JP2003206201A - 臓器収納装置を含む移植用臓器保存装置および該収納装置を含む人工臓器システム - Google Patents

臓器収納装置を含む移植用臓器保存装置および該収納装置を含む人工臓器システム

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JP2003206201A
JP2003206201A JP2001401200A JP2001401200A JP2003206201A JP 2003206201 A JP2003206201 A JP 2003206201A JP 2001401200 A JP2001401200 A JP 2001401200A JP 2001401200 A JP2001401200 A JP 2001401200A JP 2003206201 A JP2003206201 A JP 2003206201A
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Katsutoshi Naruse
勝俊 成瀬
Yasuyuki Sakai
康行 酒井
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 移植用の肝臓、腎臓等の臓器を機能を発揮し
うる状態で保持する肝臓収納装置を含む、臓器の機能を
保持したまま長期間保存できる保存装置および前記収納
装置を利用した人工臓器システムの提供。 【解決手段】 少なくとも、動物臓器9を内部に設置し
た臓器収納装置および臓器の血液12を灌流させるため
のポンプ14aを含む移植用臓器保存装置または人工臓
器システム。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、移植用の肝臓、腎
臓等の臓器を機能を発揮しうる状態で保持する肝臓収納
装置を含む、臓器の機能を保持したまま長期間保存でき
る移植用臓器保存装置および前記収納装置を利用した人
工臓器システムに関する。
【0002】
【従来の技術】肝臓および腎臓は、生体内における代謝
の中心的臓器であり、生体の恒常性維持に重要な役割を
果たしている。このため、一度この恒常性が崩れ、それ
が長期間にわたるとそれぞれ肝不全、腎不全を惹起し、
重大な生命の危機に陥る。
【0003】重篤な肝不全の治療法として、人工肝臓に
よる治療法の進歩が期待されている。現在、開発目標と
なっている人工肝臓は、人工血管のような完全埋め込み
型のものではなく、むしろ劇症肝炎や術後肝不全患者に
おける肝機能の補助や肝移植適応ドナーが現れるまでの
待機期間における肝機能の代替つなぎとして灌流治療に
使用する体外設置式のものである。その開発の主流とな
っているのは、吸着除去装置、ハイブリッド型、および
全肝型人工肝臓の三種類に分けられる。
【0004】吸着除去装置は、血液中から有害物質を吸
着剤を用いて取り除くことにより肝機能の一部を代替す
るものである。1958年にSchechterらにより開発された
陽イオン交換樹脂を用いたアンモニアの吸着除去装置[S
chechter D.C., et al.:Surgery 44:892(1959)]、Yatzi
disらにより開発された活性炭を用いた吸着除去装置[Ya
tzidis H., et al.:Lancet 2:216(1965)]等がある。Yat
zidisらの装置は、ビリルビン等の中分子量物質の除去
において著しい効果を有し、現在も医療現場において使
用されている。しかし、血小板減少、アナフィラキシー
・ショックといった副作用があり、また、吸着除去装置
のみの治療法は、特定の物質の除去・解毒といった肝機
能のごく一部しか代替できないため、肝不全患者の治療
法としては限界がある。
【0005】全肝型人工肝臓は、ヒト以外の異種生物由
来の全肝(異種全肝)を使用するタイプのものである。
手術により摘出された異種全肝を用いた全血直接灌流治
療法は、1965年にEisemannらによって摘出ブタ全肝を用
いて始められ[Eisemann B.,et al:Ann Surg 162:329(19
65)]、Abouna、Neuhausらによって臨床応用されてき
た。さらに、京都大学の小沢らによりブタ肝およびヒヒ
肝を用いた交叉灌流治療法が開発され、16例の肝不全患
者に臨床応用された。しかし、異種免疫反応などの原因
により、灌流は数時間しか続行できず、生存期間の有意
な延長は認められなかった。
【0006】一方、コラゲナーゼ液を用いた肝細胞分離
培養法が確立され、肝細胞を工学装置内において至適条
件下で培養すると良好な肝機能を発揮することが明らか
にされて以来、培養肝細胞を含有するバイオリアクター
を組み込んだハイブリッド型人工肝臓が開発されるよう
になり、1990年代に入って次々と臨床応用された。Rozg
aらは、デキストラン・マイクロキャリアーを用いたホ
ローファイバー型バイオリアクターを[Rozga J., et a
l.:Ann Surg 217:502 (1993)]、また、Gerlachらは、三
次元毛細管ネットワーク型バイオリアクターを[Gerlach
J., et al.:Transplantation 58:984(1994)]それぞれ
開発した。両者共にブタ肝細胞を固定化して、Rozgaら
はこれまで40例以上、Gerlachらは8例の患者にそれぞ
れ臨床応用を行った。また、本願発明者の研究グループ
は、コラーゲン・コートしたポリエステル不織布にブタ
肝細胞を固定化した不織布充填型バイオリアクターを開
発した。しかし、ハイブリッド型も臨床応用において確
実な効果をあげたかどうかは明らかではない。
【0007】一方、腎不全の治療法としては、人工腎臓
および腎臓移植が挙げられる。1995年末時点で全世界で
約70万人が血液透析による人工腎臓治療を受けている。
わが国では、人工腎臓治療患者は1997年末時点で17万6
千人に達し、人口当たりの人工腎臓治療患者数は世界で
最も多い。尿素等の代謝産物、有毒物質を血液から除去
する効果を持つが、腎臓の尿細管の機能に当たる再吸収
能を持たず、有用なタンパクでも排出する結果になるの
で、除去物質の選択性の向上または有用物質の再吸収が
課題である。また、肝臓移植と同様、腎臓移植もドナー
不足に悩んでいる。このような状況から、腎機能をより
良く代替できる人工腎臓の体外灌流治療法の開発が望ま
れる。
【0008】これまで臨床応用されたRozgaら、またはG
erlachらのハイブリッド型人工肝臓システムにおいて
は、患者から体外灌流システムに流入する全血から、血
漿分離部によって分離された血漿がバイオリアクターを
通過する。その大きな問題点は、全血流量の20〜30%程
度の血液量しかバイオリアクター中に灌流されず、灌流
効率が低いこと、また、血漿は全血の10分の1以下の酸
素溶存能力しか持たないので、肝細胞への酸素供給が不
足することである。これに伴い、肝機能代替部中の肝細
胞の活性は低下し、肝機能の発揮は不十分なものとな
る。このような欠点を克服するため、灌流効率および酸
素供給を高める目的で、肝機能代替部に全血を直接灌流
することが必要であり、それによって肝不全患者の肝機
能を良好に代替および補助することのできる人工肝臓シ
ステムが求められている。
【0009】本発明者らは、上記課題に基づいて研究を
行った結果、体外灌流の人工肝臓システムまたは人工腎
臓システムにおいて、臓器代替部(肝機能代替部または
腎機能代替部)以外に、白血球除去部および/または免
疫グロブリン除去部、さらには血液成分分離部を設置す
ることによって、全血を、異種免疫反応を起こさずに臓
器代替部を通過させ、これにより、灌流可能時間、灌流
効率および臓器代替部への酸素供給を向上させるととも
に、白血球等の免疫担当細胞の減少を防ぎ且つ白血球除
去部および/または免疫グロブリン除去部に必要な装置
を節約することに成功し、全血直接灌流治療用人工臓器
システムを完成するに至り、先に特許出願を行った(特
許願2000-80131号、新規な人工肝臓システム、平成12年
3月22日出願)(PCT国際特許出願第 PCT/JP01/02233
号、新規な人工臓器システム、平成13年3月21日出
願)。
【0010】さらに、人工肝臓については、上記全血直
接灌流治療法を用いて、ハイブリッド型と全肝型の比較
実験を行った。ハイブリッド型人工肝臓のバイオリアク
ターとしては、本願発明者の研究グループの開発した不
織布充填型バイオリアクターにブタ肝細胞を固定化した
ものを用いた。全肝型人工肝臓としては、ブタ全肝を手
術によって摘出して門脈および下大静脈に血液灌流用チ
ューブを挿入したものをステンレス製のトレイの上に置
き、門脈から下大静脈へ全血を灌流する装置を用いた。
その結果、ハイブリッド型人工肝臓は、胆汁排泄ができ
ないこと、肝細胞分離および精製、肝細胞のバイオリア
クターへの固定化など、システム製作までの操作が繁雑
で時間がかかること、これらの操作により全肝中の肝細
胞の3分の1から2分の1が失われ、かつ、肝細胞障害
を受けやすいこと、これらの操作により雑菌汚染の可能
性が全肝型より高いと考えられること、肝細胞が患者体
内に流入する可能性があることが欠点であると考えられ
た。一方、全肝型人工肝臓は、胆汁排泄ができること、
全肝を切除してから灌流治療開始までに時間がかからな
いこと、セットアップにおける肝細胞障害はハイブリッ
ド型よりはるかに少ないと考えられること、肝細胞が患
者体内に流入する可能性はほとんど考えられないこと
等、ハイブリッド型を凌駕する点を多く認めた。総合的
に判断すると、異種肝を用いる限り、これをコラゲナー
ゼ等の薬液を用いて肝細胞分離してからバイオリアクタ
ーに再構成する積極的意義は乏しく、全肝型人工肝臓の
方がハイブリッド型よりも実用的で臨床応用に適してい
るという結論を得た。以上より、今後、人工肝臓として
臨床の現場において最も普及が有望視されるのは、全肝
型人工肝臓であると言える。
【0011】これまで開発された全肝型人工肝臓システ
ムとしては、前述した通り、本発明者らが開発したシス
テムの他にAbounaら、Neuhausら、小沢らのものがあっ
た。しかし、上述の全肝型人工肝臓システムにおける肝
臓収納装置は、アンモニア代謝能等の肝機能を発揮はす
るものの、ハイブリッド型と較べて十分とは言えなかっ
たため、肝機能をより発揮するような改善が必要と考え
られた。また、従来は臓器の機能を長期間保持できる、
灌流タイプの保存装置も存在しなかった。
【0012】従来の全肝型人工肝臓を改善し、十分な肝
機能を発揮する全肝型人工肝臓が望まれており、このた
めに肝機能を低下させずに一定期間移植肝臓を保存でき
る装置・システムおよび肝機能を低下させず長期間実施
できる人工肝臓システムが望まれていた。また、肝臓だ
けでなく腎臓等の他の臓器についても移植用臓器を良好
に保存することができる装置・システムが望まれてい
た。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、臓器の末梢
組織を十分に拡張させるように臓器を配置し得る臓器収
納装置を提供することを目的とする。また、本発明は、
該臓器収納装置を含む全肝型人工肝臓システムまたは移
植用肝臓保存装置を提供することを目的とする。さら
に、本発明は、前記臓器収納装置を含み、浸出液を回収
するシステムおよび/または拍動ポンプを持つ全肝型人
工肝臓システムまたは移植用肝臓保存装置を提供するこ
とを目的とする。さらに、本発明は、腎臓の末梢組織を
十分に拡張させる腎臓収納装置を持つ人工腎臓システム
または移植用腎臓保存装置を提供することを目的とす
る。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、従来の全
肝型人工肝臓が有する問題点を検討した結果、以下のよ
うにすれば改善し得ることを見出した。すなわち、切除
した動物の肝臓そのものに血液を灌流して人工肝臓とし
て機能させる場合、肝臓の末梢組織に酸素や栄養を十分
に送らなければならない。そのためには、まず、肝臓が
出来るだけ自然な形を保ち、十分に末梢組織を拡張させ
るように肝臓が配置される肝臓収納装置であることが必
要である。たとえば、肝臓をステンレスなどの金属板の
上に直接置くと、肝臓自身の重量で肝臓組織が潰れる形
となり、末梢組織の血流の鬱滞、すなわち鬱血が起こ
り、十分には肝機能を発揮できない。また、Abounaらの
全肝型人工肝臓システムは、中空に張ったビニールに乗
せているが、やはり、肝臓自らの重さにより、全体が潰
れてしまい、十分に末梢組織が拡張しにくいと考えられ
る。Neuhausらのシステムは、肝臓を滅菌したビニール
に入れて、それを温水に浮かせるものである。肝臓は、
自然な形を保ちはするものの、自身の重量によりほぼ全
体が温水につかることにより、温水によって周囲からく
るみこまれるように圧力を受けるため、十分には肝臓の
末梢組織が拡張できない可能性がある。小沢らのシステ
ムは、肝臓をゲルに浸すものであるが、同様に、肝臓の
末梢組織が拡張できない可能性がある。
【0015】肝臓の末梢組織に酸素や栄養を十分に送る
ためには、末梢血管を拡張させ、それにより組織の隅々
にまで血流を行き渡らせる必要がある。血液を灌流する
ポンプとしては、定常流と拍動流の2通りがある。ハイ
ブリッド型人工肝臓のバイオリアクターように、肝臓を
解体して肝細胞に分離してあれば、そこを灌流する血流
は定常流でよいが、肝臓そのものに血液を灌流させる場
合、末梢血管を拡張させるためには、拍動流であること
が必須である。Abounaら、Neuhausら、小沢らの全肝型
人工肝臓システムには、拍動ポンプは配備されていな
い。Neuhausらのシステムでは、呼吸性変動を模して、
5〜10秒に1回の割合で外側から陰圧をかけているが、
拍動ポンプにより内部から拡張させるのに較べ、肝臓の
拡張効果は少ない。
【0016】さらに、全肝型人工肝臓システムにおいて
は、浸出液を回収する構造上の工夫が必要である。それ
がなければ、体外灌流システムから浸出液の分の血液が
失われることになる。Abounaらの全肝型人工肝臓装置に
は、装置の底面が漏斗状になっていて、そこに貯留した
浸出液を回収してメインの灌流回路に戻すサブの回路が
作られている。Neuhausらの装置は、浸出液を回収する
回路がない。小沢らの装置では、浸出液はゲルに溶け込
んでしまうので、これを回収できない。
【0017】本発明者は、鋭意研究の結果、肝臓を十分
に拡張させる構造の装置であり、かつ拍動ポンプが装着
され、かつ浸出液を回収する構造上の工夫を持つ全肝型
人工肝臓システムを開発し、本発明を完成させるに至っ
た。腎臓の場合は、肝臓のように臓器表面からの浸出液
が出ることは少ない。また、肝臓に較べてずっと小さ
く、組織が硬いため、末梢組織に血流が行き渡らないと
いうことはより少ない。しかし、生体組織である以上、
拍動流の方が望ましいと考えられる。
【0018】本発明者らが開発した人工臓器システム
は、肝不全または腎不全の患者の人工臓器灌流治療に用
いる一方、肝臓および腎臓といったヒト移植用臓器を、
ヒト全血を灌流することによって保存する目的にも用い
ることができる。つまり、移植用肝臓保存装置、また
は、移植用腎臓保存装置としても用いることができる。
【0019】すなわち、本発明は以下のとおりである。 (1) 少なくとも、動物臓器を内部に収納した臓器収
納装置および臓器の血液を灌流させるためのポンプを含
む移植用臓器保存装置。 (2) 臓器収納装置が、臓器を下から保持する容器部
および臓器に挿入して臓器を吊り下げる臓器支持管を含
む、(1)の移植用臓器保存装置。 (3) 臓器収納装置の容器部が、臓器表面からの漏出
液を血液灌流回路に戻すための手段を有する(2)の移
植用臓器保存装置。
【0020】(4) 血液灌流用ポンプが拍動流を作り
出すポンプであって、定常流ポンプと開閉弁を組合せて
なる拍動ポンプまたは人工心臓装置である、(1)〜
(3)のいずれかの移植用臓器保存装置。 (5) 収納する臓器が肝臓である、(1)〜(4)の
いずれかの移植用臓器保存装置。 (6) 血液灌流ポンプが、肝臓の門脈および/または
肝動脈側から下大静脈側へ、または下大静脈側から門脈
および/または肝動脈側へ血液を灌流させる、(5)の
移植用臓器保存装置。
【0021】(7) 臓器支持管が、肝臓の下大静脈断
端に挿入され、肝臓全体を吊り下げ、肝臓が該支持管と
容器部の肝臓の置かれる面に支えられて、拡張した状態
で保持され得る、(5)または(6)の移植用臓器保存
装置。 (8) 肝臓中の血液が、臓器支持管を通って外部血液
流路と交通することのできる、(7)の移植用臓器保存
装置。 (9) 動物臓器が腎臓である、(1)〜(4)のいず
れかの移植用臓器保存装置。
【0022】(10) 臓器の動物種が、ヒト、ブタ、
ウシ、サルおよびヒヒからなる群から選択される、
(1)〜(9)のいずれかの移植用臓器保存装置。 (11) 少なくとも、動物臓器を内部に収納した臓器
収納装置および臓器の血液を灌流させるためのポンプを
含む人工臓器システムであって、臓器収納装置が、臓器
を下から保持する容器部および臓器に挿入して臓器を吊
り下げる臓器支持管を含む人工臓器システム。 (12) 臓器収納装置の容器部が、臓器表面からの漏
出液を血液灌流回路に戻すための手段を有する(11)
の人工臓器システム。
【0023】(13) 血液灌流用ポンプが拍動流を作
り出すポンプであって、定常流ポンプと開閉弁を組合せ
てなる拍動流ポンプまたは人工心臓装置である、(1
1)または(12)の人工臓器システム。 (14) 収納する臓器が肝臓である、(11)〜(1
3)のいずれかの人工臓器システム。 (15) 血液灌流ポンプが、肝臓の門脈および/また
は肝動脈側から下大静脈側へ、または下大静脈側から門
脈および/または肝動脈側へ血液を灌流させる、(1
4)の人工臓器システム。
【0024】(16) 臓器支持管が、肝臓の下大静脈
断端に挿入され、肝臓全体を吊り下げ、肝臓が該支持管
と容器部の肝臓の置かれる面に支えられて、拡張した状
態で保持され得る、(14)または(15)の人工臓器
システム。 (17) 肝臓中の血液が、臓器支持管を通って外部血
液流路と交通することのできる、(16)の人工臓器シ
ステム。 (18) 動物臓器が腎臓である、(11)〜(13)
のいずれかの人工臓器システム。 (19) 臓器の動物種が、ヒト、ブタ、ウシ、サルお
よびヒヒからなる群から選択される、(11)〜(1
8)のいずれかの人工臓器システム。
【0025】(20) 開口部を有しないガラス棒と少
なくとも2つの開口部を有する中空のガラス管がスプリ
ングでつながった構造を有する、移植用肝臓を吊り下げ
るための肝臓支持管。 (21) 臓器を下から保持する容器部および臓器に挿
入して臓器を吊り下げる臓器支持管を含む、移植用臓器
保存装置または人工臓器システムに用いる臓器収納装
置。 (22) 臓器が肝臓である、(21)の臓器収納装
置。 以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
【発明の実施の形態】I.本発明の移植用臓器保存装置 以下、移植用臓器の代表として肝臓および腎臓に適合さ
せた移植用臓器保存装置について記載するが、この記載
に従えば他の臓器にも本発明の移植用臓器保存装置を適
合させることが出来る。
【0027】1.移植用肝臓保存装置 本発明の移植用肝臓保存装置を図4に示す。
【0028】本発明の移植用肝臓保存装置は、少なくと
も、動物肝臓を内部に収納する肝臓収納装置および臓器
の血液を灌流させるためのポンプ14を含み、さらに圧
測定メーター15、リザーバーボトル12、酸素供給部
19、加温部21等を含む。
【0029】(1)肝臓収納装置 本発明の肝臓収納装置は、少なくとも肝臓を設置する手
段および肝臓から漏出する浸出液を回収する手段を含む
容器部ならびに肝臓を自然の状態で吊り下げる肝臓支持
管を含む。本発明の肝臓収納装置の容器部を図1および
2に、肝臓支持管を図3に例示する。
【0030】〔1〕肝臓収納容器部 容器部の形状は限定されず肝臓を置くことができ、かつ
肝臓からの漏出液を回収することができる形状ならば、
いかなる形状でもよいが、例えば、箱型をしている。容
器部の底面は肝臓からの漏出液が流下するように一定の
角度で傾斜しており、その最下点に貯留液の導出部が設
けられている。導出部は液体を導出させるための開口部
であってもよいし、液体が貯留するようになっており、
貯留した液体をポンプに連結したチューブで回収するよ
うになっていてもよい。底面の上方には、多数の孔を有
する板がほぼ水平に設置されており、ここに肝臓を置い
た時のクッションとなる敷布等を敷き、その上に手術に
よって摘出した動物の肝臓を置くことができる。
【0031】容器の材質は限定されず金属、プラスチッ
ク等を採用できるが、肝臓と接触した場合であっても肝
臓に対して毒性がなく、またオートクレーブ等の滅菌手
段により滅菌できるものが好ましく、好適には耐熱性の
プラスチック、ステンレスが用いられる。底面の構造も
最下点にある導出部にスムースに肝臓からの漏出液を導
入できるような構造を有していれば、どのような構造を
有していてもよい。また、底面の水平面に対する角度等
に限定はない。
【0032】肝臓を置くための板も底面より上方で容器
の上端部より下方にあればどの位置にあってもよいが、
肝臓を置いたときに肝臓の乾燥を防ぐために容器上部開
口部を蓋、アルミ箔、プラスチックフィルム等で覆うこ
とができるように、肝臓を置いたときに肝臓が容器上部
からはみ出さない位置に設置するのが好ましい。肝臓を
置くための該板は、容器と一体に成形されていてもよい
が、容器の洗浄や滅菌等の便宜を考慮すると、容器と取
り外し可能に設置されるのが望ましい。例えば、容器の
内部側面に該板を取り付けるための突起部のような適当
なホルダーを設けて置けばよい。該板の孔の形状、大き
さ、数にも限定はなく、収納した肝臓が落下せず、なお
かつ肝臓からの漏出液がスムースに流れ出る形状、大き
さおよび数であればよい。
【0033】肝臓から漏出した液体は、適当な漏出液回
収手段により回収される。該漏出した液体を容器下端の
導出部の開口部から直接後述のリザーバーボトルに導入
してもよいし、一旦容器下端の導出部に貯留しそれをロ
ーラーポンプ等によりリザーバーボトルに導入してもよ
い。さらに、リザーバーボトル以外の流路中に導入して
もよい。例えば、肝臓から漏出した浸出液は、敷布およ
びステンレス製の板の孔を通過して、漏斗状の底面に貯
留し、血液灌流ポンプ等によって最下点の導出口から出
て灌流チューブを通って体内に戻る回路に合流すること
ができる。
【0034】また、容器は、肝臓支持管を装着するため
の手段を備えておく必要がある。例えば、容器の内側面
または外側面の対向する2ヶ所にホルダーを設置してお
く。例えば、肝臓支持管の端部を差し込むか置くかして
肝臓支持管を固定しうる突起、穴等を有する板、棒等を
容器部側面に取り付けてホルダーとして用いればよい。
ホルダーは、用いる肝臓の大きさまたは状態により支持
管を設置する高さを変えられるようにしておくこともで
きる。
【0035】さらに、肝臓から血液が流出入するチュー
ブを保持する手段や圧測定メーターを保持する手段を備
えていてもよい。例えば、肝臓収納容器の側板部にホル
ダーを取り付ければよい。板の上に敷き肝臓を下から支
える敷布等にも限定はなく、布、柔らかい樹脂等を用い
ることができるが、柔らかくて水はけのよい布が好まし
く、例えば不織布が用いられる。本発明の容器は、容器
中の肝臓を適当な温度に加温するために、ウォーターバ
ス中に設置することもできる。また、肝臓収納容器は収
納した肝臓の乾燥を防ぐための蓋部を含んでいてもよ
い。
【0036】本発明の肝臓収納装置の容器部を図1およ
び図2に例示する。図1は移植用の肝臓を収納する容器
部の図であり、図2は該容器部に肝臓を収納した状態の
図を示す。図2aに斜視図を、図2bに断面図を示す。水
平断面は正方形または長方形であり、縦及び横の寸法と
しては、好ましくは、30〜40cm、より好ましくは、33〜
37cm、深さは、好ましくは、10〜17cm、より好ましく
は、12〜15cmである。35×35×12cmが標準的なものであ
る。この肝臓収納装置を至適な深さでウォーターバスに
浸すことができるように、高さ5〜7cmの足がついてい
ることが望ましい。
【0037】図1に示すように、本発明の移植用臓器収
納装置はステンレス製の箱1を基本とし、側板に肝臓支
持管のホルダー3およびチューブ等を保持するためのホ
ルダー4を備えている。肝臓支持管2は対向する側板に
取り付けられたホルダー3にその両端部を固定する形で
取り付けられる。図2はさらに肝臓を収納した状態を示
し、肝臓収納容器部1内に肝臓を置くために板5を設置
し、さらにその上に不織布6が置かれる。底板7は図2
bに示すように傾斜しており、肝臓からの漏出液が該底
板7上を流れ、漏出液導出部8に導かれる。
【0038】〔2〕肝臓支持管 肝臓支持管は、肝臓の下大静脈の上下の断端を貫通さ
せ、肝臓が自然な状態を保つように肝臓を吊り下げると
ともに、肝臓中の血液を該管を通して流出させるという
役割を有する。従って、数百gの重量の肝臓を支えるた
めにはある程度の強度が必要であり、また肝臓を自然な
状態に保つために肝臓の一部または全部に肝臓が自然に
拡張するのを妨げるような張力が加わらないように、肝
臓自体の重量で自然にたわむ程度の弾性も必要である。
支持管の全長は、35〜50cmが好ましく、より好ましくは
40〜45cmである。支持管の最大径は1〜2cm、好ましく
は1.2〜1.5cmである。さらに、肝臓内の血液を外部に導
出するための血液流出路、該血液を肝臓から支持管内に
導入するための開口部および該血液を支持管から外部に
導出させるための開口部を有していてもよい。少なくと
も支持管の一方の端付近であって、肝臓を装着したとき
に肝臓外部に位置する部分および支持管の中間部であっ
て、肝臓を装着したときに肝臓中の血液が流れ込むこと
が可能なように下大静脈内に収まる位置にそれぞれ開口
部を有し、該2つの開口部は支持管中の血液流出路につ
ながっていることを要する。支持管の中間部に存在する
肝臓中の血液が流れ込む開口部は、1つだけであっても
よいし、多数の小孔で構成されていてもよい。また、支
持管は1種類の材料で一体に構成されていても、数種類
の材料を組合せて構成されていてもよい。要は、肝臓の
下大静脈に貫通させ肝臓を直接支える機能、支持管全体
に柔軟性を与え肝臓を吊り下げたときに肝臓が自然に拡
張するのを妨げるような余分な張力を与えずに自然な形
状を保つ機能および肝臓内を流れる血液を導入し肝臓外
に導出し得る機能を有していればよく、それぞれの機能
を発揮する部分から構成されていればよい。
【0039】肝臓支持管の材質は、肝臓に毒性でない材
質である限り制限されず、ガラス、プラスチック等が挙
げられる。また、オートクレーブ等により滅菌して繰り
返し使用してもよいし、あらかじめプラスチックバッグ
等に入れ放射線照射等により滅菌したディスポーザブル
タイプのものであってもよい。
【0040】本発明の肝臓支持管の例として図3に示す
のもが挙げられる。図3の支持管は、開口部を有しない
ガラス棒16と両端に開口部を有する中空のガラス管1
7が長さ約5cmのスプリング18でつながった構造を有
している。該ガラス棒およびガラス管の直径は1.2〜1.5
cmである。スプリング部分の直径も支持管へ肝臓をスム
ースに装着できるように、ガラス管およびガラス棒部分
の直径とほぼ同じであることが好ましい。スプリング
は、肝臓の重量で自然にたわみ、肝臓の自然な拡張を妨
げるような余分な張力が肝臓に加わらないようにする機
能を有する。スプリングの材質は一定の強度と柔軟性を
有している限り限定されないが、金属、プラスチック等
が用いられ、好ましくはステンレスが用いられる。スプ
リングを構成する棒の太さは、装着する肝臓の動物種、
肝臓の重量、大きさ、スプリングの材質等に応じて適宜
決定することが出来る。例えば、大きくて重い肝臓に対
しては、ステンレス等の硬い材料を用い、スプリングを
構成するステンレス棒の太さも太いものを用いればよ
い。
【0041】図2aに示すように肝臓9の下大静脈の上
下の断端を貫通させ、肝臓支持管のスプリング部分が下
大静脈内に収まるように肝臓支持管を肝臓内にセット
し、下大静脈の上下の断端部分は血液が漏れないように
外科用縫合糸10で結紮する。肝臓内の血液は、肝静脈
からスプリング部分18を通って中空のガラス管17に
入り、そこから外部に導出される。肝臓支持管の両側の
ガラス部分は、箱の外枠に取り付けた固定用ホルダー3
により固定し、肝臓支持管を支点として肝臓全体を吊り
下げることができる。このホルダーを適当な高さに調節
することにより、肝臓を敷布6の上に置きつつ、程よく
肝臓全体を吊り下げ、肝臓の荷重が肝臓支持管2と敷布
6に分配されて肝臓全体が十分に拡張できる状態とな
る。ヒト以外の動物においては、肝臓はこのような上下
の位置関係および荷重の分配状態にあり、この装置は、
体外に肝臓を配置する場合、最も実際に近い生理的状態
に置かれていると言える。
【0042】(2)灌流用ポンプ14 本発明の移植肝臓用保存装置は、血液を灌流させるため
のポンプを含む。ポンプとしては、血液を循環させるこ
とができるものならばいかなるポンプも用いうるが、拍
動ポンプが望ましい。ここで「拍動ポンプ」とは、心臓
が収縮と拡張を繰り返し、血液を一定間隔で一定の脈圧
で全身に送るように、脈圧を作りながら送液できるポン
プをいう。また、このような血液の流れを「拍動流」と
いう。
【0043】肝臓の末梢組織にまで十分に血流を行き渡
らせるためには、肝内の末梢血管を拡張させる必要があ
り、そのためには、拍動ポンプにより、収縮期と拡張期
の圧力差、すなわち脈圧を十分に作り出さなければなら
ない。拍動ポンプとしては、定常流ポンプと開閉弁を組
み合わせる方法と、人工弁、弾性嚢、及び、空気圧駆動
装置を装備したいわゆる人工心臓装置を用いる方法が考
えられる。前者のポンプは、血液が循環する流路のいず
れかの位置、好ましくは肝臓の上流に開閉弁を設置し、
定常流ポンプで一定速度で送液しつつ、一定時間ごとに
または圧力の変化により開閉弁を開閉させ、脈圧を作り
出す。後者のポンプは、空気圧駆動装置を用いて陽圧及
び陰圧を交互に発生させることにより、血液ポンプ内部
の弾性嚢を伸縮させ、拍動流を作り出すものである。こ
れは、体内埋め込み式の完全人工心臓として臨床医療の
現場においても用いられているものであり、その血液ポ
ンプ部としては、ダイヤフラム型、サック型、円筒型な
どがある。拍動ポンプにより送られる血液の流速は、肝
臓に対しては、30〜1000mL/min、好ましくは100〜500mL
/min、特に好ましくは150〜300mL/minである。また、拍
動ポンプにより発生する脈圧は10〜100mmHg、好ましく
は20〜80mmHg、特に好ましくは40〜60mmHgである。さら
に、拍動のタイミングは、1回の収縮と1回の拡張を併せ
た時間が0.5〜10秒、好ましくは1〜5秒である。図4
に示す保存装置においては、人工心臓装置が採用されて
おり、人工弁と弾性嚢を備えた部分14a及びそれに連
結した空気圧駆動装置14bを含む。
【0044】(3)圧測定メーター15 門脈および/または肝動脈の肝臓への血液流入部、およ
び下大静脈の肝臓からの血液流出部には、圧測定メータ
ーを装着し、流入圧、流出圧をモニターできるようにす
るのが望ましい。圧測定メータとしては、例えばテフロ
ン(登録商標)圧力センサー(テムテック研究所製)を
用いることができる。
【0045】(4)リザーバーボトル12 本発明の装置は、肝臓に灌流するための血液等を貯留す
るためのリザーバーボトルを備えることが必要である。
リザーバーボトルは1〜3Lの血液を貯留でき、滅菌可
能なものならばその形状、大きさ、材質に制限はないが
好適にはガラス製のボトルが用いられる。また、ディス
ポーザブルの滅菌済みプラスチックボトルを用いてもよ
い。リザーバーボトルと容器中の肝臓は適当なチューブ
11により連結され灌流用の血液がリザーバーボトル-
チューブ-肝臓-チューブ-リザーバーボトルの間を循環
する。
【0046】(5)血液灌流用チューブ管路部13 肝臓の門脈の断端には径0.8cm前後、肝動脈またはその
上流の動脈である腹腔動脈の断端には径0.3〜0.5cmの血
液灌流用のチューブを挿入し、ここから血液が肝臓に流
入する。チューブとして輸液用チューブ(テルモ社製)、
マスターフレックス・シリコンチューブ(コールパーマー
社製)などを用いることができる。
【0047】(6)酸素供給部19 本発明の移植肝臓用保存装置の流路の途中には、血液に
酸素を供給するための酸素供給部を含んでいてもよい。
酸素供給部は、肝臓内を灌流させる血液に酸素を供給
し、血液内の溶存酸素濃度を高める装置であり、例え
ば、細胞培養等に用いられる酸素供給器等が用いられ
る。酸素供給部からの酸素供給量は、血液中の溶存酸素
濃度をモニターする溶存酸素測定部からの、フィードバ
ックデータに基づいて、酸素ボンベ20から酸素供給部
への酸素供給量の制御によって調節され得る。また、酸
素供給部は酸素ボンベとつながっており、該酸素ボンベ
から酸素供給部へ酸素が供給される。酸素供給部は、血
液流路中のどこに設置してもよいが、好ましくは肝臓の
上流部分に設置する。溶存酸素測定部は、流路中を流れ
る血液の溶存酸素量をモニターする装置であり、得られ
た溶存酸素値は、酸素ボンベへ送られ、酸素ボンベから
酸素供給部への酸素供給量が適切に制御される。溶存酸
素測定部は、酸素供給部と一体であってもよいし、別々
に設置してあってもよい。酸素供給部としては、ホロー
ファイバー型酸素供給器(YMA科学社製)、キャピオック
ス(Capiox、テルモ社製)などを用いることができる。
【0048】(7)加温部21 本発明の移植肝臓用保存装置の流路の途中には、血液を
一定温度に保つための加温部を含んでいてもよい。加温
部は、肝臓中を流れる血液を一定の温度に維持するため
の部分である。維持温度は、好ましくは35.5〜37.5℃、
より好ましくは35.5〜37.0℃、最も好ましくは36.0〜3
6.5℃である。該加温部は、温度測定部を含み、該温度
測定部により血液温度がモニターされ、そのフィードバ
ックデータに基づいて、加温部により血液が加温され
る。加温部は、加熱機能だけではなく、冷却機能を有し
ていてもよい。温度測定部は、加温部と一体であっても
よいし、別々に設置してあってもよい。加温部は前記酸
素供給部と一体であってもよい。加温部としては、ウォ
ーマーコイル(八光商事社製)などを用いることができ
る。さらに酸素供給部と加温部とが一体となっているも
のとして、キャピオックス(Capiox、テルモ社製)などが
挙げられる。
【0049】(8)本発明の肝臓保存装置で保存しうる
肝臓 肝臓を臓器代替部として用いる場合には、肝臓はヒト、
ブタ、ウシ、サル、ヒヒなどの哺乳動物から摘出したも
のを用いることができる。なお、ヒト由来の肝臓を用い
る場合には、生体由来の肝臓ではなく、主に脳死患者由
来の肝臓を用いる。
【0050】2.移植用腎臓保存装置 (1)腎臓収納装置 本発明の収納装置は、肝臓の収納だけではなく腎臓の収
納にも用いることができる。腎臓収納装置の構成は、肝
臓収納装置の構成と同じでよいが、容器部の大きさ、支
持管の長さ、直径等は腎臓の大きさに適合させるように
適宜変更することができる。
【0051】腎臓を用いる場合は、腎臓はヒト、ブタ、
ウシ、サル、ヒヒなどの哺乳動物から、次のような手術
法で摘出したものを用いることができる。なお、ヒト由
来の腎臓を用いる場合には、脳死患者由来の腎臓または
献腎を用いる。腎臓をドナーから摘出する方法の一つは
「両側腎en bloc 摘出法」であり、両側腎、両側腎動脈
および近接する腹部大動脈、および、両側腎静脈および
近接する下大静脈を、腹部大動脈断端および下大静脈断
端以外血液の漏出がないように一塊にして(enbloc)摘
出する方法である。また、もう一つは、「片腎摘出法」
であり、両側腎の片側ずつを、腎動脈、腎静脈を腹部大
動脈および下大静脈から分岐する根部で切離することに
より、それぞれ別々に摘出する方法である。人工腎臓シ
ステム中への摘出腎臓の組み込みは、「両側腎en bloc
摘出法」では、2箇所の腹部大動脈断端のうち、一端を
結紮し、他端を血液流入口とし、2箇所の下大静脈断端
のうち、一端を結紮し、他端を血液流出口として接続す
ることにより行うことができる。「片腎摘出法」では、
腎動脈、腎静脈を、それぞれ血液流入口、血液流出口と
して接続する。尿管は、膀胱近傍で切離して腎につけた
状態で摘出し、尿の流出口とする。この腎臓を、腎臓収
納装置に設置する。
【0052】(2)灌流用ポンプ14 本発明の移植腎臓用保存装置は、血液を灌流させるため
のポンプを含む。ポンプとしては、血液を循環させるこ
とができるものならばいかなるポンプも用いうるが、肝
臓の場合と同様、腎臓の末梢組織にまで十分に血流を行
き渡らせるためには、腎臓実質内の末梢血管を拡張させ
る必要があり、そのためには、拍動ポンプにより、脈圧
を十分に作り出さなければならない。拍動ポンプとして
は、定常流ポンプと開閉弁を組み合わせる方法と、人工
弁、弾性嚢、及び、空気圧駆動装置を装備したいわゆる
人工心臓装置を用いる方法が考えられる。拍動ポンプに
より送られる血液の流速は、両側腎に対しては、好まし
くは60〜300mL/min、特に好ましくは100〜200mL/minで
あり、片腎に対しては好ましくは50〜150mL/min、特に
好ましくは60〜120mL/minである。
【0053】(3)圧測定メーター15 両側腎の場合は、腹部大動脈および下大静脈、片腎の場
合は、腎動脈および腎静脈に、圧測定メーターを装着
し、流入圧、流出圧をモニターできるようにする。 (4)リザーバーボトル12 本発明の装置は、腎臓に灌流するための血液等を貯留す
るためのリザーバーボトルを備えることが必要である。
リザーバーボトルは500mL〜1Lの血液を貯留でき、滅菌
可能なものならばその形状、大きさ、材質に制限はない
が好適にはガラス製のボトルが用いられる。また、ディ
スポーザブルの滅菌済みプラスチックボトルを用いても
よい。リザーバーボトルと容器中の腎臓は適当なチュー
ブ11により連結され灌流用の血液がリザーバーボトル
-チューブ-腎臓-チューブ-リザーバーボトルの間を循環
する。
【0054】(5)血液灌流用チューブ管路部13 両側腎の場合は、腹部大動脈および下大静脈の断端には
径0.8〜1.5cm、片腎の場合は、腎動脈および腎静脈の断
端には径0.5〜1.0cmの血液灌流用のチューブを挿入し、
ここから血液が腎臓に流入する。 (6)酸素供給部19 肝臓保存装置の場合に準ずる。 (7)加温部21 肝臓保存装置の場合に準ずる。 (8)本発明の腎臓保存装置で保存しうる腎臓 腎臓を臓器代替部として用いる場合には、腎臓はヒト、
ブタ、ウシ、サル、ヒヒなどの哺乳動物から摘出したも
のを用いることができる。
【0055】3.本発明の移植用臓器保存装置による血
液灌流保存 本発明の移植用臓器保存装置による血液灌流保存方法
を、図3を用いて説明する。 (1)肝臓の灌流保存 脳死ドナーまたは献体ドナーから摘出した移植用ヒト肝
臓9において、図2の肝臓支持管2を、下大静脈の上下
の断端を貫通するように挿入する。肝臓支持管2のスプ
リング部分18が下大静脈内に収まるようにし、下大静
脈の上下の断端部分は血液が漏れないように外科用縫合
糸10で結紮する。門脈および肝動脈断端には血液灌流
用チューブ13を挿入し、この肝臓を、図1の肝臓収納
装置に設置する。肝臓収納装置はウォーターバス22中
に置かれている。リザーバーボトル12、人工心臓ポン
プ14、酸素供給器兼加温器19, 21、および、上記
肝臓収納装置を、図3のように接続して血液灌流回路を
作製する。リザーバーボトル12には、適合交差試験に
おいて移植用ヒト肝臓と適合する、ヒト全血、または、
ヒト濃厚赤血球と新鮮凍結血漿の混合血液を肝臓灌流に
十分な量入れ、100〜500 mL/min 程度の、肝臓容積に合
った適切な流速で灌流することにより、肝臓を保存す
る。
【0056】肝臓表面から漏出した液は箱1の下部に貯
まり、ローラーポンプ23により漏出液導出部8から漏
出液流路11を通ってリザーバーボトル12に送られ
る。血液はリザーバーボトルから拍動ポンプにより灌流
用チューブ13を通って肝臓に入り、保存装置の回路を
循環する。
【0057】(2)腎臓の灌流保存 脳死ドナーまたは献体ドナーから、「片腎摘出法」によ
り、両側腎の片側ずつを、腎動脈、腎静脈を腹部大動脈
および下大静脈から分岐する根部で切離することによ
り、それぞれ別々に摘出する。腎動脈、腎静脈断端に、
それぞれ血液流入口、血液流出口として血液灌流用チュ
ーブを挿入する。尿管は、膀胱近傍で切離して腎につけ
た状態で摘出し、尿の流出口とする。この腎臓を、腎臓
収納装置に設置する。リザーバーボトル、人工心臓ポン
プ、酸素供給器兼加温器、および、上記腎臓収納装置を
接続して血液灌流回路を作製する。リザーバーボトルに
は、適合交差試験において移植用ヒト腎臓と適合する、
ヒト全血、または、ヒト濃厚赤血球と新鮮凍結血漿の混
合血液を腎臓灌流に十分な量入れ、50〜300 mL/min程度
の、片腎または両側腎の容積に合った適切な流速で灌流
することにより、腎臓を保存する。
【0058】II.本発明の人工臓器システムによる人工
臓器灌流治療 上述の本発明の臓器収納装置を含む人工臓器システムを
構築し、該システムを利用して人工臓器灌流治療を行う
ことができる。ここで、「人工臓器システム」とは、患
者の臓器機能を代替または補助するための装置をいい、
肝不全等の患者の肝機能を代替または補助するための装
置(人工肝臓システム)、腎不全等の患者の腎機能を代
替または補助するための装置(人工腎臓システム)等が
ある。本発明の人工臓器システムは、基本的には患者の
血液を本発明の臓器収納装置中の患者以外由来の臓器中
を通過させて該患者以外由来の臓器で患者の臓器を代替
しようとするものである。本明細書の人工臓器システム
の説明において、前記臓器収納装置に収納した臓器また
は臓器を収納した臓器収納装置の臓器を含む一部もしく
は全部を臓器機能代替部(肝機能代替部または腎機能代
替部)と称することがある。ここで、「肝機能代替部」
とは、アンモニア等の有害物質の解毒、タンパク質の合
成、グリコーゲンの分解・合成、胆汁の合成等の、生体
内の肝臓が果たしている機能を発揮する部分をいう。
「腎機能代替部」とは、尿の生成と排出、尿からの人体
に有用な物質の再吸収等の、腎臓が果たしている機能を
発揮する部分をいう。「臓器代替部」とは、臓器収納装
置に収納した臓器が本発明の人工臓器システムによる灌
流治療を必要とする患者の臓器の機能を代替することを
意味する。
【0059】1.人工臓器システムの構成 本発明の人工臓器システムは、患者の血液を本発明の臓
器収納装置中の患者以外由来の臓器中を通過させて該患
者以外由来の臓器で患者の臓器を代替しようとするもの
であり、臓器を収納し得る本発明の収納装置を含むシス
テムである。また、本システムで臓器収納装置に収納す
る臓器は患者以外のヒト由来の臓器またはヒト以外の動
物種由来の臓器なので、患者の全血をそのまま通過させ
ると患者の全血中の白血球、免疫グロブリン、サイトカ
イン、補体等による免疫反応が生じ、臓器収納装置中の
臓器がダメージを受ける。従って、本発明の人工臓器シ
ステムは、患者全血中の白血球、免疫グロブリン、サイ
トカイン、補体等の免疫反応に関与する成分が臓器収納
装置中の臓器と接触しないようにする手段を備えている
必要がある。
【0060】好適には、本発明の人工臓器システムとし
て、全血直接灌流システム、LCAP(血液成分分離部)併
用全血直接灌流システム、交差灌流システム、反復血漿
分離灌流システム等が挙げられる。LCAP併用全血直接灌
流システムは患者からの全血を血液成分分離部で白血球
を除いた後に本発明の臓器収納装置内の臓器で処理した
のちに患者に戻すシステムで、白血球を除くことにより
臓器収納装置内の臓器への異種免疫反応等を抑制でき
る。
【0061】交差灌流システムは、患者から出た血液が
患者に戻る血液回路と本発明の臓器収納装置を含む血液
回路が独立して存在し、両回路が回路中の一部分で半透
膜(透析部または血漿分離部)を隔てて接触して両血液
中の物質交換を行うシステムであり、両回路が半透膜を
隔てて接触するので、収納装置中の臓器に対して異種免
疫反応を引き起こし得る患者血液中の白血球等の成分が
収納装置中の臓器へ流入するのを阻止できる。
【0062】さらに反復血漿分離灌流システムは、患者
から出た血液が患者に戻る血液回路と本発明の臓器収納
装置を含む血液回路が独立して存在し、両回路が2つの
血漿分離部で接触し、両回路の間は血漿のみが行き来
し、白血球等の成分が行き来せず、患者白血球等による
収納装置中の臓器の異種免疫反応を抑制するシステムで
ある。
【0063】LCAP併用全血直接灌流システムを図5に例
示する。図5に示すシステムは、血液凝固阻害剤注入部
25、血液成分分離部26、白血球除去部27、免疫グ
ロブリン除去部28、酸素供給部29、加温部30、開
閉弁31、上述の臓器収納装置、リザーバー36および
ポンプ35等を含む。該リザーバー36には血液が貯留
され、血液回路中の肝臓の下流で分枝した血液が該リザ
ーバーに流れ込むとともに、血液成分分離部で白血球が
除去されさらに白血球除去部を通過した血液が流れ込
み、これらの血液がリザーバー中で混合され、該リザー
バーから出て再び臓器収納装置の臓器へ向かう。
【0064】また、交差灌流システムを図6に例示す
る。図6に示すように、血液凝固阻害剤注入部25、血
漿分離部もしくは透析部37、免疫グロブリン除去部2
8、酸素供給部29、溶存酸素測定部33、加温部3
0、開閉弁31、上述の臓器収納装置、リザーバー3
6、圧力計32、酸素ボンベ34およびポンプ35等を
含む。さらに、反復血漿分離灌流システムを図7に例示
する。図7に示すように、血液凝固阻害剤注入部25、
血漿分離部(A)38、免疫グロブリン除去部28、酸素
供給部29、加温部30、開閉弁31、上述の臓器収納
装置、血漿分離部(B)39、リザーバー36およびポン
プ35等を含む。
【0065】本発明においては、患者全血中の白血球、
免疫グロブリン、サイトカイン、補体等の免疫反応に関
与する成分が臓器収納装置中の臓器と接触しないように
することが可能な限り、必要に応じて、前記各機能部分
のいずれかを省略したり、あるいは上記以外の機能部分
を付加することができる。本システムは、全血が流れる
管路である全血流路部、血液成分分離部によって分離さ
れた、全血由来の赤血球、血小板および血漿の濃厚な血
液が流れる管路である赤血球・血小板・血漿濃厚血液流路
部、血液成分分離部によって分離された、全血由来の白
血球の濃厚な血液が流れる管路である白血球濃厚血液流
路部、臓器代替部から流出した処理済の血液と血液成分
分離部で分離された白血球濃厚血液とが合流する部分で
ある合流部、処理血液を患者に送る管路である処理血液
流路部、血液が分枝しリザーバーボトルへ流れる分枝部
等の部分も適宜含む。流路部は輸液用チューブ(テルモ
社製)、マスターフレックス・シリコンチューブ(コール
パーマー社製)などを用いることができる。患者からの
全血が流れる流路部および処理血液流路部は、注射針や
カテーテル等に接続可能な構造のものが好ましい。ま
た、合流部、分枝部は適当な弁や活栓を用いることがで
きる。
【0066】図5〜7に示す人工臓器システムは例示で
あり、各システムと同等の機能を有するものならば、回
路等の設計に変更があっても本発明の範囲に含まれる。 〔1〕 血液凝固阻害剤注入部25 血液凝固阻害剤注入部は、ヘパリン、フラグミン(ダル
テバリンナトリウム)、フサン(メシル酸ナファモスタッ
ト)などの血液凝固阻害剤を血液流路に注入する部分で
ある。前記血液凝固阻害剤の投与は、ヘパリン、フラグ
ミンは、10〜20単位/kg/時間、フサンは、20〜50mg/時
間の投与速度になるように単独または併用でブドウ糖液
等に溶解し、血流中に注入することができる。
【0067】〔2〕 血液成分分離部26 血液成分分離部は、全血を、白血球、赤血球、血小板、
血漿等に分離し、別々に取り出すか、または、別々の回
路に分流すると同時に、血液ポンプとして、血液流路部
内に血液成分を、一定方向に、一定流速で流すことがで
きる装置である。血液ポンプの流速は、臓器代替部にダ
メージを与えず且つ血液の処理が十分に行われる程度の
流速が好ましい。例えば、血液流速は、30〜200mL/分、
好ましくは50〜150mL/分、最も好ましくは80〜120m1/分
である。血液成分分離部として、遠心分離式血液成分分
離装置(フレゼニウス・ヘモケア社製)、膜式血液成分分
離装置などを用いることができる。
【0068】〔3〕 白血球除去部27 白血球除去部は、血液中の赤血球は通過させ、白血球を
選択的に捕獲することができる装置である。白血球除去
部は、除去媒体として高分子素材からなるフィルターを
含み、当該フィルターによる白血球の選択的除去は、濾
過すなわち白血球と他の血中固形成分との間の大きさの
差による物理的トラップ、並びに除去媒体への白血球の
選択的吸着等により行われる。フィルターとしては、不
織布等の繊維状媒体や均一な平均孔径を有する多孔質体
などが挙げられる。フィルターを構成する高分子素材と
しては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、
ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリビニルアルコ
ール、ポリスルフォン、セルロース、セルロースアセテ
ートなどが挙げられるが、これらに限定されない。これ
らの素材は当該技術分野における公知の製法によって製
造することができる。前記白血球除去部として、ポリエ
ステル不織布を白血球除去媒体とするセルソーバ(Ce11
sorba、旭メディカル社製〕などを使用することができ
る。
【0069】また、フィルターの平均孔径は、好ましく
は2〜200μm、より好ましくは3〜lOOμmである。ここ
で、「平均孔径」とは、連続孔を有する多孔質フィルタ
ーを、血液の流れ方向に対して垂直方向に切断し、断面
全体に分散している細孔の各々について直径を測定して
直径と細孔の数との間の関係を調べたときに、最も数の
多い細孔についての円に換算した直径をいう。なお、
「円に換算した直径」とは、細孔が様々な形を有し且つ直
径も様々であるために、それを補正する意味で設定され
たものであって、個々の細孔をその細孔の断面積と同じ
面積の円に換算したときの、当該円の直径を横軸、細孔
の数を縦軸として作成したグラフ中の正規分布曲線にお
ける細孔の数がピークとなるときの円の直径をいう。
【0070】白血球の除去効率は、以下のようにして向
上させることが可能である。すなわち、フィルターとし
て不織布等の繊維状媒体を利用する場合には、繊維状媒
体の充填密度を高めること、平均繊維径の小さい繊維積
層物を用いることによって白血球除去効率を高めること
ができる。また、フィルターとして均一な平均孔径を有
する多孔質を利用する場合には、平均孔径をより小さく
することによって白血球除去効率を高めることができ
る。
【0071】また、上記フィルターに血液を通した場
合、血球が、フィルター表面に吸着し、フィルターが閉
塞されることにより圧力損失が増大する場合がある。こ
のような場合には、フィルターの平均孔径が血液の入口
側から出口側に向かって実質的に連続的または段階的に
減少しているものを用いることができる。具体的には、
血液入口側の平均孔径は、好ましくはlO〜300μm、より
好ましくは20〜200μm、最も好ましくは25〜100μmであ
る。また、血液出口側の平均孔径は、好ましくは1〜30
μm、より好ましくは2〜20μm、最も好ましくは3〜15μ
mである。さらに、フィルター材の白血球除去能を増大
させるために、フィルター材の表面をコラーゲン等の表
面改質剤でコーティングすることもできる。
【0072】〔4〕 免疫グロブリン除去部28 免疫グロブリン除去部とは、血液中の免疫グロブリン、
補体、サイトカイン等の免疫因子を選択的に除去するこ
とができる装置である。例えば、免疫グロブリン結合性
リガンドを適当な担体に固定化した除去媒体を、カラム
に充填したものなどが挙げられる。ここで、「免疫グロ
ブリン結合性リガンド」とは、免疫グロブリンのみなら
ず、補体、サイトカイン等の種々の免疫因子と特異的に
結合し得る物質をいう。該免疫グロブリン結合性リガン
ドとしては、具体的には、トリプトファン、プロテイン
A、プロテインG、抗免疫グロブリン抗体、抗サイトカイ
ン抗体、フェニルアラニンなどが挙げられる。担体とし
ては、安定性に優れ担体から素材物質が溶出することな
く、担体表面への免疫グロブリン結合性リガンドの固定
が容易且つ高効率で行えるものであれば、特に限定され
ず、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリウレタ
ン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアセタール、
ポリカーボネート、変性ポリフェニレンオキシド、ポリ
ブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレー
ト、ジアリルフタレート、ポリイミド、ポリアミドイミ
ド、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルフォン、ポ
リアクリレート、ポリエーテルエステルケトン、ポリテ
トラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン、ポリビニルアセタール、ビスコース、エチレンビニ
ルアルコール、セルロース、セルロースアセテート、ポ
リメチルメタクリレート等の高分子素材からなる球状あ
るいはビーズ状の多孔質担体が挙げられる。担体への免
疫グロブリン結合性リガンドの固定化は、官能基を介す
る共有結合法などによって行うことができる。なお、担
体へは、複数種の免疫グロブリン結合性リガンドを同時
に固定してもよい。さらに、上記免疫グロブリン結合性
リガンドを結合させた担体をカラムに充填する場合に
も、1種類のリガンド固定化担体のみならず、複数種の
リガンド固定化担体を混合して充填することも可能であ
る。また、前記免疫グロブリン除去部として、イムソー
バTR350(ImuusorbaTR350、旭メディカル社製)などの市
販のものを使用することもできる。さらに、前記免疫グ
ロブリン除去部の血液流出口には、担体の流出を抑える
ため、Fフィルター(旭メディカル社製)等のフィルター
を設置することも可能である。
【0073】〔5〕 酸素供給部29 酸素供給部は、血液に酸素を供給し、血液中の溶存酸素
濃度を高めることができる装置をいう。例えば、細胞培
養等に用いられる酸素供給器、人工肺において用いられ
る酸素供給器等が挙げられる。酸素供給部からの酸素供
給量は、血液中の溶存酸素濃度をモニターする溶存酸素
測定部からの、フィードバックデータに基づいて、酸素
ポンプから酸素供給部への酸素供給量の制御によって調
節され得る。具体的には、酸素供給部としては、ホロー
ファイバー型酸素供給器(YMA科学社製)、キャピオック
ス(Capiox、テルモ社製)などを用いることができる。
【0074】〔6〕 加温部30 加温部は、人工肝臓システム中を流れる血液および/ま
たは人工肝臓システム中の各機能部分の一部または全部
を一定の温度に維持するための部分である。維持温度
は、好ましくは35.0〜37.5℃、より好ましくは35.5〜3
7.O℃、最も好ましくは36.O〜36.5℃である。加温部の
設置箇所は、図5〜7のように酸素供給部と臓器代替部
との間で有り得るが、必要に応じて、設置部位を変更す
ることが可能である。また、当該加温部は、前記酸素供
給部と一体型であり得る。加温部としては、ウォーマー
コイル(八光商事社製)などを用いることができる。さら
に酸素供給部と加温部とが一体となっているものとし
て、キャピオックス(Capiox、テルモ社製)などが挙げら
れる。
【0075】〔7〕 溶存酸素測定部33および酸素ボ
ンベ34 溶存酸素測定部は、流路中を流れる血液の溶存酸素量を
モニターする装置である。溶存酸素測定部によって得ら
れた溶存酸素値は、酸素ボンベヘ送られ、酸素ボンベか
ら酸素供給部への酸素供給量が適切に制御される。溶存
酸素測定部としては、溶存酸素メーターOX300S(東興化
学社製)、溶存酸素コントローラーHDO-200(東興化学社
製)などを用いることができる。
【0076】〔8〕 リザーバー部36 リザーバーは、臓器収納装置中の臓器に十分な血液を供
給するために、血液を貯留しておく部分である。人工肝
臓システムの場合、患者血液だけでは臓器収納装置中の
臓器に十分な血液を供給できないので、該リザーバーが
不可欠となる。人工肝臓システムにおけるリザーバーの
容量は、1.5〜3Lであり、システム稼動中に約1〜2L
の血液を貯留しておく。人工腎臓システムの場合、両側
腎では、同様の容量の該リザーバーが備えられているこ
とが望ましい。片腎では、患者血液だけで十分な血流量
を得うるので、必要に応じて該リザーバーを備えればよ
い。
【0077】図5に示すLCAP併用全血灌流システムにお
いては、血液が灌流する回路内にリザーバーを設ければ
よく、該リザーバー内に臓器収納部の臓器を通過した後
に分流した血液ならびに患者から流出し血液成分分離部
および白血球除去部を通過した血液が流入して混合さ
れ、再びリザーバーから流出し臓器収納部の臓器へと流
れるようにするのが望ましい。図6に示す交差灌流シス
テムにおいては、臓器収納装置中の臓器-透析部または
血漿分離部-臓器収納装置中の臓器を結ぶ回路中に設け
ればよい。
【0078】図7に示す反復血漿分離灌流システムにお
いては、血液が灌流する回路内にリザーバーを設ければ
よく、該リザーバー内に臓器収納部の臓器を通過し血漿
分離部により血漿を分離された血液および患者から流出
し血漿分離部により分離した血漿が流入して混合され、
再びリザーバーから流出し臓器収納部の臓器へと流れる
ようにするのが望ましい。流入した血液がよく混合され
るように、リザーバー内の血液はスターラー等により攪
拌してもよい。
【0079】〔9〕 血漿分離部または透析部37 血漿分離部または透析部は、患者からの血液と臓器保存
装置中の臓器からの血液とを、半透膜を隔てて接触さ
せ、患者血液中のアンモニアなどの肝不全物質や赤血球
の老廃物質であるビリルビン等を半透膜を隔てた濃度勾
配に基づく拡散によって移動し、臓器保存装置中の全肝
に運び処理するための部分である。血漿分離部または透
析部は、中空糸を内蔵するカラムであり、中空糸に使用
される半透膜の孔径により血漿分離部として機能する
か、透析部として機能するか決まる。血漿分離部の中空
糸は分子量15万〜25万以上の分子を通過させない膜であ
り、透析部の中空糸は、分子量1万程度以上の分子を通
過させない膜である。中空糸の内腔には、患者から流入
する血液が通り、外腔には、人工肝臓システムから流入
する血液が通り、中空糸の孔を通して物質交換を行う。
【0080】図6に示す交差灌流システムにおいては、
血漿分離部および透析部のいずれも用い得る。血漿分離
部を用いた場合、白血球、赤血球、血小板等の大きな血
液成分は半透膜を通過できず、患者-血漿分離部-患者を
つなぐ回路を循環し、免疫グロブリン、サイトカイン、
補体等は半透膜を通過して、臓器収納装置中の臓器-血
漿分離部-臓器収納装置中の臓器をつなぐ回路に入り込
むので、免疫グロブリン除去部により臓器の上流でこれ
らの物質を除去する必要がある。透析部を用いた場合、
患者の血液中の白血球、赤血球、血小板等だけでなく免
疫グロブリン、サイトカイン、補体等も半透膜を通過で
きず臓器収納装置中の臓器-血漿分離部-臓器収納装置中
の臓器をつなぐ回路に入れないのでより好ましい。但
し、この場合であっても免疫グロブリン等を完全に除け
ない場合があるので、臓器収納装置中の臓器-血漿分離
部-臓器収納装置中の臓器をつなぐ回路中に免疫グロブ
リン除去部を設けておくのが好ましい。
【0081】図7に示す反復血漿分離灌流システムにお
いては、2つの血漿分離部(A)および(B)が設けられ、
(A)は患者とつながる回路中にあり、(B)は臓器収納装置
中の臓器とつながる回路中にある。血漿分離部(A)で分
離された血漿は臓器収納装置中の臓器とつながる回路中
に合流し、血漿分離部(B)で分離された血漿は患者とつ
ながる回路中に合流する。
【0082】〔10〕 開閉弁31 開閉弁は、臓器に流入する血流を拍動流とすることによ
り脈圧を発生させる目的で、流路中に設置される。定常
流ポンプで血液を循環させながら、開閉弁を開閉させる
ことにより、臓器に流入する血流は拍動流に変わり、脈
圧が発生する。開閉弁の回路中の位置は限定されない
が、脈圧を直接に臓器に伝達することを考えると臓器の
上流に設置するのが望ましい。また、定常流ポンプの位
置も限定されない。例えば、図5〜7に示す位置に設定
すれば、回路中を血液がスムースに流れる。脈圧を発生
させるためには定常流ポンプと開閉弁の代わりに、人工
弁、弾性嚢、及び、空気圧駆動装置を装備したいわゆる
人工心臓装置を設置してもよい。
【0083】〔11〕 その他の機能部分 必要に応じて、臓器代替部の下流には、さらに微粒子除
去部等を設置することができる。微粒子除去部を設置す
ることによって、臓器代替部由来の脱落細胞、肝細胞の
破片、微粒子等を除去することができる。具体的には、
微粒子除去部としては、中空糸型、平膜型等のフィルタ
ーを用いることができる。また、臓器からの漏出液を回
収する流路を設けてもよく、該流路を通った漏出液は灌
流回路のどこで回路に合流させてもよい。例えば、臓器
収納部の臓器のすぐ下流で合流させてもよいし、リザー
バー内に流入させてもよい。
【0084】2.人工臓器システムを用いての人工臓器
灌流 本発明の人工臓器システムによる人工臓器灌流治療を、
図5〜7に基づいて説明する。 〔1〕 LCAP併用全血直接灌流治療法(図5) まず、肝不全または腎不全患者24に、本発明の人工臓
器システムを接続する。ここで、接続部位としては、患
者の橈側皮静脈や鼡径部大腿静脈が挙げられる。患者か
らの血液は、全血流路部を通り、血液凝固阻害剤注入部
25から血液凝固阻害剤の添加を受け、血液成分分離部
LCAP26に入って、赤血球・血小板・血漿濃厚血液と白
血球濃厚血液とに分けられる。次いで、それぞれ赤血球
・血小板・血漿濃厚血液流路部、白血球濃厚血液流路部
に分流され、赤血球・血小板・血漿濃厚血液は、白血球
除去部27に送られる。当該機能部分では、赤血球・血
小板・血漿濃厚血液中に残存する白血球が吸着除去され
る。次いで、白血球除去部から出た血液は、リザーバー
36に流入し、臓器から流出する赤血球及び血漿を含み
白血球を含まないヒト血液とリザーバー内で合流し、免
疫グロブリン除去部28に送られる。当該機能部分で
は、赤血球・血小板・血漿濃厚血液中の免疫グロブリ
ン、補体等の免疫因子が除去される。免疫グロブリン除
去部から流出した血液は、酸素供給部29に送られ、所
望の溶存酸素濃度になるように、酸素が供給される。酸
素供給部を出た血液は、加温部30に送られ、所望の温
度に加温される。加温部を出た血液は、臓器代替部〔肝
機能代替部(肝臓)、若しくは腎機能代替部(腎臓)〕
に送られる。肝機能代替部では、血液中の有害物質の解
毒、タンパク質の合成、グリコーゲンの分解・合成、胆
汁の合成等が行われる。肝臓の場合、胆汁が合成され、
総胆管より排泄される。腎機能代替部では、尿の生成お
よび排出が行われる。肝機能代替部もしくは腎機能代替
部を出た赤血球・血小板・血漿濃厚血液の一部は、溶存
酸素測定部を通過後、リザーバーへ分流する。この際、
臓器代替部を出て分流してリザーバーに入る血液および
白血球除去部を出てリザーバーに入るトータルの血液量
と、リザーバーを出て行く血液量が等しくなるようにす
る。分流させた後の血液は白血球濃厚血液と合流し、処
理血液流路部を通って患者の体内に再び戻される。な
お、溶存酸素測定部において得られた溶存酸素の測定値
は、酸素ボンベに送られ、酸素ボンベからの酸素供給部
への酸素導入量が決定される。
【0085】〔2〕 交差灌流法(図6) まず、肝不全または腎不全患者24に、本発明の人工臓
器システムを接続する。ここで、接続部位としては、患
者の橈側皮静脈や鼡径部大腿静脈が挙げられる。患者か
らの血液は、全血流路部を通り、血液凝固阻害剤注入部
から血液凝固阻害剤の添加を受け、血漿分離部または透
析部37に流入する。ここでいう血漿分離部および透析
部は、いずれも多数の中空糸を内蔵する血液浄化療法用
カラムであり、その区別は、主に、中空糸に使われる半
透膜の孔径によって決まる。すなわち、血漿分離部の中
空糸は、分子量15万〜25万以上の分子を通過させない膜
であり、透析部の中空糸は、分子量1万程度以上の分子
を通過させない膜である。中空糸の内腔には、患者から
流入する血液が通り、外腔には、人工臓器システムから
流入する血液が通る。肝不全患者血液中のアンモニアな
どの肝不全物質や赤血球の老廃物質であるビリルビン、
腎不全患者血液中の尿素窒素やクレアチニンなどは、こ
れらのカラム内部において、中空糸の内腔から外腔へ、
半透膜を隔てた濃度勾配に基づく拡散によって移動し、
人工臓器システムへ運ばれる。
【0086】人工臓器システムは、図6の如く、定常流
ポンプ、リザーバー、免疫グロブリン除去部、酸素供給
器、加温器、拍動ポンプ機構、および、臓器収納装置な
どから成る。白血球は、血漿分離部および透析部のいず
れの半透膜も通過できないため、当該システムにおいて
は、異種臓器を用いる場合でも、白血球除去部は不要で
ある。また、透析部を用いる場合は、分子量が15万以上
である免疫グロブリン、補体等は透析部の半透膜を通過
できないため、免疫グロブリン除去部も不要となる。た
だし、これらの血漿分離部および透析部に漏れがある可
能性を考慮して、白血球除去部および/または免疫グロ
ブリン除去部をシステムに組み込むことも可能である。
【0087】人工臓器システムには、プライミング・ソ
リューション(初期充填液)として、白血球を除いたヒ
ト全血、または、ヒト濃厚赤血球と新鮮凍結血漿の混合
血液があらかじめ満たされており、肝不全物質または腎
不全物質が溶け込んだ血液は、まずリザーバーに貯留さ
れる。次いで、免疫グロブリン除去部に運ばれ、血液中
の免疫グロブリン、補体等の免疫因子が除去される。免
疫グロブリン除去部から流出した血液は、酸素供給部に
送られ、所望の溶存酸素濃度になるように、酸素が供給
される。酸素供給部を出た血液は、加温部に送られ、所
望の温度に加温される。加温部を出た血液は、臓器収納
装置に送られる。臓器収納装置では、血液中の肝不全ま
たは腎不全物質の代謝、有害物質の解毒、タンパク質の
合成、グリコーゲンの分解・合成、胆汁の合成等が行わ
れ、ビリルビンは胆汁として総胆管より排泄される。臓
器収納装置を出た血液は、溶存酸素測定部を通過後、再
び血漿分離部または透析部に流入する。なお、溶存酸素
測定部において得られた溶存酸素の測定値は、酸素ボン
ベに送られ、酸素ボンベからの酸素供給部への酸素導入
量が決定される。一方、肝不全または腎不全物質の減少
した患者血液は、血漿分離部または透析部から患者体内
に戻される。
【0088】〔3〕 反復血漿分離灌流法(図7) まず、肝不全患者または腎不全患者24に、本発明の人
工肝臓システムを接続する。ここで、接続部位として
は、患者の橈側皮静脈や鼡径部大腿静脈が挙げられる。
患者からの血液は、全血流路部を通り、血液凝固阻害剤
注入部から血液凝固阻害剤の添加を受け、血漿分離部
(A)38に流入する。ここでいう血漿分離部は、多数の
中空糸を内蔵する血液浄化療法用カラムであり、中空糸
に使われる半透膜の孔径は、分子量15万〜25万以上の分
子を通過させない膜である。中空糸の内腔には、患者から
流入する血液が通り、血漿は半透膜から外腔に浸出し、人
工臓器システムに運ばれる。
【0089】人工臓器システムは、図7の如く、リザー
バー、定常流ポンプ、白血球除去部、免疫グロブリン除
去部、酸素供給器、加温器、拍動ポンプ機構、及び、臓
器収納装置などから成る。ヒト肝不全患者の治療におい
ては、人工臓器システムには、プライミング・ソリュー
ション(初期充填液)として、白血球を除いたヒト全
血、または、ヒト濃厚赤血球と新鮮凍結血漿の混合血液
があらかじめ満たされている。このような場合、白血球
除去部は不要であり、プライミング・ソリューション
が、新鮮血(全血)のように、白血球が除かれていない
ものである場合のみ、白血球除去部は必要である。血漿
分離部(A)で分離された肝不全血漿または腎不全血漿
は、一旦リザーバーに入り、臓器収納装置中の臓器を通
過した後に血漿分離部(B)で血漿を分離された血液と混
合される。次いで、この肝不全血漿または腎不全血漿と
ヒト全血の混合血液は、免疫グロブリン除去部に運ば
れ、血液中の免疫グロブリン、補体等の免疫因子が除去
される。免疫グロブリン除去部から流出した血液は、酸
素供給部に送られ、所望の溶存酸素濃度になるように、
酸素が供給される。酸素供給部を出た血液は、加温部に
送られ、所望の温度に加温される。加温部を出た血液
は、臓器収納装置に送られる。臓器収納装置では、血液
中の肝不全または腎不全物質の代謝、有害物質の解毒、
タンパク質の合成、グリコーゲンの分解・合成、胆汁の
合成等が行われ、ビリルビンは胆汁として総胆管より排
泄される。臓器収納装置を出た血液は、溶存酸素測定部
を通過後、血漿分離部(B)39に流入する。溶存酸素測
定部において得られた溶存酸素の測定値は、酸素ボンベ
に送られ、酸素ボンベからの酸素供給部への酸素導入量
が決定される。血漿分離部(B)では、肝不全または腎不
全物質の減少した患者血液から、血漿が分離され、残り
の全血は、リザーバーにもどり、血漿分離部(A)で分離
された肝不全血漿または腎不全血漿と合流する。一方、
血漿分離部(B)で分離された血漿は、血液合流部におい
て、血漿分離部(A)から運ばれた全血と合流し、患者体
内に戻される。
【0090】III.本発明の移植臓器用保存装置により
保存した臓器の機能評価および人工臓器システムの性能
評価 1.移植肝臓用保存装置により保存した肝臓の機能評価
および人工肝臓システムの性能評価 移植肝臓用保存装置により保存した肝臓の機能評価は、
以下のように、GOT/GPT活性上昇の有無、血中アンモニ
ア濃度、胆汁産生、灌流後の肝組織の色、血液凝固の有
無、肝組織の柔軟度等により評価することができる。ま
た、人工肝臓システムの性能評価は、肝不全モデル用動
物を使用して、以下のように、GOT/GPT活性上昇の有
無、被験体の頭蓋内圧、血中アンモニア濃度、胆汁産
生、灌流後の肝組織の色、血液凝固の有無、肝組織の柔
軟度、および、肝不全モデル動物の生存期間と副作用の
有無等により評価することができる。
【0091】〔1〕 肝不全モデルの作製 肝不全モデル用動物としては、イヌ(例えば、シェパー
ド犬)などを使用することができる。例えばイヌ肝不全
モデルは、以下のようにして作製することができる。ま
ず、全身麻酔後、頭蓋骨を穿頭して脳室内に頭蓋内圧測
定用カテーテルを挿入、留置し、外頚静脈には灌流用カ
テーテルを挿入、留置する。門脈―下大静脈の吻合を行
い、それより肝臓側において、門脈、肝動脈、および総
胆管を結紮切離する。さらに、下大静脈の前面で、肝臓
からの流入静脈を全て結紮切離しつつ、肝臓を切離し、
全肝切除モデル(無肝犬)を作成する。この手術および
手技操作により、イヌを肝不全状態にすることができ
る。
【0092】〔2〕 灌流通過障害の有無 灌流が障害なく続行可能であるか否かを調べることによ
り、使用した人工肝臓システムが、超急性拒絶反応を生
じずに灌流することが可能であるか否かを評価すること
ができる。従来の全肝型人工肝臓の場合、肝臓内への流
入血液が血管内皮細胞に対し超急性拒絶反応を起こし、
それに起因する灌流回路の通過障害が生じ得る。また、
ハイブリッド型人工肝臓の場合でも、流入血液が肝細胞
に対し超急性拒絶反応を起こし得る。灌流が障害なく続
行されれば、使用した人工肝臓システムは、超急性拒絶
反応を生じることなく良好に灌流を行うことができると
評価することができ、灌流が灌流開始後1時間以内に、
灌流不能となった場合には、使用した人工肝臓システム
は、血液灌流には不適であると評価することができる。
【0093】〔3〕 GOT/GPT活性上昇の有無 GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナー
ゼ)、GPT(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナー
ゼ)等の酵素は、肝細胞が破壊されると、肝細胞内から
血中に流出する。したがって、肝臓から出た血液中のGO
TおよびGPT値を調べることによって、肝臓において、肝
細胞壊死や破壊が生じているか否かを調べることができ
る。すなわち、肝臓から出た血液中のGOTおよび/または
GPT値の経時的な上昇が認められれば、肝臓において肝
細胞の死滅が生じており、保存中の肝臓または人工肝臓
システム中の肝臓の肝機能は経時的に低下すると評価す
ることができ、上昇が認められなければ、肝細胞の死滅
は生じず、保存中の肝臓または人工肝臓システム中の肝
機能は維持されると評価することができる。
【0094】〔4〕 被験体の頭蓋内圧および血中アン
モニア濃度 被験体は肝不全時には、頭蓋内圧および血中アンモニア
濃度が上昇する。従って、これらの値が上昇しなけれ
ば、使用した人工肝臓システムは、良好に被験体の肝機
能を発揮していると評価することができる。
【0095】〔5〕 胆汁産生、肝臓の灌流後の肝組織
の色、血液凝固の有無、肝組織の柔軟度 保存中の肝臓または人工肝臓システムの肝臓について、
総胆管からの胆汁産生を調べることにより、肝臓が機能
しているかどうかを評価することができる。胆汁産生が
なければ、その肝臓は機能していないと考えられる。ま
た、灌流終了後にシステムを分解し、血液凝固の有無、
肝臓の色および肝臓の軟らかさを調べることにより、よ
り詳細に評価することができる。例えば、血液凝固が認
められず、肝臓が赤褐色で且つ摘出当初の柔らかさを保
っていたならば、使用した肝臓保存装置または全肝型人
工肝臓システムは、血液凝固が生じず、保存・灌流は良
好に行われたと評価することができる。逆に、肝臓表面
の一部または全体が黒紫色になり、硬く緊満した状態に
なっていたならば、使用した全肝型人工肝臓システム内
部に、異種免疫反応等による血液凝固が生じ、灌流は良
好には行われなかったと評価される。
【0096】本発明の人工肝臓システムは、通過障害を
生じることなく、良好な灌流の使用期間中にわたって維
持することができる。また、GOT/GPT活性の上昇も認め
られず、使用期間中、肝細胞の肝機能は使用当初と変わ
りなく維持される。さらに、肝不全被験体における頭蓋
内圧は低下し、血中アンモニアは上昇が抑制される。特
に、本発明の人工肝臓システムにおいては、従来全肝型
人工肝臓において生じていた、血液に対する血管内皮細
胞の超急性拒絶反応が生じないため、それに起因する灌
流回路の通過障害を抑えることができ、従来の人工肝臓
システムに比べて灌流可能時間を延長することが可能で
ある。さらに、血液成分分離装置によって、白血球濃厚
液を回路の最初の部分において分離して直接的に患者体
内に返血することにより、患者体内からの白血球の著明
な減少を防ぐことができる。また、肝機能代替部を灌流
する血液から白血球を可及的に除くことにより、免疫吸
着除去装置を節約することができる。このような利点か
ら、本発明の人工肝臓システムは、臨床現場において、
従来に比べて好結果な臨床成績を期待することができ
る。本発明の人工肝臓システムでは、良好な灌流効率が
得られる。なお、「灌流効率」とは、人工肝臓システム中
に流入した血液量に対する、肝機能代替部で処理される
血液量の割合を百分率で表した値をいう。すなわち、灌
流効率は、肝不全患者由来の血液が肝機能代替部へと送
られる割合を表すものであり、従って、この値が高いほ
ど、患者由来の血液は十分な肝機能処理を受けることが
できることを意味する。
【0097】2.移植腎臓用保存装置により保存した腎
臓または人工腎臓システムの性能評価 移植腎臓用保存装置により保存した腎臓の機能は腎臓か
らの尿排出量、腎臓のクレアチニン・クリアランス、被
験体の血中クレアチニンおよび尿素窒素濃度、灌流後の
腎組織の色、血液凝固の有無、腎組織の柔軟度等により
評価することができる。人工腎臓システムの性能は、腎
不全モデル用動物を使用して、以下のように、腎臓収納
装置内の異種腎からの尿排出量、異種腎のクレアチニン
・クリアランス、被験体の血中クレアチニンおよび尿素
窒素濃度、灌流後の異種腎の色、血液凝固の有無、およ
び、腎不全モデル動物における副作用の有無等により評
価することができる。
【0098】〔1〕 腎不全モデルの作製 腎不全モデル用動物としては、イヌ(例えば、シェパー
ド犬)などを使用することができる。例えばイヌ腎不全
モデルは、以下のようにして作製することができる。ま
ず、全身麻酔後、外頚静脈に灌流用カテーテルを挿入、
留置する。左右の腎動脈、腎静脈、および尿管を結紮切
離し、両側の腎臓を切除する。この手術および手技操作
により、イヌを腎不全状態にすることができる。
【0099】〔2〕 異種腎からの尿排出量 異種腎からの尿排出量を調べることにより、異種腎が機
能しているかどうかを評価することができる。尿排出が
なければ、その異種腎は機能していないと考えられる。 〔3〕 被験体の血中クレアチニンおよび尿素窒素濃度
血中クレアチニンおよび尿素窒素の値の正常値は、それ
ぞれ1.2以下および5〜10であるが、腎不全患者において
は、これらの値は上昇している。従って、上昇が認めら
れれば、腎機能は経時的に低下すると評価することがで
き、上昇が認められなければ、腎機能は維持されると評
価することができる。
【0100】〔4〕 灌流後の血液凝固の有無、腎組織
の色、および、腎不全モデル動物における副作用の有無 また、灌流終了後にシステムを分解し、血液凝固の有
無、腎臓の色を調べることにより、より詳細に評価する
ことができる。例えば、腎臓内部に血液凝固が認められ
ず、腎臓が明るい赤色を保っていたならば、使用した人
工腎臓システムは、血液凝固が生じず、灌流は良好に行
われたと評価することができる。逆に、腎臓表面の一部
または全体の色調が暗褐色調になっていたならば、使用
した人工腎臓システム内部に、異種免疫反応等による血
液凝固が生じ、灌流は良好には行われなかったと評価さ
れる。
【0101】本発明の人工腎臓システムは、通過障害を
生じることなく、良好な灌流の使用期間中にわたって維
持することができる。特に、本発明の人工腎臓システム
においては、血管内皮細胞の超急性拒絶反応が生じない
ため、それに起因する灌流回路の通過障害を抑えること
ができ、長時間灌流治療を続けることが可能である。さ
らに、血液成分分離装置によって、白血球濃厚液を回路
の最初の部分において分離して直接的に患者体内に返血
することにより、患者体内からの白血球の著明な減少を
防ぐことができる。また、腎臓を灌流する血液から白血
球を可及的に除くことにより、免疫吸着除去装置を節約
することができる。このような利点から、本発明の人工
腎臓システムは、臨床現場において、従来に比べて好結
果な臨床成績を期待することができる。
【0102】
【実施例】以下に、本発明を実施例を示して具体的に説
明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものでは
ない。 〔実施例1〕ブタ肝臓を用いたin vitro全血直接灌流保
存 以下のようにして、ブタ全肝を用いる肝臓収納装置を製
作した。まず、体重25〜30kgのブタ(種類:サンゲン雑
種)を、全身麻酔下に開腹し、門脈を切開して、カテー
テルを、切開口から肝臓方向に向けて1本、切開口から
上腸間膜静脈方向に向けて1本、それぞれ挿入した。切
開口から肝臓方向に向けて挿入したカテーテルからは、
約3000mLのヘパリン添加生理食塩水を、肝臓に灌流して
脱血した。一方、切開口から上腸間膜静脈方向に向けて
挿入したカテーテルは、灌流チューブとローラー・ポン
プを介してリザーバーに接続された。これにより、上腸
間膜静脈の血液を吸引し、リザーバーに貯留させた。さ
らに、右腎静脈を切開してカテーテルを挿入し、下大静
脈の血液を吸引し、リザーバーに貯留させた。1.2〜1.5
L程度のブタ自家血(自分の血)がリザーバーに貯留し
た段階で、肝動脈を結紮切離し、総胆管を切離して胆管
チューブを挿入し、下大静脈を肝臓付着部の上下で切離
して、下大静脈を含めて全肝を摘出した。
【0103】次いで、図3のような肝臓支持管をブタ肝
の下大静脈の上下の断端に貫通させ、スプリング部分が
下大静脈内に収まるように肝臓支持管を配置し、下大静
脈の上下の断端部分は血液が漏れないように外科用縫合
糸によって結紮した。この肝臓を図1の肝臓収納装置に
設置した。ブタ自家血が貯留したリザーバー、ローラー
・ポンプ、酸素供給器兼加温器、拍動用開閉弁、肝臓収
納装置を血液灌流チューブによって接続して灌流回路を
作成した。濃度が1 mMol/Lになるようにアンモニアをリ
ザーバーに注入し、6時間にわたって持続灌流を行っ
た。
【0104】その結果、アンモニア値は下がり続けた。
胆汁排泄は、10 mL/h 以上の排出量を6時間まで維持し
続けた。肝臓の表面は滑らかで光沢を保っており、色調
は生体内にある場合と同様の明るいえんじ色を保ってい
た。これにより、少なくとも6時間は肝臓を良好な状態
で保存できることが明らかとなった。
【0105】〔実施例2〕ブタ肝臓を用いた全肝型人工
肝臓システムによる無肝犬肝不全モデルに対するLCAP併
用全血直接灌流治療 全肝型人工肝臓システムを用い、以下のようにして、無
肝犬肝不全モデル(被験体)に対して全血直接灌流治療
を行った。まず、体重25〜30kgのイヌ(種類:シェパー
ド犬)に、ケタミンおよびフェノバルビタールを注射す
ることによって導入麻酔を行い、気管内挿管による人工
呼吸器管理下に置いて全身麻酔した。外頚静脈には灌流
用カテーテルを挿入、留置した。門脈―下大動脈の吻合
を行い、肝門部において門脈、肝動脈、及び総胆管を結
紮切離した上で、下大静脈前縁で肝臓実質を切離し、全
肝切除術を行い、無肝犬肝不全モデルを作成した。
【0106】一方、以下のようにして、ブタ全肝を用い
る肝臓収納装置を製作した。まず、体重25〜30kgのブタ
(種類:サンゲン雑種)の門脈にカテーテルを挿入し、
これにより約3000mLのヘパリン添加生理食塩水を肝臓に
灌流して脱血した。動脈を結紮切離し、総胆管を切離し
て胆管チューブを挿入し、下大静脈を肝臓付着部の上下
で切離して、下大静脈を含めて全肝を摘出した。次い
で、図3のような肝臓支持管をブタ肝の下大静脈の上下
の断端に貫通させ、スプリング部分が下大静脈内に収ま
るように肝臓支持管を配置し、下大静脈の上下の断端部
分は血液が漏れないように外科用縫合糸によって結紮し
た。この肝臓を、「発明の実施の形態」で述べた如く、
図1、2のような肝臓収納装置に設置した。さらに、も
う一頭のイヌを全身麻酔下に開腹し、下大静脈に採血用
カテーテルを挿入し、ここから1.0〜1.5Lの全血を採血
し、容量2Lのリザーバーボトルに貯血した。
【0107】以下のようにして、全肝型人工肝臓システ
ムを構築した。図5のように、血液成分分離装置(LCA
P)、白血球吸着除去装置、免疫グロブリン除去装置、
酸素供給兼加温器Capiox(テルモ社製)、および切除した
ブタ全肝を、門脈側を流入口、下大静脈側を流出口とし
て、順次接続し、主回路とした。さらに、上記貯血リザ
ーバーをバイパス回路として組み入れることにより、本
発明の全肝型人工肝臓システムを構築した。ただし、バ
イパス回路の血液は白血球を含むため、主回路への合流
部は、白血球吸着除去装置の前とした。なお、血液成分
分離装置(LCAP)としては、連続式遠心分離装置フレゼ
ニウスAS.TEC204(フレゼニウス社)、白血球吸着除去
装置としては、ポリエステル不織布を白血球除去媒体と
するセルソーバ(Cellsorba、旭メディカル社製)、免
疫グロブリン除去装置としては、リガンドとしてトリプ
トファンを結合させたポリビニルアルコールゲル充填カ
ラムのイムソーバTR350(Immusorba TR350、旭メディカ
ル社製)を使用した(灌流治療群:被験体数1)。
【0108】無肝犬作成手術終了4時間後に、当該シス
テムにイヌ肝不全モデルの灌流用カテーテルを接続し、
灌流治療を開始した。イヌから導出する血液の流速は、
50 mL/min、貯血リザーバーおよびバイパス回路の血液
の流速は、150 mL/min、これらが合流してブタ肝臓に流
入する血液の流速は、200 mL/minであり、灌流時間は3
時間であった。終了後、イヌは人工呼吸器管理下に経過
観察された。
【0109】灌流治療群においては、灌流治療は全く障
害なく続行された。血液成分分離装置(LCAP)により、
被験体からシステムに流入した全血液量のうち、流量に
して15〜20%、白血球量として約50〜70%が、白血球濃
厚液として分離され、一方、流量にして80〜85%、白血
球量として約30〜50%が、赤血球、血小板、血漿濃厚液
として、肝機能代替部に灌流された。その結果、イヌ体
循環血中の白血球数は全く減少しなかった。また、白血
球除去装置および免疫グロブリン除去装置は、3時間の
灌流治療を通してそれぞれ1本ずつで済み、実験終了後
に解体したところ、これらの吸着カラムには血液凝固は
全く付着していなかった。GOT/GPT等の酵素活性の上昇
は全く認められず、肝細胞壊死や破壊が生じていないこ
とわかった。
【0110】一方、対照群として、無肝犬肝不全モデル
群(被験体数5)を作った。対照群では、イヌ体循環血
中のアンモニア値は上昇を続けた。灌流治療群では、ア
ンモニア値は上昇が抑制された。灌流回路血中のアンモ
ニア値は、全肝に流入する直前の部分では246.0である
のに対し、全肝から流出した直後の部分では126.0と著
明な減少を示し、全肝により十分にアンモニアが除去さ
れたことが明らかであった。総胆管からは、1時間あた
り10〜20mL の胆汁排出がコンスタントに認められた。
これらの治療効果は、白血球除去装置および免疫グロブ
リン除去装置により、赤血球、血小板、血漿濃厚液内に
残っている白血球、免疫グロブリン、補体などが吸着除
去されてブタ肝内部で拒絶反応を起こさないため、ブタ
肝が良好な肝機能を発揮できたことによると考えられ
た。灌流終了後にシステムを分解してみたところ、肝臓
内部に血液凝固は全く生じておらず、ブタ肝は赤褐色で
正常の柔らかさを保っていた。無肝犬肝不全モデルの生
存期間は、対照群では、手術終了後19〜25時間であった
が、灌流治療群では、36時間に延長された。このこと
は、延長時間分だけ本人工肝臓システムが肝機能を代替
したことを示す。
【0111】以上の結果より、白血球除去装置および免
疫グロブリン除去装置を全肝の前に設置した本発明の人
工肝臓システムを用いることによって、人工肝臓システ
ム中の肝機能代替部における異種免疫反応や肝不全被験
体におけるショックを誘発することなく、肝不全被験体
における肝機能を補助、代替することができ、かつ、血
液成分分離装置を回路の最初の部分に設置することによ
り、患者に白血球の減少をもたらすことなく、白血球除
去装置および免疫グロブリン除去装置を節約して灌流治
療を行うことができること、そして、その結果、肝不全
被験体に有意な延命効果をもたらすことがわかった。
【0112】〔実施例3〕ブタ肝臓を用いた全肝型人工
肝臓システムによる無肝犬肝不全モデルに対する交差灌
流治療 全肝型人工肝臓システムを用い、以下のようにして、無
肝犬肝不全モデル(被験体)に対して交差灌流治療を行
った。まず、体重25〜30kgのイヌ(種類:シェパード
犬)に、ケタミンおよびフェノバルビタールを注射する
ことによって導入麻酔を行い、気管内挿管による人工呼
吸器管理下に置いて全身麻酔した。外頚静脈には灌流用
カテーテルを挿入、留置した。門脈−下大動脈の吻合を
行い、肝門部において門脈、肝動脈、そして総胆管を結
紮切離した上で、下大静脈前縁で肝臓実質を切離し、全
肝切除術を行い、無肝犬肝不全モデルを作成した。実施
例2と同様にして、体重25〜30kgのブタ(種類:サンゲ
ン雑種)のブタ全肝を摘出し、肝臓支持管を用いて肝臓
収納装置を製作した。
【0113】さらに、以下のようにして、人工肝臓シス
テムを構築した。人工肝臓システムは、図6の如く、定
常流ポンプ、リザーバー、免疫グロブリン除去装置、酸
素供給兼加温器Capiox(テルモ社製)、拍動用開閉弁、お
よび、肝臓収納装置などから成る。なお、免疫グロブリ
ン除去装置としては、リガンドとしてトリプトファンを
結合させたポリビニルアルコールゲル充填カラムのイム
ソーバTR350(Immusorba TR350、旭メディカル社製)を
使用した。リザーバーには、実施例2と同様にして、別
のイヌから採血した1.5Lの全血を貯留した(灌流治療
群:被験体数1)。被験体肝不全モデルの回路を血漿分
離部のファイバー内腔のラインに接続し、人工肝臓シス
テムのラインは、血漿分離部のファイバー外腔のライン
に接続した。これを無肝犬肝不全モデル(被験体数2)
の対照群と比較した。
【0114】無肝犬作成手術終了4時間後に、当該シス
テムにイヌ肝不全モデルの灌流用カテーテルを接続し、
灌流治療を開始した。無肝犬肝不全モデルから導出され
て血漿分離部のファイバー内腔を流れる血液の流速は、
50 mL/min、血漿分離部のファイバー外腔および人工肝
臓システムを流れる血液の流速は、200 mL/minであり、
灌流時間は3時間であった。終了後、イヌは人工呼吸器
管理下に経過観察された。
【0115】灌流治療群においては、灌流治療は全く障
害なく続行された。実験終了後に解体したところ、これ
らの吸着カラムには血液凝固は全く付着していなかっ
た。GOT/GPT等の酵素活性の上昇は全く認められず、肝
細胞壊死や破壊が生じていないことわかった。
【0116】灌流治療群では、アンモニア値は上昇が抑
制された。灌流回路血中のアンモニア値は、全肝に流入
する直前の部分では158.5であるのに対し、全肝から流
出した直後の部分では77.6と著明な減少を示し、全肝に
より十分にアンモニアが除去されたことが明らかであっ
た。その結果、被験体肝不全モデルの回路におけるアン
モニア値は、血漿分離部に流入する直前の部分では202.
2であるのに対し、血漿分離部から流出した直後の部分
では139.4と著明な減少を示した。総胆管からは、1時
間あたり10mL 以上の胆汁排出がコンスタントに認めら
れた。灌流終了後にシステムを分解してみたところ、肝
臓内部に血液凝固は全く生じておらず、ブタ肝は赤褐色
で正常の柔らかさを保っていた。
【0117】無肝犬肝不全モデルの生存期間は、対照群
では、手術終了後19〜25時間であったが、灌流治療群で
は、30時間に延長された。このことは、延長時間分だけ
本人工肝臓システムが肝機能を代替したことを示す。以
上の結果より、本発明の人工肝臓システムを用いること
によって、肝不全被験体における肝機能を補助、代替す
ることができること、そして、その結果、肝不全被験体
に有意な延命効果をもたらすことがわかった。
【0118】〔実施例4〕ブタ肝臓を用いた全肝型人工
肝臓システムによる無肝犬肝不全モデルに対する反復血
漿分離灌流治療 全肝型人工肝臓システムを用い、以下のようにして、無
肝犬肝不全モデル(被験体)に対して交差灌流治療を行
った。まず、体重25〜30kgのイヌ(種類:シェパード
犬)に、ケタミン及びフェノバルビタールを注射するこ
とによって導入麻酔を行い、気管内挿管による人工呼吸
器管理下に置いて全身麻酔した。外頚静脈には灌流用カ
テーテルを挿入、留置した。門脈−下大動脈の吻合を行
い、肝門部において門脈、肝動脈、そして総胆管を結紮
切離した上で、下大静脈前縁で肝臓実質を切離し、全肝
切除術を行い、無肝犬肝不全モデルを作成した。実施例
2と同様にして、体重25〜30kgのブタ(種類:サンゲン
雑種)のブタ全肝を摘出し、門脈に血液流入用チュー
ブ、下大静脈に血液流出用チューブをそれぞれ挿入し
た。総胆管には、胆汁流出用チューブを挿入した。
【0119】さらに、以下のようにして、人工肝臓シス
テムを構築した。人工肝臓システムは、図7の如く、血
漿分離部(A)、白血球吸着除去装置、免疫グロブリン除
去装置、酸素供給兼加温器Capiox(テルモ社製)、拍動用
開閉弁、および切除したブタ全肝を、門脈側を流入口、
下大静脈側を流出口として、さらに血漿分離部(B)を順
次接続し、主回路とした。実施例2と同様にして、別の
イヌから採血した1.5Lの全血をリザーバーに貯血し、こ
れをバイパス回路として組み入れることにより、本発明
の全肝型人工肝臓システムを構築した。ただし、バイパ
ス回路の血液は白血球を含むため、主回路に上記の如く
白血球吸着除去装置を組込み、主回路への合流部は、白
血球吸着除去装置の前とした。なお、白血球吸着除去装
置としては、ポリエステル不織布を白血球除去媒体とす
るセルソーバ(Cellsorba、旭メディカル社製)、免疫
グロブリン除去装置としては、リガンドとしてトリプト
ファンを結合させたポリビニルアルコールゲル充填カラ
ムのイムソーバTR350(Immusorba TR350、旭メディカル
社製)を使用した。被験体肝不全モデルの回路を血漿分
離部(A)のファイバー内腔のラインに接続し、人工肝臓
システムのラインは、血漿分離部(A)のファイバー外腔
のラインに接続した(灌流治療群:被験体数1)。
【0120】無肝犬作成手術終了4時間後に、当該シス
テムによるイヌ肝不全モデルの灌流治療を開始した。無
肝犬肝不全モデルから導出されて血漿分離部のファイバ
ー内腔を流れる血液の流速は、50 mL/min、血漿分離部
(A)で分離される血漿の流速は、17 mL/min、貯血リザー
バーおよびバイパス回路の血液の流速は、150 mL/min、
これらが合流してブタ肝臓に流入する血液の流速は、16
7 mL/minであり、血漿分離部(B)で再び分離される血漿
流量は、17 mL/minに設定した。灌流時間は3時間であ
った。終了後、イヌは人工呼吸器管理下に経過観察され
た。
【0121】灌流治療群においては、灌流治療は全く障
害なく続行された。実験終了後に解体したところ、これ
らの吸着カラムには血液凝固は全く付着していなかっ
た。GOT/GPT等の酵素活性の上昇は全く認められず、肝
細胞壊死や破壊が生じていないことがわかった。
【0122】灌流治療群では、アンモニア値は上昇が抑
制された。灌流回路血中のアンモニア値は、全肝に流入
する直前の部分では504.3であるのに対し、全肝から流
出した直後の部分では179.5と著明な減少を示し、全肝
により十分にアンモニアが除去されたことが明らかであ
った。その結果、被験体肝不全モデルの回路におけるア
ンモニア値は、血漿分離部(A)に流入する直前の部分で
は557.9であるのに対し、血漿分離部(B)から血漿が合流
した直後の部分では234.2と著明な減少を示した。総胆
管からは、1時間あたり10〜20mL の胆汁排出がコンス
タントに認められた。灌流終了後にシステムを分解して
みたところ、肝臓内部に血液凝固は全く生じておらず、
ブタ肝は赤褐色で正常の柔らかさを保っていた。これを
無肝犬肝不全モデルの対照群(被験体数5)と比較し
た。
【0123】無肝犬肝不全モデルの生存期間は、対照群
では、手術終了後19〜25時間であったが、灌流治療群で
は、32時間に延長された。このことは、延長時間分だけ
本人工肝臓システムが肝機能を代替したことを示す。以
上の結果より、本発明の人工肝臓システムを用いること
によって、肝不全被験体における肝機能を補助、代替す
ることができること、そして、その結果、肝不全被験体
に有意な延命効果をもたらすことがわかった。
【0124】
【発明の効果】本発明の移植用臓器保存装置は、臓器が
自然な形を保ち、十分に末梢組織を拡張させるように設
計された移植用臓器収納装置に配置され、さらに末梢血
管が拡張し、組織の隅々にまで血流を行き渡らせること
ができる。このため、臓器の末梢組織に酸素や栄養を十
分に送ることができ移植用の臓器を長期間臓器の機能を
保持したまま保存することができる。また、前記移植用
臓器収納装置を含む本発明の人工臓器システムは、臓器
の末梢血管が拡張し、組織の隅々にまで血流が行き渡る
状態に保つため臓器の機能を保持したまま患者の臓器機
能を、長期にわたって代替または補助することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の肝臓収納装置を示す図である。
【図2】肝臓を収納した本発明の肝臓収納装置を示す図
である。
【図3】本発明の肝臓支持管を示す図である。
【図4】本発明の全血直接灌流保存装置を示す図であ
る。
【図5】本発明のLCAP全血直接灌流治療システムを示す
図である。
【図6】本発明の交差灌流治療システムを示す図であ
る。
【図7】本発明の反復血漿分離灌流システムを示す図で
ある。
【符号】
1、箱 2、支持管 3、支持管固定用ホルダー 4、チューブ等ホルダー 5、板 6、敷布 7、底板 8、漏出液導出部 9、肝臓 10、外科用縫合糸 11、漏出液流路 12、リザーバーボトル 13、血液灌流回路 14a、灌流用ポンプの弁および弾性嚢部分 14b、灌流用ポンプの空気圧駆動装置部分 15、圧測定メーター 16、ガラス棒 17、ガラス管 18、スプリング 19、酸素供給部 20、酸素ボンベ 21、加温部 22、ウォーターバス 23、ローラーポンプ 24、患者 25、血液凝固阻害剤注入部 26、血液成分分離部 27、白血球除去部 28、免疫グロブリン除去部 29、酸素供給部 30、加温部 31、開閉弁 32、圧力計 33、溶存酸素測定部 34、酸素ボンベ 35、ポンプ 36、リザーバー 37、血漿分離部または透析部 38、血漿分離部(A) 39、血漿分離部(B)

Claims (22)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも、動物臓器を内部に収納した
    臓器収納装置および臓器の血液を灌流させるためのポン
    プを含む移植用臓器保存装置。
  2. 【請求項2】 臓器収納装置が、臓器を下から保持する
    容器部および臓器に挿入して臓器を吊り下げる臓器支持
    管を含む、請求項1記載の移植用臓器保存装置。
  3. 【請求項3】 臓器収納装置の容器部が、臓器表面から
    の漏出液を血液灌流回路に戻すための手段を有する請求
    項2記載の移植用臓器保存装置。
  4. 【請求項4】 血液灌流用ポンプが拍動流を作り出すポ
    ンプであって、定常流ポンプと開閉弁を組合せてなる拍
    動流ポンプまたは人工心臓装置である、請求項1〜3の
    いずれか1項記載の移植用臓器保存装置。
  5. 【請求項5】 収納する臓器が肝臓である、請求項1〜
    4のいずれか1項記載の移植用臓器保存装置。
  6. 【請求項6】 血液灌流ポンプが、肝臓の門脈および/
    または肝動脈側から下大静脈側へ、または下大静脈側か
    ら門脈および/または肝動脈側へ血液を灌流させる、請
    求項5記載の移植用臓器保存装置。
  7. 【請求項7】 臓器支持管が、肝臓の下大静脈断端に挿
    入され、肝臓全体を吊り下げ、肝臓が該支持管と容器部
    の肝臓の置かれる面に支えられて、拡張した状態で保持
    され得る、請求項5または6記載の移植用臓器保存装
    置。
  8. 【請求項8】 肝臓中の血液が、臓器支持管を通って外
    部血液流路と交通することのできる、請求項7記載の移
    植用臓器保存装置。
  9. 【請求項9】 動物臓器が腎臓である、請求項1〜4の
    いずれか1項記載の移植用臓器保存装置。
  10. 【請求項10】 臓器の動物種が、ヒト、ブタ、ウシ、
    サルおよびヒヒからなる群から選択される、請求項1〜
    9のいずれか1項記載の移植用臓器保存装置。
  11. 【請求項11】 少なくとも、動物臓器を内部に収納し
    た臓器収納装置および臓器の血液を灌流させるためのポ
    ンプを含む人工臓器システムであって、臓器収納装置
    が、臓器を下から保持する容器部および臓器に挿入して
    臓器を吊り下げる臓器支持管を含む人工臓器システム。
  12. 【請求項12】 臓器収納装置の容器部が、臓器表面か
    らの漏出液を血液灌流回路に戻すための手段を有する請
    求項11記載の人工臓器システム。
  13. 【請求項13】 血液灌流用ポンプが拍動流を作り出す
    ポンプであって、定常流ポンプと開閉弁を組合せてなる
    拍動ポンプまたは人工心臓装置である、請求項11また
    は12記載の人工臓器システム。
  14. 【請求項14】 収納する臓器が肝臓である、請求項1
    1〜13のいずれか1項記載の人工臓器システム。
  15. 【請求項15】 血液灌流ポンプが、肝臓の門脈および
    /または肝動脈側から下大静脈側へ、または下大静脈側
    から門脈および/または肝動脈側へ血液を灌流させる、
    請求項14記載の人工臓器システム。
  16. 【請求項16】 臓器支持管が、肝臓の下大静脈断端に
    挿入され、肝臓全体を吊り下げ、肝臓が該支持管と容器
    部の肝臓の置かれる面に支えられて、拡張した状態で保
    持され得る、請求項14または15記載の人工臓器シス
    テム。
  17. 【請求項17】 肝臓中の血液が、臓器支持管を通って
    外部血液流路と交通することのできる、請求項16記載
    の人工臓器システム。
  18. 【請求項18】 動物臓器が腎臓である、請求項11〜
    13のいずれか1項記載の人工臓器システム。
  19. 【請求項19】 臓器の動物種が、ヒト、ブタ、ウシ、
    サルおよびヒヒからなる群から選択される、請求項11
    〜18のいずれか1項記載の人工臓器システム。
  20. 【請求項20】 開口部を有しないガラス棒と少なくと
    も2つの開口部を有する中空のガラス管がスプリングで
    つながった構造を有する、移植用肝臓を吊り下げるため
    の肝臓支持管。
  21. 【請求項21】 臓器を下から保持する容器部および臓
    器に挿入して臓器を吊り下げる臓器支持管を含む、移植
    用臓器保存装置または人工臓器システムに用いる臓器収
    納装置。
  22. 【請求項22】 臓器が肝臓である、請求項21記載の
    臓器収納装置。
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