JP2020037651A - (メタ)アクリレート樹脂、硬化性樹脂組成物、及び硬化物 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば特許文献1には、ベンジルアルコールのアルキレンオキシド変性(メタ)アクリレートを反応性希釈剤として用いた光硬化型樹脂組成物が提案されている。
特許文献2には、ジメチルシロキサン構成単位を有する有機変性ポリシロキサンを配合したポリウレタンアクリレートが提案されている。
特許文献3には、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂とメタクリル酸またはアクリル酸との反応物を含有してなる樹脂状組成物が提案されている。
特許文献4には、フェノール変性キシレン樹脂の水酸基またはメチロール基を、アクリル酸またはメタクリル酸エステル化してなる放射線硬化型樹脂が提案されている。
特許文献1は速硬化性を主たる目的としたもので、特許文献1に記載の光硬化型樹脂組成物から得られる硬化物は硬度に劣るという欠点がある。
特許文献2は柔軟性、耐擦傷性等の改良を目的としているが、硬度についてはまだ改善の余地がある。
特許文献3は無臭あるいは低臭気性を主たる目的としたものであり、密着性や柔軟性などの性能については言及されていない。
特許文献4では、アクリル酸又はメタクリル酸を用いてエステル化反応を行っているため、実際には、フェノール変性キシレン樹脂に含まれるアルコール性水酸基(メチロール基)はエステル化するが、一方で、多くのフェノール性水酸基はエステル化せずに残存している。このことは、特許文献4に記載される第1表及び第3表の赤外線吸収スペクトルにおいて、3300cm−1付近にフェノール性水酸基の吸収バンドが存在することにより、確認される。したがって、特許文献4に記載のように、アクリル酸又はメタクリル酸を用いてエステル化反応を行うと樹脂中の(メタ)アクリロイル基の導入量が少なくなり、その結果、樹脂が十分に硬化せず、十分な硬度及び耐溶剤性を得られないおそれがある。また、樹脂の硬化を進行させるために露光量を増やすと、生産効率の観点で悪化し、更に、露光による発熱で硬化物が脆くなって柔軟性が低下するおそれがある。
(1)
芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂をフェノール類により変性したフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と(メタ)アクリル酸ハライドとをエステル化反応して得られる、(メタ)アクリレート樹脂。
(2)
重量平均分子量(Mw)が300〜10,000である、(1)に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(3)
前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量が200〜10,000である、(1)又は(2)に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(4)
水酸基価が100mgKOH/g以下である、(1)〜(3)のいずれか一つに記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(5)
前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の水酸基価が100〜550mgKOH/gである、(1)〜(4)のいずれか一つに記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(6)
フェノール性水酸基価が100mgKOH/g以下である、(1)〜(5)のいずれか一つに記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(7)
前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のフェノール性水酸基価が100〜550mgKOH/gである、(1)〜(6)のいずれか一つに記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(8)
前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が、フェノール類変性キシレンホルムアルデヒド樹脂を含有する、(1)〜(7)のいずれか1つに記載の(メタ)アクリレート樹脂。
(9)
(1)〜(8)のいずれか1つに記載の(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性樹脂組成物。
(10)
(9)に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂は、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と(メタ)アクリル酸ハライドとをエステル化反応して得られる。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂は(メタ)アクリロイル基を含むため、UV等の照射又は加熱により容易に硬化させることができ、そのようにして得られた硬化物は高い硬度及び高い耐溶剤性を有する。さらに、前記硬化物は高い硬度及び高い耐溶剤性を有するとともに、密着性及び柔軟性にも優れる。これは、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の固有の特性である優れた密着性及び柔軟性に起因しているものと考えられる。
本実施形態におけるエステル化反応では、(メタ)アクリル酸ハライドを用いるため、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中に含まれる水酸基(フェノール性水酸基、及びアルコール性水酸基が存在する場合には当該アルコール性水酸基)を十分にエステル化することが可能である。したがって、(メタ)アクリレート樹脂の水酸基価を低く抑えることが可能となる。
本実施形態におけるエステル化反応では、(メタ)アクリル酸ハライドを用いるため、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中に含まれるフェノール性水酸基を十分にエステル化することが可能である。したがって、(メタ)アクリレート樹脂のフェノール性水酸基価を低く抑えることが可能となる。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂の製造方法は、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と(メタ)アクリル酸ハライドとをエステル化反応する工程を含む。
本実施形態におけるエステル化反応は、(メタ)アクリル酸ハライドを用いることによる、ハロゲン化水素の脱離を伴う、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のアシル化反応である。(メタ)アクリル酸ハライドは、アルコール性水酸基だけでなく、フェノール性水酸基とも反応性が高く、しかも、反応が不可逆的である。したがって、本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂の製造方法は、(メタ)アクリル酸を用いる脱水エステル化法や(メタ)アクリル酸エステルを用いるエステル交換法を用いた場合と異なり、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂中に含まれる水酸基(フェノール性水酸基、及びアルコール性水酸基が存在する場合には当該アルコール性水酸基)を十分にエステル化することが可能である。
(メタ)アクリル酸ハライドとしては、例えば、(メタ)アクリル酸クロリド、(メタ)アクリル酸ブロミド、(メタ)アクリル酸アイオダイド等が挙げられる。これらの中でも(メタ)アクリル酸クロリドが好ましい。
これらの中でも、塩化銅(II)が重合禁止作用が強く、かつ安価であることから好ましい。
重合禁止剤の添加割合は、通常、反応液に対して5〜20,000質量ppmが好ましく、より好ましくは25〜3,000質量ppmであり、更に好ましくは25〜1,000質量ppmである。添加割合が5質量ppm以上であれば、重合禁止効果が十分であり、20,000質量ppm以下であれば経済的であり、得られる(メタ)アクリレート樹脂の着色も生じない。
具体的には、反応液を中和・水洗し、水層を分離後、減圧下で反応溶媒を一定量留去する方法などが挙げられる。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂の原料であるフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂とは、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂をフェノール類により変性したものをいう。
本実施形態における芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、芳香族炭化水素とホルムアルデヒドとを反応させることにより得られる。芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、デシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、メチルビフェニル、ナフタレン、メチルナフタレン、ジメチルナフタレン、エチルナフタレン、アントラセン、メチルアントラセン、ジメチルアントラセン、エチルアントラセン、及びビナフチルからなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられ、密着性及び柔軟性により一層優れる観点から、キシレン、トルエン、及びメシチレンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、キシレンであることがより好ましい。すなわち、本実施形態における芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、上記と同様の観点から、キシレンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるキシレンホルムアルデヒド樹脂、トルエンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるトルエンホルムアルデヒド樹脂、及びメシチレンとホルムアルデヒドとを反応させることにより得られるメシチレンホルムアルデヒド樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、キシレンホルムアルデヒド樹脂を含むことがより好ましい。
フェノール類としては、特に限定されないが、フェノール、クレゾール(例えば、オルトクレゾール、メタクレゾール、及びパラクレゾール)、キシレノール(例えば、2,6−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3−キシレノール、2,5−キシレノール、2,4−キシレノール、及び3,4−キシレノール)、ブチルフェノール(例えば、p−tert−ブチルフェノール)、オクチルフェノール、ノニルフェノール、カルダノール、及びテルペンフェノールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
本実施形態におけるフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としては、取扱い性の観点から、ノボラック型のフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
本実施形態におけるフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量(Mw)は、密着性向上の観点から、ポリスチレン換算で、好ましくは200〜10,000であり、より好ましくは300〜8,000であり、更に好ましくは500〜7,000である。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
本実施形態の組成物は、本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂を含む。
本実施形態の組成物には、本実施形態の特性が損なわれない範囲において、本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂以外の(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアン酸エステル化合物、フェノール樹脂、オキセタン樹脂、ベンゾオキサジン化合物などの樹脂、オリゴマー、エラストマー類などの種々の高分子化合物、エチレン性不飽和基を有する化合物などの重合性官能基を有するモノマー、マレイミド化合物、充填材、難燃剤、シランカップリング剤、湿潤分散剤、光重合開始剤、光硬化開始剤、熱硬化促進剤、各種添加剤などを含むことができる。本実施形態の組成物に含まれる成分は、一般に使用されているものであれば、特に限定されるものではない。
また、各成分の配合量も、用途に応じて、種々調製できる。
本実施形態の組成物は、本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂と、必要に応じて、前記各成分を適宜混合することにより調製される。
本実施形態の硬化物は、本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂を含む組成物を硬化して得られる。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂、組成物及び硬化物は、種々の用途に使用できる。
本実施形態の(メタ)アクリレート樹脂を、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、及び不飽和ポリエステル樹脂などの原料、樹脂への添加剤および改質剤などに使用すると、これらの樹脂の耐水性、耐薬品性、及び耐熱性を向上させることができる。
GPC分析により、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)を求めた。分析に用いた装置及び分析条件は下記のとおりとした。
装置:Shodex GPC−101型(昭和電工株式会社製)
カラム:Shodex KF−801×2、KF−802.5、KF−803L
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min.
カラム温度:40℃
検出器:RI(示差屈折検出器)
無水酢酸−ピリジン法(JIS−K1557−1:2007)に準じて測定した。
三角フラスコに無水エチレンジアミン25mLをホールピペットではかりとり、о−ニトロアニリン指示薬2滴を加え、0.1Nナトリウムメチラート溶液で赤色になるまで滴定する。これに試料を加えて再び滴定し、次式により試料中のフェノール性水酸基価を計算した。
フェノール性水酸基価(mgKOH/g)=A×94.11×F/W
上記式中、A:試料の滴定に要した0.1Nナトリウムメチラート溶液の量(mL)、F:ナトリウムメチラート溶液の規定度、W:サンプル量(g)である。
得られた硬化塗膜について、JIS K5600−5−4:1999に準じて測定した。
得られた硬化塗膜について、アセトンを含浸させた綿棒でコート層を擦った。表面が未溶解であった場合は○、溶解した場合は×の評価とした。
得られた硬化塗膜について、JIS K5600−5−6:1999に準じ、2mm間隔の100個のマス目状の切り込みを入れ、密着性の評価を行った。評価基準を以下に示す。
◎:100個のマス目中、剥離しなかったマス目の数が90以上であった。
○:100個のマス目中、剥離しなかったマス目の数が60以上90未満であった。
△:100個のマス目中、剥離しなかったマス目の数が30以上60未満であった。
×:100個のマス目中、剥離しなかったマス目の数が30未満であった。
得られた硬化塗膜について、JIS K5600−5−1:1999に準拠して、芯棒に硬化膜を形成した基材を巻きつけ、下記基準に基づいて評価した。
○:直径2mmの芯棒で硬化膜に割れや剥がれがない
×:直径32mmの芯棒で硬化膜に割れや剥がれが生じる
撹拌装置、温度計、及びガス吹き込み管を備えた内容積200mLの四つ口フラスコに、フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としてフドー株式会社製のノボラック型のフェノール変性キシレン樹脂「ザイスターGP−100」(水酸基価:289mgKOH/g、フェノール性水酸基価:284mgKOH/g、重量平均分子量:1100)を15g、トルエンを37.5g、塩化銅(II)を0.01g、アクリル酸クロライドを7.8g仕込み、溶解させた後、塩化亜鉛0.1gを添加し、40℃に昇温した。空気を吹き込みながら、そのまま1時間保持し、反応を完了させ、反応液に水を加えて撹拌し、分液した。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。重合禁止剤ハイドロキノンモノメチルエーテル0.01gを添加した後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮して硬化性樹脂Aの36%トルエン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Aの重量平均分子量は1234、水酸基価は41mgKOH/g、フェノール性水酸基価は34mgKOH/gであった。
フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂として、フドー株式会社製の「ザイスターGP−100」に代えて、フドー株式会社製のノボラック型のフェノール変性キシレン樹脂「ザイスターP−100」(水酸基価:305mgKOH/g、フェノール性水酸基価:265mgKOH/g、重量平均分子量:3600)を用いたこと、アクリル酸クロライドの仕込み量を7.8gから8.1gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂Bの54%トルエン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Bの重量平均分子量は4671、水酸基価は87mgKOH/g、フェノール性水酸基価は72mgKOH/gであった。
フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(フドー株式会社製の「ザイスターGP−100」)に代えて、フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社製の「レヂトップPSK−2320」(水酸基価:529mgKOH/g、フェノール性水酸基価:436mgKOH/g、重量平均分子量:4069))を用いたこと、アクリル酸クロライドの仕込み量を14.1gに変えたこと、塩化亜鉛の仕込み量を0.2gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂Cの55%トルエン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Cの重量平均分子量は6479、水酸基価は35mgKOH/g、フェノール性水酸基価は6mgKOH/gであった。
フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂(フドー株式会社製の「ザイスターGP−100」)に代えて、フェノールノボラック樹脂(群栄化学工業株式会社製の「レヂトップPSM−2222」(水酸基価:531mgKOH/g、フェノール性水酸基価:467mgKOH/g、重量平均分子量:1979))を用いたこと、アクリル酸クロライドの仕込み量を14.1gに変えたこと、塩化亜鉛の仕込み量を0.2gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして硬化性樹脂Dの33%トルエン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Dの重量平均分子量は2510、水酸基価は62mgKOH/g、フェノール性水酸基価は49mgKOH/gであった。
実施例1〜2及び比較例1〜2で得られた硬化性樹脂A〜Dのトルエン溶液をそれぞれ、光重合開始剤(BASF製、イルガキュア(登録商標)184)と混合し、配合組成物を得た。
続いて、この配合組成物を各種基材上にバーコーターを用いて塗布し、100℃で2分加熱して乾燥させた後、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ、アイグラフィックス株式会社製の「ECS−1511U」)を用いて、500mJ/cm2となるようにUV照射を行い、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜について上記の各評価試験を実施した。結果を表1に示す。
なお、用いた基材は、以下の通りである。
・PET(東洋紡株式会社製の「A4100」、厚さ:100μm)
・鋼板(株式会社パルテック製の「PB−N144」、厚さ:200μm)
・PC(汎用品、厚さ:2mm)
・PMMA(汎用品、厚さ:2mm)
撹拌装置、温度計、及びガス吹き込み管を備えた内容積200mLの四つ口フラスコに、フドー株式会社製の「PR−1440M」(フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としてのレゾール型のフェノール変性キシレン樹脂(水酸基価:416mgKOH/g、フェノール性水酸基価:296mgKOH/g、重量平均分子量:5374)をメタノール中に45質量%含むワニス)を30g、イソホロンを30g仕込み、ワニスに含まれるメタノールを減圧除去した。メタノールを除いたワニスに、塩化銅(II)0.01g、アクリル酸クロライド14.8gを仕込み、溶解させた後、塩化亜鉛0.1gを添加し、40℃に昇温した。空気を吹き込みながら、そのまま1時間保持し、反応を完了させ、反応液に水を加えて撹拌し、分液した。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。重合禁止剤ハイドロキノンモノメチルエーテル0.01gを添加した後、ろ過し、ろ液を減圧濃縮して硬化性樹脂Eの76%イソホロン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Eの重量平均分子量は3114、水酸基価は45mgKOH/g、フェノール性水酸基価は45mgKOH/gであった。
撹拌装置、温度計、及びガス吹き込み管を備えた内容積200mLの四つ口フラスコに、フドー株式会社製の「PR−1440M」(フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂としてのレゾール型のフェノール変性キシレン樹脂(水酸基価:416mgKOH/g、フェノール性水酸基価:296mgKOH/g、重量平均分子量:5375)をメタノール中に45質量%含むワニス)を30g、イソホロンを30g仕込み、ワニスに含まれるメタノールを減圧除去した。メタノールを除いたワニスに、塩化銅(II)0.03g、アクリル酸30.6gを仕込み、溶解させた後、p−トルエンスルホン酸0.26gを添加し、空気を吹き込みながら、13kPaに減圧した。60℃に昇温し、そのまま5時間保持し反応を完了させた後、減圧で未反応のアクリル酸を除去し、硬化性樹脂Fの50%イソホロン溶液を得た。得られた硬化性樹脂Fの重量平均分子量は4175、水酸基価は198mgKOH/g、フェノール性水酸基価は148mgKOH/gであった。
なお、得られた硬化性樹脂Fの重量平均分子量が、原料である「PR−1440M」のそれよりも低下していた理由は以下のように推測される。即ち、レゾール型のフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂は、メチロール基を含むことから、自己縮合により分子内にエーテル結合が含まれる可能性があるところ、酸性条件下でアクリレート化したことで、反応中に分子鎖の切断が起こり、重量平均分子量の低下につながったものと推測される。
実施例5及び比較例5で得られた硬化性樹脂E及びFのイソホロン溶液をそれぞれ、光重合開始剤(BASF製、イルガキュア(登録商標)184)と混合し、配合組成物を得た。
続いて、この配合組成物を各種基材上にバーコーターを用いて塗布し、60℃で30分加熱後、さらに100℃で60分加熱して乾燥させた後、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ、アイグラフィックス株式会社製の「ECS−1511U」)を用いて、500mJ/cm2となるようにUV照射を行い、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜について上記の各評価試験を実施した。結果を表3に示す。
比較例5で得られた硬化性樹脂Fのイソホロン溶液を、光重合開始剤(BASF製、イルガキュア(登録商標)184)と混合し、配合組成物を得た。
続いて、この配合組成物を各種基材上にバーコーターを用いて塗布し、60℃で30分加熱後、さらに100℃で60分加熱して乾燥させた後、紫外線照射装置(高圧水銀ランプ、アイグラフィックス株式会社製の「ECS−1511U」)を用いて、4500mJ/cm2となるようにUV照射を行い、硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜について上記の各評価試験を実施した。結果を表3に示す。
また、比較例6と同じく硬化性樹脂Fを用いた比較例7では、露光量を多くすることで実施例6と同程度の硬度及び耐溶剤性が得られた。しかし、その一方で、PETでの柔軟性が低下した。これは、UVの露光量が多くなったことにより、UV照射による発熱で硬化物が脆くなったことに起因すると推測されるが、本発明はこの推測により何ら限定されない。
Claims (10)
- 芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂をフェノール類により変性したフェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂と(メタ)アクリル酸ハライドとをエステル化反応して得られる、(メタ)アクリレート樹脂。
- 重量平均分子量(Mw)が300〜10,000である、請求項1に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の重量平均分子量が200〜10,000である、請求項1又は2に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 水酸基価が100mgKOH/g以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂の水酸基価が100〜550mgKOH/gである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- フェノール性水酸基価が100mgKOH/g以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂のフェノール性水酸基価が100〜550mgKOH/gである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 前記フェノール類変性芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂が、フェノール類変性キシレンホルムアルデヒド樹脂を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレート樹脂。
- 請求項1〜8のいずれか1項に記載の(メタ)アクリレート樹脂を含む硬化性樹脂組成物。
- 請求項9に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
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