JP2019167635A - 塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法 - Google Patents
塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】環境への悪影響が少なく、優れた塗装後の耐食性を発揮する塗装下地皮膜を形成することが可能な、塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法を提供する。【解決手段】タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む塗装下地皮膜形成用の処理液。また、金属基体を、タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む処理液によって処理して、前記金属基体に塗装下地皮膜を形成して塗装下地皮膜付き金属を得る、塗装下地皮膜付き金属の製造方法。【選択図】なし
Description
本発明は、塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法に関するものである。
特許文献1には、金属の表面にタンニンを利用して防食皮膜を形成した防食皮膜付き金属および防食皮膜形成方法が開示されている。同文献の防食皮膜形成方法は、金属基体の表面にタンニンを主体とする第1処理液で処理して第1防食皮膜を形成した後、変性タンパク質またはタンパク質加水分解物を水溶化した化合物、あるいはアミノ基を2つ以上有するポリアミンの何れか少なくとも1種からなる第2処理液で処理して、第1防食皮膜を架橋・改質した第2防食皮膜を形成している。
タンニンは、古くから鉄をはじめとする種々の金属と反応し金属表面に簡単に皮膜を生成されることが知られている。しかし、その生成された皮膜は塗装後の耐食性が高くなく、工業的に使用できるレベルではなかった。
また、現在主流であるリン酸亜鉛皮膜やリン酸鉄皮膜などでは、リンを含む処理液を使用するため、排水基準に照らし適切に廃液処理する必要がある。その他、有害な重金属類・フッ素・亜硝酸イオン・硝酸イオン等を含む処理液に関しても同様に、排水基準に照らし適切に廃液処理する必要がある。これらの処理液を使用することには、環境上の観点や、廃液処理の観点から課題がある。
本発明は、環境への悪影響が少なく、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を形成することが可能な、塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法を提供することを目的とする。
(1)
上記課題を解決することのできる本発明の塗装下地皮膜形成用の処理液は、
タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む。
当該処理液は環境への悪影響が少なく、また当該処理液によれば、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を金属基体に形成することが可能となる。
(2)
上記(1)の処理液は、
鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含むと好ましい。
さらに特定の濃度の鉄イオンを含有する処理液を用いることで、さらに優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を金属基体に形成することが可能となる。
(3)
また、上記課題を解決することのできる本発明の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
金属基体を、タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む処理液によって処理して、前記金属基体に塗装下地皮膜を形成して塗装下地皮膜付き金属を得る、方法である。
当該方法によれば、タンニンと、カルボン酸化合物と、を含む処理液を用いることにより、環境への悪影響を少なくしつつ、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を備える金属を製造することができる。
(4)
上記(3)の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
前記処理液が鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含むと好ましい。
特定の処理液によって金属基体を処理することで、さらに優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を備える金属を製造することができる。
(5)
上記(4)の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
金属基体を前記処理液に浸漬して前記金属基体に塗装下地皮膜を形成した後に、次の金属基体に塗装下地皮膜を形成するために前記処理液を再利用し、再利用される前記処理液中の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整する、方法であると好ましい。
処理液を再利用して塗装下地皮膜を形成する方法において、再利用される処理液の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整することによって、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜備える金属を生産性良く製造することができる。
上記課題を解決することのできる本発明の塗装下地皮膜形成用の処理液は、
タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む。
当該処理液は環境への悪影響が少なく、また当該処理液によれば、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を金属基体に形成することが可能となる。
(2)
上記(1)の処理液は、
鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含むと好ましい。
さらに特定の濃度の鉄イオンを含有する処理液を用いることで、さらに優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を金属基体に形成することが可能となる。
(3)
また、上記課題を解決することのできる本発明の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
金属基体を、タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む処理液によって処理して、前記金属基体に塗装下地皮膜を形成して塗装下地皮膜付き金属を得る、方法である。
当該方法によれば、タンニンと、カルボン酸化合物と、を含む処理液を用いることにより、環境への悪影響を少なくしつつ、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を備える金属を製造することができる。
(4)
上記(3)の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
前記処理液が鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含むと好ましい。
特定の処理液によって金属基体を処理することで、さらに優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を備える金属を製造することができる。
(5)
上記(4)の塗装下地皮膜付き金属の製造方法は、
金属基体を前記処理液に浸漬して前記金属基体に塗装下地皮膜を形成した後に、次の金属基体に塗装下地皮膜を形成するために前記処理液を再利用し、再利用される前記処理液中の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整する、方法であると好ましい。
処理液を再利用して塗装下地皮膜を形成する方法において、再利用される処理液の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整することによって、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜備える金属を生産性良く製造することができる。
本発明によれば、環境への悪影響が少なく、優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を形成することが可能な、塗装下地皮膜形成用の処理液および塗装下地皮膜付き金属の製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。まず、本実施形態に係る塗装下地皮膜形成用の処理液を説明する。当該処理液は、タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む。タンニンは、天然の多価フェノールの総称であり、加水分解性タンニンと、縮合型タンニンと、に大別される。加水分解型タンニンとしては、例えば、五倍子タンニン、没食子タンニン等のタンニン酸等を挙げることができる。縮合型タンニンとしては、例えば、ミモザタンニン、柿タンニン等のカテコール重合体等を挙げることができる。本実施形態においてはどちらの種類のタンニンも採用し得るが、加水分解性タンニンが耐食性の観点で好ましい。
処理液中のタンニンの濃度は、化成処理する対象の形状により、その浸漬状態や水切れのしやすさ等を考慮して決定する。例えば0.01g/L以上40g/L以下とすることができ、耐食性の観点から0.1g/L以上20g/L以下が好ましく、1g/L以上10g/L以下がより好ましい。
本実施形態におけるカルボン酸化合物は、1つ以上のカルボキシ基を有する有機酸である。カルボン酸化合物としては、脂肪族カルボン酸化合物および芳香族カルボン酸化合物のいずれも採用し得る。カルボン酸化合物が有するカルボキシ基の数は特に限定されるものではないが、例えば1〜5としてもよく、耐食性の観点から1〜3が好ましく、1または2であるとさらに好ましい。カルボン酸化合物の分子サイズは特に限定されるものではないが、例えば分子量45g/mоl以上1000g/mоl以下のものを採用してよく、耐食性の観点から分子量70g/mоl以上400g/mоl以下のものが好ましく、分子量80g/mоl以上200g/mоl以下のものがさらに好ましい。脂肪族カルボン酸化合物においては、耐食性の観点から分子量70g/mоl以上120g/mоl以下のものが特に好ましい。芳香族カルボン酸化合物においては、耐食性の観点から、分子量120g/mоl以上200g/mоl以下のものが特に好ましい。カルボン酸化合物の炭素数は特に限定されるものではないが、例えば1以上20以下のものを採用してよく、耐食性の観点から2以上15以下のものが好ましく、2以上10以下のものがさらに好ましい。
本実施形態において採用し得るカルボン酸化合物の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪族モノカルボン酸;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ソルビン酸等の不飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸等の脂肪族ジカルボン酸;乳酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシ酸;安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、没食子酸、メリト酸、ケイ皮酸等の芳香族カルボン酸、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。ただし、本発明において採用し得るカルボン酸化合物のうち、カルボキシ基以外の官能基を有さない脂肪族カルボン酸およびカルボキシ基以外の官能基を有していてもよい芳香族カルボン酸が耐食性の観点から好ましく、カルボキシ基以外の官能基を有さない脂肪族多価カルボン酸およびカルボキシ基以外の官能基を有していてもよい芳香族カルボン酸がさらに好ましく、カルボキシ基以外の官能基を有さない脂肪族多価カルボン酸が特に好ましい。
処理液中のカルボン酸化合物の濃度は、耐食性の観点から0.01g/L以上20g/L以下であると好ましく、0.1g/L以上15g/L以下であるとより好ましく、1g/L以上10g/L以下であると特に好ましい。
本実施形態における溶媒は、水、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、アセトンまたはこれらの組み合わせである。溶媒は、水、アルコールまたはこれらの組み合わせであると好ましい。
処理液は、鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含むと好ましく、200ppm以上500ppm以下で含むと耐食性および機械的耐久性の観点でより好ましい。鉄イオンの濃度が10ppm以上であると、優れた耐食性を発揮する皮膜を備える金属を生産性良く製造することができる。鉄イオンの濃度が10ppmより小さいと耐食性のさらなる向上を達成することが困難である。また、鉄イオンの濃度が1000ppmより大きいと皮膜の機械的耐久性が下がる恐れがある。鉄イオンの濃度を1000ppm以下とすることで、形成される皮膜の機械的耐久性を保つことができる。
処理液は、上記の成分の他に、種々の添加成分を含んでもよい。例えば、酸化防止剤、防腐剤、pH調整剤、界面活性剤、還元剤を含んでも良い。添加成分の濃度は、本発明の効果を損なわない範囲において、添加成分による所望の効果を得られる濃度を選択できる。
処理液は各成分を溶媒に溶解させることで調製できる。処理液のpHは特に限定されるものではないが、1.2〜7.0の間に設定すると、塗装後の耐食性の観点で好ましい。処理液のpHを2.5〜6.0の間に設定するとより好ましく、3.8〜5.0の間に設定すると、特に好ましい。
続いて、本実施形態に係る塗装下地皮膜付き金属の製造方法を説明する。当該製造方法は、金属基体を上述した処理液によって処理して、金属基体に塗装下地皮膜を形成して塗装下地皮膜付き金属を得る、方法である。本実施形態に用いられる金属基体としては、亜鉛、ニッケル、マグネシウム、鉄、アルミニウム、銅、ステンレスまたはこれらの合金など、まれには、炭素繊維などの樹脂材などが挙げられる。
処理液による金属基体の処理は、金属基体を処理液に浸漬する方法、金属基体に処理液を塗布する方法、金属基体に処理液を噴霧する方法など、種々の手段を採用し得る。なお、上記処理液による処理を行う前に、金属基体には脱脂処理、必要に応じて酸洗処理、水洗を行う。上記処理液による処理の後、金属を水洗して乾燥させることで、塗装下地皮膜付き金属が得られる。
金属基体を処理液に浸漬して塗装下地皮膜を形成する場合、同じ処理液を再利用して次の金属基体に塗装下地皮膜を形成することができる。処理液中の鉄イオンの濃度は、金属基体の材質によっては処理を重ねるにつれて上昇する。鉄イオンが上昇しすぎると皮膜の機械的耐久性が低下する恐れがある。そこで、再利用される前記処理液中の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整すると好ましく、200ppm以上500ppm以下に調整すると耐食性および機械的耐久性の観点でより好ましい。その場合は、使用中の処理液に未使用のタンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む処理液を追加することで、鉄イオンの濃度を下降させることができる。また、最初に用意した処理液に鉄イオンが含まれていない場合には、金属基体をいくつか浸漬するか、鉄イオン含有剤を添加することによって、鉄イオンの濃度を上昇させることもできる。
上記の方法によって得られた塗装下地皮膜付き金属は、タンニン由来の有機性の塗装下地皮膜を備える金属である。当該皮膜は、現在主流のリン酸亜鉛皮膜やリン酸鉄皮膜などに匹敵するか、それ以上に優れた塗装後の耐食性を発揮する。また、リン酸亜鉛皮膜やリン酸鉄皮膜以外にも、アルミニウム陽極酸化後の封孔処理や亜鉛メッキ後の3価クロメート処理の代替えの皮膜ともなり得るものである。
本実施形態の方法によって得られる塗装下地皮膜付き金属には、任意の方法で塗装を施すことができる。本実施形態における塗装後の耐食性の評価は、JIS 2371に規定された中性塩水噴霧試験によってされる。具体的には、所定時間の間、食塩濃度5重量%、温度35℃、pH6.5〜7.2に調整された食塩水を、塩水噴霧試験機の中で、塗装後に塗装面にクロスカットをカッターナイフで入れた金属試料に噴霧する。その後、塩水噴霧試験機から試料を取り出し、クロスカットに沿ってセロテープ(登録商標)を貼り、セロテープ(登録商標)を引き剥がした時に塗膜が剥がれた幅(剥離幅)を測定する。塩水噴霧時間と剥離幅とによって、試料の耐食性が評価される。
上記のタンニンと、カルボン酸化合物とを含む当該処理液は、有害な重金属類・フッ素・リン・亜硝酸イオン・硝酸イオンを含まない。すなわち当該処理液は、リン酸亜鉛皮膜やリン酸鉄皮膜を形成するのに使用される処理液と比べて環境への悪影響が少ない。そして、当該処理液を使用することにより、従来のタンニンによる塗装下地皮膜の脆弱性が克服され、現在主流のリン酸亜鉛皮膜やリン酸鉄皮膜などに匹敵する優れた塗装後の耐食性を発揮する皮膜を金属基体に形成することが可能となった。
タンニンと、カルボン酸化合物と、を含む処理液で金属基体を処理することによって塗装後の耐食性が向上した塗装下地皮膜付き金属が得られるメカニズムとしては、カルボン酸化合物が金属基板に結合してタンニンのバインダーとして機能するためと推察される。さらに、タンニンと、カルボン酸化合物と、特定濃度の鉄イオンと、を含む処理液を用いると、カルボン酸化合物と鉄イオンとが塩または錯体を形成してより強固なタンニンのバインダーとして機能するため、より塗装後の耐食性が向上すると推察される。カルボン酸化合物と鉄イオンとが塩または錯体を形成するのであれば、当該塩または錯体の溶解度が低ければバインダーの溶解が進行しにくくなり、長期間にわたってタンニンを保持でき高い耐食性を維持できると推察される。ただし、溶解度が低すぎるとタンニンを十分に取り込む前に塩または錯体が形成されて所望の耐食性が維持できなくなる場合が推察される。
なお、上記の塗装下地皮膜付き金属の製造方法において上述の処理液を使用する態様を説明したが、1つの変形例について説明する。タンニンを含む溶液と、カルボン酸化合物を含む溶液と、を別々に用意して、例えばタンニンを含む溶液に金属基体を浸漬した後水洗せずにカルボン酸化合物を含む溶液に浸漬する処理を繰り返して行う。これにより、タンニンとカルボン酸化合物とを含む溶液が結果的に生じるような場合においても、塗装後の耐食性に優れる塗装下地皮膜付き金属を製造できる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明する。ただし、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(評価用試料の作製)
(試料1)
金属基体として酸洗鋼板を試験片とした。試験片の表面を脱脂処理して、水洗した。水洗した試験片を直ちに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの安息香酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された水溶液(処理液1)に40℃で120秒間浸漬した。その後、30秒間、試験片を水洗して60℃で3分間乾燥させて、塗装下地皮膜付き金属1を作製した。その後、ポリエステル系粉体塗料で塗膜厚60〜80μmの塗装を塗装下地皮膜付き金属1に施し、試料1を作成した。
(試料1)
金属基体として酸洗鋼板を試験片とした。試験片の表面を脱脂処理して、水洗した。水洗した試験片を直ちに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの安息香酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された水溶液(処理液1)に40℃で120秒間浸漬した。その後、30秒間、試験片を水洗して60℃で3分間乾燥させて、塗装下地皮膜付き金属1を作製した。その後、ポリエステル系粉体塗料で塗膜厚60〜80μmの塗装を塗装下地皮膜付き金属1に施し、試料1を作成した。
(試料2)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの安息香酸と、300ppmの鉄イオンと、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液2)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属2を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属2に施し、試料2を作成した。なお、処理液2は、鉄製の金属基体を処理液1で複数回処理することにより、鉄イオンの濃度を上昇させた溶液を使用した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの安息香酸と、300ppmの鉄イオンと、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液2)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属2を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属2に施し、試料2を作成した。なお、処理液2は、鉄製の金属基体を処理液1で複数回処理することにより、鉄イオンの濃度を上昇させた溶液を使用した。
(試料3)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)を含むが、安息香酸および鉄イオンを含まず、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液3)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属3を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属3に施し、試料3を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)を含むが、安息香酸および鉄イオンを含まず、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液3)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属3を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属3に施し、試料3を作成した。
(試料4)
リン酸鉄皮膜剤の溶液(昭和化工製ネオライトFS−4)を用いて、酸洗鋼板である試験片に次の方法でリン酸鉄皮膜処理を施した。試験片の表面を脱脂処理して、水洗した。水洗した試験片を直ちに、上記リン酸鉄皮膜剤の溶液を所定の濃度に調整して用意した溶液(処理液4)に5分間浸漬処理し、その後30秒間試験片を水洗して、60℃で3分間乾燥させて塗装下地皮膜付き金属4を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属4に施し、試料4を作成した。
リン酸鉄皮膜剤の溶液(昭和化工製ネオライトFS−4)を用いて、酸洗鋼板である試験片に次の方法でリン酸鉄皮膜処理を施した。試験片の表面を脱脂処理して、水洗した。水洗した試験片を直ちに、上記リン酸鉄皮膜剤の溶液を所定の濃度に調整して用意した溶液(処理液4)に5分間浸漬処理し、その後30秒間試験片を水洗して、60℃で3分間乾燥させて塗装下地皮膜付き金属4を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属4に施し、試料4を作成した。
(試料5)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの没食子酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液5)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属5を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属5に施し、試料5を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの没食子酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液5)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属5を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属5に施し、試料5を作成した。
(試料6)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lのマロン酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液6)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属6を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属6に施し、試料6を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lのマロン酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液6)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属6を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属6に施し、試料6を作成した。
(試料7)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの硫酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液7)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属7を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属7に施し、試料7を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの硫酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液7)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属7を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属7に施し、試料7を作成した。
(試料8)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの塩酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液8)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属8を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属8に施し、試料8を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの塩酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液8)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属8を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属8に施し、試料8を作成した。
(試料9)
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの硝酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液9)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属9を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属9に施し、試料9を作成した。
試料1の作製で使用した処理液1の代わりに、2g/Lのタンニン酸(市販試薬1級、和光純薬株式会社製)と、2g/Lの硝酸と、を含み、pHが3.8〜5.0に調整された、水溶液(処理液9)を用いた以外は、試料1と同様の方法に従って、塗装下地皮膜付き金属9を作製した。その後、試料1と同様の方法で塗装を塗装下地皮膜付き金属9に施し、試料9を作成した。
(耐中性塩水噴霧試験)
試料1〜試料9のそれぞれにおいて中性塩水噴霧試験を行い、耐食性を評価した。この試験はJIS 2371に規定された方法に従って行った。
具体的には、表1に示す試験時間の間、塩水噴霧試験機に、塗装面にクロスカットをカッターナイフで入れた試験片を入れて食塩水を噴霧した。噴霧した食塩水としては、食塩濃度5重量%、温度35℃、pH6.5〜7.2に調整された食塩水を使用した。その後、塩水噴霧試験機から試料を取り出し、クロスカットに沿ってセロテープ(登録商標)を貼り、セロテープ(登録商標)を引き剥がした時に塗膜が剥がれた幅を表1に示す剥離幅として測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表1に示す試験時間は、24時間毎の塩水噴霧試験後に試料の剥離試験を行って塗膜の剥離幅が2〜3mmに達したまたは2〜3mmを超えた時間を示す。表1に示す試験時間より前の時点での剥離幅はこの基準よりも小さかった。
試料1〜試料9のそれぞれにおいて中性塩水噴霧試験を行い、耐食性を評価した。この試験はJIS 2371に規定された方法に従って行った。
具体的には、表1に示す試験時間の間、塩水噴霧試験機に、塗装面にクロスカットをカッターナイフで入れた試験片を入れて食塩水を噴霧した。噴霧した食塩水としては、食塩濃度5重量%、温度35℃、pH6.5〜7.2に調整された食塩水を使用した。その後、塩水噴霧試験機から試料を取り出し、クロスカットに沿ってセロテープ(登録商標)を貼り、セロテープ(登録商標)を引き剥がした時に塗膜が剥がれた幅を表1に示す剥離幅として測定した。得られた結果を表1に示す。なお、表1に示す試験時間は、24時間毎の塩水噴霧試験後に試料の剥離試験を行って塗膜の剥離幅が2〜3mmに達したまたは2〜3mmを超えた時間を示す。表1に示す試験時間より前の時点での剥離幅はこの基準よりも小さかった。
タンニン酸のみを含む処理液で皮膜を形成した試料3と比較して、タンニン酸とカルボン酸とを含む処理液で皮膜を形成した試料1、試料2、試料5および試料6は優れた耐食性を示した。中でも、タンニン酸とカルボン酸と鉄イオンとを含む処理液で皮膜を形成した試料2は、試料1、試料5および試料6と比較してより優れた耐食性を示した。リン酸鉄皮膜を備える試料4と比較して、試料1、試料2、試料5および試料6はより優れた耐食性を示した。また、タンニン酸と無機酸とを含む処理液で皮膜を形成した試料7〜試料9では、試料3と同程度かそれよりも低い耐食性を示した。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。
Claims (5)
- タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む塗装下地皮膜形成用の処理液。
- 鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含む、請求項1に記載の塗装下地皮膜形成用の処理液。
- 金属基体を、タンニンと、カルボン酸化合物と、溶媒と、を含む処理液によって処理して、前記金属基体に塗装下地皮膜を形成して塗装下地皮膜付き金属を得る、塗装下地皮膜付き金属の製造方法。
- 前記処理液が鉄イオンを10ppm以上1000ppm以下で含む、請求項3に記載の塗装下地皮膜付き金属の製造方法。
- 金属基体を前記処理液に浸漬して前記金属基体に塗装下地皮膜を形成した後に、次の金属基体に塗装下地皮膜を形成するために前記処理液を再利用し、再利用される前記処理液中の鉄イオンの濃度を10ppm以上1000ppm以下に調整する、請求項4に記載の塗装下地皮膜付き金属の製造方法。
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JP2009293100A (ja) * | 2008-06-07 | 2009-12-17 | Nippon Parkerizing Co Ltd | 金属材料の自己析出被膜処理用表面処理液、および自己析出被膜処理方法 |
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