以下、本発明の検体ラック搬送装置及び自動分析システムの実施の形態例について、図1〜図11を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、説明は以下の順序で行うが、本発明は、必ずしも以下の形態に限定されるものではない。
1.実施の形態例
1−1.自動分析システムの構成
まず、本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかる自動分析システムについて図1を参照して説明する。
図1は、本例の自動分析システムを模式的に示す説明図である。
図1に示す装置は、本発明の自動分析システムの一例として適用する生化学分析システム100である。生化学分析システム100は、血液や尿などの生体試料に含まれる特定の成分の量を自動的に測定する装置である。
図1に示すように、生化学分析システム100は、生体試料に含まれる特定の成分の量を自動的に測定する生化学分析装置1と、検体ラック90を搬送する検体ラック搬送装置30と、を有している。
1−2.生化学分析装置の構成
生化学分析装置1は、サンプルターンテーブル2と、希釈ターンテーブル3と、第1試薬ターンテーブル4と、第2試薬ターンテーブル5と、反応ターンテーブル6と、を備えている。また、生化学分析装置1は、サンプル希釈ピペット7と、サンプリングピペット8と、希釈撹拌装置9と、希釈洗浄装置11と、第1試薬ピペット12と、第2試薬ピペット13と、第1反応撹拌装置14と、第2反応撹拌装置15と、多波長光度計16と、反応容器洗浄装置18と、を備えている。
本例の検体収容ユニットの一例を示すサンプルターンテーブル2は、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されている。このサンプルターンテーブル2には、複数の検体容器21と、複数の希釈液容器22が収容されている。検体容器21には、血液や尿等からなる検体(サンプル)が収容される。希釈液容器22には、通常の希釈液である生理食塩水以外の特別な希釈液が収容される。
複数の検体容器21は、サンプルターンテーブル2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。また、サンプルターンテーブル2の周方向に並べられた検体容器21の列は、サンプルターンテーブル2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
複数の希釈液容器22は、複数の検体容器21の列よりもサンプルターンテーブル2の半径方向の内側に配置されている。複数の希釈液容器22は、複数の検体容器21と同様に、サンプルターンテーブル2の周方向に所定の間隔を開けて並べて配置されている。そして、サンプルターンテーブル2の周方向に並べられた希釈液容器22の列は、サンプルターンテーブル2の半径方向に所定の間隔を開けて2列セットされている。
なお、複数の検体容器21及び複数の希釈液容器22の配列は、2列に限定されるものではなく、1列でもよく、あるいはサンプルターンテーブル2の半径方向に3列以上配置してもよい。
サンプルターンテーブル2は、不図示の駆動機構によって周方向に沿って回転可能に支持されている。そして、サンプルターンテーブル2は、不図示の駆動機構により、周方向に所定の角度範囲ごとに、所定の速度で回転する。また、サンプルターンテーブル2の周囲には、希釈ターンテーブル3が配置されている。
希釈ターンテーブル3、第1試薬ターンテーブル4、第2試薬ターンテーブル5及び反応ターンテーブル6は、サンプルターンテーブル2と同様に、軸方向の一端が開口した略円筒状をなす容器状に形成されている。希釈ターンテーブル3及び反応ターンテーブル6は、不図示の駆動機構により、その周方向に所定の角度範囲ずつ、所定の速度で回転する。なお、反応ターンテーブル6は、一回の移動で半周以上回転するように設定されている。
希釈ターンテーブル3には、複数の希釈容器(検体容器)23が希釈ターンテーブル3の周方向に並べて収容されている。希釈容器23には、サンプルターンテーブル2に配置された検体容器21から吸引され、希釈された検体(以下、「希釈検体」という)が収容される。
第1試薬ターンテーブル4には、複数の第1試薬容器24が第1試薬ターンテーブル4の周方向に並べて収容されている。また、第2試薬ターンテーブル5には、複数の第2試薬容器25が第2試薬ターンテーブル5の周方向に並べて収容されている。そして、第1試薬容器24には、濃縮された第1試薬が収容され、第2試薬容器25には、濃縮された第2試薬が収容される。
さらに、第1試薬ターンテーブル4、第1試薬容器24、第2試薬ターンテーブル5及び第2試薬容器25は、不図示の保冷機構によって所定の温度に保たれている。そのため、第1試薬容器24に収容された第1試薬と、第2試薬容器25に収容された第2試薬は、所定の温度で保冷される。
本例の反応ユニットの一例を示す反応ターンテーブル6は、希釈ターンテーブル3と、第1試薬ターンテーブル4及び第2試薬ターンテーブル5の間に配置されている。反応ターンテーブル6には、複数の反応容器26が反応ターンテーブル6の周方向に並べて収容されている。反応容器26には、希釈ターンテーブル3の希釈容器23からサンプリングした希釈検体と、第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器24からサンプリングした第1試薬と、第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器25からサンプリングした第2試薬が注入される。そして、この反応容器26内において、希釈検体と、第1試薬及び第2試薬が撹拌され、反応が行われる。
サンプル希釈ピペット7は、サンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3の周囲に配置される。サンプル希釈ピペット7は、不図示の希釈ピペット駆動機構により、サンプルターンテーブル2及び希釈ターンテーブル3の軸方向(例えば、上下方向)に移動可能に支持されている。また、サンプル希釈ピペット7は、希釈ピペット駆動機構により、サンプルターンテーブル2及び希釈ターンテーブル3の開口と略平行をなす水平方向に沿って回動可能に支持されている。そして、サンプル希釈ピペット7は、水平方向に沿って回動することで、サンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3の間を往復運動する。なお、サンプル希釈ピペット7がサンプルターンテーブル2と希釈ターンテーブル3の間を移動する際、サンプル希釈ピペット7は、不図示に洗浄装置を通過する。
ここで、サンプル希釈ピペット7の動作について説明する。
サンプル希釈ピペット7がサンプルターンテーブル2における開口の上方の所定位置に移動した際、サンプル希釈ピペット7は、サンプルターンテーブル2の軸方向に沿って下降し、その先端に設けたピペットを検体容器21内に挿入する。このとき、サンプル希釈ピペット7は、不図示のサンプル用ポンプが作動して検体容器21内に収容された検体を所定量吸引する。次に、サンプル希釈ピペット7は、サンプルターンテーブル2の軸方向に沿って上昇してピペットを検体容器21内から抜き出す。そして、サンプル希釈ピペット7は、水平方向に沿って回動し、希釈ターンテーブル3における開口の上方の所定位置に移動する。
次に、サンプル希釈ピペット7は、希釈ターンテーブル3の軸方向に沿って下降して、ピペットを所定の希釈容器23内に挿入する。そして、サンプル希釈ピペット7は、吸引した検体と、サンプル希釈ピペット7自体から供給される所定量の希釈液(例えば、生理食塩水)を希釈容器23内に吐出する。その結果、希釈容器23内で、検体が所定倍数の濃度に希釈される。その後、サンプル希釈ピペット7は、洗浄装置によって洗浄される。
サンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3と反応ターンテーブル6の間に配置されている。サンプリングピペット8は、不図示のサンプリングピペット駆動機構により、サンプル希釈ピペット7と同様に、希釈ターンテーブル3の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持されている。そして、サンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3と反応ターンテーブル6の間を往復運動する。
このサンプリングピペット8は、希釈ターンテーブル3の希釈容器23内にピペットを挿入して、所定量の希釈検体を吸引する。そして、サンプリングピペット8は、吸引した希釈検体を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
第1試薬ピペット12は、反応ターンテーブル6と第1試薬ターンテーブル4の間に配置され、第2試薬ピペット13は、反応ターンテーブル6と第2試薬ターンテーブル5の間に配置されている。第1試薬ピペット12は、不図示の第1試薬ピペット駆動機構により、反応ターンテーブル6の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持されている。そして、第1試薬ピペット12は、第1試薬ターンテーブル4と反応ターンテーブル6の間を往復運動する。
第1試薬ピペット12は、第1試薬ターンテーブル4の第1試薬容器24内にピペットを挿入して、所定量の第1試薬を吸引する。そして、第1試薬ピペット12は、吸引した第1試薬を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
また、第2試薬ピペット13は、不図示の第2試薬ピペット駆動機構により、第1試薬ピペット12と同様に、反応ターンテーブル6の軸方向(上下方向)と水平方向に移動及び回動可能に支持されている。そして、第2試薬ピペット13は、第2試薬ターンテーブル5と反応ターンテーブル6の間を往復運動する。
第2試薬ピペット13は、第2試薬ターンテーブル5の第2試薬容器25内にピペットを挿入して、所定量の第2試薬を吸引する。そして、第2試薬ピペット13は、吸引した第2試薬を反応ターンテーブル6の反応容器26内に吐出する。
希釈撹拌装置9及び希釈洗浄装置11は、希釈ターンテーブル3の周囲に配置されている。希釈撹拌装置9は、不図示の撹拌子を希釈容器23内に挿入し、検体と希釈液を撹拌する。
希釈洗浄装置11は、サンプリングピペット8によって希釈検体が吸引された後の希釈容器23を洗浄する装置である。この希釈洗浄装置11は、複数の希釈容器洗浄ノズルを有している。複数の希釈容器洗浄ノズルは、不図示の廃液ポンプと、不図示の洗剤ポンプに接続されている。希釈洗浄装置11は、希釈容器洗浄ノズルを希釈容器23内に挿入し、廃液ポンプを駆動させて挿入した希釈容器洗浄ノズルによって希釈容器23内に残留する希釈検体を吸い込む。そして、希釈洗浄装置11は、吸い込んだ希釈検体を不図示の廃液タンクに排出する。
その後、希釈洗浄装置11は、洗剤ポンプから希釈容器洗浄ノズルに洗剤を供給し、希釈容器洗浄ノズルから希釈容器23内に洗剤を吐出する。この洗剤によって希釈容器23内を洗浄する。その後、希釈洗浄装置11は、洗剤を希釈容器洗浄ノズルによって吸引し、希釈容器23内を乾燥させる。
第1反応撹拌装置14、第2反応撹拌装置15及び反応容器洗浄装置18は、反応ターンテーブル6の周囲に配置されている。第1反応撹拌装置14は、不図示の撹拌子を反応容器26内に挿入し、希釈検体と第1試薬を撹拌する。これにより、希釈検体と第1試薬との反応が均一かつ迅速に行われる。なお、第1反応撹拌装置14の構成は、希釈撹拌装置9と同一であるため、ここではその説明は省略する。
第2反応撹拌装置15は、不図示の撹拌子を反応容器26内に挿入し、希釈検体と、第1試薬と、第2試薬とを撹拌する。これにより、希釈検体と、第1試薬と、第2試薬との反応が均一かつ迅速に行われる。なお、第2反応撹拌装置15の構成は、希釈撹拌装置9と同一であるため、ここではその説明は省略する。
反応容器洗浄装置18は、検査が終了した反応容器26内を洗浄する装置である。この反応容器洗浄装置18は、複数の反応容器洗浄ノズルを有している。複数の反応容器洗浄ノズルは、希釈容器洗浄ノズルと同様に、不図示の廃液ポンプと、不図示の洗剤ポンプに接続されている。なお、反応容器洗浄装置18における洗浄工程は、上述した希釈洗浄装置11と同様であるため、その説明は省略する。
また、多波長光度計16は、反応ターンテーブル6の周囲における反応ターンテーブル6の外壁と対向するように配置されている。多波長光度計16は、反応容器26内に注入され、第1薬液及び第2薬液と反応した希釈検体に対して光学的測定を行って、検体中の様々な成分の量を「吸光度」という数値データとして出力し、希釈検体の反応状態を検出するものである。
さらに、反応ターンテーブル6の周囲には、不図示の恒温槽が配置されている。この恒温槽は、反応ターンテーブル6に設けられた反応容器26の温度を常時一定に保持するように構成されている。
1−3.検体ラック搬送装置の構成
次に、検体ラック搬送装置(以下、単に「搬送装置」という)30の詳細な構成について説明する。
図1に示すように、搬送装置30は、生化学分析装置1に隣接して配置されている。搬送装置30は、希釈ターンテーブル3の検体容器23に検体を供給する。また、検体容器21に供給される検体は、ラック側検体容器に収容されている。このラック側検体容器は、検体ラック90に収容される。なお、ラック側検体容器には、収容された検体の情報を示す識別子が貼付されている。識別子としては、例えば、バーコードや二次元コード等その他各種の様式が適用されるものである。また、検体を供給する容器としては、希釈ターンテーブル3の検体容器23に限定されるものではなく、サンプルターンテーブル2の検体容器21に供給してもよい。
なお、水平方向と平行で、かつ搬送装置30と生化学分析装置1が隣り合う方向を第1の方向Xとする。そして、水平方向と平行で、かつ第1の方向Xと直交する方向を第2の方向Yとする。
[検体ラック搬送装置]
搬送装置30は、供給ユニット31と、回収ユニット32と、供給搬送部33と、回収搬送部34と、検体投入部35と、レーン交換部36と、緊急検体投入部37とを有している。
供給ユニット31は、搬送装置30における第1の方向Xの一側に配置されている。回収ユニット32は、供給ユニット31よりも第1の方向Xの他側に配置されている。
供給ユニット31には、検体ラック90が収容される。供給ユニット31は、検体ラック90が投入される投入口31aと、検体ラック90を排出する排出口31bが設けられている。そして、供給ユニット31は、収容された検体ラック90を排出口31bから供給搬送部33へ排出する。なお、供給ユニット31の詳細な構成については、後述する。
回収ユニット32は、回収トレイ52と、回収側ガイドレール53と、回収側押し子機構とを有している。回収トレイ52は、平板状に形成されている。また、回収トレイ52の第1の方向Xの両端部は、上下方向の上方に向けて略垂直に屈曲している。回収トレイ52における第1の方向Xの略中央部には、回収側ガイドレール53が配置されている。回収側ガイドレール53は、回収トレイ52における第2の方向Yに沿って延在している。この回収側ガイドレール53には、検体ラック90の下端部に形成した係合溝部が摺動可能に係合する。
また、回収ユニット32における第2の方向Yの他側には、受取口32aが設けられている。受取口32aには、回収搬送部34から搬送された検体ラック90が投入される。そして、回収ユニット32は、回収搬送部34から搬送された検体ラック90を回収トレイ52に収容する。また、回収ユニット32における第2の方向Yの一側には、排出口32bが設けられている。排出口32bからは、回収トレイ52に収容された検体ラック90が回収可能とされる。
供給搬送部33は、第1搬送ベルト41と、回転機構42と、第2搬送ベルト43とを有している。第1搬送ベルト41は、供給ユニット31の第2の方向Yの他側に配置され、第1の方向Xに沿って延在している。第1搬送ベルト41における第1の方向Yの一端部には、緊急検体投入部37が連続して設けられている。緊急検体投入部37は、供給ユニット31に収容された検体ラック90とは異なる検体ラック90を投入する際に用いられる。
第1搬送ベルト41は、検体ラック90を第1の方向Xに沿って供給ユニット31又は緊急検体投入部37から回転機構42まで搬送する。回転機構42は、検体ラック90の搬送方向を略90度回転させて、第1搬送ベルト41から第2搬送ベルト43へ検体ラック90を搬送する。第2搬送ベルト43は、第2の方向Yに沿って延在し、検体ラック90を第2の方向Yに沿って搬送する。
第2搬送ベルト43の中途部には、検体投入部35が設けられている。第2搬送ベルト43は、検体ラック90を検体投入部35で一時的に停止させる。そして、ラック側検体容器に収容された検体は、生化学分析装置1に設けたピペットにより、希釈ターンテーブル3の検体容器23に供給される。
第2搬送ベルト43における回転機構42と反対側の端部には、レーン交換部36が設けられている。レーン交換部36は、第2搬送ベルト43で搬送された検体ラック90を第1の方向Xに沿って移動させ、検体ラック90を第2搬送ベルト43から回収搬送部34へ送り出す。
回収搬送部34は、第1搬送レーン46と、方向転換部47と、第2搬送レーン48とを有している。第1搬送レーン46、方向転換部47及び第2搬送レーン48は、連通している。第1搬送レーン46は、第2の方向Yに沿って延在している。方向転換部47は、検体ラック90の搬送方向が第2の方向Yから第1の方向Xに向けて略90度転換させる箇所に配置される。第2搬送レーン48は、第1の方向Xに沿って延在している。また、第2搬送レーン48は、回収ユニット32の受取口32aの近傍に配置されている。
また、回収搬送部34は、不図示の搬送機構を有している。搬送機構は、レーン交換部36から受け取った検体ラック90を、第1搬送レーン46、方向転換部47、第2搬送レーン48に沿って搬送する。そして、回収搬送部34は、検体ラック90を回収ユニット32に送り出す。
[供給ユニットの構成]
次に、供給ユニット31の詳細な構成について図2及び図3を参照して説明する。
図2は、供給ユニット31を示す平面図、図3は、供給ユニット31における投入口の周辺を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、供給ユニット31は、供給トレイ61と、供給側ガイドレール62と、供給側押し子機構63と、追加防止検知センサ64と、押し子確認センサ65と、を備えている。また、供給ユニット31は、原点センサ66(図6参照)を有している。
供給トレイ61は、平板状に形成されている。供給トレイ61は、検体ラック90が載置され、かつ検体ラック90が摺動する摺動面61aと、2つのガイド片61bとを有している。ガイド片61bは、摺動面61aにおける第1の方向Xの両端部から上下方向の上方に向けて立設されている。また、摺動面61aにおける第2の方向Yの一端部は、使用者によって検体ラック90が供給される検体ラック供給位置80(投入口31a)である。
摺動面61aにおける検体ラック供給位置80には、追加防止検知センサ64が設けられている。追加防止検知センサ64は、検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90を検知する。
追加防止検知センサ64としては、赤外線センサや、機械式のセンサや、光学センサ等その他各種のセンサを適用できるものである。
摺動面61aにおける第1の方向Xの略中央部には、供給側ガイドレール62が配置されている。供給側ガイドレール62は、第2の方向Yと平行に配置されている。供給側ガイドレール62は、摺動面61aにおける検体ラック供給位置80よりも第2の方向Yの他側から供給搬送部33まで延在している。すなわち、供給側ガイドレール62は、摺動面61aにおける検体ラック供給位置80には、配置されていない。また、供給側ガイドレール62には、検体ラック90の下端部に形成した係合溝部が摺動可能に係合する。そのため、検体ラック90が供給側ガイドレール62と係合している間は、後述する供給側押し子機構63の押し子部材72によって押圧されても検体ラック90が倒れることはない。
供給側押し子機構63は、押し子駆動部71(図6参照)と、押し子部材72と、押し子支持部74とを有している。押し子部材72は、ヒンジ部73を介して押し子支持部74に支持されている。押し子支持部74は、ベルト部材やギア等からなる不図示の駆動機構に接続されており、第2の方向Yに沿って移動する。
また、押し子部材72は、略長方形をなす平板状に形成されている。押し子部材72は、ヒンジ部73及び押し子支持部74に支持されることで、摺動面61aにおける第1の方向Xの一端から他端にかけて跨ぐように摺動面61aの上方に配置される。押し子部材72における第2の方向Yの他側には、押圧部72aが設けられている。押圧部72aは、供給トレイ61に供給された検体ラック90における搬送方向の後方の背面に接触する。そして、押し子部材72は、押し子支持部74が第2の方向Yに沿って移動することで、検体ラック90を押圧部72aによって押圧し、第2の方向Yに沿って搬送する。
図4は、押し子部材72が回動した状態を示す斜視図、図5は、検体ラック供給位置に検体ラックを供給する状態を示す斜視図である。
図3及び図4に示すように、押し子部材72は、ヒンジ部73によって上下方向に回動可能に支持されている。すなわち、押し子部材72は、図3に示すように、摺動面61aの上方を覆う搬送状態から、図4に示すように、ヒンジ部73と反対側の端部が上下方向の上方を向く開放状態にヒンジ部73を介して回動する。そのため、摺動面61aにおける検体ラック供給位置80の近傍の上方が開放される。これにより、図5に示すように、検体ラック供給位置80に検体ラック90を使用者が供給し易くなる。
また、供給トレイ61における検体ラック供給位置80の近傍には、押し子確認センサ65が設けられている。押し子確認センサ65は、検体ラック供給位置80に設けられた追加防止検知センサ64よりも第2の方向Yの一側、すなわち搬送方向の後方に配置されている。押し子確認センサ65は、供給側押し子機構63の押し子部材72を検知する。具体的には、押し子確認センサ65は、図3に示すように、押し子部材72が搬送状態の場合に、押し子部材72を検知する。そして、図4に示すように、押し子部材72が開放状態の場合には、押し子部材72は、押し子確認センサ65で検知されない。
また、押し子確認センサ65の搬送方向、すなわち第2の方向Yにおける押し子部材72の有無を検知可能な範囲は、後述する原点センサ66の検知可能な範囲よりも広く設定されている。具体的には、追加防止検知センサ64によって検体ラック90を検知した場合において、押し子部材72が検体ラック90よりも搬送方向の後方に配置されて、且つ搬送状態の場合、押し子確認センサ65の検知可能な範囲は、押し子部材72を必ず検知できる範囲に設定されている。
押し子確認センサ65としては、赤外線センサや、機械式のセンサや、光学センサ等その他各種のセンサを適用できるものである。
なお、本例の搬送装置30では、押し子確認センサ65の検知可能な範囲を広げる例を説明したが、これに限定されるものではない。押し子確認センサ65の検知可能な範囲を原点センサ66と同様の範囲に設定し、押し子部材72における第2の方向Y、すなわち搬送方向の長さを、長く設定してもよい。このとき、押し子部材72の搬送方向の長さは、追加防止検知センサ64によって検体ラック90を検知した場合において、押し子部材72が検体ラック90よりも搬送方向の後方に配置されて、且つ搬送状態の場合に、必ず押し子確認センサによって検知可能な長さに設定される。
また、本例の搬送装置30では、押し子部材72の位置を検知する押し子確認センサ65として、押し子部材72の搬送状態と開放状態を検知するセンサを用いた例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、押し子部材72の搬送状態と開放状態を検知するセンサとは別に、押し子確認センサ65を設けてもよい。
1−5.検体ラック搬送装置の制御系の構成
次に、図6を参照して検体ラック搬送装置30の制御系の構成について説明する。
図6は、搬送装置30における供給ユニット31の制御系を示すブロック図である。
図6に示すように、搬送装置30は、制御部101と、報知部102を備えている。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)と、CPUが実行するプログラム等を記憶するためのROM(Read Only Memory)と、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)と、を有する。
制御部101は、供給ユニット31における原点センサ66、追加防止検知センサ64、押し子確認センサ65及び、供給側押し子機構63の押し子駆動部71に接続されている。そして、制御部101は、供給ユニット31を制御する。なお、制御部101は、搬送装置30における供給ユニット31以外の装置にも接続されており、搬送装置30全体を制御する。
押し子駆動部71は、制御部101によってその駆動が制御される。そして、押し子駆動部71が制御部101によって駆動すると、押し子部材72が第2の方向Yに沿って移動する。
原点センサ66は、供給トレイ61における供給側押し子機構63が検体ラック90の搬送を開始する位置、すなわち供給トレイ61の第2の方向Yの一端部に設けられている。原点センサ66が供給側押し子機構63の押し子支持部74及び押し子部材72を検知するとことで、制御部101は、押し子部材72が搬送を開始する位置に移動していると判断する。
なお、原点センサ66は、押し子部材72が搬送を開始する位置、すなわち押し子部材72の初期位置の原点を検知するものである。そして、原点に範囲がある場合、押し子部材72の搬送距離に誤差が生じ、検体ラック90の搬送に不具合が発生する。そのため、原点センサ66の検知可能な範囲は、極めて狭く設定されている。
原点センサ66としては、赤外線センサや、機械式のセンサや、光学センサ等その他各種のセンサを適用できるものである。
報知部102は、例えば画像を表示する表示部、光を出射する光源部、又は音を発するブザーなどから構成されている。そして、報知部102は、制御部101からの指令に基づいて使用者に各種情報を報知する。
2.搬送装置における供給ユニットの動作
次に、供給ユニット31の動作例について図7〜図11を参照して説明する。
図7は、収容された検体ラック90を供給搬送部33に搬送する状態を示す斜視図である。
2−1.搬送時の動作
まず、供給ユニット31が検体ラック90を供給搬送部33に搬送する際の動作について説明する。
制御部101は、供給側押し子機構63を駆動し、押し子部材72を初期位置から第2の方向Yの他側に向けて移動させる。そのため、供給トレイ61に収容された検体ラック90は、押し子部材72で押圧されて、第2の方向Yの一側から他側に向けて搬送される。これにより、検体ラック90は、供給ユニット31の排出口31b(図1参照)から供給搬送部33に供給される。
図7に示すように、検体ラック90を搬送する際に、新たな検体ラック90が使用者によって検体ラック供給位置80に追加された場合、追加防止検知センサ64は、検体ラック供給位置80に供給された新たな検体ラック90を検知する。追加防止検知センサ64で検知した情報は、制御部101に送信される。そして、制御部101は、供給側押し子機構63による搬送動作を停止させると共に、報知部102を動作させる。次に、報知部102は、音や光等により、検体ラック供給位置80に検体ラック90が供給されたことを使用者に報知し、検体ラック供給位置80から検体ラック90を取り除くように使用者に伝える。
そして、追加防止検知センサ64からの検知情報に基づいて、制御部101は、検体ラック供給位置80から検体ラック90が取り除かれたか否かを判断する。制御部101は、検体ラック供給位置80から検体ラック90が取り除かれたと判断した場合、報知部102を停止させて、供給側押し子機構63の搬送動作を再開させる。これにより、押し子部材72が初期位置に戻った際に、検体ラック供給位置80に載置された検体ラック90に押し子部材72が当接し、検体ラック90が倒れることを防ぐことができる。
なお、検体ラック供給位置80に検体ラック90が追加された際に、供給側押し子機構63の搬送動作を停止される例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、検体ラック90の搬送時に新たな検体ラック90が検体ラック供給位置80に追加された場合、制御部101は、供給側押し子機構63の搬送動作を停止させずに、報知部102による報知動作のみ行うように制御してもよい。
2−2.戻り動作
次に、使用者がスイッチ押下などの任意で押し子部材72を初期位置に戻す場合、又は供給トレイ61に検体ラック90が無いため押し子部材72が初期位置に自動で戻る場合の供給ユニット31の動作について図8〜図11を参照して説明する。
図8及び図9は、原点センサ66がOFF、追加防止検知センサ64がONの状態を示す説明図である。
ここで、押し子部材72が初期位置まで戻る動作は、原点センサ66がONになるまで押し子部材72を移動させる動作である。そのため、原点センサ66がOFFの場合、制御部101は、押し子部材72が初期位置まで戻っていないと判断し、戻り動作を続行させる。上述したように、原点センサ66の検知可能な範囲は、極めて狭く設定されている。
図8に示すように、押し子部材72が初期位置から搬送方向の前方に微少に移動した場合、原点センサ66の検知可能な範囲から押し子部材72が外れるため、原点センサ66の検知信号は、OFFとなる。なお、押し子部材72は、検体ラック供給位置80よりも搬送方向の前方に移動していない。また、図9に示すように、押し子部材72が検体ラック供給位置80よりも搬送方向の前方に位置している場合は、原点センサ66は、OFFとなる。
図8及び図9に示す状態で検体ラック供給位置80に検体ラック90が供給された場合、追加防止検知センサ64がONとなる。すなわち、図8及び図9に示す状態は、どちらも原点センサ66がOFFとなり追加防止検知センサ64がONとなる。
なお、図9に示す状態では、押し子部材72は、検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90よりも搬送方向の前方に位置しているため、押し子部材72が初期位置に戻る際に検体ラック90を倒すおそれがある。そのため、制御部101は、報知部102によって使用者に検体ラック供給位置80に追加された検体ラック90を取り除く旨を報知する必要がある。
これに対し、図8に示す状態では、押し子部材72は、検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90よりも搬送方向の後方に位置しているため、検体ラック90が押し子部材72によって倒れることがない。このように、図8に示す状態は、正常な状態であるため、使用者に検体ラック供給位置80に追加された検体ラック90を取り除く旨を報知する必要がない。そのため、制御部101は、図8及び図9に示すような原点センサ66がOFFで、追加防止検知センサ64がONである状態を判別し、正常な状態で報知することを防ぐ必要がある。
次に、上述した状態を考慮した押し子部材72の戻り動作について図10〜図11を参照して説明する。
図10は、押し子部材72の戻り動作を示すフローチャート、図11は、押し子部材72の戻り動作を模式的に示す説明図である。
まず、使用者がスイッチを操作した場合や、供給トレイ61に検体ラック90が無い場合等において、供給ユニット31に対して押し子部材72の初期位置への戻り動作指令が行われると、制御部101は、初期化命令を行うと共に戻り動作を実行する(ステップS11)。次に、制御部101は、原点センサ66の検知信号がONであるかOFFであるかを判断する(ステップS12)。
ステップS12の処理において、制御部101は、原点センサ66の検知信号がONであると判断すると、原点センサ66の検知信号がOFFになるまで供給側押し子機構63を駆動させて押し子部材72を搬送方向の前方に向けて移動させる(ステップS13)。これにより、押し子部材72の初期位置の原点合わせを行う。そして、制御部101は、制御部101は、原点センサ66の検知信号がOFFになるまで押し子部材72が移動すると、供給側押し子機構63に戻り動作を実行させる(ステップS18)。
これに対し、ステップS12の処理において、制御部101が原点センサ66の検知信号がOFFであると判断すると、制御部101は、追加防止検知センサ64の検知信号がONであるかOFFであるかを判断する(ステップS14)。ステップS14の処理において、制御部101が追加防止検知センサ64の検知信号がOFFであると判断、すなわち検体ラック供給位置80に検体ラック90が無いと判断すると、制御部101は、供給側押し子機構63に戻り動作を実行させる(ステップS18)。
これに対し、ステップS14の処理において、制御部101が追加防止検知センサ64の検知信号がONであると判断すると、検体ラック供給位置80に検体ラック90が供給されたと制御部101は、判断する。そして、制御部101は、押し子確認センサ65の検知信号がONであるかOFFであるかを判断する(ステップS15)。
ステップS15の処理において、制御部101が押し子確認センサ65の検知信号がONであると判断した場合、図11Aに示すように、押し子部材72は、検体ラック供給位置80よりも搬送方向の後方に位置していると判断できる。そのため、検体ラック供給位置80に検体ラック90が供給されていても押し子部材72は、検体ラック90よりも搬送方向の後方に位置している。そして、制御部101は、供給側押し子機構63に戻り動作を実行させる(ステップS18)。
また、ステップS15の処理において、制御部101が押し子確認センサ65の検知信号がOFFであると判断した場合、図11Bに示すように、押し子部材72は、検体ラック供給位置80よりも搬送方向の前方に位置していると考えられる。この状態で、押し子部材72が戻り動作を行うと、検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90を倒すおそれがある。そのため、制御部101は、報知部102を動作させて警報を発報し、使用者に検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90を取り除くように報知する(ステップS17)。
なお、ステップS17の処理により警報を発報した後に、使用者によって検体ラック90が取り除かれると、供給ユニット31は、ステップS11の処理に戻る。
また、ステップS18における戻り動作が実行されて、押し子部材72が初期位置まで移動するまで、制御部101は、追加防止検知センサ64の検知信号がONであるかOFFであるかを判断する(ステップS19)。
ステップS19の処理において、制御部101が追加防止検知センサ64の検知信号がONであると判断、すなわち押し子部材72が初期位置に戻る動作を行っている際に、検体ラック供給位置80に検体ラック90が配置されたことが判断できる。
または、図11Cに示すように、押し子部材72の搬送方向の後方に配置されていた検体ラック90が、戻り動作を行う押し子部材72によって押圧されて、検体ラック供給位置80まで搬送されたと判断できる。上述したように、検体ラック供給位置80まで供給側ガイドレール62が延在していない。そのため、押し子部材72の戻り動作が継続されると、検体ラック90は、供給側ガイドレール62が途切れた検体ラック供給位置80で押し子部材72に押圧されて倒れるおそれがある。
したがって、ステップS19の処理において、制御部101が追加防止検知センサ64の検知信号がONであると判断すると、制御部101は、押し子駆動部71を停止させて、押し子部材72の戻り動作を停止させる(ステップS16)。これにより、検体ラック90は、押し子部材72によって搬送方向の後方に押圧されることがなくなる。そして、制御部101は、報知部102を動作させて警報を発報し、使用者に検体ラック供給位置80に供給された検体ラック90を取り除くように報知する(ステップS17)。
なお、ステップS17の処理により警報を発報した後に、使用者によって検体ラック90が取り除かれると、供給ユニット31は、ステップS11の処理に戻る。
また、ステップS19の処理において、制御部101が追加防止検知センサ64の検知信号がOFFであると判断すると、制御部101は、原点センサ66の検知信号がONであるかOFFであるか判断する(ステップS20)。ステップS20の処理において、制御部101が原点センサ66の検知信号がOFFであると判断した場合、押し子部材72は、初期位置まで戻っていないと判断できる。そのため、制御部101は、ステップS18の処理に戻り押し子部材72の戻り動作を継続させる。
これに対して、ステップS20の処理において、制御部101が原点センサ66の検知信号がONであると判断した場合、押し子部材72は、初期位置まで戻っていると判断できる。これにより、供給ユニット31における押し子部材72の戻り動作が完了する。
上述したように、本例の搬送装置30によれば、検体ラック供給位置80に設けた追加防止検知センサ64により、検体ラック供給位置80に追加された検体ラック90を検知することができる。これにより、押し子部材72が戻り動作を行う際に、検体ラック供給位置80に検体ラック90が追加されたことを検知することができ、戻り動作を行う押し子部材72によって追加された検体ラック90が倒れることを防ぐことができる。
さらに、ステップS15の工程において、押し子確認センサ65の検知信号を用いることで、図8及び図9に示す状態を判別することができる。その結果、追加防止検知センサ64がONになっている図8に示すような押し子部材72が検体ラック90よりも搬送方向の後方に位置している状態で、誤って警報が発報されることを防ぐことができ、警報が発報される精度を向上させることができる。
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、自動分析装置として、血液や尿の生体試料の分析に用いられる生化学分析装置に適用した例を説明したが、これに限定されるものでなく、水質や、食品等のその他各種の分析を行う装置に適用することができるものである。また、自動分析装置としては、例えば、被検体の抗原抗体反応などの免疫分析を行う免疫分析装置を適用してもよい。