JP2020132463A - ニオブ酸リチウム基板の製造方法 - Google Patents

ニオブ酸リチウム基板の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】点状の還元むら等が抑制され、電気的特性に優れたニオブ酸リチウム(LN)基板を製造する方法を提供する。【解決手段】基板形状に加工された複数枚のLN結晶1を積層して積層構造体10とし、該積層構造体を多孔質黒鉛(気孔率20%)で構成された多孔質容器2に収納すると共に、積層構造体が収容された多孔質容器を加熱炉(図示せず)内に配置した後、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、350℃以上LN結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してLN基板を製造することを特徴とする。従来法で用いられるAl粉とAl2O3粉を使用しないため還元むらが抑制され、かつ、多孔質容器に収容された状態で積層構造体が熱処理されるため、積層構造体の最上段および最下段に配置されたLN結晶と中央に配置されたLN結晶の還元度合を揃えることが可能となる。【選択図】図1

Description

本発明は、チョクラルスキー法で育成されたニオブ酸リチウム結晶を用いてニオブ酸リチウム基板を製造する方法に係り、特に、色むら(還元むら)の無い電気的特性に優れたニオブ酸リチウム基板の製造方法に関するものである。
ニオブ酸リチウム(以下、LNと略称することがある)結晶は、融点が約1250℃、キュリー温度が約1140℃の強誘電体であり、この結晶を用いて製造されるニオブ酸リチウム基板は、主に、携帯電話の送受信デバイスに用いられる表面弾性波(SAW)フィルター材料として適用されている。
そして、携帯電話の高周波化、各種電子機器の無線LANによるBluetooth(登録商標)(2.45GHz)の普及等により、2GHz前後の周波数領域のSAWフィルターが今後急増すると予測されている。
上記SAWフィルターは、LN等の圧電材料で構成された基板上に、Al、Cu等の金属薄膜で一対の櫛型電極が形成された構造となっており、この櫛型電極がデバイスの特性を左右する重要な役割を担っている。また、上記櫛型電極は、圧電材料上にスパッタリングにより金属薄膜を成膜した後、一対の櫛型パターンを残し、フォトリソグラフ技術により不要な部分をエッチングにより除去することで形成される。
また、上記LN単結晶は、産業的には、主にチョクラルスキー法によって、酸素濃度が20%程度の窒素−酸素混合ガス雰囲気や大気雰囲気の電気炉中で育成されており、通常、高融点の白金坩堝が用いられ、育成されたLN単結晶は電気炉内で所定の冷却速度で冷却された後、電気炉から取り出して得られている。
育成されたLN結晶は、無色透明若しくは透明感の高い淡黄色を呈している。育成後、結晶の熱応力による残留歪みを取り除くため、融点に近い均熱下で熱処理を行い、更に単一分極とするためのポーリング処理、すなわち、LN結晶を室温からキュリー温度以上の所定温度まで昇温し、結晶に電圧を印加し、電圧を印加したままキュリー温度以下の所定温度まで降温した後、電圧印加を停止して室温まで冷却する一連の処理を行う。ポーリング処理後、結晶の外形を整えるために外周研削されたLN結晶(以下、インゴットと称する)はスライス、ラップ、ポリッシュ工程等の機械加工を経て基板となる。最終的に得られた基板はほぼ無色透明で、体積抵抗率はおよそ1014〜1015Ω・cm程度である。
ところで、このような従来の方法で製造された基板では、表面弾性波素子(SAWフィルター)製造プロセスにおいて、LN結晶の特性である焦電性のため、プロセスで受ける温度変化によって電荷が基板表面にチャージアップし、これにより生じる放電が原因となって基板表面に形成した櫛型電極が破壊され、更には基板の割れ等を生じて素子製造プロセスでの歩留まり低下が起きている。
そこで、LN結晶の焦電性による不具合を解消するため、導電率を増大させる技術がいくつか提案されている。
例えば、特許文献1においては、基板形状に加工されたLN結晶(以下、「基板形状のLN結晶」とし、熱処理後のLN基板と区別する)を、窒素ガス85%と水素ガス15%の混合ガス雰囲気(還元雰囲気)下で熱処理することにより導電性を増大させる方法が実施例に開示され、また、特許文献2においては、アルミニウム粉末(Al粉)と酸化アルミニウム粉末(Al23粉)との混合粉中に、基板形状のLN結晶を埋め込んで熱処理(還元処理)する方法が提案されている。尚、導電性を増大させたLN基板は、酸素空孔が導入されたことにより光吸収を起こすようになる。そして、観察されるLN基板の色調は、透過光では赤褐色系に、反射光では黒色に見えるため、導電性を増大させる還元処理は黒化処理とも呼ばれており、このような色調の変化現象を黒化と呼んでいる。
特開平11−92147号公報(段落0028参照) 特許第4492291号公報(段落0025参照)
しかし、窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気(還元雰囲気)下でLN結晶を熱処理する特許文献1の上記方法は、可燃性の水素ガスを使用するため作業性に問題があった。
また、特許文献1の請求項5に列挙された一酸化炭素、二酸化炭素、水、アルゴン(但し、窒素ガスと水素ガスの混合ガス以外の上記ガスが具体的に使用された実施例等について特許文献1に記載はない)等を組み合わせた還元雰囲気下で、複数枚のLN結晶を重ね合わせて熱処理(還元処理)した場合、最上段および最下段に配置されたLN結晶と中央に配置されたLN結晶の還元度合(体積抵抗率)に差異を生ずることが確認され、特許文献1の方法は量産に不向きである問題も有していた。
一方、Al粉とAl23粉との混合粉中に基板形状のLN結晶を埋め込んで熱処理(還元処理)する特許文献2の方法は、Al粉の混合比にもよるが、点状の還元むら(黒い点状の色むら)を生ずることがあった。尚、点状の還元むらを生じさせる原因として、Al粉とAl23粉との混合粉中に不可避的に混入する繊維等の浮遊ごみが考えられている。
すなわち、繊維の主成分はセルロース[分子式(C6105)n]であるが、還元処理中の高温下においてセルロースが自己分解し、下記反応式に示すようにカーボンガス(C)、水蒸気(H2O)等が生成される。
6105 → 6C + 5H2
そして、生成した水蒸気と混合粉中に含まれるAl粉が反応し、Al粉が急激に酸化することで局所的な発熱が起こり、この反応が基板形状のLN結晶近傍で起きることによりその部分が局所的に還元され、上記点状の還元むら(黒い点状の色むら)が発生していると考えられる。
また、特許文献2の方法は、基板形状のLN結晶をAl粉とAl23粉との混合粉中に埋め込んで熱処理するため、Al粉を混合粉中に均一に分散させかつ混合粉を平らに均しながらLN結晶を埋め込む必要があることから作業性に難があり、かつ、均しむらに起因した模様状の還元むら(模様状の色むら)を発生させる問題があった。
更に、Al粉とAl23粉との混合粉が使用されるため粉塵対策用の排気設備や保護具を必要とし、かつ、使用済みのAl粉とAl23粉を産業廃棄物として処理する必要があるため、作業者の健康面および地球環境面への問題も存在した。
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、焦電性による不具合の改善効果が均一で、色むら不良の発生も抑制でき、作業者の健康面や安全面のリスクが小さく、地球環境の問題もなく、再現性と生産効率に優れたニオブ酸リチウム基板の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者は、Al粉とAl23粉の混合粉を使用しない特許文献1の方法に着目し、特許文献1に開示された可燃性の水素ガス等を使用することなく、複数枚のLN結晶を同時に還元処理できる新規な方法について鋭意検討を行った。
まず、可燃性の水素ガス等と比較し取り扱いが容易なアルゴン(Ar)、窒素(N2)等の不活性ガスについて検討を行った。一般的な工業用液化ArガスやN2ガス中には1ppm程度の酸素不純物が含まれており、酸素分圧で表すと1×10-6atmである。
一方、金属、非金属、セラミックスを問わず、物質は、一般的に温度が上がるほど平衡酸素分圧が上昇して還元され易くなり、LN結晶の場合も同様である。
すなわち、高温条件下では、LN結晶の平衡酸素分圧が上記1×10-6atmを上回ることになるため、Ar等の不活性ガス雰囲気中であっても化学的還元雰囲気となり、LN結晶の還元処理が可能となる。最終的に到達する還元の度合いは、LN結晶の平衡酸素分圧と不活性ガス雰囲気の酸素分圧の差によって決定される。
そして、LN結晶の平衡酸素分圧は処理温度を上げるほど上昇するのに対し、市販されているAr等不活性ガスの酸素分圧は1×10-6atmで略一定であるため、処理温度によってLN結晶における還元の度合いを制御できることが理解される。
更に、複数枚のLN結晶を重ね合わせて同時に還元処理する場合、重ね合わせたLN結晶(LN結晶の積層構造体)を多孔質容器内に収容して還元処理することで、最上段および最下段に配置されたLN結晶と中央に配置されたLN結晶の還元度合(体積抵抗率)を揃えることが可能になることも見出すに至った。本発明はこのような技術的検討を経て完成されたものである。
すなわち、本発明に係る第1の発明は、
チョクラルスキー法で育成されたニオブ酸リチウム結晶を用いてニオブ酸リチウム基板を製造する方法において、
基板形状に加工された複数枚のニオブ酸リチウム結晶を積層してニオブ酸リチウム結晶の積層構造体を構成し、かつ、通気性を有する多孔質容器に上記積層構造体を収容すると共に、積層構造体が収容された上記多孔質容器を加熱炉内に配置した後、不活性ガス雰囲気下、350℃以上、ニオブ酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してニオブ酸リチウム基板を製造することを特徴とする。
第2の発明は、
第1の発明に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法において、
上記多孔質容器が、黒鉛またはアルミナで構成されていることを特徴とする。
また、第3の発明は、
第1の発明または第2の発明に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法において、
上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、上記加熱炉が給気口と排気口を有すると共に、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5〜5.0L/minであることを特徴とする。
本発明に係るニオブ酸リチウム基板の製造方法は、基板形状に加工された複数枚のニオブ酸リチウム結晶を積層して積層構造体とし、かつ、通気性を有する多孔質容器に上記積層構造体を収容すると共に、積層構造体が収容された多孔質容器を加熱炉内に配置した後、不活性ガス雰囲気下、350℃以上、ニオブ酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してニオブ酸リチウム基板を製造することを特徴としている。
そして、本発明に係るニオブ酸リチウム基板の製造方法によれば、特許文献2で用いられるAl粉とAl23粉との混合粉を使用しないため、上記混合粉に不可避的に混入してしまう浮遊ごみに起因した点状の還元むら(黒い点状の色むら)および均しむらに起因した模様状の還元むら(模様状の色むら)の発生を抑制することができ、かつ、混合粉中に基板形状のLN結晶を埋め込む作業および粉塵対策用の排気設備や保護具を必要とせず、作業者の健康面および地球環境面への問題も引き起こすことが無い。
また、特許文献1で用いられる可燃性の水素ガス等を使用しないためニオブ酸リチウム基板の製造作業を安全に行うことが可能となり、かつ、複数枚のニオブ酸リチウム結晶を積層した積層構造体を多孔質容器に収容して還元処理がなされるため、最上段および最下段に配置されたニオブ酸リチウム結晶と中央に配置されたニオブ酸リチウム結晶の還元度合(体積抵抗率)を揃えることも可能となり、この結果、焦電性による不具合の改善効果が均一であるニオブ酸リチウム基板を効率よく製造することが可能となる。
基板形状に加工された複数枚のニオブ酸リチウム結晶1を積層した積層構造体10が通気性を有する多孔質容器2に収容された状態を示す説明図。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
まず、LN結晶は、結晶内に存在する酸素空孔濃度によって電気伝導度と色が変化する。LN結晶中に酸素空孔が導入されると、チャージバランスをとる必要から一部のNbイオンの価数が5+から4+に変わり、電気伝導性を生じると同時に光吸収を起こす。電気伝導は、キャリアである電子がNb5+イオンとNb4+イオンの間を移動するために生ずると考えられる。結晶の電気伝導度は、単位体積あたりのキャリア数とキャリアの移動度の積で決まる。移動度が同じであれば、電気伝導度は酸素空孔数に比例する。光吸収による色変化は、酸素空孔により導入された電子レベルによるものと考えられる。
ところで、LN結晶の導電率を増大させる従来の手法として、上述したように窒素ガスと水素ガスの混合ガス雰囲気(還元雰囲気)下においてLN結晶を熱処理する方法(特許文献1)、および、Al粉とAl23粉との混合粉中にLN結晶を埋め込んで熱処理(還元処理)する方法(特許文献2)が知られているが、特許文献1と特許文献2の各方法には上記課題が存在した。
そこで、本発明方法は、特許文献1と特許文献2の各課題を解決するため、基板形状に加工された複数枚のLN結晶を積層して積層構造体とし、該積層構造体を多孔質容器に収容すると共に、LN結晶の積層構造体が収容された上記多孔質容器を加熱炉内に配置した後、不活性ガス雰囲気下、350℃以上、LN結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してLN基板を製造することを特徴としている。
以下、図面を用いて本発明方法を説明する。
図1に示すように基板形状に加工された複数枚のLN結晶1を積層して積層構造体10とし、該積層構造体10を多孔質容器2に収容した後、該積層構造体10が収容された多孔質容器2を加熱炉(図示せず)内に配置する。尚、図1に示す多孔質容器2の開放部は通気性を有する蓋材20で覆われている。
そして、アルゴン(Ar)、窒素(N2)等の不活性ガス雰囲気下において、350℃以上、LN結晶のキュリー温度未満の温度で多孔質容器2に収容された上記積層構造体10を熱処理し、複数枚のLN結晶1を同時に還元処理する。LN結晶の還元度合(体積抵抗率)は、上述したように、加熱されるLN結晶1の「平衡酸素分圧」と不活性ガス雰囲気の「酸素分圧」の差によって決定される。
尚、加熱炉内に積層構造体10を直接配置して還元処理(すなわち、LN結晶1の積層構造体10を多孔質容器2に収容しない状態で還元処理)した場合、積層構造体10の最上段および最下段(加熱炉の載置面と積層構造体との間に隙間が形成され易いため)に位置するLN結晶1は、還元処理中、不活性ガスに直接曝されるのに対し、積層構造体10の中央および中央付近に位置するLN結晶1は不活性ガスに曝され難いため、積層構造体10の最上段および最下段に配置されたLN結晶1と比較して積層構造体10の中央および中央付近に配置されたLN結晶1は還元不足になっていることが確認されている。
そこで、本発明方法では、通気性を有する多孔質容器2内に積層構造体10を収容し、積層構造体10の最上段および最下段と積層構造体10の中央および中央付近の還元条件が略均一となるよう調整している。すなわち、蓋材20で覆われた多孔質容器2内への不活性ガス供給量を抑制することで、その分、還元条件が緩和(還元速度が遅くなる等)されるため、積層構造体10の最上段および最下段に配置されたLN結晶1と中央および中央付近に配置されたLN結晶1の還元度合(体積抵抗率)を揃えることが可能となる。
以下、本発明方法の構成について詳細に説明する。
(1)通気性を有する多孔質容器
本発明方法においては通気性を有する多孔質容器を使用する。すなわち、蓋材で覆われた多孔質容器を使用することにより該多孔質容器内への不活性ガス供給量が抑制され、その分、還元条件が緩和されるため、多孔質容器内に収容された積層構造体の最上段および最下段に配置されたLN結晶と中央および中央付近に配置されたLN結晶の還元度合(体積抵抗率)を揃えることが可能となる。
多孔質容器の材質としては、耐熱性を有し、不活性ガス中で安定な物質であることを条件に任意であり、その気孔率は10%以上であることが好ましい。例えば、多孔質黒鉛容器(気孔率20%)および多孔質アルミナ容器(気孔率30%)等が挙げられる。
多孔質容器の気孔率については、気孔率が高い程、不活性ガスの通気性がよくなる分、還元条件が緩和され難くなる。このため、加熱炉内に積層構造体を直接配置して還元処理する場合と同様、積層構造体の最上段および最下段に配置されたLN結晶と中央および中央付近に配置されたLN結晶の還元度合(体積抵抗率)のばらつきが大きくなる。そして、LN結晶の直径、積層構造体の積層数等にもよるが、LN結晶の直径が4インチ〜6インチの場合で、かつ、積層構造体の積層数が20枚〜50枚の場合、多孔質容器の気孔率として10%〜30%が例示される。
多孔質容器の大きさは、収容される基板形状のLN結晶より大きく設定し、好ましくは、上記LN結晶の直径より5mm程度大きく設定する。基板形状のLN結晶より大きく設定することで、多孔質容器内にLN結晶全体が収納されるため、同一条件で均質に還元処理することが可能となる。
また、多孔質容器を構成する板厚に関しては特に限定されず、取扱い時における割れ等を起こさないことを条件に薄く設定することが好ましく、1mm〜5mmが例示される。
(2)熱処理条件
基板形状に加工された複数枚のLN結晶を積層して積層構造体を構成し、該積層構造体を多孔質容器に収容した状態で加熱炉内に配置し、不活性ガス雰囲気下、350℃以上、LN結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してLN結晶を還元処理する。
上記不活性ガスについては、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)や窒素ガス等を適用することができる。特許文献1の実施例で使用されている可燃性の水素ガス(還元性の高いガス)が適用されないことで、還元性は低くなるもののLN結晶における還元度合(体積抵抗率)のばらつきを抑制できる。
また、上記加熱炉内の雰囲気は、給気口と排気口を有し、不活性ガスが加熱炉内に連続的に給排されて加熱炉内の圧力が大気圧雰囲気に設定される条件が例示される。
上記加熱炉内に連続的に給排される不活性ガスの流量については、不活性ガスがアルゴンガスである場合、0.5〜5L/minであることが好ましい。尚、不活性ガスを連続的に給排する加熱炉が適用されることから、加熱炉内を減圧あるいは真空に設定する必要が無いため、密閉容器や減圧処理装置を要しない分、設備コストの削減が図れる。
そして、本発明方法により、LN基板の体積抵抗率を2.0×109〜1.5×1011(Ω・cm)程度に設定することができる。
以下、本発明の実施例について比較例も挙げて具体的に説明するが、本発明の技術範囲は下記実施例によって何ら限定されるものではない。
[加熱炉の構成]
実施例1〜4と比較例1〜2、4で用いられる加熱炉には給気口と排気口が設けられ、一般的に市販されているアルゴンガス(酸素分圧は1×10-6atm程度)が給気口を介し加熱炉内に連続的に供給されると共に、排気口を介してアルゴンガス(不活性ガス)が加熱炉外へ連続的に排気されて、加熱炉内は大気圧雰囲気下に調整されている。尚、加熱炉内に給排されるアルゴンガスの流量は2L/minに設定されている。
[LN結晶の育成とインゴットの加工等]
コングルエント組成の原料を用い、チョクラルスキー法により、直径4インチであるLN単結晶の育成を行った。育成雰囲気は、酸素濃度約20%の窒素−酸素混合ガスである。得られたLN結晶のインゴットは無色透明であった。
LN結晶のインゴットに対し、熱歪み除去のための熱処理と単一分極とするためのポーリング処理を行った後、外周研削、スライス、および研磨を行って42゜RY(Rotated Y axis)の基板形状に加工されたLN結晶とした。
得られた42゜RYのLN結晶は、無色透明で、体積抵抗率は1×1015Ω・cm、キュリー温度は1140℃であった。
[実施例1]
基板形状に加工された20枚のLN結晶1を積層して積層構造体10とし、該積層構造体10を多孔質黒鉛(気孔率20%)で構成された多孔質容器2に収納した。
そして、LN結晶1の積層構造体10が収容された上記多孔質容器2を加熱炉(図示せず)内に配置した後、吸気口を介し市販されているアルゴンガスを加熱炉内に供給した。尚、加熱炉内におけるアルゴンガスの酸素分圧は5.0×10-7atmであった。
次いで、2L/minの流量で上記アルゴンガスを大気圧雰囲気下の加熱炉内に連続的に吸排し、500℃、20時間の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。また、同様の処理を10回繰り返し実施した。
熱処理を行った合計200枚のLN結晶について、処理後のLN基板の体積抵抗率を測定し、かつ、目視により「点状の色むら」と「模様状の色むら」の各発生率を調査した。尚、体積抵抗率は、JIS K−6911に準拠した3端子法により測定している。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.5×1011Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
これ等結果を表1に示す。
[実施例2]
処理温度を550℃に変更した以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.5×1010Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
これ等結果を表1に示す。
[実施例3]
処理温度を600℃に変更した以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は2.0×109Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
これ等結果を表1に示す。
[実施例4]
多孔質黒鉛(気孔率20%)で構成された多孔質容器2に代えて、多孔質アルミナ(気孔率30%)で構成された多孔質容器2を適用した以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.5×1011Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
これ等結果を表1に示す。
[比較例1]
Al粉とAl23粉との混合粉中にLN結晶を埋め込んで熱処理する特許文献2の方法で還元処理を行った。尚、Al粉の混合比は0.5%とし、熱処理中、2L/minの流量でアルゴンガスを大気圧雰囲気下の加熱炉内に連続的に吸排した。また、同様の処理を10回繰り返し実施した。
熱処理(還元処理、黒化処理)後、実施例1と同一の方法により体積抵抗率を測定し、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率を調査した。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.0×1010Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、かつ、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の各発生率は5.0%で、実施例1〜4より高かった。
[比較例2]
処理温度を300℃に変更した以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。また、同様の処理を10回繰り返し実施した。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.0×1012Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、還元は多少なされたものの、所望とする体積抵抗率を得ることはできなかった。
尚、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
[比較例3]
加熱炉の製品投入口を開放し、かつ、加熱炉内にアルゴンガスの吸排を行わない以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。尚、熱処理時の加熱炉内における大気の酸素分圧は「2.0×10-1atm」であった。また、同様の処理を10回繰り返し実施した。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は1.0×1015Ω・cm程度(基板200枚の平均値)で、還元はされていなかった。
尚、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率については、LN結晶が黒化していないため判別不能であった。
[比較例4]
基板形状に加工された20枚のLN結晶1を積層して積層構造体10とし、多孔質容器2に収納せずに上記積層構造体10を加熱炉(図示せず)内に直接配置した以外は実施例1と同一条件によりLN結晶の熱処理(還元処理、黒化処理)を行った。また、同様の処理を10回繰り返し実施した。
熱処理(還元処理、黒化処理)後におけるLN基板の体積抵抗率は、積層構造体10の最上段と最下段は1.0×1010Ω・cm程度(処理10回の平均値)であったが、積層構造体10の中央に配置されたLN基板の体積抵抗率は1.0×1012Ω・cm程度(処理10回の平均値)とばらつきがあった。
尚、LN基板表面における「点状の色むら」と「模様状の色むら」の発生率はいずれも0.0%であった。
Figure 2020132463
本発明方法によれば、点状の還元むら(黒い点状の色むら)等が抑制され、かつ、電気的特性に優れたニオブ酸リチウム基板を効率よく製造できるため、表面弾性波素子(SAWフィルター)用の基板材料に用いられる産業上の利用可能性を有している。
1 基板形状のLN結晶
2 多孔質容器
10 積層構造体
20 蓋材

Claims (3)

  1. チョクラルスキー法で育成されたニオブ酸リチウム結晶を用いてニオブ酸リチウム基板を製造する方法において、
    基板形状に加工された複数枚のニオブ酸リチウム結晶を積層してニオブ酸リチウム結晶の積層構造体を構成し、かつ、通気性を有する多孔質容器に上記積層構造体を収容すると共に、積層構造体が収容された上記多孔質容器を加熱炉内に配置した後、不活性ガス雰囲気下、350℃以上、ニオブ酸リチウム結晶のキュリー温度未満の温度で熱処理してニオブ酸リチウム基板を製造することを特徴とするニオブ酸リチウム基板の製造方法。
  2. 上記多孔質容器が、黒鉛またはアルミナで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法。
  3. 上記不活性ガスがアルゴンガスで構成され、上記加熱炉が給気口と排気口を有すると共に、加熱炉内に連続的に給排されるアルゴンガスの流量が0.5〜5.0L/minであることを特徴とする請求項1または2に記載のニオブ酸リチウム基板の製造方法。
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JP2008500731A (ja) * 2004-05-25 2008-01-10 クリスタル テクノロジー インコーポレイテッド ニオブ酸リチウムおよびタンタル酸リチウムの結晶をプリコンディショニングするための凝縮された化学物質の使用

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