JP5632219B2 - 樹脂被覆セグメント及びこれによって構築されたシールドトンネル - Google Patents
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Description
このようなセグメントを採用することにより、トンネルの内壁面をコンクリートにてコーティングする二次覆工の工程を省略することができ、二次覆工によってトンネル断面が縮小してしまうことを回避して、経済的・工期的なデメリットを解消することが可能となっている。
すなわち、シールドトンネルを構築する際に組み立てられる各樹脂被覆セグメントでは、シールドトンネルに曲げモーメントが発生すると、セグメント内部材の内周面及び外周面と樹脂製被覆部材の接合面との間に応力が作用し、この応力によってセグメント内部材の内周面及び外周面から樹脂製被覆部材が離脱してしまう。特に、セグメント内部材の内周面が引っ張られる曲げモーメントが発生すると、そのセグメント内部材の内周面に接合される樹脂製被覆部材にその曲面形状に応じた剥離力が作用し、この剥離力によってセグメント内部材の内周面から樹脂製被覆部材が離脱してしまう。このため、セグメント内部材の内周面及び外周面から樹脂製被覆部材が離脱すると、樹脂製被覆部材が引張材として機能せず、樹脂被覆セグメントの耐荷性能を確保することができない。
この特定事項により、各樹脂製被覆部材は、コンクリート(例えば、シールドマシンで切削可能な鋼繊維や有機繊維を混入したコンクリートなど)よりなるセグメント内部材の内周面及び外周面に対し、その接合面に設けられた凹凸部によって凹凸接合され、セグメント内部材の内周面及び外周面の厚み方向に接合面積を確保して強固に接合される。このため、樹脂被覆セグメントを周方向及び軸方向に順次組み立てて構築されるシールドトンネルに発生する曲げモーメントによってセグメント内部材の内周面及び外周面と樹脂製被覆部材の接合面との間に応力が作用しても、その応力が凹凸部による凹凸接合によって各樹脂製被覆部材を剥離させることなく伝達される。しかも、セグメント内部材の内周面を引っ張る曲げモーメントによって樹脂製被覆部材の曲面形状に応じた剥離力が作用しても、その剥離力が凹凸部による凹凸接合によって各樹脂製被覆部材を剥離させることなく伝達される。これにより、セグメント内部材の内周面及び外周面からの樹脂製被覆部材の離脱が確実に防止され、樹脂製被覆部材を引張材として機能させて樹脂被覆セグメントの耐荷性能を確保することが可能となる。
更に、前記各樹脂製被覆部材として、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体を無機繊維で補強した板状部材が適用されているので、引張材としての機能を備えかつ加工の容易な各樹脂製被覆部材によって、シールドトンネルの分岐又は合流する分岐・合流部での施工性を図ることができる。
この場合には、セグメント内部材の内周面及び外周面と各樹脂製被覆部材の接合面との間に作用する荷重に対し、凹量の増大によりセグメント内部材の周方向又はその周方向と直交する方向で接触面積が拡大された溝部によって、セグメント内部材の周方向又はその周方向と直交する方向においてより効果的に抗することができる。
図2において、非切削部位に設置される各第1セグメント11Aは、湾曲する内周面14及び外周面15を有する非切削部位専用セグメント内部材21と、この非切削部位専用セグメント内部材21の内部に配筋された鉄筋22とを備えている。そして、図3に示すように、前記鉄筋22は、非切削部位専用セグメント内部材21の内部において内外周面及び両側面よりなる周縁に沿うようにシールドトンネル1の周方向所定間隔おきに配筋された略環状の副筋221と、この副筋221の内周側に所定間隔おきに接合されてシールドトンネル1の周方向に延びる主筋222とからなる。この場合、非切削部位専用の各第1セグメント11Aは、図示しない型枠内に鉄筋22を配筋し、これに骨材を含有したコンクリートを打設することにより得られる。この場合、骨材としては、最大粗骨材の寸法が10mm〜15mm以下であることが好ましい。なお、図2中30は、非切削部位専用の各第1セグメント11Aを組み立てる際に所望位置まで搬送する搬送機材により把持するための把持金物であって、この把持金物30は、各第1セグメント11A、各第2セグメント及び第3セグメントの内周面14の略中間位置に取り付けられている。
図4において、切削部位に設置される各第1セグメント11Bは、湾曲する内周面14及び外周面15を有する切削部位専用セグメント内部材31と、この切削部位専用セグメント内部材31の内周面14及び外周面15にそれぞれ接合された樹脂製被覆部材としての樹脂製板状部材32,32とを備えている。この切削部位専用セグメント内部材31は、鉄筋を含まない無筋コンクリート(例えば、シールドマシンWで切削可能な鋼繊維(例えばスチールファイバーなど)や有機繊維(例えばポリプロピレンなど)を混入した無筋コンクリートなど)よりなる。また、各樹脂製板状部材32としては、例えば硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体を無機繊維としてのガラス繊維で補強した複合材(積水化学工業株式会社製 エスロンネオランバーFFUなど)を適用している。この各樹脂製板状部材32のガラス繊維は、切削部位専用セグメント内部材31の周方向に延びている。そして、切削部位専用の各第1セグメント11Bは、図示しない型枠内において樹脂製板状部材32,32を互いに対面させた状態で打設される、骨材を含有したコンクリートにより得られる。この場合、型枠内に固定された各樹脂製板状部材32の互いの対向面には、例えばエポキシ樹脂を主剤としてポリアミド系の硬化剤を含有する接着剤(日米レジン株式会社製 アルプロンD−12など)が塗布されている。
このとき、樹脂製板状部材32の弾性係数が切削部位専用セグメント内部材31の弾性係数よりも小さいために、樹脂製板状部材32の各凸部36が切削部位専用セグメント内部材31に押されて変形し、剥離が生じると、各凸部36の断面、特に根元部分ではせん断力が発生するため、これに対するせん断抵抗が必要となる。また、湾曲する内周面14及び外周面15に則した円弧状の各樹脂製板状部材32では、切削部位専用セグメント内部材31の内周面14及び外周面15から剥離する力が働くことから、各凸部36の断面での引張力に対する引張抵抗が必要となる。加えて、前述の各凸部36の断面と同様に、切削部位専用セグメント内部材31の断面におけるせん断抵抗及び引張抵抗も必要となる。
そこで、各凸部36の形状を設定するに当たり、各凸部36の突起高H(半径方向の高さ)、各凸部36の周方向の幅B及び互いに相隣る凸部36,36間の周方向の距離Wを設定する。なお、ずれに対する各凸部36の側面でのひびわれ発生が破壊に関する指標となることから、ずれに対する各部の抵抗力を比較することによって各凸部36の形状を設定するものとする。
ここで、樹脂製板状部材32の各凸部36の幅Bと突起高Hとは、各凸部36の側面の剥離抵抗強度が3.6N/mm2 (コンクリート強度f’cが略50N/mm2 の場合)であれば、各凸部36の断面でのガラス繊維直角方向のせん断強度が4.0N/mm2 であることから、B:Hの比率がほぼ1:1.1となる場合が各凸部36の側面と各凸部36の断面の抵抗力とが釣り合った状態となる。
また、樹脂製板状部材32の各凸部36の幅Bと互いに相隣る凸部36,36間の周方向の距離Wとは、各凸部36の頂部横の切削部位専用セグメント内部材31の突起根元部のせん断強度が3.9N/mm2 (コンクリート強度f’cが略50N/mm2 の場合)であれば、各凸部36の断面の強度はガラス繊維直角方向のせん断強度が4.0N/mm2 であることから、B:Wの比率がほぼ1:1.0となる場合が各凸部36の頂部横の切削部位専用セグメント内部材31の突起根元部と各凸部36の断面の抵抗力とが釣り合った状態となる。
よって、各凸部36の幅Bと互いに相隣る凸部36,36間の距離Wと各凸部36の突起高Hとの釣り合い比率は、B:W:Hがほぼ1:1.0:1.1となる。
また、コンクリートのせん断強度と引張強度と同程度の強度を有する接着剤を用い、コンクリートの圧縮強度の範囲を30〜80N/mm2 の範囲とした場合の比率は、
B:W:Hがほぼ1:0.7〜1.5:0.9〜1.8となる。
このとき、各凸部36の突起幅Bと互いに相隣る凸部36,36間の距離Wとの和は、1つの凸部36の応力分担幅といえるものであり、できるだけ小さい方がよい。よって、互いに相隣る凸部36,36間の距離Wについては、コンクリートの充填性を考慮して最大粗骨材寸法以上が望ましく、20mm〜25mm以上であればよい。また、各凸部36の幅Bについては、材料加工時の精度確保の観点から、5mm以上であればよい。
この第2の実施の形態では、樹脂製板状部材の最内層の構成を変更している。なお、樹脂製板状部材の最内層を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
しかも、凹凸部52の各凸部53及び各凹部54が、切削部位専用セグメント内部材31及び切削部位領域11Dに対応する兼用セグメント内部材42の周方向と直交する軸方向に連続的に配置され、それぞれ切削部位専用セグメント内部材31及び兼用セグメント内部材42の周方向に延びているので、切削部位専用セグメント内部材31及び切削部位領域11Dに対応する兼用セグメント内部材42の内外周面14,15と各樹脂製板状部材32の接合面との間に作用する荷重に対し、各セグメント内部材31,42の周方向と直交する軸方向で接触面積が拡大された凹凸部52によって効果的に抗することができる。
この第3の実施の形態では、樹脂製板状部材の最内層の構成を変更している。なお、樹脂製板状部材の最内層を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
この第4の実施の形態では、樹脂製板状部材の最内層の構成を変更している。なお、樹脂製板状部材の最内層を除くその他の構成は、前記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については、同じ符号を付して、その詳細な説明は省略する。
また、前記周方向凹凸部64の各凹部642には、その各凹部642の凹量をそれぞれ略2倍に増大させる溝部66,66,…が設けられ、この各溝部66によって、当該周方向凹凸部64の各凹部642が消失している。
11(11B) 第1セグメント(樹脂被覆セグメント)
14 内周面
15 外周面
31 切削部位専用セグメント内部材(セグメント内部材)
32 樹脂製板状部材(樹脂製被覆部材)
35 凹凸部
42 兼用セグメント内部材(セグメント内部材)
52 凹凸部
62 凹凸部
63 直交方向凹凸部
631 凸部
632 凹部
64 周方向凹凸部
641 凸部
642 凹部
65,66 溝部
Claims (4)
- 周方向及び軸方向に順次組み立てることによって複数のシールドトンネル同士が分岐又は合流する分岐・合流部において当該各シールドトンネルの一部である重なり部分を構築する樹脂被覆セグメントであって、
コンクリートよりなり、湾曲する内周面及び外周面を有するセグメント内部材と、このセグメント内部材の内周面及び外周面にそれぞれ接合される樹脂製被覆部材とを備え、
前記セグメント内部材の内周面及び外周面に対する前記各樹脂製被覆部材の接合面には、前記セグメント内部材の内周面及び外周面に対し凹凸接合される凹凸部が設けられ、
前記凹凸部は、前記セグメント内部材の周方向に連続的に配置され、それぞれセグメント内部材の周方向と直交する方向に延びており、
前記各樹脂製被覆部材としては、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体をガラス繊維で補強した板状部材が適用され、
前記ガラス繊維は、前記樹脂被覆セグメントの周方向に延び、前記凹凸部の凹部の切削加工時に直交する向きで切断されて、当該凹凸部の凸部の周方向の両端面より突出していることを特徴とする樹脂被覆セグメント。 - 前記凹凸部は、前記セグメント内部材の周方向と直交する方向にも連続的に配置され、それぞれセグメント内部材の周方向に延びている請求項1に記載の樹脂被覆セグメント。
- 前記凹凸部は、前記セグメント内部材の周方向に凹部と凸部とが交互に配置され、かつそれぞれ凹部と凸部とがセグメント内部材の周方向と直交する方向に延びる直交方向凹凸部であり、前記セグメント内部材の周方向と直交する方向に凹部と凸部とが交互に配置され、かつそれぞれ凹部と凸部とがセグメント内部材の周方向に延びる周方向凹凸部も備え、
前記直交方向凹凸部の凹部又は前記周方向凹凸部の凹部には、その凹部の凹量を増大させる溝部が設けられている請求項1に記載の樹脂被覆セグメント。 - 分岐又は合流する分岐・合流部においてその一部である重なり部分が樹脂被覆セグメントを周方向及び軸方向に順次組み立てることによって構築されたシールドトンネルであって、
前記樹脂被覆セグメントが、
湾曲する内周面及び外周面を有してコンクリートよりなるセグメント内部材と、
このセグメント内部材の内周面及び外周面に対しそれぞれ凹凸接合されて当該セグメント内部材の周方向と直交する方向に延びる凹凸部を有し、硬質ウレタン樹脂からなる熱硬化性樹脂発泡体を補強するために前記樹脂被覆セグメントの周方向に延びるガラス繊維を前記凹凸部の凹部の切削加工時に直交する向きで切断して当該凹凸部の凸部の周方向の両端面より突出させた板状部材よりなる樹脂製被覆部材とを備え、
前記分岐・合流部においてその重なり部分を構築するように周方向及び軸方向に順次組み立てられることを特徴とする樹脂被覆セグメントによって構築されたシールドトンネル。
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