JP6523856B2 - ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法およびペンタメチレンジイソシアネートの製造装置 - Google Patents

ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法およびペンタメチレンジイソシアネートの製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法およびペンタメチレンジイソシアネートの製造装置に関し、詳しくは、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、および、そのペンタメチレンジイソシアネートの製造方法が実施されるペンタメチレンジイソシアネートの製造装置に関する。
従来より、ポリアミンと塩化カルボニル(ホスゲン)とを反応させて、ポリウレタン樹脂の原料であるポリイソシアネートを製造することが知られている。
例えば、ポリアミンとしてのペンタメチレンジアミンと、塩化カルボニルとを反応させることにより、ポリイソシアネートとしてのペンタメチレンジイソシアネートを製造することができる。
一方、このようなペンタメチレンジイソシアネートには、不純物としての加水分解性塩素が含まれている。
加水分解性塩素は、ポリウレタン樹脂の着色原因となるため、ペンタメチレンジイソシアネートにおいて加水分解性塩素を低減することが望まれている。
そのような加水分解性塩素の低減方法として、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートを、150〜220℃において加熱処理した後、蒸留することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2010−254764号公報
しかるに、特許文献1に記載の加熱処理では、比較的分解速度が速い加水分解性塩素を分解できる一方、比較的分解速度が遅い加水分解性塩素(例えば、環状カルバモイルクロライド、ジクロロイミンなど)を分解するには、処理時間を長くする必要がある。しかし、処理時間を長くすると、ペンタメチレンジイソシアネートが重合ロスを生じる場合があるため、処理時間を長くすることができず、その結果、比較的分解速度が遅い加水分解性塩素(例えば、環状カルバモイルクロライド、ジクロロイミンなど)を分解できない場合がある。そのため、ペンタメチレンジイソシアネートにおいては、加水分解性塩素濃度のさらなる低減が要求されている。
本発明の目的は、加水分解性塩素を効率よく除去できるペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、および、そのペンタメチレンジイソシアネートの製造方法が実施されるペンタメチレンジイソシアネートの製造装置を提供することにある。
本発明は、
[1]塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応工程と、前記反応生成物を加熱処理する熱処理工程と、前記加熱処理後の前記反応生成物を蒸留し、前記ペンタメチレンジイソシアネートを精製する精製工程とを含み、前記熱処理工程では、前記精製工程において前記反応生成物を前記蒸留して得られるタール成分を、前記加熱処理前の前記反応生成物に導入し、加熱することを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、
[2]前記熱処理工程において、前記タール成分の添加割合は、前記反応生成物100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下であることを特徴とする、上記[1]に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、
[3]前記熱処理工程における熱処理温度は、180℃以上245℃以下であることを特徴とする、上記[1]または[2]に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法、
[4]上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法を実施するためのペンタメチレンジイソシアネートの製造装置であって、塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応ユニットと、前記反応生成物を加熱処理する熱処理ユニットと、前記加熱処理後の前記反応生成物を蒸留し、前記ペンタメチレンジイソシアネートを精製する精製ユニットとを備え、前記熱処理ユニットは、前記精製ユニットにおいて前記反応生成物を前記蒸留して得られるタール成分を、前記加熱処理前の前記反応生成物に導入するためのタール成分導入ラインを備えていることを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造装置
である。
本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法およびペンタメチレンジイソシアネートの製造装置では、精製工程において得られるタール成分を、熱処理工程において、加熱処理前の反応生成物に導入して加熱するため、反応生成物から加水分解性塩素を効率よく除去することができる。
図1は、本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
本発明のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応工程と、反応生成物を加熱処理する熱処理工程と、加熱処理後の反応生成物を蒸留する精製工程とを含んでいる。
1.反応工程
このペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、まず、塩化カルボニルと、ペンタメチレンジアミンとを反応させて、反応生成物を調製する。
ペンタメチレンジアミンとしては、例えば、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,4−ペンタメチレンジアミンなどが挙げられる。
これらペンタメチレンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
ペンタメチレンジアミンとして、好ましくは、1,5−ペンタメチレンジアミンが挙げられる。
なお、ペンタメチレンジアミンは、例えば、市販品として入手することもできるが、例えば、リシンおよび/またはその塩の脱炭酸酵素反応など、生化学的手法によって得ることもできる。
そして、反応工程では、例えば、塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを、反応溶媒存在下で反応させる。
反応溶媒は、塩化カルボニル、ペンタメチレンジアミンおよびペンタメチレンジイソシアネート(後述)に対して、不活性な有機溶媒であって、例えば、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化芳香族炭化水素類(例えば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)、エステル類(例えば、酢酸ブチル、酢酸アミルなど)、ケトン類(例えば、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。
このような反応溶媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、このような反応溶媒の中では、好ましくは、ハロゲン化芳香族炭化水素類が挙げられ、さらに好ましくは、ジクロロベンゼンが挙げられる。
塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させる方法としては、例えば、ペンタメチレンジアミンを直接、塩化カルボニルと反応させる方法(以下、直接法とする。)や、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩を、上記反応溶媒中に懸濁させて、塩化カルボニルと反応させる方法(以下、塩酸塩法とする。)などが挙げられる。
このような方法のなかでは、好ましくは、塩酸塩法が挙げられる。
塩酸塩法により、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩と塩化カルボニルとを反応させるには、まず、撹拌可能であり、塩化水素導入管を備える反応容器に、反応溶媒にペンタメチレンジアミンが溶解されたジアミン溶液を装入した後、反応容器に塩化水素を供給して撹拌する。これにより、ペンタメチレンジアミンと塩化水素とが反応して、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩が生成し、反応容器の内容物がスラリー状液となる(塩酸塩化反応)。
ジアミン溶液におけるペンタメチレンジアミンの含有割合は、特に制限されないが、例えば、3.0質量%以上、好ましくは、4.5質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、17質量%以下である。
塩化水素の供給割合は、ペンタメチレンジアミンのアミノ基1つに対して、例えば、1倍mol以上、例えば、10倍mol以下、好ましくは、6倍mol以下である。
このとき、反応容器内の圧力は、例えば、常圧以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下であり、反応容器内の温度は、例えば、0℃以上、例えば、180℃未満、好ましくは、160℃以下である。
次いで、反応容器内を、上記の温度および圧力に維持するとともに、未反応塩化水素を、反応系外(反応容器外)に放出する。
次いで、反応容器内の圧力を、例えば、常圧以上、例えば、1.0MPa以下、好ましくは、0.5MPa以下とし、反応容器内の温度を、例えば、80℃以上180℃以下に昇温する。そして、昇温後、塩化カルボニルを供給して、例えば、30分以上20時間以下、塩化カルボニルの供給を継続して、反応させる(イソシアネート化反応)。
なお、イソシアネート化反応の進行は、発生する塩化水素ガスの量と、上記の反応溶媒中のスラリーが消失し、反応液(反応生成物)が澄明均一になることより推測できる。
これによって、塩化カルボニルとペンタメチレンジアミン塩酸塩とが反応して、ペンタメチレンジイソシアネートが、主成分として生成する。
得られるペンタメチレンジイソシアネートは、通常、原料成分として用いられる上記のペンタメチレンジアミンに対応し、より具体的には、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,4−ペンタメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。例えば、1,5−ペンタメチレンジアミンが用いられる場合には、通常、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートが得られる。
以上によって、反応生成物(反応液)が調製される。
また、好ましくは、このような反応生成物(反応液)から、反応工程において余剰な塩化カルボニルや、副生する塩化水素などのガスを除去する(脱ガス工程)。
ガスを除去する方法としては、例えば、不活性ガスを供給して通気する方法や、公知のフラッシュタンクにより、上記ガスを反応生成物(反応液)から分離する方法が挙げられる。
不活性ガスを供給して通気する方法により、反応生成物(反応液)からガスを除去するには、例えば、80〜160℃、好ましくは、100〜140℃の反応生成物に、不活性ガスを、例えば、60〜140L/h、好ましくは、80〜120L/hの供給速度で供給する。
不活性ガスとしては、例えば、二酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウムなどが挙げられ、好ましくは、窒素が挙げられる。このような不活性ガスは、単独使用または2種類以上併用することができる。
また、フラッシュタンクによりガスを反応生成物(反応液)から分離するには、例えば、ガスを含む反応生成物(反応液)を、フラッシュタンク内に流入させて急激に減圧し、ガスと、液状成分(例えば、ペンタメチレンジイソシアネートや、反応溶媒など)とを分離する。
また、本実施形態において、反応生成物(液状成分)は、ペンタメチレンジイソシアネートと、反応溶媒と、加水分解性塩素と、タール成分とを含有している。
ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、0.9質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、20質量%以下、好ましくは、15質量%以下である。
反応溶媒の含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、80質量%以上、好ましくは、85質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
加水分解性塩素(Hydrolyzable Chloride)は、反応工程において副生する有機塩素化合物であって、加水分解により塩化水素を生成する化合物である。加水分解性塩素は、比較的沸点の低い軽沸分と、比較的沸点の高い(ペンタメチレンジイソシアネートに沸点が近い)高沸分(例えば、クロロ−ヒドロキシピリジン−カルバモイルクロリドなど)とを含んでいる。
反応生成物中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、1000ppm以上、好ましくは、1200ppm以上、さらに好ましくは、1400ppm以上、例えば、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下である。なお、加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、JIS K−1603−3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定される。
また、加水分解性塩素には、例えば、環状カルバモイルクロライド、ジクロロイミンなどが含有されている。すなわち、反応生成物は、加水分解性塩素として、環状カルバモイルクロライドおよびジクロロイミンを含有している。
反応生成物中の環状カルバモイルクロライドの濃度は、例えば、200ppm以上、好ましくは、300ppm以上、さらに好ましくは、400ppm以上、例えば、1000ppm以下、好ましくは、800ppm以下である。なお、環状カルバモイルクロライドの濃度は、後述する実施例に準拠したガスクロマトグラフィーにて測定される(以下同様)。
また、環状カルバモイルクロライドの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対する環状カルバモイルクロライドの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、3%以上、好ましくは、5%以上であり、例えば、45%以下、好ましくは、40%以下である。
また、反応生成物中のジクロロイミンの濃度は、例えば、200ppm以上、好ましくは、300ppm以上、さらに好ましくは、400ppm以上、例えば、1000ppm以下、好ましくは、800ppm以下である。なお、ジクロロイミンの濃度は、後述する実施例に準拠したガスクロマトグラフィーにて測定される(以下同様)。
また、ジクロロイミンの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対するジクロロイミンの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、3%以上、好ましくは、5%以上であり、例えば、45%以下、好ましくは、40%以下である。
タール成分は、反応工程において副生するポリイソシアネート残渣であって、高分子量化ポリイソシアネートを含んでいる。高分子量化ポリイソシアネートとしては、例えば、ペンタメチレンジイソシアネートの多量体(例えば、ポリイソシアネートのトリマーまたはそれ以上の多量体など)、カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミンなどが挙げられる。
タール成分の含有割合は、反応生成物100質量%に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、5質量%以下、好ましくは、3質量%以下である。
このように反応生成物は、本実施形態において、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素に加え、反応溶媒およびタール成分を含有している。
そのため、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、好ましくは、反応工程の後工程かつ、熱処理工程の前工程として、反応溶媒を除去する溶媒除去工程を含んでいる。
溶媒除去工程において反応溶媒を除去するには、例えば、蒸留により、反応生成物から反応溶媒を留去する。
なお、通常、ポリイソシアネートを製造する場合には、上記の反応生成物にタール成分が含有されていると、後述する熱処理工程において、ポリイソシアネートの重合ロスが生じる場合があり、生産効率が低下する場合がある。そこで、例えば、公知の薄膜蒸発器によって、反応生成物からタール成分を除去し、生産効率の向上を図ることができる。
しかし、ペンタメチレンジイソシアネートを製造する場合には、反応生成物にタール成分が含有されていても、後述する熱処理工程において、ポリイソシアネートの重合ロスが生じ難いため、効率化の観点から、好ましくは、タール成分を除去することなく、熱処理する。
なお、ペンタメチレンジイソシアネートとは別種のポリイソシアネート(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなど)を製造する場合には、反応生成物にタール成分が含有されていると、後述する熱処理工程においてポリイソシアネートの重合ロスが生じ易い。そのため、好ましくは、熱処理の前工程として、反応生成物からタール成分を除去する。
2.熱処理工程
次いで、反応生成物を加熱処理して、加水分解性塩素を除去する。
すなわち、この方法では、反応生成物に含まれる加水分解性塩素のうち、比較的熱分解速度の速い加水分解性塩素は、加熱により分解され、その塩素分がガス成分として除去される。また、比較的熱分解速度の遅い加水分解性塩素は、加熱により高分子量化され、後述する精製工程にて容易に分離可能な高分子量物に変換される。
このとき、反応生成物には、後述する精製工程において得られるタール成分が、添加される。
より具体的には、このペンタメチレンジイソシアネートの製造方法では、後述する精製工程において反応生成物を蒸留して得られるタール成分を、加熱処理前の反応生成物に導入(添加)し、その後、加熱処理する。
タール成分を加熱処理前の反応生成物に添加することにより、加水分解性塩素の高分子量化を促進することができ、その結果、とりわけ効率よく、反応生成物中の加水分解性塩素を高分子量物に変換することができる。
タール成分の添加割合は、タール成分が添加される前の反応生成物100質量部に対して、タール成分が、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、5質量部以上であり、例えば、50質量部以下、好ましくは、40質量部以下、より好ましくは、30質量部以下である。
タール成分の添加割合が上記範囲であれば、とりわけ効率よく、反応生成物から加水分解性塩素を除去することができる。
また、この方法では、タール成分が導入(添加)された反応生成物に、必要により不活性ガスを導入しながら加熱する。
熱処理工程において、反応生成物に不活性ガスを導入しながら加熱するには、例えば、まず、反応生成物を熱処理容器に装入した後、熱処理容器に不活性ガスを導入(供給)し、不活性ガスを反応生成物に吹き込んで、熱処理容器内を不活性ガスでパージする。
熱処理容器としては、熱処理工程の熱処理温度(後述)に対して、耐熱性を有する容器であれば、特に制限されない。
不活性ガスとしては、上記の不活性ガスが挙げられ、好ましくは、窒素が挙げられる。このような不活性ガスは、単独使用または2種類以上併用することができる。不活性ガスの熱処理液(反応生成物)単位体積当たりの供給速度は、例えば、0.001/min以上、好ましくは、0.005/min以上、例えば、0.2/min以下、好ましくは、0.1/min以下である。
次いで、反応生成物に、不活性ガスを連続して導入しながら、必要により撹拌し、加熱処理する。これにより、反応生成物の一部が、熱処理容器内において気散されるとともに、反応生成物が加熱処理される。
熱処理工程における熱処理温度は、例えば、140℃以上、好ましくは、160℃以上、さらに好ましくは、180℃以上、例えば、260℃以下、好ましくは、245℃以下、より好ましくは、240℃以下、さらに好ましくは、220℃以下である。
熱処理工程の熱処理温度が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のペンタメチレンジイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
また、熱処理工程の熱処理時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間未満、さらに好ましくは、8時間以下、とりわけ好ましくは、6時間以下である。
熱処理工程の熱処理時間が、上記下限以上であれば、反応生成物中の加水分解性塩素を確実に低減でき、上記上限以下であれば、反応生成物中のペンタメチレンジイソシアネートが重合すること(ポリイソシアネートの重合ロス)を抑制できる。
また、熱処理工程における圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、10kPa以上、例えば、1000kPa以下、好ましくは、500kPa以下、さらに好ましくは、常圧である。
これにより、反応生成物中の比較的熱分解速度の速い加水分解性塩素は分解され、その塩素分がガス成分として除去される。また、比較的熱分解速度の遅い加水分解性塩素は、加熱により高分子量化され、後述する精製工程にて容易に分離可能な高分子量物に変換される。
熱処理工程後において、反応生成物中のHC濃度は、例えば、100ppm以上、好ましくは、200ppm以上、例えば、1000ppm以下、好ましくは、800ppm以下である。
また、熱処理工程後において、反応生成物中の環状カルバモイルクロライドの濃度は、例えば、20ppm以上、好ましくは、50ppm以上、例えば、200ppm以下、好ましくは、100ppm以下である。
また、環状カルバモイルクロライドの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対する環状カルバモイルクロライドの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上であり、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下である。
また、反応生成物中のジクロロイミンの濃度は、例えば、20ppm以上、好ましくは、50ppm以上、例えば、200ppm以下、好ましくは、100ppm以下である。
また、ジクロロイミンの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対するジクロロイミンの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、1%以上、好ましくは、2%以上であり、例えば、20%以下、好ましくは、15%以下である。
また、熱処理工程の反応生成物中のHC濃度は、熱処理工程前の反応生成物中のHC濃度に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。
つまり、熱処理工程の加水分解性塩素の低減割合([熱処理工程前の反応生成物中のHC濃度−熱処理工程後の反応生成物中のHC濃度]/熱処理工程前の反応生成物中のHC濃度×100)は、例えば、50質量%以上、好ましくは、60質量%以上、例えば、99質量%以下、好ましくは、95質量%以下である。
また、上記の熱処理工程では、反応生成物に、触媒または添加物を添加することができる。
添加物としては、例えば、鉄、銅、亜鉛などの金属が挙げられる。これら金属は、単独使用または2種類以上併用することができる。金属として、好ましくは、銅が挙げられる。
金属の添加量は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、例えば、ペンタメチレンジイソシアネート100質量部に対して、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、さらに好ましくは、0.15質量%以上、例えば、0.50質量%以下、好ましくは、0.40質量%以下、さらに好ましくは、0.30質量%以下である。
また、金属の添加のタイミングは、特に制限されず、例えば、熱処理前であってもよく、熱処理中であってもよく、それらの両方であってもよい。
また、熱処理工程において金属を添加すると、金属と、加水分解性塩素の塩素原子とが反応することにより、金属塩化物(例えば、塩化銅、塩化鉄、塩化亜鉛)が生成する場合がある。
金属塩化物の含有割合は、熱処理後の反応生成物100質量%に対して、例えば、0.015質量%以上、好ましくは、0.15質量%以上、例えば、1.0質量%以下、好ましくは、0.7質量%以下である。
3.精製工程
次いで、反応生成物を蒸留して、ペンタメチレンジイソシアネートを精製する。
精製工程では、蒸留により、反応生成物から、ペンタメチレンジイソシアネートを分離するとともに、例えば、加水分解性塩素(高分子量化した加水分解性塩素)およびタール成分などを除去する。
蒸留温度としては、例えば、100℃以上、好ましくは、120℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、140℃以下である。蒸留圧力としては、例えば、1.0kPa以上、好ましくは、1.7kPa以上、例えば、3.0kPa以下、好ましくは、2.4kPa以下である。
また、蒸留時間(滞留時間)は、例えば、0.1時間以上、好ましくは、0.5時間以上、さらに好ましくは、1時間以上、例えば、12時間以下、好ましくは、10時間未満、さらに好ましくは、8時間以下である。
以上により、反応生成物から、純度の高いペンタメチレンジイソシアネート(精ペンタメチレンジイソシアネート)が製造される。
精ペンタメチレンジイソシアネートの純度は、例えば、95質量%以上、好ましくは、98質量%以上、例えば、100質量%以下、好ましくは、99.999質量%以下である。
また、精ペンタメチレンジイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネートと、少量の加水分解性塩素とを含有する組成物であり、精ペンタメチレンジイソシアネート中の加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、例えば、10ppm以上、好ましくは、20ppm以上、例えば、150ppm以下、好ましくは、100ppm以下、さらに好ましくは、90ppm以下である。
また、精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、熱処理工程前の反応生成物中のHC濃度に対して、例えば、0.05質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、例えば、15質量%以下、好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、8質量%以下である。
つまり、精ペンタメチレンジイソシアネートの加水分解性塩素の低減割合([第1工程前の反応生成物中のHC濃度‐精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度]/第1工程前の反応生成物中のHC濃度×100)は、例えば、85質量%以上、好ましくは、90質量%以上、さらに好ましくは、92質量%以上、例えば、99.95質量%以下、好ましくは、99.9質量%以下である。
また、精ペンタメチレンジイソシアネート中の環状カルバモイルクロライドの濃度は、例えば、1ppm以上、好ましくは、5ppm以上、例えば、150ppm以下、好ましくは、100ppm以下である。
また、環状カルバモイルクロライドの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対する環状カルバモイルクロライドの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、0.1%以上、好ましくは、0.2%以上であり、例えば、95%以下、好ましくは、90%以下である。
また、精ペンタメチレンジイソシアネート中のジクロロイミンの濃度は、例えば、1ppm未満、好ましくは、0.1ppm以下である。
また、ジクロロイミンの濃度は、加水分解性塩素の濃度(JIS K−1603−3(2007)に準拠した濃度)に対するジクロロイミンの濃度(ガスクロマトグラフィー測定濃度)の百分率として、例えば、1%未満、好ましくは、0.1%以下である。
4.プラント
このようなペンタメチレンジイソシアネートの製造方法は、図1に示すように、例えば、プラント1により、工業的に連続実施される。
プラント1は、上記した方法でペンタメチレンジイソシアネートを製造するペンタメチレンジイソシアネートの製造装置であって、反応ユニット2と、ガス除去ユニット7と、溶媒除去ユニット3と、熱処理ユニット5と、精製ユニット6とを備えている。
反応ユニット2は、反応工程が実施されるように構成されている。反応ユニット2は、反応容器10と、塩化水素供給ライン13と、塩化カルボニル供給ライン11と、アミン供給ライン12と、反応生成物輸送ライン14とを備えている。
反応容器10は、ペンタメチレンジアミンと塩化水素、および、ペンタメチレンジアミンの塩酸塩と塩化カルボニルを反応させるための反応槽であって、例えば、温度・圧力が制御可能な耐熱耐圧容器からなる。
塩化水素供給ライン13は、反応容器10に塩化水素を供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、塩化水素を貯留する塩化水素タンクに接続されている。
塩化カルボニル供給ライン11は、反応容器10に塩化カルボニルを供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、塩化カルボニルを貯留する塩化カルボニルタンクに接続されている。
アミン供給ライン12は、反応容器10にペンタメチレンジアミンを供給するための配管であって、その下流端部が、反応容器10に接続されている。また、上流端部は、図示しないが、ペンタメチレンジアミン(ジアミン溶液)を貯留するアミンタンクに接続されている。
反応生成物輸送ライン14は、反応容器10内において生成される反応生成物を、ガス除去ユニット7に輸送するための配管であって、その上流端部が、反応容器10の下端部(底部)に接続されている。
なお、反応ユニット2は、図示しないが、必要により、反応容器10内を攪拌するための攪拌装置などを備えることもできる。
ガス除去ユニット7は、脱ガス工程を実施するように構成されており、フラッシュタンク40と、流出ライン41と、排気ライン42とを備えている。
フラッシュタンク40は、公知のフラッシュタンクであって、例えば、特開2009−119346号公報に記載のフラッシュタンクなどが挙げられる。フラッシュタンク40の上下方向略中央部には、反応生成物輸送ライン14の下流端部が接続されている。
流出ライン41は、ガスが除かれた反応生成物を溶媒除去ユニット3に輸送するための配管であって、その上流端部が、フラッシュタンク40の塔底部に接続されている。
排気ライン42は、フラッシュタンク40により、反応生成物から分離されるガスを排出するための配管であって、その上流端部が、フラッシュタンク40の塔頂部に接続されている。
溶媒除去ユニット3は、溶媒除去工程を実施するように構成されており、蒸留塔18と、缶出ライン19と、留出ライン20とを備えている。
蒸留塔18は、例えば、温度・圧力制御可能な公知の蒸留塔からなり、好ましくは、連続式の蒸留塔である。蒸留塔18の上下方向略中央部には、流出ライン41の下流端部が接続されている。
缶出ライン19は、蒸留塔18からの缶出液、つまり、反応溶媒が除かれた反応生成物を熱処理ユニット5に輸送するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔18の塔底部に接続されている。
留出ライン20は、蒸留塔18からの留出液、つまり、反応溶媒を留去するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔18の塔頂部に接続されている。また、下流端部は、図示しないが、溶媒を回収する溶媒タンクに接続されているか、または、反応容器10に接続されており、反応溶媒を再使用可能としている。
熱処理ユニット5は、熱処理工程を実施するように構成されており、熱処理槽30と、ガス供給ライン32と、反応生成物輸送ライン33と、排気ライン34と、タール成分導入ライン31とを備えている。
熱処理槽30は、例えば、水平はね式撹拌機を備え、温度・圧力制御可能な耐熱耐圧容器からなる。熱処理槽30の上下方向略中央部には、缶出ライン19の下流端部が接続されている。
ガス供給ライン32は、熱処理槽30に、上記不活性ガスを供給するための配管であって、その下流端部が、熱処理槽30に接続されている。
反応生成物輸送ライン33は、熱処理槽30において熱処理された反応生成物を、精製ユニット6に輸送するための配管であって、その上流端部が、熱処理槽30の下端部(底部)に接続されている。
排気ライン34は、ガス供給ライン32により供給される不活性ガスを、熱処理槽30から排出するための配管であって、その上流端部が、熱処理槽30の上端部(頂部)に接続されている。
タール成分導入ライン31は、タール成分(具体的には、後述する精製ユニット6において反応生成物を蒸留して得られるタール成分)を、加熱処理前の反応生成物に導入するための配管であって、その上流端部が、後述する精製ユニット6における缶出ライン45の流れ方向途中部分に接続されている。すなわち、タール成分導入ライン31は、缶出ライン45から分岐するように、接続されている。また、缶出ライン45からタール成分導入ライン31が分岐する分岐部分には、分配弁25(後述)が設けられている。
また、タール成分導入ライン31の下流端部は、溶媒除去ユニット3における缶出ライン19の流れ方向途中部分に接続されている。
すなわち、タール成分導入ライン31は、精製ユニット6における缶出ライン45と、溶媒除去ユニット3における缶出ライン19との間を架設しており、精製ユニット6における缶出ライン45中のタール成分を、溶媒除去ユニット3における缶出ライン19に導入し、加熱処理前の生成物に添加可能としている。
精製ユニット6は、精製工程を実施するように構成されており、蒸留塔44と、缶出ライン45と、留出ライン46とを備えている。
蒸留塔44は、例えば、温度・圧力制御可能な公知の蒸留塔からなり、好ましくは、連続式の蒸留塔である。蒸留塔44の上下方向略中央部には、反応生成物輸送ライン33の下流端部が接続されている。
缶出ライン45は、蒸留塔44からの缶出液(タール成分)を排出するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔44の塔底部に接続されている。
また、缶出ライン45の途中部分から、タール成分導入ライン31が分岐するように接続されており、その分岐部分には、分配弁25が備えられている。
分配弁25は、公知の分配弁であって、缶出ライン45中の缶出液(タール成分)を、缶出ライン45の下流側(タール成分導入ライン31の接続部分よりも下流側)と、タール成分導入ライン31とに分配するために備えられている。
これにより、缶出ライン45中の缶出液(タール成分)の一部が、タール成分導入ライン31に供給可能とされ、また、残部が、缶出ライン45の下流側(タール成分導入ライン31の接続部分よりも下流側)に輸送可能とされている。
留出ライン46は、蒸留塔44からの留出液、つまり、ペンタメチレンジイソシアネートを排出するための配管であって、その上流端部が、蒸留塔44の塔頂部に接続されている。
なお、精製ユニット6は、熱処理後の反応生成物を、公知のろ過器により減圧濾過した後、その濾液を、公知の蒸留装置により蒸留するように構成することもできる。
次に、プラント1の動作について説明する。
プラント1では、まず、塩化水素が、塩化水素供給ライン13を介して、反応容器10に連続的に供給されるとともに、ペンタメチレンジアミンが反応溶媒に溶解されたジアミン溶液として、アミン供給ライン12を介して、反応容器10に連続的に供給される。さらに、塩化カルボニルが、塩化カルボニル供給ライン11を介して、反応容器10に連続的に供給される。
そして、塩化カルボニルとペンタメチレンジアミン塩酸塩とが、反応容器10内において、上記反応条件下で反応し、ペンタメチレンジイソシアネートが生成するとともに、加水分解性塩素、塩化水素およびタール成分が副生する(反応工程)。
以上によって、ペンタメチレンジイソシアネートと、加水分解性塩素と、反応溶媒と、タール成分とを含有する反応生成物が調製される。
その後、反応生成物は、反応生成物輸送ライン14を介して、フラッシュタンク40内に流入し、余剰の塩化カルボニルおよび塩化水素などのガスと、ペンタメチレンジイソシアネートや反応溶媒などの液状成分とに分離される。
そして、ガスは、排気ライン42を介して、フラッシュタンク40から排出され、ガスが除去された反応生成物は、流出ライン41を介して、フラッシュタンク40から流出し、蒸留塔18に圧力輸送される。
次いで、反応生成物は、蒸留塔18において蒸留される(溶媒除去工程)。
蒸留塔18の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下であり、塔頂温度は、例えば、60℃以上、好ましくは、70℃以上、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。
また、蒸留塔18内の圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、2kPa以上、例えば、10kPa以下、好ましくは、5kPa以下である。
そして、反応溶媒は、留出ライン20により、蒸留塔18から留去される。留去された反応溶媒は、溶媒を回収する溶媒タンクに回収されるか、または、反応容器10に直接輸送され、必要に応じて、再使用可能とされる。
一方、反応溶媒が留去された反応生成物は、蒸留塔18の缶出液として、缶出ライン19を介して、蒸留塔18から熱処理ユニット5の熱処理槽30に圧力輸送される。
このとき、後述する精製ユニット6において生じたタール成分の一部が、分配弁25およびタール成分輸送ライン31によって、缶出ライン19に輸送され、缶出ライン19中の反応生成物に対して、上記した割合で添加される。
また、熱処理槽30には、ガス供給ライン32を介して、不活性ガスが供給され、不活性ガスは、熱処理槽30を通過した後、排気ライン34を介して、熱処理槽30から排出される。
熱処理槽30に供給された反応生成物(タール成分を含む。)は、熱処理槽30内において、必要により不活性ガスを導入されながら、上記の条件下で熱処理される(熱処理工程)。これにより、加水分解性塩素のうち、比較的熱分解速度の速い軽沸分が熱分解され、その塩素分がガス成分として除去される。また、比較的熱分解速度の遅い高沸分が熱分解されるか、または、加熱により高分子量化され、精製工程にて容易に分離可能な高分子量物に変換される。
その後、熱処理された反応生成物は、反応生成物輸送ライン33を介して、蒸留塔44に輸送される。
次いで、熱処理された反応生成物は、蒸留塔44において蒸留される(精製工程)。
蒸留塔44の塔底温度は、例えば、120℃以上、好ましくは、130℃以上、例えば、160℃以下、好ましくは、150℃以下であり、塔頂温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、90℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、140℃以下である。
また、蒸留塔44内の圧力は、例えば、1kPa以上、好ましくは、2kPa以上、例えば、10kPa以下、好ましくは、5kPa以下である。
そして、留出ライン46から留出する留出液が、ペンタメチレンジイソシアネートとして採取される。なお、蒸留塔44の釜残分(タール成分)は、缶出液として、缶出ライン45を介して、蒸留塔44から除去される。
そして、蒸留塔44から排出された釜残分(タール成分)の一部が、分配弁25およびタール成分輸送ライン31によって、缶出ライン19に輸送され、缶出ライン19中の反応生成物に対して、上記した割合で添加される。また、残部は、缶出ライン45の下流側(タール成分導入ライン31の接続部分よりも下流側)に輸送され、プラント1から排出される。
以上により、ペンタメチレンジイソシアネート(精ペンタメチレンジイソシアネート)が、連続的に製造される。
このようなペンタメチレンジイソシアネートの製造方法によれば、精製工程において得られるタール成分を、熱処理工程において、加熱処理前の反応生成物に導入して加熱するため、反応生成物から加水分解性塩素を効率よく除去することができる。
なお、上記の実施形態では、熱処理工程において、反応生成物に不活性ガスを導入(パージ)しながら加熱するが、これに限定されず、反応生成物に不活性ガスを導入(パージ)せずに加熱することもできる。
また、上記の実施形態では、タール成分導入ライン31の下流端部を、缶出ライン19に接続し、溶媒除去工程と熱処理工程との間において、タール成分を反応生成物に導入しているが、タール成分を導入するタイミングは、熱処理工程の前であれば、特に制限されない。例えば、タール成分導入ライン31の下流端部を、反応生成物輸送ライン14の流れ方向途中部分に接続し、反応工程と脱ガス工程との間において、タール成分を反応生成物に導入することができる。また、例えば、タール成分導入ライン31の下流端部を、流出ライン41の流れ方向途中部分に接続し、脱ガス工程と溶媒除去工程との間において、タール成分を反応生成物に導入することもできる。
好ましくは、図1に示すように、タール成分導入ライン31の下流端部を、缶出ライン19に接続し、溶媒除去工程と熱処理工程との間において、タール成分を反応生成物に導入する。
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
また、以下において記載される各種物性の測定法を下記する。
<ペンタメチレンジイソシアネートおよび反応生成物の加水分解性塩素の濃度(単位:ppm)>
加水分解性塩素の濃度(HC濃度)は、JIS K−1603−3(2007)に記載されている加水分解性塩素の求め方に準拠して測定した。
また、環状カルバモイルクロライドの濃度、および、ジクロロイミンの濃度は、ガスクロマトグラフィーにて測定した。
また、ガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
インジェクション温度;250℃
キャリアガス;N/Airガス
流速;40mL/min
カラム:DB−1(アジレント・テクノロジー社)0.53mm×30m×1.5μm
スプリット比率;10
温度:120〜280℃、昇温速度7℃/min
<ペンタメチレンジイソシアネートの重合ロス>
熱処理前後のペンタメチレンジイソシアネートの濃度(質量%)を、ガスクロマトグラフィーにより測定し下記式により、ペンタメチレンジイソシアネートの重合ロスを算出した。
重合ロス = 100−([熱処理後のペンタメチレンジイソシアネート濃度]/[熱処理前のペンタメチレンジイソシアネート濃度])×100
また、ガスクロマトグラフィーの測定条件を以下に示す。
インジェクション温度;250℃
キャリアガス;N/Airガス
流速;40mL/min
カラム:DB−1(アジレント・テクノロジー社)0.53mm×30m×1.5μm
スプリット比率;10
温度:120〜280℃、昇温速度7℃/min
検出器:FID
比較例1
(1)反応生成物の調製(反応工程)
電磁誘導撹拌機、自動圧力調整弁、温度計、窒素導入ライン、塩化水素導入ライン、塩化カルボニル導入ライン、凝縮器、原料フィードポンプを備え付けたジャケット付き加圧反応器に、1,5−ペンタメチレンジアミン380質量部をo−ジクロロベンゼン5000質量部に溶解したジアミン溶液を仕込んだ。次いで、撹拌を開始し、反応器ジャケットには蒸気を通し、内温を約130℃に保った。そこへ塩化水素400質量部を塩化水素導入ラインから加え、130℃以下、常圧下で塩酸塩化反応を開始した。フィード終了後、加圧反応器内は淡褐白色スラリー状液となった。
次いで、反応器の内液を徐々に160℃まで昇温し、塩化カルボニル1350質量部を添加しながら、圧力0.25MPa、反応温度160℃で6時間イソシアネート化した。反応の過程で、加圧反応器内液は、淡褐色澄明溶液となった。
イソシアネート化終了後、100〜140℃において、窒素ガスを100L/時で通気し、余剰の塩化カルボニル、副生する塩化水素を除去した(脱ガス)。
以上によって、反応生成物を得た。反応生成物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートと、加水分解性塩素と、o−ジクロロベンゼンと、タール成分とを含有していた。
次いで、反応生成物を、減圧下で、o−ジクロロベンゼンを留去した(脱溶媒)。
その後、公知の薄膜蒸発器によって、反応生成物から、タール成分を分離し除去した。
この反応生成物において、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートの含有割合は、95質量%であり、加水分解性塩素の濃度(以下、HC濃度とする。)は、1417ppmであった。
(2)熱処理工程
次いで、反応生成物200質量部を、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えたフラスコ(熱処理容器)に装入し、窒素をフラスコ内に30分間導入した後、引き続き、窒素を、10mL/min(窒素の反応生成物の単位体積当たりの供給速度:0.05/min)で導入するとともに、250rpmで撹拌しながら、常圧下、200℃で加熱処理を開始した。なお、加熱処理時間は、4時間とした。
そして、加熱処理開始から1時間毎に、反応生成物の一部をサンプリングして、各時間での反応生成物のHC濃度、環状カルバモイルクロライドの濃度、ジクロロイミンの濃度、および、ペンタメチレンジイソシアネートの重合ロスを測定した。その結果を、表1に示す。
以上によって、反応生成物が熱処理された。その後、40℃以下に冷却して、熱処理後の反応生成物を得た。
熱処理後の反応生成物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートと、加水分解性塩素とを含有していた。
(3)精製工程
次いで、熱処理後の反応生成物を、減圧濾過(ろ紙:型式No.5A)した後、その濾液を、撹拌機、フラスコおよび冷却管を備える蒸留装置により、120〜140℃、1.7〜2.4kPaの条件で蒸留(精留)した。
そして、初留分12質量%(12質量部)を留出させた後、主留分(本留分)76質量%(76質量部)を、精ペンタメチレンジイソシアネートとして採取した。なお、釜残分(タール成分)は、12質量%(12質量部)であった。
また、精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、305ppmであり、環状カルバモイルクロライドの濃度は、128ppmであり、ジクロロイミンの濃度は、178ppmであった。
実施例1
上記比較例1の(1)反応生成物の調製において得られた反応生成物206質量部と、上記の比較例1の(3)精製工程で得られた釜残分(タール成分)11質量部とを、撹拌機、温度計および窒素導入管を備えたフラスコ(熱処理容器)に装入し、窒素をフラスコ内に30分間導入した後、引き続き、窒素を、10mL/min(窒素の反応生成物の単位体積当たりの供給速度:0.05/min)で導入するとともに、250rpmで撹拌しながら、常圧下、200℃で加熱処理を開始した。なお、加熱処理時間は、4時間とした。また、熱処理開始前に、タール成分を添加した反応生成物のHC濃度を測定したところ、1455ppmであり、環状カルバモイルクロライドの濃度は、569ppmであり、ジクロロイミンの濃度は、659ppmであった。
そして、加熱処理開始から1時間毎に、反応生成物の一部をサンプリングして、各時間での反応生成物のHC濃度、環状カルバモイルクロライドの濃度、ジクロロイミンの濃度、および、ペンタメチレンジイソシアネートの重合ロスを測定した。その結果を、表1に示す。
以上によって、反応生成物が熱処理された。その後、40℃以下に冷却して、熱処理後の反応生成物を得た。
熱処理後の反応生成物は、1,5−ペンタメチレンジイソシアネートと、加水分解性塩素とを含有していた。
次いで、熱処理後の反応生成物を、減圧濾過(ろ紙:型式No.5A)した後、その濾液を、撹拌機、フラスコおよび冷却管を備える蒸留装置により、120〜140℃、1.7〜2.4kPaの条件で蒸留(精留)した。
そして、初留分19質量%(19質量部)を留出させた後、主留分(本留分)70質量%(70質量部)を、精ペンタメチレンジイソシアネートとして採取した。なお、釜残分(タール成分)は、12質量%(12質量部)であった。
また、精ペンタメチレンジイソシアネート中のHC濃度は、90ppmであり、環状カルバモイルクロライドの濃度は、73ppmであり、ジクロロイミンの濃度は、検出限界(1ppm)未満であった。
Figure 0006523856
1 プラント
2 反応ユニット
3 溶媒除去ユニット
5 熱処理ユニット
6 精製ユニット
31 タール成分輸送ライン

Claims (4)

  1. 塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応工程と、
    前記反応生成物を加熱処理する熱処理工程と、
    前記加熱処理後の前記反応生成物を蒸留し、前記ペンタメチレンジイソシアネートを精製する精製工程と
    を含み、
    前記熱処理工程では、
    前記精製工程において前記反応生成物を前記蒸留して得られるタール成分を、
    前記加熱処理前の前記反応生成物に導入し、加熱する
    ことを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  2. 前記熱処理工程において、
    前記タール成分の添加割合は、前記反応生成物100質量部に対して、1質量部以上40質量部以下である
    ことを特徴とする、請求項1に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  3. 前記熱処理工程における熱処理温度は、180℃以上245℃以下である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のペンタメチレンジイソシアネートの製造方法を実施するためのペンタメチレンジイソシアネートの製造装置であって、
    塩化カルボニルとペンタメチレンジアミンとを反応させて、ペンタメチレンジイソシアネートおよび加水分解性塩素を含む反応生成物を得る反応ユニットと、
    前記反応生成物を加熱処理する熱処理ユニットと、
    前記加熱処理後の前記反応生成物を蒸留し、前記ペンタメチレンジイソシアネートを精製する精製ユニットと
    を備え、
    前記熱処理ユニットは、
    前記精製ユニットにおいて前記反応生成物を前記蒸留して得られるタール成分を、前記加熱処理前の前記反応生成物に導入するためのタール成分導入ライン
    を備えている
    ことを特徴とする、ペンタメチレンジイソシアネートの製造装置。
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