JP2020107602A - 二次電池用正極活物質及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 二次電池用正極活物質であって、
下記化学式(I)で表される一種又は二種以上の化合物を含んでなり、
Li[LixMny M(1-x-y)]O2 (I)
前記正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子の形態をなし、62MPaの圧力で前記正極活物質粉体を加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、前記正極活物質のX線回折による回折線(104)から求めた結晶子サイズが20nm以上30nm以下である、二次電池用正極活物質により達成される。
【選択図】 図1
Description
本発明の一の態様は以下の通りである。
〔1〕 二次電池用正極活物質であって、
下記化学式(I)で表される一種又は二種以上の化合物を含んでなり、
Li[LixMny M(1-x-y)]O2 (I)
〔上記式中、
Mが、Ni、Ti、Co、Al、Mn、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn、Nb、Mo、Cu、及びWからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
y≧0.4であり、
0<X≦0.3である。〕
前記正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子の形態をなし、
62MPaの圧力で前記正極活物質粉体を加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、
前記正極活物質のX線回折による回折線(104)から求めた結晶子サイズが20nm以上30nm以下である、二次電池用正極活物質。
〔2〕 前記化学式(I)中、
MがNi、Co、Al、Mg、B、及びZrからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
y≧0.5であり、
0.1<X≦0.25である、〔1〕に記載の二次電池用正極活物質。
〔3〕 前記正極活物質のX線回折による回折線(105)のピーク及び回折線(104)のピークによるピーク強度比〔I(105)/I(104)〕が0.08以上であることを特徴とする、〔1〕又は〔2〕に記載の二次電池用正極活物質。
〔4〕 前記正極活物質の粒度分布が二つのピークを備えてなり、
前記二つのピークは、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピークa(「Pa」)と、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピークb(「Pb」)とにより構成されてなり、
前記Paの平均粒子径が0.1μm以上1μm以下であり、
前記Pbの平均粒子径が5μm以上30μm以下である、〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質。
〔5〕 前記正極活物質の粒度分布が二つのピークを備えてなり、
前記二つのピークは、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピークa(「Pa」)と、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピークb(「Pb」)とにより構成されてなり、
前記Paの平均粒子径と前記Pbの平均粒子径とによる頻度比(Pa/Pb)が2以上である、〔1〕〜〔4〕の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質。
〔6〕 正極であって、
集電体と、〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質とを備えてなる、正極。
〔7〕 二次電池であって、
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータとを備えてなり、
前記正極が、〔6〕に記載のものである、二次電池。
〔8〕 〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法であって、
(S1)Li化合物と;
Mn化合物と;
Ni化合物、Ti化合物、Co化合物、Al化合物、Fe化合物、Mg化合物、B化合物、Cr化合物、Zr化合物、Zn化合物、Y化合物、Nb化合物、Mo化合物、Si化合物、P化合物、K化合物、Ca化合物、V化合物、Cu化合物、及びW化合物からなる群から選択されてなる一種又は二種以上の化合物と;
極性溶媒と;を混合し、
(S2)前記混合物による一次粒子を疎に凝集し二次粒子前駆体を形成し、
(S3)前記二次粒子前駆体を焼成し、前記焼成し得た粉体を機械的処理し、
62MPaの圧力で前記二次粒子を加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、
X線回折による回折線(104)から求めた結晶子サイズが20nm以上30nm以下とした前記正極活物質を得ることを含んでなる、製造方法。
〔9〕 前記(S1)における混合工程が、機械的処理により行われてなる、〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕 前記機械的処理が、メカニカルミリング処理である、〔8〕又は〔9〕に記載の製造方法。
〔11〕 〔9〕又は〔10〕に記載された製造方法により得られた、〔1〕〜〔5〕の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質。
「XRD」は、試料にX線を照射した際、X線が原子の周りにある電子によって散乱、干渉した結果生じる回折(ブラック条件:2dsinθ=nλ:2つの面の間隔をd、X線と平面のなす角をθ、任意の整数n、X線の波長λとする)を解析するものであり、これにより、構成成分の同定や定量、結晶サイズや結晶化度等を特定することが可能である。
「結晶子の大きさ(サイズ)」は、X線を用いた回折装置によって測定値を、例えば、半価幅及びシェラー(Scherrer)式〔D(Å)=K*λ/(β*cosθ):式中、Kは定数、λはX線の波長、βは結晶子の大きさによる回折線の広がり、θは回折角 2θ/θ〕に導入して算出される。「結晶子」とは、単結晶と看做される粒子の最大集合体をいい、一個の粒子は複数の結晶子によって構成されていることが多い。
体積粒度分布は、一つの粉体の集合を仮定し、その粒度分布が求められたものであり、その粒度分布において、粉体の集団の全体積を100%として累積カーブを求めたとき、累積カーブが最小(min)、50%、最大(max)となる点の粒子径をそれぞれD(min)径、D(50)径、D90(max)径(μm)として表されるものである。実際の測定法としては、レーザ回折・散乱法、顕微鏡法(画像)等の種々の原理に基づいた粒度分布測定装置が可能である。レーザ回折・散乱法における粒度分布の横軸となる粒子径は、球相当径であり、分布は体積基準で測定してる。個数基準の分布を求める場合は、粒子の形状を球形と仮定し、解析ソフトを用いて換算して求めることができる。また、本発明にあっては、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピーク(微粉体「Pa」)と、他方、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピーク(粗粉体「Pb」)として定義して使用する。
本発明にあっては、平均粒径は、体積平均径(MV)であり、粒状物質について、体積基準(体積分布)を用いて測定することができ、例えば、レーザ回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて体積分布を測定し、解析ソフトを用いて算出することができる。
本発明にあっては、「一次粒子」とは、基本的に、粒子一粒(基本粒子)のことを意味する。「一次粒子」の平均粒径は、通常、0〜10000nm、つまり、0nm超過程度、1μm以下程度である。具体的には、粒子をSEM等で確認した時に粒子と確認できる最小単位の粒子である。「二次粒子」とは、この「一次粒子」が幾つか集まって形成された凝集体(又は造粒体)であるが、粒子状体を形成しているものである。
「スプレードライ(噴霧乾燥)」とは、供給容器から液体組成物を噴霧器(アトマイザー)又はスプレーノズルから噴射して、空気乾燥媒体又は不活性ガス(窒素ガス)乾燥媒体中に流して(好ましくは、逆流)、瞬時に、固体と、液体(蒸発)に分離するものである。スプレードライによれば、液体組成物から所望の固体(粒子体・粉体)を得ることができ、通常は、1〜1000μmオーダー程度の平均粒径を有するものが製造可能であり、微細なノズルに代えることにより、1〜1000nmオーダーの平均粒径を有するものを製造することが可能である。
「メカニカルミリング(MM)」は、機械的処理の一形態であり、金属素粉末や合金粉末にアトライターやボールミルを用いてミリング(強撹拌)し、粉末に対して超強加工を施すことである。機械的エネルギーを利用することにより金属成分をその融点より低い温度で強制的に粉末化することができ、急冷凝固だけでは得ることができないアモルファスな構造の粉末を、処理条件によっては作成することが可能である。また、粉体内の組成が均質で、偏析が少ない粉体が得られる。メカニカルミリングを実現するものとして、遊星回転によってボールと粉末を専用容器内に運動させる遊星型などの高エネルギーミリング(「遊星型ボールミリング」)が挙げられる。「遊星型ボールミル」は、自転・公転運動で発生した強力な遠心力を用いて、粉砕する方法であり、本発明のようなナノ構造粉体を形成するに適した方法である。
「機械的処理」とは、固体物質(例えば、粉体)に対して、機械的エネルギー(圧縮、衝撃、せん断、又は摩擦等の手段)を付与して、混合し、破砕し、造粒したりする処理である。
本発明にあっては、正極活物質、特に、高密度、高容量を提供するリチウム過剰型正極活物質を提案する。本発明である正極活物質は、下記化学式(I)で表される化合物の一種又は二種以上のものを使用する。
正極活物質としては、以下の化学式(I)で表されるものを使用する。
Li[LixMnyM(1-x-y)]O2 (I)
〔上記式(I)中、
Mが、Ni、Ti、Co、Al、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn、Y、Nb、Mo、Si、P、K、Ca、V、Cu、及びWからなる群から選択される一種又は二種以上ものであり(好ましくは、Ni、Co、Al、Mg、B、及びZrからなる群から選択される一種又は二種以上ものであり、より好ましくは、Ni及びCoからなる群から選択される一種又は二種以上ものである)、
y≧0.4であり(好ましくはy≧0.5である)、
0<X≦0.3である(好ましくは0.1≦X≦0.25である)。〕
本発明にあっては、正極活物質は、その一次粒子(好ましくは、平均粒子径1μm以下)を凝集(造粒)した二次粒子とにより構成されてなる。
一次粒子を凝集した二次粒子から構成される正極活物質は、62MPaの圧力で加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、好ましくは2.8g/cm3以上である。粉体加圧密度が上記数値であることにより、一次粒子が二次粒子中に緻密に存在させることができ、その結果、高い電極密度が得られ、かつ、電池容量を向上させることができる。また、上記数値と下記する他の技術的事項を組み合わせることにより、より電池性能を向上されることができる。
一次粒子を凝集した二次粒子から構成される正極活物質は、そのCu−Kα線を使用した粉末X線回折による回折線(104)からシェラーの式から計算した結晶子サイズは20nm以上30nm以下であり、好ましくは20nm以上25nm以下が好ましい。
一次粒子を凝集した二次粒子から構成される正極活物質は、そのX線回折による(105)回折ピークが観測される。本発明にあっては、X線回折による回折線(105)及び回折線(104)のピーク強度〔I(105)/I(104)〕が、0.08以上であり、好ましくは0.09以上0.097以下である。ピーク強度〔I(105)/I(104)〕が上記数値範囲内にあることにより、軽度に結晶構造が乱れるため(本発明の効果を発揮する意味において)、反応性が向上し、なおかつ、リチウムの挿入脱離サイトが確保されるため、電池容量を増大させることが可能となる。
正極活物質の粒度分布は、二つのピークを備えてなるものであり、前記二つのピークは、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピークa(「Pa」)と、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピークb(「Pb」)とにより構成されてなる。前記二つのピークから構成されてなることにより、プレス時に粗粉体の隙間を微粉体が埋めることで、正極内での正極活物質の充填性をより高めることとなり、伝導パスを容易に確保することができる。
本発明にあっては、ピークPaの平均粒径が0.1μm以上1μm以下であり、好ましくは0.3μm以上0.8μm以下(より好ましくは0.7μm以下)である。また、ピークPbの平均粒径が5μm以上30μm以下であり、好ましくは5μm以上20μm以下である。さらに、頻度比(Pa/Pb)が、2以上であり、好ましくは3以上であり、より好ましくは4以上である。
(原材料)
前記化学式(I)で表される化合物を構成するための原材料を用意する。
原材料としては、Li化合物と、Mn化合物と、Ni化合物、Ti化合物、Co化合物、Al化合物、Fe化合物、Mg化合物、B化合物、Cr化合物、Zr化合物、Zn化合物、Y化合物、Nb化合物、Mo化合物、Si化合物、P化合物、K化合物、Ca化合物、V化合物、Cu化合物、及びW化合物からなる群から選択されてなる一種又は二種以上の化合物が挙げられる。
また、原材料に用いるマンガン(Mn)化合物は特に制限はないが、例えば、炭酸マンガン、硝酸マンガン、塩化マンガン、二酸化マンガン、酸化マンガン(iii)、又は四酸化マンガン等が挙げられ、好ましくは、炭酸マンガン、二酸化マンガンが挙げられる。
原材料に用いるコバルト(Co)化合物は特に制限はないが、例えば、塩基性炭酸コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト、オキシ水酸化コバルト、水酸化コバルト、又は酸化コバルト等が挙げられ、好ましくは、塩基性炭酸コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、又はオキシ水酸化コバルトが挙げられる。
原材料に用いるアルミニウム(Al)化合物は特に制限はないが、例えば、炭酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウム等が挙げられ、好ましくは、炭酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は酸化アルミニウムが挙げられる。
原材料に用いるマグネシウム(Mg)化合物は特に制限はないが、例えば、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は酸化マグネシウム等が挙げられ、好ましくは、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は酸化マグネシウムが挙げられる。
その他原材料についても、特に制限はなく、水酸化物塩、炭酸塩、又は硝酸塩等を挙げることができる。
極性溶媒は、前記原料との液体組成物を調製する上で使用されるものである。極性溶媒としては、水(純水、蒸留水、イオン交換水、無イオン水)、アルコール(炭素数5以下の低級アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、プロパノール)、ケトン(アセトン)、低級ジオール(エチレングリコール)等の一種又は二種以上の混合物が使用できる。
原料は、水、分散剤等で湿式混合するのが好ましい。二次粒子前駆体製造(工程)としては、特に限定されるものではないが、例えば、原料を溶液に溶解し、pH調整して沈殿させる共沈法及び原料を湿式分散させ、熱噴霧する熱噴霧乾燥法等が挙げられる。本発明にあっては、特に、スプレードライによる熱噴霧乾燥法を好ましくは使用する。また、一次粒子の大きさは原料の大きさの調整(選択)及び調製条件により制御することができる。
前記焼成によって得られた粉体(二次粒子)を、機械的処理(特に、メカニカルミリング処理)を施して、結晶性、粉体加圧密度を調整した本発明による正極活物質(粒子)を調整する。本発明にあっては、特に、メカニカルミリング処理は、所望の緻密な粒子を調製することができるので好ましい。メカニカルミリング処理は、例えば、遊星ボールミル装置又はアトライターを用いて、所定のメディア径(直径が1mm以上30mm以下程度であり、好ましくは、10mm以下程度である)、メディア量、処理量、時間、回転数を調整することで、結晶性、粉体加圧密度を調整することができる。
本発明にあっては、本発明による正極活物質を備えた二次電池用正極を提案することができる。前記正極は、本発明による正極活物質(粉体)、導電剤、バインダー又は増粘剤等を添加した正極組成物を調製し、正極集電体上に形成することで調製することが可能である。
集電体は、正極充電電圧で電気化学的に安定に使用できるものであればいずれのものであってよく、例えば、銅、アルミニウム、ステンレススチール、チタン、銀、パラジウム、ニッケル、これらの合金、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるいずれか一種又は二種以上の混合物であってよい。また、前記ステンレススチールは、カーボン、ニッケル、チタン、又は銀で表面処理されてもよく、前記合金としては、アルミニウム−カドミウム合金を好ましく使用することができる。また、集電体は、その他にも、焼成炭素、導電材で表面処理された非伝導性高分子又は伝導性高分子などを使用することもできる。
導電材は電極に導電性を与えるものであり、電池において、化学変化を引き起こすことなく電子伝導性を有するものであれば、特に制限されることなく使用可能である。導電材の具体的な例としては、天然黒鉛又は人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファネースブラック、ランプブラック、サーマルブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀等の金属粉末又は金属繊維;酸化亜鉛、チタン酸カリウム等の導電性ウィスカー;酸化チタン等の導電性金属酸化物;或いは、ポリフェニレン誘導体等の伝導性高分子;からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。導電剤の含有量は、正極の全質量を基準にして、0.3質量%超過7質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以上であり、4質量%以下であってよい。
バインダーは、正極活物質の粒子等間の付着、及び正極活物質と集電体との接着力を向上させる役割を担うものである。バインダーの具体的な例としては、ポリビニリデンフルオリド(PVDF)、ビニリデンフルオリド−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF−co−HFP)、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエンポリマー(EPDM)、スルホン化−EPDM、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム、又はこれらの多様な共重合体からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。前記バインダーは、正極活物質層の総重量に対して、1重量%以上30重量%以下程度で含有されてよい。
本発明にあっては、正極における正極活物質の充填密度が、2、7g/cm3以上であり、好ましくは、2.8g/cm3以上で充填されてなる。充填密度が上記数値になることにより、高エネルギー密度の電池が実現可能となる。
本発明にあっては、本発明による正極活物質を含む正極と、負極と、セパレータとにより構成される二次電池(好ましくは、リチウム二次電池)を提案することができる。
正極は上記した本発明のものを用いる。
前記負極は、負極活物質、導電剤、バインダー又は増粘剤等を添加した負極組成物を調製し、負極集電体上に形成することで調製することが可能である。
負極活物質としては、リチウムの可逆的に挿入・脱離が可能な化合物であれば、いずれの材料でもよい。具体的な例としては、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、非晶質炭素などの炭素質材料;Si、Al、Sn、Pb、Zn、Bi、In、Mg、Ga、Cd、Si合金、Sn合金またはAl合金などのリチウムとの合金化が可能な金属質化合物;SiOx(0<x<2)、SnO2、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物のようにリチウムをドープ及び脱ドープすることができる金属酸化物;またはSi−C複合体またはSn−C複合体のように、前記金属質化合物と炭素質材料を含む複合物などを挙げることができ、これらのうちいずれか一つまたは2以上の混合物が用いられてよい。さらに、前記負極活物質として金属リチウム薄膜が用いられてもよい。また、炭素材料は低結晶炭素及び高結晶性炭素などが全て用いられてよい。
集電体は、二次電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を持つものであればよい。例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼結炭素、アルミニウムやステンレススチールの表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物などで表面処理したもの等が用いられる。
導電剤は、二次電池に化学的変化を誘発しないものが好ましく、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック(商品名)、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維等の導電性繊維;;が挙げられる。導電剤の含有量は、負極の全質量を基準にして、0質量%超過5質量%以下であり、好ましくは0.5質量%以上であり、3質量%以下であってよい。
バインダーとしては、水系又は溶剤系のものが挙げられ、水系のものとしては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン‐ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン‐トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン‐クロロトリフルオロエチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合体、ポリエチレンオキサイド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、シアノエチルプルラン、シアノエチルポリビニルアルコール、シアノエチルセルロース、シアノエチルスクロース、プルラン、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、アクリロニトリル‐スチレン‐ブタジエン共重合体、アルキル変性カルボキシル基含有共重合体、ビニルエステルとエチレン性不飽和カルボン酸エステルとの共重合体からなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは挙げられる。
セパレータは、正極及び負極間に介在され、高いイオン透過度及び機械的強度を持つ絶縁性の薄膜が用いられる。一般に、セパレータの気孔直径は0.01〜10μmであり、厚さは5〜300μmである。このようなセパレータとしては、例えば、耐化学性及び疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー、ポリイミド、ガラス繊維又はポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが用いられ、さらに、安全性を高めるため、表面にアルミナ、チタニア、シリカなどの酸化物層があってもよい。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合には、固体電解質がセパレータを兼ねることができる。
本発明にあっては、非水系電解質として、例えば、環状カーボネート及び/又は鎖状カーボネートを含むことができる。環状カーボネートの例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、γ−ブチロラクトン(GBL)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などが挙げられる。鎖状カーボネートの例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びメチルプロピルカーボネート(MPC)からなる群より選択された一種又は二種以上の混合物が好ましいが、これに限定されるものではなく、γ−ブチルラクトン(γ−BL)、テトラヒドロフラン(THF)、アセトニトリル及びその誘導体、並びにイオン液体からなる群より選択された一種又は二種以上の混合物などを用いてもよい。
非水系電解質は、リチウム塩を含有することができる。リチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、CF3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロホウ酸リチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、及びテトラフェニルホウ酸リチウムからなる群より選択される一種又は二種以上の混合物が挙げられる。
本発明にあっては、非水電解質添加剤として、ビニレンカーボネート、ビフェニル、プロパンスルトン、及びジフェニルジスルフィドからなる群より選択された1種又は二種以上の混合物などを加えてもよい。
本発明による二次電池は、通常の方法により正極及び負極間に多孔性のセパレータを挿入し、電解質を投入して製造することになる。本発明による二次電池は、円筒型、角型、パウチ型電池など、外形に関係なく用いられる。二次電池は、単一であっても、複数の二次電池として構成されてなるものであってよい。
(実施例1)
原料として、Li2CO3、MnCo3、NiO、Co3O4を用意し、Li:Ni:Mn:Co=1.13:0.28:0.48:0.14のモル比になるよう秤量した後に、水を分散媒として遊星ボールミル(商品名 P6:Fritsch製))で粉砕混合した後に、この混合物をノズル式スプレードライ装置(商品名DL410;ヤマト科学社製)に導入し、乾燥させた。乾燥させた物を、高純度アルミナ容器に供給し、大気雰囲気下で700℃で仮焼成した後、950℃で10時間本焼成し、粉末を得た。更に、遊星ボールミル(P6:Fritsch製)を使用し、250mL容器に粉末試料10gと直径5mmのボール200gを入れて、400rpmの回転速度で1時間メカニカルミリング処理を施して正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、直径12.7mmのボールを使用した以外は、実施例1に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理を行わなかった以外は、実施例1に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、回転数を600rpmにした以外は、実施例2に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、回転数を600rpmにした以外は、実施例1に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、ボール500gを入れた以外は、実施例2に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、ボール500gを入れた以外は、実施例1に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、回転数を600rpmにし、ボール500gを入れた以外は、実施例2に準じて正極活物質を得た。
メカニカルミリング処理において、回転数を600rpmにし、ボール500gを入れた以外は、実施例1に準じて正極活物質を得た。
実施例及び比較例で調製した正極活物質について以下の物性を測定し、その結果を下記表1及び図1乃至図11に記載した。
(粉体密度(加圧)測定)
正極活物質について、粉体抵抗測定システム(MPC−PD51型:三菱ケミカルアナリテック社製)を用いて、粉末を5g計量し、直径20mmの円筒型の型に充填し、62MPaの加圧によって、粉体密度を測定した。
(結晶構造解析)
正極活物質について、X線回折装置(D2 Phaser:Bruker社製)を用いて、Cu−Kα線源を用い(104)回折線の半値幅を測定し、シェラーの式から結晶子サイズを算出した。また、(105)回折線と(104)回折線のピーク強度比〔I(105)/I(104)〕を算出した。このX線回折による測定図は、図1に記載した通りであった。
(体積粒度分布)
正極活物質粉体を、マイクロトラック(商品名MT3300EX II:日機装社製)を用いて測定し、解析ソフト(商品名Data Management System:日機装社製)を用いて体積基準にして求めて、下記図2乃至10にその分布を記載した。また、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピーク(微粉体)「Pa」と、他方、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピーク(粗粉体)「Pb」と定義して、それぞれ測定し、また、頻度比(Pa/Pb)として算出した。
(粒径表面及び断面観察)
「走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope:SEM」を用いて、調製した実施例1及び比較例1の正極活物質の表面と断面について観察した。このSEM写真は、図11に示した通りであった。
(電池の調製)
〈正極調製〉
実施例及び比較例で調製した正極活物質をそれぞれ94重量%に、導電材としてカーボンブラック(商品名:SuperP:IMERYS社製)3重量%、結着剤としてポリフッ化ビニリデン3重量%を混合し、N−メチル2−ピロリドンを用いてスラリーとし、このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔に約60μmの厚さになるように塗布して、130℃で乾燥し、プレス後、直径13mmの円形に打ち抜き、正極を作製した。
〈負極調製〉
厚さ0.3mmの金属リチウムを、前記正極の円形打ち抜きと同様にして負極を調製した。
〈電解質〉
エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:ジエチルカーボネートを1:2:1の割合(体積比)で混合し、LiPF6が1モル溶解されている電解質(液)を用いた。
〈調製〉
上記正極及び負極の間に高分子セパレータを介して、前記電解質を入れて、2016型コインセルを製造し、それぞれ、実施例及び比較例の電池とした。
製造した実施例及び比較例のコイン電池について、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、電圧範囲を4.65V−2.5Vとして、充電0.1C、放電0.1Cの電流レートにて容量を確認した。
製造した実施例及び比較例のコイン電池について、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、電圧範囲を4.65V−2.5Vとして、充電0.2C、放電0.2Cの電流レートにて充放電を10回繰り返した。その結果は、表1に記載した通りであった。
表1の通り、比較例1の未処理のものは、放電容量が125mAh/gと低いが、本発明の結晶性、粒度調整、粉体加圧密度の調整を行う処理をメカニカルミリングで行うと、放電容量が実施例1では247mAh/g、実施例2では244mAh/gと大幅に向上した。
実施例の正極活物質によれば、結晶子サイズを20nm以上30nm以下にすることで、リチウムの拡散性がよく、容量が発現しやすいとともに、粉体加圧密度と結晶性を適度にすることで粒子内を緻密にしやするとともに、粒子内での電子伝道性が向上し、電池容量が高まったことが理解される。その結果、高密度かつ、高容量なリチウム過剰型層状マンガン複合酸化物が得られ、二次電池のエネルギー密度を有意に高めることができた。また、微粉Paと粗粉Pbのバランスも改善され、電極における粒子間の密着性が高まることで電極における電子伝導性が確保され、寿命特性も向上した。
Claims (10)
- 二次電池用正極活物質であって、
下記化学式(I)で表される一種又は二種以上の化合物を含んでなり、
Li[LixMny M(1-x-y)]O2 (I)
〔上記式中、
Mが、Ni、Ti、Co、Al、Mn、Fe、Mg、B、Cr、Zr、Zn、Nb、Mo、Cu、及びWからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
y≧0.4であり、
0<X≦0.3である。〕
前記正極活物質は、一次粒子が凝集した二次粒子の形態をなし、
62MPaの圧力で前記正極活物質粉体を加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、
前記正極活物質のX線回折による回折線(104)から求めた結晶子サイズが20nm以上30nm以下である、二次電池用正極活物質。 - 前記化学式(I)中、
MがNi、Co、Al、Mg、B、及びZrからなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
y≧0.5であり、
0.1<X≦0.25である、請求項1に記載の二次電池用正極活物質。 - 前記正極活物質のX線回折による回折線(105)のピーク及び回折線(104)のピークによるピーク強度比〔I(105)/I(104)〕が0.08以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の二次電池用正極活物質。
- 前記正極活物質の粒度分布が二つのピークを備えてなり、
前記二つのピークは、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピークa(「Pa」)と、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピークb(「Pb」)とにより構成されてなり、
前記Paの平均粒子径が0.1μm以上1μm以下であり、
前記Pbの平均粒子径が5μm以上30μm以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質。 - 前記正極活物質の粒度分布が二つのピークを備えてなり、
前記二つのピークは、平均粒径が小さい領域(微粉体)に現れたピークをピークa(「Pa」)と、平均粒径が大きい領域(粗粉体)に現れたピークをピークb(「Pb」)とにより構成されてなり、
前記Paの平均粒子径と前記Pbの平均粒子径とによる頻度比(Pa/Pb)が2以上である、請求項1〜4の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質。 - 正極であって、
集電体と、請求項1〜5の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質とを備えてなる、正極。 - 二次電池であって、
正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータとを備えてなり、
前記正極が、請求項6に記載のものである、二次電池。 - 請求項1〜5の何れか一項に記載の二次電池用正極活物質の製造方法であって、
(S1)Li化合物と;
Mn化合物と;
Ni化合物、Ti化合物、Co化合物、Al化合物、Fe化合物、Mg化合物、B化合物、Cr化合物、Zr化合物、Zn化合物、Y化合物、Nb化合物、Mo化合物、Si化合物、P化合物、K化合物、Ca化合物、V化合物、Cu化合物、及びW化合物からなる群から選択されてなる一種又は二種以上の化合物と;
極性溶媒と;を混合し、
(S2)前記混合物による一次粒子を凝集し二次粒子前駆体を形成し、
(S3)前記二次粒子前駆体を焼成し、前記焼成し得た粉体を機械的処理し、
62MPaの圧力で前記二次粒子を加圧した際の粉体加圧密度が2.7g/cm3以上であり、
X線回折による回折線(104)から求めた結晶子サイズが20nm以上30nm以下とした前記正極活物質を得ることを含んでなる、製造方法。 - 前記(S1)における混合工程が、機械的処理により行われてなる、請求項8に記載の製造方法。
- 前記機械的処理が、メカニカルミリング処理である、請求項8又は9に記載の製造方法。
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