして、シートヒータ78がオフの場合(S112:No)には、空調ECU66は、S110で決定された目標水温Tgwと、空気加熱装置18の温水回路48の温水の実温度Taw(水温センサ58の検出値)の誤差が無くなるように、水加熱ヒータ56へ供給する電力を制御し、その発熱量を制御する。そして、この周期の処理を終了する。
一方、運転席のシートヒータ78がオンの場合(S112:Yes)には、S114へ進む。S114で、空調ECU66は、S110で決定された目標水温Tgwを低下させるようにそれを補正する。空調ECU66は、例えば、以下の数式2を用いてTgwを補正する。
Tgw=Kgw×Tgw ・・・(2)
数式2において、Kgwは1.0未満の補正係数であり、例えば、空調ECU66のメモリに予め記憶しておく。そして、空調ECU66は、S114で補正された目標水温Tgwと、空気加熱装置18の温水回路48の温水の実温度Taw(水温センサ58の検出値)の誤差が無くなるように、水加熱ヒータ56へ供給する電力を制御し、その発熱量を制御する。ここで、シートヒータ78がオフの場合(S112:No)の目標水温Tgwに比べて、シートヒータ78がオンの場合(S112:Yes)の場合の目標水温Tgwは低く補正されているため、空調ECU66は、シートヒータ78がオフの場合に水加熱ヒータ56へ供給する電力に比べて、シートヒータ78がオンの場合に水加熱ヒータ56へ供給する電力を低くすることになる。以上説明した図4のフローの処理を、空調ECU66は、所定周期で繰り返し実行する。
次に、以上説明した本実施形態の暖房装置12の作用効果について説明する。
以上説明した本実施形態の暖房装置12によれば、運転席のシート加熱装置74(接部加熱装置)のシートヒータ78(熱源)がオンの場合には、シートヒータ78がオフの場合に比べて、空気加熱装置18の水加熱ヒータ56(熱源)へ供給する電力を低くするので、シートヒータ78のオン/オフに基づいて空気加熱装置18の水加熱ヒータ56へ供給する電力を調整しない場合に比べて、バッテリ92の消費電力を抑制することができる。本実施形態の車両10(電気自動車)はバッテリ92により駆動されるので、バッテリ92の消費電力が抑制された分、車両の航続距離を長くすることができる。すなわち、1回のバッテリ充電に対する車両10の航続可能距離を長くする(燃費性能を向上する)ことができる。
図5は、本実施形態において、シートヒータ78をオフにして空調装置14を一定時間動作させたときの水加熱ヒータ56の消費エネルギー(ケース1)と、シートヒータ78をオンにして空調装置14をケース1と同じ時間動作させたときの水加熱ヒータ56とシートヒータ78の消費エネルギー(ケース2)の一例を示すグラフである。図5において、Aは水加熱ヒータ56の消費エネルギーを示しており、Bはシートヒータ78の消費エネルギーを示している。図5に示すように、水加熱ヒータ56は、広い車室空間94(図1参照)を暖めるため、その消費エネルギー(熱量)は、乗員に密接して配置されるシートヒータ79の消費エネルギー(熱量)に比べて、はるかに大きい。図5のケース2を見れば分かるように、本実施形態の暖房装置12を採用して、シートヒータ78がオンの場合に水加熱ヒータ56へ供給する電力を低くし、その消費エネルギーを低くすることは、バッテリ92の電気エネルギーの節約に大きく貢献する。
一方、このように水加熱ヒータ56へ供給する電力を低下させると、車室内に送風される空調用空気の温度が低下し、車室内温度も低下するが、シートヒータ78がオンになっているので乗員に対して入熱することができ、乗員の温感快適性を維持することが可能である。このように、本実施形態の暖房装置12によれば、乗員の温感快適性を確保しつつ、バッテリ92の消費電力を抑制することが可能である。
なお、本実施形態の暖房装置12において、空調ECU66は、シートヒータ78がオフの場合に水加熱ヒータ56へ供給する電力に比べて、シートヒータ78がオンの場合にシートヒータ78と水加熱ヒータ56のそれぞれへ供給する電力を合わせた合計電力が低くなるように、目標水温を補正(図4のS114)することが好ましい。このようにすれば、乗員が積極的にシートヒータ78をオンにすることにより、バッテリ92の消費電力を抑制することができる。
また、本実施形態の暖房装置12によれば、空調ECU66は、車両の外気温Tamが高いほど、目標吹出温度(TAO)を低くし(上記数式1を参照)、TAOが低くなるほど空気加熱装置18の目標水温Tgwを低くする(図4のS110)。すなわち、空調ECU66は、車両の外気温Tamが高いほど、空気加熱装置18の水加熱ヒータ56へ供給する電力を低くする。したがって、車両の外気温に基づいて水加熱ヒータ56へ供給する電力を調整しない場合に比べて、バッテリ92の消費電力を抑制することができる。
次に、変形例について説明する。以上説明した実施形態の暖房装置12は、シートヒータ78がオンになっている場合に、空調ECU66が、シートヒータ78に供給されている電力の大小に関係なく、目標水温Tgwに対して一定の補正を行った(図4のS114)。しかし、空調ECU66は、シートヒータ78に供給されている電力が高いほど、目標水温Tgwが低くなるように目標水温Tgwの補正を行ってもよい。例えば、上記した数式2の補正係数Kgwを、図6に示すように、シートヒータ78の作動状態が「Low」、「Mid」、「High」と変化するに従って、小さくする。シートヒータ78に供給する電力が高いほど、目標水温Tgwを低くするので、シートヒータ78に供給する電力が高いほど、水加熱ヒータ56へ供給する電力も低くすることになる。この構成によれば、シートヒータ78に供給する電力がより高い場合には、水加熱ヒータ56へ供給する電力をより低くするので、シートヒータ78に供給する電力に応じて水加熱ヒータ56へ供給する電力を調整しない場合に比べて、バッテリ92の消費電力を効果的に抑制することができる。この構成の場合、シートヒータ78に供給する電力が高くなると、水加熱ヒータ56へ供給する電力が低くなって、車室内に送風される空調用空気の温度が低下して車室内温度も低下するが、シートヒータ78に供給する電力が高くなっているので、乗員に対して多くの熱量を入熱することができ、乗員の温感快適性は維持される。
また、以上説明した実施形態の暖房装置12は、運転席のシートヒータ78の作動状態にしたがって、水加熱ヒータ56に供給する電力を変更するものであった。しかし、運転席以外のシートのシートヒータの作動状態にしたがって、水加熱ヒータ56に供給する電力を変更するものであってもよい。例えば、助手席のシートヒータの作動状態にしたがって、水加熱ヒータ56に供給する電力を変更してもよい。または、例えば、後部シート71(図1参照)のシートヒータ79の作動状態にしたがって、水加熱ヒータ56に供給する電力を変更してもよい。また、別の実施形態として、例えば、予め定められた数以上のシートのシートヒータがオンの場合にだけ、空気加熱装置18の目標水温を低く補正して、水加熱ヒータ56へ供給する電力を低減するようにしてもよい。
また、以上説明した実施形態の空気加熱装置18は、温水が供給されるヒータコア50の周囲を空気が通過することで空気を加熱する装置(温水型加熱装置と言う)であった。しかし、空気加熱装置18は温水型加熱装置に限定されるものではない。例えば、空気加熱装置18は、バッテリ92から電力が供給されることで発熱する通電発熱素子の周囲を空気が通過することで空気を加熱する装置(素子型加熱装置とも言う)であってもよい。この場合、シートヒータ78がオンの場合には、シートヒータ78がオフの場合に比べて、通電発熱素子へ供給する電力Peを低くする。これは、例えば、空調ECU66が、予め求めた通電発熱素子への供給電力Peを低下させるように補正することにより行う。空調ECU66は、例えば、以下の数式3を用いてPeを補正する。
Pe=Ke×Pe ・・・(3)
数式3において、Keは1.0未満の補正係数である。なお、Keは、図6に示すKgwと同様に、シートヒータの作動状態が「Low」、「Mid」、「High」と変化するに従って、小さくなるようにしてもよい。
また、以上説明した実施形態の暖房装置12が搭載された車両10は、電気自動車であった。しかし、車両10は電気自動車に限定されるものではない。例えば、車両10は、バッテリ92から電力が供給されるモータと、エンジンにより駆動するハイブリッド車両(プラグインハイブリッド車両を含む)であってもよい。なお、電気自動車とハイブリッド車両を、電動車両と言うことができる。また、車両10は、モータではなくエンジンで常に駆動するエンジン車両であってもよい。例えば、エンジン車両やハイブリッド車両において、エンジン冷却水を用いた空気加熱装置(主加熱装置)に加えて、上記したバッテリ92駆動の温水型加熱装置などの空気加熱装置を補助加熱装置として設ける構成が考えられる。このような車両において、シートヒータの作動状態にしたがって補助加熱装置へ供給する電力を変更すれば、車両に搭載されたバッテリ92の消費電力を削減することができる。また、バッテリ92の放電量が減って、バッテリ92の劣化が抑制され得る。
また、以上説明した実施形態では、乗員身体に接する部材を加熱する装置(接部加熱装置)は、シート加熱装置74であった。しかし、接部加熱装置は、シート加熱装置74に限定されるものではない。例えば、接部加熱装置は、図7に示すようなステアリング加熱装置202であってもよい。また、例えば、接部加熱装置は、図9に示すような床加熱装置302(床暖房装置とも言う)であってもよい。なお、本明細書における「乗員身体に接する部材」とは、乗員の肌に直接、接する部材、または、洋服や靴などを介して間接的に乗員に接する部材を意味する。
ここで、接部加熱装置がステアリング加熱装置202である暖房装置12の実施形態について簡単に説明する。図7は、以上で説明した図1に相当する図であり、図1との違いは、シートヒータにバッテリ92から電力を供給するのではなく、ステアリング200に配置されたステアリングヒータ204にバッテリ92から電力を供給する点である。また、図8は、以上で説明した図3に相当する図であり、図3との違いは、シート加熱装置74が設けられているのではなく、ステアリング加熱装置202が設けられている点である。図8に示すように、ステアリング加熱装置202は、ステアリングヒータ204と、ステアリングECU206と、ステアリング操作パネル208を含む。ステアリングECU206は、上記したシートECU82(図3参照)と同様の構成と機能を有し、ステアリング操作パネル208は、上記したシート操作パネル86と同様の構成と機能を有する。
ステアリングECU206は、ステアリング操作パネル208から入力される操作情報に基づいて、ステアリングヒータ204に供給する電力を変化させ、ステアリングヒータ204の発熱量を変化させる。また、ステアリングECU206は、空調ECU66と接続されており、空調ECU66と情報のやりとりが可能となっている。
この構成の暖房装置12において、空調ECU66は、上記した図4のフローと同様の制御処理を行う。この際、図4のフローのS112の「シートヒータがONか否か」の確認に代えて、「ステアリングヒータがONか否か」の確認を行う。
この構成の暖房装置12においても、ステアリング加熱装置202(接部加熱装置)のステアリングヒータ204(熱源)がオンの場合には、ステアリング加熱装置202のステアリングヒータ204がオフの場合に比べて、空気加熱装置18の水加熱ヒータ56(熱源)へ供給する電力を低くするので、バッテリ92の消費電力を抑制することができる。このように水加熱ヒータ56へ供給する電力を低下させると、車室内に送風される空調用空気の温度が低下して車室内温度も低下するが、ステアリングヒータ204がオンになっているので乗員に対して入熱することができ、乗員の温感快適性を維持することが可能である。
次に、接部加熱装置が床加熱装置302である暖房装置12の実施形態について簡単に説明する。図9は、以上で説明した図1に相当する図であり、図1との違いは、シートヒータにバッテリ92から電力を供給するのではなく、床300の下に配置された床ヒータ304にバッテリ92から電力を供給する点である。また、図10は、以上で説明した図3に相当する図であり、図3との違いは、シート加熱装置74が設けられているのではなく、床加熱装置302が設けられている点である。図10に示すように、床加熱装置302は、床ヒータ304と、床ECU306と、床操作パネル308を含む。床ECU306は、上記したシートECU82(図3参照)と同様の構成と機能を有し、床操作パネル308は、上記したシート操作パネル86と同様の構成と機能を有する。
床ECU306は、床操作パネル308から入力される操作情報に基づいて、床ヒータ304に供給する電力を変化させ、床ヒータ304の発熱量を変化させる。また、床ECU306は、空調ECU66と接続されており、空調ECU66と情報のやりとりが可能となっている。
この構成の暖房装置12において、空調ECU66は、上記した図4のフローと同様の制御処理を行う。この際、図4のフローのS112の「シートヒータがONか否か」の確認に代えて、「床ヒータがONか否か」の確認を行う。
この構成の暖房装置12においても、床加熱装置302(接部加熱装置)の床ヒータ304(熱源)がオンの場合には、床加熱装置302の床ヒータ304がオフの場合に比べて、空気加熱装置18の水加熱ヒータ56(熱源)へ供給する電力を低くするので、バッテリ92の消費電力を抑制することができる。このように水加熱ヒータ56へ供給する電力を低下させると、車室内に送風される空調用空気の温度が低下して車室内温度も低下するが、床ヒータ304がオンになっているので乗員に対して入熱することができ、乗員の温感快適性を維持することが可能である。
なお、以上説明した図1、7,9の車両10は、シート加熱装置、ステアリング加熱装置、および床加熱装置(床暖房装置)が選択的に設けられた車両10であったが、これらを組み合わせて設けた車両10であってもよい。この場合、例えば、予め定められた数以上の接部加熱装置がオンの場合にだけ、空気加熱装置18の目標水温を低く補正して、水加熱ヒータ56へ供給する電力を低減するようにしてもよい。
また、以上説明した暖房装置12は、車両に搭載されたものであった。しかし、暖房装置12は、車両以外の移動体に搭載されてもよい。例えば、航空機に、以上で説明した構成の暖房装置12を搭載する。この場合、例えば、航空機の客室に設けられたシート加熱装置や床加熱装置等の接部加熱装置の熱源がオンの場合には、接部加熱装置の熱源がオフの場合に比べて、客室に空調空気を送風する空調装置の空気加熱装置の熱源へ供給する電力を低くする。また、例えば、電車に、以上で説明した構成の暖房装置12を搭載する。この場合、例えば、電車内に設けられたシート加熱装置や床加熱装置等の接部加熱装置の熱源がオンの場合には、接部加熱装置の熱源がオフの場合に比べて、電車内に空調空気を送風する空調装置の空気加熱装置の熱源へ供給する電力を低くする。なお、移動体とは、車両、航空機、電車に限定されるものではなく、人や動物などを乗せて移動する様々な形態の乗り物が含まれる。