JP2020041325A - 掘削機切削用仮壁及びその製造方法 - Google Patents
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このように筋状繊維強化補強材が配置された切削用仮壁を掘削機で切削したときには、切削部に配置された筋状繊維強化補強材も共に切削されることになるが、その際に、切削部に配置された筋状繊維強化補強材を介して、非切削部に配置された筋状繊維強化補強材に引張力が作用し、躯体から引き抜かれてしまうことがある。
特に、筋状繊維強化補強材の市販のものは、原糸となる繊維を束ねたものを螺旋状に糸で巻かれマトリックス樹脂で硬化させたものが多い。このようなものは、樹脂でコーティングもされていたり、表面の節が浅いため、掘削機切削用仮壁に用いると、掘削機による切削の際に、躯体から引き抜かれてしまう可能性がより高まってしまう。
以下、本発明に係る第1の実施形態について、図面の図1乃至図3と共に説明する。
図1は、本発明に係る掘削機切削用仮壁の第1の実施形態を示した正面図である。本実施形態の掘削機切削用仮壁は、シールド工法の発進立坑に用いられるものである。
筋状繊維強化補強材10は、正面視において発進開口部4(切削部)の円形に重なるように複数本平行に配置されている。
筋状繊維強化補強材10の強化繊維としては、炭素繊維、ガラス繊維またはアラミド繊維のいずれでも良いが、コストの面でバサルト繊維が優位である。また、筋状繊維強化補強材10は、バサルト繊維を含浸させるマトリックス樹脂とを備えている。
本実施形態では、筋状繊維強化補強材10の強化繊維としてバサルト繊維を用いたもので説明する。
マトリックス樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでも良い。熱可塑性樹脂を用いた場合は、可変性を持たせることができる。
このように掘削によって生じる引き抜き力に着目し、対抗して非切削定着部の定着力を備えるようにする着想は、今まで考えられていなかった。
非切削定着部10aには、補強材本体11の外周にリング溝12が設けられている。リング溝12にコンクリートが存在することになるので、非切削定着部10aは通常の定着力より大きな定着力を得ることができる。リング溝12は、市販の筋状繊維強化補強材(バサルトロッド)を削って加工することで製造される。市販のものは、原糸となる繊維を束ねたものを螺旋状に糸で巻かれマトリックス樹脂で硬化させたもので表面に浅い節があるが、図示を省略している。リング溝12は、本発明の凹形状に相当する。
筋状繊維強化補強材10(バサルトロッド)は、複数の強化繊維13(バサルト繊維)とマトリックス樹脂14とを有している。図3(A)に示すように、リング溝12は、強化繊維13とマトリックス樹脂14と有する補強材本体11が削られて、溝側壁部12aと溝底部12bとが形成されて製造される。
なお、加工されたリング溝12は、コンクリート中に含まれるアルカリ成分から保護するために、ビニルエステルやエポキシ樹脂などでカバーして、耐アルカリ性を向上させるようにしても良い。また、カバーはマトリックス樹脂14と同じものを用いても良い。
適切な定着力を得るために、リング溝の個数や形状を変更して設置する。
掘削機切削用仮壁1の切削部がシールド掘進機によって切削されると、切削部に配置された筋状繊維強化補強材10も共に切削されることになるが、その際には、切削部に配置された筋状繊維強化補強材10を介して、非切削部に配置された筋状繊維強化補強材10に引張力が作用することになる。その引張力に対して、非切削定着部10aはリング溝12を備えているので、筋状繊維強化補強材10の躯体からの引き抜き抵抗として機能する。このため、非切削部に配置された筋状繊維強化補強材は引き抜かれることを抑制することができる。
以下、本発明に係る第2の実施形態について図面の図4と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
第2の実施形態では、バサルト繊維を強化繊維とした筋状繊維強化補強材の非切削定着部10aが芯部20と芯部20を覆う外層21とを備えているものである。芯部20は、繊維の方向性が長手方向に配置された強化繊維13(バサルト繊維)とマトリックス樹脂14を有している。外層21は、芯部20を覆っている。外層21は、強化繊維13(バサルト繊維)を備えておらず、マトリックス樹脂14を備えている。外層21のマトリックス樹脂14は、芯部20のマトリックス樹脂14と同じものであるが、異なる材質のものでも良い。同じ材質であると芯部20と外層21との一体性を高めることができる。
このようにリング溝12を形成するによって、リング溝12を削る際にも強化繊維13を切断することがなく、筋状繊維強化補強材の強度低下を抑えることができる。また、リング溝12の箇所で、芯部20の強化繊維13を露出させることになるが、非切削箇所でありコンクリートで保護されることになるので衝撃を受けにくく切断や損傷の可能性が低下する。特に、強化繊維13として比較的せん断に弱いバサルト繊維の場合にはその効果は高い。
以下、本発明に係る第3の実施形態について図面の図5と共に説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第2の実施形態において、リング溝12の溝底部12bを芯部20と外層21との境界部よりも外層側に設けたものである。このようにすると、リング溝12が設けられた芯部20も外層21で保護することができる。よって、コンクリートが打設される前においてもリング溝12の箇所が損傷を受けることを少なくすることができる。
以下、本発明に係る第4の実施形態について図面の図6と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態において、リング溝12とリング溝12との間に、螺旋溝15を設けたものである。リング溝12だけでは、付着力が不足する場合に引き抜き抵抗を確保することができる。
なお、本実施形態では非切削定着部10aがリング溝12と螺旋溝15とを備えるものであったが、これに限定されず、リング溝12を省略して螺旋溝15だけを備えるものとしても良い。
以下、本発明に係る第5の実施形態について図面の図7と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第4の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
第1の実施形態乃至第4の実施形態においては、筋状繊維強化補強材の断面形状が略円形であったが、本実施形態では矩形となっており、全体形状としては板状の筋状繊維強化補強材となっている。そして、図7に示すように、非切削定着部10aには補強材本体11の外周にリング溝12が設けられている。
本実施形態は、コンクリート製の掘削機切削用仮壁に用いられるもので説明したが、本実施形態の筋状繊維強化補強材をSMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材として適用しても良い。この場合には、ソイルセメント地中壁が本発明の掘削機切削用仮壁に相当する。
以下、本発明に係る第6の実施形態について図面の図8と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第5の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第5の実施形態において、非切削定着部10aにリング溝12の代わりに開口16が採用されている。この開口16は、本発明の凹形状に相当する。
このように開口16を設けると、コンクリートも開口16内に充填されやすくなり、安定した定着力が得られる。
また、筋状繊維強化補強材の矩形断面の長手方向を掘削機切削用仮壁の厚み方向に配置した場合には、横筋を開口16内に配置することができ、効率的な配筋を行うことができる。
本実施形態は、コンクリート製の掘削機切削用仮壁に用いられるもので説明したが、本実施形態の筋状繊維強化補強材をSMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材として適用しても良い。この場合には、ソイルセメント地中壁が本発明の掘削機切削用仮壁に相当する。
以下、本発明に係る第7の実施形態について図面の図9と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第6の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第1の実施形態の非切削定着部について、発進開口部4の円形状の中心から筋状繊維強化補強材10の長手方向(上下方向)に対して直交方向(横方向)に離れた側に配置された筋状繊維強化補強材10の非切削定着部の定着力を、長手方向に対して直交方向で円形状の中心に近い側に配置された筋状繊維強化補強材10の非切削定着部の定着力より大きくしたものである。
以下、本発明に係る第8の実施形態について図面の図10と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第7の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、第7の実施形態において、シールド掘進機の回転カッタが一方向の矢印K1で示された向きで回転して発進開口部4を切削する場合の筋状繊維強化補強材10の非切削定着部10aの配置を示したものである。
このようにすれば、鉄筋よりコストが高い筋状繊維強化補強材10の使用量を抑えることができる。
以下、本発明に係る第9の実施形態について図面の図11と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第8の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態は、非切削定着部10aの一部をフック部17としたものである。図11は、発進開口部の上方に設けられる非切削定着部10aを示したものである。掘削機の切削によって作用する引張力をFで示している。
本実施形態においては、非切削定着部10aの一部をフック部17としているが、大半の部分をフック部17としても良い。また、第1の実施形態のようなリング溝や第4の実施形態のような螺旋溝のうち少なくとも一方と併用しても良い。
鉄筋との連結は、任意の継手を用いても良いし、鉄筋の端部にもフックを設けるなどしてラップ継手としても良い。
以下、本発明に係る第10の実施形態について図面の図12と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第9の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態においては、第5の実施形態の筋状繊維強化補強材と同様にリング溝12を備えているが、板状の筋状繊維強化補強材の厚みを増やしたものとしている。この断面の縦横寸法は、SMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材に用いられるH型鋼材やI型鋼材のウェブ高さ寸法とフランジ幅寸法に相当するものとしている。このようにすると、SMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材として適用した際には、ソイルセメント中に芯材として落とし込む際にも芯材が曲がりにくくなり精度が確保しやすい。
本実施形態では、筋状繊維強化補強材の断面形状を形成した後に、リング溝を加工したものであったが、第5の実施形態のようなリング溝が形成された板状の筋状繊維強化補強材を複数枚重ねて接続して製造しても良い。
以下、本発明に係る第11の実施形態について図面の図13と共に説明する。なお、第1の実施形態乃至第10の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
本実施形態においては、第6の実施形態の筋状繊維強化補強材と同様に開口16を備えているが、板状の筋状繊維強化補強材の厚みを増やしたものとしている。この断面の縦横寸法は、SMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材に用いられるH型鋼材やI型鋼材のウェブ高さ寸法とフランジ幅寸法に相当するものとしている。このようにすると、SMW工法やTRD工法で施工される柱列式や等厚式のソイルセメント地中壁の芯材として適用した際には、ソイルセメント中に芯材として落とし込む際にも芯材が曲がりにくくなり精度が確保しやすい。
本実施形態では、筋状繊維強化補強材の断面形状を形成した後に、開口を加工したものであったが、第6の実施形態のような開口が形成された板状の筋状繊維強化補強材を複数枚重ねて接続して製造しても良い。
本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
また、凹形状や凸形状とせず、定着を長くとることにより、掘削機で切削される際に生じる引き抜き力によっても引き抜かれない定着力を備えるようにしても良い。
2 壁体
3 鉄筋
4 発進開口部
10 筋状繊維強化補強材
11 補強材本体
12 リング溝
13 強化繊維
14 マトリックス樹脂
15 螺旋溝
16 開口
17 フック部
20 芯部
21 外層
Claims (12)
- 繊維の方向性が長手方向に配置された強化繊維を含む筋状繊維強化補強材で補強され、掘削機で切削することが可能な掘削機切削用仮壁であって、
前記掘削機切削用仮壁は、前記掘削機で切削される切削部と、前記掘削機で切削されない非切削部と、を備えており、
前記筋状繊維強化補強材は、前記切削部と前記非切削部とに亘って配置されていると共に、前記切削部において定着する切削定着部と前記非切削部において定着する非切削定着部とを有しており、
前記非切削定着部は、前記切削部が前記掘削機で切削される際に生じる引き抜き力によっても引き抜かれない定着力を備えている
ことを特徴とする掘削機切削用仮壁。 - 前記切削部は、正面視において円形であって、
前記筋状繊維強化補強材は、正面視において前記切削部の前記円形に重なるように複数本平行に配置されており、
前記円形の中心から前記筋状繊維強化補強材の長手方向に対して直交方向に離れた側に配置された前記筋状繊維強化補強材の前記非切削定着部の定着力は、前記直交方向で前記円形の中心に近い側に配置された前記筋状繊維強化補強材の前記非切削定着部の定着力より大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部は、凹形状を備えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部が備える前記凹形状は、前記筋状繊維強化補強材の外周のリング溝である
ことを特徴とする請求項3に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部が備える前記凹形状は、前記筋状繊維強化補強材の外周の螺旋溝である
ことを特徴とする請求項3に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部が備える前記凹形状は、開口である
ことを特徴とする請求項3に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部は、凸形状を備えている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部が備える前記凸形状は、前記筋状繊維強化補強材の外周のリング突条である
ことを特徴とする請求項7に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部が備える前記凸形状は、前記筋状繊維強化補強材の外周の螺旋突条である
ことを特徴とする請求項7に記載の掘削機切削用仮壁。 - 前記非切削定着部は、フック部を備えている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のうちいずれか1項に記載の掘削機切削用仮壁。 - 繊維の方向性が長手方向に配置された強化繊維を含む筋状繊維強化補強材で補強され、掘削機で切削することが可能な掘削機切削用仮壁の製造方法であって、
前記筋状繊維強化補強材を、前記掘削機切削用仮壁の前記掘削機で切削される切削部と前記掘削機で掘削されない非切削部とに亘って配置するに際して、
前記非切削部に定着させる非切削定着部を、前記切削部が前記掘削機で切削される際に生じる引き抜き力によっても引き抜かれないように定着させる
ことを特徴とする掘削機切削用仮壁の製造方法。 - 前記切削部は、正面視において円形であって、
前記筋状繊維強化補強材を、正面視において前記切削部の前記円形に重なるように複数本平行に配置するに際して、
前記円形の中心から前記筋状繊維強化補強材の長手方向に直交方向に離れた側に配置する前記筋状繊維強化補強材の前記非切削定着部の定着力を、前記直交方向で前記円形の中心に近い側に配置する前記筋状繊維強化補強材の前記非切削定着部の定着力より大きくして配置する
ことを特徴とする請求項11に記載の掘削機切削用仮壁の製造方法。
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