JP2019163332A - ラクテートを指標として用いるエクスビボ臓器ケアのためのシステムおよび方法 - Google Patents

ラクテートを指標として用いるエクスビボ臓器ケアのためのシステムおよび方法 Download PDF

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Abstract

【課題】エクスビボ臓器の潅流状態をケアし評価するシステム、方法、及び装置の提供。【解決手段】以下の工程を含む、移植適合性のためにエクスビボで心臓を評価する方法;(a)臓器ケアシステム100の保護チャンバー104内に心臓を収める工程、(b)心臓へ潅流流体108を与えるために、心臓を潅流流体回路に接続する工程、(c)心臓へと潅流流体108をポンピングする工程、(d)機能しかつ存続可能な状態で心臓を維持する工程、(e)心臓の状態を査定するために、ラクテートを監視する工程。【選択図】図1

Description

関連出願の相互参照
本出願は、現在係属中の2005年10月7日に出願された「Systems and Methods for Ex-Vivo Organ Care」という名称の米国特許第11/246,902号の一部継続出願であり、2004年10月7日に出願された米国仮特許出願第60/616,835号;2005年6月28日に出願された米国仮特許出願第60/694,971号;および2005年10月6日に出願された「Systems and Methods for Ex-Vivo Organ」という名称の米国仮特許出願第60/725,168号の恩典を主張する。前記出願のそれぞれの明細書は、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる。
発明の分野
本発明は概して、エクスビボ臓器ケアのためのシステム、方法、および装置に関する。種々の態様において本発明は、エクスビボにおいて臓器を生理学的状態または生理学的状態に近い状態で取り扱うことと、心筋細胞にとって適切な潅流および酸素供給であることを示す方法とに関する。
発明の背景
現在の臓器保存技術は、通常は氷上の化学的潅流溶液に臓器を低温保存することを伴う。心臓の場合通常は、心臓を保存溶液/心停止液(cardioplegic solution)によって低温の機能不全状態に停止させ、冷却する。これらの技術は、様々な心停止液を利用するが、溶液のいずれも虚血症による心筋損傷から心臓を十分には保護しない。そのような障害は、心臓などの臓器をドナーからレシピエントに移植しようとする場合、特に望ましくない。虚血症による心筋損傷に加えて、心臓の再潅流は心筋障害を悪化させ、冠血管内皮および平滑筋の障害を引き起こし、冠血管運動神経の機能不全に至る場合がある。
従来手法を用いると、このような障害は、臓器がエクスビボにおいて維持される時間の長さの関数として増大する。例えば心臓の場合、移植に使用不可能となるまでに、わずか数時間しかエクスビボにおいて維持できない。この相対的に短い時間により、所与のドナーサイトに到着することができるレシピエントの数が制限されるため、摘出心臓に対するレシピエントのプールが限定される。たとえ数時間の時間制限内であっても、心臓はそれでもなお著しく損傷を受け得る。重要な問題は、その損傷のいかなる明確な指標もない場合があることである。このため、最適とはいえない臓器が移植され得るため、移植後に臓器機能不全または他の障害が生じる。このように、臓器を健康状態でエクスビボにおいて保存することができる時間を拡張できる技術を開発することが望ましい。そのような技術は、移植不全のリスクを低減し、潜在ドナーおよびレシピエントのプールを拡大する。
エクスビボ臓器の効果的な保存はまた、多数の他の利益を提供する。例えば、延長したエクスビボ保存により、摘出臓器のより注意深い監視および機能試験が可能となる。これは、次に摘出臓器の欠陥の早期発見および潜在的な修復を可能にし、更に移植不全の可能性を低減する。現在の臓器移植技術が小さな欠陥を持つ多くの臓器を廃棄することを要求するのに対して、臓器に対する単純な修復を行う能力は、それらの臓器を救うことができる。
更に、臓器と特定のレシピエントとの間のより効果的な適合が実現され得、更に最終的な臓器拒絶の可能性を低減する。現在の臓器移植技術は、主に、ドナーおよびレシピエントの血液型の適合に依存しており、それ自体、臓器がレシピエントにより拒絶されるかどうかの、相対的に不確実な指標である。臓器適合性のより好ましい試験は、ヒト白血球抗原(HLA)適合性試験であるが、現在の低温虚血症臓器保存手法では、しばしば完了するのに12時間以上を必要とし得る試験の使用が排除される。
長期にわたる信頼のおけるエクスビボ臓器ケアはまた、臓器移植事情の他にも利益を提供する。例えば、患者の身体は、概して多くの特定の臓器よりかなり低いレベルの化学療法、生物学的療法、および放射線治療に耐用性がある。エクスビボ臓器ケアシステムは、臓器を身体から取り出して分離して扱うことを可能にし、身体の他の部分の損傷リスクを低減する。
ドナー臓器の状態、とりわけ潅流状態を判定するための感度の良い指標が必要とされる。乳酸とも呼ばれるラクテートは、生きた細胞/組織/臓器の嫌気性代謝の副生成物/最終生成物である。細胞内が無酸素または低酸素状態のときに、解糖系路によって基本エネルギー生成用にグルコースを代謝するために、ラクテートが生成される。多くの臨床的および科学的報告書は、身体のストレス、外傷性傷害、障害または何らかの低潅流状態の指標として総ラクテートの測定について記述している。
前述の観点から、エクスビボの臓器の潅流状態をケアし、かつ評価する改良されたシステム、方法、および装置が必要とされている。
本発明は、従来技術の不備に種々の態様で対処し、携帯型エクスビボ臓器ケアに関する改良されたシステム、方法、および装置を提供する。より詳細には、種々の局面によれば、本発明は携帯型エクスビボ心臓ケアに関するシステム、方法、および装置を提供する。一つの進歩によれば、本発明の心臓ケアシステムは正常な生理学的状態で、またはそれに近い状態で、心臓を拍動状態に維持する。このためにシステムは、酸素を添加し、栄養価を高めた潅流流体を、生理学的温度、圧力、および流速で、またはそれに近い温度、圧力、および流速で心臓に還流させる。一つの実施によれば、システムは、正常な生理学的状態をより正確に模倣するために血液製剤ベースの潅流流体を使用する。代替態様において、システムは合成血液代用溶液を使用し、一方他の態様において、溶液は血液代用製剤と組み合わせて血液製剤を含有する。
本出願は、1)摘出した心臓の全潅流状態、および2)摘出した心臓の代謝状態、および3)摘出したドナー心臓の全血管開存性を評価するために、臓器ケアシステム心臓潅流装置の動脈血液ラインおよび静脈血液ラインにおいてラクテート測定を用いるための方法について説明する。本発明のこの局面は、酸素が欠乏しているときにラクテートを生成/発生し、酸素で十分に潅流されているときにエネルギー生成のためにラクテートを代謝/利用する、心筋細胞の能力に基づく。
心臓の潅流状態を評価するためのシステムが開示される。特に、本発明の局面によれば臓器ケアシステムは、シャーシと、シャーシに装着されかつ潅流中に心臓を収容するように適合された臓器チャンバーアセンブリとを有するモジュールを含む。臓器ケアシステムは、心臓の大動脈に接続するための第一のインターフェースと、心臓の肺静脈に接続するための第二のインターフェースとを有する流体導管を含む。臓器ケアシステムは、心臓の大動脈に接続された流体導管中のラクテートを検出するためのラクテートAセンサー、心臓の肺静脈に接続された流体導管中のラクテートを検出するためのラクテートVセンサーを含み、ラクテートのV-A差が、ラクテートAセンサーおよびラクテートVセンサーで検出された値を用いて算出される。臓器ケアシステムはまた、OCSの大動脈圧を測定するためのセンサーを含み得る。
心臓潅流状態を判定するための方法も開示される。特に、本発明の一局面は、臓器ケアシステムの保護チャンバー内に心臓を収める工程、心臓へと潅流流体をポンピングする工程、心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、心臓に至る流体のラクテート値を測定する工程、心臓から出る流体のラクテート値を測定する工程、および測定したラクテート値を用いて心臓の状態を評価する工程を含む、心臓の潅流状態を評価する方法を含む。更に、方法は心臓から出る流体のラクテート値から、心臓に至る流体のラクテート値を差し引いて、V-Aラクテート差を決定する工程を含むことができる。
他の進歩によれば、本発明のシステムは、正常大動脈フローモード(「正常フローモード」とも呼ばれる)、および逆行性大動脈フローモード(「逆行性フローモード」とも呼ばれる)の二つの動作モードで、摘出心臓を維持することができる。一般に正常フローモードでは、システムは、血液が人体を循環するのと同様に心臓に潅流流体を循環させる。より詳細には、潅流流体は左心房を経由して心臓に入り、左右の心室を経由して心臓から流れ出る。正常フローモードでは、システムは約1L/分〜約5L/分の速度で心臓へと潅流流体をポンピングする。このモードは例えば、ドナーの場所への移動の前後に心臓に欠陥がないことを検証する機能試験を行うのに有用である。あるいは、逆行性フローモードでは、システムは大動脈を経由して潅流流体を心臓へと、冠状静脈洞を通して流し、かつ右心室を経由して心臓の外へ流す。この動作モードでは、システムは約300mL/分〜約1L/分に潅流流体の流速を減少させる。本発明者らは、逆行性流路が、減少された流速に従って長時間にわたるエクスビボケアの間、心臓への損傷を低減することを見出している。このように、本発明の一つの特徴に従い、心臓は逆行性フローモードでドナーサイトへ移動される。
種々の局面によれば、本発明のシステムおよび/または装置、および/または本発明の方法は、以下のうちの一つまたは複数を含む、および/または使用する:エクスビボケアの間心臓を収めるための臓器チャンバーアセンブリ;潅流流体の容量を収容し、任意で泡を取り除くおよび/またはフィルター処理するためのレザバー;摘出心臓へと、および摘出心臓から潅流流体をポンピング/循環するための潅流流体ポンプ;生理学的温度にまたはそれに近い温度に潅流流体の温度を維持するためのヒーターアセンブリ;正常フローモードと逆行性フローモードとをスイッチ切替えするためのフローモード切替弁;心臓から排出された後の潅流流体に再び酸素を添加するための酸素供給器;心臓で代謝されたときに潅流流体に栄養素を補給するための、および例えば、虚血症および/または他の再潅流に関連した心臓に対する障害を低減するよう、潅流流体に保存剤を供給するための栄養サブシステム;例えば、潅流流体の温度、圧力、流速、および/もしくは酸素化、ならびに/または心臓からの電気信号、ならびに/または心臓からおよび心臓へ流れる適切なフロー条件を維持するよう使用される種々の成分を監視するためのセンサーサブシステム;システム動作および/または心臓の状態を監視するオペレーターを支援し、および/またはオペレーターが、種々の動作パラメータを設定できるようにするためのオペレーターインターフェース;フォールトトレラント電力を臓器ケアシステムに供給するための電力サブシステム;ならびに臓器ケアシステムの動作を制御するための制御サブシステム。
運用上、一つの実践において心臓は、ドナーから摘出されてカニューレ挿入の方法により臓器チャンバーアセンブリに固定される。潅流流体ポンプは、潅流流体をレザバーからヒーターアセンブリにポンピングする。ヒーターアセンブリは潅流流体を、正常な生理学的温度にまたはそれに近い温度に加熱する。一態様によれば、ヒーターアセンブリは、潅流流体を約32℃〜約37℃に加熱する。ヒーターアセンブリから、潅流流体がフローモード切替弁に流れる。初めは、フローモード切替弁は逆行性フローモードに配置されて、ヒーターアセンブリから臓器チャンバーアセンブリの第一のインターフェースに潅流流体を導く。また、大動脈インターフェースまたは左心室インターフェースとも呼ばれる第一のインターフェースは、臓器チャンバーアセンブリ内部に配置された導管を介して左心室の血管組織(すなわち大動脈スタブ(stub))にカニューレ挿入される。次に心臓は、潅流流体を、臓器チャンバーアセンブリの第二のインターフェースを介して右心室を通して心臓の外へとポンピングする。第二のインターフェースはまた肺動脈インターフェースまたは右心室インターフェースと呼ばれ、臓器チャンバーアセンブリ内部に位置する導管を介して右心室の血管組織(すなわち肺動脈スタブ)にカニューレ挿入される。逆行性フローモードでは、流体は、左心房を潤すよう送達される細流状の潅流流体の形態以外の形態では、心臓の左側へと、または左側からポンピングされない。フローモード切替弁が正常フローモード位置になるのに応答して、潅流流体は、臓器チャンバーアセンブリの第三のインターフェースを介して心臓の左心房内に導かれる。第三のインターフェースはまた、肺静脈インターフェースまたは左心房インターフェースと呼ばれ、臓器チャンバーアセンブリ内部に位置する導管を介して左心房の血管組織(すなわち肺静脈スタブ)にカニューレ挿入される。次に心臓は、潅流流体を、大動脈インターフェースを介して左心室を通して、かつ肺動脈インターフェースを介して右心室を通して排出する。
両方の動作モードにおいて、肺動脈インターフェースから、潅流流体は酸素供給器に流れ込む。酸素供給器は、外部または内蔵のガス源から酸素を受け、潅流流体をレザバーに戻す前にその潅流流体にガス(すなわち酸素)を供給する。システムは、一つまたは複数の酸素飽和センサーを含み得、潅流流体が生理学的酸素レベルに維持されていることを確認するため、潅流流体の酸素飽和レベルを測定する。潅流流体が血液製剤ベースである態様においては、潅流流体が赤血球(すなわち酸素を運搬する細胞)を含有する。任意で、酸素センサーはまた、潅流流体の赤血球の濃度であるヘマトクリット測定を提供する。
正常および逆行性フローモード両方において、栄養サブシステムは、潅流流体がシステムを通過するとき、維持溶液の供給と共に潅流流体を注入し、ある態様では、その栄養サブシステムはレザバーである。一つの特徴によれば、維持溶液はグルコースなどの栄養素を含む。他の特徴によれば、維持溶液は、虚血症および/または他の再潅流に関連した心臓の損害を低減するために、治療薬および/または保存剤(例えば心臓刺激剤(cardiostimulant)、インスリン、アミノ酸など)の補給を含む。
他の実践によれば、潅流流体は、心臓の摘出中の放血の方法によるドナーから除去された血液を含む。最初に、ドナーからの血液はレザバー内に充填され、臓器チャンバーアセンブリのカニューレ挿入場所が迂回導管で迂回され、心臓なしでシステムを通した潅流流体の正常モードのフローが可能になるようにする。摘出心臓にカニューレ挿入する前に、システムは、放血されたドナー血液を、加熱、酸素添加および/またはフィルター処理するよう、システムを通して循環することによりプライミングされ得る。栄養素、保存剤、および/または他の治療薬もまた、栄養サブシステムの注入ポンプを介してプライミングの間に提供される。プライミングの間、種々のパラメータはまたプライミングの間オペレーターインターフェースを介して初期化され、較正され得る。ひとたびプライミングされ、適正に作動すると、ポンプ流は減少するかまたは循環を止めて、迂回導管が臓器チャンバーアセンブリから外され、心臓は臓器チャンバーアセンブリ内にカニューレ挿入される。次にポンプ流は、場合により、元に戻されるかまたは増やされる。一つの特徴によれば、オペレーターインターフェースは、配線接続でシステムに差し込んでもよく、または差し込まないで本発明のシステムに無線通信で使用される。
一つの特徴によれば、システムは複数のコンプライアンスチャンバーを含む。コンプライアンスチャンバーは、本質的に小型のインライン流体アキュムレーターであり、システムの支援により、人体の血管コンプライアンスを、人体のより正確な模倣血液流で、例えばフロー後方圧(flow back-pressure)を与えおよび/または、例えば流速変化による流体圧スパイクをフィルター処理/低減することによりシミュレートするための、柔軟な弾性のある壁を備える。一構成によれば、コンプライアンスチャンバーは、正常フローモード動作の間、大動脈に見られる後方圧を制御するために使用されるクランプに隣接して配置してある。
一つの実施によれば、センサーサブシステムは、心臓からの電気信号を監視する心電図(ECG)センサーを含む。一態様によれば、制御サブシステムは、潅流流体のポンピングをECG信号で心臓に同期させる。一つの特徴によれば、ECG信号はr波を含み、制御サブシステムが、流体ポンピングを心臓の拡張状態に同期させるようr波を使用する。他の特徴によれば、制御サブシステムは、ECG信号に依存してポンプ拍出量および/またはポンプ速度を調整する。例えば、一態様においては、制御サブシステムは、血流を維持するために、心拍数が増えるとポンプ拍出量を減少させる。他の態様では、システムは、不規則な心拍の検出に応答してポンプ拍出量を減少させる。両方の事例において、結果は心臓にポンピングされる流体量を減少させることになり、それは同様に心臓に損傷を引き起こす可能性を低減する。種々の態様において、センサーは、潅流流体流速および/または流圧センサーを含み、潅流流体ポンプを制御するためのフィードバックを提供する。一態様によれば、身体の正常な循環をより正確にシミュレートするため、システムのポンプは拍動性ポンプである。
本発明の一局面によれば、臓器チャンバーアセンブリは、改良された複数の特徴を含む。より詳細には、一構成において、本発明の臓器チャンバーアセンブリはハウジング、外側蓋および中間蓋を含む。ハウジングは底部分および一つまたは複数の臓器収容用壁を含む。中間蓋は、臓器をハウジング内に実質的に封入するために、ハウジングに対して開口をカバーし、枠およびその枠内に吊した柔軟なメンブレンを含む。柔軟なメンブレンは、好ましくは透明であるが、不透明、半透明または実質的に透明であってもよい。一つの特徴によれば、柔軟なメンブレンは、チャンバー内に収められた臓器に接触するよう十分過剰なメンブレン材料を含む。この特徴は、システムおよび臓器の無菌状態が依然として維持される一方で、医療オペレーターがそのメンブレンを通して臓器に間接的に触る/検査することができる。外側蓋は、中間蓋から独立して中間蓋の上を開閉する。好ましくは、外側蓋は、間接または直接の物理的接触から臓器を保護するに十分な硬さである。
一つの実施によれば、中間蓋はハウジングにヒンジ接続される。中間蓋はまた、臓器チャンバーの開口を覆い閉じた中間蓋を固定するためのラッチを含み得る。外側蓋は同様に、ヒンジ接続されラッチされ得る。一部の構成では、中間蓋枠と一つまたは複数の臓器チャンバー壁との間の流体シールを形成し、および/または外側蓋の周囲と中間蓋の枠との間に流体シールを形成するために、ガスケットが提供される。
任意で、臓器チャンバーアセンブリは、ハウジングの底部分内部に嵌合するような寸法および形状のパッドまたはサックアセンブリを含む。好ましくは、パッドアセンブリは臓器への、輸送中の機械的振動および衝撃を緩和するのに十分な弾性のある材料から形成されたパッドを含む。臓器チャンバーアセンブリが熱を受けるよう構成されている場合、一つの特徴によれば、本発明のパッドは、少なくとも一つの電極を受ける機構を含む。この機構は、制限なしに一つまたは複数のスロット、凹部、凸部、貫通開口部、部分的貫通開口部、フック、小穴、スナップ、接着パッチなどを含むことができる。一つの優位性によれば、異なる寸法および形状の心臓を収容するため、機構はパッド上またはパッド内に少なくとも一つの電極を調整可能に配置することができる。一態様によれば、パッドは、少なくとも一つの電極の導線が通ることができる貫通開口部を含む。
一態様によれば、パッドアセンブリは、臓器チャンバーアセンブリのパッドに置かれた心臓との接触を促進する方法で、パッド上またはパッド内の箇所に調整可能に配置された少なくとも一つの電極を含む。一構成によれば、少なくとも一つの電極は、パッドの表面に留まり、心臓の重さで適所に保たれる。他の構成によれば、少なくとも一つの電極は、パッドの表面に接着される。少なくとも一つの電極は、心臓からの一つまたは複数の電気信号を監視するための一つまたは複数のセンサーを含む。また、心臓に電気信号を提供するための一つまたは複数の除細動器接点を含んでいてもよい。本発明のパッド/電極構成の優位性の一つは、少なくとも一つの電極を心臓に永久的または一時的に縫合する必要がない、またはそうでなければ機械的に接続する必要がないことである。代わりに、心臓に一つまたは複数の電極を配置して電気接続が得られる。一つの構成において、少なくとも一つの電極は、一体化したセンサー、および使用者が心臓からの電気信号を監視し、臓器チャンバーアセンブリへの共通電気インターフェース接続を介して心臓に電気信号を提供することができる除細動器接点を含む。他の特徴によれば、共通電気インターフェースは、チャンバー内の少なくとも一つの電極とハウジング外部に位置した機器との間に電気信号を伝送するための臓器チャンバーアセンブリ上の一つまたは複数の電極ポートを含む。例として、ポートは、外部プロセッサーおよび/もしくはディスプレイにECG信号を提供することができ、ならびに/または電極に除細動電力を提供することができる。
任意で、臓器チャンバーのハウジングはまた、最適な心臓機能のためのハウジングの角度を曲げる台座部を含む。一つの特徴によれば、台座部は、水平に対して約30度〜約60度の角度で臓器チャンバー内に収められた心臓を維持する。
他の態様によれば、本発明の潅流流体ヒーターアセンブリは、潅流流体を加熱する小型の固体機構を提供することに関する改良された複数の特徴を含む。ヒーターアセンブリの一部の特徴は、潅流流体の血液製剤ベースの態様を加熱するよう特に適合させるものである。一態様において、本発明のヒーターアセンブリは、注入口、排出口、流路、第一および第二の流路プレートおよび第一のヒーターを含む。流路は、第一と第二の流路プレート間に形成される。注入口は、潅流流体を流路内に流し、排出口は、潅流流体をヒーターの外に流出させる。第一および第二の流路プレートは、流路を通って流れる潅流流体に直接接触させるよう、実質的に生体不活性な潅流流体接触面を有する。潅流流体接触面は、例えば、基板上の処理もしくは被覆から形成でき、または基板表面それ自体であってもよい。第一のヒーターは、第一の流路プレートを加熱するため、第一の流路プレートに熱結合(thermally couple)される。一構成によれば、第一のヒーターは、第一の流路プレートの非潅流流体接触側に位置される。更なる様態によれば、本発明のヒーターアセンブリはまた、流路をより均一な温度分布にする第二の流路プレートを加熱するため、第二の流路プレートに熱結合した第二のヒーターを含む。
一構成によれば、ヒーターアセンブリは、第一のヒーターから第一の流路プレートへの熱結合の熱のために、第一のヒーターと第一の流路プレートとの間に配置した第一のヒータープレートを含む。一つの特徴によれば、第一のヒータープレートは、ヒーターからの熱を相対的に均一に伝導し分布させる、アルミニウムなどの材料から形成される。次にヒータープレートの均一に分布した熱は、ヒーターに直接接触するよう置かれた場合に必ずしも十分に均一な熱分布である必要のないチタンなどの、生体不活性材料から形成されることが好ましい第一の流路プレートに結合される。ヒーターアセンブリはまた、第二のヒーターから第二の流路プレートへの結合熱のために、第二のヒーターと第二の流路プレートとの間に配置した第二のヒータープレートを含む。
一態様によれば、本発明の第一および/または第二のヒーターは、抵抗加熱器である。一構成においては、それぞれポリイミド基板上に形成された抵抗加熱素子を含む。更なる構成によれば、抵抗加熱素子は、約5オームの抵抗を有する。他の構成においては、加熱素子の抵抗は、約3オームから約10オームの範囲にある。
任意で、本発明のヒーターアセンブリは、一つまたは複数の温度センサーを含んでもよい。たとえば、ヒーターアセンブリは、ヒーターを出る潅流流体の温度を制御サブシステムに報告するために、その排出口に温度センサーを含むことができる。このセンサーからの信号は、ヒータープレートの温度を制御するために、第一および第二のヒーターに対し駆動信号を制御するようフィードバックループで使用することができる。更に、ヒータープレートの潅流流体接触面が、潅流流体を損傷する可能性がある温度に達しないことを確実にするために、ヒーターアセンブリは、第一および/または第二のヒーターの温度を制御サブシステムに報告する温度センサーを含んでもよい。これらセンサーからの信号はまた、ヒータープレートの最大温度を制限するため、第一および/または第二のヒーターに対する駆動信号を更に制御するフィードバックループに使用され得る。本態様の変形によれば、ヒーターアセンブリは、第一および/または第二のヒーターの温度を制御サブシステムに報告する温度センサーを含むことができる。
第一および/または第二のヒーターと、それらのそれぞれのヒータープレートとの間の、および同様に、第一および/または第二のヒータープレートと、それらのそれぞれの流路プレートとの間の接触を改善するために、ヒーターアセンブリはまた、圧縮力に応答して、第一のヒーターを第一のヒータープレートに、および第二のヒーターを第二のヒータープレートに接触して維持するための、それぞれのヒーターに配置した第一および第二の弾性パッドを含むことができる。圧縮力は、例えば、一つまたは複数のヒーターアセンブリのハウジング部品を手段として提供される。一つの特徴によれば、ヒーターアセンブリは、ポリカーボネートで形成されるハウジング部品を含み、重さは約5lb未満であり、一方他の様態では、ヒーターアセンブリは、重さが約4lb未満、約3lb未満、約2lb未満、または約1lb未満である場合もある。別の特徴によれば、ヒーターアセンブリは、注入口ならびに排出口ポートおよび温度センサーアセンブリをすべて除いて、約6.75インチの長さ、約2.75インチの幅、および約2.5インチの厚さである。他の特徴では、ヒーターアセンブリは、単回使用使い捨てアセンブリである。
一態様によれば、動作時、ヒーターアセンブリは、約1ワット〜約200ワットの電力を使用する。さらなる態様によれば、本発明のヒーターアセンブリは、流路を通過して流れる約2.5リットルの潅流流体が、約300mL/分〜約5L/分の速度、約30℃未満から約37℃までの温度で、約25分未満、約20分未満、約15分未満、または約10分未満でさえも、赤血球に実質的な溶血を起こさず、または潅流流体に含有され得るいかなるタンパク質も変性させずに、移送される寸法および形状である。
さらなる態様によれば、本発明の電力サブシステムは、フォールトトレラント電池配列を提供する。より詳細には、複数の電池は、臓器を維持するようシステムが動作している間、任意の特定時間で電池すべてがシステムから除去されないようインターロックされる。一つの特徴によれば、電力サブシステムは、外部電力と内蔵電池バックアップとの間をシステム動作を妨害しないで切替えることができる。別の特徴によれば、電力サブシステムは、システムへの電力投入、電池の充電、および無線オペレーターインターフェースの内蔵電池の充電の間、自動的に外部からの供給電力を割り当てる。
別の局面によれば、本発明は、種々のサブシステムおよび携帯型臓器ケアシステムの構成機器を二つのモジュールに区分けする;すなわち、携帯型複数回使用モジュールおよび単回使用使い捨てモジュールである。一つの区分けによれば、本発明のシステムは一般に、潅流流体接触(およびしたがって、血液製剤潅流流体を使用する態様の血液製剤に接触する)部品を使い捨てモジュールに指定し、非潅流流体接触(およびしたがって、非血液製剤に接触する)部品を複数回使用モジュールに指定する。しかしながら、使い捨てユニットはまた、非血液接触部品を含み得る。一つの特徴によれば、潅流流体接触部品は、ヘパリンまたは他の凝結防止剤または生体適合性材料で被覆することができ、またはそれらを接着させることができ、潅流流体が部品の表面に接触するときに、そうしないと起こり得る炎症反応を低減するようにする。ヘパリンはまた、システム内で循環する維持溶液に添加され得る。
一態様によれば、携帯型複数回使用モジュールは、携帯型シャーシ上に組み立てられた携帯型ハウジングを含み、単回使用使い捨てモジュールは、使い捨てシャーシを含む。一構成においては、重量を減らすため、単回使用モジュールシャーシは、ポリカーボネートなどの成形プラスチックから形成され、複数回使用モジュールシャーシは、ポリカーボネートまたは炭素繊維複合材などの成形プラスチックから形成される。一つの特徴によれば、部品無装填の単回使用シャーシは、約12ポンド未満の重さで、部品装填単回使用モジュールは、約18ポンド未満の重さである。他の特徴によれば、部品無装填の複数回使用ハウジングおよびシャーシは、約50ポンド未満の重さで、複数回使用モジュール、電池、ガス、維持溶液、潅流流体および心臓を装填したときは、約85ポンド以下の重さである。他の優位性によれば、いかなる潅流、栄養素、保存剤または他の流体、電池および酸素供給器も除いた、単回および複数回使用モジュールを含む本発明のシステムは、約65ポンド未満の重さである。
単回使用使い捨てシャーシは、電気的に、機械的に、ガスおよび流体で、複数回使用モジュールと相互動作するため、携帯型複数回使用モジュールのシャーシにインターロックする寸法および形状である。一つの特徴によれば、複数回および単回使用モジュールは、光インターフェースを介して互いに通信し、そのインターフェースは、携帯型複数回使用モジュール内に設置されている単回使用使い捨てモジュール上に、自動的に光学的に整列した状態になる。別の特徴によれば、携帯型複数回使用モジュールは、バネ荷重式接続を介して単回使用使い捨てモジュールに電力を供給し、その接続は、携帯型複数回使用モジュール内に設置されている単回使用使い捨てモジュール上に、自動的に接続する。一つの特徴によれば、光インターフェースおよびバネ荷重式接続は、単回モジュールと複数回モジュールとの間の接続が、例えば、起伏の多い領域を移送中にぶつかり合いによって、断たれることがないように確実にする。
種々の態様において、臓器チャンバーアセンブリおよびポンプインターフェースアセンブリは、両方とも使い捨てシャーシに装着される。ポンプインターフェースアセンブリは、潅流流体ポンプのポンプ駆動体からポンプ力を受け、次にインターフェースアセンブリは、そのポンプ力を潅流流体に移して潅流流体を臓器チャンバーアセンブリに循環させるよう配列される。一態様によれば、潅流流体ポンプは拍動性ポンプであり、ポンプインターフェースアセンブリは、ハウジング、第一の変形可能メンブレン、流体注入口、および流体排出口を含む。ポンプインターフェースアセンブリのハウジングは、内側および外側を含む。第一の変形可能メンブレンは、第一の変形可能メンブレンの内側とハウジングの内側との間のチャンバーを形成するよう、ハウジング内側を密接な流体相互接続で装着する。流体注入口は、潅流流体を、例えばレザバーから受け取り、ハウジングの内側から離れる方向に動くポンプ駆動体に応答して、その流体をチャンバーの中に提供し、このようにして同じ方向に第一の変形可能メンブレンを変形させる。排出口は、ハウジングの内側に向かう方向に動くポンプ駆動体に応答して、チャンバーから、例えばヒーターアセンブリへ潅流流体を排出する。
一構成によれば、ポンプインターフェースアセンブリは、変形可能メンブレンの内側周囲とハウジングの内側周囲との間に流体密閉を形成するよう、第一の変形可能メンブレンの周囲を覆って嵌合するためのブラケットを含む。さらなる構成によれば、ポンプインターフェースアセンブリは、潅流流体ポンプ駆動体とポンプインターフェースハウジングとの間を流体気密にするためのガスケットを含む。
一つの実施によれば、システムはまた、流体注入口への入力に配置された流体弁を含む。流体弁は、ハウジングの内側から離れる方向に動くポンプ駆動体に応答して開く方向に配向し、両方向流体注入口を通して潅流流体をチャンバー内に流し、かつハウジングの内側に向かう方向に動くポンプ駆動体に応答して閉じる方向に配向し、流体注入口を通してチャンバーから戻る潅流流体を止める、ボール弁アセンブリを含む。さらなる実施において、流体排出口はまた、ハウジングの内側から離れる方向に動くポンプ駆動体に応答して閉じる方向に配向し、かつハウジングの内側に向かう方向に動くポンプ駆動体に応答して、流体排出口を通して臓器潅流流体を排出するよう開ける方向に配向する、ボール弁アセンブリを含む。
任意で、潅流流体ポンプは、携帯型複数回使用シャーシに堅く装着され、ポンプインターフェースアセンブリは、使い捨て単回使用シャーシに堅く装着され、システムは、携帯型複数回使用モジュールと嵌合される単回使用使い捨てモジュールに応答して流体ポンプ駆動体とポンプインターフェースアセンブリとの間に流体気密を自動的に形成するための特徴を含む。より詳細には、ポンプインターフェースアセンブリは、ポンプインターフェースアセンブリハウジングの内側を潅流ポンプのポンプ駆動体に向かう方向に、力を与える/引くため、携帯型複数回使用モジュールの一面または複数面に係合し、当接(abut)する形状および寸法にされたインターフェースアセンブリハウジングの外側の一つまたは複数の突出部を含んでもよい。
一つの特徴によれば、ポンプインターフェースアセンブリは、第一の変形可能メンブレンが裂けた場合、フォールトトレラントを密閉するため、第一の変形可能メンブレンに近接して装着された第二の変形可能メンブレンを含む。別の特徴によれば、ポンプインターフェースアセンブリは、単回使用使い捨てモジュールの重量を減らすため、ポリカーボネートまたは他の成形プラスチック材料から少なくとも一部形成される。
一つの態様において、潅流流体レザバーは、単回使用使い捨てシャーシに装着され、臓器チャンバーと流体連通する。さらなる態様によれば、フローモード切替弁は、使い捨てシャーシに装着される。他の様態においては、本発明の固体潅流ヒーターは、使い捨てシャーシに装着される。酸素供給器は、好ましくは複数回使用モジュールに備えられるが、特定の態様においては、あるいは使い捨てモジュールの部分であってもよい。酸素供給器に送り込む酸素源は、複数回使用携帯型シャーシに含まれるか、複数回使用モジュールの部分であるか、またはシステムの外部であってもよい。
一構成においては、ヒーターアセンブリ、酸素供給器および/または潅流流体ポンプに取り付けた種々のセンサーは、使い捨て単回使用モジュールに含まれる。しかしながら、例えば非潅流流体接触センサーに関しては必要であるとは限らない。一態様によれば、単回使用使い捨てモジュールは、酸素と、潅流流体が通過するセンサー含有インラインキュベットと、キュベットを通過する潅流流体へと光を向かわせるための光源と、キュベットを通過する潅流流体の光学的品質を測定するための光学センサーとを使用する。好ましくは、インラインキュベットは、潅流流体の乱流を減らすため、および一つまたは複数の正確な測定を提供するため、潅流流体導管に継ぎ目なく、または実質的に継ぎ目なく取り付けられる。継ぎ目のないまたは実質的に継ぎ目のない構造はまた、潅流流体の任意の血液ベース成分に対するダメージを低減する。
さらなる構成によれば、使い捨て単回使用モジュールは、例えば、潅流流体ポンプの排出口に、および臓器チャンバーとモード切替弁との間のモード切替弁の両側に配置した、上述の複数のインラインコンプライアンスチャンバーを含む。さらなる態様においては、使い捨て単回使用モジュールは、臓器チャンバーアセンブリから流体をサンプリングするための複数のポートを含む。一つの特徴によれば、ポートは、複数のポートの第一のポートからの流体のサンプリングが同時に、複数のポートの第二のポートからの流体のサンプリングを妨げるように、インターロックされる。この安全特徴により、流体サンプルの混合および不注意にポートを開けてしまう可能性を低減する。一態様において、臓器チャンバーアセンブリは、一つまたは複数の肺動脈、大動脈、および左心房インターフェースに相互接続する流体用ポートを含む。
別の局面においては、本発明は心臓をエクスビボにおいて保存する方法に関する。本方法は、携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバーに心臓を収める工程、心臓へと潅流流体をポンピングする工程であって、該潅流流体が、約25℃〜約37℃の温度、および約200mL/分〜約5L/分の容量の状態にある、工程、心臓が保護チャンバー内で拍動している間、心臓の一つまたは複数の生理学的特性を監視する工程、ならびに心臓をエクスビボにおいて保存するために、電気的特性に少なくとも一部基づいてポンピング特性を調整する工程を含む。
別の態様によれば、本発明は心臓をエクスビボにおいて保存する方法に関し、この方法は、携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバー内の一つまたは複数の電極上に心臓を配置する工程、心臓へと潅流流体をポンピングする工程であって、該潅流流体が、約25℃〜約37℃の温度、および約200mL/分〜約5L/分の容量の状態にある、工程、ならびに潅流流体をポンピングする間、心臓をエクスビボにおいて保存するために、電極からの電気信号を監視する工程を含む。
さらなる局面において、本発明は心臓をエクスビボにおいて移植する方法に関し、この方法は、携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバーに移植心臓を収める工程、心臓の大動脈を経由して心臓へと潅流流体をポンピングする工程、心臓の右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、および携帯型臓器ケアシステム内の心臓を、潅流流体を大動脈経由で心臓へとポンピングし、かつ右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供しながら、ドナーサイトからレシピエントサイトに輸送する工程を含む。
追加の局面によれば、本発明は移植心臓を評価する方法に関し、この方法は、携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバーに心臓を収める工程、心臓の左心室を経由して心臓へと潅流流体をポンピングする工程、心臓の右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、左心室を経由して心臓へと潅流流体をポンピングし、かつ右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供しながら、ドナーサイトからレシピエントサイトへと携帯型臓器ケアシステムを介して心臓を輸送する工程;心臓をレシピエントに移植する前に、潅流流体が心臓の左心房を経由して心臓内にポンピングされかつ心臓の右心室および左心室を経由して心臓から流れ出るように、潅流流体の流れを変化させるため、保護チャンバーの外部のフロー制御を動作させる工程;ならびに心臓の評価を実施する工程を含む。特定の態様においては、この評価は、潅流流体がポンピングされている間に心臓のHLA試験を実施することを含む。
別の局面においては、本発明は心臓への治療を提供する方法に関する。この方法は、携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバーに心臓を収める工程、心臓の左心室を経由して心臓内に潅流流体をポンピングする工程、心臓の右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、潅流流体が心臓の左心房を経由して心臓内にポンピングされかつ心臓の右心室および左心室を経由して心臓から流れ出るように、潅流流体の流れを変化させるため、保護チャンバーの外部のフロー制御を動作させる工程、ならびに心臓に治療処置を施す工程を含む。この処置は、例えば、心臓に対する一つまたは複数の免疫抑制処置、化学療法、遺伝子治療および放射線照射治療を施す工程を含み得る。
別の局面によれば、本発明は心臓を移植する方法に関する。この方法は、ドナーの心臓を停止させる工程、ドナーから心臓を外植する工程、心臓を臓器ケアシステムに移す工程、および(心臓の外植冷却虚血時間を低減するように)ドナーから心臓を外植した後30分未満で、心臓に、約32℃〜約37℃の温度の潅流流体をポンピングする工程を含む。特定の態様においては、心臓を臓器ケアシステムに移した後、10分未満で約35℃〜約37℃の温度に至らせる。
本発明のこれらおよび他の特徴と優位性は、本発明の図示の態様に関して以下で更に詳細に説明される。
[本発明1001]
シャーシと、
該シャーシに装着された、潅流中に心臓を収容するための臓器チャンバーアセンブリと、
心臓の大動脈に接続するための第一のインターフェースおよび心臓の肺静脈に接続するための第二のインターフェースを有する、流体導管と、
心臓の大動脈に接続された流体導管中のラクテートを検出するためのラクテートAセンサーと、
心臓の肺静脈に接続された流体導管中のラクテートを検出するためのラクテートVセンサーと
を含む、モジュール
を含む、心臓に潅流を行うための臓器ケアシステムであって、
ラクテートのV-A差が、ラクテートAセンサーおよびラクテートVセンサーによって検出されたラクテート値を用いて算出される、
臓器ケアシステム。
[本発明1002]
臓器チャンバーアセンブリが使い捨てである、本発明1001のシステム。
[本発明1003]
V-A差が、1時間に少なくとも1回算出される、本発明1001のシステム。
[本発明1004]
第一のインターフェースに潅流流体を流すことと、第二のインターフェースに潅流流体を流すことのどちらかを選択するためのフロー切替弁を含む、本発明1001のシステム。
[本発明1005]
使い捨て単回使用モジュールが、
該使い捨て単回使用モジュールのシャーシに装着されて、臓器チャンバーアセンブリと流体連通し、かつ心臓用潅流流体の収容のための寸法および形状となっている、レザバー
を含む、本発明1001のシステム。
[本発明1006]
大動脈圧を測定するためのセンサーを更に含む、本発明1001の臓器ケアシステム。
[本発明1007]
臓器ケアシステムの保護チャンバー内に心臓を収める工程、
心臓に流体を潅流させるために、心臓を潅流流体回路に接続する工程、および
心臓へと潅流流体をポンピングする工程、および
心臓の状態を査定するために、心臓内のラクテートを監視する工程
を含む、心臓をエクスビボにおいて保存する方法。
[本発明1008]
心臓内のラクテートを監視する工程が、動脈導管中の潅流流体のラクテート値を監視することと、静脈導管中の潅流流体のラクテート値を監視することとを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
V-Aラクテート差の値が、静脈導管中の潅流流体のラクテート値および動脈導管中の潅流流体のラクテート値を用いて算出される、本発明1008の方法。
[本発明1010]
ラクテート値が、一定の間隔をおいて監視される、本発明1008の方法。
[本発明1011]
一定の間隔が約60分以下である、本発明1010の方法。
[本発明1012]
ラクテート値が監視される時間の合計の長さが、1時間より長い、本発明1010の方法。
[本発明1013]
大動脈に接続された導管の潅流圧を測定する工程を更に含む、本発明1007の方法。
[本発明1014]
潅流圧およびラクテート値の両方を用いて、心臓の冠血管開存性を評価する工程を更に含む、本発明1013の方法。
[本発明1015]
ラクテート値を監視する工程が、動脈導管中の潅流流体のラクテート値を監視することと、静脈導管中の潅流流体のラクテート値を監視することとを含み、V-Aラクテート差の値が、静脈導管中の潅流流体のラクテート値および動脈導管中の潅流流体のラクテート値を用いて算出される、本発明1014の方法。
[本発明1016]
携帯型臓器ケアシステムの保護チャンバー内に心臓を収める工程、
心臓が保護チャンバー内にある間、心臓に潅流流体を提供する工程、
心臓を含む導管回路に潅流流体を流す工程、および
心臓の状態を査定するために、流体導管中のラクテートを測定する工程
を含む、心臓をエクスビボにおいて保存する方法。
[本発明1017]
ラクテート値を測定する工程が、動脈導管中の潅流流体のラクテート値を測定することと、静脈導管中の潅流流体のラクテート値を測定することとを含む、本発明1016の方法。
[本発明1018]
V-Aラクテート差の値が、静脈導管中の潅流流体のラクテート値および動脈導管中の潅流流体のラクテート値を用いて算出される、本発明1017の方法。
[本発明1019]
ラクテート値が、一定の間隔をおいて測定される、本発明1017の方法。
[本発明1020]
一定の間隔が約60分未満である、本発明1019の方法。
[本発明1021]
ラクテート値が測定される時間の合計の長さが、1時間より長い、本発明1019の方法。
[本発明1022]
導管回路が、動脈に接続された部分を含む、方法であって、該動脈に接続された導管の潅流圧を測定する工程を更に含む、本発明1016の方法。
[本発明1023]
潅流圧およびラクテート値の両方を用いて、心臓の冠血管開存性を評価する工程を更に含む、本発明1022の方法。
[本発明1024]
臓器ケアシステムの保護チャンバーに心臓を収める工程、
心臓の大動脈の逆行性潅流によって心臓へと潅流流体をポンピングする工程、
心臓の右心室を経由して心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、および
心臓の大動脈に至る流体のラクテート値を測定する工程、
心臓の右心室から出る流体のラクテート値を測定する工程、および
測定したラクテート値を用いて、心臓の状態を評価する工程
を含む、心臓潅流状態を評価するための方法。
[本発明1025]
心臓から出る潅流流体のラクテート値から、心臓の大動脈に至る潅流流体のラクテート値を差し引いて、V-Aラクテート差を決定する工程を更に含む、本発明1024の方法。
[本発明1026]
V-Aラクテート差が、心臓潅流の経過中に複数回決定される、本発明1025の方法。
[本発明1027]
心臓の大動脈に至る流体の圧力を測定する工程を更に含む、本発明1026の方法。
[本発明1028]
臓器ケアシステムの保護チャンバーに心臓を収める工程、
心臓へと潅流流体をポンピングする工程、
心臓から出る潅流流体の流れを提供する工程、および
心臓に至る流体のラクテート値を測定する工程、
心臓から出る流体のラクテート値を測定する工程、および
測定したラクテート値を用いて、心臓の状態を評価する工程
を含む、心臓潅流状態を評価するための方法。
[本発明1029]
心臓から出る流体のラクテート値から、心臓に至る流体のラクテート値を差し引いて、V-Aラクテート差を決定する工程を更に含む、本発明1028の方法。
[本発明1030]
V-Aラクテート差が、心臓潅流の経過中に複数回測定される、本発明1029の方法。
[本発明1031]
心臓に至る流体の圧力を測定する工程、および心臓に至る流体の圧力を、測定したラクテート値とともに用いて、心臓の状態を評価する工程を更に含む、本発明1028の方法。
以下の図は、本発明の図示態様を示し、同じ符号は同じ要素を指す。これら示された態様は、一定の縮尺で描かれていない場合があり、本発明の図示として理解されるべきものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、代わりに添付の特許請求の範囲で規定される。
本発明の図示態様による携帯型臓器ケアシステムの概略図である。 摘出心臓を示した略図である。 本発明の図示態様による正常フローモード構成における図1の臓器ケアシステムに相互接続された、図2の摘出心臓を示す概念的略図である。 本発明の図示態様による逆行性フローモード構成における図1の臓器ケアシステムに相互接続された、図2の摘出心臓を示す概念図である。 図5Aは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図5Bは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図5Cは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図5Dは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図5Eは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図5Fは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの臓器チャンバーアセンブリの種々の図を示す。 図6Aは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Bは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Cは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Dは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Eは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Fは、本発明の図示態様による図1の臓器ケアシステムに使用されるタイプの潅流ヒーターアセンブリの種々の図を示す。 図6Aから6Fのヒーターアセンブリに使用されるタイプの例示的な抵抗加熱素子のより詳細な図を示す。 図8Aは、本発明の図示態様による潅流流体ポンプインターフェースアセンブリの種々の図を示す。 図8Bは、本発明の図示態様による潅流流体ポンプインターフェースアセンブリの種々の図を示す。 図8Cは、本発明の図示態様による潅流流体ポンプインターフェースアセンブリの種々の図を示す。 図1に示すタイプの潅流流体ポンプアセンブリのポンプ駆動側の斜視図を、潅流流体ポンプインターフェースアセンブリと共に監視するためのブラケットと共に示す。 図9の潅流流体ポンプアセンブリのポンプ駆動側に結合された図8Aから8Cの潅流流体ポンプインターフェースアセンブリの側面図を示す。 図1の臓器ケアシステムの動作を制御する図示的な制御概要のブロック図を示す。 図1の図解の臓器ケアシステムに使用できるタイプの例示的なデータ取得サブシステムのブロック図である。 図1の図解の臓器ケアシステムの潅流流体温度の維持に使用できるタイプの例示的な加熱制御サブシステムのブロック図である。 図1の図解の臓器ケアシステムで使用できるタイプの例示的な電力管理サブシステムのブロック図である。 図1の図解の臓器ケアシステムの潅流流体ポンプアセンブリの動作の制御に使用できるタイプの例示的なポンピング制御サブシステムのブロック図である。 本発明の図示態様によるr波を示す図であり、図15のポンピング制御サブシステムは、それを用いて同期する。 図17Aは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Bは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Cは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Dは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Eは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Fは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Gは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Hは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Iは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図17Jは、本発明の図示態様によるオペレーターインターフェースで使用できるタイプの例示的な表示画面を示す。 図18Aは、本発明の図示態様による図1のシステムの例示的な実施を示す。 図18Bは、本発明の図示態様による図1のシステムの例示的な実施を示す。 図19Aは、本発明の図示態様による、その上部を外して前面パネルを開いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図19Bは、本発明の図示態様による、その上部を外して前面パネルを開いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図19Cは、本発明の図示態様による、その上部を外して前面パネルを開いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図20Aは、本発明の図示態様による、上部を取り除き、前面パネルを開いて単回使用使い捨てモジュールを取り除いた、図18Aおよび18Bのシステムの前面斜視図である。 図20Bは、単回使用使い捨てモジュールの対応する突出部に係合するための図20Aの複数回使用モジュールのベイスン(basin)内に形成されるスロットの側面図である。 図21Aは、図20Aの複数回使用モジュール内部の単回使用使い捨てモジュールを収容し、所定の位置にロックするための装着ブラケットを示す。 図21Bは、本発明の図示態様による、図21Aの装着ブラケットを用いた、複数回使用モジュール内への単回使用使い捨てモジュールの取り付けを示す。 図21Cは、本発明の図示態様による、図21Aの装着ブラケットを用いた、複数回使用モジュール内への単回使用使い捨てモジュールの取り付けを示す。 図22Aは、図21Bおよび21Cを取り付けている間、単回使用使い捨てモジュールと複数回使用モジュールとの間の、電気光学相互接続を自動的に行う例示的な機構を示す。 図22Bは、図21Bおよび21Cを取り付けている間、単回使用使い捨てモジュールと複数回使用モジュールとの間の、電気光学相互接続を自動的に行う例示的な機構を示す。 図22Cは、図21Bおよび21Cを取り付けている間、単回使用使い捨てモジュールと複数回使用モジュールとの間の、電気光学相互接続を自動的に行う例示的な機構を示す。 図23Aは、本発明の図示態様による外側壁をすべて取り除いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図23Bは、本発明の図示態様による外側壁をすべて取り除いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図23Cは、本発明の図示態様による外側壁をすべて取り除いた図18Aおよび18Bのシステムの種々の図を示す。 図23Dは、本発明の図示態様による図23Aから23Cの回路基板間の相互接続を示す概念図である。 図24Aは、本発明の図示態様による単回使用使い捨てモジュールの種々の上部斜視図を示す。 図24Bは、本発明の図示態様による単回使用使い捨てモジュールの種々の上部斜視図を示す。 図24Cは、本発明の図示態様による単回使用使い捨てモジュールの種々の上部斜視図を示す。 図24Dは、本発明の図示態様による単回使用使い捨てモジュールの種々の上部斜視図を示す。 図24Eは、本発明の図示態様による単回使用使い捨てモジュールの種々の上部斜視図を示す。 図25Aは、図24Aから24Dの図示の単回使用使い捨てモジュールの種々の底部分斜視図を示す。 図25Bは、図24Aから24Dの図示の単回使用使い捨てモジュールの種々の底部分斜視図を示す。 図25Cは、図24Aから24Dの図示の単回使用使い捨てモジュールの種々の底部分斜視図を示す。 図26Aは、本発明の図示態様によるフローモード切替弁の動作を示す。 図26Bは、本発明の図示態様によるフローモード切替弁の動作を示す。 図27Aは、図示の臓器チャンバーの上部を外した図19Aから19Cの単回使用使い捨てモジュールの種々の上面図を示す。 図27Bは、図示の臓器チャンバーの上部を外した図19Aから19Cの単回使用使い捨てモジュールの種々の上面図を示す。 図28Aから28Cは、図19Aから19Cの図示の単回使用使い捨てモジュールに使用されるタイプの例示的なヘマトクリットおよび酸素飽和センサーの種々の図を示す。 図29Aは、本発明の図示態様による、ドナーから臓器を取り出し、図1の臓器ケアシステム内に臓器を収めるドナー側の処置を示すフロー図である。 図29Bは、本発明の図示態様による縫合およびカニューレ挿入部位を持つ摘出心臓を示す。 本発明の図示態様による、図1の臓器ケアシステムから臓器を取り出し、レシピエントへ臓器を移植するための、レシピエント側の処置を示すフロー図である。 本発明の態様による順行性モードの潅流の下での臓器の電解液安定性を明示する図を示す。 本発明のもう一つの態様による逆行性モードの潅流の下での臓器の電解液安定性を明示する図を示す。 本発明の態様による潅流の下での臓器の動脈血液ガスのプロファイルを明示する図を示す。 移植臓器の適切な潅流を明示する図を示す。 移植臓器の不適切な潅流を明示する図を示す。
例示的な説明
概要で上述したように、本発明は一般に、エクスビボ臓器ケアに対し改良された手法を提供する。より詳細には、種々の態様において、本発明は臓器のエクスビボ携帯環境での維持に関する改良されたシステム、方法、および装置に関する。一つの改良によれば、本発明の臓器保存システムは、正常な生理学的状態でまたはそれに近い状態で心拍を維持する。このために、システムは、酸素を添加した栄養素豊富な潅流流体を、生理学温度、圧力および流速で心臓に循環させる。一つの実施によればシステムは、正常な生理学的状態をより正確に模倣する潅流流体溶液を使用する。一態様によれば、潅流流体は血液製剤ベースである。他の態様によれば、溶液は血液代用製剤との組み合わせで血液製剤を含有してもよい。
種々の図示態様によれば、本発明の改良は、例えば3、4、5、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24時間以上の長時間、臓器、例えば心臓をエクスビボにおいて維持できるようにする。そのようなエクスビボでの維持時間の延長は、ドナー臓器に対し、可能性のあるレシピエントのプールを拡大し、ドナーとレシピエントとの間の地理的距離をそれほど重要でないようにする。本発明のエクスビボ維持時間の延長はまた、ドナー臓器と臓器レシピエントとの間の遺伝子およびHLAのより良い適合に必要な時間を提供し、好ましい結果の可能性が高まる。生理学的機能条件に近い条件で臓器を維持する能力はまた、臨床医が臓器のエクスビボでの機能を評価することを可能にし、更に移植の成功可能性を高める。幾つかの例では、維持時間の延長により、医療オペレーターがドナー臓器を軽欠陥のうちに修復することができる。もう一つの優位性によれば、本発明のエクスビボでの臓器維持時間の延長により、臓器を患者から取り出し、分離したエクスビボにおいて処置し、それから患者の体内に臓器を戻すことができる。このような処置は限定されることなく、外科処置、化学療法、生物学的療法、遺伝子治療および/または放射線治療を含み得る。
本発明の例示的なシステム、方法および装置を、次の順序で以下に説明する。先ず例示的な臓器ケアシステム100の部品を説明する。次に、システム100の例示的な動作を述べる。第三に、システム100の部品のサブセットを更に詳細に説明する。第四に、システム100の例示的な制御システムおよび方法を述べる。第五に、例示的なユーザーインターフェースを説明する。第六に、システム100の機械的特徴を、例示的な実施に関して更に詳細に述べる。第七に、臓器摘出、輸送、および移植処置中のシステム100を使用する例示的な方法を説明する。八番目に、システム100と共に用いるのに適した潅流、栄養溶液および保存溶液を提示する。
図示の態様を参照して、図1は本発明の図示態様による携帯型臓器ケアシステム100の概念図を示す。図2は、本発明の臓器ケアシステム100によりエクスビボにおいて保存/維持され得る心臓102の概念図を示す。図1および2を参照して、例示的なシステム100は、エクスビボ維持中、心臓102を収めるための臓器チャンバーアセンブリ104、潅流流体108を充填し、泡を取り除き、フィルター処理するためのレザバー160、潅流流体108をレザバー160の中に充填するためのポータル774およびレザバー160に含有される流体108に治療薬を加えるためのポータル762、摘出心臓102に、および心臓102から、潅流流体108をポンピング/循環するための潅流流体ポンプ106;生理学的温度でまたはそれに近い温度で潅流流体108の温度を維持するためのヒーターアセンブリ110;正常フローモードと逆行性の大動脈フローモード(これはまた「正常フローモード」および「逆行性フローモード」とそれぞれ呼ばれる)とを切替えるためのフローモード切替弁112;心臓102により排出された後の潅流流体108に再び酸素を添加するための酸素供給器114;心臓102で代謝されたときに潅流流体108に栄養素116を補給するための、および心臓102に対する例えば虚血症および/または他の再潅流関連障害を減少させるよう潅流流体に追加の保存剤118を提供するための栄養サブシステム115とを含む。例示的なシステム100はまた、限定されないが、温度センサー120、122、および124;圧力センサー126、128、130、および132;潅流速度センサー134、136、および138;潅流流体酸素化センサー140の、複数のセンサーと、センサー電極142および144と、除細動源143とを含む。システム100は更に、心臓102へのおよび心臓102からの流れを適切なフロー条件に維持するために使用される種々の部品;システム100の動作および心臓102の条件を監視してオペレーターを支援し、オペレーターが種々の動作パラメータを選択できるオペレーターインターフェース146;システム100にフォールトトレラント電力を供給する電力サブシステム148;ならびに臓器ケアシステム100の動作を制御するコントローラー150を含む。
図示態様による図3および4を参照して、システム100は、図3に示す正常フローモード、および図4に示す逆行性フローモードの二つの動作モードで、心臓102を維持することができる。一般に、図3の正常フローモードでは、システム100は、血液が人体を循環するのと同じように、心臓102に潅流流体108を循環させる。より詳細には、図1から3を参照して、潅流流体は、肺静脈168を経由して心臓102の左心房152に入る。潅流流体108は、肺動脈164を経由して右心室154から、および大動脈158を経由して左心室156から流出する。正常フローモードでは、システム100は潅流流体を、約1L/分〜約5L/分の生理学的速度に近い速度で心臓102にポンピングする。このモードは、例えば、ドナーの場所への輸送の前後で、心臓102に欠陥がないことを検証する機能検査を行うのに有用である。
あるいは図4に示す逆行性フローモードでは、システム100は、潅流流体108を、大動脈158を経由して心臓102へと、冠状静脈洞155および心臓の他の冠状血管系を通して流し、かつ肺動脈164を経由して心臓102の右心室154の外に流出させる。図24Aおよび24Bに関して以下に詳細に説明するように、システム100はまた、細流弁768を通して左心房152に細流769を提供する。細流は、左心房152および右心室156を潤すのに十分な量で提供される。一部の応用では、細流は約5mL/分未満、約1mL/分未満、または約0.1mL/分未満である。この動作モードでは、システム100は、潅流流体108の流速を、約300mL/分〜約1L/分に減速する。本発明者らは、図4の逆行性流路が、減速した流速と同様に、エクスビボ維持の延長時間の間、心臓102に対する損傷を低減することを見出している。このように、本発明の一つの特徴によれば、心臓102は逆行性フローモードでドナーサイトに輸送される。
正常および逆行性フローモードを簡単に説明したが、次に更に詳細にシステム100を動作的に説明する。図1から4を再度参照し、一つの実践では、心臓102はドナーから摘出され、臓器チャンバーアセンブリ104の中にカニューレ挿入される。潅流流体108は、ポータル774を介して、および任意でポータル762を介して治療薬を処理され、レザバー160内に充填されることによって、システム100内部での使用準備が整う。ポンプ106は、充填した潅流流体108をレザバー160からヒーターアセンブリ110にポンピングする。ヒーターアセンブリ110は、潅流流体108を、正常な生理学的温度でまたはそれに近い温度に加熱する。一態様によれば、ヒーターアセンブリ110は、潅流流体を約32℃〜約37℃に加熱する。ヒーターアセンブリ110は、流体流の乱れを最小にするように、潅流流体108をヒーターアセンブリ110へと、および/またはヒーターアセンブリ110から移送する流体導管の内側断面領域にほぼ等しい、断面フロー領域を持つ内部流路を有する。ヒーターアセンブリ110から、潅流流体108は、フローモード切替弁112に流れる。
最初に、フローモード切替弁112は、潅流流体108を、第一のインターフェース162を介してヒーターアセンブリ110から臓器チャンバーアセンブリ104の中に導くため、逆行性モードに配置される。また、大動脈インターフェースまたは左心室インターフェースとも呼ばれるインターフェース162は、臓器チャンバーアセンブリ104(図5Aから5Bに示す)に配置した開口部228bを介した左心室の血管組織に対するカニューレ挿入を含む。心臓102は温まると拍動し始め、それによって心臓102は、潅流流体108をポンピングし、冠状血管系155を通し、第二のインターフェース166を介して右心室154を通して心臓102の外に流出させる。第二のインターフェース166は、肺動脈インターフェースまたは右心室インターフェースとも呼ばれるが、臓器チャンバーアセンブリ104(図5Aから5Bに示す)に配置した開口部228cを介した右心室の血管組織に対するカニューレ挿入を含む。上述のとおり、逆行性フローモードでは、流体は、図24Aから24Eを参照して以下に説明するように、左心房152および左心室156を潤すために送達される潅流流体の相対的な細流769を除いて、心臓の左側に積極的にポンピングまたは流出されることはない。
フローモード切替弁112が正常モード位置に配置されるのに応じて、切替弁は第三のインターフェース170を介して潅流流体108を心臓102の左心房152内に導く。第三のインターフェース170は、肺静脈インターフェースまたは左心房インターフェースとも呼ばれるが、臓器チャンバーアセンブリ104(図5Aから5Bに示す)に配置した開口部228aを介した左心房152の血管組織に対するカニューレ挿入を含む。次に心臓102は、大動脈インターフェース162を介して左心室156を通し、肺動脈インターフェース166を介して右心室154を通して潅流流体108を排出する。
インターフェース162、166および170のそれぞれは、インターフェース端を覆う血管組織(例えば大動脈スタブ)を引き寄せることによって心臓102にカニューレ挿入することができ、次に組織をインターフェースに結ぶか、または固定する。血管組織は、好ましくは短い血管セグメント(例えば大動脈スタブ158)であり、心臓102がドナーから切断され、外植された後、心臓102に接続されて残る。例えば、大動脈インターフェース162は、冠状静脈洞155から下流の位置にある大動脈158を切断することによって形成された切断大動脈158の小セグメントにカニューレ挿入される。一部の応用では、短い血管セグメントは、約5から10インチ以上の長さであってもよい。セグメントはまた、約5インチより短くてもよい。セグメントは約2から約4インチの長さ、または約1から約2インチの長さであってよく;他の応用では、セグメントは約1/2未満または約1/4インチ未満でもよい。
あるいは、カニューレ挿入は、心臓102に接続した血管の任意のスタブ部分を残さずに、血管全体を切断することによって心臓102の外植を準備する応用における好ましいものとして、適応心房または心室にインターフェースを直接固定することによって行うことができる。例えば、左心房152カニューレ挿入は、インターフェース170を直接左心房152の中に挿入し、任意の肺静脈168組織に結ぶ必要なく、インターフェース170を適切な位置にすることによって行われる。
図1を続けて参照すると、両方のフローモードで、潅流流体108は、肺動脈インターフェース166から酸素供給器114に流れる。酸素供給器114は、外部もしくは内蔵源172からガス調節器174およびガス流チャンバー176を通ってガスを受け取り、それはガス流を制御するパルス幅変調ソレノイド弁、または正確なガス流量制御ができる他の任意のガス制御機器でもよい。ガス圧ゲージ178は、ガス供給部172がどの程度満たされているかを可視表示する。トランスデューサー132は、同様な情報をコントローラー150に提供する。コントローラー150は、たとえばセンサー140で測定した潅流流体酸素容量に依存して、酸素供給器114内に流れるガスを自動的に調節することができる。種々の図示態様によれば、酸素供給器114は、Dideco,a division of Sorin Biomedicalにより製造されたLiliput 2、またはMedtronic,Inc.で製造されたMINIMAX PLUS.(商標)などの標準メンブレン酸素供給器である。図示態様において、ガスは酸素および二酸化炭素の混合物を含む。そのような混合物の例示的な組成は、約85%O2、約1%CO2、残りはN2を含有する。再酸素添加に続いて、酸素供給器114は潅流流体108をレザバー160に戻す。図示態様によれば、センサー140は、酸素飽和を光ベースで測定するため、多重波が当てられたときに潅流流体108によって吸収または反射される光の量を測定する。潅流流体108は、特定の態様に基づく血液製剤であるので、赤血球(すなわち酸素を運搬する細胞)を含有することができる。したがって、センサー140はまた、潅流流体108のヘマトクリット測定値を示す信号145を提供する。別の態様において溶液108は、合成血液代用物で形成され、一方他の態様においては、溶液108は血液代用製剤と組み合わせて血液製剤を含有してもよい。
また、両方のフローモードにおいて、維持溶液116/118の供給および注入ポンプ182を含む栄養サブシステム115は、潅流108溶液がシステム100を通過して流れるとき、グルコースなどの栄養素116を潅流流体108に投与し、一部の態様においてそれは、レザバー160内にある。維持溶液116/118はまた、虚血症および他の再潅流に関連した心臓102に対する損害を低減するために、治療薬および保存剤118を供給することを含む。
正常および逆行性フローモードは共に、図24Aから26Bを参照して以下に、更に詳細に説明する。
図示態様によれば、システム100は、臓器を臓器チャンバーアセンブリ104内に導入する前にプライミングされる。プライミング中、プライミング溶液(以下に述べる)が、臓器チャンバー160の中に挿入され、システム100を通してポンピングされる。一つの例示的な応用では、プライミングは約5分〜約20分の時間で行われる。臓器チャンバーアセンブリ104内のカニューレ挿入インターフェース162、166および170は、システム100を通る潅流流体108の正常モードフローを可能にするよう、ドナー心臓102の存在なしで迂回される。次に血液(または合成血液代用品)は、レザバー160の中に充填される。血液は、心臓102の摘出中にドナーから放血された、または類型および交互適合した保存血液から得られた血液であり得る。次にシステム100は、血液(または血液代用品)を、システム100を通して循環させ、加熱、酸素添加、およびフィルター処理する。栄養素、保存剤および/または他の治療薬が栄養サブシステム115の注入ポンプ182を通り供給される。プライミング中に、オペレーターインターフェース146を介して種々のパラメータが初期化および較正され得る。一度システム100が適正に作動すると、ポンピング速度は減少するか、またはゼロにすることができ、心臓102は、臓器チャンバーアセンブリ104の中にカニューレ挿入され得る。次にポンピング速度は増加し得る。システム100のプライミングは、図29Aのフロー図を参照して、以下に更に詳細に説明される。
図1に示すように、システム100はまた、複数のコンプライアンスチャンバー184、186、および188を含む。コンプライアンスチャンバー184、186および188は、人体の血液流をより正確に模倣するシステムで支援、例えば、フロー後方圧を提供することにより、ならびに/または、例えば、流速変化および/もしくはポンプ106のポンピングによる流体圧スパイクをフィルター処理/低減することにより、人体の血管コンプライアンスをシミュレートするよう設計された柔軟な弾性壁を有する本質的に小型インラインの流体アキュムレーターである。図示態様によれば、コンプライアンスチャンバー184は、モード弁112の出力112aとレザバー160との間に配置され、心臓102を養うため、潅流流体が冠状静脈洞155内に流し込まれるように、大動脈158に後方圧を与えるよう正常フローモードの間、調整可能クランプ190に結合して動作する。図示態様において、大動脈158に与えられた流体後方圧は、約55mmHg〜約85mmHgであり、平均大動脈圧(一般的には、約80mmHg〜約100mmHgである)の許容できる生理学的圧力に近い範囲内である。大動脈158に対する後方圧は、正常な生理学状態をシミュレートする上でシステム100を支援する。コンプライアンスチャンバー186は、モード弁112の出力112bと臓器チャンバーアセンブリ104の肺静脈カニューレ挿入インターフェース170との間に配置される。コンプライアンスチャンバー186の主要機能は、左心房152に後方圧を与え、実質的に流体圧スパイクを生じさせないで血液を心臓に送達する潅流流体ポンプ106の、ポンプ作動から生じる圧力/流れのスパイクを平滑にすることである。図示態様において、左心房152に供給される流体後方圧は、約0mmHg〜約14mmHgであり、これは正常な生理学的状態下の左心房圧とほぼ同じである。コンプライアンスチャンバー188は、一方向弁310の出力とヒーター110の注入口110aとの間に位置する。コンプライアンスチャンバー188の主要機能はまた、潅流流体ポンプ106のポンプ作動により生じる圧力/流れを平滑にし、肺動脈164に流体後方圧を与えることである。図示態様において、肺動脈164に加えられる流体後方圧は、約0mmHg〜約25mmHgであり、これは、平均動脈圧(約0mmHg〜約12mmHg)の許容できる生理学的圧力に近い範囲内である。
コンプライアンスチャンバー184、186および188は、それらの寸法および形状ならびにその設計に使用される材料により、上述の利点を提供する。チャンバー184、186および188は、流体108の約20ミリリットルから約100ミリリットルを含む寸法になっており、流体108を受け、圧力スパイクを鈍らせるよう拡張し、心臓102に後方圧を供給することができるよう、楕円構造の形状になっている。特定の応用において、チャンバー184、186および188に使用される材料は、チャンバーが、約10(より柔軟)から約60(柔軟性に劣る)のShore A durametric硬度(ASTM D2240 00)を有するように選択された、少なくとも一つの柔軟なメンブレンを含み、特定の好ましい態様では、約30(±約8)〜約50(±約8)の硬さを有する。図示態様において、コンプライアンスチャンバー184は、約50(±約8)のShore A硬度を有し、コンプライアンスチャンバー186は、約30(±約8)のShore A硬度を有する。図示態様において、コンプライアンスチャンバー188は、二層構造を有し、内側チャンバーは約50(±約8)のShore A硬度を有し、外側スリーブが約30(±約8)のShore A硬度を有する。あるいは、内側チャンバーはより低い硬度(例えば約30、±約8)を有し、外側スリーブはより高い硬度(例えば約50、±約8)を有することが可能である。
システム100の動作概要を説明したので、次に臓器チャンバーアセンブリ104、流体ヒーターアセンブリ110、およびポンプ106に結合されるポンプヘッドインターフェースアセンブリ192について、更に詳細に説明する。図5Aから5Fは図1の図示臓器チャンバーアセンブリ104の種々の図を示す。図5Aから5Dに最も明瞭に示すように、臓器チャンバーアセンブリ104は、ハウジング194、外側蓋196および中間蓋198を含む。ハウジングは底部分194eおよび心臓102を収める一つまたは複数の壁194a〜194dを含む。中間蓋198は、ハウジング194内部に心臓102を実質的に包含するため、ハウジング194に対し開口200を覆う。図5Eおよび5Fに最も明瞭に示すように、中間蓋198は、枠198aおよびその枠198aに吊した柔軟なメンブレン198bを含む。柔軟なメンブレン198bは、好ましくは透明であるが、半透明、不透明または実質的に透明であってもよい。一つの特徴によれば、柔軟なメンブレンは、ハウジング195内に収納されるとき、心臓102に接触するよう十分過剰なメンブレン材料を含む。この特徴は、ハウジング195の無菌状態を維持しながら、医療オペレーターが、メンブレン198bを通して間接的に心臓102に触れ/検査し、またはメンブレン198bを通して心臓102に超音波プローブを当てることを可能にする。メンブレン198bは、例えば、任意の適切な柔軟なポリマープラスチック、例えばポリウレタンで作ることができる。メンブレン198bはまた、より詳細に以下で説明するように、心臓の電気的活性度を電極142および144などの電極を介して検出できる、および/または除細動またはぺーシング信号を送達できる、一体化した導電性パッド/接点199aおよび199bを有し得る。あるいは、接点199aおよび199bは、電極142および144の機能の全部または一部分を含む電極であってもよい。図5Cに示すように、外側蓋196は、中間蓋198から独立して中間蓋198の上を開閉する。好ましくは、外側蓋196は、直接または間接の物理的接触から心臓102を保護するのに十分強固である。外側蓋196およびチャンバー194はまた、任意の適切なポリマープラスチック、例えばポリカーボネートで作ることができる。
一つの実施によれば、ハウジング194は、二つのヒンジセクション202aおよび202bを含み、中間蓋枠198aは、二つの対応する結合ヒンジセクション204aおよび204bをそれぞれ含む。ハウジング194上のヒンジセクション202aおよび202bは、中間蓋枠198a上のヒンジセクション204aおよび204bと嵌合し、それによって中間蓋198がハウジング194の開口200に関して開閉できる。図5Dから5Fに明瞭に示すように、臓器チャンバーアセンブリ104はまた、開口200を覆い閉じた中間蓋198を固定するため、二つのラッチ206aおよび206bを含む。図5Eおよび5Fに示すように、ラッチ206aおよび206bは、ハウジング194上の壁194c上でラッチヒンジセクション208aおよび208bをそれぞれ回転可能にスナップ結合する。図5Aおよび5Eに最も明瞭に示すように、中間蓋枠198aはまた、ヒンジセクション210を含む。ヒンジセクション210は、外側蓋196上で結合ヒンジセクション212と回転可能にスナップ結合し、それによって外側蓋196が中間蓋198を開けずに、開くことができる。図5B、5Dおよび5Fに最もよく示すように、外側蓋196はまた、ラッチ206aおよび206bを中間蓋枠198aの端216上に締め付けることを可能にするための二つの切欠き214aおよび214bを含む。図5B、5Dおよび5Fに示すように、臓器チャンバーアセンブリ104はまた、ラッチ218を含み、このラッチはハウジング194の壁194cのヒンジ部分220の上に回転可能にスナップ結合する。動作中は、ラッチ218は外側蓋196の端225のタブ221に係合して、中間蓋198の上に閉じた外側蓋196を固定する。
図5Eおよび5Fに最も明瞭に示すように、中間蓋はまた、二つのガスケット198cおよび198dを含む。ガスケット198dは、中間蓋枠198aの周囲と外側蓋196の周囲との間で嵌合し、外側蓋196が閉じるとき、中間蓋198と外側蓋196との間を流体密閉する。ガスケット198cは、ハウジング194の外側周縁部194fと中間蓋枠198aを嵌合して、中間蓋198が閉じるとき、中間蓋198とハウジング194の周囲194fとの間を流体密閉する。
任意で、臓器チャンバーアセンブリ104は、パッド222またはハウジング194の内側底部面194gの上で嵌合するための寸法と形状にしたサックアセンブリを含む。好ましくは、パッド222は、輸送中に心臓102に加わる機械的振動および衝撃を和らげるのに十分な弾性材料、例えば独立気泡フォームから形成される。一つの特徴によれば、パッド222は、図1の電極142および144などの対の電極を調整可能に配置する機構を含む。図示態様によれば、機構は、パッド222の下側からパッドの心臓接触面上の対応する電極142および144に導線を通すための、二つの貫通開口部224aおよび224bを含む。パッド222を通って電極142および144に導線を通すと、電極142および144をパッド222内に調整可能に配置でき、様々な寸法の心臓に適合させることができる。他の態様においては、機構は限定されることなく、一つまたは複数の違った配向スロット、凹部、凸部、貫通開口部、部分的開口部、フック、小穴、接着パッチなどを含むことができる。特定の態様において、パッド222は、電極がパッド222内に挿入できる一つまたは複数のスリーブ状構造に構成されており、これにより電極と心臓102の間に配置されたパッド222のメンブレン状表面を提供することができる。
一部の図示態様において、パッド222は、パッドアセンブリとして構成され、アセンブリは、電極142および144などの一つまたは複数の電極を含み、調整可能にパッド222内またはパッド222上に配置される。一優位性によれば、本発明のパッド/電極構造は、一時的または永久的に縫合することなく、またはそうでなければ機械的に心臓102に電極を接続することなく、電極とパッド222上に置かれた心臓102との間の接触を容易にする。心臓102の重さそれ自体がまた、輸送中の電極の安定性を助ける。図示態様によれば、電極142および144は心臓からのおよび/または心臓に電気信号を提供する除細動器からの一つまたは複数の電気信号を監視する一つまたは複数のセンサーを含む。図1および5Cに示すように、臓器チャンバーアセンブリ104は電気インターフェース接続235a〜235bを含み、それらはそれぞれ、ハウジング194の壁194bの開口部234a〜234bの中に装着される。カバー226は、それが使用されないとき、電気インターフェース接続235a〜235bを保護するように提供される。
図15を参照し、以下に更に詳細に説明するように、インターフェース接続235aおよび235bは、ハウジング194の外部、例えばコントローラー194および/またはオペレーターインターフェース146へ、電極142および144からのECG信号などの電気信号を結合する。図22Aを参照して、以下に更に詳細に説明するように、インターフェース接続235aおよび235bは、外部機器によって、またはシステム100内部回路を通してのどちらかで供給され得る、ならびに電極142および144を通して心臓102に除細動またはぺーシング信号143を送ることができる、除細動器源に連結し得る。
図5Eおよび5Fに最も明瞭に示すように、臓器チャンバーアセンブリ104は、インターフェース開口部232に装着する再密閉可能なメンブレンインターフェース230を含む。インターフェース230は、枠230aと、枠230aに装着した再密閉可能なポリマーメンブレン230bとを含む。メンブレン230bはシリコーンまたは任意の他の適切なポリマーから作られてもよい。動作中、インターフェース230は、必要な場合は心臓102に、チャンバー蓋196および198を開けることなく、ぺーシングリードを提供する。メンブレン230bは、ぺーシングリードの周りを密閉して、心臓102の周辺に閉じた環境を維持する。メンブレン230bはまた、ぺーシングリードの取り外しに応じて、再密閉する。
図5Aおよび5Bに示すように、臓器チャンバーアセンブリ104は、大動脈インターフェース162を収容する開口部228a〜228c、図1から4を参照して上述し、図24Aから28Cを参照して後述する肺動脈インターフェース166および肺静脈インターフェース170を含む。図5Dに示すように、臓器チャンバーアセンブリ104はまた、ハウジング194から出る潅流流体108をレザバー160に排出して戻すためのドレイン201を含み、臓器チャンバーアセンブリ104を単回使用モジュール(図19Aの634で示す)上に装着するためのレセプタクル203a〜203dを装着する。
図6Aから6Fは、図1の潅流流体ヒーターアセンブリ110の種々の図を示す。図6Aおよび6Bに示すように、ヒーターアセンブリ110は、注入口110aおよび排出口110bを有するハウジング234を含む。図6Dの縦断面図と図6Eの横断面図の両方に示すように、ヒーターアセンブリ110は、注入口110aと排出口110bとの間に伸びる流路240を含む。ヒーターアセンブリ110は、対称的に半分になった上部236および下部238を有するよう概念化することができる。したがって、図6Fの分解図には、上部の半分のみが示されている。
図6Dから6Fについて説明するように、流路240は、第一242と第二244の流路プレート間に形成される。注入口110aは潅流流体を流路240に流し、排出口110bは潅流流体をヒーター110から排出する。第一242および第二244の流路プレートは、流路240を通って流れる潅流流体に直接接触する、実質的に生体不活性潅流流体108接触面(特定の態様では血液製剤を含んでもよい)を有する。流体接触面は、プレート上への処理または被覆で形成されるか、またはプレート面それ自体でもよい。ヒーターアセンブリ110は、第一および第二の電気ヒーター246および248をそれぞれ含む。第一のヒーター246は、第一のヒータープレート250に近接して結合され、それに熱を伝える。第一のヒータープレート250は同様に、第一の流路プレート242に熱を伝える。同様に、第二のヒーター248は第二のヒータープレート252に近接して結合され、それに熱を伝える。第二のヒータープレート252は、第二の流路プレート244に熱を伝える。図示態様によれば、第一250および第二252のヒータープレートは、第一246および第二248の電気ヒーターそれぞれから、比較的均一に熱を伝え、分布させる、例えばアルミニウムなどの材料で形成される。ヒータープレート250および252の均一な熱分布により、流路プレートを、その熱分布特性に関する危惧を低減する、例えばチタンなどの生体不活性材料で形成できるようにする。
図6Eから6Fを特に参照して説明すると、ヒーターアセンブリ110はまた、それぞれの流路プレート242および244をハウジング234に流体密閉させるためのOリング254および256を含み、それにより流路240を形成する。
ヒーターアセンブリ110は更に、第一のアセンブリブラケット258および260を含む。アセンブリブラケット258は、ヒーター246、ヒータープレート250および流路プレート242を、アセンブリブラケット258とハウジング234との間に挟み込むように、電気ヒーター246の周囲の上にあるヒーターアセンブリ110の上面236に装着する。ボルト262aから262jは、ブラケット258、電気ヒーター246、ヒータープレート250および流路プレート242の対応するスルーホールを通りぬけ、対応するナット264a〜264jに差し込まれて、ハウジング234にこれらの部品すべてを固定する。アセンブリブラケット260は、ヒーターアセンブリ110の底部側238上に同様な様式で、ヒーター248、ヒータープレート252および流路プレート244をハウジング234に固定するよう装着する。弾性パッド268はブラケット258の周囲内に嵌合する。同様に、弾性パッド270がブラケット260の周囲内に嵌合する。ブラケット272は、パッド268の上に嵌合する。ボルト278a〜278fは、ブラケット272のそれぞれの孔276a〜276fに貫通嵌合し、ナット280a〜280fに差し込まれて、ヒーター246に弾性パッド268を押し付け、ヒータープレート250により効率のよい熱伝達を行う。弾性パッド270は、同様な様式により、ブラケット274でヒーター248に押し付けられる。
図1に関して述べ、また図6Aに示すように、図示ヒーターアセンブリ110は、温度センサー120および122ならびにデュアルセンサー124を含む。デュアルセンサー124は、実際には、フォールトトレラントを提供し、ヒーターアセンブリ110を出る潅流流体108の温度を測定し、これらの温度をコントローラー150に提供するデュアルサーミスターセンサーを含む。図13の加熱サブシステム149に関して、以下に更に詳細に説明するように、センサー120、122および124からの信号は、フィードバックループ内で使用され得、第一246および/または第二248のヒーターに対する駆動信号を制御して、ヒーター256および248の温度を制御する。更に、ヒータープレート250および252、それゆえヒータープレート250および252の血液接触面242ならびに244は、潅流流体にダメージを与え得る温度に到達しないことを確実にするため、図示ヒーターアセンブリ110はまた、ヒーター246および248の温度をそれぞれ監視し、これらの温度をコントローラー150に提供するため、温度センサー/リード線120および122を含む。実際には、センサー/リード線120および122に取り付けられたセンサーは、RTD(抵抗温度素子)ベースである。図13に関して更に詳細に述べるように、センサー/リード線120および122に取り付けられたセンサーからの信号は、フィードバックループ内で使用され、更に第一246および/または第二248のヒーターに対する駆動信号を制御して、ヒータープレート250および252の最高温度を制限する。故障保障として各ヒーター246および248のセンサーがあるので、一方が故障しても、システムは他のセンサーで温度を保ち動作し続けることができる。
図13に関して更に詳細を以下に述べるように、ヒーターアセンブリ110のヒーター246は、コントローラー150から対応する駆動リード線282aで駆動信号281aおよび281b(一括して281)を受信する。同様に、ヒーター248はコントローラー150から駆動リード線282bで駆動信号283aおよび283b(一括して283)を受信する。駆動信号281および283は、それぞれのヒーター246および248に流れる電流(これにより熱が発生する)を制御する。より詳細には、図7に示すように、駆動リード線282aはヒーター246の抵抗素子286を接続する高低のペア線を含む。抵抗素子286を通して提供される電流が増加すると、抵抗素子286は温度が高くなる。ヒーター248は、同様の様式で駆動リード線282bに関しても動作する。図示態様によれば、素子286は約5オームの抵抗を有する。しかしながら、他の図示態様では、素子は約3オーム〜約10オームの抵抗を有し得る。図11および13に関して、以下により詳細に説明するように、ヒーター246および248は、プロセッサー150で独立して制御されてもよい。
図示態様によれば、ヒーターアセンブリ110ハウジング部品は、成形プラスチック、例えばポリカーボネートで形成され、約1ポンド未満の重さである。より詳細には、ハウジング234およびブラケット258、260、272および274はすべて、成形プラスチック、例えばポリカーボネートで形成される。もう一つの特徴では、ヒーターアセンブリは、単回使用使い捨てアセンブリである。
動作においては、図示ヒーターアセンブリ110は、約1ワット〜約200ワットの電力を使用し、約300mL/分〜約5L/分の速度で、約30℃未満の温度から少なくとも約37℃の温度までで、約30分未満、約25分未満、約20分未満、約15分未満、または約10分未満でさえも、細胞に実質的な溶血を起こさず、またはタンパク質を変性させず、またはそうでなければ潅流流体の任意の血液製剤部分を損傷させずに、流路240を流れる潅流流体108を移送する寸法および形状である。
一つの特徴によれば、ヒーターアセンブリ110は、ポリカーボネートから形成され、約5ポンド未満の重さのハウジング234およびブラケット258、260、272および274などのハウジング部品を含む。他の態様では、ヒーターアセンブリは、約4ポンド未満、約3ポンド未満、約2ポンド未満、または約1ポンド未満の重さであり得る。図示態様では、ヒーターアセンブリ110は、注入口110aおよび排出口110bポートを含まないで約6.6インチの長さ288、ならびに約2.7インチの幅290を有する。ヒーターアセンブリ110は、約2.6インチの高さ292を有する。ヒーターアセンブリ110の流路240は、約1.5インチの公称幅296、約3.5インチの公称長さ294、および約0.070インチの公称高さ298を有する。高さ298および幅296は、潅流流体108が流路240を通過するとき、それを均一に加熱するように選択される。高さ298および幅296はまた、潅流流体108を、ヒーターアセンブリ110の中に流入、および/または外に流出させる流体導管の内側断面にほぼ等しい、流路240内部の断面積を備えるように選択される。一構成においては、高さ298および幅296は、注入口流体導管792(以下に図25Cを参照して示す)の内側断面積にほぼ等しい、ならびに/または排出口流体導管794(以下に図24Eを参照して示す)の内側断面積に実質的に等しい流路240の内部断面を備えるように選択される。
突出部257a〜257dおよび259a〜259dは、ヒーターアセンブリ110内部に含まれ、ヒーターアセンブリを複数回使用ユニット650(図20Aを参照)に結合するための熱活性化接着剤を収容するよう用いられる。
図8Aから8Cは、本発明の図示態様によるポンプインターフェースアセンブリ300の種々の図を示す。図9は、図1の潅流流体ポンプアセンブリ106のポンプ駆動端の斜視図を示し、図10は、本発明の図示態様による潅流流体ポンプアセンブリ106のポンプ駆動端に結合したポンプインターフェースアセンブリ300を示す。図8Aから10を説明すると、ポンプインターフェースアセンブリ300は、外側304および内側306を有するハウジング302を含む。インターフェースアセンブリ300は、注入口308および排出口310を含む。図8Bおよび図8Cの分解図の底面図に最も明瞭にしめすように、ポンプインターフェースアセンブリ300はまた、内側312および外側314のOリング密閉材、二つの変形可能メンブレン316および318、ドーナツ型ブラケット320、ならびにOリング314とブラケット320との間に嵌合する半リング319aおよび319bを含む。半リング319aおよび319bは、発泡部材、プラスチック、または他の適切な材料で作ることができる。
内側Oリング312は、内側306の周囲に沿って環状トラック内に嵌合する。第一の変形可能メンブレン316を、ハウジング302の内側306に流体密封な(fluid tight)相互接続状態で、内側Oリング312の上に装着して、第一の変形可能メンブレン316の内側とハウジング302の内側306との間にチャンバーを形成する。第二の変形可能メンブレン318は、第一の変形可能メンブレン316の上部に嵌合して、第一の変形可能メンブレン316が破れるかまたは裂ける場合のフォールトトレラントを提供する。図解では、変形可能メンブレン316および318は、薄いポリウレタン膜(約0.002インチの厚み)から形成される。しかしながら、任意の適切な厚みの任意の適合な材料を使用してもよい。図8Aおよび8Bを参照すると、ブラケット320を第二の変形可能メンブレン318ならびにリング319aおよび319bの上に装着し、内側306の周囲に沿ってハウジング302に固定する。ネジ切りしたファスナー322a〜322iは、ブラケット320をブラケット320のそれぞれのネジ切りした開口部324a〜324iで、ハウジング302に取り付ける。図8Bに示すように、外側Oリング314は、ブラケット320の環状溝に嵌合して、ポンプアセンブリ106を流体密閉する。ブラケット320の環状溝内にOリング314を挿入する前に、半リング319aおよび319bが溝内に配置される。次にOリング314は、ブラケット320の環状溝内に押し付け、配置される。環状溝内に配置された後、Oリング314は、溝内にそれ自体ならびに半リング319aおよび319bを適所に固定するよう拡張する。
ポンプインターフェースアセンブリ300はまた、その外側304から突き出る熱かしめ点(heat stake point)321a〜321cを含む。図21Aから21Cおよび24Aから24Cを参照して、以下に詳細に説明するように、点321a〜321cは、ポンプインターフェースアセンブリ300を単回使用使い捨てモジュールシャーシ635のC形状ブラケット656に熱でかしめるよう、熱接着剤を収容する。
図8Cに示すように、流体排出口310は、排出口ハウジング310a、排出口嵌合材310b、流れ調節ボール310cおよび排出口ポート310dを含む。ボール310cは、排出口ポート310d内部に嵌合するが、排出口310の内側開口部326を貫通しない寸法になっている。嵌合材310bは、排出口ポート310dに(例えば、エポキシまたは他の接着剤を介して)接着されて、内側開口部326と嵌合材310bとの間にボール310cを捕捉する。排出口ハウジング310aは、同様に嵌合材310bに接着される。
動作において、ポンプインターフェースアセンブリ300は、潅流流体ポンプアセンブリ106のポンプ駆動体334からポンピング力を受けるよう配列され、そのポンプ力を潅流流体108に伝え、それにより潅流流体108を臓器チャンバーアセンブリ104に循環させる。図示態様によれば、潅流流体ポンプアセンブリ106は、メンブレン318に接触する駆動体334(図9に関して以下に更に詳しく説明する)を有する拍動性ポンプを含む。流体注入口308は、変形可能メンブレン316および318から離れる方向にポンプ駆動体が動く(これにより、メンブレン316および318を同じ方向に変形させる)のに応答して、潅流流体108を、例えば、レザバー160から引き込み、その流体を内側メンブレン316およびハウジング302の内側306との間に形成されたチャンバーの中に供給することができる。ポンプ駆動体が変形可能メンブレン316と318から遠ざかると、レザバー160内部の流体108の圧力ヘッドにより、潅流流体108がレザバー160からポンプアセンブリ106の中に流れるようになる。これに関して、ポンプアセンブリ106、注入口弁191およびレザバー160は、ポンプアセンブリ106の中に潅流流体108を重力送りするよう配列される。同時に、流れ調節ボール310cは、開口部326に引き込まれて、潅流流体108が排出口310を通ってチャンバーに流れ込まないように阻止する。排出口弁310および注入口弁191は、図示態様において一方向弁であるが、代替態様において弁310および/または191は、両方向弁であることに留意されたい。変形可能メンブレン316および318に向かう方向にポンプ駆動体334が動くのに応答して、流れ調節ボール310cが嵌合部材310bに向かって移動して、内側開口部326を開き、これにより排出口310が、ハウジング302の内側306と変形可能メンブレン316の内側との間に形成されたチャンバーから潅流流体108を排出することができる。図1のレザバー160と注入口308の間に示される個別の一方向注入口弁191は、任意の潅流流体が、注入口308から排出されることおよびレザバー160に戻り流れることを阻止する。
図18Aから27Bに関して以下に更に詳しく説明するように、特定の態様において、臓器ケアシステム100は、使い捨て単回使用ユニット(図19Aから19Cおよび24Aから25Cの634で示す)および非使い捨て複数回使用ユニット(図20Aの650で示す)に機械的に分けられる。このような態様においては、ポンプアセンブリ106は、複数回使用モジュール650に強固に装着され、ポンプインターフェースアセンブリ300は、使い捨て単回使用モジュール634に強固に装着される。ポンプアセンブリ106およびポンプインターフェースアセンブリ300は、対応するインターロック接続を有し、それにより二つのアセンブリ106および300間が流体密閉するよう、相互に係合する。
さらに、特に図9の斜視図に示すように、潅流流体ポンプアセンブリ106は、上面340、およびハウジング338のシリンダ336内部に収納されたポンプ駆動体334を有するポンプ駆動ハウジング338を含む。ポンプ駆動ハウジング338はまた、ポンプインターフェースアセンブリ300から突き出るフランジ328に係合する寸法と形状にしたスロット332を含む、ドッキングポート342を含む。図10に示すように、ポンプ駆動ハウジング338の上面340は、非使い捨て複数回使用モジュールユニット650上のブラケット346に装着される。ブラケット346は、ポンプインターフェースアセンブリ300のそれぞれのテーパ付き突出部323aおよび323bに当接するための形体344aおよび344bを含む。ブラケット346はまた、ポンプ駆動ハウジング338上のドッキングポート342およびスロット332に整合する寸法と形状にした切欠き330を含む。
運用上、ポンプインターフェースアセンブリ300と流体ポンプアセンブリ106との間は、図9および10で図示した二つの工程で密閉される。第一の工程において、フランジ328は、テーパ付き突出部323aおよび323bが、ブラケット346上の対応する形体344aおよび344bに隣接して時計方向側に配置されている間に、ドッキングポート342内に配置される。第二の工程において、図9の矢印345、347および349で示すように、ポンプインターフェースアセンブリ300および流体ポンプアセンブリ106は、反対方向に回転されて(例えば、固定されたポンプアセンブリ106を保持しながら、ポンプインターフェースアセンブリ300を時計回り方向に回転させる)、フランジ328をドッキングポート342内のスロット332にスライドしてはめ込む。同時に、テーパ付き突出部323aおよび323bは、ブラケット形体344aおよび344bそれぞれの下にスライドして、ブラケット形体344aおよび344bの内面にテーパ付き突出部323aおよび323bのテーパ付き外面を係合し、ポンプインターフェースアセンブリ300の内側306をポンプ駆動体334の方向に引き込み、フランジ328をドッキングポート342にインターロックし、テーパ付き突出部323aおよび323bをブラケット形体344aおよび344bに係合して、二つのアセンブリ300および106の間を流体密閉する。
システム、動作および部品の観点から図示の臓器ケアシステム100を説明したが、次に、システム100の動作を実現するための図示制御システムおよび方法を説明する。さらに特に、図11は、システム100の図示制御概念のブロック図を示す。図1で参照して上述したように、システム100は、システム100の動作を制御するコントローラー150を含む。示されるように、コントローラー150は、以下の六つのサブシステムと相互作動的に接続する:システム100を監視および制御ならびに心臓102の状態の監視において、オペレーターを支援するオペレーターインターフェース146;心臓102およびシステム100に関するデータを取得し、データをコントローラー150に伝達する種々のセンサーを有するデータ取得サブシステム147;システム100にフォールトトレラント電力を供給する電力管理サブシステム148;潅流流体108を温めるヒーター110に制御されたエネルギーを提供する加熱サブシステム149;システム100の動作および心臓102に関するデータを蓄積し、管理するデータ管理サブシステム151;ならびにシステム100を通して潅流流体108のポンピングを制御するポンピングサブシステム153。システム100は、単一のコントローラー150を参照して概念的に説明されているが、システム100の制御は、複数のコントローラーまたはプロセッサーに割り当てられ得ることに留意されたい。例えば、任意のまたは全ての記載されたサブシステムは、専用のプロセッサー/コントローラーを含み得る。任意で、種々のサブシステムの専用のプロセッサー/コントローラーはセントラルコントローラー/プロセッサーで、またはそれを介して通信することができる。
図12から17Jは、図11の個々のサブシステムの相互作動を図示する。先ず、図12のブロック図を参照すると、データ取得サブシステム147は、システム100および心臓102がどのように機能しているかに関連する情報を取得し、その情報をシステム100で処理し、使用するためのコントローラー150に通信するセンサーを含む。図1について説明したように、サブシステム147のセンサーは、限定されることなく、温度センサー120、122および124;圧力センサー126、128、および130;流速センサー134、136および138;酸素化/ヘマトクリットセンサー140;ならびに電極142および144を含む。データ取得サブシステム147はまた、一連のホールセンサー388および潅流ポンプアセンブリ106のシャフトエンコーダー390;電池352a〜352cそれぞれが十分充電されているかを検出する電池センサー362a〜362c;外部交流電力が利用可能かどうかを検出する外部電力利用可能度センサー354;オペレーターインターフェースモジュール電池の充電状態を検出するオペレーターインターフェースモジュール電池センサー370;ならびにガス流チャンバー176のガス流を検出するガス圧センサー132を含む。データ取得サブシステム147からの情報をシステム100がどのように使用するかは、図13から17Jで更に詳しく示される、加熱149、電力管理148、ポンピング153、データ管理151、およびオペレーターインターフェース146のそれぞれのサブシステムに関して説明する。
加熱サブシステム149は、図13のブロック図に示す。図1の参照に続き、加熱サブシステム149は、システム100内部の潅流流体108の温度を、デュアルフィードバックループ手法を通して制御する。第一のループ251(潅流流体温度ループ)において、潅流流体温度サーミスターセンサー124は、二つの(フォールトトレラント)信号125および127をコントローラー150に提供する。信号125および127は、潅流流体108が、ヒーターアセンブリ110を出るとき、潅流流体108の温度を表示する。コントローラー150は、駆動体247および249それぞれに対する駆動信号285および287を調節する。駆動体247および249は、対応するデジタルレベル信号285および287を、コントローラー150からヒーター駆動信号281および283にそれぞれ変換し、その信号は、潅流流体108をオペレーター選択温度範囲内に加熱するよう、第一246および第二248のヒーターを駆動するための十分な電流レベルを有するようにする。コントローラー150が、潅流流体温度125および127がオペレーター選択温度範囲より低いことを検出するのに応答して、コントローラー150は第一246および第二248のヒーターそれぞれに対して、潅流流体108を加熱することを継続する十分なレベルに駆動信号281および283を設定する。これに対して、コントローラー150が潅流流体温度125および127がオペレーター選択温度範囲より高いことを検出するのに応答して、コントローラー150は第一246および第二248のヒーターそれぞれに対する駆動信号281および283を減少させる。潅流流体108の温度がオペレーター選択温度範囲内であることを検出するのに応答して、コントローラー150は、駆動信号281および283を一定または実質的に一定のレベルに維持する。
好ましくは、コントローラー150は、駆動信号281および283を実質的に同じ方法で変化させる。しかし、これは必要事項ではない。例えば、各ヒーター246および248は、特定の電流または電圧レベルの駆動信号に対し異なる反応をすることがある。そのような場合、コントローラー150は、わずかに異なるレベルで各ヒーター246および248を駆動して、それぞれから同じ温度が得られるようにする。一つの特徴によれば、ヒーター246および248はそれぞれ、特定の温度を実現するため、特定のヒーターに提供する特定の駆動信号のレベルを決定するとき、コントローラー150が蓄積し使用する関連較正係数を有する。特定の構成において、コントローラー150は、デフォルトサーミスターとしてデュアルセンサー124の中のサーミスターの一つを設定し、サーミスターが異なる二つの温度読取値を示す場合に、デフォルトサーミスターの温度読取値を用いる。特定の構成において、温度読取値が、予め規定した範囲である場合、コントローラー150は、二つの読取値の高い方を使用する。駆動体247および249は、ヒーターアセンブリ110の対応する駆動リード線282aおよび282bに、駆動信号281および283を与える。
第二のループ253(ヒーター温度ループ)において、ヒーター温度センサー120および122は、ヒーター246および248それぞれの温度を示す信号121および123をコントローラー150に提供する。図示態様によれば、ヒーター246および248の温度がこれを超えて上昇することがないようにする温度シーリングが、ヒーター246および248(デフォルトまたはオペレーター選択により)に定められる。ヒーター246および248の温度が上昇し温度シーリングに近づくと、センサー121および123は、コントローラー150に同様に示し、次に、ヒーター246および248に対する電力供給を減らすかまたは停止するよう、ヒーター246および248に対する駆動信号281および283を低下させる。このように、潅流流体温度センサー124からの低温信号125または127が、コントローラー150に、ヒーター246および248に対する電力を増加させる一方、ヒーター温度センサー120ならびに122は、ヒーター246および248が、それぞれのヒータープレート250および252が潅流流体108にダメージを与えるのに十分な熱さになる程度には駆動されないことを確実にする。種々の図示態様によれば、コントローラー150は、潅流流体温度を、約32℃〜約37℃に、または約34℃〜約36℃に維持するよう設定される。さらなる例示的な態様によれば、コントローラー150は、ヒータープレート250および252の最高温度を、約38℃未満、約39℃未満、約40℃未満、約41℃未満、または約42℃未満に制限するよう設定される。
以上のように、第二のループ253は、必要であれば、ヒーター246および248が最大許容温度に近づいていることを示す温度センサー120ならびに122の温度読取値が、潅流流体温度センサー124からの任意の低温信号の効果を打ち消すように、第一のループ251を打ち消すよう構成されている。この点において、サブシステム149は、たとえ潅流流体108の温度が、オペレーター選択温度値に達しなかったとしても、ヒータープレート250と252の温度は、最大許容温度を超えて上昇することはないことを確実にする。この取り消し特徴は、故障状態時に特に重要である。例えば、潅流流体温度センサー124が共に故障している場合、第二のループ253は、ヒーター温度センサー120および122を独占的にスイッチ制御し、温度設定点を低い値に低下させることによって、過度に加熱して潅流流体108にダメージを与えることがないように、ヒーターアセンブリ110を停止する。一つの特徴によれば、コントローラー150は、温度制御の動的反応を最適化するため、ヒーター246および248ならびに潅流流体108の温度測定値に関連した遅延に割付けられた二つの時間定数を考慮に入れる。
図14は、システム100にフォールトトレラント電力を供給するための電力管理システム148のブロック図を示す。示されるように、システム100は、外部交流源351(例えば北アメリカで60Hz、120VACまたはヨーロッパで50Hz、230VAC)または任意の三つの独立した電池352a〜352cの、四つの電源のうちの一つによって電力供給することができる。コントローラー150は、交流電圧351がシステム100で利用可能かどうかを示す、交流線電圧利用可能度センサー354からデータを受信する。交流電圧351が利用可能でないことを検出するコントローラー150に応答して、コントローラー150は、電力スイッチング回路356に信号を送って、システムに電池352a〜352cの一つから高電力358を提供する。コントローラー150は、利用可能な電池352a〜352cのうち、どの電池が最も完全に充電されているかを、電池充電センサー362a〜362cから決定し、その電池を、スイッチングネットワーク356により作動へと切替える。
あるいは、外部交流電圧351が利用可能であることを検出するコントローラー150に応答して、システムに電力358を提供するため、およびユーザーインターフェースモジュール146に電力を提供するため、電池352a〜352cの一つまたは複数を充電するため、ならびに/またはそれ自体が内部充電器および充電コントローラーを有するユーザーインターフェースモジュール146の内部電池368を充電するため、どの利用可能な交流電圧351(例えば整流後)を使用するかを決定する。利用可能な交流電圧351を使用するため、コントローラー150は、スイッチングシステム364を通して信号を送って電源350に交流電圧351を引き込む。電源350は、交流電圧351を受け取り、それを直流電流に変換して電力をシステム100に提供する。電源350は汎用で、全世界で共通に使用される任意のライン周波数またはライン電圧を扱うことができる。図示態様によれば、電池センサー362a〜362cの一つまたは複数の低電池表示に応答して、コントローラー150はまた、スイッチングネットワーク364および充電回路366を介して、電力を適当な電池に導く。センサー370からの低電池信号の受信に応答して、コントローラー150は、同様に、またはあるいは、充電電圧367をユーザーインターフェース電池368に導く。もう一つの特徴によれば、電力管理サブシステム148は、最少充電電池を優先し、最大充電電池を残しておく順番でシステム100に電力を送るよう、電池を選択する。システム100に電力供給している電池が、ユーザにより取り外されると、電力管理サブシステム148はシステム100に電力供給を継続するよう、次の最少充電電池に自動的に切替える。
もう一つの特徴によれば、電力管理サブシステム148はまた、電池352a〜352cの一つ以上が、所与時間でシステム100から取り外されるのを防止するため、ロックアウト機構を使用する。一つの電池が取り外される場合、他の二つが機械的にシステム100内の位置にロックされる。この点において、システム148は、電源358が常にシステム100に対し利用可能であることを確実にすることを支援するよう、フォールトトレラントのレベルを提供する。
図11のポンピングサブシステム153について、ここで図15および16を参照して更に詳細に説明する。より詳細には、図15は、図示ポンピングサブシステム153を示す概念ブロック図であり、および図16は、サブシステム153により出力されたポンピングを示す例示的な波385で同期された心臓102の例示的なECG414を示す。図16に示すECG414は、P、Q、R、S、TおよびUピークを有する。ポンピングサブシステム153は、図8Aから10でより詳細に説明したように、ポンプインターフェースアセンブリ300に相互作動的に接続された潅流流体ポンプ106を含む。図15に示されるように、コントローラー150は、ホールセンサーフィードバックを用いるブラシレス三相ポンプモーター360に、駆動信号339を送信して、ポンピングサブシステム153を動作させる。駆動信号339は、ポンプモーターシャフト337を回転させ、それによりポンプスクリュー341で、ポンプ駆動体334を、上および/または下に動かすようにする。図示態様によれば、駆動信号339は、モーターシャフト337の回転方向および回転速度を変えるよう制御されて、ポンプ駆動体334が周期的に上下に動くようにする。この周期的動きにより、システム100を通して潅流流体108をポンピングする。
動作において、コントローラー150は、ポンプモーターシャフト337内部に一体として配置されたホールセンサー388から第一の信号387を受信して、モーター巻線電流を整流する目的で、ポンプモーターシャフト337の位置を表示する。コントローラー150は、第二のより高い分解能信号389を、ポンプスクリュー341の正確な回転位置を表示するシャフトエンコーダーセンサー390から受信する。電流モーター整流位相位置387および電流回転位置389から、コントローラー150は適切な駆動信号339(振幅および極性両方)を算出して、所望のポンピング作用を達成するため、モーターシャフト337で必要な回転変化を生じさせてポンプスクリュー341で適切な上下位置変化を生じさせる。駆動信号339の振幅を変化させることによって、コントローラー150はポンピング速度(例えば、何回ポンピングサイクルを繰り返すか)を変化させることができ、回転方向変化を変動させることによって、コントローラー150はポンピング拍出量(例えば、サイクル中にどれほど速くポンプ駆動体334が動くか変動させることにより)を変化させることができる。一般的に言えば、(所与速度に対し)ポンプ拍出が心臓102に提供される潅流流体108の量を調節する一方、周期的ポンピング速度は、潅流流体108が心臓102に提供される拍動速度を調節する。
速度および拍出量の両方は、心臓102への、および心臓102からの潅流流体108の流速、および間接的に圧力に影響する。図1に関して説明したように、システムは、三つの流速センサー134、136および138、ならびに三つの圧力センサー126、128および130を含む。図15に示すように、センサー134、136および138は、コントローラー150に対し、対応する流速信号135、137および139を提供する。同様に、センサー126、128および130は、コントローラー150に対し、対応する圧力信号129、131および133を提供する。コントローラー150は、潅流ポンプ106に提供されるコマンドが、システム100に所望の効果があることを確実にするため、これら信号すべてをフィードバックに使用する。一部の例において、および図17Aから17Jを参照して以下に更に詳細に説明するように、コントローラー150は、特定の流速または流体圧が、許容範囲外であることを示す信号に応答して、種々のアラームを発生できる。更に、複数のセンサーを用いて、コントローラー150が、システム100が持つ機械的な課題(例えば、導管閉塞)と心臓102が持つ生理学的な課題との間を識別することを可能にする。
本発明の一つの特徴によれば、ポンピングシステム153は、精密に同調したポンピング速度および容量プロファイルを可能にするため、ポンピングサイクルの各時間の間、ポンプ駆動体334の位置を制御するよう構成できる。これは、同様にポンピングシステム153が、任意の所望の拍動パターンで心臓に潅流流体108を供給することを可能にする。一図示態様によれば、シャフト337の回転位置は、シャフトエンコーダー390で検出され、コントローラー150により、少なくとも1回転当たり約100インクリメント調整される。もう一つの図示態様によれば、シャフト337の回転位置は、シャフトエンコーダー390で検出され、コントローラー150により少なくとも1回転当たり約1000インクリメント調整される。さらなる図示態様によれば、シャフト337の回転位置は、シャフトエンコーダー390で検出され、コントローラー150により、少なくとも1回転当たり約2000インクリメント調整される。ポンプスクリュー341の垂直位置、およびしたがってポンプ駆動体334は、ポンプスクリュー341の参照位置に対応して、初期にゼロまたはグランドポジションに較正される。
図示態様によれば、ポンピングサブシステム153の位置の正確さにより、コントローラー150が、心臓102を通して潅流流体108のポンピングを正確に調節することができる。心臓の自然速度に潅流流体の拍動流を同期させる工程は、本明細書において「r波同期」と称され、図2、15および16で引き続き参照され説明される。正常機能心臓は、二相圧送サイクル、すなわち心弛緩期および心収縮期を有する。「休止期」としても知られる心弛緩期の間、心臓の心房157および152収縮により、弁は心房157と152および心室154と156の間で開いて、血液を心室154および156に流し、心室154と156に充填する。心収縮期の間、充填された心室は血液を放出し、心房157と152が開き、血液で満たされる。このプロセスの間の心臓102の弛緩および収縮は、図16の414で示される心臓の心室ECG波形を図にして表すことができる。図16は、サブシステム153により出力されたポンピングを表す例示的な波385で同期をとったECG波形414を示す。
ポンピングサブシステム153は、流体108を心臓102に送達するときに、最も都合のよい時間で最大出力するよう構成されている。図示態様によれば、逆行性モードにおいてポンピングサブシステム153は、図16に示されるSピーク後に始まり、左心室156が大動脈158を通して潅流流体108の放出を終えたときである心臓の心弛緩期中に、最大ポンピング出力382が生じるように、心臓102に向けて流体108をポンピングするよう構成されている。この様式におけるポンピング出力のタイミングにより、使用者は、大動脈158を通って冠状静脈洞155に至る潅流流体108の注入を最大にすることができる。時限ポンピングは、ポイント382に先立ち、心臓のr波パルス380のピークおよび心室収縮期の間に対応する波385のポイント377でポンピングを開始して行われる。ポイント377は、信号が流体をポンピング開始するようコントローラー150から提供される時間と、心臓102にポンピングされた流体108の実際の送達時間との間の時間遅延を捕らえるよう選択される。もう一つの例では、心臓の左側が潅流流体(図24Aでより詳細に説明する)で満たされ、それを放出する正常フローモードの間、コントローラー150は、左心房152の正常な充満サイクルに整合するため、r波380の後の固定時間で、ポンピング開始するようポンピングサブシステム153に同期する。同期は、システム100の動作ソフトウェアの予めプログラムされたルーチン過程(routine)によってオペレーターにより、および/または図17Aから17Jを参照して以下により詳細に説明されるユーザーインターフェース表示領域410の手操作制御により、調整および微調整され得る。
同期化したポンプ出力を実現するため、コントローラー150は、心臓のr波パルス380がいつ起こり、ECG414中の適切な時間でポンプがいつポンピングするかを予測する。この予測を行うため、コントローラー150は、それぞれの電極142および144から提供される電気信号379ならびに381から、種々のr波パルス380の長さを測定する。これらのパルスから、コントローラー150は、一つのパルス380から次のパルスまでに経過する時間を追跡し、この情報を使用して、二つの連続するr波パルスを分離する時間長さの移動平均(running average)を計算する。この情報からコントローラー150は、二つの連続するr波パルスを分離する平均時間を、前のr波380の時間に加えることによって次のr波の時間(およびポンピングが、最適に出力するよう開始すべきときに、その予想したr波前後の時間を決める予想から)を予想する。このr波間の分離時間の移動平均に基づいて、コントローラー150は、図16に示す矢印388で示したようにECG414に沿って左または右に、波385の移動において反射されるとき、連続するr波に関連するポンプ出力の時間を調整するようオプションを有する。このように波385を調整することにより、使用者は、心臓を最適に満たすように、ポンプ106により出力のタイミングを調整し、カスタマイズできる。更に、ポンプ106はまた、ポンプ106により提供された流体108の量をカスタマイズするため、ポンプ拍出量を増加または減少するよう調整することができ、これは、r波同期に同調してまたは独立して行うことができる。
サブシステム153は、r波サイクル385に特に同期するが、これは必ずしも必要ではないことに留意されたい。代替図示態様においては、サブシステム153は、特定のチャンバーまたは血管の中へまたは外へと、流体圧を含む心臓の任意の利用可能な特性に同期してポンピングすることができる。またサブシステム153は、それが周期的であるとないとに関わらず、いかなる任意のパターンでポンピングするようプログラムすることができる。
図11に戻って参照すると、データ管理サブシステム151は、種々の他のサブシステムからのデータおよびシステム情報を受信し、蓄積する。データおよび他の情報は、携帯型記憶装置にダウンロードされ、所望でオペレーターにより、データベース内に編成される。蓄積されたデータおよび情報は、オペレーターによりアクセスされ、オペレーターインターフェースサブシステム146で表示され得る。
オペレーターインターフェースサブシステム146に戻ると、図17Aから17Jは、オペレーターインターフェースサブシステム146の種々の図示表示画面を示す。図17Aから17Jの表示画面は、オペレーターが、システム100から情報を受信し、システム100にコマンドを提供することを可能にする。図17Aは、本発明の図示態様による最上位「ホームページ」表示画面400を示す。表示画面400から、オペレーターは、データ取得サブシステム147から利用可能なデータのすべてにアクセスすることができ、任意の所望のコマンドをコントローラー150に提供することができる。図17Bから17Jを参照してより詳細に説明されるように、図17Aの表示画面400はまた、オペレーターが、情報を取得し、コマンドを提供し、オペレーター選択可能パラメータを設定するため、より詳細な表示画面にアクセスすることができる。
図1を続けて参照すると、表示画面400は、システム100に関する多数の数値および図画表示を示す表示領域402を含む。特に、表示領域402は、臓器チャンバーアセンブリ104の大動脈インターフェース162を出る潅流流体108の大動脈出力圧(AOP)404の読取数値、大動脈流体圧(AOP)404の波形表示406、および流体圧404が高過ぎないか低過ぎないかを表示するAOPアラーム画像408(アラーム408は図17Aに「オフ」として表示される)を含む。表示画面400はまた、心臓102が拍動している速度の数値表示412、心臓102のECG414、HR412がオペレーターのセット閾値より多いか下回るかを表示する心拍(HR)アラーム画像416、およびシステム100がどれほど長く作動しているかを示す、プライミング時間(図29Aを参照して以下に詳しく説明する)を含む時間的ログ418を有する表示領域410を含む。数字表示419は、システム100が心臓102を支援した時間量を示す。表示アラーム413は、オペレーター設定時間制限を越えるときを示す。
表示画面400は、多数の追加表示領域420、424、432、438、444、450、456、460、462、466、472、480、および482を含む。表示領域420は、肺動脈圧(PAP)422の数値読取を示す。PAP422は、圧力センサー130で測定したときの、心臓の肺動脈164から流れる潅流流体108の圧力表示である。表示領域420はまた、PAP422がオペレーターのプリセット範囲外のときに信号を出す、PAPアラーム表示424を提供する。表示領域426は、ヒーター110を出るときの潅流流体108の温度(Temp)428を表示する。表示領域426はまた、温度428がオペレーターのプリセット範囲外になるのに応答して信号を出す温度アラームインジケーター430を含む。オペレーターのプリセット範囲の上限は、427に表示される。表示領域432は、潅流流体108のヘマトクリット(HCT)の数値読取434、およびHCT434が、オペレーターのプリセット閾値を下回る場合にオペレーターに信号を出すHCTアラームインジケーター436を示す。表示領域438は、潅流流体108の酸素飽和(SvO2)440を示す。表示領域438はまた、潅流流体108のSvO2440がオペレーターのプリセット閾値を下回る場合に表示するSvO2アラーム442を含む。表示領域444は、大動脈158から流れ出るときの、潅流流体108の大動脈出力流速(AOF)446を表示する。AOF446は、流速センサー134により測定される。AOFアラーム448は、流速446がオペレーターのプリセット範囲外に低下するかどうかを表示する。表示領域450は、臓器チャンバー流速(CF)452を示す。CF452は、臓器チャンバー104を出るときに、流速センサー136で測定された潅流流体108の流速の表示である。表示領域450はまた、CF452がオペレーターのプリセット範囲外に低下するのに応答して信号を出すCFアラーム454を含む。表示領域456は、メモリカードにファイル転送されるときに表示する図画458を含む。
表示領域460は、電池352a〜352c(図14を参照して説明)それぞれの充電されている度合いについての図画表示459を示す。表示領域460はまた、電池352a〜352cが電流モードでシステム100を稼動継続できる残量時間量の数値表示461を提供する。表示領域462は、オペレーターインターフェースモジュール146が無線464様式で動作するかどうかを、オペレーターインターフェースモジュール146とシステム100の残余機器との間の無線接続の強さの図画表示463と共に表示する。表示領域462はまた、オペレーターインターフェースモジュール電池368(図14を参照して説明)の充電残量の図画表示467、および無線動作モードで支援することができるオペレーターインターフェースモジュール電池368の時間残量の数値表示465を提供する。表示領域466は、ガス流チャンバー176の酸素の流速468を表示する。それはまた、どの程度内蔵酸素タンクが満たされているかの図画表示469、および内臓酸素タンクがなくなる前の残り時間数の表示470を提供する。表示領域472は、心臓102の拍動速度、および心臓102がシステム100にカニューレ挿入されている時間数476を示す。このフィールドは、上述のフィールド419に重複している。表示領域480および482は、システム100の動作の現在時間および日付をそれぞれ示す。
図18Aに示すダイアル626のようなダイアル(またはマウス、または他の制御機器)を操作すると、図17Bに示す表示画面401に示すようなオペレーターインターフェース146の構成メニュー484が開く。示されるように、構成メニュー484にアクセスすると、表示領域402および410をカバーして、圧力406および心拍速度414の図画表示がもはや表示されなくなるが、重要な英数字情報は継続表示する。また示されるように、他の表示領域もすべてそのままで残る。これにより、オペレーターは、重要な情報を継続して監視しながら、システム100の動作を調整することができる。一つの特徴によれば、構成メニュー484は、オペレーターが、システム100に所望の動作パラメータを予めプログラムすることを可能にする。表示画面401を用いて、オペレーターは、フィールド488および490それぞれを選択することによって、ワーキングおよび心弛緩期(または逆行性)モードアラームを閲覧/編集することができる。オペレーターは、フィールド492および494を選択することによって特定のECGならびにLAP図画オプションを設定できる。更に、オペレーターは、フィールド496および498をそれぞれ選択することによって、酸素流速ならびに潅流流体温度を設定できる。フィールド500をそれぞれ選択して、オペレーターは時間と日付を設定でき、一方、フィールド502を選択してオペレーターは情報が表示される言語を選択できる。表示フィールド484の下方で、オペレーターは、表示画面400に戻る504、動作設定になされる任意の変化を取り消す506、新規デフォルトとして変更を保存する508、または工場出荷状態の動作設定にリセットする510のオプションを有する。
図17Cから17Dを参照すると、閲覧/編集ワーキングモードアラームフィールド488を選択すると、図17Dのワーキングモードアラームダイアログ512が図17Cの表示フィールド484内に開かれる。ワーキングモードダイアログ512は、正常フローモード(図1および3を参照して上述)に関連するパラメータを表示し、各正常フローモードアラームの数値閾値を設定するためのフィールドを含む。より具体的には、ダイアログ512は、CFアラームフィールド514;PAPアラームフィールド516;AOPアラームフィールド518;LAPアラームフィールド520;潅流流体温度アラームフィールド524;SvO2アラームフィールド526;HCTアラームフィールド528;およびHRアラームフィールド530を含む。特定のアラームフィールドを選択し、上方532および/または下方534矢印を動かすことによって、オペレーターは、各アラームに関連する各パラメータに対する許容可能な上方および/または下方閾値を調整することができる。ダイアログ512はまた、それぞれが特定の正常フローモードアラームに関連するアラーム図画536a〜536iを含む。オペレーターは、関連アラーム図画536a〜536iを選択することによって、上記の任意の正常フローモードアラームを有効/無効にすることができる。ダイアログ512を使ってなされた任意の変更は、図17Aの表示画面400のフィールドに対応して反映される。
図17A、17Bおよび17Eを参照すると、閲覧/編集ノンワーキングモードアラームフィールド490を選択することにより、図17Eの休止モードアラームダイアログ538が、図17Cの表示フィールド484内に開かれる。休止モードダイアログ538は、逆行性フローモード(図1および4を参照して上述)に関連するパラメータを表示し、各逆行性フローモードアラームに対する数値閾値を設定するためのフィールドを含む。図示態様によれば、正常および逆行性フローモードに対する利用可能なアラームは類似するが、同じである必要はない。更に、これらに対して同じであっても、閾値は異なる場合もある。したがって、本発明は、オペレーターが、動作の各フローモードに対する異なるアラームおよび/または異なる閾値を選択できるようにする。より詳しくは、ダイアログ538は、CFアラームフィールド540;PAPアラームフィールド542;AOFアラームフィールド544;AOPアラームフィールド546;LAPアラームフィールド548;潅流流体温度アラームフィールド550;SvO2アラームフィールド552;HCTアラームフィールド556;およびHRアラームフィールド558を含む。特定のアラームフィールドを選択し、上方560および/または下方562矢印を動かすことによって、オペレーターは、各アラームに関連する各パラメータに対する許容可能な上方および/または下方数値閾値を調整することができる。ダイアログ538はまた、それぞれが特定の正常フローモードアラームに関連するアラーム図画564a〜564iを含む。オペレーターは、関連アラーム図画564a〜564iを選択することによって、上記の任意の正常フローモードアラームを有効/無効にすることができる。ダイアログ512の事例の通り、ダイアログ538を使ってなされた任意の変更は、図17Aの表示画面400のフィールドに対応して反映される。一つの実施においてシステム100は、フローモードを変化させる際、所与のフローモードに対する多数のアラーム制限間を自動的に切替えるよう構成することができる。
図17A、17B、17Fおよび17Gを参照すると、オペレーターインターフェース146はまた、種々のパラメータを調整する図画表示機構を提供する。例えば、図16を参照して上述したように、ユーザ表示領域402の一つの優位性は、オペレーターがサブシステム153のポンピングを監視(および調整)することができることである。表示領域410は、心臓102のECG波形414を同定し、ディスプレイ402が、大動脈を通って流れる流体の圧力を波形406で示す。これら二つのディスプレイにおいて、オペレーターは心臓のEGC414のポンピングプロファイル効果を監視することができ、これにより使用者が、ポンピングサブシステム153の拍出量を調整し、ポンピングサブシステム153の速度を調整し(このように、流体108の流速は、システム100を通ってポンピングされる)、サブシステムを手動で始動させ、または始動時間を調整し(例えば、r波380とポンピングサイクル始動との間に固定遅延を与えることにより)、または、心臓が逆行性モードか正常モードかで潅流されているかによって、心臓を適切に満たすことが必要なときは、心臓のECG波形414に沿った予め決定した時間でポンピングするよう、ポンピングサブシステム153を自動的にプログラムすることができる。このようなポンピング調整は、オペレーターインターフェース146の種々の図画表示枠を使って行われ得る。例として、表示画面401の表示フィールド484に位置するECG図画表示枠オプション492をオペレーターが選択すると、オペレーターインターフェース146は、図17Fのダイアログ568を表示する。ダイアログ568は、カーソル570に沿ってECG414の図画表現572を示す。カーソル570の位置は、ポンピングサブシステム153が、心臓102のECG414に関して、出力ポンプストロークを起動するポイント(すなわち、ポンプモーター106が潅流流体108を心臓102に押すポンピングサイクル部分)を表示する。オペレーターインターフェース146の機械的ノブ626(図18Aおよび18Bに示す)を回転させることによって、オペレーターは、ポンピングサブシステム153が、r波パルス380に関連して出力ポンプストロークを起動するときを調整するよう、カーソル570の位置を動かす。図15および16について上述したように、ポンピングサブシステム153は、ECGセンサー142および144からr波信号380を受信する。ポンピングサブシステム153は、カーソル570からのポンピング調整情報と共に、r波信号380を用いて、潅流流体ポンピングを心臓102の拍動に同期させる。別の例において、オペレーターがポンプ調整ボタン625を押すと、オペレーターインターフェース146が図17Gのダイアログ574を表示する。ダイアログ574から、オペレーターは、ポインタ576を選択し、ノブ626を回転してポンプモーター106をオン・オフすることができる。更に、オペレーターは、棒状図画表示578を選択し、ノブ626を回転してポンピングされる、リットル/分で表示される流体の量を調整できる。
オペレーターインターフェース146はまた、複数の警告/通知メッセージを提供する。例として、図17Hにおいて、オペレーターインターフェース146はオペレーターに、電池を充電するために交流電力に接続するよう通知するメッセージを表示する。このメッセージは、例えば、コントローラー150が、切迫した低電池条件を検出したことに応答して現れる。オペレーターインターフェース146は、図17Iのメッセージを表示して、使用者がスタンバイモードに入ることを望むか確認し、かつシステム100の特定の使用に関する情報をダウンロードし、蓄積するために、磁気もしくは光ディスク、携帯型ディスクドライブ、フラッシュメモリ、または他の適切な記憶装置などの携帯型記憶装置をオペレーターが挿入するよう通知する。オペレーターインターフェース146は、識別可能な障害発生に応答して図17Jのエラーメッセージのようなエラーメッセージを表示する。図17Jのエラーメッセージは、例えば、障害を診断および/または修理するサービス技術者を支援するためのエラー情報580を含む。
システム100の動作を実現するための図示の制御システムおよび方法について説明し、システム100の図示の機械的特徴を、単回使用使い捨てモジュール634と複数回使用モジュール650のユニット間の部品の図示部分と共に説明する。より詳細には、図18Aから18Bは、本発明の例示的な態様による図1のシステムの機械的実施600を示す。示されるように、例示的な形態600は、ハウジング602およびカート604を含む。ハウジング602は、概念的に上方602aおよび下方602bのハウジング部分に分かれ、前面606a、背面606b、左側面606cおよび右側面606dを含む。カート604は、プラットフォーム608およびシステム600をあちこちに移動するための車輪610a〜610dを含む。ラッチ603は、ハウジング602をカート604に固定する。可搬性を更に助けるため、システム600はまた、ハウジング602の左側面606cの上方部分602aに装着されたハンドル610ヒンジを、ハウジング602の左側面606cおよび右側面606dの下方部分602bに装着された、二つの固く取り付けられたハンドル612aおよび612bとともに含む。
ハウジング602は更に、取り外し可能な上蓋614、ならびに上方パネル613、およびヒンジ616aおよび616bにより下方パネル617にヒンジ接続した中間パネル616を有する前面パネル615を含む。上蓋614は取り外しを助けるためのハンドル614aおよび614bを含む。図示態様において、上方パネル613は、上蓋614を取り外すと、パネル613も同様に取り外されるように、上蓋614にネジ止め、ボルト止めまたはそうでなければ接合止めされる。
図18Aに示すように、システム600は、交流電力ケーブル618、ハウジング602の左側面606cの下方部分602bの両方に配置した、電力ケーブル618を固定するための枠620を一緒に含む。同様に、左側面602cの下方部分602bに配置したソフトウェアリセットスイッチ622により、オペレーターがシステムソフトウェアおよび電子機器を再起動できる。
図18Aおよび18Bに示すように、実装600はまた、オペレーターインターフェース146を、オペレーターインターフェースモジュール146を保持するための受台(cradle)623を一緒に含む。オペレーターインターフェースモジュール146は、たとえば図17Aから17Jの表示画面を例とする、オペレーターに情報を表示するディスプレイ624を含む。上述のとおり、オペレーターインターフェースモジュール146は、種々のパラメータを選択するための、回転可能で押すことのできるノブ626、および図17Aから17Jの表示画面も含む。ノブ626はまた、システム100の動作全般にわたる手操作制御を提供するためと、同様に、システム100の自動制御用パラメータを設定するために使用され得る。例えば、ノブ626は、潅流流体の流速、ガス流速などを増加するよう、コントローラー150に指令を提供するために用いることができる。図1、14および17Aから17Jについて上述したように、オペレーターインターフェースモジュール146は、それ自体保有する電池368を含み、受台623から取り外すことができ、無線モードで使用できる。一方、受台623において、電力接続は、オペレーターインターフェースモジュール146の充電を可能にする。示されるように、オペレーターインターフェースモジュールは同様に、ポンプ制御し、アラームを消音にするまたは使用不可にする、スタンバイモードに入るまたはスタンバイモードから出る、ECG同期モードに入るまたはECG同期モードを調整する、および潅流クロックを始動するための、臓器ケア中に得られたデータ表示を起動する、制御ボタン625を含む。
図18Bに示すように、図示実施600はまた、電池格納部628および酸素タンク架630を含み、両方とも、ハウジング602の右側面606dの下方部分602bに配置されている。示されるように、電池格納部628は、図14に関して上述したように、三つのシステム電池352a〜352cを収納する。一つの特徴によれば、電池格納部626は、三つの電池ロック632a〜632cを含む。図14に関して上述のとおり、電池ロック632a〜632cは、機械的に相互運用され、三つの電池352a〜352cのうちの一つだけを任意の所与の時間に取り外すことができる。
使い捨てモジュール634および複数回使用ユニット650は、耐久性があり、なおかつ軽量な材料で構成される。一部の図示態様において、ポリカーボネートプラスチックがユニット634と650の一つまたは複数の格納部を形成するのに使用される。さらなる重量軽減のために、シャーシ635および複数回使用モジュールシャーシ602が、例えば、炭素繊維エポキシ複合材料、ポリカーボネートABSプラスチック混合物、ガラス繊維強化ナイロン、アセタール、強化ABS、アルミニウムまたはマグネシウムなどの低重量材料から形成される。一図示態様によれば、システム600全体の重量は、複数回使用モジュール、心臓、電池、ガスタンク、ならびにプライミング溶液、栄養素、保存剤および潅流流体を含んで約85ポンド未満、ならびにこのような上記の物品を除いて約50ポンド未満である。別の図示態様によれば、使い捨てモジュール634の重量は、任意の溶液を除いて約12ポンド未満である。さらなる図示態様によれば、複数回使用モジュール650は、流体すべて、電池352a〜352cおよび酸素供給部172を除いて、約50ポンド未満である。
図19Aから19Cを続いて参照すると、本発明の図示態様によれば、図18Aおよび18Bの実施600の種々の図が、上蓋614および上方前面パネル613が取り外された状態で、前面中央パネル616が開いた状態で示されている。図19Aから19Cに関して、システム100は、単回使用使い捨てモジュール634(図24Aから25Cを参照して以下に詳しく図示し、説明する)および複数回使用モジュール650(図20に単回使用モジュールなしで示す)として構成される。以下に更に詳しく説明するが、図示態様の一つの特徴によれば、システム100の血液接触部品はすべて、単回使用使い捨てモジュール634内に含まれるので、使用後、単回使用使い捨てモジュール634全体は廃棄され、新規モジュール634が据え付けられ、そしてシステム100は非常に短時間で再利用可能となる。
図示態様によれば、単回使用モジュール634は、単回使用モジュール634の全部品を支持するためのシャーシ635を含む。図25Aから25Cに関してより詳しく説明すると、単回使用モジュール634の部品は、図5Aから5Fについて詳細に上述した臓器チャンバーアセンブリ104、潅流流体レザバー160、酸素供給器114、潅流流体ポンプインターフェース300、ならびに全ての種々の流体導管および周辺監視部品633を含む。
図19Aから20Aに示すように、上蓋614を取り外し、前面パネル616を開いて、オペレーターは、使い捨て可能634および複数回使用650モジュールの多数の部品に容易にアクセスできる。例えば、オペレーターは、取り付け、取り外しならびに栄養サブシステム115の栄養素116および保存剤118の供給レベルを見ることができる。オペレーターは同様に、栄養素116および保存剤118の注入ポンプ182の動作を制御できる。オペレーターはまた、心臓102などの臓器を臓器チャンバーアセンブリ104内部にカニューレ挿入することができる。図21Aから21Cを参照して以下に詳細に説明するように、この構成はまた、オペレーターに、単回使用モジュール634を複数回使用モジュール650に/から、取り付けおよび/または取り外しする十分なアクセスを提供する。
図20Aは、単回使用モジュール634を取り除いた複数回使用モジュール650の前面斜視図を示す。示されるように、複数回使用モジュール650は、カート604;ハウジング602の下方部分602bと、それに外部で装着された全部品と、それに含まれる部品(以下に詳しく図21Aから21Cおよび図23Aから23Cについて説明する)と一緒に;ハウジング602の上方部分602aおよびそれに外部で装着された、上蓋614、ハンドル610、612aおよび612b、ならびに前面パネル616を含む全部品;オペレーターインターフェースモジュール146;ならびに潅流流体ポンピングモーターアセンブリ106を含む。図21Aから21Cを参照して以下に詳しく説明するように、複数回使用モジュール650は同様に、単回使用モジュール534を所定位置に収容し、ロックするためのバスケットアセンブリ638を含む。
図20Aに示され、図22Aから22Cを参照して以下で詳しく説明されるように、複数回使用モジュール650はまた、使い捨てモジュール634のフロントエンド回路基板(図24Dに637で示される)とインターフェースを取るためのフロントエンドインターフェース回路基板636を含む。同様に、図22Aから22Cを参照して詳しく説明するように、複数回使用モジュール650および使い捨てモジュール634間の電力および駆動信号接続は、フロントエンドインターフェース回路基板636とフロントエンド回路基板637それぞれの対応する電気機械的コネクター640ならびに647により行われる。例として、フロントエンド回路基板637は、電気機械的コネクター640および647を介してフロントエンドインターフェース回路基板636から、使い捨てモジュール634に対する電力を受け取る。フロントエンド回路基板637は、同様にフロントエンドインターフェース基板636ならびに電気機械的コネクター640および647を介して、コントローラー150から各種部品(例えば、ヒーターアセンブリ110、および酸素供給器114)に対する駆動信号を受信する。フロントエンド回路基板637とフロントエンドインターフェース回路基板636は、光コネクター(図22Bの648で示される)により制御およびデータ信号(例えば、コントローラー150と使い捨てモジュール134の間)をやり取りする。図22Aから22Fを参照してより詳細に述べるように、フロントエンド637とフロントエンドインターフェース636回路基板との間に使用されるコネクター構成は、信号と複数回使用モジュール634および650との間の重要な電力ならびにデータそれぞれの相互接続が、臓器輸送中に経験する可能性がある起伏の多い領域の輸送中でさえも、動作し続けることを確実にする。
図20Aに示すように、もう一つの特徴によれば、ハウジング602の上方部分602aは、不注意に漏れる可能性のある任意の潅流流体108ならびに/または栄養素116および/もしくは保存剤118溶液を捕捉するように構成されている流体密封なベイスン652を含む。ベイスン652はまた、任意の漏れた流体108または溶液116/118がハウジング602の下方部分602bに流れないようにする。このように、ベイスン652は、システム100の電気部品をそのような任意の漏れた流体108または溶液116/118から密閉する。密閉された部品は、例えば、図23Cおよび23Dで示され参照して詳しく説明する電力基板720を含む。ベイスン652は、拡張して潅流流体ポンプ106を任意の不注意に漏れた流体から密閉するセクション658を含む。もう一つの特徴によれば、ベイスン652は、任意の特定時間にシステム100内部に含まれる潅流流体108保守溶液116/118を含む)の全量を収納する寸法になっている。
図20Bについて、図示態様のさらなる特徴によると、ベイスン652のポンプ覆い部658の外側659は、スロット660を含む。図21Aから21Cおよび24Aを参照して以下に詳しく説明されるように、スロット660は、単回使用モジュール634を複数回使用モジュール650に取り付ける間、単回使用モジュール634の突出部662に係合する。
単回使用モジュール634の複数回使用モジュール650への取り付けについて述べると、図21Aは、単回使用モジュール634を収容し、所定の位置にロックするための、複数回使用モジュール650に配置した上述のブラケットアセンブリ638の詳細図を示す。図21Bは、ブラケットアセンブリ638の上で、複数回使用モジュール650内に取り付けられる単回使用モジュール634の側面斜視図を示し、図21Cは、複数回使用モジュール650内部に取り付けた単回使用モジュール634の側面図を示す。図21Aおよび21Bを参照すると、ブラケットアセンブリ638は、装着用孔644a〜644dおよび646a〜646dそれぞれを介して上方ハウジング部分602aの背面パネル654の内側に装着される二つの装着ブラケット642aおよび642bを含む。横木641は、装着ブラケット642aおよび642b間に伸び、それらに回転可能に結合される。ロックアーム643および645は、横木641に沿って隔てられ、横木641から半径方向に伸びる。各ロックアーム643およびお645は、それぞれ下向きに伸びるロック用突出部643aおよび645bを含む。レバー639は横木641に取り付けられ、横木641から半径方向に伸びる。矢印651の方向にレバー639を操作すると、ロックアーム643および645がハウジング602の後方606bに向けて回転する。矢印653の方向にレバー639を操作すると、ロックアーム643および645がハウジング602の前方606aに向けて回転する。
図10について上述したように、潅流ポンピングインターフェースアセンブリ300は、四つの突出している熱かしめ点321a〜321dを含む。図24Aに示すように、組み立て中に、突出部321a〜321dは、対応する開口部657a〜657dに整列し、開口部657a〜657dを通って突出部321a〜321dに熱でかしめられ、ポンピングインターフェースアセンブリ300の外側304を、単回使用モジュールシャーシ635のC形状ブラケット656に堅く取り付ける。
図10、20B、21A、21Bおよび24Aを参照すると、取り付けている間、第一の工程で、単回使用モジュール634は、単回使用モジュール634を前方(図21Bに示される)に傾けながら、複数回使用モジュール650内部に下ろされる。この方法は、図24Aの突出部662を図20Bのスロット660の中に滑り込ませる。これは同様に、図10に示されるように、ポンピングインターフェースアセンブリ300のフランジ328を、潅流ポンプアセンブリ106のドッキングポート342、ならびにポンプアセンブリブラケット346の形体344aおよび344bの対応する一つの時計方向側の、ポンプインターフェースセンブリ300のテーパ付き突出部323aおよび323b内に位置合わせする。第二の工程において、単回使用モジュール634は、単回使用モジュールシャーシ635のロックアーム受台672および674が、バネ荷重式ロックアーム638の突出部643および645に係合するまで後方に回転され、ロック突出部643aおよび645aが、ロックアーム受台672および674の高さを通過するまで、突出部643および645を上方(方向651)に回転させ、そのポイントでバネがロックアーム638を下方(方向653)に回転させて、ロック突出部643aおよび645aが、着脱可能に使い捨て可能なモジュールシャーシ635のロックアーム受台672および674に着脱可能にロックすることができる。この動作は、図24Aの使い捨てモジュールシャーシ突出部662の668の湾曲面を回転させ、図20Bのベイスンスロット660の平坦側670に係合させる。レバー639は、ロックアーム638を上方(方向651)に回転して、単回使用モジュール635を緩めることができる。
図10に示すように、この動作はまた、ポンプインターフェースアセンブリ300を、ポンプアセンブリ106に対して反時計方向に回転させて、フランジ328をドッキングポート342のスロット332にスライドさせ、同時に、それぞれのブラケット形体344aおよび344bの下へとテーパ付き突出部323aおよび323bをスライドする。テーパ付き突出部323aおよび323bが、それぞれのブラケット形体344aおよび344bの下にスライドすると、ブラケット形体344aおよび344bの内面が、テーパ付き突出部323aおよび323bのテーパ付き外面に係合して、ポンプ駆動体334の方向に向かってポンプインターフェースアセンブリ300の内側306を引き込み、ポンプインターフェースアセンブリ300とポンプアセンブリ106との間の流体密封な密閉を形成する。レバー639は、使い捨てモジュール634を複数回使用モジュール650内部に固定して保持することができる。
図20Aを参照して簡潔に上述したように、単回使用モジュール374を複数回使用モジュール650内にインターロックすると、複数回使用モジュール650のフロントエンドインターフェース回路基板636と、単回使用モジュール634のフロントエンド回路基板637との間の電気相互接続および光相互接続の両方が形成される。電気および光接続は、複数回使用モジュール650が、単回モジュール634に電力供給し、制御し、情報を収集することを可能にする。図22Aは、複数回使用モジュール650のフロントエンドインターフェース回路基板636の対応する光カプラーおよび電気機械的コネクターと通信するよう使用される単回使用使い捨てモジュール634のフロントエンド回路基板637の種々の光カプラーならびに電気機械的コネクターを示す概念図である。この対応は一対一であるため、個々の光カプラーおよび電気機械的コネクターは、フロントエンド回路基板650の図示よりはむしろ、フロントエンド回路基板637を参照してのみ説明される。
図示態様によれば、フロントエンド回路基板637は、光カプラーおよび電気機械的コネクターを介してフロントエンドインターフェース回路基板636から信号を受信する。例えば、フロントエンド回路基板637は、電気機械的コネクター712および714を介してフロントエンドインターフェース回路基板636から電力358(図14にも示す)を受け取る。フロントエンド回路基板637は、電力を単回使用モジュール634の個々のセンサーおよびトランスデューサーなど、単回使用モジュール634の部品に供給する。任意で、フロントエンド回路基板637は、電力を割り当てる前に適切なレベルに変換する。フロントエンドインターフェース回路基板636は、同様に、図13のヒーター駆動信号281aおよび281bを、電気機械的コネクター704および706を介して図6Eのヒーター246の適切な接続282aに提供する。同様に、電気機械的コネクター708および710は、図13のヒーター駆動信号283aおよび283bを、ヒーター248の適切な接続部282bに結合する。フロントエンド回路基板637は、除細動コマンドを、フロントエンドインターフェース回路基板636から電気機械的コネクター687を介して受信する。それに応じて、フロントエンド回路基板637は、適切な電流および電圧レベルを有する除細動信号143を発生し、図5Eに示すように信号143を、電気的インターフェース接続部235a〜235bを介して臓器チャンバーアセンブリ104に結合する。
別の図示態様において、回路基板636経由ではなく、外部電源(図示しない)から除細動コマンドが供給される。例として、図5Eおよび図1を参照して、外部除細動装置は、図24Eの電気的インターフェース接続部235a〜235bに接続される電気的カプラー613に差込接続することができる。外部除細動装置は、カプラー613ならびにインターフェース接続部235aおよび235bを通して電極142および144に除細動信号143を送信する。次に電極142および144は、信号143を心臓102に送る。この代替態様により、信号143が回路基板618、636、および637を経由せずに、使用者が除細動(およびぺーシング)を提供することができる。例示的な外部除細動装置は、Zoll M-Series携帯型除細動器を含み得る。
図示態様によれば、フロントエンド回路基板637は、温度、圧力、流速、酸素/赤血球およびECGセンサーから信号を受信し、信号を増幅し、信号をデジタル様式に変換し、それらを、光カプラーを介してフロントエンド回路基板636に提供する。例えば、フロントエンドインターフェース回路基板637は、ヒータープレート250(図6Aおよび13に示す)上のセンサー120から、フロントエンドインターフェース回路基板636に光カプラー676を介して温度信号121を提供する。同様に、フロントエンド回路基板637は、ヒータープレート252(図6Aおよび13に示す)上のセンサー122から、フロントエンドインターフェース回路基板636に光カプラー678を介して温度信号123を提供する。フロントエンド回路基板637はまた、サーミスターセンサー124(図6Aおよび13に示す)から、フロントエンドインターフェース回路基板636に、それぞれの光カプラー680および682を経由して潅流流体温度信号125および127を提供する。潅流流体圧信号129、131および133は、それぞれの圧力トランスデューサー126、128および130から、フロントエンドインターフェース回路基板636に、それぞれの光カプラー688、690および692を経由して提供される。フロントエンドインターフェース回路基板637は同様に、潅流流体速度信号135、137および139を、それぞれの流速センサー134、136および138からフロントエンドインターフェース回路基板636に、それぞれの光カプラー694、696および698経由で提供する。更に、フロントエンド回路基板637は、酸素飽和141およびヘマトクリット145信号を、酸素飽和センサー140からフロントエンドインターフェース回路基板636に、それぞれの光カプラー700および702経由で提供する。
他の図示態様において、前述のセンサーの一つまたは複数は、処理および分析のため、主システム基板718(図23Dを参照して以下に説明する)に直接線接続されるので、フロントエンドインターフェース基板636およびフロントエンド回路基板637を共に迂回する。このような態様は、使用者が廃棄する前に、一つまたは複数のセンサーを再利用することを好む場合に望ましい場合がある。このような他の一例では、流速センサー134、136および138ならびに酸素およびヘマトクリットセンサー140は、図23Cに示す電気的カプラー611を通してシステム主基板718に直接電気的に結合され、回路基板636および637との任意の接続を迂回する。
図11から16に関して上述したように、コントローラー150は、フロントエンドインターフェース回路基板636に提供された信号を、他の信号と共に使用してデータを送信し、およびそうでなければ、システム100の動作を制御する。図17Aから17Jに関して説明したように、コントローラー150はまた、センサー情報を表示し、オペレーターインターフェースモジュール146を経由して、センサー情報に関連する種々のアラームをオペレーターに表示可能である。
図22Bは、回路基板636と637との間の電気的相互接続として使用するタイプの例示的な電気機械的コネクター対の動作を示す。同様に、図22Cは、回路基板636と637との間の光結合された相互接続として使用するタイプの光カプラー対の動作を示す。使用される電気的コネクターおよび光カプラー両方の一つの優位性は、システム100が、例えば、空港の駐機場走行、悪天候中の飛行機輸送、または起伏のある道路の救急輸送などの、起伏の多い領域の輸送時でさえ、接続一体性を確実にすることである。更に光結合は、システム100の他の機器から、温度、圧力およびECGセンサーを電気的に分離し、除細動信号がシステム100にダメージを与えることがないように防止する。フロントエンド基板637への電力は、フロントエンドインターフェース基板636に配置した直流電源で隔離される。
図22Bに示すように、コネクター704のような電気機械的コネクターは、フロントエンドインターフェース回路基板636に配置した部分703およびフロントエンドインターフェース基板637に配置した部分705のような部分を含む。部分703は、実質的に真っ直ぐで硬いステム703b上に装着された拡大頭部703aを含む。頭部703は、外側向きに面する実質的に平坦な面708を含む。部分705は、面708に接触するための端部705aおよびバネ荷重式端部705bを含む、実質的に真っ直ぐで硬いピン705を含む。ピン705は、拡大頭部703aの面708に電気的接触を保ちながら、矢印721で示す方向に軸方向に出入りすることができる。この特徴は、単回使用モジュール634が、起伏の多い領域の輸送に関連した機械的妨害のときでさえ、複数回使用モジュール650との電気的接触を維持することを可能にする。平坦な面708の優位性は、複数回使用モジュール650の内面を容易に洗浄可能にすることである。図示態様によれば、システム100は、単回使用使い捨てモジュール634と複数回使用モジュール650との間の電気相互接続用コネクターを使用する。例示的なコネクターは、Interconnect Deviceの部品番号101342である。しかし、任意の適切なコネクターも使用できる。
フロントエンド回路基板637の光カプラー684および687などの光カプラーが用いられ、これは、フロントエンドインターフェース回路基板636の光カプラー683および685などの対応する対の相手方部品を含む。光カプラーの光送信器および光受信器部分は、回路基板636または637のいずれかに配置することができる。例えば、ECG信号379の場合は、光送信器684は、電気信号379を受信するため回路基板637に配置され、回路基板636の光受信器683に信号を光結合する。除細動信号が回路基板636および637を通って(主基板718に直接ではなく)送信される場合、回路基板636の光送信器685は、回路基板637の光受信器687に信号を光結合する。
電気機械的コネクターが使用される場合、光送信器と対応する光受信器との間の光整合の許容誤差範囲により、起伏の多い領域の輸送間でさえ、回路基板636および637が光通信を維持することができる。図示態様によれば、システム100は、Osramによる5FH485Pおよび/または5FH203PFAで製造した光カプラーを使用する。しかしながら、任意の適切なカプラーも使用できる。
カプラーおよびコネクターは、システム100内でのデータ伝送を容易にする。フロントエンドインターフェース回路基板636およびフロントエンド回路基板637は、同調する様式で、システム100に関連してデータを伝送する。図22Cに示すように、回路基板636は、コントローラー150にクロック同期するクロック信号を、フロントエンド基板637に送信する。フロントエンド回路基板637は、このクロック信号を受信し、コントローラー150のクロック周期に、システムデータ(温度、圧力、ECG、r波検出、または他の所望の情報)の送信を同期させるためその信号を使用する。このデータは、クロック信号ならびにデータタイプおよびソースアドレス(すなわち、データを提供するセンサーのタイプおよびロケーション)のプリセットシーケンスに従い、フロントエンド回路基板637のプロセッサーによりデジタル化される。フロントエンドインターフェース回路基板636は、フロントエンド基板637からデータを受信し、図11、12および14を参照して上述したように、評価、表示、およびシステム制御において、コントローラー150で使用するために、そのデータセットを主基板618に送信する。さらなる光カプラーを、複数回使用モジュールから単回使用モジュールに制御データを送信するために、複数回使用モジュールと単回使用モジュールとの間に追加することができ、そのようなデータは、ヒーター制御信号またはポンプ制御信号を含む。
単回使用モジュール634と複数回使用モジュール650との間の機械的、電気的および光相互接続について説明したので、次は複数回使用モジュール650のさらなる部品について、図23Aから23Dを参照して説明し、続いて図24Aから28Cに関して単回使用モジュール634の部品の機械的整合について説明する。ハウジング602の壁を取り外し、更に前述したこれら部品を示す図23Aから23Dのように、複数回使用モジュール650はハウジング602の下方部分602bに配置した内蔵ガス供給部172を含む。ガス供給部172は、タンク172に当接する支持構造712によりガスタンク架630内に配置したタンクとして図23Aから23Dに図示される。任意でガス供給部172は、任意に、ストラップおよびバックルアセンブリ714または他の適切な機構で、ガスタンク架630内に更に固定してもよい。図23Bを特に参照し、図1を参照して上述したように、ガス供給部172は、ガス調節器174およびガス流チャンバー176を通してシステム100にガスを供給する。ガス圧センサー132は、ガス供給部172のガス圧を測定し、ガス圧ゲージ178は、ガス供給部172の充満状態を可視表示する。更に、コントローラー150とガス流チャンバー176との間の電気接続により、コントローラー150で酸素供給器114に流れるガスを自動的に調節することができる。
図23Cに最も明瞭に示すように、電池架628は、電池352a〜352cを収納する。図14で参照したように、システム100が作動中、電池352a〜352cの一つ以上が、所与時間で電池架628から取り外されるのを防止するため、ロックアウト機構を使用する。
上述のとおり、システム100は、システム100に、システム100から、およびそのシステム100内で、電力分配およびデータ伝送を容易に行うため、複数の相互接続された回路基板を含む。特に、図22Aから22Eを参照して上述し、図23Cに示すとおり、複数回使用モジュール650は、単回使用モジュール650のフロントエンド回路基板637に光学的におよび電気機械的に(electromechanically)結合するフロントエンドインターフェース回路基板636を含む。また、図23Cに示すように、システム100は更に、複数回使用モジュール650に配置した、主基板718、電力回路基板720、および電池インターフェース基板711を含む。主基板718は、システム100が、所与の回路基板の動作中に故障が生じる場合(図23Dに示すように)、主基板718がポンピングおよび加熱パラメータを不揮発性メモリに保存するフォールトトレラントになるように構成される。システム100が再起動するときに、そのようなパラメータに従い再捕捉されて、実行を継続することができる。
図23Dの概念図を参照すると、ケーブル配線731により、電源350から電源回路基板720にコネクター744および730経由で電力(交流電力351など)が供給される。電源350は、交流電力を直流電力に変換し、上述の図14の電力サブシステムを参照して上述されている直流電力を配置する。また、図14および22Aを参照すると、電力回路基板720は、直流電力およびデータ信号358を、それぞれのケーブル配線727および729を経由して、コネクター726および728から対応するフロントエンドインターフェース回路基板636上のコネクター713および715に結合する。ケーブル729は、電力およびデータ信号を、フロントエンドインターフェース基板636に伝える。ケーブル727は、電力を、フロントエンドインターフェース基板636を介してヒーター110に伝える。コネクター713および715は、単回使用モジュール634に電力供給するため、単回使用モジュール634のフロントエンド回路基板637上のコネクター712および714(図22Aに関して上述)に嵌合する。
図23Dに示すとおり、電力回路基板720は、電力回路基板720上のコネクター732および734それぞれから、対応する主基板718上のコネクター736および738に、ケーブル733および735経由で直流電力358およびデータ信号を供給する。また、図14および19Aを参照すると、ケーブル737は、主基板718上のコネクター740からオペレーターインターフェースモジュール146に、オペレーターインターフェースモジュール受台623のコネクター742を経由して直流電力358およびデータ信号を結合する。電力回路基板720はまた、コネクター745および747からケーブル741および743を経由して、電池インターフェース基板711上のコネクター749および751に直流電力358ならびにデータ信号を供給する。ケーブル741は直流電力信号を伝え、ケーブル743はデータ信号を伝える。電池インターフェース基板711は、直流電力およびデータを電池352a、352bおよび352cに割り当てる。電池352a、352bおよび352cは電子回路を含み、図14で上述のとおり、それらによりそれぞれの充電状態を監視するよう相互通信し、コントローラー150が、電池352a〜352cの充電および放電を監視し、制御することが可能になる。
一部の図示態様によれば、コントローラー150は主回路基板718に配置され、システム100により必要な制御および処理すべてを実行する。しかしながら、他の図示態様においては、コントローラー150は、一部をフロントエンドインターフェース回路基板636に、一部を電力回路基板720に、および/または一部をオペレーターインターフェースモジュール146に、その処理機能を配置して分散される。適切なケーブル配線が、コントローラー150が、システム100内で分散されているかどうか、またどの程度かによって、個々の回路基板間に提供される。
図19Aから19Cおよび図23Aから23Cを参照して上述のとおり、システム100は、機械的に、単回使用使い捨てモジュール634および複数回使用モジュール650に区分けされる。同様に上述のとおり、図示態様によれば、単回使用モジュール634は、システム100の潅流流体108接触素子/アセンブリのすべてまたは実質的にすべてを、個々の周辺部品、流路、センサーおよび血液接触部品を動作する支援電子機器と一緒に含む。図22Aおよび23Dを参照して上述のとおり、図示態様によれば、モジュール634は、プロセッサーを含まない代わりに、例えば、制御のために、フロントエンドインターフェース回路基板636、電力回路基板720、オペレーターインターフェースモジュール146、および主回路基板718の間に分散させることができるコントローラー150に依存する。しかしながら、他の図示態様においては、単回使用モジュール634は、それ自体のコントローラー/プロセッサーを、例えばフロントエンド回路基板637に含んでもよい。
図24Aから28Cを参照して、単回使用モジュール634は、それに含まれる部品に関連して次に説明する。その後、例示的な順行性および逆行性モードを、記述部品を通して明らかにする。
先ず、図24Aを参照すると、使い捨てモジュール634は、上方750aおよび下方750b部分を有するシャーシ635を含む。上方部分750aは、個々の部品を支持するプラットフォーム752を含む。下方部分750bは、プラットフォーム752を支持し、複数回使用モジュール650に旋回自在に接続するための構造を含む。より詳しくは、下方シャーシ部分750bは、潅流流体ポンプインターフェースアセンブリ300を強固に装着するためのC形状マウント656、および図20Bのスロット660の中にスライドし、スナップ結合するための突出部662を含む。下方シャーシ部分750bは、同様に酸素供給器114を装着する構造を備える。図25Aおよび25Cに示すとおり、下方部分750bは更に、ヒーターアセンブリ110を装着する構造を含む。更に、レザバー160は、プラットフォーム725の下側に取り付けられ下方シャーシ部分750bの中に入り込む。酸素飽和およびヘマトクリットセンサー140(図24Aに示され、図28Aから28Cを参照して以下に詳しく説明)、流速センサー136(図24Aに示す)、流速センサー138(図25Bに示す)のような個々のセンサーが、下方シャーシ部分750b内部に配置され、および/または取り付けられる。流圧コンプライアンスチャンバー188(図25Bに示す)も同様に、下方シャーシ部分750b内部に配置される。図24Dに示すとおり、下方シャーシ部分750bはまた、フロントエンド回路基板637を装着する。下方シャーシ部分750bに配置された導管は、単回使用モジュール634を通る正常流路および逆行流路を参照して、以下に詳しく説明される。
図24Aから25Cを参照して、上述のとおり、上方シャーシ部分750aは、プラットフォーム752を含む。プラットフォーム752は、その中に形成したハンドル752aおよび752bを含み、単回使用モジュール634を、複数回使用モジュール650の中への据え付けること、および複数回使用モジュール650から取り外すことを助ける。代わりに、そのようなハンドルは、複数回使用モジュール内に単回使用モジュールを据え付ける際、よりアクセスし易くできるように、プラットフォーム757に配置してもよい。図24Cに最も明瞭に示すとおり、傾斜プラットフォーム757は、プラットフォーム752上に装着する。臓器チャンバーアセンブリ104は、傾斜プラットフォーム757に装着する。図示態様によれば、単回使用モジュール634が複数回使用モジュール650内部に据え付けてあり、プラットフォーム757は、水平に対して約10度から約80度に傾斜し、臓器チャンバーアセンブリ104内に配置された場合の心臓102の手術に最適な角度を提供する。一部の図示態様において、プラットフォーム757は、水平に対して約20度から約60度、または約30度から約50度の角度で傾斜される。フローモード切替弁112、流速センサー134、ならびに潅流流体流圧コンプライアンスチャンバー184および186は、同様に、傾斜プラットフォーム757に装着する。
図24Eを参照すると、幾つかの流体ポートは、プラットフォーム752に装着する。例えば、流体サンプリングポート754は、オペレーターが、臓器チャンバーアセンブリ104のカニューレ挿入インターフェース162を介して大動脈158の中に、および/または大動脈から、流れる流体をサンプリングすることを可能にする。流体サンプリングポート755は、オペレーターが、臓器チャンバーアセンブリ104のインターフェース170を介して左心房152に流れ込む流れをサンプリングすることを可能にする。更に、流体ポート758は、オペレーターが、臓器チャンバー104の肺動脈インターフェース166を介して肺動脈164から流れ出る冠血管流をサンプリングすることを可能にする。図示態様によれば、オペレーターは、それぞれの弁754a、755aもしくは758aまたは758aの向きを変えて、サンプリングポート754、755および758に流れるようにすることができる。選択された特定のポートからの流れが、信号共通排出口764で提供される。一つの特徴によれば、選択した最も左のポートから流れる流体だけが、排出口764に供給される。例として、オペレーターがポート755および758を両方とも開ける場合、ポート755からの流れだけが、排出口764に供給される。このように、システム100は、オペレーターが複数ポートからのサンプルを混合する可能性を低減する。
単回使用モジュール634はまた、オペレーターが、例えばレザバー160を介して、潅流流体108の中に薬物を投入することができるように、弁762aで作動可能な一般的な投入ポート762を含む。サンプリング764および投入762ポートは両方とも、プラットフォーム752に装着する。同様に、上方シャーシ部分750aには、栄養素116および保存剤118流体を潅流流体108の中に流すための、弁766aで作動可能な注入投与ポート766が配置されている。上方シャーシ部分750aはまた、放血した血液をドナーからレザバー160に充填するためのチューブ774を含む。図24Dに示すとおり、単回使用モジュール634はまた、滅菌操作中に単回使用モジュール634を通って滅菌ガスが流れる間に使用される選択流体ポートのベントキャップに取って代わるための非ベントキャップ776を含む。好ましくは、このような滅菌は、単回使用モジュール634の売却前に行われることが好ましい。
上方シャーシ部分750aはまた、心臓102がカニューレ挿入され、臓器チャンバーアセンブリ104内で、正常フローモードで作動している場合に、左心房152に加わる後方圧を調節するためのフロークランプ190を含む。上方シャーシ部分750aは更に、細流弁768を含む。細流弁768は、ハンドル768aで開閉でき、逆行性フローモード中に、左心房152を潤すよう、左心房152に対し僅かな流体流を調節する。上方シャーシ部分750aはまた、それぞれの弁770aおよび772bで動作可能な酸素供給器114を浄化するための、追加溶液772の注入用ポート770を含む。
図24Aおよび24Dに最も明瞭に示すように、上方シャーシ部分750は更に、流体圧プローブ126、128および130を含む。図1を参照して上述のとおり、プローブ126は、大動脈158の中に/外へ流れる潅流流体108の圧力を測定する。プローブ128は、肺静脈168を通って左心房152に流れ込む潅流流体108の圧力を測定する。プローブ130は、肺動脈164から流れ出る潅流流体108の圧力を測定する。各プローブは、フロントエンド回路基板637のそれぞれの信号129、131および133に結合するための、それぞれのコネクター126a、128aおよび130a(明確にするため短縮して示す)を含む。
図24Cの単回使用モジュール654断面側面図を特に参照すると、レザバー160は、幾つかの部品を含む。より具体的にはレザバー160は、四つの注入口:782、784、786および788を含む。注入口782は、潅流流体108を、臓器チャンバー194のドレイン201からレザバー160内に移送する。注入口784は、チューブ774から放血血液を受け取る。注入口786は、酸素供給器114から酸素添加した潅流流体108を受け取り、注入口788は、後方圧クランプ190を介して、大動脈158から潅流流体108を受け取る。レザバー160はまた、潅流流体を一方向注入口弁191に供給する排出口790を有する。レザバー160は更に、脱泡材(defoamer)778およびフィルター780を含む。脱泡材778は、レザバー160に入ると潅流流体108からの泡を取り除く。図示態様によれば、脱泡材は、消泡剤被覆の多孔質ポリウレタン発泡部材で作られる。フィルター780は、レザバー160に入るときの潅流流体からの細片、血液粒子、塞栓、および空気泡をフィルター処理するポリエステルフェルトである。
概要で上述のとおり、単回使用モジュール634で使用されるO2飽和およびヘマトクリットセンサー140は、従来技術アプローチを超える重要な優位性を含む。図28Aから28Cは、本発明のO2飽和およびヘマトクリットセンサー140の図示態様を示す。図28Aに示すとおり、センサー140は、赤外線センサーがそこを通して赤外線を当てることができる、少なくとも一つの光学的にクリアな窓を有する、導管798に接続した、インラインキュベット型のチューブ812部分を含む。インラインキュベット型チューブ812に使用した例示的なセンサーは、DatamedのBLOP4である。図28Bの断面図で示すとおり、キュベット812は、コネクター801aおよび801bを有する一体成形部品である。コネクター801aおよび801bは、導管端798aおよび798bのそれぞれの接続レセプタクル803aならびに803bに隣接するよう構成してある。キュベット812と導管端798aおよび798bとの間の相互接続は、導管798およびキュベット812内側に実質的に一定の断面流領域を備えるように、構成してある。この構造により、キュベット812と導管798との間のインターフェース814aおよび814bでの不連続性を減少させるか、一部の態様では実質的に取り除く。不連続性の減少/除去により、血液ベース潅流流体108は、より正確な潅流流体酸素レベル値の読み取りを可能にする赤血球溶解の低減および乱流の低減した状態で、キュベットを通過することができる。これにより同様に、システム100による潅流流体108に対するダメージを低減し、究極的には、システム100で潅流している間、心臓102に加わる損傷を低減する。
図示態様によれば、キュベット812は、任意の適切な光透過性ガラスまたはポリマーなどの、軽量透過性材料から形成される。図28Aに示すとおり、センサー140はまた、キュベット812を通過する潅流流体108に光波を送るための、ならびに潅流流体108の酸素量を測定するために光透過および/または光反射を測定するための光送信器816を含む。図28Cに例示するとおり、一部の態様において、光送信器はキュベット812の片側に置き、潅流流体108を通る光透過を測定する検出器が、キュベット812の対向する側に配置される。図28Cはキュベット812および送信器816の上断面図を示す。送信器816は、送信器内部平坦面811および813がキュベット平坦面821および823に対してはめ合わせるように、送信器816の内部凸(interior convex)面815を、キュベット812凸面819にはめ合わせながら、キュベット812周りにそれぞれ取り付ける。動作において、紫外線が送信器816から送信されると、流体108内側キュベット812を通って、平坦面811から紫外線が走行し、それを平坦面813で受ける。平坦面813は、流体108を通る光透過を測定するための検出器で構成してもよい。
正常および逆行性のフローモード両方で単回使用モジュール634を通る流路について、図24Aから24Dおよび図25Aを参照して説明する。図1から4を参照して上述のとおり、システム100は、図3に示す正常フローモード、および図4に示す逆行性フローモードの二つの動作モードで心臓102を維持することができる。図1で上述のとおり、正常モードと逆行性フローモードとを変えるため、システム100は、図26Aおよび26Bに詳しく示すフローモード切替弁112を提供する。正常フローモードで動作するため、オペレーターは、フローモード切替弁ハンドル112eを、図24Aに示した位置にセットする。これは、図26Aに示す切替弁112を通る流路を整列させる効果を有する。具体的には、正常フローモードにおいて、流体はポート112bに流れ込み、流路112fを通って、ポート112cの外に流出することができる。更に、流体はポート112dに流れ込み、流路112gを通って、ポート112aの外に流出することができる。逆行性フローモードで動作させるために、オペレーターは、フローモード切替弁ハンドル112eを、図24Bに示した位置にセットする。これは、図26Bに示す切替弁112を通る流路を整列させる効果を有する。具体的には、逆行性フローモードにおいて、流体はポート112bに流れ込み、流路112hを通って、ポート112dの外に流出することができる。
図24Aを参照して、正常フローモードにおいて、レザバー160は、潅流流体108を潅流流ポンプインターフェースアセンブリ300の一方向注入口弁191に供給する。図25Aを参照して、潅流ポンプ106は、潅流流体108を排出口弁310にポンプ排出する。次に図25Cを参照して、潅流流体108は、導管792およびコンプライアンスチャンバー188を通って流れて、ヒーターアセンブリ110の注入口110aに入る。ヒーターアセンブリ110は、潅流流体108を加熱し、次にヒーター排出口110bに流出させる。図24Aを参照して、加熱潅流流体108は、下方シャーシ部分750bのヒーター排出口110bから、シャーシプレート752を通って、導管794を介してモード切替弁112のポート112bの中に流れ出る。また、図24Dを参照して、潅流流体108は、モード弁ポート112cの外へ流れ、コンプライアンスチャンバー186、導管796および圧力センサー128を通って、臓器チャンバーアセンブリ104の肺静脈カニューレ挿入インターフェース170の中に流れる。
図24Aを参照すると、正常フローモードにおいて、心臓102は、潅流流体108を、肺動脈インターフェース166および圧力センサー130を通して肺動脈164へとポンピングする。次に導管796は、潅流流体108を、肺動脈インターフェース166から、プレート752を通り、O2飽和およびヘマトクリットセンサー140を通して流す。また、図25Aおよび25Cを参照すると、次に導管798は、潅流流体108を、センサー140から流速センサー136を通して酸素供給器114に流す。導管800は、潅流流体108を、酸素供給器114からレザバー注入口786を経由してレザバー160の中に流し戻す。
図24A、24Dおよび24Eを参照すると、正常フローモードにおいて、心臓102はまた、潅流流体108を、大動脈インターフェース162および圧力センサー126を通して、大動脈158へとポンピングする。導管802は、潅流流体108を、圧力センサー126から流し、流速センサー134を通して、フローモード切替弁112のポート112dの中に流し戻す。クランプ804は導管802を適切な位置で保持する。導管806は、潅流流体108を、フローモード切替弁112からポー112aへと流し、コンプライアンスチャンバー184および後方圧調整クランプ190を通す。上述のように、クランプ190は、正常フローモードの間、より現実的に正常な生理学的状態をシミュレートするよう、大動脈158で見られる後方圧を調整するため、導管806を通る流れを制限するように調整されることがある。潅流流体108がそれにポンピングされるとき膨張および収縮できるコンプライアンスチャンバー184は、正常な生理学的状態に近いシミュレーションを更に改善するよう流圧スパイクを減衰するため、クランプ190と同時に使用する。後負荷クランプ190は、大動脈圧、左心房圧、および冠血管流に影響を及ぼす人体の全身血管抵抗を詳しくエミュレートするよう構成してある。導管808は、潅流流体108を、レザバー注入口788を経由してレザバー160に戻す。
逆行性フローモードでは、フローモード切替弁112は、図24Bに示すように配置される。図24Bを参照すると、レザバー160は、潅流流体108を注入口弁191に提供する。図25Aに示すとおり、潅流ポンプ106は、潅流流体108を排出口弁310へとポンピングする。次に図25Cに示すように、潅流流体108は、導管792およびコンプライアンスチャンバー188を通って流れ、ヒーターアセンブリ110の注入口110aに入る。ヒーターアセンブリ110は潅流流体108を加熱し、次にそれをヒーター排出口110bに送り出す。図24Bを参照すると、加熱潅流流体108は、下方シャーシ部分750bのヒーター排出口110bから、シャーシプレート752を通って、導管794を介してモード切替弁112の注入口112bに流れ込む。同様に、図24Dにおいて、潅流流体108は、モード弁排出口112dを流れ出し、流速センサー134、圧力センサー126を通り、導管802に流れ、大動脈インターフェース162を介して大動脈158に流れ込む。次に潅流流体108は、冠状静脈洞155および残りの冠血管を通って流れる。
図24Bを参照すると、逆行性フローモードにおいて、心臓102は、潅流流体108を肺動脈164から肺動脈インターフェース166および圧力センサー130を通ってポンピングする。次に導管796は、潅流流体を、肺動脈インターフェース166からプレート752を通り、O2飽和およびヘマトクリットセンサー140に流す。同様に、図25Aおよび25Cを参照すると、導管798は、潅流流体108を、センサー140から流速センサー136を通って酸素供給器114に流す。導管800は、潅流流体108を、酸素供給器114からレザバー注入口786を経由して、レザバー160に流し戻す。逆行性フローモードにおいては、潅流流体は実質的に、フローモード切替弁112周りの導管794からコンプライアンスチャンバー186に、細流弁768により送られる少量の潅流を除いて、肺静脈168および肺静脈インターフェース170を介して左心房152へとまたは左心房152の外にポンピングされない。上述のとおり、細流は、逆行性フロー中、左心房152を潤しておくのに十分な潅流流体108を提供する。
上述のとおり、システム100の図示態様は、流速および流圧を測定する一つまたは複数のセンサーまたはプローブを有する。プローブおよび/またはセンサーは、標準的な商業的供給源から取得され得る。流速センサー134、136および138は、Transonic Systems Inc., Ithaca, N.Y.製のもののような、汎用の超音波流速センサーである。流圧プローブ126、128および130は、MSIまたはG.E.Thermometricsの汎用の歪ゲージ圧力センサーでもよい。あるいは、事前に較正された圧力トランスデューサーチップを、臓器チャンバーコネクターに埋め込むことができ、またフロントエンド基板637などのデータ収集サイトに配線することができる。
電気的および機械的部品ならびにシステム100の図示態様の機能性およびその特定の動作モードについて説明したので、次にシステム100を、図29Aおよび29Bの図示臓器摘出および移植処理を参照して説明する。より詳細には、図29Aは、ドナー心臓102を摘出し、ドナーの場所でシステム100内にそれをカニューレ挿入するための例示的な方法を示すフロー図900である。図29Bは、カニューレ挿入準備において、心臓102を取り扱うための特別な注意点を示し、図30は、システム100からドナー臓器102を取り除き、それをレシピエントサイトで患者に移植する例示的な方法のフロー図902を示す。
図29Aに示すとおり、カニューレ挿入および輸送のため、心臓102を取得し、準備するプロセスは、適切な臓器ドナーを提供すること904から始まる。臓器ドナーがドナーの場所に運ばれると、その後、カニューレ挿入および輸送のための、ドナー心臓102を受け取り、準備するプロセスが、二つの挿入経路906および908で進行する。経路908が主に、ドナー心臓102を受け入れるためにシステム100を準備し、それからシステム100を介して心臓102をレシピエントサイトに輸送する工程を含む一方、経路906は、移植のためのドナー心臓102を準備する工程を含む。
図29Aを特に参照すると、第一の経路906は、ドナーから放血し910、ドナー心臓を停止し914、心臓を外植し916、およびシステム100にカニューレ挿入する918ため、心臓102を準備する工程を含む。特に、放血工程910において、ドナーの血液が取り除かれ、確保されると、システム100に保存する間、心臓102を潅流するために使用することができる。この工程は、ドナーの血液がドナーから流れ出し、血液収集バッグに集められるように、カテーテルをドナーの動脈または静脈いずれかの血管系に挿入して行われる。ドナーの血液は、一般的には1.0から2.5リットルの血液必要量が収集されるまで流し出され、それが済むとカテーテルが取り除かれる。放血を通して抽出された血液は、次にフィルター処理され、システム100で使用するための準備において、システム100の流体レザバー160に加えられる。あるいは血液は、ドナーから放血され、カニューレおよび血液収集バッグに一体化したフィルターを有する装置を使用するただ一つの工程で、白血球および血小板をフィルター処理することができる。そのようなフィルターの例は、Pall BC2Bフィルターである。ドナーの血液が放血された後、ドナー心臓102は、工程914で心臓102摘出準備のために一時的に心拍を停止させるため、心停止液を注入される。
心臓102が停止された後、心臓102はドナーから外植され916、システム100に装填するよう準備される918。一般に、心臓外植916および装填918の準備の工程は、心臓102の血管系とドナーの内部胸腔との間の接続を切断し、種々の切断した接続を縫合し、心臓102を胸腔間から引き上げる工程を含む。
より詳しくは、図29Bに示すとおり、左右の肺動脈164aおよび164bが切断され、左肺動脈164aが外科手術糸901aまたは他の適切な機構で結わえられる。結びは、左肺動脈164aの切断端部903aを通って流体が流れることを防ぐ。図24Aおよび24Bを参照して、右肺動脈164bは、それが臓器チャンバーアセンブリ104にカニューレ挿入できるように縫合されないで残り、それにより潅流流体108が右肺動脈164bを通り、肺動脈カニューレ挿入インターフェース170を通って、レザバー160に戻ることが可能になる。左肺静脈168bおよび169bならびに右肺静脈168aおよび169aもまた切断され、ただ一つの肺静脈169bを除いたすべてが、外科手術糸901b、901cおよび901dそれぞれで結わえられる。これは、右肺静脈168aおよび169aの切断端部903bおよび903c、または左肺静脈168bの切断端部903dを通って流体が流れることを防ぎ、結ばれていない肺静脈が、肺静脈インターフェース170を通し、臓器チャンバーアセンブリ104にカニューレ挿入されることを可能にする。図24Aおよび24Bを参照して上述のように、この処置は、潅流流体108が、右肺動脈164bを通り、肺動脈インターフェース166を通って、酸素供給器114に戻ることを可能にする。あるいは、血液は、肺動脈幹をカニューレ挿入して右心室から排出されることが可能である。肺動脈幹は図示されていないが、肺動脈164の枝管164aおよび164bと右心室159との間の肺動脈164のセグメントを含む。上大静脈161も同様に切断され、糸901eで結ばれて、一度心臓がシステム100に接続され拍動を始めても、流体がその端部903eを通り流れるのを防ぐ。下大静脈163も同様に切断され、糸901fで結ばれるか、またはかがり縫いされて、流体がその端部903fから流れることを防ぐ。大動脈158も同様に切断される(例示的な態様において、冠状静脈洞155から下流の点)が、結わえられず、臓器チャンバーアセンブリ104にカニューレ挿入することが可能になる。一態様において、大動脈158は、大動脈コネクターにカニューレ挿入されて、大動脈インターフェース170に容易に取り付けられる。
図29Aのフロー図を続けて参照すると、心臓血管系が切断され、適切に結ばれた後、次に心臓102は、臓器チャンバーアセンブリ104内にそれを挿入し、臓器チャンバーアセンブリ104の適切なポイントまで大動脈158、左肺動脈164b、および肺静脈169bにカニューレ挿入して、システム100に装填される。
肺を提供したドナーから取得した心臓は、しばしば左心房152をすべてまたはその一部を失っている。このような状況においては、心臓102は器械に取り付けられて、大動脈158および右肺動脈164aまたは肺動脈幹(図示されていないが上述)いずれかにカニューレ挿入することにより、逆行性モードで潅流され、任意の残る左心房152部分を、保存期間中開いたままにできる。
図29Aについて続いて参照すると、経路906による心臓の準備中、システム100は経路908によって準備され、心臓102が準備されれば直ぐにカニューレ挿入および輸送するように心臓102を受け入れるようにプライミングされ、待機するようにする。迅速にドナーからシステム100に心臓102を移し、続いて潅流流体108で心臓102を潅流することにより、医療オペレーターは、心臓102が酸素および他の栄養素が不足する時間の総計を最小化でき、それによって虚血症および現在の臓器ケア技術の間に起こる他の弊害を低減する。ある態様において、心停止液を心臓102に注入する工程と、システム100を介して心臓102を通し、潅流流体108を流し始める工程との間の総計時間は、約15分未満である。他の図示態様においては、その間の時間は、約1/2時間未満、約1時間未満、約2時間未満、または約3時間未満でさえある。同様に、心臓を臓器ケアシステム100に移し、心臓102を生理学的温度に近い温度(例えば約34℃〜約37℃)に持っていく間の時間は、心臓組織内の虚血を低減するため短時間である。一部の例示的な態様において、その時間は約5分未満であり、他の実施例では、約1/2時間未満、約1時間未満、約2時間未満、または約3時間未満でさえあり得る。一部の図示態様によれば、心臓は、心停止法を用いずに直接、ドナーからシステム100に移すことができ、そのような応用では、温かい潅流流体108が流れ始める時間、および/または心臓が生理学的温度に近い温度に達する時間は、同様に、約5分未満、約1/2時間未満、約1時間未満、約2時間未満、または約3時間未満でさえある。一つの実施において、ドナー心臓は、ドナーから摘出する前に停止されず、心臓102がまだ拍動している間にシステム100に取り付けられる。
図29Aに示すとおり、システム100は、単回使用モジュール634を準備する工程(工程922)、プライミング溶液でシステム100をプライミングする工程(工程924)、ドナーからの血液をフィルター処理し、それをシステム100のレザバー160に加える工程(912)、および心臓102をシステム100に接続する工程(工程904)の一連の工程を経て経路908で準備される。特に、単回使用モジュール634を準備する工程922は、単回使用使い捨てモジュール634を組み立てる工程を含む。適切な組み立ては、例えば、図24Aから24D、図25Aから25C、および図26に示す。モジュール634を組み立て、または適切なアセンブリにした後、それを図21Aから21Cで上述した複数回使用モジュール650内に挿入する。
工程924において、装填済システム100は、表1を参照して以下にさらに特に詳しく説明するように、プライミング溶液でプライミングされる。一つの特徴において、プライミングを支援するため、システム100は、図27Aに示す臓器チャンバーアセンブリ104に設置され示される臓器バイパス導管810を設ける。図示のように、バイパス導管は、三つのセグメント810a〜810cを含む。セグメント810aは、肺動脈カニューレ挿入インターフェース170に取り付ける。セグメント810bは、大動脈カニューレ挿入インターフェース810bに取り付け、セグメント810cは、肺静脈カニューレ挿入インターフェース166に取り付ける。バイパス導管810を用いて、臓器チャンバーアセンブリ104内に取り付け/カニューレ挿入し、オペレーターは、システム100が実際動作中に用いる路のすべてを通して、潅流流体108を循環させることができる。これにより、システム100が、心臓102を適所に保ってカニューレ挿入する前に、完全な試験とプライミングを行うことを可能にする。
次の912の工程において、ドナーからの血液は、フィルター処理され、レザバー160に加えられる。フィルター処理工程は、白血球および血小板の完全または一部除去で、炎症進行の低減を助ける。更に、ドナー血液は、一つまたは複数の栄養素116および/または保存溶液118と混合されて、潅流流体108が作られる。工程926において、システム100は、図24Bを参照して上述したように、逆行性フローモードのシステム100を通しておよび所定位置のバイパス導管810とともに、潅流流体108で、ポンピングすることによりプライミングされる。潅流流体108はプライミング工程926のシステム100を通して循環するとき、ヒーターアセンブリ110を通って所望の温度に温められる。所望の温度範囲および加熱実施は、図6Aから6E、および図13を参照して説明されている。工程920において、システム100が潅流流体108でプライミングされた後、バイパス導管810が除去され、図27Bに示し、上述のとおり、心臓102がシステム100に設置される。
心臓102がシステム100に設置された後、ポンプ104が作動し、フローモード弁112が逆行性フローモード(図1および4を参照して)にされて、潅流流体108を、大動脈を通して心臓102の血管系にポンプで送る。心臓102を通る、温かい、酸素および栄養素豊富な潅流流体108のポンピングにより、心臓102が正常生理学的条件に近い条件で、エクスビボにおいて機能する。特に、温かい潅流流体108は、心臓102を潅流するとき、心臓102を温め、それにより心臓102は、その正常な拍動を開始する。一部の例において、手によるマッサージまたは除細動信号143(図22Eに示す)を心臓102に加えて、その拍動開始を支援することが望ましい。これは、上述したように、図5Aから5Fの臓器チャンバーアセンブリおよび図17Aから17Jのオペレーターインターフェース146により行われる。
工程920において、心臓がシステム100に設置された後、続く工程928および930によりオペレーターが、心臓102およびシステム100を試験し、それぞれの状態を評価することができる。図示による工程928は、それぞれのセンサー142および144(図27Aに図示の位置)からのECG信号379ならびに381、同様に、センサー140からの潅流流体108のヘマトクリット145および酸素飽和141レベルを評価する工程を含む。図12および図17Aから17Iについて更に説明したとおり、オペレーターはまた、心臓102がカニューレ挿入されている間、システム100の流速、圧力、および温度を監視できる。図5Eおよび5Fを参照して上述したとおり、試験工程928はまた、オペレーターが臓器チャンバー104の外蓋196を持ち上げて、心臓102に触れ/検査し、また柔軟なメンブレン198bを介して間接的に心臓102に触れ/検査する工程を含む。評価工程930中、試験工程928の間に取得したデータおよび他の情報に基づいて、オペレーターは、システム100特性(例えば、流速、圧力、および温度)を調整するかどうかおよびどのように調整するか、ならびに追加の除細動、または他の必要な心臓102処置のモードを提供するかどうかを決定する。オペレーターは、工程932の任意のこのような調整を行い、次に工程928および930を繰り返して、心臓102およびシステム100を再試験し、再評価する。特定の態様において、オペレーターはまた、調整工程932の間で、心臓102への手術、治療または他の処置を選択してもよい。例えば、オペレーターは、例えば超音波または他の撮像検査、心エコー図または心臓に関する診断検査、動脈血液ガスレベルおよび他の評価試験のような、心臓の生理学的適合性の評価をすることができる。
もう一つの応用において、工程932の間またはその後、システム100は、医療オペレーターが、外植後、ドナーにインプラントする前に、意図したレシピエントとの適合性に対する臓器を評価することを可能にする。例えば、オペレーターは、臓器がシステム100にカニューレ挿入されている間、臓器に関するヒト白血球抗原(HLA)適合検査を行うことができる。このような試験は、12時間もしくはそれ以上を必要とすることもあり、また意図するレシピエントとの臓器の適合性を確実にするために行われる。上述のシステム100を用いる臓器の保存は、HLA整合を完了するのに必要な時間を越える保存を可能にし、潜在的に向上した移植後の成果をもたらす。HLA適合性試験例において、HLA試験は、保存溶液を心臓にポンプ注入しながら心臓に関して実行することができる。
さらなる図示態様によれば、心臓が、工程932で決定されたように機能した後、オペレーターは、心臓に関する免疫抑制処置、化学療法、遺伝子試験および治療、もしくは照射線照射などの手術または治療、または他の処置を行うことができる。システム100は、心臓102が生理学的に近い温度、流体流速、および酸素飽和レベルのもとで潅流されるので、心臓102は、調節工程932後、長期間(例えば、少なくとも3日かそれ以上、少なくとも1週間以上、少なくとも3週間、または1か月かそれ以上)維持でき、繰り返しの評価および処置が可能になる。
図示態様によれば、試験928、評価930および調整932の工程は、逆行性フローモードのシステム100で行うことができ、または、正常フローモードのシステム100で行うことができる。正常フローモードにおいて、オペレーターは、正常または正常に近い生理学的血液流状態で心臓102の機能試験を行うことができる。評価930に基づいて、システム100の設定が、工程932で調整され、必要であれば、流れ、加熱および/または他の特性を修正して、工程936のレシピエントサイトに輸送するための準備における工程934において、心臓102を安定化することが可能である。心臓102およびシステム100が、適切な性能を確実にするよう試験および評価された後、心臓102を装填したシステム100が工程936でレシピエントサイトに輸送される。
ここで図30を参照すると、移植プロセスの第一のフェーズ942は、ドナーサイト936を離れる直前に着手される試験工程928および評価工程930を繰り返すことを含む。心臓102の機能および特性が許容できない場合、システム100は、例えば、適切な流体酸素化レベルまたは栄養レベルを提供するように、あるいは適当な流体温度に上昇または低下させるように、適切に調整942することができる。上記のように、試験928および評価930と一緒に、外科手術および/または他の療法/治療処置が心臓102に施される。例示態様によれば、レシピエントサイトでの試験は、逆行性フローモード、正常フローモード、または両方の組み合わせで行われてもよい。
工程946において、試験完了後システム100は、正常/順行性フローモードに置かれる。特定の態様において、この工程946は、左心房152および肺静脈164がカニューレ挿入されるまでは始めず、システムにおいて十分作動するボリュームがあり、熱は安定した電気的活動を示し、ABGおよび電解液は許容範囲内で、SvO2>80%、および血液温度は約34℃〜約36℃である。工程946は、システム100の逆行性ポンピングを減速および/または停止し、次に順行性モードのポンピングを再起動することにより遂行され得る。特定の態様において、順行性モードの再起動の前に、使用者は大動脈サンプリングポート754aを開き、それを反時計方向に回転させることによって圧力制御クランプ190を緩め、次にポンプ106の流速を約1.0L/分増加させ、フロー制御弁112を正常/順行性フローに設定し、そしてポンプ106の流速を約2.0L/分増加させて血液102がシステム100の潅流ライン(例えば、802)の空気と置き換わり、そして心臓102の左側を通過し、レザバー戻りライン808を下の方に進む。その後、使用者は大動脈サンプリングポート754aを閉じる。
したがって、ポンプ106から放出された潅流流体108の流速は、工程950で臨床医の選択(一般的には、約1L/分〜約5L/分)のレベルに増加して、正常拍動モードで機能しながら心臓102により提供される生理学的流速に近づける。心臓102およびシステム100は、工程928および930について上述した同様な方法において工程952で再び試験される。臨床医は同様に、心臓に関して任意の他の試験または評価、例えば、心エコー図、電解液測定、心臓酵素測定、代謝測定、血管内超音波評価、圧容量ループ評価、およびミラー圧力評価を実行することを選んでもよい。
レシピエントサイトでの第三のフェーズ946において、心臓102は、レシピエントに移植するために準備される。このフェーズは、潅流流体108の流れを停止するようにポンプ106の出力を下げる工程956を含む。次に、工程958において、心臓102は、例えば、ドナーサイトでの工程914において行われるのと同様の方法で、心停止液を注入することにより停止される。工程960において、心臓102は脱カニューレされ、臓器チャンバーアセンブリ106から除去される。工程962において、まず糸901a〜901fを除去し、次にレシピエントの胸腔の中に心臓102を挿入し、個々の心臓嚢(例えば、158、164a、164b、168a、168b、169a、169bおよび903a〜903f)をレシピエント内の適切な適合する嚢に縫合することによって、レシピエント患者に心臓102を移植する。
心臓を除細動し、心臓にペーシング信号を送り、そして潅流流体から取ったサンプルから血液化学分析を行うための外部装置および方法を説明したが、これらの特徴を携帯システムに一体化することも有益であり得る。このような特徴は、除細動、ペーシング、診断ECGセンサー、および血液化学分析を含む。
上述のとおり、システム100は、プライミング溶液を使用し、かつ潅流流体108を形成するために栄養補助剤116および保存溶液118を血液製剤または合成血液製剤と組み合わせる潅流流体108を使用する。プライミング、補助剤116、および保存剤118は、次に説明する。
特定の態様によれば、臓器が生理学的状態または生理学的状態に近い状態で機能することができるように特定の溶質と濃度を持つ溶液が選定されて配合される。例えば、そのような状態は、生理学的温度またはそれに近い温度で臓器機能を維持し、および/またはタンパク質合成などの正常な細胞代謝を可能にする状態で臓器を保存することを含む。
特定の態様において、溶液は、成分と流体とを組み合わせた組成物から、希釈により高濃度溶液から、または濃縮により希薄溶液から形成される。例示的な態様において、適切な溶液は、エネルギー源、輸送前および輸送中に正常な生理学的機能を継続して臓器を支援する一つまたは複数の刺激剤、および潅流の間、臓器がその細胞代謝を継続するよう選択され、配合された一つまたは複数のアミノ酸を含む。細胞代謝は、例えば、潅流中に機能しながらタンパク質合成を行うことを含む。他の例示的な溶液は非水性、例えば、有機溶媒ベース、イオン液体ベース、または脂肪酸ベースであるが、一部の例示的な溶液は水性ベースである。
溶液は、その正常な生理学的機能を遂行して臓器を支援するように一つまたは複数の高エネルギー成分を含んでもよい。これらの成分は、代謝可能である高エネルギー材料、および/または臓器が潅流中エネルギー源を合成するために使用することができるそのような材料の成分を含んでもよい。高エネルギー分子の例示的な供給源は、例えば、一つまたは複数の炭水化物を含む。炭水化物の例として、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、またはそれらの組み合わせ、またはそれらの前駆体もしくは代謝生成物を含む。制約を意味しないが、溶液として適切な単糖の例は;オクトース;ヘプトース;フルクトース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、およびタロースなどのヘキソース;リボース、アラビノース、キシロース、およびリキソースなどのペントース;エリスロースおよびトレオースなどのテトロース;およびグリセルアルデヒドなどのトリオースを含む。制約を意味しないが、溶液として適切な二糖の例は;(+)-マルトース(4-O-(α-D-グルコピラノシル)-α-D-グルコピラノース)、(+)-セロビオース(4-O-(β-D-グルコピラノシル)-D-グルコピラノース)、(+)-ラクトース(4-O-(β-D-ガラクトピラノシル)-β-D-グルコピラノース)、スクロース(2-O(α-D-グルコピラノシル)-β-D-フルクトフラノシド)を含む。制約を意味しないが、溶液に適する多糖の例は、セルロース、スターチ、アミロース、アミロペクチン、スルホムコポリサッカライド(例えば、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸、スロデキシド、メソグリカン(mesoglycan)、ヘパラン硫酸、イドサン(idosane)、ヘパリンおよびヘパリン類似物質)、およびグリコーゲンを含む。一部の態様において、単糖、二糖、およびアルドース、ケトース両方、またはそれらの組み合わせの多糖が用いられる。本明細書に記載されるものおよび記載されないものを含む、単糖、二糖および/または多糖のエナンチオマー、ジアステレオマーおよび/または互変異性体を含む、一つまたは複数の異性体は、本明細書に記載される溶液で使用されてもよい。一部の態様において、一つまたは複数の単糖、二糖、および/または多糖が、例えば誘導体化および/または一つまたは複数の官能基の保護(保護基による)によって化学的に改変されてもよい。特定の態様において、デキストロースまたはグルコースの他の形状などの炭水化物が好ましい。
他の可能なエネルギー供給源は、アデノシン三リン酸(ATP)、コエンザイムA、ピルベート(pyruvate)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)、チアミンピロリン酸クロリド(コカルボキシラーゼ)、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)、β-ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)およびヌクレオシドのホスフェート誘導体、すなわち一リン酸、二リン酸、および三リン酸(例えば、UTP、GTP、GDF、およびUDP)を含むヌクレオチド、補酵素、または同様の細胞代謝機能を有する他の生体分子、および/またはそれらの代謝産物もしくは前駆体を含む。例えば、アデノシン、グアノシン、チミジン(5-Me-ウリジン)、シチジン、およびウリジン、ならびに他の天然および化学修飾のヌクレオシドのホスフェート誘導体が意図される。
特定の態様において、例えばヌクレオチドなどのホスフェート供給源と一緒に一つまたは複数の炭水化物が提供される。炭水化物は、潅流中に臓器がATPまたは他のエネルギー供給源を生成することを可能にする。ホスフェート供給源は、ATP、ADP、AMPまたは他の供給源から直接提供されてもよい。他の例示的な態様において、ホスフェートは、ホスフェート塩、例えばグリセロホスフェート、リン酸ナトリウム、または他のリン酸イオンから提供される。ホスフェートは、プロトン化形態および一つまたは複数のカウンターイオンを持つ形態を含む任意のイオン状態における任意の形態を含んでもよい。
溶液は、潅流中臓器の正常な生理学的機能を支援するための一つまたは複数の臓器刺激剤を含んでもよい。一部の例示的な態様において、移植された臓器が心臓の場合、心臓刺激剤は潅流中および移植中、心臓が機能し続ける(例えば拍動を続ける)ことができるように提供される。そのような刺激剤は、例えば、心臓の拍動を促進するエピネフリンおよび/またはノルエピネフリンなどのカテコールアミンを含んでもよい。他の心臓刺激剤は、ペプチドの特定形態および/またはポリペプチド(例えば、バソプレシン、アントロプローリン(Anthropleurin)A、アントロプローリンB)および/またはβ1/β2-アドレナリン受容体遮断剤(例えばCGP12177)、ブプリナロール(buplinarol)、ピンドロール、アルプレノロール、および強心配糖体などを使用してもよい。一つまたは複数の天然物は、ジギタリス(ジゴキシン)、パルストリン(palustrin)、および/またはフェルラ酸なども使用してもよい。上述のような刺激剤は、使用者によって使用時点で溶液に含ませるか、添加してもよい。
一部の例において、潅流中にその代謝を行って臓器を支援するように追加成分が提供される。これらの成分は、例えば、内皮機能を維持し、および/または虚血および/または再潅流損傷を減じるためのATP合成に使用され得るアデニンおよび/またはアデノシンの形態または誘導体を含む。特定の実施によれば、マグネシウムイオン供給源は、ホスフェートとともに提供され、また一部の態様において、潅流された臓器の細胞内でATP合成を更に強化するためにアデノシンとともに提供される。
本明細書において説明した溶液は、臓器の細胞によりタンパク質合成を支援するように一つまたは複数のアミノ酸、好ましくは複数のアミノ酸を含んでもよい。例えば、適切なアミノ酸は、任意の天然のアミノ酸を含む。アミノ酸は、様々なエナンチオマーまたはジアステレオマー形態であってもよい。例えば、溶液は、D-もしくはL-アミノ酸、またはそれらの組み合わせ、すなわち、D-もしくはL-異性体またはラセミ体溶液のエナンチオリッチな溶液のいずれかを使用してもよい。適切なアミノ酸はまた、シトルリン、オルニチン、ホモシステイン、ホモセリン、β-アミノ酸、例えばβ-アラニン、アミノカプロン酸、またはそれらの組み合わせなどの非天然または修飾アミノ酸であってもよい。
特定の例示的な溶液は、全部ではない一部の天然のアミノ酸を含む。一部の態様において、溶液は、必須アミノ酸を含む。例えば溶液は、一つまたは複数のまたはすべての以下のアミノ酸を用いて調製され得る。
グリシン
アラニン
アルギニン
アスパラギン酸
グルタミン酸
ヒスチジン
イソロイシン
ロイシン
メチオニン
フェニルアラニン
プロリン
セリン
スレオニン
トリプトファン
チロシン
バリン
酢酸リジン
特定の態様において、非必須および/または準必須アミノ酸は、溶液に含まれない。例えば、一部の態様において、アスパラギン、グルタミン、および/またはシステインは含まれない。他の態様において、溶液は、一つまたは複数の非必須および/または準必須アミノ酸を含有する。したがって、他の態様によれば、アスパラギン、グルタミン、および/またはシステインが含まれる。
溶液はまた、臓器内の酵素反応、心筋収縮能、および/または凝固を促進するための電解液、特にカルシウムイオンも含有し得る。他の電解液は、ナトリウム、カリウム、クロライド、スルフェート、マグネシウムおよび他の無機および有機荷電化学種、またはそれらの組み合わせが用いられる。本発明で提供された任意の成分は、原子価および安定性が許容である、イオン形態で、プロトン化または非プロトン化形態で、塩または遊離塩基形態で、またはイオン性または共有結合性置換基として、必要に応じて適切に加水分解されかつ水溶液で利用可能な他の成分と組み合わせて、提供されうるということに注意が必要である。
特定の態様において、溶液は緩衝化成分を含有する。例えば、適切な緩衝液系は、2-モルホリノエタンスルホン酸一水和物(MES)、カコジル酸、H2CO3/NaHCO3(pKa1)、クエン酸(pKa3)、ビス(2-ヒドロキシエチル)-イミノ-トリス-(ヒドロキシメチル)-メタン(ビス-トリス)、N-カルバモイルメチルイミジノ酢酸(ADA)、3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ]プロパン、(ビス-トリスプロパン)(pKa1)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、イミダゾール、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、NaH2PO4/Na2HPO4(pKa2)、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(HEPES)、N-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン-N'-(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)、トリエタノールアミン、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]グリシン(トリシン)、トリスヒドロキシメチルアミノエタン(トリス)、グリシンアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)グリシン(ビシン)、グリシルグリシン(pKa2)、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル-3-アミノプロパンスルホン酸(TAPS)、またはそれらの組み合わせを含む。一部の態様において、溶液は、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、またはTRIS緩衝液を含有する。
溶液は、臓器維持を助け、潅流中の虚血、再潅流損傷および他の害に対して臓器を保護するために他の成分を含んでもよい。特定の例示的な様態において、これらの成分は、ホルモン(例えばインスリン)、ビタミン(例えば、成人用MVIマルチビタミンなどの成人用マルチビタミン)、および/またはステロイド(例えばデキサメタゾンおよびソルメドロール(SoluMedrol))を含んでもよい。
別の局面によれば、血液製剤は代謝中の臓器を支援するために溶液とともに提供される。例示的な適切な血液製剤は、全血、および/または血清、血漿、アルブミン、および赤血球などの一つまたは複数のその成分を含んでもよい。全血が用いられる態様において、血液は、パイロジェン、抗体および/または臓器に炎症を起こす可能性のある他の物質を減少させるために、白血球および血小板枯渇フィルターを通してもよい。このようにして、一部の態様において、溶液は、白血球を少なくとも部分的に枯渇させた全血および/または血小板を少なくとも部分的に枯渇させた全血を使用する。
溶液は、好ましくは、生理学的温度で提供され、潅流および再循環を通じて生理学的温度付近に維持される。本明細書において使用される「生理学的温度」とは、約25℃〜約37℃、たとえば、約30℃〜約37℃の温度、例えば約34℃〜約37℃を指す。
表1は、例示的な水性プライミング溶液に使用する成分を説明する。表1の成分の量は互いに比例し、溶液(例示的な態様において約500mL)に使用した水性溶媒の量に比例し、必要に応じて増減してもよい。特定の態様において、水性溶媒の分量は±約10%変動する。
(表1)例示的なプライミング溶液の組成(約500mL水溶液)
Figure 2019163332
例示的なプライミング溶液は、図29Aを参照してより詳しく説明したように、プライミング工程924で、システム100に添加される。
栄養補助溶液116に関して、特定の態様において、栄養補助溶液116は、一つまたは複数の炭水化物を含み、ホスフェート供給源も含んでもよい。栄養補助溶液116は一般的に、約5.0から約6.5、例えば約5.5から約6.0のpHで維持される。
表2は、例示的な栄養溶液116に使用される成分を説明する。一部の態様において、溶液116は更に、グリセロールリン酸ナトリウムを含む。表2の成分量は、溶液116に使用される水性溶媒の量(約500mL)に比例し、必要に応じて増減してもよい。一部の態様において、水性溶媒の量は±約10%変動する。
(表2)例示的な栄養溶液の成分(約500mL)
Figure 2019163332
特定の態様において、栄養溶液116は一つまたは複数の炭水化物を含み、かつホスフェート供給源を含んでもよい。栄養溶液116は一般的に、約5.0から約6.5、例えば約5.5から約6.0のpHで維持される。
保存溶液118は、一つまたは複数の保存剤を含んでもよい。例示的な態様において、一つまたは複数の心臓刺激剤が、潅流および移植中の心臓102の正常な生理学的機能を支援するために含まれる。そのような刺激剤は、例えば、心臓の拍動を促進するエピネフリンおよび/またはノルエピネフリンなどのカテコールアミン類を含んでもよい。
他の成分が保存溶液118に添加されてもよく、例えば、アデノシン、マグネシウム、ホスフェート、カルシウム、および/またはそれらの供給源を含む。一部の例では、添加成分は、潅流中その代謝を行って臓器を支援するために提供される。これらの成分は、例えば、内皮機能を維持し、および/または、虚血および/または再潅流損傷を減じるためのATP合成に使用され得るアデノシンの形態を含む。成分はまた、グアノシン、チミジン(5-Me-ウリジン)、シチジン、およびウリジン、ならびに他の天然および化学修飾のヌクレオシド(それらのヌクレオチドを含む)を含んでもよい。一部の実施によれば、マグネシウムイオン供給源はホスフェート供給源とともに提供され、また特定の態様において、潅流された臓器の細胞内でATP合成を更に増強するようにアデノシンとともに提供される。複数のアミノ酸はまた、心臓102の細胞によるタンパク質合成を支援するために添加されてもよい。適用可能なアミノ酸は、上述したものと同様に、例えば、任意の天然のアミノ酸を含んでもよい。
表3は、本明細書に記載のように、臓器を保存するための溶液118に使用できる成分を説明する。溶液118は、表3に記述した一つまたは複数の成分を含んでもよい。
(表3)保存溶液の例示的な組成成分
Figure 2019163332
Figure 2019163332
Figure 2019163332
Figure 2019163332
表4は、例示的な保存溶液118に使用する成分を説明する。表4に示した量は、表の他の成分に比例した好ましい量が記載され、かつ十分な量の組成を提供するために増やしてもよい。一部の態様において、表4に記載した量は、±約10%変動可能であり、本明細書記載の溶液にそれでも使用することができる。
(表4)例示的な保存溶液の成分
Figure 2019163332
Figure 2019163332
溶液118の例示的な態様において、表4の成分は、溶液118を形成するために水性流体約1リットル当たりの記載の相対量で混合される。一部の態様において、表4の成分は、水性流体約500mL当たりの記載の相対量で混合され、次に、約1リットルの水性流体溶液116/118を維持するように同様に約500mL当たりの記載の相対量で溶液116と混合される。一部の態様において、溶液116、118および/または116/118の水性流体量は、±約10%変動可能である。溶液118のpHは、約7.0〜約8.0、例えば約7.3〜約7.6になるよう調整することができる。溶液118は、純度を改善するために例えば高圧蒸気により殺菌することができる。
表5は、別の例示的な保存溶液118を説明する。保存溶液118は、表5で識別される成分を有し、かつ本明細書に記載の潅流流体108に用いることができる水性流体と混合される、組織培養培地を含む。表5に記載した成分量は相互に比例し、また使用した水溶液の量に比例する。一部の態様において、約500mLの水性流体が使用される。他の態様においては、約1リットルの水性流体が使用される。例えば、約500mLの保存溶液118と500mLの栄養溶液116との組み合わせは、約1リットルの維持溶液116/118を可能にする。一部の態様において、水溶液の量は、±約10%変動可能である。成分量と水溶液の量は、使用時に必要に応じて増減することができる。保存溶液118のpHは、この態様においては、約7.0から約8.0、例えば約7.3から約7.6であるように調整できる。
(表5)別の例示的な保存溶液の組成(約500mLの水溶液)
Figure 2019163332
Figure 2019163332
アミノ酸はタンパク質の構成単位であるために各アミノ酸の独自の特性は、構造を与えかつ生化学反応に触媒作用を及ぼす能力などのタンパク質のある特定の重要な特質を付与する。保存溶液に提供されるアミノ酸の選択と濃度は、タンパク質構造の提供に加えて、エネルギー産生のための糖質の代謝、タンパク質代謝の制御、ミネラルの輸送、核酸合成(DNAおよびRNA)、血糖の制御、および電気活性の支援などの、正常な生理学的機能の支援を提供する。更に、保存溶液に含まれる特定のアミノ酸の濃度は、維持溶液116/118および潅流流体108のpHを予想通りに安定化するために用いることができる。
保存溶液118の特定の態様は、エピネフリンおよび複数のアミノ酸を含む。特定の態様において保存溶液118は、カルシウムおよびマグネシウムなどの電解液を含む。
一つの態様において、維持溶液116/118は、一つまたは複数のアミノ酸を含む保存溶液118、およびグルコースまたはデキストロースなどの一つまたは複数の炭水化物を含む栄養溶液116との組み合わせから作られる。維持溶液116/118はまた、臓器潅流システムの中に注入する直前の、使用時点で投与される、本明細書に記載のような添加剤を有する。例えば、溶液に含むことができるか、または使用者により使用時点で添加される追加の添加剤は、ホルモンおよびステロイド、例えばデキサメタゾンおよびインスリン、ならびに成人用マルチビタミンなどのビタミン、例えば成人用MVIなどの注入投与用成人用マルチビタミンを含む。更に、小分子および大きな生体分子、たとえば治療薬および/または、一般的に例えばアルブミンなどの血液または血漿に関連する成分は同様に、溶液に含まれるか、ポート762で使用者により使用時点で添加することができる。
一部の態様において、本明細書記載の組成物、溶液、およびシステムに含めることができる治療薬は、例えばT3および/またはT4甲状腺ホルモンなどの甲状腺ホルモンを含む。更に含むことのできる治療薬は、例えば心臓治療用抗血不整脈薬およびβ遮断薬などの薬物を含む。例えば、特定の態様において、一つまたは複数の甲状腺ホルモン、一つまたは複数の抗血不整脈薬、および一つまたは複数のβ遮断薬が、臓器の潅流前または潅流中のどちらかで、栄養溶液116、保存溶液118、および/または維持溶液116/118に添加される。上記の治療薬はまた、システム、例えば臓器の潅流前または潅流中の潅流流体108に直接添加してもよい。
表4について更に説明する。例示の保存溶液118に使用される特定成分は、例えば滅菌を経る場合に分解または変性する、不活化される小さな有機分子または大きな生体分子などの分子である。システム100に従って、溶液118の不活化される(inactivatable)成分は、溶液118の残りの成分とは別に調製することができる。個別の調製は、溶液118の各成分を公知の技術で個別に精製する工程を含む。溶液118の残りの成分は、例えば高圧蒸気殺菌で殺菌し、次に生物学的成分と混合される。
表6に、この二段階の工程プロセスに従って別々に精製され、殺菌後の本明細書に記載の溶液に添加することのできる特定の生物学的成分を記載する。これらの添加または補助成分は、溶液118、116、116/118、プライミング溶液またはそれらの組み合わせ、個々に、種々の組み合わせで組成物としてまたは混合した溶液として、一度に添加することができる。例えば、特定の態様において、表6に記載されたエピネフリン、インスリンおよび成人用MVIが、維持溶液116/118に添加される。別の例において、表6に記載されたソルメドロールおよび炭酸水素ナトリウムが、プライミング溶液に添加される。添加成分はまた、一つまたは複数の組み合わせ、またはひとまとめにして混合することができ、また溶液116、118、116/118および/またはプライミング溶液に添加される前に溶液に入れることができる。一部の態様において、添加成分は、ポート762を通って潅流流体108に直接添加される。表6に記載された成分の量は、相互に、および/または表1〜5の一つまたは複数に記載された成分量、同様に、溶液116、118、116/118の調製に使用される水溶液の量、および/またはプライミング溶液に比例し、また所望の溶液の量に適するように増減することができる。
(表6)使用前に添加される例示的な生物学的成分
Figure 2019163332
一態様において、維持溶液116/118に使用する組成物は、一つまたは複数の炭水化物と、一つまたは複数の臓器刺激剤と、アスパラギン、グルタミン、またはシステインを含まない複数のアミノ酸とを含む。組成物は本明細書に記載の溶液に使用される他の物質を含むことができる。
別の態様において、心臓などの臓器を潅流するためのシステムは、一つまたは複数の炭水化物と、一つまたは複数の臓器刺激剤と、アスパラギン、グルタミン、またはシステインを含まない複数のアミノ酸とを含む、臓器および実質的に無細胞の組成物を含む。実質的な無細胞は、細胞物質(cellular matter)を実質的に含まない系;特に、細胞に由来しない系を含む。例えば、実質的な無細胞は、非細胞供給源から調製された組成物および溶液を含む。
別の局面において、溶液116と118は、一つまたは複数の臓器維持溶液を含むキットの形で供給することができる。例示の維持溶液は、臓器潅流流体108に使用する一つまたは複数の流体溶液において、上記で特定された成分を含んでもよい。特定の態様において、維持溶液116/118は、保存溶液118および栄養溶液116および/または補助組成物または溶液などの複数の溶液を含んでもよく、あるいは一つまたは複数の溶液116/118を形成するように流体の中で再生することができる乾燥成分を含んでもよい。キットはまた、希釈して、本明細書に記載の保存溶液、栄養溶液、および/または補助溶液を提供する、一つまたは複数の濃縮溶液中の溶液116および/または118からなる成分を含んでもよい。キットは同様に、プライミング溶液を含む。例示の態様において、維持溶液は、上述のような保存溶液118および栄養溶液116、および上述のようなプライミング溶液を含む。
特定の態様において、キットは一つのパッケージで供給され、キットは、一つまたは複数の溶液(または適切な流体で混合することにより、一つまたは複数の溶液を形成するために必要な成分)と、殺菌のための、潅流および使用中の流れおよび温度制御のための、およびキットを臓器潅流に使用するために必要なまたは適切な他の情報のための、使用説明書とを含む。特定の態様において、キットは、一つのみの溶液116、118、および/または116/118(または適切な流体で混合するとき溶液に使用する乾燥成分のセット)とともに提供され、かつ、一つのみの溶液116、118、および/または116/118(または乾燥成分のセット)が、説明書および他の情報またはシステム100の溶液116、118、および/または116/118を操作するために必要または有用な材料のセットとともに提供される。
別の局面において、システム、溶液、および方法は、潅流中に治療薬を臓器に送達するために使用することができる。例えば、上述の一つまたは複数の溶液および/またはシステムは、一つまたは複数の薬物、生物製剤、遺伝子治療ベクター、または潅流中に臓器に送達される他の治療薬を含んでもよい。適切な例示の治療薬は、薬物、生物製剤、またはその両方を含んでもよい。適切な薬物は、抗真菌剤、抗菌剤または抗生物質、抗炎症剤、増殖抑制剤(anti-proliferative)、抗ウィルス剤、ステロイド、レチノイド、NSAID、ビタミンD3およびビタミンD3類似体、カルシウムチャネル遮断薬、補体中和剤(complement neutralizer)、ACE阻害剤、免疫抑制剤、および他の薬物を含んでもよい。適切な生物製剤は、タンパク質を含んでもよく;適切な生物製剤は同様に、遺伝子治療適用のための一つまたは複数の遺伝子を担持したベクターを含んでもよい。
例えば、適切なステロイドは、アンドロゲンおよびエストロゲンステロイドホルモン、アンドロゲンレセプター拮抗薬および5-αレダクターゼ阻害剤、およびコルチコステロイドを含むが、これらに限定するものではない。特定の例は、アルクロメタゾン、クロベタゾール、フルオシノロン、フルオコルトロン、ジフルコルトロン、フルチカゾン、ハルシノニド、モメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロン、ベタメタゾンおよびデキサメタゾン、ならびにそれらの各種エステルおよびアセトニドを含むが、これらに限定するものではない。
適切なレチノイドは、レチノール、レチナール、イソトレチノイン、アチトレチン、アダパレン、タザロテン、およびベキサロテンを含むが、これらに限定するものではない。
適切なNSAIDは、ナプロキセン、スプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ジクロフェナク、インドメタシン、セレコキシブ、およびロフェコキシブを含むが、これらに限定するものではない。
適切なビタミンD3類似体は、ドキセルカルシフェロール、セオカルチトール(seocalcitol)、カルシポトリエン、タカルシトール、カルシトリオール、エルゴカルシフェロール、およびカルシフェジオールを含むが、これらに限定するものではない。
適切な抗ウィルス剤は、トリフルリジン、シドフォビル、アシクロビル、ペンシクロビル、ファムシクロビル、バルシクロビル(valcyclovir)、ガンシクロビル、およびドコサノールを含むが、これらに限定するものではない。
適切なヒト炭酸脱水酵素阻害剤は、メタゾラミド(methazoliamide)、アセタゾラミド、およびドルゾラミドを含むが、これらに限定するものではない。
適切な増殖抑制剤は、5-FU、タキソール、ダウノルビシン、およびマイトマイシンを含むが、これらに限定するものではない。
適切な抗生物質(抗菌剤)は、バシトラシン、クロルヘキシジン、二グルコン酸クロルヘキシジン(chlorhexidine digluconate)、シプロフロキサシン、クリンダマイシ、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、ロメフロキサシン、メトロニダゾール、ミノサイクリン、モキシフロキサシン、ムピロシン、ネオマイシン、オフロキサシン、ポリミキシンB、リファンピシン、ルフロキサシン(ruflozacin)、テトラサイクリン、トブラマイシン、トリクロサン、およびバンコマイシンを含むが、これらに限定するものではない。本明細書に記載の抗ウィルスおよび抗菌プロドラッグは、反応性全身感染症を適切に治療するために使用され得る。
特定の態様において、潅流流体108に使用する溶液システムは、一つまたは複数の心臓刺激剤と、アスパラギン、グルタミン、またはシステインを含まない複数のアミノ酸とを含む保存溶液118などの第一の溶液を有する第一のチャンバー、およびデキストロースなどの一つまたは複数の炭水化物を含む栄養溶液116などの第二の溶液を有する第二のチャンバーを含む。システムはまた、心臓を潅流するために溶液を使用する前に第一の溶液および第二の溶液を殺菌する殺菌システムを含む。一部の態様において、一つまたは複数の溶液118および116は、一つまたは複数の治療薬を含む。一部の態様において、溶液システムは、一つまたは複数の炭水化物を有することができる上記記載のようなプライミング溶液を含む第三のチャンバーを含む。特定の態様において、第一の溶液118は、エピネフリン、アデノシン、インスリン、一つまたは複数の免疫抑制剤、マルチビタミン、および/または一つまたは複数の電解液を含む。
特定の実験データが、本明細書に記載の溶液の特定の態様および臓器潅流における使用を説明するために利用できる。特定のデータが、図31から33に示されている。図31は、システム100の態様に従い、順行性モードで潅流中の臓器に対する電解液安定性を表す図を示す。図31に関連する態様において、臓器は心臓102であり、潅流は、溶液116/118を含有する潅流流体108を、左心房152へと、および大動脈158からポンピングして、順行性モードで(上述のように)導かれる。潅流速度は、およそ30mhrである。図31から分かるように、種々の電解液:ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび塩化物イオンのレベル、ならびに溶解したグルコースのレベルは、臓器が潅流システム100にカニューレ挿入される前から、システム100内へのカニューレ挿入後6時間まで、潅流の全経過を通じて安定したレベルで存続する。
図32は、システム100の別の態様における逆行性潅流中の臓器の電解液安定性を示す図である。図32に関連する態様において、臓器は心臓であり、溶液116/118を含有する潅流流体108を、大動脈158の中に、および冠状静脈洞155を通ってポンピングすることにより潅流が生じる。潅流速度は、およそ30mL/hrである。図32から分かるように、種々の電解液:ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび塩化物イオンのレベル、ならびに溶解したグルコースのレベルは、臓器が潅流システム100にカニューレ挿入される前からカニューレ挿入後6時間まで、潅流の全経過を通じて安定したレベルを存続する。図32はまた、電解液およびグルコースのレベルが、臓器の正常な生理学的状態に対するベースライン(BL)のレベルと類似のレベルで存続することを示す。
図33は、本発明の別の態様による、潅流中の臓器の動脈血液ガスプロファイルを示す図である。図33に見られるように、種々の血液ガス:二酸化炭素および酸素のレベル、ならびにpHのレベルは、潅流の6時間の全経過を通じて安定なレベルで存続する。図33はまた、二酸化炭素、酸素、pHのレベルが、臓器の正常な生理学的状態に対する二つのベースライン(BL)測定レベルと類似のレベルで存続することを示す。図31から33は、本システムの性能および安定的で生理学的状態または生理学的状態に近い状態で臓器を維持する方法を示す。
本発明の別の局面において、ラクテートは、摘出したドナー心臓の潅流状態の指標として用いられる。動脈血液において、ラクテートは、標準の血液化学分析器によって、または臓器ケアシステム100に内蔵の動脈オンラインラクテート分析器プローブによって測定される。静脈血の(冠状静脈洞を通った)ラクテートは、上記と同様の技術を用いて測定される。V-Aラクテート差は、以下の式を用いて算出される。ラクテートのV-A差=静脈(冠状静脈洞)血液のラクテート−動脈血液のラクテート。
V-A差は、潅流状態を示す。
V-A差が負(−)の値を有する場合、静脈血液(冠状静脈洞)は、動脈血より少ないラクテートを有する。これは、心臓がラクテートを実際に代謝していることを示し、これは、心筋細胞に対する適切な潅流および酸素運搬のサインである。
V-A差がゼロ(0)の値を有する場合、静脈側のラクテートは動脈血に等しい。これは、心筋細胞がラクテートを生成していないか、または代謝していないことを示す。この状態は、心筋細胞に対する適切な潅流を示すが、この平衡状態がシフトしないことを確認するために連続測定が必要である。
V-A差が正(+)の値を有する場合、心筋細胞は酸素を欠乏し、嫌気性代謝の副生成物としてラクテートを生成し始める。この問題に対処するためにオペレーターは、適切な潅流を確実にし、酸素運搬速度を速め、心筋細胞に送るように冠状動脈血流量を増やす。
ラクテートのV-A差の連続(少なくとも1時間に一度)測定は、オペレーターが心臓の潅流状態を継続的に査定するために臓器ケアシステム100における摘出心臓の全維持期間の間、示される。連続的測定によりオペレーターは、ラクテートのV-A差に対する傾向データを評価することが可能になる。
図34は、適切な潅流を示す一連のラクテート差を示す。垂直軸はラクテート値(mmol/L)を示し、水平軸は時間(分)である。下の表は、動脈のラクテート(ラクテートA)、静脈のラクテート(ラクテートV)およびラクテートのV-A差(ラクテートVA差)および潅流クロック時間(分)の値を提供する。
(表7)
Figure 2019163332
図34に対応する情報についての一連のラクテートの表。
注意すべきことは、V-A差が潅流全時間を通して、ゼロまたはそれより低いことである。これは、適切な潅流がなされていること、また心筋細胞がラクテートを生成していないことを示す。一態様において、一連の測定値はV-A差の傾向を提供する。更に、ラクテート値減少の傾向は、心筋細胞がラクテートを代謝していることを示す。これらが指し示すことは、ポジティブな移植後の治療成績に関連する。
図35は、臓器ケアシステム100におけるヒトの心臓の一連のラクテートV-A差の査定例である。注意すべきことは、心筋細胞がラクテートを増やしていることを示すラクテート値の増加およびVA差に対する正の値である。これは不適切な潅流を示し、ドナー心臓の虚血損傷に関連し、結果として移植に適さないという臨床医の判断に至る。更に、ラクテート値増加の傾向は、ラクテートの生成を示し、心筋細胞が十分な酸素を欠いていることを示す。
(表8)
Figure 2019163332
図35に対応する情報についての一連のラクテートの表。
一連のラクテートの差は、心筋組織の移植適合性を査定するために他の生理学的パラメータと組み合わせて使用することができる。例えば、臓器ケアシステム100における摘出心臓の冠状血管開存性は、高い動脈圧(潅流圧)と一連のラクテートV-A差との組み合わせを用いて査定することができる。
特に、臓器ケアシステム100において、高い、上昇する、またはニュートラルなラクテートV-A差と同時に発生する、心臓で観察される高い大動脈圧があると、潅流された心臓の冠状血管狭窄を示す可能性がある。これは、血流に対する高い抵抗の兆候としての高い圧力によって、そして同様に、ラクテート生成と基準から外れたV-A差とを引き起こす心筋細胞に対する低いまたは不適切な酸素運搬によって説明され得る。
当然のことながら、本発明は種々の例示的な態様に関連して説明されたが、上述の説明は本発明を例示するものであり、添付の特許請求の範囲内で規定される本発明の範囲を限定することを意図していない。例えば、種々のシステムおよび/または方法は、開示に基づいて実施可能であり、本発明の範囲内に入る。他の局面、優位性、および変更形態は、以下の特許請求の範囲内である。本明細書において引用したすべての文献は、引用によりその全体を組み入れられ、本出願の一部とされる。

Claims (20)

  1. 以下を含む、生理学的状態に近い機能する状態でエクスビボの心臓を潅流させるように構成された臓器ケアシステム:
    シャーシ;
    潅流中に生理学的状態に近い機能する状態でエクスビボの心臓を収容するための、該シャーシに装着された臓器チャンバーアセンブリ、ここで、該臓器チャンバーは以下を含む:
    心臓の大動脈(A)に接続するように構成された第一のインターフェース、および心臓の肺静脈(V)に接続するように構成された第二のインターフェースを有する、流体導管;
    該第一のインターフェースにおけるラクテートを測定するように構成されたラクテートAセンサー;
    該第二のインターフェースにおけるラクテートを測定するように構成されたラクテートVセンサー;および
    該ラクテートAセンサーおよび該ラクテートVセンサーによって測定されたラクテート値を用いてラクテートV-A差を算出するように構成されたプロセッサー、
    ここで、該プロセッサーは、異なる2回ラクテートV-A差を算出するように構成され、
    ここで、該プロセッサーはさらに、該異なる2回の間のV-A差における変化を算出し、V-Aラクテート差の間の経時変化を、エクスビボの心臓の代謝機能と関連付けるように構成される。
  2. 臓器チャンバーアセンブリが使い捨てである、請求項1記載のシステム。
  3. V-A差が、1時間に少なくとも1回算出される、請求項1記載のシステム。
  4. 第一および第二のインターフェースへの潅流流体の流れを調節するように構成されたフロー切替弁を含む、請求項1記載のシステム。
  5. さらに以下を含む、請求項1記載のシステム:
    臓器チャンバーアセンブリと流体連通したシャーシに装着され、かつ心臓用潅流流体を保持するように構成されたレザバー。
  6. さらに以下を含む、請求項1記載のシステム:
    大動脈圧を測定するためのセンサー。
  7. 潅流圧および少なくとも一つの測定されたラクテート値の両方を用いて、心臓の冠状血管開存性を評価するための少なくとも一つのセンサーからの潅流圧測定を受けるように、該プロセッサーがさらに構成された、請求項6記載のシステム。
  8. ラクテートV-A差が一定の間隔をおいて算出される、請求項1記載のシステム。
  9. 一定の間隔が1時間未満である、請求項8記載のシステム。
  10. ラクテート値が測定される最初のラクテート値測定から、最後のラクテート値測定までの時間の合計の長さが1時間より長い、請求項9記載のシステム。
  11. 以下を含む装置:
    潅流中に生理学的状態に近い機能する状態でエクスビボの心臓を収容するための臓器チャンバーアセンブリであって、ここで、該臓器チャンバーは以下を含む:
    エクスビボの心臓の大動脈(A)へ結合されるように構成された第一の流路;
    該心臓の肺静脈(V)へ結合されるように構成された第二の流路;
    該第一の流路におけるラクテートAレベルを測定するように構成された第一のセンサー;
    該第二の流路におけるラクテートVレベルを測定するように構成された第二のセンサー;
    該第一および第二のセンサーと結合したプロセッサー;および
    該プロセッサーと結合したメモリーであって、プロセッサーによって実行された際に、
    該ラクテートVレベルから該ラクテートAレベルを差し引くことにより、異なる2回ラクテートV-A差を算出すること、および、
    ラクテートV-A差の間の経時変化を移植のための心臓の適合性と関連付けるために、該異なる2回の間のラクテートV-A差における変化を算出すること、
    をプロセッサーにさせるコンピューター読み取り可能な指示を含む、メモリー。
  12. 該第一のおよび第二の流路、並びに、該第一のおよび第二のセンサーが使い捨てである、請求項11記載の装置。
  13. 該ラクテートV-A差が、1時間に少なくとも1回算出される、請求項11記載の装置。
  14. 該第一のおよび第二の流路を通る潅流流体の流れを調節するように構成されたフロー切替弁を含む、請求項11記載の装置。
  15. さらに以下を含む、請求項11記載の装置:
    シャーシ;および
    該第一のおよび第二の流路の少なくとも一つと流体連通したシャーシに装着され、かつ心臓用潅流流体を保持するように構成されたレザバー。
  16. さらに以下を含む、請求項11記載の装置:
    大動脈圧を測定するように構成されたセンサー。
  17. 大動脈圧およびラクテート値を用いて、心臓の冠状血管開存性を評価するためのセンサーからの潅流圧測定を受けるように、該プロセッサーがさらに構成された、請求項16記載の装置。
  18. ラクテートV-A差が一定の間隔をおいて算出される、請求項11記載の装置。
  19. 一定の間隔が1時間未満である、請求項18記載の装置。
  20. ラクテート値が測定される最初のラクテート値測定から、最後のラクテート値測定までの時間の合計の長さが1時間より長い、請求項19記載の装置。
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