JP2019199444A - ペンタンジイソシアネートの製造方法 - Google Patents

ペンタンジイソシアネートの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】塩素誘導体の生成を抑制できるとともに、ペンタンジイソシアネートの収率の向上を図ることができるペンタンジイソシアネートの製造方法を提供すること。【解決手段】撹拌槽に、ペンタンジアミンおよび塩化水素を、それらが同時に連続的に供給される期間を有するように供給して、ペンタンジアミンと塩化水素とを混合して、ペンタンジアミン塩酸塩を含み、供給されたペンタンジアミンに対して1.0mol%以下のペンタンジアミンが残存する塩酸塩組成物を得た後、ペンタンジアミン塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタンジイソシアネートを得る。【選択図】図1

Description

本発明は、ペンタンジイソシアネートの製造方法に関する。
従来より、ポリアミンと塩化カルボニル(ホスゲン)とを反応させて、ポリウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネートを製造することが知られている。
例えば、ポリアミンとしてのペンタンジアミンと、塩化カルボニル(ホスゲン)とを反応させることにより、ペンタンジイソシアネートが製造される。
このようなペンタンジイソシアネートの製造方法として、例えば、ペンタメチレンジアミンが反応溶媒に溶解されたジアミン溶液を反応容器に装入し、次いで、反応容器に塩化水素を供給して撹拌し、ペンタメチレンジアミン塩酸塩を生成した後、ペンタメチレンジアミン塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートを生成するペンタメチレンジイソシアネートの製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2017−31114号公報
しかるに、ペンタンジイソシアネートの製造方法において、ペンタンジイソシアネートの収率の向上が望まれている。
しかし、特許文献1に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造では、ペンタメチレンジイソシアネートが生成するとともに、クロロペンチルイソシアネートなどの塩素誘導体が副生する場合があり、ペンタメチレンジイソシアネートの収率の向上を図るには限度がある。
また、ペンタメチレンジイソシアネートおよび塩素誘導体を含む組成物がポリウレタン樹脂の製造に用いられると、ポリウレタン樹脂の物性が低下するおそれがある。
本発明は、塩素誘導体の生成を抑制できるとともに、ペンタンジイソシアネートの収率の向上を図ることができるペンタンジイソシアネートの製造方法を提供する。
本発明[1]は、撹拌槽に、ペンタンジアミンおよび塩化水素を、それらが同時に連続的に供給される期間を有するように供給して、ペンタンジアミンと塩化水素とを混合して、ペンタンジアミン塩酸塩を含む塩酸塩組成物を得る造塩工程と、前記ペンタンジアミン塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタンジイソシアネートを得るイソシアネート化工程と、を含み、前記造塩工程に供されたペンタンジアミンに対して、前記塩酸塩組成物中に残存するペンタンジアミンの割合は、1.0mol%以下である、ペンタンジイソシアネートの製造方法を含んでいる。
本発明のペンタンジイソシアネートの製造方法では、撹拌槽にペンタンジアミンおよび塩化水素が同時に連続的に供給される期間を有するように供給されて、ペンタンジアミン塩酸塩を含む塩酸塩組成物が生成されるので、塩酸塩組成物中に残存するペンタンジアミンの割合を、造塩工程に供されたペンタンジアミンに対して、上記上限以下にすることができる。
そして、塩酸塩組成物中に残存するペンタンジアミンの割合が上記上限以下であるので、塩素誘導体の生成を抑制できながら、ペンタンジイソシアネートの収率の向上を図ることができる。
図1は、各実施例および比較例における、イソシアネート工程の反応時間と、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの収率(PDI収率)との相関を示すグラフである。 図2は、各実施例および比較例における、イソシアネート工程の反応時間と、塩素誘導体の生成率(Cl体生成率)との相関を示すグラフである。
本発明のペンタンジイソシアネートの製造方法は、撹拌槽に、ペンタンジアミンおよび塩化水素を少なくとも同時に連続的に供給して、ペンタンジアミンと塩化水素とを混合して、ペンタンジアミン塩酸塩を得る造塩工程と、ペンタンジアミン塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタンジイソシアネートを得るイソシアネート化工程とを含んでいる。
1.造塩工程
このペンタンジイソシアネートの製造方法では、まず、ペンタンジアミン(以下、PDAとする。)および塩化水素を、それらが同時に連続的に供給される期間を有するように、撹拌槽に供給して、PDAと塩化水素とを混合して、ペンタンジアミン塩酸塩(以下、PDA塩酸塩とする。)を製造する。
PDAとして、例えば、1,5−PDA(1,5−ペンタメチレンジアミン)、1,4−PDA(1,4−ペンタンジアミン)などが挙げられ、好ましくは、1,5−PDAが挙げられる。PDAは、単独使用または2種類以上併用することができる。
PDAは、例えば、市販品として入手することもできるが、例えば、リシンおよび/またはその塩の脱炭酸酵素反応など、生化学的手法によって得ることもできる。
そして、PDAと塩化水素とは、例えば、撹拌槽を有する公知の撹拌装置により、不活性溶媒存在下において混合される。なお、図示しないが、撹拌装置は、撹拌槽と、撹拌槽内に配置される回転羽根とを備える。
より詳しくは、まず、撹拌装置の撹拌槽に不活性溶媒を予め仕込む。
不活性溶媒は、造塩工程およびイソシアネート化工程における各種成分(PDA、塩化水素、PDA塩酸塩、塩化カルボニル、およびペンタンジイソシアネートなど)に対して、不活性な(反応しない)有機溶媒であれば、特に制限されない。具体的には、不活性溶媒として、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、オクタン、デカンなど)、脂環族炭化水素類(例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼンなど)、含窒素化合物類(例えば、ニトロベンゼン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなど)、エーテル類(例えば、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アニソール、フェネトール、メトキシトルエン、ベンジルエーテル、ジフェニエーテルなど)、ケトン類(例えば、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなど)、エステル類(例えば、ギ酸アミル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−2−エチルブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸エトキシエチル、酢酸メトキシエチル、酢酸メトキシプロピル、酢酸エチル、酢酸第2ヘキシル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、酢酸メチルカルビトール、エチレングリコールジアテート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸−n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸イソアミル、ステアリン酸ブチル、乳酸ブチル、乳酸アミル、フタル酸ジメチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなど)などが挙げられる。このような不活性溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
不活性溶媒のなかでは、好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、ジクロロベンゼンが挙げられる。
予め仕込まれる不活性溶媒の質量割合は、造塩工程に供されるPDAおよび不活性溶媒の質量の総和(予め仕込まれる不活性溶媒と後述するアミン溶液との総和)に対して、例えば、20質量%以上、好ましくは、50質量%以上、例えば、80質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
次いで、回転羽根により不活性溶媒を撹拌しながら、撹拌槽内の温度を下記の造塩温度(造塩工程における温度)に昇温する。
造塩温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、80℃以上、さらに好ましくは、90℃以上、とりわけ好ましくは、110℃以上、特に好ましくは、135℃以上、例えば、不活性溶媒の沸点以下、好ましくは、160℃以下、さらに好ましくは、150℃以下、とりわけ好ましくは、140℃以下である。
造塩温度が上記下限以上であれば、造塩工程において、PDAからPDA塩酸塩に円滑に変換することができ、塩酸塩スラリー(後述)中にPDAが過度に残存することを抑制できる。造塩温度が上記上限以下であれば、不活性溶媒が揮発することを抑制でき、撹拌装置内の圧力が過度に上昇することを抑制できる。
そして、造塩温度を上記の範囲内において調整することにより、PDAからPDA塩酸塩への転化率を適宜調整でき、塩酸塩スラリー(後述)中に残存するPDAの含有割合を調整することができる。
このとき、撹拌槽内の圧力は、例えば、常圧(0.1MPa)以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下である。
次いで、回転羽根による撹拌を維持しながら、上記の造塩温度および上記の圧力において、塩化水素ガスの撹拌槽に対する連続的な供給を開始する。
塩化水素ガスの供給速度は、撹拌槽の内容積が1Lである場合、例えば、5.0g/hr以上、好ましくは、20g/hr以上、例えば、200g/hr以下、好ましくは、100g/hr以下、さらに好ましくは、50g/hr以下である。
なお、塩化水素ガスの供給速度の上限値および下限値のそれぞれは、撹拌槽の内容積に比例して変更される。つまり、撹拌槽の内容積がnLである場合、塩化水素ガスの供給速度は、上記上限値および上記下限値のそれぞれにnを乗した値となる。
別途、回転羽根による撹拌を維持しながら、上記の造塩温度および上記の圧力において、上記の不活性溶媒にPDAが溶解されたアミン溶液の撹拌槽に対する連続的な供給を開始する。
アミン溶液におけるPDAの含有割合は、特に制限されないが、例えば、3.0質量%以上、好ましくは、5.0質量%以上、例えば、25質量%以下、好ましくは、20質量%以下である。
つまり、本実施形態において、PDAの供給開始は、塩化水素ガスの供給開始から供給停止までの間である。
また、PDAの供給速度(PDA換算)は、撹拌槽の内容積が1Lである場合、例えば、5g/hr以上、好ましくは、10g/hr以上、例えば、150g/hr以下、好ましくは、100g/hr以下、さらに好ましくは、50g/hr以下である。
なお、PDAの供給速度の上限値および下限値のそれぞれは、撹拌槽の内容積に比例して変更される。例えば、撹拌槽の内容積がnLである場合、PDAの供給速度は、上記上限値および上記下限値のそれぞれにnを乗した値となる。
これによって、撹拌槽にPDAおよび塩化水素が同時に連続的に供給される。そして、撹拌槽内において、アミン溶液の供給および塩化水素ガスの供給を、下記の造塩時間維持して撹拌混合する。
造塩時間は、例えば、0.5hr以上、好ましくは、1.0hr以上、例えば、10hr以下、好ましくは、5hr以下、さらに好ましくは、3.0hr以下である。
造塩時間が上記下限以上であれば、造塩工程において、PDAをPDA塩酸塩に安定して変換することができ、塩酸塩スラリー(後述)中にPDAが過度に残存することを安定して抑制できる。造塩時間が上記上限以下であれば、ペンタンジイソシアネートの製造に要する時間を低減でき、ペンタンジイソシアネートの製造効率の向上を図ることができる。
その後、アミン溶液の供給を停止し、必要により、例えば、10分間〜2時間、塩化水素ガスの供給を維持して熟成させる。次いで、塩化水素ガスの供給を停止した後、未反応塩化水素を、反応系外(撹拌槽外)に放出する。
このようなPDAおよび塩化水素の連続的供給において、本実施形態では、塩化水素ガスの供給開始から供給停止までの総供給量を100%としたときに、塩化水素ガスの供給とPDAの供給とが重複する期間に供給される塩化水素ガスの供給量の割合が、例えば、40%以上、好ましくは、57%以上、例えば、93%以下、好ましくは、80%以下となるように、PDA(アミン溶液)が供給開始および停止される。
また、PDAおよび不活性溶媒の質量の総和(予め仕込んだ不活性溶媒と供給されたアミン溶液との総和)に対する、造塩工程において供給したPDAの質量割合(全アミン濃度)は、例えば、5質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、35質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以下である。
なお、塩化水素の供給割合は、供給されるPDAのアミノ基1つに対して、例えば、1倍mol以上、好ましくは、1.1倍mol以上、例えば、10倍mol以下、好ましくは、6倍mol以下、さらに好ましくは、2.5倍mol以下、とりわけ好ましくは、2.0倍mol以下である。
以上により、PDAおよび塩化水素が少なくとも同時に連続的に供給されて撹拌混合され、PDA塩酸塩が生成し(塩酸塩化反応)、撹拌槽の内容物が、塩酸塩組成物の一例としてのスラリー状液(以下、塩酸塩スラリーとする。)として調製される。
このような造塩工程では、PDAおよび塩化水素が少なくとも同時に連続的に供給されるので、撹拌槽に予め装入されたPDAに塩化水素が供給される場合と比較して、PDA塩酸塩を円滑に生成することができる。そのため、塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合を、下記の範囲に調整することができる。
塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合は、造塩工程に供されたPDAに対して、1.0mol%以下、好ましくは、0.8mol%以下、例えば、0mol%以上、反応効率の観点から好ましくは、0.1mol%以上、さらに好ましくは、0.3mol%以上である。造塩工程に供されたPDAに対する塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合が上記範囲内であれば、イソシアネート化工程におけるPDIの収率の向上を図ることができるとともに、塩素誘導体(後述)の副生を抑制できる。とりわけ、塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合が0.1mol%以上であると、上記した造塩時間の低減などを図ることができ、工業的製造上の負荷を低減することができる。
このような造塩工程におけるPDAの転化率(造塩転化率)は、例えば、99.0mol%以上、好ましくは、99.2mol%以上、例えば、100mol%以下、好ましくは、99.9mol%以下、さらに好ましくは、99.7mol%以下である。造塩転化率は、後述する実施例に記載の方法に準拠して測定できる。
PDAの転化率が上記範囲内であれば、イソシアネート化工程におけるPDIの収率の向上を図ることができるとともに、塩素誘導体(後述)の副生を抑制できる。とりわけ、PDAの転化率が99.9mol%以下であると、上記した造塩時間の低減などを図ることができ、工業的製造上の負荷を低減することができる。
そのため、塩酸塩スラリーは、PDA塩酸塩と、上記した不活性溶媒とを含み、さらに、造塩工程においてPDA塩酸塩に変換されずに残存するPDAを含むことができる。
塩酸塩スラリーにおけるPDA塩酸塩の含有割合は、PDA塩酸塩およびPDAの総和に対して、例えば、99.4質量%以上、好ましくは、99.5質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.9質量%以下である。
塩酸塩スラリーにおけるPDAの含有割合は、PDA塩酸塩およびPDAの総和に対して、例えば、0質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、例えば、0.6質量%以下、好ましくは、0.5質量%以下である。
2.イソシアネート化工程
次いで、PDA塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタンジイソシアネート(以下、PDIとする。)を得る。
PDA塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させるには、例えば、上記の造塩工程が実施された撹拌槽に塩化カルボニルを供給する。これによって、塩酸塩スラリーに塩化カルボニルが供給される。塩化カルボニルは、塩酸塩スラリーに断続的に供給してもよく、塩酸塩スラリーに連続的に供給してもよいが、好ましくは、塩酸塩スラリーに連続的に供給される。
また、反応圧力は、例えば、常圧(0.1MPa)以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下である。反応温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、180℃以下、好ましくは、160℃以下である。反応時間は、例えば、30分以上20時間以下である。
なお、イソシアネート化反応の進行は、発生する塩化水素ガスの量と、上記の塩酸塩スラリーの懸濁が消失し、反応液(反応混合物)が澄明均一になることより確認できる。
以上によって、反応混合物(反応液)が製造される。
このようなイソシアネート化工程では、上記した不活性溶媒存在下において、塩化カルボニルとPDA塩酸塩とが反応して、PDIが主成分として生成する。また、イソシアネート化工程では、塩素誘導体が副生する場合がある。
そのため、反応混合物(反応液)は、PDIと、上記した不活性溶媒とを含み、さらに、塩素誘導体を含む場合がある。
PDIは、原料成分として用いられる上記のPDAに対応し、より具体的には、1,5−PDI、1,4−PDIなどが挙げられる。例えば、1,5−PDAが原料として用いられる場合には、1,5−PDIが得られる。
塩素誘導体は、イソシアネート化工程において副生する有機塩素化合物であって、例えば、環状カルバモイルクロライド、ジクロロイミン、5−クロロペンチルイソシアネートなどが挙げられる。
反応混合物におけるPDIの反応収率は、例えば、90mol%以上、好ましくは、95mol%以上、例えば、100mol%以下、好ましくは、99mol%以下である。なお、PDIの反応収率は、実施例に記載の方法により測定される。
また、反応混合物における塩素誘導体の生成率は、例えば、0.01mol%以上、好ましくは、0.10mol%以上、例えば、1.0mol%以下、好ましくは、0.30mol%以下である。なお、塩素誘導体の生成率は、実施例に記載の方法により測定される。
次いで、好ましくは、反応混合物(反応液)から、イソシアネート化工程において余剰な塩化カルボニルや、副生する塩化水素などのガスを公知の方法により除去する(脱ガス工程)。
次いで、好ましくは、脱ガス工程後、例えば、公知の蒸留塔により、反応混合物から不活性溶媒を留去する(脱溶媒工程)。
これによって、反応混合物から不活性溶媒が除去される。なお、反応混合物から除去された不活性溶媒は、必要により回収されて、造塩工程に再利用される。
3.脱タール工程、熱処理工程、蒸留工程
また、上記の反応混合物は、PDIおよび塩素誘導体に加えて、タール成分を含有する場合がある。
そこで、本実施形態は、好ましくは、脱タール工程と、熱処理工程と、蒸留工程とをさらに含んでいる。なお、脱タール工程と熱処理工程との順序は、イソシアネート化工程の後であれば、特に制限されない。脱タール工程後に熱処理工程が実施されてもよく、熱処理工程後に脱タール工程が実施されてもよい。また、蒸留工程は、脱タール工程および熱処理工程の両工程の後に実施される。
脱タール工程では、反応混合物からタール成分を除去する。タール成分は、イソシアネート化工程において副生するポリイソシアネート残渣である。脱タール工程では、例えば、公知の薄膜蒸発器によって、反応混合物からタール成分を除去する。
脱タール工程における温度は、例えば、100℃以上、好ましくは、110℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下である。脱タール工程における圧力は、例えば、2.6kPa以下、好ましくは、1.3kPa以下である。
これによって、反応混合物からタール成分が分離される。
熱処理工程では、反応混合物を加熱処理して、塩素誘導体を分解除去する。
熱処理温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、150℃以上、さらに好ましくは、160℃以上、例えば、260℃以下、好ましくは、220℃以下、さらに好ましくは、200℃以下である。熱処理時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、1時間以上、さらに好ましくは、3時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、8時間以下、さらに好ましくは、6時間以下である。熱処理工程における圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、10kPa以上、例えば、1000kPa以下、好ましくは、500kPa以下、さらに好ましくは、常圧(0.1MPa)である。
これにより、塩素誘導体が加熱により分解される。そして、塩素誘導体に由来する塩素分を、ガス成分として反応混合物から除去する。
蒸留工程では、反応混合物を蒸留して、反応混合物からPDIを分離する。
蒸留温度は、例えば、90℃以上、好ましくは、100℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下である。蒸留圧力は、例えば、1.0kPa以上、好ましくは、2.0kPa以上、例えば、4.0kPa以下、好ましくは、3.0kPa以下である。
また、蒸留時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間未満、さらに好ましくは、8時間以下である。
以上により、反応混合物から、純度の高いPDI(精PDI)が分離される。
精PDIの純度は、例えば、95質量%以上、好ましくは、97質量%以上、さらに好ましくは、98質量%以上、とりわけ好ましくは、99質量%以上、特に好ましくは、99.5質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.999質量%以下である。
4.作用効果
しかるに、本発明者は、PDA塩酸塩を生成する造塩工程において、PDAが溶解されたアミン溶液を撹拌槽に予め仕込み、そのアミン溶液に塩化水素を供給すると、造塩工程におけるPDAの転化率(造塩転化率)の向上を図るには限度があり、造塩工程において生成する塩酸塩スラリー(塩酸塩組成物)中にPDAが過度に残存するという知見を得た。さらに、本発明者は、塩酸塩スラリー中にPDAが所定の割合を超過して残存すると、PDIを生成するイソシアネート化工程において、塩素誘導体が顕著に副生するという知見を得た。
これに対して、本発明者は、撹拌槽にペンタンジアミンおよび塩化水素をそれらが同時に連続的に供給される期間を有するように供給して塩酸塩スラリー(塩酸塩組成物)を生成すると、塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合を造塩工程に供されたペンタンジアミンに対して1.0mol%以下とすることができ、かつ、塩酸塩スラリー中に残存するPDAの割合が上記上限以下であれば、イソシアネート化工程において塩素誘導体の生成を顕著に抑制できることを見出した。
そのため、上記したペンタンジイソシアネートの製造方法では、塩素誘導体の生成を抑制できながら、ペンタンジイソシアネートの収率の向上を図ることができる。
5.変形例
上記の実施形態では、造塩工程において、塩化水素ガスおよびPDA(アミン溶液)を順に供給開始した後、PDAおよび塩化水素ガスを順に供給停止するが、塩化水素ガスおよびPDAが少なくとも同時に供給される期間を有すれば、これに限定されない。
例えば、造塩工程において、先に塩化水素ガスの供給を開始し、次いでPDAの供給を開始した後、先に塩化水素ガスの供給を停止し、次いでPDAの供給を停止してもよい。
この場合、塩化水素ガスの供給開始から供給停止までの総供給量に対する、塩化水素ガスの供給とPDAの供給とが重複する期間に供給される塩化水素ガスの供給量の割合が、上記の範囲となるように、PDAが供給開始され、かつ、塩化水素ガスが供給停止される。
また、造塩工程において、先にPDAの供給を開始し、次いで塩化水素ガスの供給を開始した後、先に塩化水素ガスの供給を停止し、次いでPDAの供給を停止してもよい。
この場合、PDAの供給開始から供給停止までの総供給量を100%としたときに、塩化水素ガスの供給とPDAの供給とが重複する期間に供給されるPDAの供給量の割合が、例えば、99.0%以上、好ましくは、99.2%以上、例えば、99.9%以下、好ましくは、99.7%以下となるように、塩化水素ガスが供給開始および停止される。
また、造塩工程において、先にPDAの供給を開始し、次いで塩化水素ガスの供給を開始した後、先にPDAの供給を停止し、次いで塩化水素ガスの供給を停止してもよい。
この場合、PDAの供給開始から供給停止までの総供給量に対する、塩化水素ガスの供給とPDAの供給とが重複する期間に供給されるPDAの供給量の割合が、上記の範囲となるように、塩化水素ガスが供給開始され、かつ、PDAが供給停止される。
また、造塩工程において、塩化水素ガスおよびPDAの供給を同時に開始し、その後、塩化水素ガスおよびPDAのいずれか一方の供給を停止し、次いで、塩化水素ガスおよびPDAのいずれか他方の供給を停止してもよい。
この場合、塩化水素ガスおよびPDAのいずれか他方の供給開始から供給停止までの総供給量を100%としたときに、塩化水素ガスの供給とPDAの供給とが重複する期間に供給される塩化水素ガスおよびPDAのいずれか他方の供給量の割合が、例えば、上記の範囲となるように、塩化水素ガスおよびPDAのいずれか一方が供給停止される。
なお、造塩工程において、塩化水素ガスおよびPDAの供給を同時に開始し、その後、塩化水素ガスおよびPDAの供給を同時に停止してもよい。つまり、塩化水素ガスおよびPDAの供給期間は、互いに100%重複してもよい。
上記の実施形態では、造塩工程とイソシアネート化工程とが、同一の撹拌槽において実施されているが、これに限定されない。例えば、撹拌槽において造塩工程を実施し、撹拌槽とは別の反応容器においてイソシアネート化工程を実施することもできる。これによっても、ペンタンジイソシアネート(反応混合物)を製造することができる。
これら変形例によっても、上記した実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
また、以下において記載される各種物性の測定法を下記する。
<塩酸塩スラリー中に残存する1,5−ペンタメチレンジアミンの割合>
まず、純度99.8質量%の1,5−ペンタメチレンジアミン(市販品)を用い、下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、得られたガスクロマトグラムの面積値から検量線を作成した(絶対検量線法)。次いで、後述する各実施例および比較例の塩酸塩スラリーを、0.1μmのフィルターで濾過し、得られた濾液を下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、濾液における1,5−ペンタメチレンジアミンの濃度を求めた。
装置;GC−2010(島津製作所社製)
カラム;CP−SIL8、内径0.25mm×長さ30m×膜厚0.25μm(アジレントテクノロジー社製)
オーブン温度;120℃で3分間保持、120℃から300℃まで20℃/minで昇温、300℃で5分間保持
スプリット比;50.0
注入口温度;340℃
検出器温度;340℃
キャリアガス;窒素
キャリアガス流量;40.7ml/min(定流量制御)
注入量;1.0μL
検出方法;FID
そして、下記式から、塩酸塩スラリー中に残存する1,5−ペンタメチレンジアミンの割合を算出した。
C2×(100−C1)/{C1×(100−C2)}×100
C1:全アミン濃度
C2:濾液の1,5−ペンタメチレンジアミン濃度。
<造塩工程における1,5−ペンタメチレンジアミンの転化率(造塩転化率)>
下記式から、造塩工程における1,5−ペンタメチレンジアミンの転化率(造塩転化率)を算出した。
100−塩酸塩スラリー中に残存する1,5−ペンタメチレンジアミンの割合。
<1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの反応収率(PDI収率)>
まず、純度99.8質量%の1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(市販品)を用い、下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、得られたガスクロマトグラムの面積値から作成した検量線を作成した(絶対検量線法)。次いで、後述する各実施例および比較例の反応混合液を、下記の条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、反応混合液におけるペンタメチレンジイソシアネートの濃度を求めた。
装置;GC−2010(島津製作所社製)
カラム;DB−1、内径0.53mm×長さ30m×膜厚1.5μm(アジレントテクノロジー社製)
オーブン温度;120℃から280℃まで7℃/minで昇温、280℃で5分間保持
スプリット比;10.0
注入口温度;250℃
検出器温度;280℃
キャリアガス;窒素
キャリアガス流量;39.9mL/min(定流量制御)
サンプル濃度:10質量%トルエン溶液
注入量;1.0μL
検出方法;FID
そして、下記式から、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの反応収率を算出した。
C1/{(W1×M1/M2)/(W2+W1×M1/M2)}
C1:反応混合液における1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの濃度
M1:1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの分子量
M2:1,5−ペンタメチレンジアミンの分子量
W1:供給した1,5−ペンタメチレンジアミンの質量部
W2:供給したジクロロベンゼン(予め仕込んだジクロロベンゼンとアミン溶液に用いたジクロロベンゼンとの総和)の質量部。
<塩素誘導体(5−クロロペンチルイソシアネート)の生成率(Cl体生成率)>
ペンタメチレンジイソシアネートの濃度測定と同条件でガスクロマトグラフィーにて分析して、後述する各実施例および比較例の反応混合液における塩素誘導体の濃度を求めた。そして、下記式から、塩素誘導体の生成率を算出した。
C1/{(W1×M1/M2)/(W2+W1×M1/M2)}
C1:反応混合液における塩素誘導体の濃度
M1:塩素誘導体の分子量
M2:1,5−ペンタメチレンジアミンの分子量
W1:供給した1,5−ペンタメチレンジアミンの質量部
W2:供給したジクロロベンゼン(予め仕込んだジクロロベンゼンとアミン溶液に用いたジクロロベンゼンとの総和)の質量部。
実施例1〜3および比較例1
(1)造塩工程
撹拌槽と、撹拌槽内に配置される回転羽根とを備える撹拌装置を準備した。撹拌槽には、還流冷却管、温度計、アミン供給ライン、塩化水素導入ラインおよび塩化カルボニル導入ラインが設けられる。撹拌槽に、反応溶媒としてo−ジクロロベンゼン370.4質量部を仕込んだ。次いで、o−ジクロロベンゼンを周速1.57m/sで撹拌するとともに、大気圧(0.1MPa)下において撹拌槽内の温度を下記表1に示す造塩温度に昇温した。そして、塩化水素ガスを、塩化水素導入ラインから撹拌槽に、24.2質量部/hrの供給速度で連続的に供給した。
次いで、1,5−ペンタメチレンジアミン(PDA)45.2質量部をo−ジクロロベンゼン220.5質量部に溶解したアミン溶液(アミン濃度:17質量%)を、アミン供給ラインから撹拌槽に、177.1質量部/hrの供給速度で、下記表1に示す造塩時間、連続的に供給した。
なお、ジクロロベンゼンと1,5−ペンタメチレンジアミンとの総和(予め仕込んだジクロロベンゼンとアミン溶液との総和)に対する、ペンタメチレンジアミンの質量割合(全アミン濃度)は、7.1質量%であった。
これにより、1,5−ペンタメチレンジアミンと塩化水素とが同時に連続的に供給され撹拌混合されて、1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩が製造された。撹拌槽内の混合溶液は、淡褐白色スラリー状液(以下、塩酸塩スラリーとする。)となった。
そして、アミン溶液のフィード終了後、30分間、塩化水素ガスの供給を維持して熟成させた後、塩化水素ガスの供給を停止した。その後、撹拌槽内を脱ガスした。
以上によって、1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩を含む塩酸塩スラリーを製造した。
そして、塩酸塩スラリーにおいて、1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩に変換されず、1,5−ペンタメチレンジアミンとして残存する1,5−ペンタメチレンジアミンの割合(供給されたペンタメチレンジアミンに対する残存PDAの含有割合、残存PDA/供給PDA×100)、および、造塩工程におけるペンタメチレンジアミンの転化率(造塩転化率)を、上記の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(2)イソシアネート化工程
次いで、撹拌槽の内液を150℃とした後、塩化カルボニルを、大気圧(0.1MPa)下において、塩化カルボニル導入ラインから撹拌槽に、連続的に30.6質量部/hrで、下記表1に示す反応時間、連続的に供給した。
なお、反応開始から下記表1に示す各時間の経過時に、撹拌槽内液(反応混合液)の一部をサンプリングして、上記の方法により、ペンタメチレンジイソシアネートの反応収率(PDI収率)および塩素誘導体の生成率(Cl体生成率)を測定した。その結果を表1、図1および図2に示す。
その後、撹拌槽内液は、淡褐色澄明溶液となった。
これにより、1,5−ペンタメチレンジアミン塩酸塩がイソシアネート化して、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートを含む反応混合液が製造された。
イソシアネート化終了後、160℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、余剰の塩化カルボニル、副生する塩化水素を除去した(脱ガス工程)。その後、脱ガス工程後の反応液を、100℃において、減圧下でo−ジクロロベンゼンを留去した(脱溶媒工程)。
以上によって、反応混合物を得た。反応混合物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)と、タール成分とを含有していた。
次いで、公知の薄膜蒸発器によって、反応混合物からタール成分を分離し除去した(脱タール工程)。薄膜蒸発器内の温度は、125℃であり、薄膜蒸発器内の圧力は、0.13kPaであった。
次いで、脱タール後の反応混合物を、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えたフラスコ(熱処理容器)に装入し、窒素をフラスコ内に30分間導入した後、引き続き、窒素を、10mL/min(窒素の反応混合物の単位体積当たりの供給速度:0.05/min)で導入するとともに、250rpmで撹拌しながら、常圧下、200℃で4時間加熱した。その後、40℃以下に冷却して、熱処理後の反応混合物を得た。
次いで、熱処理後の反応混合物を、撹拌機、フラスコおよび冷却管を備える蒸留装置により、120〜150℃、1.7〜2.4kPaの条件で蒸留(精留)した(蒸留工程)。
そして、初留分12質量%を留出させた後、主留分(本留分)76質量%を、精ペンタメチレンジイソシアネートとして採取した。なお、釜残分(蒸留残渣)は、12質量%であった。
Figure 2019199444

Claims (1)

  1. 撹拌槽に、ペンタンジアミンおよび塩化水素を、それらが同時に連続的に供給される期間を有するように供給して、ペンタンジアミンと塩化水素とを混合して、ペンタンジアミン塩酸塩を含む塩酸塩組成物を得る造塩工程と、
    前記ペンタンジアミン塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させて、ペンタジイソシアネートを得るイソシアネート化工程と、を含み、
    前記造塩工程に供されたペンタンジアミンに対して、前記塩酸塩組成物中に残存するペンタンジアミンの割合は、1.0mol%以下であることを特徴とする、ペンタンジイソシアネートの製造方法。
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